JPH0892681A - 窒素化合アルミニウム−シリコン粉末合金およびその製造方法 - Google Patents

窒素化合アルミニウム−シリコン粉末合金およびその製造方法

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JPH0892681A
JPH0892681A JP6258704A JP25870494A JPH0892681A JP H0892681 A JPH0892681 A JP H0892681A JP 6258704 A JP6258704 A JP 6258704A JP 25870494 A JP25870494 A JP 25870494A JP H0892681 A JPH0892681 A JP H0892681A
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nitrogen
less
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aluminum
powder
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JP6258704A
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English (en)
Inventor
Shinichi Yamagata
伸一 山形
由重 ▲高▼ノ
Yoshie Kouno
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 密度が3.0g/cm3 以下である軽量性を
特徴にし、熱膨張率が5×10-6〜10×10-6/℃
で、かつ熱伝導率が0.2cal/cm・sec・℃以
上である安全性に優れた材料およびその製造方法を提供
する。 【構成】 窒素化合Al−Si粉末合金は、窒素を4重
量%以上15重量%以下含有し、シリコンを8.5重量
%以上48重量%以下含有し、Li、Mg、Ti、V、
Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、N
b、Mo、Wよりなる群から選ばれる少なくとも1種の
添加元素を9.6重量%以下含有し、残部が実質的にA
lと不可避な成分とからなっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、窒素化合アルミニウム
−シリコン粉末合金およびその製造方法に関し、より特
定的には、半導体装置を構成する材料であるヒートシン
ク材などに用いられる窒素化合アルミニウム−シリコン
粉末合金およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体装置用基板を構成する材料には、
熱応力による歪みを発生しないことが求められる。それ
ゆえ、半導体装置用基板を構成する材料の熱膨張率は、
半導体素子あるいは組合わせられる相手材料の熱膨張率
と大きな差がないことが要求される。具体的には、その
熱膨張率がSi(シリコン)やGaAs(ガリウム・ヒ
素)の半導体の熱膨張率に近く、かつ半導体の熱膨張率
と放熱構造体に用いられるAl(アルミニウム)やCu
(銅)の熱膨張率との間であることが要求される。
【0003】また、最近は素子の大型化や集積度の増加
を招来している。それゆえ、半導体装置用基板を構成す
る材料には、半導体素子からの熱エネルギーを効率よく
除去するためのヒートシンク機能としての熱伝導率の高
さもさらに要求されている。
【0004】係る観点から、特に熱伝導率が0.2ca
l/cm・sec・℃以上であり、熱膨張率が5×10
-6〜10×10-6/℃である材料のニーズが高まってい
る。
【0005】このような状況下で上記特性を満足する材
料としては、図11に示すようにBeO、AlN、Cu
−Mo合金、Cu−W合金が挙げられる。また、SiC
多孔質構造体にAlやAl−Si合金を含浸させた複合
材料がこの特性を満足することからこの用途への適用が
検討されている。
【0006】なお、この複合材料は、具体的には50〜
72体積%のSiC多孔質構造体にAl23 を14〜
30体積%、Ni−Si−Al合金またはAl−Si合
金を9〜20体積%含浸させた複合材料である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】さらに近年は、航空宇
宙産業機器をはじめ各種産業機器の軽量化ニーズの高ま
りを受けて、ヒートシンク材にも軽量化が求められてい
る。しかしながら、上記特性(熱伝導率、熱膨張率)を
満足する材料として挙げられるBeO、AlN、Cu−
Mo合金、Cu−W合金あるいは前記の複合材料には、
以下の実用上の欠点より適用範囲に制約があった。
【0008】まず、Cu−Mo合金、Cu−W合金は熱
伝導率に優れているが、比重が9〜17g/cm3 と比
較的高い。また、BeOでは密度が2.9g/cm3
小さいが、毒性が強いため安全性や環境汚染の点から現
在使用することができない。AlNでは密度が3.3g
/cm3 と比較的小さいが、セラミックスであるため機
械加工が困難である。
【0009】SiC多孔質構造体にAlやAl−Si合
金を含浸させた複合材料では、熱膨張率が5×10-6
8×10-6/℃と上記特性を満足しており、かつ密度も
3.3g/cm3 と比較的小さい。しかしながら、この
複合材料は、硬質なセラミックスであるSiCを50体
積%以上も含有している。このため複合材料では著しく
切削加工が困難である。また、製造条件や製品形状に制
約が多いため、この複合材料は広く実用化されていない
のが現状である。
【0010】このように、従来においては、密度が3.
