JPH06102027B2 - L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法 - Google Patents

L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法

Info

Publication number
JPH06102027B2
JPH06102027B2 JP20086187A JP20086187A JPH06102027B2 JP H06102027 B2 JPH06102027 B2 JP H06102027B2 JP 20086187 A JP20086187 A JP 20086187A JP 20086187 A JP20086187 A JP 20086187A JP H06102027 B2 JPH06102027 B2 JP H06102027B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phenylbutyric acid
acid
keto
amino
reaction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP20086187A
Other languages
English (en)
Other versions
JPS6447386A (en
Inventor
泰久 浅野
源司 岩崎
聖 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sagami Chemical Research Institute (Sagami CRI)
Original Assignee
Sagami Chemical Research Institute (Sagami CRI)
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sagami Chemical Research Institute (Sagami CRI) filed Critical Sagami Chemical Research Institute (Sagami CRI)
Priority to JP20086187A priority Critical patent/JPH06102027B2/ja
Publication of JPS6447386A publication Critical patent/JPS6447386A/ja
Publication of JPH06102027B2 publication Critical patent/JPH06102027B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、2−ケト−4−フェニル酪酸を基質として、
L−2−アミノ−4−フェニル酪酸を製造する方法に関
する。L−2−アミノ−4−フェニル酪酸は、非天然型
生理活性ペプチドや、エナラプリル等のアンジオテンシ
ン変換酵素阻害剤の合成中間体として有用な物質であ
る。
(従来の技術) 従来、L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造法とし
ては、ロイシンアミノペプチターゼを用いるDL−2−ア
ミノ−4−フェニル酪酸アミドの不斉加水分解による方
法(タナから、Bulletin of the Chemical Society of
Japan,)31,529(1958))、DL−2−アミノ−4−フェ
ニル酪酸をブルシンを用いて光学分割する方法(アロル
ドら、Journal fr Praktische Chemie,318,420,(197
6))及びDL−2−アセトアミド−4−フェニル酪酸メ
チルエステルのズブチリシンによる不斉加水分解とそれ
に続く酸加水分解による方法(シュトら、Biotechnolog
y and Bioengineering,27,420(1985))がわずかに知
られていたにすぎない。これらはいずれもラセミ体の光
学分割を行うものであり、そのため操作がはん雑であ
り、収率も好ましいものではない。
特開昭62−289及び特開昭62−111693には、種々の微生
物をα−ケト酸及びアンモニウムイオンと共に培養する
か、または、微生物の菌体もしくは、その処理物をα−
ケト酸及びアンモニウムイオンに作用せしめることによ
ってL−アミノ酸を製造する方法が記載されている。し
かしながら、これらの明細書にも、2−ケト−4−フェ
ニル酪酸を基質とするL−2−アミノ−4−フェニル酪
酸の製造法については全く言及されていない。
