JP6801908B1 - ベネトクラクスの水溶性高分子誘導体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、服薬による患者の負担を軽減し、効果と安全性の優れたバランスを有するベネトクラクスの新規投与手段を提供することを目的とする。【解決手段】 マルチアーム型水溶性ポリマーの末端カルボキシル基とそれぞれアミド結合した複数のベネトクラクスを含んでなる水溶性高分子誘導体。【選択図】なし

Description

本発明は、マルチアーム型水溶性ポリマーの末端にベネトクラクスが結合されてなる水溶性高分子誘導体を有効成分とする、がんを治療又は寛解するための医薬又は方法に関する。
ベネトクラクス(Venetoclax)は、Bcl−2に対し選択的に結合及び阻害する作用を有する。多くのがんにおいてBcl−2の過剰発現が認められ、これによりがん細胞は自然死や自己破壊(アポトーシス)の過程を阻止している。ベネトクラクスはこのBcl−2を阻害して、がん細胞におけるアポトーシスの過程を回復させる作用を有する。ベネトクラクスは、再発及び難治性の慢性リンパ性白血病や強力な化学療法の適応とならない初発の急性骨髄性白血病の治療薬として臨床応用されている。一方、ベネトクラクスは、ヒトタンパク質への結合率が高く(99.9%以上)、また、経口吸収率も低いことから、一回の経口投与量が過大となり、がん患者にとって服用し難い場合があった。また、ベネトクラクスの服用により、好中球数減少等の強い副作用を生じることがあり、医師による厳重な服薬指導がなければ、がん患者の安全性が充分に担保できない場合があった。
再発及び難治性の慢性リンパ性白血病や強力な化学療法の適応とはならない初発の急性骨髄性白血病の患者の大半が体力的には弱者であり、高齢者でもある。そのため、ベネトクラクスの副作用を軽減するための根本的な改善が待ち望まれている。
ところで、水溶性の高分子物質を利用して、水に難溶性の抗がん剤の水溶性を向上させて、医薬品としての有用性を高める方法が、以下の通り、幾つか知られている。
(1)パクリタキセルをヒト血液由来のアルブミンに包接させてパクリタキセルの静脈内投与量を上げることにより、腫瘍縮小効果を高めるアブラキサン(非特許文献1)は、進行再発乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び膵臓がんの治療剤として承認されている。しかし、ヒト血液由来のアルブミンを使用しているため、肝炎やエイズ感染症等の発症リスクが拭い去れない。ヒト血液由来のアルブミン資源には限界があり、安定供給の課題が残っている。遺伝子操作によって製造できる合成アルブミンの代用余地は未解決のままである。
(2)分子量が4万の4本鎖のポリエチレングリコール(「マルチアーム型PEG」とも称される。)の4ヶ所の末端の水酸基が-OCHCOOHで置換された誘導体(「マルチアーム型CTPEG」とも称される。)にグリシンを介してイリノテカンの水酸基にエステル結合したNKTR−102(非特許文献2)が進行再発乳がん患者などを対象に臨床開発が実施された経緯がある。しかしながら、ヒトの血中のエステラーゼやカルボキシラーゼの分解酵素による代謝分解を受け易いため、妥当な効果を示すためにNKTR−102の投与量を大きく増やす必要があった。その結果、毒性が高まってしまい、既存薬のイリノテカンの治療効果の改善には及ばず、新薬としての承認には至らなかった。
(3)特許文献1−3は、本発明者等によるものであり、アミノ基を持つ抗がん物質を水溶性高分子のマルチアーム型CTPEGにアミド結合してなる、当該抗がん物質の水溶性高分子誘導体が開示されている。
日本特許第6542799号公報 米国特許第10111955号公報 ロシア特許第2697551号公報
Sparreboom A他、Clinical Cancer Research,2005年第11号:4136−4143頁 Edith A Perez他、The Lancet Oncology,2015年第16号:556−1568頁