0g/cm3 以下であり、熱膨張率が5×10-6〜10
×10-6/℃、熱伝導率が0.2cal/cm・sec
・℃以上の特性を満たし、さらに安全性などの面で優れ
た材料は得られていなかった。
【0011】それゆえ、従来の材料をヒートシンク材と
して用いた場合には、上記特性(密度、熱伝導率、熱膨
張率、安全性)のうち少なくとも1の特性を満たさな
い。このため、ヒートシンクと相手材との熱膨張率の不
整合によって亀裂や剥離が生じたり、熱伝導率が低いこ
とにより放熱不足が生じたり、密度が高いため軽量化に
そぐわないといった問題点があった。
【0012】また、上記特性を満足する材料の製造方法
において、短時間、低温度で製造できる方法も得られて
いなかった。
【0013】したがって、本発明の1の目的は、密度が
3.0g/cm3 以下、熱膨張率が5×10-6〜10×
10-6/℃、熱伝導率が0.2cal/cm・sec・
℃以上の特性を満足し、かつ安全性などの面において優
れた材料を提供することである。
【0014】また本発明の他の目的は、上記特性を有す
る材料を、短時間、低温度で製造できる製造方法を提供
することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは上記目的
を達成するため鋭意検討した結果、窒素を4重量%以上
15重量%以下含有し、Siを8.5重量%以上48重
量%以下含有し、所定の添加元素を9.6重量%以下含
有し、残部が実質的にAlと不可避な成分とからなる窒
素化合Al−Si粉末合金が、密度3.0g/cm3
下、熱膨張率が5×10-6〜10×10-6/℃、熱伝導
率が0.2cal/cm・sec・℃以上の特性を満た
し、かつ安全性などに優れていることを見出した。
【0016】それゆえ、本発明の窒素化合Al−Si粉
末合金は、窒素を4重量%以上15重量%以下含有し、
Siを8.5重量%以上48重量%以下含有し、Li
(リチウム)、Mg(マグネシウム)、Ti(チタ
ン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マン
ガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケ
ル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Zr(ジルコニウ
ム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、W(タン
グステン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添
加元素を9.6重量%以下含有し、残部が実質的にAl
と不可避な成分とからなっている。
【0017】また、本発明の窒素化合Al−Si粉末合
金に含まれる窒素は窒素化合物を構成し、その窒素化合
物の90重量%以上がAlNよりなることが望ましい。
【0018】また、本願発明者らは上記目的を達成する
ために鋭意検討した結果、所定の添加元素を所望量添加
して急冷凝固させたAl−Si合金粉末の成形体を窒化
焼結することにより、上記特性を有する窒素化合Al−
Si粉末合金を比較的低温・短時間の窒化焼結で製造で
きることを見出した。
【0019】それゆえ、本発明の窒素化合Al−Si粉
末合金の製造方法は、以下の工程を備えている。
【0020】まずLi、Mg、Ti、V、Cr、Mn、
Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、W
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素とS
iとを含有するAl合金溶湯を凝固して急冷凝固Al粉
末合金が形成される。そして急冷凝固Al合金粉末を圧
縮成形して成形体が得られる。そして窒素を含む雰囲気
下で475℃以上570℃以下の温度範囲で2時間以上
8時間以下の間、成形体が焼結される。
【0021】また成形体を焼結する工程は、成形体を4
75℃以上570℃以下の温度範囲で2時間以上20時
間以下の間焼結することが望ましい。
【0022】またAl合金溶湯は、Siを10重量%以
上50重量%以下含有するように準備されることが望ま
しい。
【0023】またAl合金溶湯は、Li、Mg、Ti、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Z
r、Nb、Mo、Wよりなる群から選ばれる少なくとも
1種の添加元素を10重量%以下含有するように準備さ
れることが望ましい。
【0024】また急冷凝固Al合金粉末を形成する工程
は、Al合金溶湯を102 ℃/sec以上の凝固速度で
凝固させる工程を含んでいることが望ましい。
【0025】また圧縮成形する工程は、成形体を真密度
比が50%以上90%以下となるように圧縮する工程を
含んでいることが望ましい。
【0026】また焼結する工程は、成形体を窒素分圧
0.95atm以上の常圧雰囲気下で焼結する工程を含
んでいることが望ましい。なお、ここで常圧とは、焼結
において成形体にかかる圧力が雰囲気ガスによる通常の
圧力のことをいい、大気圧に対して加圧も減圧もしてい
ない状態を指す。
【0027】また常圧雰囲気は、水蒸気分圧0.01a
tm以下であることが望ましい。また急冷凝固Al合金
粉末は、最大粒径74μm以下、平均粒径67μm以
