JPH085369B2 - 車両の加速スリップ防止装置 - Google Patents

車両の加速スリップ防止装置

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JPH085369B2
JPH085369B2 JP63097283A JP9728388A JPH085369B2 JP H085369 B2 JPH085369 B2 JP H085369B2 JP 63097283 A JP63097283 A JP 63097283A JP 9728388 A JP9728388 A JP 9728388A JP H085369 B2 JPH085369 B2 JP H085369B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は車両の加速スリップ防止装置に関する。
(従来の技術) 従来、特開昭61−85248号公報に示すような加速時の
駆動輪スリップを防止するトラクションコントロール装
置が知られている。
(発明が解決しようとする課題) このような従来のトラクションコントロール装置にお
いては、駆動輪のストリップを検出すると、駆動輪のス
リップを低減させる制御(トラクション制御)を行なう
ようにしているが、駆動輪のスリップが低減されてすぐ
にトラクション制御を停止するとすぐに駆動輪にスリッ
プが発生してしまうという問題点がある。
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的
は、左右駆動輪のブレーキを全く独立にした場合に発生
する一方の駆動輪にブレーキがかかって回転が減少する
とデフの作用により今度は反対側の駆動輪がスリップし
ブレーキがかかる好ましくない動作を防止することがで
きる車両の加速スリップ防止装置を提供することにあ
る。
[発明の構成] (課題を解決するための手段及び作用) 一方の駆動輪速度VFRを検出する第1の駆動輪速度検
出手段と、他方の駆動輪速度VFLを検出する第2の駆動
輪速度検出手段と、非駆動輪の速度を検出する非駆動輪
速度検出手段と、この非駆動輪速度検出手段により検出
された非駆動輪速度に基づいて基準速度VΦを算出する
基準速度算出手段と、(駆動輪速度VFR−基準速度V
Φ)×a+(駆動輪速度VFL−基準速度VΦ)×(1−
a)[ただし、0<a<1]を一方の駆動輪のスリップ
量DVFRとし、(駆動輪速度VFL−基準速度VΦ)×a+
(駆動輪速度VFR−基準速度VΦ)×(1−a)[ただ
し、0<a<1]を他方の駆動輪のスリップ量DVFLとし
て計算するスリップ量算出手段と、スリップ発生時に上
記スリップ量DVFR及び上記スリップ量DVFLとに基づいて
駆動輪にブレーキを掛ける制動手段と備えた車両の加速
スリップ防止装置である。
この装置によれば、一方の駆動輪にブレーキがかかっ
て回転が減少するとデフの作用により反対側の駆動輪が
スリップしてブレーキがかかり、この動作が交互に繰返
されるのを防止することができる。
(実施例) 以下図面を参照して本発明の一実施例に係わる車両の
加速スリップ防止装置について説明する。第1図は車両
の加速スリップ防止装置を示す構成図である。同図は前
輪駆動車を示しているもので、WFRは前輪右側車輪、W
FLは前輪左側車輪、WRRは後輪右側車輪、WRLは後輪左
側車輪を示している。また、11は前輪右側車輪(駆動
輪)WFRの車輪速度VFRを検出する車輪速度センサ、12
は前輪左側車輪(駆動輪)WFLの車輪速度VFLを検出す
る車輪速度センサ、13は後輪右側車輪(従動輪)WRRの
車輪速度VRRを検出する車輪速度センサ、14は後輪左側
車輪(従動輪)WRLの車輪速度VRLを検出する車輪速度
センサである。上記車輪速度センサ11〜14で検出された
車輪速度VFR,VFL,VRR,VRLはトラクションコントローラ
15に入力される。このトラクションコントローラ15は加
速時の駆動輪のスリップを防止する制御を行なっている
もので、エンジン16は第16図に示すようにメインスロッ
トル弁THmとサブスロットル弁THsとを有し、通常の運転
時はメインスロットル弁THmをアクセルペダルにより操
作することにより出力調整が行なわれ、スリップ防止制
