JPH088284Y2 - エンジン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、エンジンに関するもので、詳しくは、エン
ジンの冷却装置に関する。

〔従来の技術〕

エンジンには、シリンダの外周に通路を設け、この通
路に潤滑油を圧送することによってシリンダブロックを
冷却するようにしたものがある。

上記通路は、通常、シリンダライナの外周面に凹溝を
形成することにより、これら凹溝とシリンダブロックの
ボア内周面との間に画成されている。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、上記のようなエンジンには、上述したシリ
ンダライナを常温状態下においてシリンダブロックのボ
アに圧入するものがある。

このような場合、上記エンジンにおいては、シリンダ
ライナの外周面に形成した凹溝の基端側開口周縁がシリ
ンダブロックのボア内周面に対してエッジとして作用す
ることになるため、圧入圧力の著しい増大を招来し、組
付作業の煩雑化を招来するばかりかシリンダライナに変
形等の損傷を来す虞れがある。

さらに、上記シリンダライナを無事にシリンダブロッ
クのボアに圧入した後においても、凹溝の基端側開口周
縁によって該ボア内周面に掻傷等の欠損部が発生する虞
れがあり、このような場合、潤滑油が通路の外部に漏出
し、該潤滑油の送給圧力が減少するため、冷却効果の著
しい低下を招来する要因となる。

本考案の目的は、上記事情に鑑みて、シリンダライナ
を常温状態下で圧入する場合に周溝の開口周縁がエッジ
として作用することに起因する圧入圧力の増大を防止す
るとともに、潤滑油の通路からの漏出に起因する冷却効
果の低下を防止することのできるエンジンを提供するこ
とにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係るエンジンでは、基端部外周にフランジを
有した筒状を成しており、外周面に互いに軸方向に離間
して配置された複数の周溝と、これら周溝の互いに並設
された部位間を連絡する縦溝とが形成されたシリンダラ
イナを常温状態下においてシリンダブロックのボアに圧
入し、これら溝と前記ボアの内周面とによってシリンダ
の外周に通路を画成するとともに、該通路をクランクケ
ースの内部に連通させ、シリンダヘッドに圧送された冷
却用潤滑油の一部を、この通路を介して前記クランクケ
ースに返却するようにしたエンジンにおいて、前記周溝
の先端側開口周縁に、前記ボアの内周面にエッジとして
作用するエッジ部を構成するとともに、前記周溝の基端
側開口周縁、および前記シリンダライナにおける外周面
と先端面との会合部に、それぞれ先端に向けて漸次内方
に傾斜する傾斜面を設けている。

〔作用〕

上記構成によれば、シリンダブロックのボアへの圧入
に際して、シリンダライナの名所に設けた傾斜面と該シ
リンダライナの外周面との間の鈍角となった周縁が当該
ボアの内周面に当接することになる。

〔実施例〕

以下、実施例を示す図面に基づいて本考案を詳細に説
明する。

第１図は、本考案に係るエンジンの要部を概念的に示
したもので、このエンジンに採用されるシリンダブロッ
ク１は、ボア２を有している。ボア２は、第２図に示す
ように、シリンダブロック１の上下両端面に開口する円
柱状の孔2aと、この孔2aの上端外周部に形成された環状
の凹所2bとから構成されている。

また、このシリンダブロック１は切欠３を有してい
る。切欠３は、上記孔2aの上端部から外方に向けて形成
され、かつシリンダブロック１の上面1aにおける凹所2b
の外方に位置する部位に開口しており、上記孔2aの内方
とシリンダブロック１の上方とを互いに連絡させてい
る。なお、この切欠３は、シリンダブロック１の鋳造成
形時に鋳型や中子等によって該シリンダブロック１と同
時に形成される。

さらに、上記シリンダブロック１は、第１図に示すよ
うに、オイル返却通路４を有している。オイル返却通路
４は、第３図に示すように、孔2aの下端部に形成され、
かつこの孔2aおよびシリンダブロック１の下面1bに開口
する溝部4aと、この溝部4aからシリンダブロック１の側
外方に向けて穿設され、かつ開口端部に盲栓４′を備え
た横孔部4bと、この横孔部4bから下方に向けて穿設さ
れ、かつシリンダブロック１の下面1bに開口する下降孔
部4cとから構成されている。

