JPH0856659A - リビトール脱水素酵素とその製造方法並びに用途 - Google Patents
リビトール脱水素酵素とその製造方法並びに用途Info
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Abstract
の希少糖質を提供する。 【構成】 新規リビトール脱水素酵素と、該酵素を産生
するエンテロバクター属に属する微生物を用いる該酵素
の製造方法及び該酵素を用いる糖アルコールとケトース
との変換方法、並びに、該酵素を用いる糖アルコール又
はケトースの製造方法を主な構成とする。
Description
とその製造方法並びに用途に関し、更に詳細には、リビ
トールをNAD+共存下でD−リブロースに酸化し、D
−リブロースをNADH共存下でリビトールに還元する
リビトール脱水素酵素とその製造方法、それを産生する
微生物、並びに該酵素又は該酵素活性を有する微生物を
用いるケトース又は糖アルコールの製造方法に関する。
分野においても、従来、殆ど必要としなかった各種希少
糖質の需要が起こりつつあり、これら糖質の安定な製造
方法の確立が望まれている。これら糖質の製造方法は、
有機化学的手法によっても行うことができるが、一般的
には、その製造条件が苛酷で目的糖質の収率が低く、工
業的生産方法としては不適である。一方、生化学的手段
としては、酵素による糖質変換方法が行われている。し
かしながら、酵素は、一般に基質特異性が高く、目的糖
質毎に特定の酵素を用意しなければならない。従って、
多種類の糖質を製造するためには多種類の酵素を必要と
し、これら多種類の糖質の工業的な安定供給を困難にし
ている。また、比較的基質特異性の低い酵素としてポリ
オール脱水素酵素やリビトール脱水素酵素などが知られ
ており[エンザイム ノメンクレイチャー(ENZYM
E NOMENCLATURE)、1992年、アカデ
ミック・プレス社(Academic Press,
Inc.)参照]、これら酵素の利用も考えられる。し
かしながら、従来知られているこれら酵素はその産生量
が低すぎたり、至適温度や温度安定性が低すぎたり、更
には、至適pHとpH安定性がかけ離れていたりするな
どの欠点を有しており、これら酵素を工業的に利用する
ことは極めて困難であり、多種類の糖質の工業的な供給
を困難にしている。
る上で、できるだけ少ない種類の酵素の利用により、で
きるだけ多種類の糖質を製造する方法の確立が強く望ま
れる。
解決するために、できるだけ多種類の糖質に作用する酵
素、とりわけ、リビトール脱水素酵素に着目して、その
酵素を産生する微生物を広く検索した。その結果、香川
県木田郡三木町の土壌から分離したエンテロバクター
(Enterobacter)属に属する新規な微生物
221e株は、多種類の糖質に作用する新規リビトール
脱水素酵素を産生すること、その産生量の多いこと、更
には、至適温度、温度安定性が比較的高く、しかも至適
pHとpH安定性がほぼ一致しており、本酵素を工業的
に利用する上で極めて有利であることを見出し、加え
て、本リビトール脱水素酵素又は本酵素活性を有する微
生物を、基質である糖アルコール又はケトースを含有す
る溶液に作用させることにより、多種類の希少糖質が容
易に製造しうることなどを見出し、本発明を完成した。
る微生物221eの同定試験結果を示す。なお、同定試
験は、『微生物の分類と同定』(長谷川武治編、学会出
版センター、1985年)に準拠して行った。
定試験結果】
×1.6乃至2.5μmの桿菌。単独。運動性なし。無
胞子。非抗酸性。グラム陰性。 (2)ポリペプトン寒天培養、27℃:通常、0.6乃
