JPH0867628A - 肝再生用治療剤 - Google Patents

肝再生用治療剤

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JPH0867628A
JPH0867628A JP7157740A JP15774095A JPH0867628A JP H0867628 A JPH0867628 A JP H0867628A JP 7157740 A JP7157740 A JP 7157740A JP 15774095 A JP15774095 A JP 15774095A JP H0867628 A JPH0867628 A JP H0867628A
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哲郎 西平
Hideyuki Doi
秀之 土井
Hiromichi Komatsu
博道 小松
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 肝炎、脂肪肝および薬剤性肝障害における肝
障害に対し、肝再生を促し、正常な肝機能を回復させ、
胆嚢癌、肝癌、転移性肝癌等により肝切除を施行した患
者に、早期に肝再生を誘導し、速やかに術後回復を可能
にする肝再生治療剤を提供すること。 【構成】 バリンを有効成分として含有することを特徴
とする肝再生治療剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は分岐鎖状アミノ酸である
バリンを有効成分として含有することを特徴とする肝再
生治療剤、詳しくは、肝障害・肝炎・肝硬変等により、
肝臓を切除した後等の肝細胞を再生させる作用を有する
バリン含有製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、肝細胞再生作用を有する因子
や薬剤は知られている。例えば、Archive of
Pathology,16,226−231(199
3)には、肝の部分切除後に1%重量の甲状腺乾燥粉末
を含んだ食餌を与え続けると、肝の部分切除後7日目か
ら肝の重量が対照と比べて有意に増加することが記載さ
れている。
【0003】また、Journal Biologic
al of Chemistry,247,1757−
1766(1972)には、トリヨードチロニン(T
3)、アミノ酸混液、グルカゴン、ヘパリンの混合液で
肝臓にDNA合成がおこると報告されている。
【0004】さらに成熟ラット初代培養肝細胞の増殖因
子として、70%部分肝切除後24時間のラット血清よ
り精製され、HGF(Hepatocyte Grow
thFactor)あるいはヘパトトロピン(Hepa
totropin)と命名されたことがBiochem
ical and Biophysical Rese
arch Communications,122,1
450−1459(1984)に記載されている。
【0005】また、インスリンとグルカゴンが肝再生に
重要な因子であることが、Advances in E
nzyme Regulation,13,281−2
93(1975)に記載され、わが国では沖田等がGa
stroenterologia Japan.,1
4,453(1979)で劇症肝炎にインスリン・グル
カゴン療法を応用して以来、臨床例に汎用されている。
【0006】他方、分岐鎖アミノ酸であるバリン、イソ
ロイシン、ロイシンによる肝性脳症や敗血症性脳症の改
善あるいは侵襲時の蛋白節約効果が報告され、アミノ酸
液としてヘパトアミン(登録商標)、ヘパン(登録商
標)、アミノレバン(登録商標)、アミパレン(登録商
標)、アミゼート(登録商標)およびアミニック(登録
商標)が市販されている。しかしながら、バリンが肝細
胞再生作用を有することは全く知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】近年、肝細胞増殖因子
(HGF)は、ラットおよびヒトより精製され、cDN
Aのクローニングにも成功し、初代培養肝細胞増殖作
用、肝障害に伴う血中HGF活性の上昇やHGFmRN
Aの発現誘導の結果等から将来臨床応用されることが期
待されるが、実用化には至っていない。
【0008】現在、日本で肝再生効果を有するとされる
唯一の治療はグルカゴン・インスリン療法(GI療法)
である。しかしながら、欧米においてこのGI療法はい
まだその有効性が認められるまでには至っていない。
【0009】本発明は軽度から重度の肝障害を伴う肝疾
患に対し、安全で肝再生効果の強い薬剤を提供すること