特開昭62−40294には、種々の微生物もしくはその処理
物をαーケト酸、フマール酸、アンモニウムイオン又は
尿素に作用せしめることによりL−アミノ酸を製造する
方法が記載されている。しかしながら、この明細書に
は、この方法においていかなる酵素が関与するかについ
ては言及されていない。また、2−ケト−4−フェニル
酪酸を基質とするL−2−アミノ−4−フェニル酪酸の
製造法について全く記述されていない。
特開昭59−198972には、L−フェニルアラニンデヒロゲ
ナーゼ及びこの酵素を利用するL−α−アミノカルボン
酸の製造方法が記載されている。しかしながら、この明
細書に記載されているL−フェニルアラニンデヒドロナ
ーゼは、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌
により生産されたものであり、スポロサルシナ(Sporo-
sarcina)属及びバルシス(Bacillus)属細菌が同様の
酵素を生産することは、示唆されていない。また、2−
ケト−4−フェニル酪酸を基質とするL−2−アミノ−
4−フェニル酪酸の製造法については全く言及されてい
ない。
浅野ら、昭和61年度日本農芸化学会大会講演要旨集p22
2;浅野ら、第35回アミノ酸・核酸シンポジウム講演要旨
集p19;浅野,昭和61年後期有機合成化学講習会テキス
ト,p77;アサノら,Agricultural and Biological Chemis
try,51,2035(1987)にはフェニルアラニン脱水素酵素
を用いるα−ケト酸からのL−アミノ酸合成について配
慮されているが、2−ケト−4−フェニル酪酸を基質と
するL−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造法につい
ては言及されていない。従って、酵素を用いて、2−ケ
ト−4−フェニル酪酸よりL−2−アミノ−4−フェニ
ル酪酸を製造する方法は全く知られていない。
(発明が解決しようとする問題点) 従って、本発明は、2−ケト−4−フェニル酪酸を基質
として、酵素触媒を用いてL−2−アミノ−4−フェニ
ル酪酸を容易に製造する方法を提供しようとするもので
ある。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、フェニルアラニン脱水素酵素を用いて、2−
ケト−4−フェニル酪酸又はその塩を、L−2−アミノ
−4−フェニル酪酸に変換せしめてL−2−アミノ−4
−フェニル酪酸を製造する方法である。本発明に用いら
れる2−ケト−4−フェニル酪酸は例えば公知の方法
(ワインストックら、Synthetic Communications,11,94
3(1981))に従って2−ケト−4−フェニル酪酸エチ
ルを合成し、続いて通常の方法により酸加水分解によっ
て得ることができる。
酵素の様態としては特に制限はないが、酵素源を含む処
理物、微生物培養液、培養液から分離した菌体又は分離
した菌体又は分離菌体の処理物、これから得た酵素剤、
担体に固定化された菌体あるいは酵素剤等酵素反応手段
として実施される方法であれば反応に供することができ
る。
アミノ酸脱水素酵素反応による2−ケト−4−フェニル
酪酸の製造の様態については特に制限はないが、通常は
前記のアミノ酸脱水素酵素を含む反応液に基質としての
2−ケト−4−フェニル酪酸、アンモニウムイオンある
いはアンモニウムイオンを生成する系、例えば尿素とウ
レアーゼの組み合わせ、NADHあるいはNADHを生成する酵
素反応系例えば蟻酸ナトリウムと蟻酸脱水素酵素が添加
される。原料のモル比は化学量論的で良いが、アンモニ
ウムイオンのモル比を酵素反応を阻害しない程度に増大
させることにより、アミノ酸脱水素酵素反応の平衡をL
−2−アミノ−4−フェニル酪酸合成側にかたむけるこ
とが出来るので特に好ましい。NADHは高価であるのでNA
D+の形で合成反応系内に添加し、NADHへ再生、リサイク
ルする基質と酵素の組み合わせを組み入れることが好ま
しい。
酵素の使用量は酵素の態様、種類、力価に基ずいて定め
られ必ずしも一律に規定し得ないが、10〜100,000単位/
l(但し、1単位とは1μmol/minにて生成物を生成する
酵素量とする。)程度が適当である。反応液のpHは酵素
の至適pHに依存するが、pH5〜10の範囲で行われる。反
応温度も酵素の至適温度に依存するが、通常は10〜80℃
程度が程当である。反応時間は特に限定されないが、反
応混合物の基質濃度、酵素力価に依存して基質が十分な
収率で転換されるまで反応を維持する。
本発明のフェニルアラニン脱水素酵素を用いる場合につ
いて更に詳細に説明する。