御の際にはサブスロットル弁THsスロットル開度Θsを
制御してエンジン出力を制御している。また、17は前輪
右側車輪WFRの制動を行なうホイールシリンダ、18は前
輪左側車輪WFLの制動を行なうホイールシリンダであ
る。上記ホイールシリンダ17への油圧源19からの圧油の
供給はインレットバルブ17iを介して行われ、上記ホイ
ールシリンダ17からリザーバ20への圧油の排出はアウト
レットバルブ17oを介して行われる。また、上記ホイー
ルシリンダ18への油圧源19からの圧油の供給はインレッ
トバルブ18iを介して行われ、上記ホイールシリンダ18
からリザーバ20への圧油の排出はアウトレットバルブ18
oを介して行われる。そして、上記インレットバルブ17i
及び18i、上記アウトレットバルブ17o及び18oの開閉制
御は上記トラクションコントローラ15により行われる。
次に、第2図を参照してトラクションコントローラ15
の詳細な構成について説明する。車速センサ11及び12に
おいて検出された駆動輪の車輪速度VFR及びVFLは平均
部21において平均されて平均車輪速度(VFR+VFL)/2
が算出される。また同時に、車輪速度センサ11及び12に
おいて検出された駆動輪の車輪速度VFR及びVFLは低車
速選択部(SL)22に送られて、車輪速度VFRと車輪速度
VFLのうちの小さい車輪速度の方が選択されて出力され
る。さらに、上記平均部21から出力される平均車輪速度
は重み付け部23において変数K倍され、上記低車高選択
部22から出力される車輪速度は重み付け部24において
(1−K)倍された後、それぞれ加算部25に送られて加
算される。上記変数Kは第3図乃至第5図に示すように
旋回時に発生する求心加速度Gに応じて変化する変数K
G、ブレーキによるスリップ制御開始後の時間tに応じ
て変化する変数KT、車体速度(従動輪速度)VBに応じ
て変化する変数KVのうち最大のものが選択される。そし
て、加算部25から出力される車輪速度は駆動輪速度VF
として微分部26に送られて駆動輪速度VFの時間的速度
変化、つまり駆動輪加速度GWが算出されると共に、後述
するように駆動輪のスリップ量DVを算出する場合に用い
られる。
また、上記車輪速度センサ11において検出された右側
駆動輪の車輪速度VFRは減算部27に送られて後述する基
準駆動輪速度VΦとの減算が行われ、上記車輪速度セン
サ12において検出された左側駆動輪の車輪速度VFLは減
算部28に送られて後述する基準駆動輪速度VΦとの減算
が行われる。そして、上記減算部27の出力は乗算部29に
おいてa倍(0<a<1)され、上記減算部28の出力は
乗算部30において(1−a)倍された後、加算部31にお
いて加算されて右側駆動輪のスリップ量DVFRとされる。
また同様に、上記減算部28の出力は乗算部32においてa
倍され、上記減算部27の出力は乗算部33において(1−
a)倍された後、加算部34において加算されて左側駆動
輪のスリップ量DVFLとされる。そして、上記右側駆動輪
のスリップ量DVFRは微分部35において微分されてその時
間的変化量、つまりスリップ加速度GFRが算出されると
共に、上記右側駆動輪のスリップ量DVFLは微分部36にお
いて微分されてその時間的変化量、つまりスリップ加速
度GFLが算出される。そして、上記スリップ加速度GFR
はブレーキ液圧変化量(ΔP)算出部37に送られて、第
6図に示すGFR(GFL)−ΔP変換マップが参照されて
スリップ加速度GFRを抑制するためのブレーキ液圧の変
化量ΔPが求められる。また同様に、上記スリップ加速
度GFLはブレーキ液圧変化量(ΔP)算出部38に送られ
て、第6図に示すGFR(GFL)−ΔP変換マップが参照
されて、スリップ加速度GFLを抑制するためのブレーキ
液圧の変化量ΔPが求められる(ただし、DV>6Km/hで
は上記ΔPと2Kg/cm2との大きい方が採用される。)。
この変化量ΔPはインレットバルブ17i(18i)またはア
ウトレットバルブ17o(18o)を介して流入または流出さ
れる液量の変化量を示している。つまり、スリップ加速
度GFR(GFL)が大きくなると、ΔPが増加されるため
駆動輪WFR,WFLが制動されて駆動トルクが下げられる。
さらに、上記ΔP算出部37から出力される、スリップ