を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成するため、ラットを用いた実験により、通常用い
られている高カロリー輸液にバリンを添加し、バリン濃
度を増加させ、それに伴う肝再生重量を測定し、病理組
織学的検索等について、詳細に検討した。その結果、バ
リンが顕著に肝再生を起こすことを見出し、本発明を完
成した。
【0011】本発明で用いられるバリンは市販品、合成
品、その他製法に関係なく使用されうる。またD体、L
体およびDL体のいずれも使用可能である。
【0012】本発明で用いられるバリンを肝再生治療剤
として使用する場合は、通常、静脈内投与で行うのが好
ましいが、他に経口投与、経腸投与等でも可能である。
また、本発明で用いるバリンはこれのみを含む製剤とし
て単独で用いることもできるが、好ましくは高カロリー
輸液剤のような輸液製剤と併用して用いるか若しくは輸
液製剤に添加して用いるのがよい。
【0013】投与剤型としては、液剤、懸濁剤、乳剤、
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、粉末剤、散剤、座
剤等が考えられる。このような剤型を調製するためには
医薬上許容しうる液体または固体状の適当な賦形剤、充
填剤、増量剤、溶剤、乳化剤、滑沢剤、風味補正剤、香
料、染料、緩衝物質等の補助剤を加えて行うのが好まし
い。
【0014】本発明の肝再生治療剤は、肝炎をはじめ、
肝硬変、肝癌等で肝臓を切除した患者に用いられ、その
投与量は患者の性別、体型、体質、年齢および症状や用
いる剤型により異なるが、末梢静脈や中心静脈からアミ
ノ酸輸液製剤として投与する場合はバリンの濃度が0.
5〜5.0%、輸液に加えるアンプル剤としては1.0
〜10.0%、その他、経口投与および経腸投与の懸濁
剤、乳剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、粉末
剤、散剤、座剤等としては、5.0〜100%の範囲で
適宜選択できる。
【0015】尚、本発明においてバリンの濃度を表す%
は、バリンが液体状の場合はw/v%を、またバリンが
固体状の場合はw/w%を意味する。
【0016】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明する。
【0017】
【実施例1】バリン増量による70%部分肝切除ラットの肝再生に及
ぼす効果 8〜9週齢の250g前後のDonryu系雄性ラット
(1群5〜7匹)を用い、エーテル麻酔下で中心静脈に
カテーテルを挿入・留置したあと、開腹し肝臓を約70
%切除し、70%部分肝切除モデルラットを作成した。
カテーテルは皮下トンネルを通して両肩甲骨間に抜き、
Harness装着後、Protective coi
lを経て、Swivelに接続した。ラットを代謝ケー
ジに移し、乳酸リンゲル液(ラクテック[登録商標、大
塚製薬株式会社製])で輸液馴化後、3日間あるいは5
日間、non protein colony換算で2
20kcal/kg/day、ポンプによる投与速度を
250ml/kg/dayに設定して、以下に示す高カ
ロリー輸液を持続投与した。すなわち、100%群(対
照群)として10%総合アミノ酸製剤(モリプロン[登
録商標、森下ルセル株式会社製])にグルコース、電解
質、微量金属、ビタミンを加えた高カロリー輸液(バリ
ン濃度=2.25g/l)を、0%群は上記対照輸液か
らバリンのみを欠如させた輸液(バリン濃度=0g/
l)を、200%群は対照輸液に、L−バリン(日本薬
局方)を添加した輸液(バリン濃度=4.50g/l)
を、400%群は対照輸液にL−バリン(日本薬局方)
を添加した輸液(バリン濃度=9.00g/l)を持続
投与する群に分けて実験を行った。
【0018】輸液投与終了後は体重を測定し、エーテル
麻酔下で開腹し、腹大動脈より全採血後剖検し、肝臓を
採取し重量を測定した。また肝重量と体重測定結果から
肝体重比を求めた。さらに肝臓はホルマリン固定し、ヘ
マトキシリン・エオジン重染色標本にて病理組織学的検
査を行った。尚、測定結果は平均値±標準偏差(mea
n±SD)で表し、統計学的処理はStudent’s
T testにてp<0.05を有意差ありとした。
肝重量と肝体重比の結果を表1に示す。
【0019】
【表1】 肝重量は3日間投与において対照群の5.6±0.3g
に比し、200%群の6.8±0.3gおよび400%
群の7.5±0.3gはともに有意(p<0.01)に
高値を示し、また5日間投与においても、対照群の6.