至1.1×1.6乃至2.5μmの桿菌。単独。周毛に
よる運動性あり。無胞子。非抗酸性。グラム陰性。
0.1mm。4日で0.1乃至0.2mm。 周縁 :全縁 隆起 :半レンズ状 光沢 :鈍光 表面 :平滑 色調 :不透明、うすい黄 (2)ポリペプトン平板寒天培養、27℃ 形状 :円形 大きさは24時間で
0.1mm。4日で0.5乃至2.5mm。 周縁 :全縁 隆起 :半レンズ状 光沢 :鈍光 表面 :平滑 色調 :不透明、うすい黄
4乃至40℃。 (15)酸素に対する態度 :通性嫌気性、好気的
条件の方が生育良好。 (16)糖からの酸の生成 D−グルコース :陽性 D−マンノース :陽性 L−アラビノース :陽性 D−キシロース :陽性 L−ラムノース :陽性 マルトース :陽性 スクロース :陽性 セロビオース :陰性 ラクトース :陽性 ラフィノース :陽性 ズルチトール :陽性 D−ソルビトール :陽性 D−マンニトール :陽性 アドニトール :陽性 グリセロール :陰性 ミオ−イノシトール :陽性 α−メチル−D−グルコース:陰性 (17)O−F試験 :発酵 (18)D−グルコースからのガスの生成:陽性 (19)アミノ酸の脱炭酸試験 :L−リジン、L−ア
ルギニン、オルニチン、いずれに対しても陰性。 (20)ゼラチンの分解 :陰性 (21)シアン化カリウム試験 :陽性 (22)DNAのG−C含量 :53.4%
ズ・マニュアル・オブ・デターミネーティブ・バクテリ
オロジー(Bergey´s Manual of D
eterminative Bacteriolog
y)』、第9版(1994年)を参考にして、公知菌と
の異同を検討した。その結果、本菌は、エンテロバクタ
ー・アグロメランスに属する菌株であることが判明し
た。
物をエンテロバクター・アグロメランス(Entero
bacter agglomerans)221eと命
名し、平成6年6月16日付けで、茨城県つくば市東1
丁目1番3号にある通商産業省工業技術院生命工学工業
技術研究所、特許微生物寄託センターに寄託し、受託番
号FERM BP−4700として受託された。
ロバクター属に属し、リビトール脱水素酵素産生能を有
する他の菌株やこれらの変異株なども適宜使用すること
ができる。本発明の微生物の培養に用いる培地は微生物
が生育でき、本発明のリビトール脱水素酵素を産生する
ものであればよく、合成培地及び天然培地のいずれでも
よい。炭素源としては、例えば、アルドース、ケトー
ス、糖アルコール、グリセロールなどから選ばれる1種
又は2種以上が適宜選ばれる。窒素源としては、例え
ば、アンモニウム塩、硝酸塩などの無機窒素化合物、及
び、例えば、尿素、コーン・スティープ・リカー、カゼ
イン、ペプトン、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素
含有物が用いられる。また、無機成分としては、例え
ば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナト
リウム塩、リン酸塩などが適宜用いられる。培養条件
は、微生物が生育し、本発明の酵素を産生する温度が適
しており、通常、約4乃至40℃、望ましくは、約20
乃至35℃、pH約5乃至9、望ましくは、約6乃至
8.5から選ばれる条件で好気的に行われる。
られる培養物から本発明の酵素を回収する。本酵素活性
は、主に菌体に認められ、菌体を酵素剤として利用して
もよく、また、培養物全体を酵素剤として用いることも
できる。菌体内酵素は、通常の手段を用いて菌体から抽