加速度GFRを抑制するためのブレーキ液圧の変化量ΔP
はスイッチ39を介してインレットバルブ17iおよびアウ
トレットバルブ17oの開時間Tを算出するΔP−T変換
部40に送られ、上記変化量ΔPが正の時はインレットバ
ルブ17iの開時間が、また上記変化量ΔPが負の時はア
ウトレットバルブ17oの開時間がそれぞれ求められる。
上記スイッチ39は駆動輪にブレーキを掛けるための開始
/終了条件が満たされると閉成/開成される。例えば以
下に示す(1)乃至(3)の3つの条件が全て満足され
た場合に閉成される。(1)アイドルSWがオフ。(2)
メインスロットル開度Θmが第7図の斜線領域にある。
(3)スリップ量DVFR(DVFL)>2かつGスイッチがオ
ン又はスリップ量DVFR(DVFL>5。なお、上記Gスイッ
チはGFR(GFL)の大小によってON/OFFするスイッチで
あって、GFR(GFL>1gでON,GFR(GFL)<0.5gでOFF
となる(gは重力加速度)。また、スイッチ39は例えば
以下の3つのいずれかの条件が満足された場合に閉成さ
れる。(1)アイドルSWがオン。(2)アクセルSWがオ
ン。(3)ABS作動。以下、ΔP−T変換部40において
算出されたインレットバルブ17iの開時間Tは加算部41
において制御中の無効液量補正値ΔTRと加算されて、
右側駆動輪のブレーキ作動時間FRとされる。また同様
に、上記ΔP算出部38から出力されるスリップ加速度G
FLを抑制するためのブレーキ液圧の変化量ΔPはスイッ
チ42を介してインレットバルブ18iおよびアウトレット
バルブ18oの開時間Tを算出するΔP−T変換部43に送
られ、上記変化量ΔPが正の時はインレットバルブ18i
の開時間が、また上記変化量ΔPが負の時はアウトレッ
トバルブ18oの開時間がそれぞれ求められる。このΔP
−T変換部43において算出されたインレットバルブ18i
の開時間Tは加算部44において制御中の無効液量補正値
ΔTLと 加算されて、左側駆動輪のブレーキ作動時間FLとされ
る。つまり、 ΔTR(L)=−ΣΔTi+(1/10)ΣΔTo (ここで、ΔTiはインレット時間、ΔToはアウトレット
時間)とされており、液量を増やしてからブレーキがき
きはじめるので遅れを補正している。ただし、ΔTR
(L)は最大40msあれば遅れを補正できるので40msでク
リップしている。
また、車輪速度センサ13及び14において検出された従
動輪の車輪速度VRR及びVRLは高車速選択部(SH)45に
送られて、車輪速度VRRと車輪速度VRLのうちの大きい
車輪速度の方が選択されて車体速度VBとして出力され
る。
また同時に、上記車速センサ13及び14において検出さ
れた従動輪の車輪速度VRR及びVRLは求心加速度G演算
部46に送られて、旋回の有無及びその程度を判断するた
めの求心加速度GとしてGYが算出される。
また、上記高車輪速度選択部45において選択出力され
た車体速度VBは車体加速度演算部47において車体速度
VBの加速度、つまり車体加速度B(GB)が演算され
る。この車体加速度Bの演算は今回に車体加速度演算
部47に入力された車体速度VBと前回に車体加速度演
算部47に入力された車体速度VBとの差をサンプ
リング時間Tで割算することにより求められる。
つまり、 B=GBn=(VB−VBn-1)/T …(1) とされる。
つまり、上記車体加速度演算部47において車体加速度
B(GB)を算出することにより、駆動輪の加速スリッ
プ中に発生した従動輪の回転加速度Bから路面に伝達
することのできる駆動トルクを推定している。つまり、
駆動輪が路面に伝達できる力Fは前輪駆動車であれば、 F=μWF=MBB (WFは駆動力分担荷重,MBは車両質量) …(2) である。上記第(2)式から明らかなように駆動力分担
荷重WFと車両質量MBとが一定値である場合には、路面
摩擦係数μと車体加速度Bは比例関係にある。また、
第9図に示すように、駆動輪がスリップして「2」より
大きくなるとμの最大を越えてしまい、「1」点の方に
μが近付く。そして、スリップが収まる場合には「1」
からこの「2」のピークを通って「2」〜「3」の領域
に入る。この「2」での車体加速度Bを測定できれ
ば、その摩擦係数μを有する路面に伝達可能な最大トル
クを推定できる。この最大トルクを基準トルクTGとし
