JPH087267B2 - 飾り回転振り子時計の回動ムーブメント - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、飾り回転振り子を回動
させる回動手段を有する飾り回転振り子時計の回動ムー
ブメントに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、装飾品を兼ねた置き時計など
には回転方向を規則的、且つ、継続的に換えて回転する
装り回転振り子を設けたものがある。この飾り回転振り
子の回転方向を規則的、且つ、継続的に換えるための回
動手段として、回動ム―ブメントが提案されている。

【０００３】例えば、回動手段である回動ムーブメント
としては飾り回転振り子を吊設し、直線状に形成された
細径のワイヤスプリングの中途に突出部材を固定する一
方、この突出部材を回転部材にて所定時間毎に付勢し
て、前記ワイヤスプリングにト―ションを発生させるこ
とにより継続的に回動するようにしたものがある。しか
し、この回動ムーブメントでは組立て時に細径のワイヤ
スプリングで振り子を吊設する必要があり、このとき前
記ワイヤスプリングが屈曲されやすく、組立て工程が煩
雑にならざるを得なかった。

【０００４】このため、飾り回転振り子を係合する回動
軸を軸受に支承し、スパイラルスプリングの一端をこの
回動軸に固定すると共に、前記回動軸にマグネットを有
する回動板を設け、このマグネットに磁場を有する付勢
部を対設させるようにした技術が近年実施されている。

【０００５】この技術によれば、前記付勢部の有する磁
場の磁力によってマグネットに付勢力を与え、回動板を
備えた回転軸が所定角度回動されたとき、この付勢力が
遮断されると共に、回動によって撓められたスパイラル
スプリングの付勢力によって、前記回動軸を反対方向へ
回転されるようになっている。このとき、前記付勢部の
磁力が常に、回転方向と同方向へ作用されることによ
り、前記回動軸に係合されている飾り回転振り子が継続
的に回動されるようになっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先行技
術によると回動板に設けるマグネットと付勢部との位置
決めやスパイラルスプリングの組付け位置の調整が極め
て煩雑であると共に、部品点数が増加することによって
組付けの際の工数が増加し、コスト高騰の要因となって
いた。

【０００７】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、部品点数を増やすことなく、組み立てが容易で、飾
り回転振り子を確実に回動させる飾り回転振り子時計の
回動ムーブメントを提供することを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明による飾り回転振
り子時計の回動ムーブメントは、時刻表示のための時針
を取り付ける時針パイプと、時刻表示のための分針を取
り付ける分針パイプと、時刻表示のための秒針を取り付
ける秒針軸と、飾り回転振り子を回動させる回動手段と
を備えた飾り回転振り子時計の回動ムーブメントであっ
て、前記飾り回転振り子を回動させる回動手段が、前記
時針パイプ及び分針パイプ及び秒針軸及び回動手段を同
時に駆動する一つのステッピングモータと、飾り回転振
り子の一端部に設けた第１歯車と、この第１歯車に噛合
する回動自在な第２歯車と、この第２歯車に噛合し前記
第２歯車の回転方向を変換する第３歯車を有し、固定軸
を中心に回動自在な弾性部材で形成された回転方向変換
部材と、この回転方向変換部材の移動方向を切り替える
偏心カムを設けた第４歯車と、前記時針パイプ及び分針
パイプ及び秒針軸に同軸で第４歯車に噛合する第５歯車
とを具備する。

【０００９】そして、前記回転方向変換部材は、取付け
板に回動自在に固定される固定部と、この固定部から延
出し前記第２歯車に噛合する第３歯車を先端部に形成し
た第１の腕部と、前記固定部から第１の腕部とは所定の
角度を形成して延出され第４歯車に設けた偏心カムに当
接する切り換え接点部を先端部に形成した第２の腕部と
を一体で形成され、飾り回転振り子に設けた第１歯車と
飾り回転振り子を回動させる第２歯車とが着脱自在であ
る。