下、比表面積が0.2m2 /g以上であることが望まし
い。
【0028】また焼結の工程により得られた焼結体を、
400℃以上に加熱して、成形金型温度150℃以上の
鍛造金型により、鍛造圧力4t/cm2 以上で真密度比
98%以上となるように成形固化して鍛造体を得る工程
をさらに備えることが望ましい。
【0029】
【作用】本発明では、組成および製造条件を限定してい
る。以下、これらの限定の意味について説明する。
【0030】[窒素含有量]本発明の窒素化合Al−S
i粉末合金では、窒素の含有量が特に重要である。窒素
の含有量が4重量%より小さい場合には、熱膨張率が1
0×10-6/℃を超えてしまう。このため、半導体素子
などとの熱膨張率の不整合により亀裂や剥離が生じると
いった問題が生じる。また窒素含有量が15重量%を越
えると、熱伝導率が0.2cal/cm・sec・℃よ
り小さくなってしまう。このため、放熱性が低下しヒー
トシンクとしての機能が低下する。
【0031】[窒素化合物の形態]急冷凝固Al合金粉
末の表面において、窒化処理時に雰囲気窒素とAl−S
i合金粉末が反応して窒素化合物が生成される。この反
応は、Al−Si合金粉末のAlマトリックス部表面か
ら起こり、窒素化合物は旧粉末界面あるいは旧粉末表面
上に生成する。このように旧粉末界面あるいは旧粉末表
面上に生成する窒素化合物はAlNである。
【0032】AlNは、密度3.3g/cm3 、熱膨張
率4.5×10-6/℃であり、熱伝導率も酸素などの不
純物の濃度や結晶格子の歪みの有無により変動するが、
比較的高い。このため、このAlNの生成量をコントロ
ールすることにより目的の特性を達成することができ
る。そのためには窒素はAl成分と反応してAlNを形
成している必要があり、またその制御性を考慮すると、
窒素量の90重量%以上がAlNとして存在することが
望ましい。
【0033】上述したように本発明では窒素含有量が4
重量%以上15重量%以下であるため、窒素化合Al−
Si粉末合金におけるおおよそのAlN量は10重量%
以上45重量%以下に相当する。
【0034】また、本発明の窒素化合物であるAlN
は、粒子として分散しておらず反応により生成してい
る。したがってAlNを粉末などで混合した場合と比較
して、AlNがAlマトリックスと密着するため加熱に
よる粒子の流れ性が向上する。それゆえ、鍛造や押出な
どにより複雑形状を熱間固化する場合においても、均質
な製品の製造が可能となる。さらにAlNが極めて微細
かつ密に分散しているため、機械加工性や機械強度など
にも優れている。
【0035】また市販されているAlNは高価である
が、本発明ではAlを直接窒化しているため、本発明の
Al−Si粉末合金は製造コストの面からも優れてい
る。
【0036】[添加元素の影響]本発明の窒素化合Al
−Si粉末合金の製造方法では、Al合金溶湯に、Si
以外に、Li、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
o、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Wよりなる
群から選ばれる少なくとも1種の添加元素が添加され
る。
【0037】これらの元素の添加は、窒化反応の促進の
効果がある。その明確な理由は明らかになっていない
が、Li、Mgなどの酸化力の強い元素はAl表面の酸
化膜を還元していることが考えられる。またそれぞれ熱
膨張率が異なる元素の添加により粉末内に不均一な膨張
が起こり、粉末内部への窒素の拡散が促進されると考え
られる。またAlと反応して化合物を形成するFeやN
iなどの添加は、それらの化合物が加熱時におけるSi
粒の移動を阻害する働きをなす。このため、窒化反応処
理時におけるAlマトリックス中に晶出あるいは析出す
るSi晶の粒成長を抑制することができる。
【0038】このように窒化反応を促進する元素を合金
粉末に添加したことで、比較的低温かつ比較的短時間の
窒化処理を成形体に施すことで所望の特性を有する窒素
化合Al−Si粉末合金が得られる。
【0039】ただし、これらの添加元素を10重量%を
越えてAl合金溶湯に添加すると、所望の特性値(密
度、熱膨張率、熱伝導率)が得られない。このため、添
加元素のAl合金溶湯への添加量は10重量%以下であ
る。
【0040】添加元素のAl合金溶湯への添加量が10
重量%以下であるため、窒化処理後の窒素化合Al−S
i粉末合金における添加元素の含有量はほぼ9.6重量
%以下に相当する。
【0041】[窒化処理温度・時間]本発明の窒素化合
Al−Si粉末合金の製造方法では、窒化処理温度・時
間が特に重要である。上記の添加元素の添加により、窒
化処理温度を比較的低温で行なうことができるが、窒化
処理温度が475℃未満では雰囲気窒素とAl−Si合
金粉末との反応量が乏しく、窒化現象も十分進行しな
い。
【0042】逆に窒化処理温度が570℃を越えると、
Al−Siの共晶点578℃に近づき、合金が軟化変形
したり、組織が粗大化する。それゆえ、窒化を十分に進
行させて、組織の粗大化を抑えるためには、窒化処理温
度を475℃以上570℃以下としなければならない。
【0043】なお、窒化処理時における窒化開始温度は
合金組成により変化するものである。
【0044】窒化処理温度を上記の475℃以上570
℃以下とした場合には、窒化処理の時間は、2時間以上