このシリンダブロック１には、第１図に示すように、
ボア２にシリンダライナ５が嵌着されている。シリンダ
ライナ５は、第２図に示すように、上端（図中の下方）
にフランジ5aを有する円筒状を成しており、この円筒状
部5bにおける上半部の外周面5cに複数本の凹溝6,6…を
有している。これら凹溝6,6…は、断面が矩形状の環状
を成し、互いに軸方向に等しい間隔をもって配置されて
おり、シリンダライナ５の軸方向に沿って刻設された縦
溝7,7…によって互いに連絡されている。図からも明ら
かなように、このシリンダライナ５では、円筒状部5bの
外周面5cと、凹溝6,6…の天面6a,6a…および円筒状部5b
の底面5bとが交わる部位にそれぞれ傾斜面8,8…が形成
されている。

傾斜面8,8…は、第１図に示すように、下方に向けて
漸次内方に傾斜し、凹溝6,6…の約1/2に至る広い幅を有
しており、シリンダライナ５における凹溝6,6…の開口
周縁の全周およびシリンダライナ５の底面5dの全周に亘
って形成されている。

一方、第４図に示すように、上記円筒状部5bの外周面
5cと、凹溝6,6…の下面6b,6b…とが交わる部位は、それ
ぞれがほぼ90°のままの状態に保持されており、エッジ
部6c,6c…を構成している。

また、このシリンダライナ５には、円筒状部5bの下端
部に潤滑用溝９が形成されている。潤滑用溝９は、シリ
ンダライナ５の軸方向に沿って設けられており、円筒状
部5bの外周面5cおよび円筒状部5bの底面5dに開口してい
る。なお、この潤滑用溝9aの天面と円筒状部5bの外周面
5cとの交わる部位にも傾斜面８が施されている。

このシリンダライナ５は、常温状態下でシリンダブロ
ック１のボア２に圧入され、円筒状部5bが孔2aに嵌着さ
れるとともに、フランジ5aが凹所2bに嵌着される。その
際、第４図に示すように、シリンダライナ５は、各所に
設けられた傾斜面8,8…と円筒状部5bの外周面5cとの間
の鈍角となった周縁が孔2aの内周面に当接しながらボア
２に圧入されるため、上記凹溝6,6…の基端側開口周縁
が当該孔2aの内周面に対してエッジとして作用すること
がなく、該孔2aの内周面に掻傷等を形成したり、シリン
ダライナ５のボア２への圧入圧力を増大させたりするこ
とはない。また、シリンダライナ５の傾斜面8,8…は、
外方に向けて上方に傾斜しているため、これら傾斜面8,
8…が孔2aの内周面に当接した場合にシリンダライナ５
はボア２の中心方向へ案内され、もってシリンダライナ
５は常にその軸心をボア２の軸心に合致させた状態でボ
ア２へ圧入されていく。

この状態におけるシリンダブロック１では、第１図に
示すように、シリンダライナ５の凹溝6,6…および縦溝
7,7…とボア２の孔2aとによってシリンダ10の全周を巡
るオイル通路11が画成されるとともに、シリンダライナ
５のフランジ5aとシリンダブロック１の切欠３とによっ
て上記オイル通路11をシリンダブロック１の上面1aに開
口させる接続通路12が画成される。また、この時シリン
ダライナ５の潤滑用溝９は、オイル返却通路４の溝部4a
の延長上に位置されている。

上記のように構成されたシリンダブロック１には、そ
の上面1aにガスケット13を介してシリンダヘッド14が取
り付けられる。

このシリンダヘッド14は、図に明示していないが、中
央部上方に１本のカムシャフトを備え、このカムシャフ
トのカムによって作動されるインンレットバルブ15およ
びエキゾーストバルブ16をそれぞれ２本ずつ備えてい
る。

また、このシリンダヘッド14は、その上面に凹部17を
有している。凹部17は、燃焼室18に対応する部位におけ
る上記インレットバルブ15,15とエキゾーストバルブ16,
16との間に形成されており、その開口は蓋体19によって
密閉されている。蓋体19は、断面が略Ｕ字状を成してお
り、凹部17内に立設された柱状部20にボルト21を締結す
ることによってシリンダヘッド14に固定されている。

この蓋体19にはパイプ22が嵌着されている。パイプ22
は、上下方向に向けて配置され、上記凹部17の内部と外
部とを連通させており、その上端はシリンダヘッドカバ
ー23のオイル供給通路24に接続されている。

さらに、上記シリンダヘッド14は、オイル排出通路25
を有している。オイル排出通路25は、それぞれのエキゾ
ーストバルブ16,16によって開閉される１対のエキゾー
ストポート26,26間に配設されており、その一端は上記
凹部17の底部に開口し、かつその他端はシリンダヘッド
14の底面における上記シリンダブロック１の接続通路12
の開口に対応する部位に開口している。なお、このシリ
ンダヘッド14とシリンダブロック１との間に介装される
ガスケット13には、シリンダ10に対応する部位およびオ
イル排出通路25の開口に対応する部位にそれぞれ切欠13
a,13bが形成されている。