【００１０】

【作用】この構成で、まず、ステッピングモータが駆動
することによって第５歯車が回転する。この第５歯車の
回転は第４歯車に伝達される。次に、第４歯車が回転す
ることによってこの第４歯車に設けられている偏心カム
が移動を開始する。すると、この偏心カムに当接してい
る回転方向変換部材の第２の腕部の先端部に形成した切
り換え接点部が偏心カムの移動に対応し第２の腕部が固
定軸を中心に回転移動する。次いで、この第２の腕部の
回転移動に対応して第１の腕部が同様に回転移動するの
で、この第１の腕部の先端部に形成した第３歯車が第２
歯車を回転させる。そして、この第２歯車に噛合する第
１歯車を回転させて飾り回転振り子を一方向に回転させ
る。

【００１１】一方、第４歯車に設けられている偏心カム
が回転を続けて思案点を通過すると、偏心カムに当接し
ている切り換え接点部の移動方向が逆方向となる。この
ことにより、第２の腕部が逆方向に回転移動を開始する
が、飾り回転振り子に働いている慣性力と腕の撓みとに
よって飾り回転振り子の回転が徐々に制動され、第１の
腕部が滑らかに逆方向に回転移動を開始するに伴い、第
３歯車の回転方向が逆方向となり、第２歯車及び第１歯
車の回転も逆回転となって飾り回転振り子を反対方向に
回転させる。

【００１２】

【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。図１及び図２は本発明の一実施例に係り、
図１は飾り回転振り子時計の回動ムーブメントの概略構
成図、図２は回転方向変換部材の概略構成を示す説明
図、図３は振り子回転軸と振り子上端軸受けとの接続を
説明する一部断面図である。

【００１３】図１に示すように飾り回転振り子１（以下
振り子１と略記）を備えた飾り回転振り子時計１０は、
時刻表示部２と、駆動部３と、回動手段である飾り回転
振り子の回動ムーブメント（以下回動ムーブメントと略
記）４とから構成されている。

【００１４】時刻表示部２には時針パイプ２１の先端部
に固定された時針２１ａと、分針パイプ２２の先端部に
固定された分針２２ａ及び秒針軸２３の先端部に固定さ
れた秒針２３ａが配設されている。

【００１５】駆動部３には１つのステッピングモータ３
１が配設されており、秒針２３ａ、分針２２ａ、時針２
１ａ及び後述する回動ムーブメント４が複数の歯車で形
成した歯車列３２を介して同時に駆動するように構成さ
れている。

【００１６】振り子１の回動手段である回動ムーブメン
ト４は、前記ステッピングモータ３１の駆動力を回動手
段に伝達する第５歯車４５と、この第５歯車４５と噛合
する偏心カム４４ａを設けた第４歯車４４と、この第４
歯車４４に設けた偏心カム４４ａに当接する当接部を備
え偏心カム４４ａの移動に対応して回転方向が切り換わ
る後述する回転方向変換部材５０と、この回転方向変換
部材５０によって回転方向の切り換えが可能である回動
自在な第２歯車４２と、この第２歯車４２の回転方向に
対応して前記振り子１を回動させる振り子１の一端部に
設けた第１歯車４１とから構成されている。

【００１７】そして、図３に示すように飾り部１ａを有
する振り子１は、取付け板６０に固定されている振り子
回転軸６１に振り子上端軸受け１ｂを挿通する一方、振
り子軸受け６２に振り子下端軸受け１ｃが支持されてい
る。

【００１８】なお、前記偏心カム４４ａが回転移動する
ことによって、この偏心カム４４ａに当接する当接部が
矢印ａ側及び矢印ｂ側（図２参照）に往復運動を行うよ
うになっている。

【００１９】ここで、図２を参照して回転方向変換部材
５０を説明する。図に示すように回転方向変換部材５０
は、前記図１に示した取付け板６０に設けた固定軸６３
に回動自在に固定される固定部５３と、この固定部５３
から所定の角度αで延出する二つの腕部５１，５２とを
備え、弾性を有する合成樹脂で一体的に形成されてい
る。前記第１の腕部５１の先端部には第２歯車４２に噛
合する第３歯車４３として扇歯車４３ａが形成されてお
り、第２の腕部５２の先端部には前記第４歯車４４に設
けた偏心カム４４ａを挟持するように形成した切り換え
接点部５２ａが当接している。