8時間以下でなければならない。すなわち、475℃で
窒化処理を施す場合、窒化処理時間が2時間未満である
と4重量%の窒素含有量を有する窒素化合Al−Si粉
末合金が得られない。また、窒化処理温度が570℃の
場合、窒化処理時間が8時間を越えると、15重量%以
下の窒素含有量を有する窒素化合Al−Si粉末合金が
得られない。
【0045】当然のことながら、475℃では8時間以
上の窒化処理によっても所定の窒素含有量とすることが
可能である。また570℃では2時間以下でも所定の窒
素含有量を達することができる。ただし、475℃では
20時間を越える窒化処理を施すと、所定の窒素含有量
を得ることができなくなる。このように窒化処理温度と
処理時間とをコントロールすることにより所望の特性を
有する窒素化合Al−Si粉末合金を得ることができ
る。
【0046】[噴霧粉末のSi量と凝固速度]Alは2
3.5×10-6/℃と極めて大きい熱膨張率を有するた
め問題がある。しかし、一方でAlは2.7g/cm3
の小さい密度を有し、0.5cal/cm・sec・℃
と熱伝導率に優れる。このようにAlは密度および熱伝
導率の点で適しているが、他の金属元素と合金化させた
場合には、固溶や析出により熱伝導率が大きく低下して
しまう。
【0047】ところが、Siは熱伝導率が0.3cal
/cm・sec・℃以上はあり、Al中への固溶度が比
較的小さい。このため、AlにSiを添加した場合に
は、SiはAlマトリックス中にSi晶として晶出や析
出し、Siの含有量が増えてもAl−Siの熱伝導率の
低下が比較的小さい。また、Siは熱膨張率が4.2×
10-6/℃であり、Alに添加されることで複合則に近
似的に従って熱膨張率の低下を可能とする。
【0048】このようにSiは、熱膨張率の低下に効果
を有する元素である。ところが、Al合金溶湯にSiを
10重量%未満で含有させる場合では、Siの効果は小
さく、所望の特性に至らしめるに足りない。また、Al
合金溶湯にSiを50重量%を超えて含有させる場合に
は、Siの溶解や凝固のために噴霧が困難となってしま
う。それゆえ、Al合金溶湯に含有させるSiの望まし
い量は、10重量%以上50重量%以下である。
【0049】このAl合金溶湯へのSiの含有量が10
重量%以上50重量%以下であるため、窒化処理後の窒
素化合Al−Si粉末合金におけるSiの含有量はほぼ
8.5重量%以上48重量%以下に相当する。
【0050】Alマトリックス中に晶出あるいは析出す
るSi晶の大きさは凝固速度に大きく依存する。この凝
固速度が102 ℃/sec未満であると、晶出したSi
晶が粗大になり、成形性や被削性が低下してしまう。そ
れゆえ、望ましい凝固速度は102 ℃/sec以上であ
る。
【0051】なお、エアアトマイズの凝固速度は103
℃/sec程度であり、各種アトマイズ法の凝固速度は
102 ℃/sec以上である。また、凝固速度を103
℃/secとした場合には、初晶Siの粒径は最大40
μmとなる。
【0052】[成形体の真密度比]窒化反応の制御にお
いては成形体の密度管理は非常に重要である。特に雰囲
気窒素との窒化反応が成形体内で均質に進行するために
は、成形体の通気性が重要である。通気性を確保するた
めに成形体の真密度比は90%以下であることが必要で
ある。また、真密度比が50%未満では成形体の強度が
低くなってしまう。それゆえ、真密度比は50%以上9
0%以下であることが望ましい。
【0053】成形圧力としては6t/cm2 を越える
と、表層部の緻密化が進み通気性が低下する。このた
め、上記の成形体の真密度比を得るためには、成形圧力
は6t/cm2 以下であることが望ましい。
【0054】[焼結雰囲気]窒化処理時に粉末表面に窒
素化合物を生成させ、焼結現象の促進を図るためには、
主に窒素ガスで構成される雰囲気を形成する必要があ
る。そのためには、窒素分圧が0.95atm以上であ
ることが必要となる。
【0055】雰囲気の圧力は、加圧することでいくらか
の焼結促進が図られるが、経済性と設備の観点から常圧
でも十分である。
【0056】また雰囲気中の水蒸気分圧が高いと、粉末
表面のAl成分の酸化が進行し、窒化現象が阻害され
る。また水蒸気には、粉末表面に形成される窒素化合物
を分解する働きもある。それゆえ、粉末に吸着している
水分を焼結温度までの昇温過程で蒸発・分解してやるう
えでも、水蒸気分圧を低くする必要がある。よって、水
蒸気分圧は0.01atm以下に抑えることが必要であ
る。
【0057】[粉末粒度と比表面積]噴霧法により粉末
を製造する場合、粉末の粒径により凝固速度が異なって
くる。また、粉末同士の金属接触部分の頻度や窒素と反
応する表面積も粉末の粒径により大きく影響される。原
料粉末の最大粒径が74μmを超えたり、平均粒径が6
7μmを超えたり、比表面積が0.2m2 /gより小さ
くなると、窒化反応が遅くなり、窒素化合物の分布も不
均質になる。このため、原料粉末中に最大粒度が74μ
m以下、平均粒度が67μm以下で、比表面積が0.2
2 /g以上である粉末を準備する必要がある。
【0058】なお、ここで比表面積とは、単位重量当た
りの表面積をいう。 [鍛造]窒化した焼結体は内部に気孔を有しているため
熱伝導率や気密性が低い。そこで、さらに熱伝導率を高
めて気密性や強度を必要とする場合には、鍛造により固
化する方法がある。鍛造により得られる鍛造体の真密度