フェニルアラニン脱水素酵素生産株は、特に限定されな
いが、例えばバシルス属やスポロサルシナ属細菌を用い
ることができる。
スポロサルシナ属に属する微生物としては、スポロサル
シナ・ウレアエを挙げることができる。具体的な菌株と
して、例えばスポロサルシナ・ウレアエIFO12698、及び
スポロサルシナ・ウレアエIFO12699(ATCC6473)、並び
にスポロサルシナ・ウレアエSCRC−R04を挙げることが
できる。前記の保存菌はそれぞれ前記寄託番号のもとに
IFO又はATCCから自由に入手することができ、またスポ
ロサルシナ・ウレアエSCRC−R40は工業技術院微生物工
業技術研究所に微工研条寄第1012号(FERM BP−1012)
として国際寄託されている。このSCRC−R04株は、好気
性で運動性及び胞子形成能を有し、グラム陽性の2連〜
4連の球菌であること等から、バージイズ・マニュアル
・オブ・ディターミネイティブ・バクテリオロジー(Be
rgey′s Manual of Deter-minative Bacteriology)第
8版、1974年の分類基準に従って固定されたものであ
り、その詳細な菌学的性質は特開昭61−239887および特
開昭61−239888明細書に記載されている。
バシルスに属する微生物としては、例えばバシルス・ア
ルベイ(Bacillus alvei)IFO3343;バシルス・チアミノ
リティカス(Bacillus thiaminolyticus)IAM1034、微
工研菌寄第8528号(FERM P−8528);バシルス・バディ
ウス(Bacillus badius) IAM11059(ATCC14574)微工研菌寄第8529号(FERM P−8
529);バシルス・スフェリカスIFO12622;バシルス・ス
フェリカス(Bacillus sphaericus)IAM1288、微工研菌
寄第8527号(FERM P−8527)を挙げることができる。
これらはいずれもIFOカタログ、ATCCカタログ、又はJFC
Cカタログに記載されており、容易に入手することがで
きる。また、本発明者等が土壌より分離した新菌株バル
シスsp.SCRC−R53b、バシルスsp.SCRC−R79a、バシルス
sp.SCRC−101A、及びバシルスsp.SCRC−114Dを挙げるこ
とができる。これらの菌株の菌学的性質は非常に近似し
ており、これらの代表株としてバシルスsp.SCRC−R79a
が工業技術院微生物工業技術研究所に微工研条寄第1013
号(FERMBP−1013)として国際寄託されている。またバ
シルスsp.SCRC−114Dが微工研条寄第1011号として国際
寄託されている。
SCRC−R53b、SCRC−R79a、SCRC−101A、及びSCRC−114D
株はいずれもグラム陽性の桿菌で内生胞子を形成し、カ
タラーゼの生成が認められることからバシルス属に属す
るものと同定された。これらの菌株の詳細な菌学的性質
は特開昭61-239887及び、特開昭61-239888明細書に記載
されている。
本発明の方法において使用するフェニルアラニン脱水素
酵素の性質は特開昭61−239887および特開昭61−239888
に記載されている。酵素の力値の測定法は公知の方法
(アサノら、Agricultural and Biological Chemistry,
49,3631(1985))に準じて行なった。
なお、フェニルアラニン脱水素酵素生産菌に変異を生じ
させて一層生産性の高い菌株を得ることもできる。これ
らの菌株の細胞中に存在するフェニルアラニン脱水素酵
素の生産に関与する遺伝子を切り出し、これを適切なベ
クター例えばプラスミドに挿入し、このベクターを用い
て適当な宿主、例えばエッシェリッヒア・コリ(Escher
ichia coli)や酵母のごとき異種宿主、またはバシルス
属菌株もしくはスポロサルシナ属のごとき同種宿主を形
質転換することにより、本酵素発明の方法においてフェ
ニルアラニン脱水素酵素生産株を人為的に創製すること
もできる。微生物を培養しようとする場合、微生物が増
殖しフェニルアラニン脱水素酵素を生産し得るもの、又
はα−ケトカルボン酸のL−アミノ酸への変換を行うこ
とができるものであればいずれの培地でもよい。詳しく
は、この培地は、窒素源として例えば酵母エキス、ペプ
トン、肉エキス等の1種類又は複数種類を含有する。ま
た、この培地には、必要に応じて炭素源としてグルコー
ス、澱粉、グリセリン等を加えることができる。この培
地には無機塩類、例えばリン酸二カリウム、塩化ナトリ
ウム、硫酸マグネシウム等を加えることが好ましい。
培養は固体培地又は液体培地のいずれかを用いて行って