ている。
そして、上記車体加速度演算部47において求められた
車体加速度B(GB)はフィルタ48を通されて車体加速
度GBFとされる。つまり、第9図の「1」位置の状態に
ある時には「2」位置の状態へ素早く移行するため、前
回求めたGBFと今回検出したGBnとを同じ重み付
けで平均してGBF=(GBFn-1+GB)/2とされ、第
9図の「2」位置から「3」位置の間は応答を遅くして
なるべく「2」位置に対応する加速度に近い加速度で最
大トルクを推定することによって、より大きな最大トル
クを推定して加速性を良くするために、前回求めたGBF
の方に重みをもたせて、GBF=(27GBFn-1+5G
Bn)/32とされる。そして、上記車体加速度GBFは基準
トルク演算部49に送られて、基準トルクTG=GBF×W
×Reが算出される。ここで、Wは車重、Reはタイヤ半径
である。そして、この基準トルク演算部49で算出された
基準トルクTGはトルク下限値制限部50に送られて、基
準トルクTGの下限値Taが例えば、45Kg・mに制限され
る。
また、上記高車輪速選択部45で選択された車体速度V
Bは定数倍部51において例えば、1.03倍された後、加算
部52において変数記憶部53に記憶される変数K1と加算さ
れて基準駆動輪速度VΦとされる。ここで、K1は第10図
に示すように、車体加速度GBFの大きさに応じて変化す
る。第10図に示すように、車体加速度GBF(B)が大
きい時は、じゃり路のような悪路を走行していると判断
し、じゃり路では第9図においてスリップ率の大きい部
分に摩擦係数μのピークがあるのでK1を大きくしてスリ
ップ判定の基準となる基準駆動輪速度VΦを大きくし
て、スリップの判定を甘くしてスリップ率を大きくする
ことにより加速性を良くしている。そして、上記加算部
25において求められた駆動輪速度VF及び上記加算部52
の出力である基準駆動輪速度VΦは減算部54において減
算されてスリップ量DV=VF−VΦが算出される。
次に、上記スリップ量DVは例えば15msのサンプリング
時間TでTSn演算部55に送られて、スリップ量DVが係数
KIを乗算されながら積分されて補正トルクTSnが求めら
れる。つまり、 TSn=KI・ΣDVi としてスリップ量DVの積算により求められた補正トル
ク、つまり積分型補正トルクTSnが求められる。また、
上記係数KIは第11図に示すようにスリップ量DVに応じ
て変化する。
また、上記スリップ量DVは上記サンプリング時間T毎
にTPn演算部56に送られて、スリップ量DVに比例する補
正トルクTPnが算出される。つまり、TPn=DV×Kp(Kpは
係数)としてスリップ量DVに比例する補正トルク、つま
り比例型補正トルクTPnが求められる。この係数Kpは第1
2図に示すようにスリップ量DVに応じて変化する。
そして、上記基準トルクTGと上記TSn演算部55におい
て算出された積分型補正トルクTSnとの減算は減算部57
において行なわれる。その減算結果、TG−TSnはトルク
下限値部58において、トルクの下限値がTb例えば45Kg・
mに制限される。さらに、減算部59において、TG−TSn
−TPnが算出されて、目標トルクTΦとされる。この目
標トルクTΦに基づきエンジントルク演算部60におい
て、「TΦ×1/(ρM・ρD・t)」が算出されて、エ
ンジントルクとしての目標トルクTΦ′が算出される。
ここで、ρMは変速比、ρDは減速比、tはトルク比を
示している。そして、このエンジントルク演算部60によ
り演算されたエンジントルクとしての目標トルクTΦ′
は最低トルク制限部61において、最低トルクが「0kg・
m」とされる。つまり、目標トルクTΦ′として0Kg・
m以上のものだけがスイッチ62を介して補正部63に出力
される。上記スイッチ62はある条件が満足されると閉成
あるいは開成され、スロットル開度を制御してエンジン
の出力トルクを目標トルクになるように制御する処理が
開始あるいは終了される。上記スイッチ62が閉成される
場合は例えば以下に示す(1)乃至(3)の3つの条件
が全て満足される場合である。(1)アイドルSWがオ
フ。(2)メインスロットル開度Θmが第7図の斜線領
域にある場合。(3)DVFR(FL)>2,かつGW>0.2g,か