出し、粗酵素として用いることができる。粗酵素は、そ
のまま用いることもできるが、常法に従って、更に精製
することもできる。例えば、菌体磨砕抽出液をポリエチ
レングリコール分画、イオン交換クロマトグラフィー、
疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー
などを組合わせて電気泳動的に単一な酵素を得ることが
できる。
のようにして測定する。0.05Mグリシン・水酸化ナ
トリウム緩衝液(pH9.0)0.7ml、0.1Mリ
ビトール0.1ml、0.25M NAD+0.1ml
及び酵素液を加えて全容を1.0mlとし、30℃を保
って分光光度計で測定した。酵素活性1単位は、生成す
るNADHを340nmにおける吸光度として測定し、
1分間に1μmolのNADHを生成するに要する酵素
量とした。
して、リビトールをはじめ、第2位の炭素に結合するア
ルコール基(H−C−OH)がD−グリセロ配位を有す
る多種の糖アルコールとその糖アルコール基の代わりに
ケト基(C=O)を有している多種のケトースとの間の
変換反応に利用できる。従って、1種の酵素で多種の糖
質を産生できることとなり、工業的に極めて有利であ
る。
も高度に精製して用いる必要はなく、例えば、本リビト
ール脱水素酵素活性を有する微生物を用いることは、工
業的に糖質変換反応する上で好都合である。すなわち、
高度に精製されたリビトール脱水素酵素を用いる糖質変
換反応では、反応液に、基質の糖質に加えて、補酵素と
して、高価なNAD+又はNADHの添加を必須とする
が、該酵素活性を有する微生物を用いる場合には、微生
物自体がNAD+又はNADHを生合成及び再生する系
を有しており、これらを有効に利用できるので、該補酵
素の添加を必要とせず、極めて有利である。
の反応には、高度に精製されたリビトール脱水素酵素で
は、NAD+を必要とし、該酵素活性を有する微生物で
は、好気的条件、例えば、酸素、空気などを通気撹拌す
ればよい。ケトースから糖アルコールへの反応には、高
度に精製されたリビトール脱水素酵素では、NADHを
必要とし、該酵素活性を有する微生物では、嫌気的条
件、例えば、窒素、不活性ガスなどの環境に保てばよ
い。また、リビトール脱水素酵素、又は、リビトール脱
水素酵素活性を有する微生物を用いて、糖アルコールか
らケトースへの変換、又は、ケトースから糖アルコール
への変換をさせるには、リビトール脱水素酵素ととも
に、これと共役反応する酸化還元酵素、例えば、アルコ
ール脱水素酵素、乳酸脱水素酵素などを該酸化還元酵素
の基質共存下で作用させるか、又は、リビトール脱水素
酵素とともにこれと共役反応する酸化還元酵素を保有す
る微生物をその酸化還元酵素の基質共存下で作用させれ
ば、該変換反応を著しく促進することができる。この
際、酸化還元酵素のための基質としては、糖アルコール
からケトースへの変換の場合には、酸化型基質、例え
ば、アセトアルデヒド、ピルビン酸などを共存させるの
が好ましく、ケトースから糖アルコールへの変換の場合
には、還元型基質、例えば、エタノール、乳酸などの共
存が好ましい。また、微生物をトルエン処理したり、公
知の方法で固定化したりして用いることも随意である。
反応温度は、酵素が失活しない温度、例えば、4乃至5
0℃、望ましくは10乃至40℃で反応すればよい。反
応時間は、酵素反応の進行具合により適宜選択すればよ
く、通常、基質固形物グラム当たり約0.1乃至100
単位の酵素使用量で、0.1乃至100時間程度であ
る。
常、糖アルコールとケトースの両者を含有している。反
応液は、常法により、濾過、遠心分離などして不溶物を