比が98%以上に達すると、熱伝導率や気密性は大いに
改善される。この真密度比を得るためには、焼結体を4
00℃以上に加熱して軟化させた後に、鍛造圧力4t/
cm2 以上で加圧固化する必要がある。この際に金型温
度が150℃未満であると焼結体の表層部の緻密化がで
きない。このため金型温度は150℃以上であることが
必要である。
【0059】[サイジング・コイニング]窒化した焼結
体は、内部に気孔を有している。それゆえサイジングや
コイニングを用いて表面粗度や寸法精度を大きく改善す
ることができる。この効果が出る矯正圧力は4t/cm
2 以上である。
【0060】[熱間押出・加工・表面処理]上記の工程
を経て得られた焼結体はそのままで、あるいはさらに加
工工程を経て実際に用いられる。AlNなどのセラミッ
クスを含有した材料は加工が困難である場合が多い。し
かし、本発明の窒素化合Al−Si粉末合金では、Al
Nが反応により生成しており、粒子が非常に微細である
ため、切削加工やねじ切りなども可能である。
【0061】また、窒化処理を行なった成形体を熱間押
出することによっても、所定の形状に成形することが可
能である。
【0062】このようにさらに加工した後に、必要に応
じて表面処理を施すこともできる。たとえば半導体基板
やパッケージとして用いるときには、ハンダやガラスと
の濡れ性を改善したり、絶縁性を確保する目的でAuや
Niなどの金属またはAl23 やAlNやSiO2
どの絶縁物の表面層を形成することができる。しかも、
本発明の窒素化合Al−Si粉末合金の材料ではAlが
ベースとなっているため、陽極酸化処理などによりAl
2 3 の表面層が、窒化処理によりAlNの表面層が十
分に必要な程度まで自然かつ容易に形成されるという利
点がある。
【0063】
【実施例】実施例1 図1は、本発明の実施例1に基づく製造方法を示すブロ
ック図である。図1を参照して、Siを41重量%、M
gを1重量%含有するAl−Si合金溶湯11をエアア
トマイズ法により、103 ℃/secの凝固速度で急冷
凝固(ステップ1)させて粉末化した。これにより得ら
れた急冷凝固Al−Si合金の噴霧粉末12を149〜
105μm(119μm)、105〜74μm(88μ
m)、74〜63μm(67μm)、63〜44μm
(52μm)、44μm(31μm)以下に篩粉した。
なお、( )内は平均粒径を示している。
【0064】ミリスチン酸のアセトン溶液を金型に塗布
し、成形圧力2〜10t/cm2 の範囲で各噴霧粉末1
2を真密度比65%、78%、85%、94%でφ20
×30mmのタブレット試験片(成形体13)に成形し
た(ステップ2)。この成形体13を、窒素分圧0.9
9atm以上、水蒸気分圧0.005atm以下の常圧
雰囲気中で560℃にて5時間窒化処理した(ステップ
3)。窒化処理体中の窒素量に及ぼす粒度および成形密
度の影響を図2に示す。
【0065】図2の結果より明らかなとおり、最大粒径
が74μm(平均粒径67μm)を越えると、窒素含有
量が各真密度比において4重量%未満となってしまう。
【0066】また、真密度比が90%を超えた場合、噴
霧粉末の粒径を小さくしても窒素含有量は4重量%に達
しない。
【0067】なお、真密度比50%以下の成形体は、金
型から取り出す際に欠けを生ずるなど形状を維持できな
かった。
【0068】なお、図2において、−は最大粒径を示
し、+は最小粒径を示している。次に、上記の最大粒径
44μm、平均粒径31μmの粉末を成形圧力2t/c
2 で真密度比65%に圧縮成形して成形体を得た。こ
の成形体を窒素分圧0.99atm以上、水蒸気分圧
0.005atm以下の常圧雰囲気中で560℃にて0
〜9時間窒化処理し、窒素含有量を変化させた。これら
の窒化処理体を500℃に加熱した後、金型温度を35
0℃にしたφ22mmの鍛造金型に挿入した。この後、
鍛造金型を用いて面圧6t/cm2 で窒化処理体を固化
し、真密度比98〜100%の鍛造体を作製した。この
鍛造体の窒素含有量と熱膨張率、熱伝導率、密度との関
係を図3、図4、図5に示す。
【0069】なお、熱膨張率については、押棒式測定法
により、20℃から200℃の平均値を求めた。また熱
伝導率はレーザーフラッシュ法により、密度はアリキメ
デス法により各々測定した。
【0070】図3を参照して、窒素含有量が4重量%未
満であると、熱膨張率が10×10-6/℃を超えてしま
う。
【0071】図4を参照して、窒素含有量が15重量%
を越えると、熱伝導率が0.2cal/cm・sec・
℃未満になってしまう。
【0072】図5を参照して、測定した窒素含有量で
は、いずれも鍛造体密度は3.0g/cm3 以下であっ
た。
【0073】上記図3、図4、図5より明らかなよう
に、窒素含有量が4重量%以上15重量%以下の場合に
目的の特性値を達成できることがわかる。
【0074】またX線回析強度の結果から、鍛造体に含
有される窒素の90重量%以上がAlNであることが判
明した。
【0075】また、これらの成形体を窒素分圧0.90
atm、水蒸気分圧0.05atm以上の常圧雰囲気し
たで540℃にて8時間窒化処理した。しかし、この場
合、窒化物の生成は認められなかった。
【0076】実施例2 Siを8重量%、11重量%、25重量%、38重量
%、45重量%、54重量%およびMgを1重量%含有
するAl−Si合金溶湯をエアアトマイズ法により粉末