つΔDV>0.2g(ただし、gは動力加速度)。また、スイ
ッチ62が開成される場合は例えば以下の4つのいずれか
の条件が満足された場合である。つまり、(1)メイン
スロットル開度Θm<0.533Θsである状態が0.5秒継
続。(2)アクセルSWのオンが0.5秒継続。(3)アイ
ドルSWオンが0.5秒継続。(4)ABS作動。また、上記補
正部63においては目標トルクTΦ′Hが水温、大気圧、
吸気温に応じて補正される。
そして、上記目標トルクTΦ′はTΦ′−Θs′変換
部64に送られて、メインスロットル弁THmとサブスロッ
トル弁THsとが1つと考えた場合の該目標トルクTΦ′
を得るための等価スロットル開度Θs′が求められる。
なお、TΘ′−Θs′関係は第13図に示しておく。上記
TΦ′−Θs′変換部64において求められた等価スロッ
トル開度Θs′はΘs′−Θs変換部65に送られて、等
価スロットル開度Θs′及びメインスロットル開度Θm
が入力された場合のサブスロットル開度Θsが求められ
る。そして、このサブスロットル開度Θsはリミッタ66
に出力される。このリミッタ66はエンジン回転数Neが低
い時に上記サブスロットル開度Θsが小さすぎると、エ
ンジンストールを起こさせるので、サブスロットル開度
Θsに下限値を与えている。この下限値とエンジン回転
数Neとの関係は第14図に示しておく。第14図に示すよう
に、下限値はエンジン回転数Neの減少に伴い大きくなっ
ている。そして、サブスロットル開度Θsとなるように
サブスロットル弁が制御されて、エンジン出力が目標ト
ルクとされる。
次に、上記のように構成された本発明の一実施例に係
わる車両の加速スリップ防止装置の動作について説明す
る。まず、車輪速度センサ11及び12から出力される駆動
輪の車輪速度VFR,VFLは平均部21において平均されて平
均車輪速度(VFR+VFL)/2が算出される。また同時
に、上記駆動輪の車輪速度VFR,VFLは低車輪速度選択部
22に送られて、車輪速度VFRと車輪速度VFLのうち小さ
い車輪速度の方が選択出力される。さらに、上記平均部
21から出力される車輪速度は重み付け部23において変数
K倍され、上記低車輪速度選択部22から出力される車輪
速度は重み付け部24において(1−K)倍された後、そ
れぞれ加算部25に送られて加算される。上記変数Kは第
3図乃至第5図に示すKG,KT,KVのうち最大のものが選択
される。これは、旋回時、ブレーキ制御開始後の時間、
車体速度VBの多様な条件に適合させるためである。つ
まり、低車輪速選択部22から出力される車輪速度のみを
使用すると、低い方の車輪速に従ってエンジン出力低減
制御が行なわれるので車輪速の高い方即ちスリップ量の
大きい方の車輪についてはブレーキのみの制御となりエ
ンジン出力の低減量が少なくなって加速性が向上し平均
部21から出力される車輪速度のみを使用すると高い方の
車輪速即ちスリップ量の大きい方の車輪速に従ってエン
ジン出力がされるのでエンジン出力が大幅に低下して車
両の加速性が低下するため、重み付け部23,24を設け上
記Kの値を変化させて、低車輪速選択部22及び平均部21
から出力される車輪速度を重み付けして車両の運転状態
に合わせて駆動輪のスリップを防止する。即ち、KGは旋
回傾向が大きくなると(求心加速度GYが大きくなる
と)、KGを「1」として平均部21の平均車輪速を用いる
ことにより、旋回時の内輪差による左右駆動輪の回転速
度の差をスリップと誤判定するのを防止するようにして
いる。また、KTはブレーキ制御時間が長くなると、KTを
「1」としてエンジン出力低減によるスリップ防止を併
用し、ブレーキ制御の長時間に渡る使用によるエネルギ
ーロスの増大を防止している。さらに、KVは発進時(V
B=0)に最も両輪のバラツキが大きくスリップ防止を
素早く行なうためにブレーキ制御が有用であるので、KV
=0としているが、高速走行時にはKV=1として平均部
21のみの平均車輪速を用いることにより、高速走行時の
スリップでのブレーキの使用による急制動を回避してい
る。そして、加算部25から出力される車輪速度は駆動輪
速度VFとして微分部26に送られて駆動輪速度VFの時間
的速度変化、つまり駆動輪加速度GWが算出されると共
に、後述するように駆動輪のスリップ量DVを算出する場