除去した後、活性炭で脱色、H型、OH型イオン交換樹
脂で脱塩し、濃縮し、シラップ状製品にすることも、乾
燥して粉末状製品にすることも、更には、結晶性糖質を
結晶製品に仕上げることも随意である。必要ならば、更
に高度な精製をすることも随意である。例えば、イオン
交換カラムクロマトグラフィーによる分画、活性炭カラ
ムクロマトグラフィーによる分画、シリカゲルカラムク
ロマトグラフィーによる分画、アルカリ処理によるケト
ースの分解除去などの方法で高純度の糖質を得ることも
容易である。このようにして得られる各種糖質は、試薬
はもとより、甘味料、品質改良剤などとして食品工業
に、原材料、中間体などとして医薬品工業、化学工業な
ど多くの用途に有利に利用できる。以下、実験で本発明
を詳細に説明する。
eからのリビトール脱水素酵素の製造】エリスリトール
2.0w/v%、酵母エキス0.5w/v%、ポリペプ
トン0.5w/v%、食塩0.5w/v%及び水からな
る液体培地をpH7.0に調整した。この培地を500
ml容三角フラスコに100mlずつ入れ、オートクレ
ーブで120℃、20分間滅菌し、冷却して、エンテロ
バクター・アグロメランス 221e(FERM BP
−4700)を接種し、30℃で24時間振盪培養し
た。培養液を遠心分離して、菌体を培地1l当たり約5
gを採取し、これを、0.05Mグリシン・水酸化ナト
リウム緩衝液(pH10.0)共存下で、常法に従っ
て、アルミナ粉末とともに磨砕し、遠心分離して上清
(粗酵素液)75mlを得た。本液は、活性量1,77
6単位、比活性1.9単位/mg蛋白質であった。
得た粗酵素液を、氷冷し、これに0.03M塩化マンガ
ンを添加し、15分間撹拌し、次いで、ポリエチレング
リコールを終末12.5w/w%になるように加え、撹
拌溶解し、生じた不溶物を遠心分離して除去した。得ら
れた上清にポリエチレングリコールを終末15w/w%
になるように加え、撹拌溶解し、生じた不溶物を遠心分
離し、沈澱物を採取した。
−1で得た沈澱物を0.05Mグリシン・水酸化ナトリ
ウム緩衝液(pH10.0)に溶解し、不溶物を遠心分
離して除去し、上清20mlを得た。本上清を弱塩基性
陰イオン交換樹脂(東ソー製、商品名『DEAE−トヨ
パール650M』)を充填したカラムにかけて本酵素を
吸着させ、次いで、塩化カリウムによる0.08乃至
0.15Mの濃度勾配で溶出し、リビトール脱水素酵素
活性画分を採取した。
−2で得られた活性画分に硫安を濃度1.5Mになるよ
うに添加し、これを疎水性樹脂(東ソー製、商品名『フ
ェニル トヨパール 650M』)を充填したカラムに
かけて本酵素を吸着させ、次いで、硫安による1.5乃
至0Mの濃度勾配で溶出し、リビトール脱水素酵素活性
画分を採取した。
3で得た活性画分を濃縮し、これをビーズ状デキストラ
ンゲル(ファルマシア社製、商品名『セファデックス
G−150』)を充填したカラムにかけ、0.05Mグ
リシン・水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)で溶
出し、リビトール脱水素酵素活性画分を採取した。上述
の各精製工程における酵素活性量、比活性、収率を表1
に示す。
た精製酵素標品をポリアクリルアミドゲルディスク電気
泳動法で純度を検定したところ、単一バンドであること
が確認され、電気泳動的に極めて高純度の酵素標品であ
ることが判明した。
で得た精製リビトール脱水素酵素を用いて、その理化学
的性質を調べた。
存下でリビトールに作用させるとD−リブロースを生成
し、NADH共存下でD−リブロースに作用させるとリ