化した。この粉末を最大粒径が74μm以下となるよう
に篩粉した。このようにして平均粒径が32μmである
Al−8重量%Si−1重量%Mg、Al−11重量%
Si−1重量%Mg、Al−25重量%Si−1重量%
Mg、Al−38重量%Si−1重量%Mg、Al−4
5重量%Si−1重量%Mgを各々用意した。
【0077】なお、Al−54重量%Si−1重量%M
gの溶湯は、エアアトマイズ時にノズル詰まりを生じ噴
霧が不可能であった。
【0078】ミリスチン酸のアセトン溶液を金型に塗布
し、成形圧力2〜2.5t/cm2で各粉末を圧縮成形
し、真密度比約70%のφ20×30mmのタブレット
試験片を作製した。成形体を窒素分圧0.99atm以
上、水蒸気分圧0.005atm以下の常圧雰囲気中で
540℃にて8時間窒化処理した。このようにして得ら
れた各窒化処理体を500℃に加熱した後、実施例1と
同様に、金型温度を350℃にしたφ22mmの鍛造金
型に挿入した。この後、鍛造金型を用いて面圧6t/c
2 で窒化処理体を固化し、真密度比98〜100%の
鍛造体を作製した。この鍛造体の密度、熱膨張率および
熱伝導率を以下の表に示す。
【0079】
【表1】
【0080】主に表の結果より、Al−8重量%Si−
1重量%Mg粉末を用いて作製した鍛造体の熱膨張率が
10×10-6/℃を超えていることがわかる。またAl
−54重量%Si−1重量%Mgの溶湯では噴霧が不可
能であった。このため所望の窒素含有量を有する窒化処
理体を得るためには、Al合金溶湯にSiが10重量%
以上50重量%以下で含有されていることが必要である
ことがわかる。
【0081】また、Al−38重量%Si−1重量%M
g粉末成形体の鍛造体に観察できる顕微鏡組織写真を図
6に示す。図6の組織写真において、黒色の部分がSi
であり、白色の部分がAlマトリックスであり、灰色の
部分がAlNである。さらに、この鍛造体のX線回析像
を図7に示す。
【0082】実施例3 Siを33重量%加え、以下の表に示す添加元素を添加
した組成に配合したAl−Si合金溶湯をエアアトマイ
ズ法により粉末化した。この粉末を最大粒径が74μm
以下となるように篩粉した。
【0083】ミリスチン酸のアセトン溶液を金型に塗布
し、成形圧力2〜2.5t/cm2で各粉末を圧縮成形
し、真密度比約70%のφ20×30mmのタブレット
試験片を作製した。この成形体を窒素分圧0.99at
m以上、水蒸気分圧0.005atm以下の常圧雰囲気
中で540℃にて8時間窒化処理した。このようにして
得られた各窒化処理体を500℃に加熱した後、実施例
1と同様に、金型温度を350℃にしたφ22mmの鍛
造金型に挿入した。この後、鍛造金型を用いて面圧6t
/cm2 で窒化処理体を固化し、真密度比98〜100
%の鍛造体を作製した。この鍛造体の密度、熱膨張率お
よび熱伝導率を以下の表に示す。
【0084】
【表2】
【0085】上記の表の結果より、何れの元素の添加に
よっても、窒化が促進されることが理解できる。中で
も、Li、Mg、Fe、Ni、Cuの添加やそれらの組
合わせにより窒化量が増加し、窒化速度が促進されてい
ることが理解できる。
【0086】また添加元素が10重量%以下であれば、
本発明の目的とする3.0g/cm3 以下の低密度0.
2cal/cm・sec・℃の高熱伝導率と5×10-6
〜10×10-6/℃の熱膨張率の特性が得られているこ
とがわかる。これに対して、添加元素が10重量%を越
えた場合には、上記特性を満たさなくなることがわか
る。
【0087】なお、表中の添加元素横の( )内の数値
は急冷凝固粉末中における各添加元素の重量%を示して
いる。
【0088】実施例4 実施例3で作製した粉末のうち最も窒化量の多いAl−
33重量%Si−2重量%Fe−2重量%Ni−1重量
%Mgの組成の粉末を最大粒径が74μm以下に篩粉
し、平均粒径32μmの合金粉末を得た。この粉末を成
形圧力2t/cm2 で圧縮成形し、真密度比66%、寸
法10×10×15mmの成形体を作製した。窒素分圧
0.99atm以上、水蒸気分圧0.005atm以下
の常圧雰囲気中において、450℃、470℃、501
℃、521℃、548℃、562℃、575℃にて成形
体に2〜20時間窒化処理を実施した。この窒化処理体
中の窒素量に及ぼす処理温度と処理時間の影響を図8に
示す。
【0089】図8を参照して、475℃未満で2時間窒
化処理を実施した場合、窒化処理体中の窒素含有量は4
重量%未満になってしまう。また、窒化処理温度が57
0℃を越えると、窒化処理中に成形体が軟化変形した。
また窒化処理温度570℃で8時間を超えて窒化処理を
実施した場合、窒化処理体中の窒素含有量は15重量%
を超えてしまう。
【0090】この実験結果より、窒化処理体中の窒素含
有量を所望の値にするためには、475℃以上570℃
以下の窒化処理温度で2時間以上8時間以下の処理時間
にする必要があることが判明した。また、20時間以下
の処理時間であれば、窒化処理温度を比較的低くすれば
所望の窒素含有量を有する窒化処理体を得ることができ
ることもわかる。
【0091】実施例5 実施例4と同様に、Al−33重量%Si−2重量%F
e−2重量%Ni−1重量%Mgの組成の粉末を最大粒
径が74μm以下となるように篩粉し、平均粒径32μ
mの合金粉末を得た。この粉末を成形圧力2t/cm2