【００２０】上述のように構成されている回動ムーブメ
ント４の作用を図１及び図２を参照して説明する。ま
ず、ステッピングモータ３１の駆動力が歯車列３２に伝
達されることによって、軸２５に固定されている、時針
パイプ２１の後端部に設けられた時針用歯車２１ｂ、分
針パイプ２２の後端部に設けられた分針用歯車２２ｂ、
秒針軸２３の後端部に設けられた秒針用歯車２３ｂ及び
回動ムーブメント用の第５歯車４５がそれぞれ回転する
ようになっている。

【００２１】次に、前記第５歯車４５の回転は、この第
５歯車４５に噛合している第４歯車４４に伝達される。
このとき、第４歯車４４は時計方向に回転しており、第
４歯車４４に設けられている偏心カム４４ａも同方向に
移動をしている。このとき、偏心カム４４ａの移動に対
応してこの偏心カム４４ａに当接している回転方向変換
部材５０の第２の腕部５２の先端部に形成した切り換え
接点部５２ａが固定軸を中心に矢印ａ側に回転移動す
る。このため、固定部５３から延出している第１の腕部
５１が第２の腕部５２の回転移動に伴って矢印ｃ側に回
転移動する。

【００２２】次いで、前記第１の腕部５１の先端部に形
成されている扇歯車４３ａに噛合している第２歯車４２
が反時計方向に回転することによって、この第２歯車４
２に噛合している振り子１に設けた第１歯車４１を矢印
ｅ方向に移動させて振り子１を同様に矢印ｅ方向に回転
させる。

【００２３】一方、第４歯車４４に設けた偏心カム４４
ａが回転移動を続けて思案点を通過すると、偏心カム４
４ａの当接面が切り換え接点部内の他の内面側に変化
し、第２の腕部５２の固定軸６３に対する回転移動の方
向が逆方向、すなわち矢印ａ側から矢印ｂ側に変化す
る。

【００２４】しかし、上述のように第２の腕部５２の固
定軸６３に対する回転移動の方向が逆方向になっても、
振り子１には矢印ｅ方向への慣性力が働いているので、
前記第２の腕部５２が逆方向に回転移動の方向を切換え
たと同時に、第１の腕部５１の回転移動の方向を矢印ｃ
側から矢印ｄ側に切換えること無く、しばらくの間、弾
性材料で形成した第１の腕部５１を慣性力によって撓ま
せて、矢印ｃ側に回転移動させてから停止する。このと
き、固定部５３から延出している第１の腕部５１と第２
の腕部５２との角度αは、両腕部にかかる回転移動を停
止させるように働く撓み力（制動力）によって変化し、
第１の腕部５１を停止させるまでは慣性力に対する制動
力として働らく一方、停止後は、逆方向への回転を促す
起動力として第１の腕部５１に作用する。

【００２５】すなわち、弾性を有する第１の腕部５１と
第２の腕部５２との角度αを変化させた撓みよって発生
するトルクによって、第１の腕部５１の回転移動の方向
を滑らかに矢印ｄ側に切換え、その後は第２の腕部５２
の矢印ｂ側への回転移動に従って、第１の腕部５１を矢
印ｄ側に回転移動させていく。そして、第１の腕部５１
の回転移動の方向の変化に伴い、第１の腕部５１の先端
部に設けた扇歯車４３に噛合している第２歯車４２の回
転方向が時計方向に切換わることによって、この第２歯
車４２に噛合している振り子１の第１歯車４１が前記第
２の歯車４２に対応して回転することにより、振り子１
の回転移動の方向が矢印ｅ方向から矢印ｆ方向に切り換
わる。

