JPH085908Y2 - クローラベルト式走行装置の懸架装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、車体の左右に備えるクローラベルト式走行
装置の懸架装置に関するものである。

［従来の技術］ 駆動輪と遊転輪とにゴム製のクローラベルトを掛装
し、駆動輪及び遊転輪をともに支持する左右の車軸支持
部材を設けてなるクローラベルト式走行装置は特公昭48
−41288号公報により公知となっている。

［考案が解決しようとする課題］ 以上のクローラベルト式走行装置を乗用車両の後輪側
に備えようとする場合、車両の乗心地性及びクローラベ
ルトの地面追従性を確保することが課題となる。

そこで本考案の目的は、車体の左右に備えられるクロ
ーラベルト式走行装置において、乗心地性及び地面追従
性を確保しつつクローラベルトの張力調整も可能としな
がらも、車高を低く抑えられる懸架装置を提供すること
にある。

［課題を解決するための手段］ 以上の課題を解決すべく本考案は、車体の左右両側に
夫々配設される駆動輪と遊転輪とにクローラベルトを掛
装し、駆動輪及び遊転輪をともに支持する左右の車軸支
持部材を設け、車体の左右両側に前後端を支持したリー
フスプリングを設けるとともに、このリーフスプリング
の下方に車軸支持部材を揺動可能に略中央部で連結して
なるクローラベルト式走行装置の懸架装置であって、駆
動輪または遊転輪の一方の車輪を支持するハブキャリア
を車軸支持部材に揺動可能に枢着するとともに、このハ
ブキャリアを車軸支持部材に対し外側方、且つ上方にオ
フセットして取付けたことを特徴とする。

［作用］ クローラベルトを掛装した駆動輪及び遊転輪をともに
支持する左右の車軸支持部材を、車体の左右両側に前後
端を支持したリーフスプリングの下方に略中央部で揺動
可能に連結した左右独立の懸架方式なので、リーフスプ
リングの弾性及び車軸支持部材の前後の上下揺動によ
り、車両の乗心地性とクローラベルトの地面追従性が良
くなる。

またハブキャリアを車軸支持部材に揺動可能に枢着し
た構造により、ハブキャリアの揺動操作でクローラベル
トの張力調整が行える。

そして車軸支持部材に対し外側方、且つ上方にオフセ
ットしてハブキャリアが取付けられているので、リーフ
スプリングの下方に略中央部で揺動可能に枢着されたス
イングビームの揺動角度が大きくとれ、クローラベルト
の地面追従性の面でも有利となり、車高が低く抑えられ
る。

［実施例］ 以下に添付図面を基に実施例を説明する。

本考案の適用例として軽トラックタイプのクローラベ
ルト式６輪車の構成を示す第１図乃至第４図において、
１は車体、11は前輪、13は後輪、15は遊転輪、17はクロ
ーラベルトである。

車体１はキャビン２と荷台３で構成され、図示の如く
前輪11と後輪13との間に遊転輪15が配設されており、各
車輪にはタイヤ12,14,16が夫々装着されている。そして
キャビン２内のハンドル４から左右一対の前輪11,11へ
操舵力を伝達する操舵装置５が構成されている。操舵装
置５はステアリングシャフト６、ギヤボックス７、ステ
アリングアーム８及びタイロッド９等からなり、タイロ
ッド９が前輪11を軸承するナックル21に連結されてい
る。更に前輪11を車体１に対し独立懸架支持するフロン
トサスペンション22が設けられており、即ち車体１のキ
ャビン２下と前輪用ナックル21との間にラジアスロッド
23及び油圧ダンパ24等のサスペンション構成部品が架設
されている。

一方、車体１の荷台３下にエンジン25が搭載支持され
ており、このエンジン25の左右両側方に後輪13と遊転輪
15が配設されている。このエンジン25と一体のトランス
ミッションからの回転駆動力を左右一対の後輪13,13へ
伝達する後輪駆動装置26が構成されている。後輪駆動装
置26はエンジン25後部の差動装置27及び後輪駆動軸28か
らなり、後輪駆動軸28がスイングビーム31後部に支持し
た後輪車軸29に連結されている。