ビトールを生成する。
糖アルコールを基質に活性を測定した。リビトールを1
00とした時の各種糖アルコールに対する相対活性を表
2に示す。
ールに対して最も高い活性を示した。他にアリトール、
L−アラビトール、L−マンニトール、キシリトール、
L−ソルビトール、L−タリトール、L−イディトー
ル、D−ソルビトール、ガラクチトール及びエリスリト
ールに活性を示した。これらの糖アルコールに作用する
反応様式について検討した結果、それらの反応様式は共
通しており、その一例としてリビトールの場合を示すと
化1のとおりである。
ール脱水素酵素は、第2位の炭素に結合するアルコール
基(H−C−OH)がD−グリセロの配位を持つ糖アル
コールに作用する。第2位の炭素に結合するアルコール
基がL−グリセロの配位を持つD−イディトール、D−
マンニトール及びD−タリトールには活性を示さない。
これらの基質から生産されるケトースをイオン交換カラ
ムクロマトグラフィーによって単離し、高速液体クロマ
トグラフィーによって確認した結果を表3にまとめた。
ルに対するKm値を求めた。結果は表4に示す。
ルに対する親和性が最も高く、そのKm値は32.2m
Mである。なお、補酵素は、NAD+を要求し、NAD
P+を要求しない。
000ダルトンを示す。 (2) ゲル濾過法で約71,000乃至81,000
ダルトンを示す。ゲル濾過法の結果が、SDS−PAG
Eの結果の約3倍になることから、リビトール脱水素酵
素は、3量体で存在していることが推察される。
電点電気泳動法で、pI約4.4乃至5.4を示す。
1mM Ca2+では活性を阻害せず、1mM Ag2+で
は活性を阻害する。
結果は、図1に示すように、pH10、1分間反応で、
約50乃至60℃が至適である。
結果は、図2に示すように、30℃、1分間反応で、p
H約9乃至10が至適である。図中、●はクエン酸塩緩
衝液、□はマレイン酸塩緩衝液、■はトリス・塩酸緩衝
液、○はグリシン・水酸化ナトリウム緩衝液を示す。
た。結果は、図3に示すように、pH10、10分間保
持で、30℃付近まで安定である。
た。結果は、図4に示すように、4℃、24時間保持
で、pH約9乃至11が安定である。図中、●はクエン
酸塩緩衝液、□はマレイン酸塩緩衝液、■はトリス・塩
酸緩衝液、○はグリシン・水酸化ナトリウム緩衝液を示
す。
素酵素は、至適温度、温度安定性が比較的高く、しかも
至適pH、pH安定性がほぼ一致しており、工業的に利
用する上で極めて有利である。以下、本発明の実施例を
述べる。
法に準じて、炭素源として、糖アルコール、グリセロー
ルなどを用いて液体培地を調製し、500ml容三角フ
ラスコに100mlずつ入れ、実験1と同様に、加熱滅
菌し、冷却し、これにエンテロバクター・アグロメラン
ス221e(FERM BP−4700)を植菌し、3
0℃、24時間培養してリビトール脱水素酵素を製造し
た。培養終了後、実験1と同様に集菌し、菌体を磨砕
し、遠心分離して上清のリビトール脱水素酵素活性を測
定し、培地100ml当たりの酵素生産量(単位)を求
めた。結果は表5に示した。
リビトール脱水素酵素は、炭素源として、リビトールだ
けでなく、エリスリトール、L−アラビトール、グリセ
ロールを用いてもよく産生される。とりわけ、エリスリ
トールを用いる場合がよく産生される。
ビトール脱水素酵素を用いて、糖アルコールからケトー
スを製造した。0.01M糖アルコール溶液10mlに
0.2M NAD+10mlを混合し、pH約9乃至1
0に維持しつつ、これに実験2の方法で調製した精製リ
ビトール脱水素酵素50単位を加えて30℃で10時間