で圧縮成形し、真密度比66%、寸法φ98×50mm
の成形体を作製した。窒素分圧0.99atm以上、水
蒸気分圧0.005atm以下の常圧雰囲気中におい
て、540℃において4時間、成形体に窒化処理を実施
し、窒素含有量を10.8重量%とした。その窒素量を
AlN量に換算すると、31.6重量%であった。
【0092】一方、上記の平均粒径が32μmであるA
l−33重量%Si−2重量%Fe−2重量%Ni−1
重量%Mgに市販の平均粒径0.8μmのAlN粉末を
31.6重量%混合した。この後、ミリスチン酸のアセ
トン溶液を金型に塗布し、成形圧力2.1t/cm2
各粉末を圧縮成形し、真密度比約70%のφ98×50
mmのタブレット試験片を作製した。
【0093】この窒化処理体とAlN粉末混合成形体を
それぞれ500℃に加熱した後、金型温度を350℃に
したφ100mmの鍛造金型に挿入した。この後、鍛造
金型を用いて面圧6t/cm2 で窒化処理体を固化し
た。これらの鍛造体の密度、熱伝導率、熱膨張率との関
係を以下の表に示す。
【0094】
【表3】
【0095】この表より、粉末AlNの添加により製造
した鍛造体では、熱間成形性が窒化処理体と比較して劣
り、密度が同一組成にかかわらず低下している。その結
果、熱伝導率が窒化処理体と比べて低下し、0.2ca
l/cm・sec・℃を下回っている。
【0096】さらに、それぞれについて切削加工を実施
した。窒化処理体は目的の形状まで切削加工が可能であ
ったが、粉末AlNを添加した鍛造体では、AlNの脱
落による欠けが発生し、切削加工は困難であった。明ら
かに本発明の鍛造体のほうが被削性に優れていることが
わかる。これは、AlNを反応により生成させたため粒
子が非常に微細で均一に分散しているからであると考え
られる。
【0097】また、この組成における窒化処理体では、
工具摩耗量が少ないことも判明した。これは、Si粒の
移動を妨げるFe、Niの添加に加え、Mgの添加によ
り窒化時間が短くなったためSiの粒成長が抑制された
効果と理解できる。
【0098】さらに、それぞれ鍛造体を□30×20×
5mmの形状に切断し、850℃において10分間加熱
した。粉末AlNを添加した鍛造体は、膨張および割れ
が起き、形状を全く維持できなかった。これに対し、窒
化処理体では全く変形は発生しなかった。これは、低融
点のAlを皮膜する形でAlNが生成するために耐熱性
が優れているからであると考えられる。
【0099】実施例6 本発明の窒素化合Al−Si粉末合金を、IC(Integr
ated Circuit)パッケージに用いた場合について説明す
る。
【0100】ここで用いた窒素化合Al−Si合金は、
実施例5において作製されたAl−33重量%Si−2
重量%Fe−2重量%Ni−1重量%Mgの組成のもの
である。この鍛造体を所望の形状に切削加工した。
【0101】図9と図10とは、本発明の窒素化合Al
−Si合金をICパッケージに用いた場合の構成を概略
的に示す断面図である。まず図9を参照して、ICパッ
ケージは、基板51と、ハンダ52と、半導体チップ5
3と、外囲板54と、引出端子55と、ボンディングワ
イヤ56とを有している。アルミナなどのセラミックス
からなる外囲板54の上面に基板51が装着されてい
る。基板51は、上述の方法により加工された鍛造体
に、陽極酸化処理が施されたものである。この基板51
の図中下側には、半導体チップ53がハンダ52を介在
して接合されている。この半導体チップ53のパッド部
(図示せず)にはボンディングワイヤ56の一方端が接
続されており、ボンディングワイヤ56の他方端は、外
囲板54上に形成された端子(図示せず)に接続されて
いる。この端子が、コバールワイヤよりなる引出端子5
5に電気的に接続されている。
【0102】次に図10を参照して、このICパッケー
ジは、図9に示すものと比較して、特に基板61、67
とが異なる。つまり外囲板64の上面に装着される基板
61は、冷却を促すためのフィン形状を有しており、ま
た上述の方法により加工された鍛造体よりなっている。
この基板61には、Niメッキが施されている。またこ
の基板61と半導体チップ63(ハンダ62)との間に
位置する基板67は、たとえば銅(Cu)−タングステ
ン(W)合金材よりなっている。基板61と基板67と
の接合において、これまでAlを含有した合金材では不
可能であったロウ付け(作業温度800℃)を用いた。
なお、これ以外の構成については図9に示すICパッケ
ージとほぼ同様であるためその説明は省略する。
【0103】図9と図10とに示すように本実施例で基
板51、61に用いられる材料は、半導体チップ63の
主材料であるシリコンや外囲板54、64の材料である
アルミナ(Al23 )との熱膨張係数の差が小さい。
このためICの実装工程において熱応力に基づく歪みを
生じ難い。また基板51、61は熱放散性が良好である
ため、このICパッケージは寿命が長く、かつ信頼性に
優れている。
【0104】実際に、この半導体素子に対して200℃
の温度で15分間の耐熱試験、および−60℃〜150
℃の温度範囲での100サイクルのヒートサイクル試験
を行なったが、異常動作が全く発生しないことが確認さ
れた。
【0105】なお、多数の冷却用のフィンを持つ図10
に示す基板61は、2.5t/cm2 で圧縮成形を行な
った後、窒素分圧0.99atm以上、水蒸気分圧0.