1±0.3gに比べて、200%群の7.6±0.3g
および400%群の8.6±0.3gがともに有意(p
<0.01)に高値を示した。
【0020】さらに肝体重比においても、3日間投与で
対照群の2.3±0.2%に比し、200%群の2.6
±0.2%が有意(p<0.05)に、400%群の
2.9±0.1%も有意(p<0.01)に高く、また
5日間投与では対照群の2.3±0.1%に比べて、2
00%群の2.9±0.2%および400%群の3.1
±0.1%がともに有意(p<0.01)に高値を示し
た。
【0021】肝臓の病理組織学的検査では、0%群にお
いて肝細胞のグリコーゲン野拡張と空胞形成が顕著であ
ったが、その他の群では全例異常は認められず、正常な
形態像を示した。
【0022】
【実施例2】前脂肪細胞の増殖におけるバリンの影響 C3H系雌性マウス皮膚由来の前脂肪細胞を用い、バリ
ンの細胞増殖におよぼす影響を調べた。前脂肪細胞を1
×104個/well、2.5×104個/wellで9
6穴平底プレートに培養し、バリン濃度を80mg/
l、160mg/l、320mg/lとし、3Hチミジ
ンをパルスし、シンチレーションカウンターにてチミジ
ンの取り込みを測定した。培地はRPMI1640を用
いた。結果を表2に示す。
【0023】
【表2】 表2から明かなように、バリン濃度の増加に伴い、チミ
ジンの取り込みの増加が認められた。
【0024】
【実施例3】初代培養肝細胞の増殖におけるバリンの効果 8〜9週齢の250g前後のDonryu系雄性ラット
を用い、エーテル麻酔下で開腹し、肝臓を70%切除し
た。3日後、麻酔下でラット肝臓をコラーゲンで潅流
し、遊離した肝細胞を採取した。肝細胞を2×104
/wellで、コラーゲンでコートした92穴平底プレ
ートに播種した。バリン濃度を50mg/l、100m
g/l、200mg/lとし、36時間培養後、 3Hチ
ミジンをパルスし、シンチレーションカウンターにて、
チミジンの取り込みを測定した。培地はWilliam
s Media Eを用い、10%FCS、10-6M・
dexamethazone、10-7M・insuli
nとした。チミジン取り込みの結果を表3に示す。
【0025】
【表3】 表3から明かなように、バリン濃度の増加に伴い、初代
培養肝細胞のチミジンの取り込みの増加が認められ、バ
リンによる培養肝細胞増殖への効果が認められた。
【0026】
【発明の効果】本発明の肝再生治療剤は、肝炎、脂肪肝
および薬剤性肝障害における肝障害に対し、肝再生を促
し、正常な肝機能を回復する効果がある。胆嚢癌、肝
癌、転移性肝癌等により肝切除を施行した患者に、早期
に肝再生を誘導し、速やかに術後回復を可能にする。こ
の作用は高カロリー輸液剤と併用して用いることによ
り、さらに高められ、慢性肝炎や肝硬変患者の肝切除に
おいても、速やかな肝再生を示し、安全な手術、早期術
後回復を可能にする。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バリンを有効成分として含有することを
    特徴とする肝再生治療剤。
  2. 【請求項2】 バリンがL−バリンである請求項1記載
    の肝再生治療剤。
  3. 【請求項3】 輸液製剤である請求項1または2記載の
    肝再生治療剤。
  4. 【請求項4】 バリン濃度が0.5〜10.0%である
    請求項1〜3のいずれかに記載の肝再生治療剤。
  5. 【請求項5】 バリン濃度が0.5〜5.0%である請
    求項4記載の肝再生治療剤。
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