反応させ、90℃に加熱して酵素を失活させた。この反
応液を高速液体クロマトグラフィーで分析した。原料の
糖アルコールに対するケトースの生成率は、いずれも約
50乃至70%であった。原料の糖アルコールと生産物
のケトースとの関係は表3と同じである。
ビトール脱水素酵素と乳酸脱水素酵素の共役反応を用い
て糖アルコールからケトースを製造した。0.05M糖
アルコール、1mM NAD+、0.08Mピルビン酸
ソーダを含む0.1Mグリシン・水酸化ナトリウム緩衝
液(pH9.0)10mlに市販乳酸脱水素酵素100
単位及び実験2の方法で調製したリビトール脱水素酵素
20単位を添加して30℃で5時間反応させ、90℃に
加熱して酵素を失活させた。この反応液を高速液体クロ
マトグラフィーで分析した。生産されたケトース生成率
はいずれも90%以上であった。原料の糖アルコールと
生産物のケトースとの関係は表3と同じである。
ビトール脱水素酵素を用いてケトースから糖アルコール
を製造した。0.01Mケトース溶液10mlに0.2
M NADH10mlを混合し、pH約9乃至10に維
持しつつ、これに実験2の方法で調製した精製リビトー
ル脱水素酵素50単位を加えて30℃で10時間反応さ
せ、90℃に加熱して酵素を失活させた。得られる反応
液を高速液体クロマトグラフィーで分析した。原料のケ
トースに対する糖アルコール生成率は、いずれも約80
%以上であった。原料のケトースと生産物の糖アルコー
ルとの関係を表6にまとめた。
実験1の方法で調製したリビトール脱水素酵素活性を有
する微生物を用いてヘキシトールからケトヘキソースを
製造した。0.1Mヘキシトール溶液100mlを50
0ml容三角フラスコにとり、pH約9乃至10に維持
しつつ、これに実験1の方法で得たリビトール脱水素酵
素活性を有するエンテロバクター・アグロメランスの洗
浄菌体5gを加え、30℃で10時間振盪して好気的条
件に保って反応させた。得られる反応液を遠心分離して
不溶物を除去し、上清を高速液体クロマトグラフィーで
分析した。原料のヘキシトールに対するケトヘキソース
の生成率は、いずれも約90%以上であった。原料のヘ
キシトールと生産物のケトヘキソースとの関係を表7に
まとめた。
実験1の方法で調製したリビトール脱水素酵素活性を有
する微生物を用いて、ケトヘキソースからヘキシトール
を製造した。0.1Mケトヘキソース溶液100mlを
500ml容三角フラスコにとり、pH約9乃至10に
維持しつつ、これに実験1の方法で得たリビトール脱水
素酵素活性を有するエンテロバクター・アグロメランス
の洗浄菌体5gを加え、30℃で10時間、窒素ガスを
通気した嫌気的条件に保って反応させた。得られる反応
液を遠心分離して不溶物を除去し、上清を高速液体クロ
マトグラフィーで分析した。原料のケトヘキソースに対
するケトヘキシトールの生成率は、いずれも約90%以
上であった。原料のケトヘキソースと生産物のヘキシト
ールとの関係を表8にまとめた。
実験1の方法で調製したリビトール脱水素酵素活性を有
する微生物のトルエン処理菌体を用いて、本菌の有する
アルコール脱水素酵素と共役反応させることによりケト
ヘキソースからヘキシトールを製造した。実験1の方法
で用いたリビトール脱水素酵素活性を有するエンテロバ
クター・アグロメランスの洗浄菌体5gを含む100m
lの水溶液にトルエン5ml添加し、30℃にて10分
間振盪しトルエン処理を行った後、遠心分離により水で
洗浄し、トルエン処理菌体を得た。0.1Mケトヘキソ
ース溶液100mlを500ml容三角フラスコにと
り、NAD+及びエタノールを最終濃度がそれぞれ0.