本発明は、服薬による患者の負担(過大な服用量、副作用等)を軽減し、効果と安全性の優れたバランスを有するベネトクラクスの新規投与手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、マルチアーム型水溶性ポリマーの末端に、複数のベネトクラクスをそれぞれアミド結合することによって得られた化合物が、従来のベネトクラクスと比べて高い水溶性を有し、がん細胞に対し効率的に作用することができ、服薬による患者の負担を軽減できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1] マルチアーム型水溶性ポリマーの末端にそれぞれアミド結合した複数のベネトクラクスを含んでなる化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[2] マルチアーム型水溶性ポリマーの末端カルボキシル基と複数のベネトクラクスのピロール環の二級アミノ基とがそれぞれアミド縮合してなる、[1]の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[3] マルチアーム型水溶性ポリマーが、末端カルボキシル化マルチアーム型ポリエチレングルコールである、[1]又は[2]の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[4] 下記式(II):
Figure 0006801908
[式中、nは50〜2000を示す]
で表される[3]の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[5] [1]〜[4]のいずれかの化合物又はその薬理学的に許容される塩を含む、がんを治療又は寛解するための医薬組成物。
[6] がんが血液がんである、[5]の医薬組成物。
[7] 血液がんが急性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である、[6]の医薬組成物。
[8] がんを治療又は寛解する方法において使用するための、[1]〜[4]のいずれかの化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[9] がんが血液がんである、[8]の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[10] 血液がんが急性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である、[9]の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
[11] がんを治療又は寛解する方法であって、患者に[1]〜[4]のいずれかの化合物又はその薬理学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
[12] がんが血液がんである、[11]の方法。
[13] 血液がんが急性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である、[12]の方法。
[14] がんを治療又は寛解するための医薬の製造における、[1]〜[4]のいずれかの化合物又はその薬理学的に許容される塩の使用。
[15] がんが血液がんである、[14]の使用。
[16] 血液がんが急性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である、[15]の使用。
本発明によれば、服薬による患者の負担(過大な服用量、副作用等)を軽減し、効果と安全性の優れたバランスを有するベネトクラクスの新規投与手段を提供することができる。
本発明によればまた、ベネトクラクスを、静脈内投与を可能とし、かつ安全性を高めた医薬品として提供することができる。
図1(1)は、式(I)の化合物の化学構造式を裏付けるプロトン核磁気共鳴(以下、「H−NMR」という。)のグラフ図である。図1(2)は、式(II)の化合物の化学構造式を裏付けるH-NMRのグラフ図である。 図2は、式(II)の化合物の純度及び不純物を示す高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という。)のグラフ図である。純度及び不純物の量を同図の下段に示す。 図3は、式(I)の化合物と式(II)の化合物の殺細胞効果の濃度依存性を示したグラフ図である。(1)ヒト急性骨髄性白血病細胞株のMV4−11、(2)ヒトの膵臓がん細胞株のPANC−1、(3)ヒトの肺がん細胞株のA549、それぞれ用いた結果を示す。 図4は、U937(ヒト組織球性リンパ腫細胞株)、MV4−11(ヒト急性骨髄性白血病細胞株)、PANC−1(ヒト膵臓がん細胞株)並びにA549(ヒト肺がん細胞株)の各々のがん細胞株の生存に対する式(II)の化合物の50%阻害濃度生存率とがん細胞株のプロテアーゼ活性との相関性を示した図である。 図5は、ヒト急性骨髄性白血病細胞株のOCI−AML−2をマウスの皮下に移植して作製したモデルを用いて、コントロール群、式(II)の化合物を100mg/kg、200mg/kg、300mg/kgの各投与量を、毎週1回、静脈内投与を2週間行なった群、式(I)の化合物を100mg/kgの投与量で、2週間、毎日経口投与した群の腫瘍増殖抑制効果(1)、ならびに各々の群の体重抑制作用(2)を示した図である。 