そして後輪13とその前方の遊転輪15は車軸支持部材を
なす前記スイングビーム31に軸承されており、このスイ
ングビーム31を車体１に対し独立懸架支持するリヤサス
ペンション32が設けられている。即ち車体１の荷台３下
に架設したリーフスプリング33にスイングビーム31中央
部を揺動自在に結合するとともに、このスイングビーム
31の前後部と荷台３下との間に油圧ダンパ34,35を架設
し、更に左右のスイングビーム31,31後部間にはトーシ
ョンフリーのアクスルビーム36を架設している。

尚、図中、36aはアクスルビーム36中央部のトルクキ
ャンセル部、37はリーフスプリング33中央部上のストッ
パーラバー、38はリーフスプリング33後端部のシャック
ル、301は荷台３下に垂設したスプリングブラケット、3
02は同シャックルブラケット、304,305は同ダンパブラ
ケットである。

また後輪タイヤ14と遊転輪タイヤ16とにはゴム製のク
ローラベルト17が掛装されており、このクローラベルト
17のトレッド部18の両側にはガーター19…,19…が内方
に起設して備えられている。そしてスイングビーム31の
前部には枢着結合により揺動可能な偏心式のハブキャリ
ア41が備えられ、このハブキャリア41に遊転輪車軸39が
支持されている。この遊転輪車軸39を支持するハブキャ
リア41を後述する如く偏心回動操作することによりクロ
ーラベルト17の張力調整が行われる。以上のクローラベ
ルト17,17は車体１の幅方向寸法内に収められている。

更にエンジン25と一体のトランスミッションからの回
転駆動力を左右一対の前輪11,11へ伝達する前輪駆動装
置42が構成されている。前輪駆動装置42はエンジン25前
方に延びる推進軸43、差動装置44及び前輪駆動軸45,45
からなり、前輪駆動軸45がナックル21に支持した前輪車
軸46に連結されている。図中、47は燃料タンク、48はバ
ッテリー、49はマフラーである。

以上のクローラベルト式６輪車は、左右のクローラベ
ルト17,17による接地駆動力と前輪タイヤ12,12による接
地駆動力とにより、一般道路は勿論のこと、農地等の軟
弱地や砂、雪、砂利等の不整地での走破性に優れる。そ
してクローラベルト17を車体１の幅方向寸法内に収めた
ので、車体１の側方にクローラベルト17が張り出さず、
車両全幅を増大することなくコンパクトにして軽車両の
形式認定が得られ、更に一般車両と同様に比較的高速で
の公道走行が可能であるとともに、特に農地に乗り入れ
て農耕機械や肥料等の材料の運搬車両として利用でき
る。また前輪11を独立懸架するとともに、クローラベル
ト17を掛装する後輪13及び遊転輪15も独立懸架したの
で、乗心地の面でも優れている。

以上のクローラベルト式走行装置の懸架装置を第５図
に拡大して示しており、303は荷台３下に垂設したスト
ッパー当接部である。

そして左右の各スイングビーム31及びリーフスプリン
グ33の枢着構造は第６図に、またクローラベルト17のテ
ンショナー操作機構の詳細は第７図及び第８図に、更に
後輪13の支持構造は第９図に断面で夫々示す通りであ
る。

先ず第６図において、51はピボットブラケット、52は
ピボットシャフト、53はピボットケースである。即ちス
イングビーム31中央部に固設のピボットケース53にピボ
ットシャフト52を介してピボットブラケット51を枢着
し、シャフト52とケース53間に左右一対のベアリング5
4,54を介装して、シャフト52先端のネジ部にナット55を
螺着している。そしてピボットブラケット51上に図示で
は三枚重ねのリーフスプリング33中央部をプレート56に
よりサンドイッチして、プレート56の前後をＵボルト5
7,57及びナット58…によりピボットブラケット51に結合
している。

このようなピボット構造によりスイングビーム31が中
央部のピボット中心点Ｏ回りに揺動し、農地等の軟弱値
や砂、雪、砂利等の不整地走行時におけるクローラベル
ト17個々の地面追従性が得られるものとなっている。

また第７図及び第８図において、60はテンショナー操
作機構、61はウォーム、66はウォームホイールであり、
図示の如く中空パイプ状のスイングビーム31前部内にウ
ォームホイール66が収納され、スイングビーム31前部開
放端に固設したウォームホルダ62内にウォーム61が収納
されている。ウォーム61は垂直方向のシャフト63にセレ
ーション嵌合されており、シャフト63は上下をウォーム
ホルダ62に回転自在に支持され、このシャフト63はアッ
パーホルダ64上方への突出部に六角頭部65を備えてい
る。