5mM及び5%となるように加え、pH約9乃至10に
維持しつつ、これに前述のトルエン処理菌体5gを加
え、30℃で10時間反応させた。得られる反応液を遠
心分離して不溶物を除去し、上清を高速液体クロマトグ
ラフィーで分析した。原料のケトヘキソースに対するヘ
キシトールの生成率は、いずれも約90%以上であっ
た。原料のケトヘキソースと生産物のヘキシトールとの
関係は表8と同じである。
準じて、0.1M L−タリトール1lにリビトール脱
水素酵素活性を有する微生物の洗浄菌体25gを加え、
好気的条件下で30℃、16時間反応させ、L−タリト
ールをL−タガトースに変換させた。次いで、反応液を
遠心分離して不溶物を除去し、この上清を常法に従っ
て、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂で脱
塩精製し、更に濃縮し、無水エタノールを加えて、L−
タガトースの結晶を、晶出させ、これを濾別して採取
し、更にこれを少量の水に溶解、再結して高純度のL−
タガトースの結晶を得た。本L−タガトース結晶のL−
タリトールに対する収率は、約85%であった。本品
は、甘味料、品質改良剤、保湿剤などとして食品、化粧
品、医薬品などに有利に利用できる。
トール脱水素酵素は、多種の糖質変換に有利に利用さ
れ、しかも、必ずしも高度に精製して作用させる必要も
なく、希少糖質の工業生産に有利に利用することができ
る。本発明によって、従来極めて入手困難であった多種
類の希少糖質を容易に提供できることとなり、それが与
える影響は、食品、化粧品、医薬品、化学工業など多方
面に及ぶことが期待され、その工業的意義は極めて大き
い。
トール脱水素酵素の活性に及ぼす温度の影響を示す図で
ある。
トール脱水素酵素の活性に及ぼすpHの影響を示す図で
ある。
トール脱水素酵素の温度安定性を示す図である。
トール脱水素酵素のpH安定性を示す図である。
Claims (14)
- 【請求項1】 下記の理化学的性質を有するリビトール
脱水素酵素。 (1) 作用 NAD+共存下でリビトールに作用させるとD−リブロ
ースを生成し、NADH共存下でD−リブロースに作用
させるとリビトールを生成する。 (2) 基質特異性 基質特異性は低く、リビトールのみならず、アリトー
ル、L−アラビトール、L−マンニトール、キシリトー
ル、L−ソルビトール、L−タリトール、L−イディト
ール、D−ソルビトール、ガラクチトール及びエリスリ
トールの糖アルコールにも作用する。これら糖アルコー
ルは、NAD+共存下で、その第2位の炭素のアルコー
ル基がケト基に酸化されケトースになる。 (3) 分子量 SDS−PAGEで、約20,000乃至30,000
ダルトンを示す。ゲル濾過法で、約71,000乃至8
1,000ダルトンを示す。 (4) 等電点 等電点電気泳動法で、pI約4.4乃至5.4を示す。 (5) 活性阻害 1mM Ca2+では活性を阻害せず、1mM Ag2+で
は活性を阻害する。 (6) 至適温度 pH10、1分間反応で、約50乃至60℃を示す。 (7) 至適pH 30℃、1分間反応で、pH約9乃至10を示す。 (8) 温度安定性 pH10、10分間保持で、30℃付近まで安定。 (9) pH安定性 4℃、24時間保持で、pH約9乃至11を示す。 - 【請求項2】 リビトール脱水素酵素が、エンテロバク
ター属に属する微生物由来の酵素である請求項1記載の
リビトール脱水素酵素。 - 【請求項3】 リビトール脱水素酵素産生能を有するエ
ンテロバクター属に属する微生物を培養し、培養物から
請求項1記載のリビトール脱水素酵素を採取することを
特徴とするリビトール脱水素酵素の製造方法。 - 【請求項4】 微生物が、エンテロバクター・アグロメ
ランス 221e(FERM BP−4700)である
請求項3記載のリビトール脱水素酵素の製造方法。 - 【請求項5】 リビトール脱水素酵素産生能を有するエ
ンテロバクター・アグロメランス 221e(FERM
BP−4700)。 - 【請求項6】 糖アルコール含有溶液に、NAD+共存
下で請求項1又は2記載のリビトール脱水素酵素を作用
させて、該糖アルコールを酸化してケトースを生成させ
るか、又はケトース含有溶液にNADH共存下で該リビ
トール脱水素酵素を作用させて、該ケトースを還元して
糖アルコールを生成させることを特徴とする糖アルコー
ルとケトースとの変換方法。 - 【請求項7】 糖アルコール含有溶液に、NAD+共存
下で請求項1又は2記載のリビトール脱水素酵素を作用
させて、該糖アルコールを酸化してケトースを生成させ
るに際し、他の酸化還元酵素とその酸化型基質を共存さ
せるか、又は、ケトース含有溶液にNADH共存下で該
リビトール脱水素酵素を作用させて該ケトースを還元し
て糖アルコールを生成させるに際し、他の酸化還元酵素