図6は、ヒト急性骨髄性白血病細胞株のMV4−11をマウスの皮下に移植して作製したモデルを用いて、コントロール群、式(II)の化合物を300mg/kgの投与量を、毎週1回、静脈内投与を3週間おこなった群、式(I)の化合物を50mg/kgの投与量を、3週間、毎日経口投与した群の腫瘍増殖抑制効果(1)、ならびに各々の群の体重抑制作用(2)を示した図である。 図7は、ヒトの組織球性リンパ腫細胞株のU937をマウスの皮下に移植して作製したモデルを用いて、コントロール群、式(II)の化合物を、200mg/kgと300mg/kgの各投与量を毎週1回の静脈内投与を2週間行なった群、式(I)の化合物を100mg/kgの投与量を、2週間、毎日経口投与した群の腫瘍増殖抑制効果(1)、ならびに各々の群の体重抑制作用(2)を示した図である。 図8は、式(I)の化合物又は式(II)の化合物を添加した培地中で培養したヒト急性骨髄性白血病細胞のMV4−11のミトコンドリア画分及び細胞質画分におけるBAX量を測定した結果を示す。 図9は、式(I)の化合物又は式(II)の化合物を添加した培地中で培養したヒト急性骨髄性白血病細胞MV4−11のミトコンドリア画分及び細胞質画分におけるシトクロムC量を測定した結果を示す。 図10は、式(I)の化合物又は式(II)の化合物を添加した培地中で培養したヒト急性骨髄性白血病細胞MV4−11のカスパーゼ活性を測定した結果を示す。(1)は各種濃度にて、式(I)の化合物又は式(II)の化合物を添加した場合の結果を示し、(2)は式(I)の化合物、又は式(II)の化合物を0.1μMで用いた場合の、カスパーゼ活性の測定結果を示す。 図11(1)は、式(I)の化合物を、5%の濃度のCMC(カルボキシメチルセルロース)を含む生理食塩水中に加え、超音波照射操作などの操作で、10mg/mlの濃度で、均一に懸濁させた溶液の写真図を示す。図11(2)は、式(II)の化合物を、40℃〜50℃の生理食塩水中に加え、超音波照射操作などの操作を加えて、10mg/ml及び20mg/mlの濃度で調製した均一水溶液の写真図を示す。
本発明は、がんを治療又は寛解するための医薬、ならびに、がんを治療又は寛解するための方法において、有効成分として利用可能な、マルチアーム型水溶性ポリマーの末端にそれぞれアミド結合した複数のベネトクラクスを含んでなる化合物(以下、「本発明の化合物」と記載する場合がある)又はその薬理学的に許容される塩に関する。
「ベネトクラクス」は下記式(I):
Figure 0006801908
で表される化合物である。ベネトクラクスは、再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の治療薬であるベネクレクスタ(登録商標)の有効成分として利用される化合物である。本発明において、ベネトクラクスは従来公知の手法に従って工業的に合成されたものであってもよいし、あるいは医薬品用として市販されるものを利用してもよい。なお、本明細書中、式(I)の化合物を、単に「ベネトクラクス」と記載する場合がある。
「マルチアーム型水溶性ポリマー」とは、コアとなる原子、分子、又は構造にその一端が接続される、複数(例えば、2,3,4,5,6,7,8、又はそれ以上)の水溶性ポリマー(「アーム」とも称される)からなる構造体を意味する。アームは直鎖状ポリマーであってもよいし、分岐状ポリマーであってもよく、分岐状ポリマーは高度に枝分かれしたポリマー(「樹枝状ポリマー」、「ハイパーブランチポリマー」とも称される)であってもよい。アームの水溶性ポリマーは、生分解性の任意のポリマーを利用することができ、例えば、ポリエチレングリコール(本明細書中、「PEG」と記載する場合がある)、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリエチレンイミン、ポリカルボキシビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等が挙げられる(これらに限定はされない)。マルチアーム型水溶性ポリマーの重量平均分子量は、約3kDa〜約100kDaであり、例えば、約4kDa〜約80kDa、約5kDa〜約60kDa、約8kDa〜約40kDa、約10kDa〜約20kDaとすることができる。複数のアームは、全て同一の水溶性ポリマーであってもよいし、異なる種類又は異なる長さのものを組み合わせて用いてもよい。
本発明において、マルチアーム型水溶性ポリマーは、各アームの末端(コアに接続されていない側)にカルボキシル基を有するものを利用することができる。水溶性ポリマー末端のカルボキシル化は、従来慣用の手法を用いて行うことができる。