005atm以下の常圧雰囲気中で540℃にて4時間
窒化処理を施した窒化処理体を、アルミニウムからなる
容器に充填し、450℃の温度で熱間押出によって製造
することが可能であった。
【0106】
【発明の効果】以上より、窒素を4重量%以上15重量
%以下含有し、シリコンを8.5重量%以上48重量%
以下含有し、Li、Mg、Ti、V、Cr、Mn、F
e、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Wよ
りなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を9.6重
量%含有し、残部が実質的にAlと不可避な成分とから
なる窒素化合Al−Si粉末合金が、密度3.0g/c
3 以下、熱膨張率5×10-6〜10×10-6/℃、熱
伝導率0.2cal/cm・sec・℃以上の特性を満
足することが判明した。この窒素化合Al−Si粉末合
金を用いることにより、軽量で熱膨張率が低く、かつ熱
伝導率の高い、たとえばヒートシンクや半導体基板や放
熱基板やハウジングなどに適した材料を得ることができ
た。
【0107】またLi、Mg、Ti、V、Cr、Mn、
Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、W
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素を合
金粉末に添加したため、この合金粉末の成形体を窒化処
理して所望の窒素含有量を有する粉末合金を得るに際
し、この窒化処理を比較的低温および比較的短時間で行
なうことが可能となる。したがって、粉末合金の粒成長
を防止できるとともに、処理時間の短縮化を図ることが
可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に基づく製造工程を示すブロ
ック図である。
【図2】本発明の実施例1で得られた窒化処理体中の窒
素量に及ぼす粒度および成形密度の影響を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施例1で得られた鍛造体の熱膨張率
に及ぼす窒素含有量の影響を示す図である。
【図4】本発明の実施例1で得られた鍛造体の熱伝導率
に及ぼす窒素含有量の影響を示す図である。
【図5】本発明の実施例1で得られた鍛造体の密度に及
ぼす窒素含有量の影響を示す図である。
【図6】本発明の実施例2で得られたAl−38重量%
Si−1重量%Mg粉末成形体の鍛造体の顕微鏡組織写
真である。
【図7】本発明の実施例2で得られたAl−38重量%
Si−1重量%Mg粉末成形体の鍛造体のX線回析像を
示す図である。
【図8】本発明の実施例4で得られた窒化処理体中の窒
素量に及ぼす処理温度と処理時間との影響を示す図であ
る。
【図9】本発明の窒素化合Al−Si粉末合金が用いら
れたICパッケージの構成を概略的に示す断面図であ
る。
【図10】本発明の窒素化合Al−Si粉末合金が用い
られたICパッケージの構成を概略的に示す断面図であ
る。
【図11】各種材料の熱伝導率と熱膨張率との関係を示
す図である。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素を4重量%以上15重量%以下含有
    し、シリコンを8.5重量%以上48重量%以下含有
    し、Li、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、
    Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Wよりなる群か
    ら選ばれる少なくとも1種の添加元素を9.6重量%以
    下含有し、残部が実質的にアルミニウムと不可避な成分
    とからなることを特徴とする、窒素化合アルミニウム−
    シリコン粉末合金。
  2. 【請求項2】 窒素化合物を有し、前記窒素化合物の9
    0重量%以上がAlNよりなることを特徴とする、請求
    項1に記載の窒素化合アルミニウム−シリコン粉末合
    金。
  3. 【請求項3】 Li、Mg、Ti、V、Cr、Mn、F
    e、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Wよ
    りなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素とシリ
    コンとを含有するアルミニウム合金溶湯を凝固して急冷
    凝固アルミニウム合金粉末を形成する工程と、 前記急冷凝固アルミニウム合金粉末を圧縮成形して成形
    体を得る工程と、 前記成形体を窒素を含む雰囲気下で475℃以上570
    ℃以下の温度範囲で2時間以上8時間以下の間、焼結す
    る工程とを備えた、窒素化合アルミニウム−シリコン粉
    末合金の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記成形体を焼結する工程は、前記温度
    範囲で2時間以上20時間以下焼結することを特徴とす
    る、請求項3に記載の窒素化合アルミニウム−シリコン
    粉末合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金溶湯は、前記シリ
    コンを10重量%以上50重量%以下含有するように準
    備される、請求項3に記載の窒素化合アルミニウム−シ
    リコン粉末合金の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記アルミニウム合金溶湯は、前記添加
    元素を10重量%以下含有するように準備される、請求
    項3に記載の窒素化合アルミニウム−シリコン粉末合金
    の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記急冷凝固アルミニウム合金粉末を形
    成する工程は、前記アルミニウム合金溶湯を102 ℃/
    sec以上の凝固速度で凝固させる工程を含む、請求項
    3、5および6のいずれかに記載の窒素化合アルミニウ
    ム−シリコン粉末合金の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記圧縮成形する工程は、前記成形体を
    真密度比が50%以上90%以下となるように圧縮する
    工程を含む、請求項3、5、6および7のいずれかに記
    載の窒素化合アルミニウム−シリコン粉末合金の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記焼結する工程は、前記成形体を窒素
    分圧0.95atm以上の常圧雰囲気下で焼結する工程
    を含む、請求項3、5、6、7および8のいずれかに記
    載の窒素化合アルミニウム−シリコン粉末合金の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記常圧雰囲気は、水蒸気分圧0.0
    1atm以下である、請求項9に記載の窒素化合アルミ
    ニウム−シリコン粉末合金の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記急冷凝固アルミニウム合金粉末
    は、最大粒径74μm以下、平均粒径67μm以下、比
    表面積が0.2m2 /g以上であることを特徴とする、
    請求項3に記載の窒素化合アルミニウム−シリコン粉末
    合金の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記焼結の工程により得られた焼結体
    を、400℃以上に加熱して、金型温度150℃以上の
    鍛造金型により、鍛造圧力4t/cm2 以上で真密度比
    98%以上となるように成形固化して鍛造体を得る工程
    をさらに備える、請求項3に記載の窒素化合アルミニウ
    ム−シリコン粉末合金の製造方法。
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