とその還元型基質を共存させて、リビトール脱水素酵素
と他の酸化還元酵素とを共役反応させることを特徴とす
る糖アルコールとケトースとの変換方法。 - 【請求項8】 糖アルコール含有溶液に、好気的条件下
で、請求項1又は2記載のリビトール脱水素酵素活性を
有する微生物を接触せしめ、該糖アルコールを酸化して
ケトースを生成させるか、又はケトース含有溶液に、嫌
気的条件下で、該リビートル脱水素酵素活性を有する微
生物を接触せしめ、該ケトースを還元して糖アルコール
を生成させることを特徴とする糖アルコールとケトース
との変換方法。 - 【請求項9】 糖アルコール含有溶液に、請求項1又は
2記載のリビトール脱水素酵素活性を有する微生物を接
触せしめ、該糖アルコールを酸化してケトースを生成さ
せるに際し、該微生物が保有する他の酸化還元酵素のた
めの酸化型基質を共存させるか、又は、ケトース含有溶
液に該リビトール脱水素酵素活性を有する微生物を接触
せしめ、該ケトースを還元して糖アルコールを生成させ
るに際し、該微生物が保有する他の酸化還元酵素のため
の還元型基質を共存させて、リビトール脱水素酵素と他
の酸化還元酵素とを共役反応させることを特徴とする糖
アルコールとケトースとの変換方法。 - 【請求項10】 糖アルコールが、リビトール、アリト
ール、L−アラビトール、L−マンニトール、キシリト
ール、L−ソルビトール、L−タリトール、L−イディ
トール、D−ソルビトール、ガラクチトール及びエリス
リトールから選ばれる糖アルコールであることを特徴と
する請求項6、7、8又は9記載の糖アルコールとケト
ースとの変換方法。 - 【請求項11】 糖アルコール含有溶液に、NAD+共
存下で、請求項1又は2記載のリビトール脱水素酵素を
作用させるか、又は、好気的条件下で該リビトール脱水
素酵素活性を有する微生物を接触せしめ、該糖アルコー
ルを酸化して生成するケトースを採取することを特徴と
するケトースの製造方法。 - 【請求項12】 糖アルコールが、リビトール、アリト
ール、L−アラビトール、L−マンニトール、キシリト
ール、L−ソルビトール、L−タリトール、L−イディ
トール、D−ソルビトール、ガラクチトール及びエリス
リトールから選ばれる糖アルコールであることを特徴と
する請求項11記載のケトースの製造方法。 - 【請求項13】 ケトース含有溶液に、NADH共存下
で、請求項1又は2記載のリビトール脱水素酵素を作用
させるか、又は、嫌気的条件下で該リビトール脱水素酵
素活性を有する微生物を接触せしめ、該ケトースを還元
して生成する糖アルコールを採取することを特徴とする
糖アルコールの製造方法。 - 【請求項14】 糖アルコールが、リビトール、アリト
ール、L−アラビトール、L−マンニトール、キシリト
ール、L−ソルビトール、L−タリトール、L−イディ
トール、D−ソルビトール、ガラクチトール及びエリス
リトールから選ばれる糖アルコールであることを特徴と
する請求項13記載の糖アルコールの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6218155A JPH0856659A (ja) | 1994-08-20 | 1994-08-20 | リビトール脱水素酵素とその製造方法並びに用途 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6218155A JPH0856659A (ja) | 1994-08-20 | 1994-08-20 | リビトール脱水素酵素とその製造方法並びに用途 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0856659A true JPH0856659A (ja) | 1996-03-05 |
Family
ID=16715506
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6218155A Pending JPH0856659A (ja) | 1994-08-20 | 1994-08-20 | リビトール脱水素酵素とその製造方法並びに用途 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0856659A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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1994
- 1994-08-20 JP JP6218155A patent/JPH0856659A/ja active Pending
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