好ましくは、本発明においてマルチアーム型水溶性ポリマーは、2〜8つ、好ましくは2つ、4つ、6つ、又は8つ、より好ましくは4つの末端カルボキシル化PEG(本明細書において「CTPEG」と記載する場合がある)をアームとして有する、マルチアーム型CTPEGである。マルチアーム型CTPEGは、例えばペンタエリスリトール核に、必要に応じてスペーサーを介して、種々の重量平均分子量のCTPEGを結合することによって得ることができる。マルチアーム型CTPEGは市販のものを利用することができ、例えばJenKem Technology等から入手することができる。
マルチアーム型水溶性ポリマーとベネトクラクスとの結合は、マルチアーム型水溶性ポリマーの各アームの末端カルボキシル基と、ベネトクラクスのアミノ基との間の縮合反応により形成されるアミド結合により行うことができる。マルチアーム型水溶性ポリマーとベネトクラクスとがアミド結合を介して結合することにより、生体内において、プロテアーゼ(カスパーゼ等)等のアミド結合の加水分解を触媒する酵素の働きを受けて、有効成分であるベネトクラクスがマルチアーム型水溶性ポリマーから切り離されて、作用することができると考えられる。マルチアーム型水溶性ポリマーとの結合に用いられるベネトクラクスのアミノ基は任意のものを利用することが可能であるが、ピロール環の二級アミノ基を利用することが好ましい。
一実施形態において、本発明の化合物は下記式(II):
Figure 0006801908
で表される化合物である。すなわち、4つのアームを有するマルチアーム型PEGの末端にそれぞれ、ベネトクラクスがそのピロール環の二級アミノ基の位置でアミド結合した構造を有する。式中、nは特に限定されないが50以上とすることができ、例えば50〜2000、好ましくは100〜2000、より好ましくは150〜1000、さらに好ましくは200〜500、特に好ましくは230である。ならびに/あるいは、当該化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが例えば、10kDa〜60kDa、好ましくは20kDa〜60kDa、特に好ましくは40kDaである。なお、本明細書中、式IIの化合物を「PEG−ベネトクラクス」と記載する場合がある。
「薬理学的に許容される塩」とは、生体に投与することが許容可能な塩を意味し、例えば、酸付加塩や塩基性付加塩等が挙げられる。「酸付加塩」としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられ(これらに限定はされない)、「塩基性付加塩」としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩等)、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる(これらに限定はされない)。
上記の本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩は、がんを治療又は寛解する方法において、また、がんを治療又は寛解するための医薬組成物において、有効成分として利用することができる。
本発明において「がん」とは、血液がん及び固形がん(脳腫瘍・神経膠腫、下垂体腺腫、聴神経鞘腫、ぶどう膜悪性黒色腫、髄膜腫、咽頭がん、喉頭がん、舌がん、甲状腺がん、乳がん、肺がん、胸腺腫、胸腺がん、中皮腫、食道がん、胃がん、大腸がん、肝細胞がん、胆管がん、膵臓がん、腎細胞がん、膀胱がん、前立腺がん、腎盂・尿管がん、陰茎がん、精巣(睾丸)腫瘍、子宮がん、卵巣がん、外陰がん、皮膚がん、悪性黒色腫(皮膚)、基底細胞がん、皮膚がんの前駆症、表皮内がん、有棘細胞がん、菌状息肉症、悪性骨腫瘍(骨肉腫)、軟部肉腫、軟骨肉腫、悪性線維性組織球種等)及びこれらの転移がんが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明において「がん」とは、血液がん及びその転移がんである。「血液がん」とは、造血器から発生するがんを意味し、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明においてより好ましくは、血液がんは急性骨髄性白血病(AML)又は慢性リンパ性白血病である。
本発明において「がんを治療又は寛解する」とは、がんが完全に消失した状態になることを意味するだけでなく、一時的、あるいは永続的に、がんが縮小、又は消失している状態やがんが増悪せず、安定している状態も意味する。例えば、がんの大きさの低下、腫瘍マーカーのレベルの低下、がんに伴う症状改善、全生存期間、無増悪生存期間、生存期間中央値などの尺度の延長などの一つ以上が含まれる。