もよいが、液体培地を用い、振とう培養、通気、攪拌培
養等により好気的条件下で培養を行うのが好ましい。培
養温度は菌が成育する温度範囲内であればいずれの温度
でも良いが、好ましくは25℃〜45℃である。pH6〜11、
好ましくは7〜10の範囲である。培養時間は好ましく
は、6〜48時間である。
得られた培養物からフェニルアラニン脱水素酵素を採取
する場合、精製法として通常の酵素精製法を用いること
ができる。遠心分離等によって菌体を集め、超音波処
理、ダイノミル等の機械的方法によって菌体を破砕す
る。細胞片などの固形物を遠心分離などによって除き、
粗酵素を得、さらにこれを硫酸プロタミン又は硫酸スト
レプトマイシンを加えて処理を行い、塩析、有機溶媒沈
澱、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラ
フィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等を行い、さらに
硫酸アンモニウム等の塩やポリエチレングリコール等の
添加により結晶化等の公知の方法によって均一の結晶酵
素標品を単離することができる。
この方法において使用されるフェニルアラニン脱水素酵
素の使用形態は特に限定されない。例えば、精製された
酵素を使用することができるのは無論のこと、細胞を含
有する培養液、培養生菌体、アセトン等によって脱水処
理された乾燥菌体、菌体破砕物、種々の段階まで精製さ
れた部分精製酵素標品等の酵素含有物を使用することが
できる。さらにこれらの酵素または酵素含有物を常法に
従って固定化したものを使用することもできる。
工業的な実施に当たっては生菌体、アセトン処理菌体、
固定化菌体等を用いるのが有利である。
反応中のフェニルアラニン脱水素酵素を含有する微生物
の培養液、菌体、菌体処理物あるいは、酵素の量は基質
である2−ケト−4−フェニル酪酸はその塩の濃度によ
って異なり特に限定されないが、通常10〜100,000単位/
lとするのが便利である。
基質としての2−ケト−4−フェニル酪酸の塩としは、
例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシ
ウム塩等を使用することができる。2−ケト−4−フェ
ニル酪酸又はその塩の添加量は、反応液中の前記酵素の
濃度等により異なり特に限定されないが、1〜500g/lと
するのが便利である。低濃度で使用する場合には遊離酸
の形で使用することができるが、比較的高濃度で使用す
る場合には塩の形で使用するのがpH調整の観点から好ま
しい。
また2−ケト−4−フェニル酪酸のアンモニウム塩を使
用することもでき、この場合このアンモニウム塩は、2
−ケト−4−フェニル酪酸の給源であると同時に、後に
記載するアンモニウムイオンの給源としても機能する。
2−ケト−4−フェニル酪酸又はその塩はバッチ式反応
においては、反応開始時に一度に添加することもでき、
又反応の進行と共に複数回に分割して、もしくは連続的
に添加することもできる。アンモニウムイオンの給源と
してはアンモニウム塩、例えば塩化アンモニウム又は硫
酸アンモニウムの形で使用するのが便利である。また、
アンモニアガス又は水酸化アンモニウム水溶液を、反応
液のpHを所定値に維持しながら反応の進行と共に連続的
に導入することも可能である。前記のように2−ケト−
4−フェニル酪酸のアンモニウム塩を使用するに場合に
はこの物質がアンモニウムイオンの給源としても機能す
る。アンモニウム塩の使用量は2−ケト−4−フェニル
酪酸の量と同モル量又はそれより多量とする。この量は
一般に2−ケト−4−フェニル酪酸の量に対して1〜10
0倍モル量とするのが便利である。アンモニウム塩のモ
ル量を多くすることによって酵素反応の平衡をL−アミ
ノ酸側に傾け、2−ケト−4−フェニル酪酸に対するL
−アミノ酸の収率を上昇せしめることができる。
NADHは、2−ケト−4−フェニル酪酸と等モルを加えて
もよいが、NADHは非常に高価であるから、工業的見地か
ら、前記の反応系のほかに、NADH再生系、すなわち前記
反応により、生成したNAD+をNADHに還元する系を共有さ
せるのが好ましい。このような系としてNAD+をNADHに変
換する酵素とその基質との組み合わせ、例えば蟻酸脱水
素酵素(EC1.2.1.2.)と蟻酸、グルタミン酸脱水素酵素
(EC1.4.1.2.)とグルタミン酸、アルコール脱水素酵素
(EC1.1.1.1.)とエタノール、アルデヒド脱水素酵素
(EC1.2.1.3.)とアセトアルデヒド、グリコース−6−
リン酸脱水素酵素(EC1.1.1.49)とグルコース−6−リ
ン酸等を使用することができる。また、ヒドロゲナーゼ