このウォーム61と直交噛合するウォームホイール66は
車幅方向のシャフト67にセレーション嵌合されており、
シャフト67は左右をスイングビーム31前部に回転自在に
支持され、そしてシャフト67のスイングビーム31外側へ
の突出軸部に前記ハブキャリア41がセレーション嵌合さ
れている。このハブキャリア41に前記遊転輪車軸39が左
右一対のベアリング69,69を介装して回転自在に支持さ
れている。図中、71はホイールハブ、72はセンターナッ
ト、73はハブボルト、74はホイールナット、75はアクス
ルカラー、76はウォームホイールシャフト67のナット、
77は同ワッシャ、78,79はウォームホイール66両側のス
ペーサーである。

このようにして遊転輪車軸39を支持するハブキャリア
41のスイングビーム31に対する枢着部にウォームギヤ機
構によるテンショナー操作機構60を設けているので、ス
パナ等の工具により外部からウォームシャフト63の六角
頭部65に回転操作力を加えると、ウォーム61の回転によ
り大きな減速比でもってウォームホイール66が徐々に回
転し、即ちハブキャリア41が第７図の如く前後方向の円
弧状軌跡に沿って揺動する。これにより遊転輪15の前後
移動が行われ、従ってクローラベルト17を適度の張力状
態に調整できる。

以上のクローラベルト17の張力調整は、ウォーム66を
回転するだけであり、その回転操作力は小さなもので足
りる。そしてハブキャリア41に連結するシャフト67に設
けたウォームホイール66側から回転操作を行うウォーム
61側へは、外力に対するセルフロック機能を有している
ので、振動等による緩みを防止できる。更に回転操作す
るウォームシャフト63をスイングビーム31前端部に配置
して、その六角頭部65が上方に臨んでいるため、遊転輪
15の前方から内側へ手を入れてウォームシャフト63を容
易に回転操作できるものとなっている。

また第９図において、81はスイングビーム31後部に固
設のハブキャリアであり、このハブキャリア81に前記駆
動輪車軸29が左右一対のベアリング82,82を介装して回
転自在に支持されている。図中、83はホイールハブ、84
はセンターナット、85はセンターキャップ、86はハブボ
ルト、87はホイールナット、88はアクスルカラー、89は
ブレーキドラムである。

以上のクローラベルト式走行装置は、前後部にハブキ
ャリア41,81が備えられるスイングビーム31を、駆動輪
タイヤ14及び遊転輪タイヤ16よりも車体１（荷台３）内
側方向に配置しているので、車体１（荷台３）外側方か
らのクローラベルト17やタイヤ14,16の着脱が容易に行
えて、メンテナンス性に優れたものとなっている。更に
スイングビーム31前部に備える遊転輪ハブキャリア41を
揺動作動してクローラベルト17の張力調整を行うテンシ
ョナー操作機構60が、クローラベルト式走行装置よりも
車体１（荷台３）内側方向に位置しているので、車体１
（荷台３）外側方からの障害物によるテンショナー操作
機構60の保護の面でも優れたものとなっている。

そして駆動輪車軸29及び遊転輪車軸39を支持するスイ
ングビーム31をリーフスプリング33に結合支持したの
で、クローラベルト17の地面追従性と併せて乗心地性の
面でも有利である。

特に第２図、第５図、第７図及び第８図に示す通り、
クローラベルト17の張力調整用のテンショナー操作機構
60により回動可能な遊転輪ハブキャリア41を、スイング
ビーム31前部に対し外側方、且つ上方にオフセットさせ
て取付けているので、スイングビーム31のリーフスプリ
ング33に対する干渉防止対策の面で有利となり、車高が
低く抑えられるとともに、リーフスプリング33に中央部
で揺動自在にピボット軸支されたスイングビーム31の揺
動角度を大きくとって、クローラベルト17の地面追従性
の面でも有利なものとなっている。

即ち実施例とは逆にスイングビーム31前部に対し遊転
輪ハブキャリア41を下方にオフセットさせた場合を考え
ると、遊転車輪軸39の位置を基準としてスイグビーム31
前部が上方に位置することから、スイングビーム31前部
とリーフスプリング33との隙間が狭くなり、スイングビ
ーム31の揺動角度が小さくなる。