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩はがんを治療又は寛解する方法において、そのまま(単独で)使用してもよいし、あるいは、医薬の製造において通常用いられている、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を含めて、企図される投与経路に適した剤型に製造された医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と記載する場合がある)の形態で使用してもよい。
賦形剤としては、例えば、糖(単糖、二糖類、シクロデキストリン及びアルギン酸等の多糖類)、金属塩、カオリン、ケイ酸、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、及びこれらの混合物等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖及びこれらの混合物等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられる。
医薬組成物には必要に応じて、さらに医薬の製造において通常用いられている希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、コーティング剤、保存剤、防腐剤、抗酸化剤等も適宜含めることができる。
例えば、本発明の医薬組成物は経口投与に適した剤形とすることができ、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、シロップ剤、懸濁剤等として提供することができる。固形の剤形を有するものは、必要に応じてコーティングを施すことができる(例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶錠等)。
例えばまた、本発明の医薬組成物は非経口投与に適した剤形とすることができ、注射剤や点滴剤等として提供することができる。これらの剤形は、凍結乾燥化し保存し得る状態で提供され、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用されるものであってもよい。
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、あるいは、本発明の医薬組成物の投与量及び投与経路は、がんの種類や重篤度、患者の年齢、体重、状態等などの要因に応じて変化し得るが、がんを治療又は寛解するのに十分な量を任意の投与経路(経口投与、又は非経口投与)を用いて投与することができる。
例えば、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、あるいは、本発明の医薬組成物は、有効成分である上記本発明の化合物の量にして、50〜1000mg/kg、好ましくは100mg/kg〜500mg/kgから選択される量を、1〜3週に1回、より好ましくは、毎週1回の頻度で、非経口投与することができる。「非経口投与」としては、静脈内投与用(静脈内注射、点滴等)、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射等を挙げることができる。好ましくは本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、あるいは、本発明の医薬組成物は、静脈内投与用とすることができ、例えば、上記の量を5分〜120分、好ましくは10分〜60分、より好ましくは15分〜30分、特に好ましくは20分程度かけて静脈内投与することができる。
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、あるいは、本発明の医薬組成物は、それ自体(単独)で使用するだけではなく、がんを治療又は寛解するために用いられるがん化学療法剤、がん分子標的薬、がん免疫療法剤等の抗がん剤や放射線療法と併用して用いることができる。本発明において「併用」とは、各成分を同時に投与する場合だけではなく、治療期間にわたって各成分を、それぞれ所定の間隔で、順次投与する場合も含まれる。併用投与される各成分の投与経路や投与手段は同一であってもよいし、異なっていてもよい。