(EC1.18.3.1.)による分子状水素を電子供与体とするN
AD+のNADHへの還元反応や、電気化学的に還元されたメ
チルビオローゲンやジヒドロリポアミドのジホラーゼ
(EC1.6.4.3.)による酸化に伴うNAD+のNADHへの還元反
応をも使用することができる。蟻酸脱水素酵素と蟻酸を
使用する場合、NAD+が還元されてNADHとなると同時に蟻
酸が酸化されて二酸化炭素が生成し、これは反応系から
容易に除去され、反応が常に所望の方向に進行するため
特に好ましい。蟻脱水素酵素は市販されており容易に入
手する事ができる。又、例えばカンジタ・ボイディニ
(Candida boidinii)No.2201(AKU4705)や、ハンゼヌ
ラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(ATCC2601
2)から公知の方法〔カトウら、Agricultural and Biol
ogical Chemistry,38,111〜116(1974)〕により精製し
て使用することもできる。また蟻酸脱水素酵素を菌体に
含む形態で反応に供する場合、菌体の前処理は公知の方
法〔イズミら、Journal of Fermentation Technology,6
1,135 1983)〕の方法を用いることができる。
NADH再生系の酵素濃度はフェニルアラニン脱水素酵素濃
度に依存して異なり、一般に基質2−ケト−4−フェニ
ル酪酸の還元的アミノ化速度(従ってNAD+生成速度)に
匹敵する速度でNAD+をNADHに還元するために必要な量で
ある。例えば、前記のように10〜100,000単位/lのフェ
ニルアラニン脱水素酵素を使用し、NADH再生系酵素とし
て蟻酸脱水素酵素を使用する場合、この酵素の使用量は
10〜100,000単位/l程度とするのが、好ましい。蟻酸脱
水素酵素の基質としては蟻酸の塩、例えば蟻酸ナトリウ
ム、蟻酸カリウム、蟻酸アンモニウム等を使用するのが
便利である。蟻酸塩の使用量はα−ケト酸又はその塩の
量の1〜2倍モル量とするのが好ましい。NADH再生系を
用いる場合は、NAD+又はNADHを通常の生理的濃度である
0.1〜10mM加えればよい。
反応媒体しては水、又はアセトン、アセトニトリル、DM
SO,DMFなど含む水性液、例えば水性緩衝液を用いること
ができる。緩衝液としては例えばトリス−HCl緩衝液、
グリシン−NaOH緩衝液等を使用することができる。
反応液のpHとしては、前記のNADH再生系を用いない場合
には、フェニルアラニン脱水素酵素による還元的アミノ
化に適するpHを用いることができ、例えばスポロサルシ
ナ属細菌由来の酵素を用いる場合にはpH8〜10、好まし
くは、pH約9とし、バシルス属細菌由来の酵素を用いる
場合にはpH9〜11、好ましくはpH約10とする。2−ケト
−4−フェニル酪酸の還元的アミノ化系と共にNADH再生
系を用いる場合には、これら両者の反応が共に良好に進
行するpH範囲を選択する必要がある。このようなpHは、
例えば、スポロサルシナ属細菌由来のフェニルアラニン
脱水素酵素とカンジダ・ボイディニ由来の蟻酸脱水素酵
素を用いる場合には通常はpH7.5〜9.5、好ましくpH8.0
〜9.0である。また、バシルス属細菌由来のフェニルア
ラニン脱水素酵素とカンジダ・ボイディニ由来の蟻酸脱
水素酵素を用いる場合には通常はpH8〜10好ましくは、p
H8.5〜9.5である。
反応温度も、反応pHの場合と同様に考えることができる
が酵素のいずれの組み合わせにおいても通常は20℃〜50
℃、好ましくは25℃〜40℃である。
反応時間は特に限定されないが、反応混合物の基質濃
度、酵素力価等に依存して、基質2−ケト−4−フェニ
ル酪酸が十分な収率でL−ケト−4−フェニル酪酸に転
換されるまで反応を維持する。
反応方式は回分式であっても連続式であってもよく、反
応時間はいずれの方式を用いるかにより異なる。
生成したL−ケト−4−フェニル酪酸は任意の常法に従
って精製採取することができる。例えば、反応終了後に
トリクロロ酢酸を加えて蛋白質を沈澱せしめ、菌体(存
在する場合には)と共に濾去し、濾液をイオン交換樹脂
等により精製し、結晶化する。又は、L−ケト−4−フ
ェニル酪酸は水に対する溶解度が著しく低いので反応系
に析出する結晶をそのまま採取しても高純度のものが得
られる。次に実施例によりこの発明をさらに具体的に説
明する。
実施例1 2−ケト−4−フェニル酪酸7.18g(39mmol,25回に分割
して1.56mmol/10mlの水溶液とし、110時間にわたって加
える。)塩化アンモニウム−アンモニア緩衝液、(pH8.