合に用いられる。
また、上記車輪速センサ11において検出された右側駆
動輪の車輪速度VFRは減算部27に送られて後述する基準
駆動輪速度VΦとの減算が行われ、上記車輪速センサ12
において検出された左側駆動輪の車輪速度VFLは減算部
28に送られて後述する基準駆動輪速度VΦとの減算が行
われる。さして、上記減算部27の出力は乗算部29におい
てa倍(0<a<1)され、上記減算部28の出力は乗算
部30において(1−a)倍された後、加算部31において
加算されて右側駆動輪のスリップ量DVFRとされる。また
同様に、上記減算部28の出力は乗算部32においてa倍さ
れ、上記減算部27の出力は乗算部33において(1−a)
倍された後、加算部34において加算されて左側駆動輪の
スリップ量DVFLとされる。例えばaを「0.8」とした場
合、一方の駆動輪にスリップが発生すると、他方の駆動
輪にも20パーセント分だけブレーキを掛けるようにして
いる。これは、左右駆動輪のブレーキを全く独立にする
と、一方の駆動輪にブレーキがかかって回転が減少する
とデフの作用により今度は反対側の駆動輪がスリップし
ブレーキがかかりこの動作が交互に繰返されて好ましく
ないためである。上記右側駆動輪のスリップ量DVFRは微
分部35において微分されてその時間的変化量、つまりス
リップ加速度GFRが算出されると共に、上記右側駆動輪
のスリップ量DVFLは微分部36において微分されてその時
間的変化量、つまりスリップ加速度GFLが算出される。
そして、上記スリップ加速度GFRはブレーキ液圧変化量
(ΔP)算出部37に送られて、第6図に示すGFR(GF
L)−ΔP変換マップが参照されてスリップ加速度GFR
を抑制するためのブレーキ液圧の変化量ΔPが求められ
る。また同様に、上記スリップ加速度GFLはブレーキ液
圧変化量(ΔP)算出部38に送られて、第6図に示すG
FR(GFL)−ΔP変換マップが参照されて、スリップ加
速度GFLを抑制するためのブレーキ液圧の変化量ΔPが
求められる。
さらに、上記ΔP算出部37から出力されるスリップ加
速度GFRを抑制するためのブレーキ液圧の変化量ΔPは
スイッチ39を介してインレットバルブ17iおよびアウト
レットバルブ17oの開時間Tを算出するΔP−T変換部4
0に送られ、上記変化量ΔPが正の時はインレットバル
ブ17iの開時間が、また上記変化量ΔPが負の時はアウ
トレットバルブ17oの開時間がそれぞれ求められる。こ
のΔP−T変換部40において算出されたインレットバル
ブ17iの開時間Tは加算部41において制御中の無効液量
補正値ΔTRと加算されて、右側駆動輪のブレーキ作動
時間FRとされる。また同様に、上記ΔP算出部38から出
力されるスリップ加速度GFLを抑制するためのブレーキ
液圧の変化量ΔPはスイッチ42を介してインレットバル
ブ18iおよびアウトレットバルブ18oの開時間Tを算出す
るΔP−T変換部43に送られ、上記変化量ΔPが正の時
はインレットバルブ18iの開時間が、また上記変化量Δ
Pが負の時はアウトレットバルブ18oの開時間がそれぞ
れ求められる。このΔP−T変換部43において算出され
たインレットバルブ18iの開時間Tは加算部44において
制御中の無効液量補正値ΔTLと加算されて、左側駆動
輪のブレーキ作動時間FLとされる。上記したように無効
液量補正値ΔTR及びΔTLを補正することにより、バル
ブをONしてからブレーキがきき始めるまでの液量不足分
を補正している。このようにして、構成のところで説明
したように駆動輪のスリップ量が増加してスイッチ39、
42が閉成される条件が満足されると、駆動輪にブレーキ
がかけられる。
また、車輪速センサ13及び14において検出された従動
輪の車輪速度VRR及びVRLは高車輪速選択部(SH)45に
送られて、車輪速度VRRと車輪速度VRLのうちの大きい
車輪速度の方が選択されて車体速度VBとして出力され
る。上記高車輪速選択部23はカーブを走行中に内輪差を
考慮して内輪と外輪との車輪速度の大きい方を車体速度
VBとして選択することにより、スリップの誤判定を防
止するようにしている。つまり、後述するように車体速
度VBはスリップの発生を検出するための基準速度とな
るもので、この車体速度VBを高めておくことにより、