一方、上記シリンダブロック１には、その下面1bにガ
スケット26を介してクランクケース27が取り付けられ
る。

このガスケット26は、金属で成形されており、第３図
に示すように、シリンダブロック１の孔2aに対応する部
位、下降孔部4cの開口に対応する部位および溝部4aの開
口に対応する部位にそれぞれ切欠26a,26bおよび26cを有
している。

また、ガスケット26は舌片28を有している。舌片28
は、略Ｌ字状を成しており、ガスケット26の下面におけ
る上記切欠26cの周縁部外方に位置する部位から下方に
延設され、かつその先端の屈折した部位は上記切欠26a
の中心に向けて延設されている。なお、この舌片28は、
上記ガスケット26と一体に成形されている。

第１図に示すように、クランクケース27は、上記ガス
ケット26の切欠26aおよび26bに対応する部位にそれぞれ
連通孔27aおよび27bを有しており、連通孔27aにはシリ
ンダライナ５の下端部が嵌入され、かつ連通孔27bを介
してシリンダブロック１の下降孔部4cとクランクケース
27の内部とが互いに連絡される。

また、上記クランクケース27は、上記連通孔27aに開
口する潤滑用切欠27cを有している。この切欠27cは、ク
ランクシャフト29におけるコンロッド30との連結部29a
の移動域の上方に対応する部位に形成されており、その
内部には上記ガスケット26の舌片28が占位されている。
この状態における舌片28は、先端がシリンダライナ５に
おける潤滑用溝９に対向設置されており、シリンダブロ
ック１の溝部4a、クランクケース27の潤滑用切欠27cを
介して上記潤滑用溝９とシリンダライナ５における最下
段の凹溝６とを互いに連絡させている。

さらに、上記クランクケース27は、その内部に２つの
オイルポンプ31,32を備えている。一方のオイルポンプ3
1は、図示せぬパイプ等の管路を介してオイルクーラー3
3に連結され、他方のオイルポンプ32は、図示せぬパイ
プ等の管路を介して上記シリンダヘッドカバー23のオイ
ル供給通路24と、クランクシャフト29内の図示せぬオイ
ルギャラリーとにそれぞれ分岐連絡されている。

今、エンジンが始動されると、上記２つのオイルポン
プ31,32が駆動され、オイルパン34内に貯留された潤滑
油Ｏがそれぞれストレーナ35,36を介して吸引される。
なお、上記オイルポンプ32からは、毎分10lの潤滑油が
吸引される。

オイルポンプ31から吸引された潤滑油Ｏは、オイルク
ーラー33で冷却され、再びオイルパン34へ返却される
（矢印ａ）。

オイルポンプ32から吸引された潤滑油Ｏは、図示せぬ
管路内を圧送され、クランクシャフト29の図示せぬオイ
ルギャラリー（矢印ｂ）と、オイル供給通路24およびパ
イプ22を介してシリンダヘッド14の凹部17（矢印ｃ）と
に供給される。

クランクシャフト29に圧送された潤滑油Ｏは、コンロ
ッド30との連結部29aや軸受部のベアリング（図示せ
ず）等に供給され、これらの部位を潤滑した後に滴下し
てオイルパン34へ返却される。

一方、シリンダヘッド14の凹部117へ圧送された潤滑
油Ｏは、この凹部17内においてシリンダヘッド14におけ
る燃焼室18の周囲、インレッドバルブ15,15の周囲およ
びエキゾーストバルブ16,16の周囲の熱を吸収し、これ
ら各部の冷却を行った後にオイル排出通路25へ圧送され
る。

オイル排出通路25へ圧送された潤滑油Ｏは、この通路
25内においてシリンダヘッド14におけるエキゾーストポ
ート26,26の周囲の熱を吸収し、ガスケット13の切欠13b
および接続通路12を介してシリンダブロック１のオイル
通路11へ圧送される。

オイル通路11内の潤滑油Ｏは、凹溝６および縦溝７に
沿ってシリンダ10の外周全域に導かれ、シリンダブロッ
ク１におけるシリンダ10の周囲の熱を吸収する。この
時、シリンダライナ５の溝6,6…および7,7…は、孔2aの
内周面によって密閉されているため、潤滑油Ｏのオイル
通路11からの漏出および送給圧力の低下が招来されるこ
とはない。また、傾斜面8,8…の作用によってシリンダ
ライナ５の強度低下を可及的に抑えつつ該シリンダライ
ナ５と潤滑油Ｏとの接触面積を大きく取ることができる
ため、シリンダ10の周囲の熱が効率よく吸収されること
になる。