併用投与される抗がん剤としては、例えば、シタラビン、アザシチジン、デシタビン、ヴィキセオス、シクロホスファミド、チオテパ、イホスファミド、ブスルファン、ダカルバジン、メルファラン、ラニムスチン、ニムスチン、ドキソルビシン、アクラルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ピラルビシン、エピルビシン、ペプロマイシン、アムルビシン、メルカプトプリン、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、クラドリビン、エノシタビン、リツキシマブ、ダサチニブ、ボルテゾミブ、タミバロテン、イブリツモマブ、トレチノイン、ゲムツズマブオゾガマイシン、エナシデニブ、グラスデギブ、キザルチニブ、ニボルマブ(商品名:オプジーボ(登録商標))、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ(登録商標))、イピリムマブ(商品名:ヤーボイ(登録商標))、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク(登録商標))が挙げられることができ(これらに限定されない)、がんの種類や重篤度、患者の年齢、体重、状態等などの要因に応じて、一又は複数種を適宜選択することができる。
抗がん剤は、単独で用いる場合と比べて、90%、80%、70%、60%、50%、40%又はそれ以下の量に減じた用量にて、減じた投与期間及び/又は拡大した休薬期を有する用法にて投与することができる。これによって抗がん剤の投与により引き起こされ得る副作用(例えば、骨髄抑制、溶血性貧血、播種性血管内凝固症候群、劇症肝炎、脱水症状、腸炎、間質性肺炎、口内炎、消化管潰瘍、消化管出血、消化管穿孔、急性腎不全、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、精神神経障害、急性膵炎、横紋筋融解症、嗅覚脱失など、これらに限定されない)の発症を抑制又は遅延することができ、ならびに/あるいは、抗がん剤の使用に伴うがん患者の経済的な負担や国や自治体の医療保険財政の負担を大きく軽減することができる。
本発明はさらに、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、あるいは、本発明の医薬組成物をがん患者に投与することを含む、がんを治療又は寛解する方法に関する。本方法において治療又は寛解の対象となるがん、ならびに、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、あるいは、本発明の医薬組成物の用法・用量は上記したとおりである。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[実施例1]式(II)の化合物の合成および分析
窒素雰囲気下、CTPEG(4.530g、1等量)をDMF溶媒55mLに入れて、50℃で加熱し均一溶解した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(以下、「DIC」という。)(0.296g、20等量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、「HOBT」という。)(0.258g、6等量)、および、ベネトクラクス(0.474g、4.8等量)を順次添加した。60℃で6時間攪拌を続けてから40℃に冷却した後、攪拌しながら30℃に加温したメチルテトラ−ブチルエーテル(以下「MTBE」という。)を20分間掛けて滴下し、その後60分掛けて冷却し、30分間攪拌してから、生成した結晶をろ過して集め、20mLのMTBEで洗浄し、得られた結晶を40℃に加温した20mLの無水エタノールに溶かし、70mLのMTBEを20分掛けて滴下し、60分掛けて0℃に冷却し、30分間攪拌し、生成した沈殿物をろ過して集めた。同じ方法で再結晶精製操作を数回繰り返し、35℃の真空乾燥器の中で5時間以上乾燥し、HPLC分析で、式(II)の化合物の純度が97%以上、各々の不純物1%以下のものが得られたので、窒素ガスを充填したプラスチックのバッグの中に入れて、−20℃で保存した。得られた式(II)の化合物の化学構造、ならびに式(I)の化合物の化学構造を、H−NMRの分析(図1参照)により同定した。また、HPLCの分析によって、式(II)の化合物の高い純度を確認した(図2参照)。
[実施例2]式(I)の化合物と式(II)の化合物の殺細胞効果
式(I)の化合物と式(II)の化合物の殺細胞効果の濃度依存性を以下の通り調べた。
ヒト急性骨髄性白血病細胞株のMV4−11を用いて、式(I)の化合物及び式(II)の化合物の各IC50(50%阻害率)調べた(図3(1)参照)。その結果、式(I)の化合物のIC50(50%阻害率)は0.16pM、式(II)の化合物のIC50は0.85pMであり、何れの化合物も高い阻害率が確認された。但し、式(I)の化合物は、タンパク質結合率が高い(≧99.9%)ため、血清の含有量が少ない培地(Opti−MEM)を用いた。
ヒトの膵臓がんの細胞株のPANC−1を用いて、式(I)の化合物及び式(II)の化合物の各IC50(50%阻害率)を調べた(図3(2)参照)。その結果、式(I)の化合物のIC50は0.99μM、式(II)の化合物のIC50は18.9μMであった。