5)8mmol、蟻酸アンモニウム68mmol(4回に分割し17mm
olずつ110時間にわたって加える)、200μmolNAD+(2
回に分割し、反応開始後27時間に100μmol加える)、バ
シルスsp.SCRC−R79a(微工研菌寄第8179号;微工研条
寄第1013号)から採取したフェニルアラニン脱水素酵素
3000単位(比活性111単位/mgの精製標品)、蟻酸脱水素
酵素254単位(カンジダ・ボイディニNo.2201より約2単
位/mgの比活性まで部分精製した標品)を液量が最初100
mlとなるように加え、30℃で110時間静置した。反応開
始後27時間に14%アンモニア水を用いてpH8.2となって
いた反応液のpHを8.5に補正した。反応終了時に液量は
約350mlとなっていた。
反応液中に析出した結晶を濾過により採取し、乾燥後秤
量したところ6.88g(38.4mmol:98.6%の転換率)のL−
2−アミノ−4−フェニル酪酸が生成していた。この結
晶標品に対し、以下の分析を行った。元素分析値は次の
とおりであった。
実測値(%) 計算値(%) C 66.65 67.02 H 7.27 7.31 N 7.80 7.82 比旋光度▲〔α〕20 D▼=44.7(C=1.04,1NHCl)でL
体であり、光学純度は100%e.e.である。
IR(KBr):ν3050,2950,2170,1580,1520,1410,1355,13
20,1200,1140,990,870,745,695,545,490cm-11.7(s,2H),1.9(m,2H),2.7(t,2H),3.4(dd,1H),
3.7(s,3H),7.0〜7.3(m,5H) MS m/z(相対強度):179(4),162(12),134(36),1
17(20),105(8),91(100),75(14),74(13),65
(13),57(7),51(7),43(5),42(5). マススペクトル、メチルエステルの核磁気共鳴スペクト
ル、及び、赤外吸収スペクトルによる分析結果は、いず
れも生成物がL−2−アミノ−4−フェニル酪酸である
ことを示した。
実施例2 2−ケト−4−フェニル酪酸1.6mmol(10回に分割し
て、8時間おきに0.16mmolずつ加える)、塩化アンモニ
ウム−アンモニア緩衝液(pH8.5)800μmol、蟻酸アン
モニウム3mmol、スポロサルシナ・ウレアエSCRC−R04
(微工研菌寄第8178号;微工研菌条寄第1012号)から採
取したフェニルアラニン脱水素酵素230単位(比活性5.4
単位/mgの部分精製標品)、蟻酸脱水素酵素20単位(カ
ンジダ・ボイディニ由来、ベーリンガー・マンハイム社
製)を液量が最初10mlとなるように加え、30℃で96時間
静置した。
反応液中に析出した結晶を濾過により採取し、乾燥後秤
量したところ268mg(1.50mmol:93.8%の転換率)のL−
2−アミノ−4−フェニル酪酸が生成していた。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フェニルアラニン脱水素酵素を用いて2−
    ケト−4−フェニル酪酸又はその塩をL−2−アミノ−
    4−フェニル酪酸に変換せしめ、これを採取することを
    特徴とするL−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方
    法。
  2. 【請求項2】アンモニウムイオン、及びNADH又はNADH再
    生系存在下で行うことからなる特許請求の範囲第1項記
    載の製造方法。
  3. 【請求項3】フェニルアラニン脱水素酵素がバシルス
    (Bacillus)属又はスポロサルシナ(Sporosarcina)属
    細菌により生産されるフェニルアラニン脱水素酵素であ
    る特許請求の範囲第1項又は第2項記載の製造方法。
  4. 【請求項4】NADH再生系が蟻酸脱水素酵素、及び蟻酸又
    はその塩を含んで成る特許請求の範囲第2項記載の製造
    方法。
JP20086187A 1987-08-13 1987-08-13 L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法 Expired - Lifetime JPH06102027B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20086187A JPH06102027B2 (ja) 1987-08-13 1987-08-13 L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP20086187A JPH06102027B2 (ja) 1987-08-13 1987-08-13 L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPS6447386A JPS6447386A (en) 1989-02-21