オイル通路11内の潤滑油Ｏが、シリンダライナ５にお
ける最下段の凹溝６に圧送されると、この潤滑油Ｏはシ
リンダブロック１の溝部4aを介して２股に分岐される。

一方の潤滑油Ｏは、横孔部4bおよび下降孔部4cを順次
案内され、ガスケット26の切欠26bおよびクランクケー
ス27の連通孔27bを介してオイルパン34へ返却される
（矢印ｄ）。

もう一方の潤滑油Ｏは、クランクケース27の潤滑用切
欠27cおよび舌片28を介してシリンダライナ５の潤滑用
溝９へ案内され、さらにこの溝９に沿って下方へ案内さ
れ、クランクシャフト29におけるコンロッド30との連結
部29aに滴下される（矢印ｅ）。

連結部29aに滴下された潤滑油Ｏは、この連結部29aの
潤滑を行い、しかる後低下してオイルパン34に返却され
る。

これらの動作の間、シリンダブロック１のボア２に注
入されたシリンダライナ５は、その内部をピストン40が
往復移動することにより、常に上下方向に力が加えられ
る。

しかしながら、上記エンジンにおいては、フランジ5a
によってシリンダライナ５のシリンダブロック１に対す
る下方へ移動が阻止されるとともに、各凹溝6,6…の一
方の周縁に構成されたエッジ部6c,6c…が孔2aの内周面
に対してそれぞれエッジとして作用することにより、シ
リンダライナ５のシリンダブロック１に対する上方への
移動が阻止されることになる。

したがって、シリンダライナ５とシリンダブロック１
との相対移動に伴う両者間の摩耗が防止され、当該摩耗
に起因する潤滑油Ｏのオイル通路11からの漏出および送
送圧力の低下が招来されることもない。

なお、上記実施例では、凹溝６における基端側開口周
縁にのみ傾斜面８を設けるようにしているが、凹溝６の
天面全体を傾斜面として構成しても構わない。

〔考案の効果〕

上記したように、本考案に係るエンジンによれば、シ
リンダブロックのボアへの圧入に際して、シリンダライ
ナの各所に設けた傾斜面と該シリンダライナの外周面と
の間の鈍角となった周縁が当該ボアの内周面に当接する
ことになるため、該周溝の基端側開口周縁がシリンダブ
ロックのボア内周面に対してエッジとして作用すること
がなく、圧入圧力の増大が防止され、組付作業の煩雑化
やシリンダライナの変形を防止することができる。

しかも、シリンダブロックにシリンダライナを圧入し
た後においても、上記傾斜面の作用によってボア内周面
に掻傷等の欠損部が発生する虞れがなく、さらには、フ
ランジおよびエッジ部の作用によってピストンの往復移
動に伴うシリンダブロックおよびシリンダライナ両者の
相対移動が阻止され、両者間に摩耗が発生しないため、
潤滑油の通路からの漏出に起因する冷却効果の低下を可
及的に防止することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に係るエンジンの要部を概念的に示し
た断面図、第２図は、本考案に係るエンジンに適用され
るシリンダブロックおよびシリンダライナを概念的に示
した分解斜視図、第３図は、本考案に係るエンジンに適
用されるシリンダブロックおよびガスケットを概念的に
示した分解斜視図、第４図は、本考案に係るエンジンに
適用されるシリンダライナのシリンダブロックへの組付
状態を概念的に示した要部断面図である。 １……シリンダブロック、２……ボア、５……シリンダ
ライナ、5a……フランジ、６……凹溝、6c……エッジ
部、７……縦溝、８……傾斜面、11……オイル通路、14
……シリンダヘッド、27……クランクケース、Ｏ……潤
滑油。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】基端部外周にフランジを有した筒状を成し
   ており、外周面に互いに軸方向に離間して配置された複
   数の周溝と、これら周溝の互いに並設された部位間を連
   絡する縦溝とが形成されたシリンダライナを常温状態下
   においてシリンダブロックのボアに圧入し、これら溝と
   前記ボアの内周面とによってシリンダの外周に通路を画
   成するとともに、該通路をクランクケースの内部に連通
   させ、シリンダヘッドに圧送された冷却用潤滑油の一部
   を、この通路を介して前記クランクケースに返却するよ
   うにしたエンジンにおいて、 前記周溝の先端側開口周縁に、前記ボアの内周面にエッ
   ジとして作用するエッジ部を構成するとともに、前記周
   溝の基端側開口周縁、および前記シリンダライナにおけ
   る外周面と先端面との会合部に、それぞれ先端に向けて
   漸次内方に傾斜する傾斜面を設けたことを特徴とするエ
   ンジン。