ヒト肺がん細胞株のA549を用いて、式(I)の化合物及び式(II)の化合物の各IC50(50%阻害率)を調べた(図3(3)参照)。その結果、式(I)の化合物のIC50は0.99μM、式(II)の化合物のIC50は15.5μMであった。
[実施例3]式(II)の化合物の殺細胞効果とがん細胞のプロテアーゼ活性
U937(ヒト組織球性リンパ腫細胞株)、MV4−11(ヒト急性骨髄性白血病細胞株)、PANC−1(ヒト膵臓がん細胞株)及びA549(ヒト肺がん細胞株)に対する式(II)の化合物の50%阻害濃度とがん細胞株のプロテアーゼ活性との間で良い相関が認められた(図4参照)。この結果、プロテアーゼが高いがん細胞の周辺で、式(II)の化合物のアミド結合が酵素で代謝されることにより、式(I)の化合物が選択的に放出されていることが示唆された。
[実施例4]ヒト急性骨髄性白血病(OCI−AML−2)モデルマウスにおける効果
ヒト急性骨髄性白血病細胞株OCI−AML−2をマウスの皮下に移植したモデルを用いて、コントロール群、式(II)の化合物を100mg/kg、200mg/kg、および300mg/kgの各投与量、毎週1回、静脈内投与を2週間行なった群、ならびに、式(I)の化合物を100mg/kgの投与量を、2週間、毎日経口投与した群の間での腫瘍の増殖抑制効果を比較した(図5(1)参照)。
その結果、式(II)の化合物は100mg/kg、200mg/kg、300mg/kgの各々の投与量に於いて用量依存的に腫瘍の増殖を抑制することが認められた。また、式(II)の化合物では、何れの投与量でも体重抑制は殆どなく、コントロール群の体重変化とほぼ同じであった。式(I)の化合物では体重抑制が認められた(図5(2)参照)。
式(I)の化合物の総投与量は、1,400mg/kg(100mg/日の2週間連日投与)であるが、式(II)の物質の総投与量は、16mg/kg、32mg/kg、48mg/kg(式(I)の投与量で換算)であり、式(II)の化合物は、式(I)の化合物の35分の1の投与量に於いて、式(I)の化合物に匹敵する腫瘍増殖抑制効果が認められた。体重抑制から調べた安全性も高いことが分かった。
[実施例5]ヒト急性骨髄性白血病(MV4−11)モデルマウスにおける効果
ヒト急性骨髄性白血病細胞株のMV4−11をマウスの皮下に移植した動物モデルを用いて、コントロール群、式(II)の化合物を300mg/kgの投与量(式(I)物質の投与量で換算すると、24mg/kg)で、週1回の頻度で静脈内への投与を3週間行なった群、式(I)の化合物を50mg/kgの投与量で、3週間連日経口投した群の3群の間で腫瘍の増殖抑制効果を比較した。
その結果、式(II)の化合物の3週間の総投与量(72mg/kg)が式(I)の化合物の3週間の総投与量(1,050mg/kg)と較べて遥かに少ない量(15分の1の量)であるにも拘らず、式(II)の化合物の腫瘍増殖抑制効果は、式(I)の化合物の腫瘍増殖抑制効果に匹敵した(図6(1)参照)。また、式(II)の化合物は、式(I)の化合物より安全性が高いことが分かった(図6(2)参照)。
[実施例6]ヒト組織球性リンパ腫モデルマウスにおける効果
ヒトの組織球性リンパ腫細胞株のU937を、マウスの皮下に移植して作製したモデルを用い、コントロール群、式(II)の化合物を200mg/kg、および300mg/kgの投与量で、毎週1回の頻度で、2週間静脈内投与した群、式(I)の化合物を100mg/kgの投与量で、2週間、毎日経口投与した群の3群の間で腫瘍の増殖抑制効果を比較した。
その結果、何れの群も顕著な腫瘍増殖抑制効果を示さなかった(図7(1)参照)。また、体重抑制作用も各群で差がなかった(図7(2)参照)。実施例3で示した通り、U937(ヒト組織球性リンパ腫細胞株)が最も強いプロテアーゼ活性を示したが、式(I)の化合物にはU937(ヒト組織球性リンパ腫細胞株)の増殖抑制効果がなく、プロテアーゼにより式(II)の化合物のアミド結合が開裂し、腫瘍細胞近傍で式(I)の化合物を高率に放出しても腫瘍増殖抑制効果を示すに至らないことが示唆された。
[実施例7]アポトーシス誘導タンパク質BAX/BAKの発現変動
ベネクレクスタ(登録商標)錠10mg、ベネクレクスタ(登録商標)錠50mg、ベネクレクスタ(登録商標)錠100mgの医薬品インタビューフォーム(日本病院薬剤師会、2019年11月作成(第2版))には、『ベネトクラクスはアポトーシス抑制タンパク質であるBCL−2を選択的に阻害する経口投与可能な低分子の物質である。BCL−2がアポトーシス促進性タンパク質(BAX/BAK,BIMなど)と相互作用することにより、してアポトーシス抑制性に機能している。ベネトクラクスは、BCL−2を直接結合することによりアポトーシス促進性タンパク質を遊離させ、腫瘍細胞を速やかなアポトーシスに誘導し、抗腫瘍作用を示すと考えられる』と記載されている。BAXは細胞質に発現するタンパク質であるが、BCL−2の阻害によってアポトーシスが誘導されると、ミトコンドリアの外膜に蓄積すると報告されている。