JPH06102027B2 true JPH06102027B2 (ja) 1994-12-14

Family

ID=16431442

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP20086187A Expired - Lifetime JPH06102027B2 (ja) 1987-08-13 1987-08-13 L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH06102027B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1992005268A1 (fr) * 1990-09-20 1992-04-02 Nippon Steel Corporation PROCEDE DE PRODUCTION DE L-β-HALOALANINE
US7420079B2 (en) * 2002-12-09 2008-09-02 Bristol-Myers Squibb Company Methods and compounds for producing dipeptidyl peptidase IV inhibitors and intermediates thereof
JP2012080878A (ja) * 2010-09-15 2012-04-26 Sumitomo Chemical Co Ltd ビニルグリシン誘導体またはその塩の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPS6447386A (en) 1989-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0188316B1 (en) Process for the preparation of amides using microorganisms
JPH11113588A (ja) 含酸素化合物の製造方法
JPH06343462A (ja) 新規微生物、L−α−アミノ酸の製法、新規微生物の突然変異種及び変体の培養法、カルバモイラーゼ及び/又はヒダントイナーゼ及び/又はヒダントインラセマーゼをコードする遺伝子の獲得法、及びカルバモイラーゼ及び/又はヒダントイナーゼ及び/又はヒダントインラセマーゼをコードする遺伝子の微生物又は細胞中への挿入法
US4738924A (en) Method for the production of 6-hydroxynicotinic acid
JPH06209765A (ja) 6−ヒドロキシニコチン酸を製造する微生物
JP2950896B2 (ja) D―α―フェニルグリシンの製造法
JP3905575B2 (ja) 新規の微生物、L−α−アミノ酸の製法並びに新規の微生物の突然変異株及び変体の培養法、カルバモイラーゼ及び/又はヒダントイナーゼ及び/又はヒダントインラセマーゼをコードする遺伝子の取得法及びカルバモイラーゼ及び/又はヒダントイナーゼ及び/又はヒダントインラセマーゼをコードする遺伝子の微生物又は細胞への挿入法
US5783428A (en) Method of producing fumaric acid
JPH0411194B2 (ja)
JP2696424B2 (ja) R(‐)―マンデル酸の製造法
JPH0856659A (ja) リビトール脱水素酵素とその製造方法並びに用途
JPH06102027B2 (ja) L−2−アミノ−4−フェニル酪酸の製造方法
JPH0928390A (ja) グリコール酸の微生物学的製造法
JPS6387998A (ja) D−α−アミノ酸の製造法
JP4300289B2 (ja) 加水分解又は脱水縮合酵素、及び当該酵素の生産方法、並びに当該酵素を用いたアミドの合成方法
US4569911A (en) Method of making aspartic acid and purifying aspartase
JPH0716428B2 (ja) L−アミノ酸の製造法
JPH04218385A (ja) R(−)−マンデル酸の製造法
JPS61274690A (ja) D−α−アミノ酸の製造方法
JPH0822228B2 (ja) アミノ酸アミド加水分解酵素及びその使用
JP3117790B2 (ja) L−α−アミノアジピン酸の製造法
JPH0630572B2 (ja) L−フエニルアラニン脱水素酵素
JP3090761B2 (ja) 光学活性乳酸の製造法
JPS592693A (ja) アミドの生物学的製造法
JPH04304893A (ja) 微生物による含窒素複素環化合物の水酸化物の製造方法