【００２６】このように、飾り回転振り子の回動手段で
ある回動ムーブメントを複数の歯車及び回転方向変換部
材で構成することにより、飾り回転振り子の回動運動を
機械的に確実に行うことができる。

【００２７】また、第１の腕部及び第２の腕部を備えた
回転方向変換部材を弾性を有する樹脂部材で一体的に形
成したことにより、ステッピングモータの間欠運動を滑
らかな回転往復運動に容易に変換することができると共
に、部品点数を削減することができ、回動ムーブメント
の組立作業性が大幅に向上される。

【００２８】さらに、回動ムーブメントに対する飾り回
転振り子の着脱が自在であると共に、着脱が容易である
ことから最終製品である飾り回転振り子時計生産の工数
を激減させることができる。

【００２９】なお、前記偏心カムの形状及び偏心カムに
当接する当接部を有する回転方向変換部材の構成は前記
図２のに示した材質，形状及び偏心量に限定されるもの
ではなく、第１の腕部と第２の腕部とで形成される角度
α，第１の腕部の長さＬ及び第２の腕部の腕の長さｌ，
偏心カムの形状，偏心カムに当接する当接部の形状，各
歯車の歯数などを自由に設定することによって振り子の
動きを容易、且つ、自在に設定することが可能となる。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、部
品点数を増やすことなく、組み立てが容易で、飾り回転
振り子を確実に回動させる飾り回転振り子時計の回動ム
ーブメントを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１及び図２は本発明の一実施例に係り、図１
は飾り回転振り子時計の回動ムーブメントの概略構成図

【図２】回転方向変換部材の概略構成を示す説明図

【図３】振り子回転軸と振り子上端軸受けとの接続を説
明する一部断面図

【符号の説明】

１…飾り回転振り子 ４…回動ムーブメント １０…飾り回転振り子時計 ３１…ステッピングモータ ４１…第１歯車 ４２…第２歯車 ４３…第３歯車（扇歯車） ４４…第４歯車 ４４ａ…偏心カム ４５…第５歯車 ５０…回転方向変換部材 ５１…第１の腕部 ５２…第２の腕部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 時刻表示のための時針を取り付ける時針
   パイプと、時刻表示のための分針を取り付ける分針パイ
   プと、時刻表示のための秒針を取り付ける秒針軸と、飾
   り回転振り子を回動させる回動手段とを備えた飾り回転
   振り子時計の回動ムーブメントにおいて、 前記飾り回転振り子を回動させる回動手段が、前記時針
   パイプ及び分針パイプ及び秒針軸及び回動手段を複数の
   歯車からなる歯車列を介して同時に駆動する一つのステ
   ッピングモータと、 飾り回転振り子の一端部に設けた第１歯車と、 この第１歯車に噛合する回動自在な第２歯車と、 この第２歯車に噛合し前記第２歯車の回転方向を変換す
   る第３歯車を有し、固定軸を中心に回動自在な弾性部材
   で形成された回転方向変換部材と、 この回転方向変換部材の移動方向を切り替える偏心カム
   を設けた第４歯車と、 前記時針パイプ及び分針パイプ及び秒針軸に同軸で第４
   歯車に噛合する第５歯車と、 を具備することを特徴とする飾り回転振り子時計の回動
   ムーブメント。
2. 【請求項２】 前記回転方向変換部材は、取付け板に回
   動自在に固定される固定部と、この固定部から延出し前
   記第２歯車に噛合する第３歯車を先端部に形成した第１
   の腕部と、前記固定部から第１の腕部とは所定の角度を
   形成して延出され第４歯車に設けた偏心カムに当接する
   切り換え接点部を先端部に形成した第２の腕部とを一体
   で形成することを特徴とする請求項１記載の飾り回転振
   り子時計の回動ムーブメント。
3. 【請求項３】 前記飾り回転振り子に設けた第１歯車と
   飾り回転振り子を回動させる第２歯車とが着脱自在であ
   ることを特徴とする請求項１記載の飾り回転振り子時計
   の回動ムーブメント。