またスイングビーム31の揺動角度を確保するためにリ
ースフプリング33の位置を上げると、例えばリーフスプ
リング33の前半部を上げれば、アクスルステア特性が変
わってしまい、また第10図の如くリーフスプリング33の
全体を上げた構造にすると、荷台３の位置が上がり、即
ち後車体の車高が高くなってしまい、車両のローリング
センターが高くなっていしまう。

しかしながら、本考案のように遊転輪ハブキャリア41
を、スイングビーム31前部に対し外側方、且つ上方にオ
フセットさせて取付けておけば、スイングビーム31前部
とリーフスプリング33との隙間を大きくでき、スイング
ビーム31のリーフスプリング33下方に結合支持した中央
部でのピボット中心点Ｏ回りの揺動角度を大きくでき
る。

従ってクローラベルト17の良好な地面追従性が得ら
れ、ハブキャリア41を回動してクローラベルト17の張力
調整を行うテンショナー操作機構60の採用によっても、
クローラベルト17の走破性を上げられるものとなってい
る。

尚、実施例では軽トラックに本考案を適用したが、ワ
ンボックスタイプ等の軽車両や他の形式の車両にも本考
案は適用可能である。また遊転輪と後輪の配置を前後逆
にしたり、後輪側のハブキャリアを上方にオフセットし
て、テンショナー操作機構を設けるようにしても良い。

［考案の効果］ 以上のように本考案によれば、クローラベルトを掛装
した駆動輪及び遊転輪をともに支持する左右の車軸支持
部材を、車体の左右両側に前後端を支持したリーフスプ
リングの下方に略中央部で揺動可能に連結し、一方の車
軸を支持するハブキャリアを車軸支持部材に揺動可能に
枢着するとともに、このハブキャリアを車軸支持部材に
対し外側方、且つ上方にオフセットして取付けてなる懸
架装置のため、左右独立の懸架方式でリーフスプリング
の弾性及び車軸支持部材の前後の上下揺動によって、車
両の乗心地性とクローラベルトの地面追従性を良好にす
ることができるとともに、ハブキャリアの揺動操作によ
りクローラベルトの張力調整が行え、しかもリーフスプ
リングの下方に略中央部で揺動可能に枢着されたスイン
グビームの揺動角度を大きくとれることから、ハブキャ
リアの揺動操作によるテンショナー方式を採用しながら
も、クローラベルトの地面追従性に優れ、車高を低く抑
えることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の適用例としてクローラベルト式６輪車
を示した概略側面図、第２図はその駆動装置及びサスペ
ンション等を示す側面図、第３図は同平面図、第４図は
同後面図、第５図は本考案に係るクローラベルト式走行
装置の懸架装置を示した拡大側面図、第６図は第５図の
矢印VI−VI線に沿った断面図、第７図はテンショナー操
作機構を示す側方から見た拡大断面図、第８図は第７図
の矢印VIII−VIII線に沿った断面図、第９図は第５図の
矢印IX−IX線に沿った断面図、第10図は本考案とは逆に
ハブキャリアを下方にオフセットした場合を例示した側
面図である。 尚、図面中、１は車体、13は駆動輪、15は遊転輪、17は
クローラベルト、31は車軸支持部材（スイングビー
ム）、33はリーフスプリング、41は遊転輪ハブキャリ
ア、52はピボットシャフト、60はテンショナー操作機
構、81は駆動輪ハブキャリアである。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】車体の左右両側に夫々配設される駆動輪と
   遊転輪とにクローラベルトを掛装し、駆動輪及び遊転輪
   をともに支持する左右の車軸支持部材を設け、車体の左
   右両側に前後端を支持したリーフスプリングを設けると
   ともに、このリーフスプリングの下方に車軸支持部材を
   揺動可能に略中央部で連結してなるクローラベルト式走
   行装置の懸架装置であって、駆動輪または遊転輪の一方
   の車輪を支持するハブキャリアを車軸支持部材に揺動可
   能に枢着するとともに、このハブキャリアを車軸支持部
   材に対し外側方、且つ上方にオフセットして取付けたこ
   とを特徴とするクローラベルト式走行装置の懸架装置。