ヒト急性骨髄性白血病細胞のMV4−11を培地に播種し、一晩培養してから、式(I)の化合物を0.1μM及び1μMの濃度で、式(II)の化合物を0.01μM、0.1μM、及び1μMの濃度で添加し、5時間インキュベーションしてから細胞質画分とミトコンドリア画分を抽出し、BAXの発現状況を調べた。
その結果、細胞質画分では、式(I)の化合物、式(II)の化合物についてともに濃度依存的なBAXの減少が認められた(図8参照)。
[実施例8]チトクロムC放出量の変動
上記医薬品インタビューフォームには、「アポトーシス促進性タンパク質」としてミトコンドリアより細胞質に流出した「チトクロムC」が示されている。そこで、ヒト急性骨髄性白血病細胞のMV4−11を培地に播種して、一晩培養してから、式(I)の化合物を0.1μM及び1μMの濃度で、又、式(II)の化合物を0.01μM、0.1μM、及び1μMの濃度で各々添加し、5時間のインキュベーションをした後に、細胞質画分及びミトコンドリア画分を抽出し、チトクロムCの放出を調べた。
その結果、ミトコンドリアからチトクロムCを放出する量は、式(I)の化合物の添加濃度に依存して、また、式(II)の化合物の添加濃度に依存して、それぞれ増大した(図9参照)。
[実施例9]カスパーゼ活性の変動
上記医薬品インタビューフォームには、ミトコンドリアより細胞質に流出したチトクロムCはカスパーゼを活性化してアポトーシスを誘導することが示されている。そこで、ヒト急性骨髄性白血病細胞のMV4−11を培地に播種して、一晩培養してから、式(I)の化合物を1pM、0.01nM、0.1nM、1nM、0.01μM、0.1μM及び1μMの濃度で、又、式(II)の化合物を1pM、0.01nM、0.1nM、1nM、0.01μM、及び0.1μMの濃度で各々添加し、24時間のインキュベーションをした後に、培地を回収し、カスパーゼ活性を従来公知の手法により調べた。
その結果、カスパーゼ活性は、式(I)の化合物の添加濃度に依存して、また、式(II)の化合物の添加濃度に依存して、それぞれ増大した(図10(1)参照)。ベネトクラクスでの換算濃度が0.1μMの場合は、式(I)の化合物及び式(II)の化合物のいずれも全く同じカスパーゼ活性を示した(図10(2))。式(II)の化合物が、式(I)の化合物と同様にBCL−2を阻害することにより、腫瘍細胞をアポトーシス誘導し、抗腫瘍作用を示すことが裏付けられた。
[実施例10]化合物の水溶解性
式(I)の化合物を、0.5%濃度のCMC(カルボキシメチルセルロース)を含んだ生理食塩水の中に加えて、超音波照射等の操作を加えたところ、10mg/mLの濃度で、均一の懸濁溶液が得られた(図11(1)参照)。
一方、式(II)の化合物を、40℃〜50℃の生理食塩水の中に加えて、超音波照射等の操作を施したところ、10mg/mL及び20mg/mLの濃度の均一水溶液が得られ、室温に戻しても沈殿は何等生じなかった。式(II)の化合物の高分子水溶液の特性が確認された(図11(2)参照)。

Claims (7)

  1. マルチアーム型水溶性ポリマーの末端にそれぞれアミド結合した複数のベネトクラクスを含んでなる化合物又はその薬理学的に許容される塩。
  2. マルチアーム型水溶性ポリマーの末端カルボキシル基と複数のベネトクラクスのピロール環の二級アミノ基とがそれぞれアミド縮合してなる、請求項1に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
  3. マルチアーム型水溶性ポリマーが、末端カルボキシル化マルチアーム型ポリエチレングルコールである、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
  4. 下記式(II):
    Figure 0006801908
    [式中、nは50〜2000を示す]
    で表される請求項3に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を含む、がんを治療又は寛解するための医薬組成物。
  6. がんが血液がんである、請求項5に記載の医薬組成物。
  7. 血液がんが急性骨髄性白血病又は慢性リンパ性白血病である、請求項6に記載の医薬組成物。
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