カーブ走行中における内輪差によるスリップ発生の誤判
定を防止している。
また同時に、上記車輪速センサ13及び14において検出
された従動輪の車輪速度VRR及びVRLは求心加速度G演
算部46に送られて、旋回の有無及びその程度を判断する
ための求心GとしてGYが算出される。
また、上記高車輪速選択部45において選択出力された
車体速度VBは車体加速度演算部47において車体速度VB
の加速度、つまり車体加速度B(GB)が演算される。
そして、上記車体加速度演算部47において求められた
車体加速度B(GB)はフィルタ48を通されて車体加速
度GBFとされる。つまり、第9図の「1」位置の状態に
ある時には「2」位置の状態へ素速く移行するために、
前回求めたGBFと今回検出したGBとを同じ重
み付けで平均しGBF=(GBFn-1+GB)/2とされ、
第9図の「2」位置から「3」位置の間は応答を遅くし
てなるべく「2」位置に対応する加速度に近い加速度で
最大トルクを推定することによって、より大きな最大ト
ルクを推定して加速性を良くするために、前回求めたG
BFの方に重みをもたせてGBFn=(27GBFn-1+5G
B)/32として、前の車体加速度GBFn−を保持する
割合いを増やしている。
そして、上記車体加速度GBFは基準トルク演算部49に
送られて、基準トルクTG=GBF×W×Reが算出され
る。ここで、Wは車重、Reはタイヤ半径である。そし
て、この基準トルク演算部49で算出された基準トルクT
Gはトルク下限値制限部50に送られて、基準トルクTGの
下限値がTa例えば、45Kg・mに制限される。
また、上記高車高選択部45で選択された車体速度VB
は定数倍部51において例えば、1.03倍された後、加算部
52において変数記憶部53に記憶される変数K1と加算され
て基準駆動輪速度VΦとされる。ここで、K1は第10図に
示すように、車体加速度GBFの大きさに応じて変化す
る。第10図に示すように、車体加速度Bが大きい時
は、じゃり路のような悪路を走行していると判断して、
このような場合にはK1を大きくしてスリップ判定の基準
となる基準駆動輪速度VΦを大きくして、スリップの判
定を甘くすることにより加速性を良くしている。そし
て、上記加算部52において求められた駆動輪速度VF及
び上記加算部52の出力である基準駆動輪速度VΦは減算
部54において減算されてスリップ量DV=VF−VΦが算
出される。
次に、上記スリップ量DVは例えば15msのサンプリング
時間TでTSn演算部55に送られて、スリップ量DVが係数
KIを乗算されながら積分されて補正トルクTSnが求めら
れる。つまり、 TSn=KI・ΣDVi としてスリップ量DVの積算により求められた補正トル
ク、つまり積分型補正トルクTSnが求められる。また、
上記係数KIは第11図に示すようにスリップ量DVに応じ
て変化する。
また、上記スリップ量DVは上記サンプリング時間T毎
にTPn演算部56に送られて、スリップ量DVに比例する補
正トルクTPnが算出される。つまり、TPn=DV×Kp(Kpは
係数)としてスリップ量DVに比例する補正トルク、つま
り比例型補正トルクTPnが求められる。この係数Kpは第1
2図に示すようにスリップ量DVに応じて変化する。
つまり、第11図及び第12図に示すように、係数KI,Kp
はDV>0の場合には小さい。これは第8図におけるVΦ
より大の領域がDV>0に該当するが、この領域ではDVの
変動範囲が広いので係数KI,Kpを大きくすると、スリッ
プ量DVの変化が大きいのに係数KI,Kpを大きくすること
によりゲインが大きくなって制御が不安定となるためで
ある。また、DV<0の場合(つまり、第8図の斜線で示
す領域)には係数KI,Kpを大きくしてゲインを大きくと
っている。これはDV<0の場合には第8図に示すように
変動範囲がVΦとVBの間しかないため小さくなるの
で、係数KI,Kpを大きくしてゲインを大きくとり、応答
性を良くしている。また、第15図に示すように求心加速
度GYが大きくなる、つまり旋回傾向が大きくなるとΔKp
(第12図)を大きくとることによりDV>0の場合のKpの
値を増加させ制御が不安定とならない程度にゲインを増
してカーブでのスリップの発生を抑え、旋回性能の向上
を行なっている。
そして、上記基準トルクTΦから上記TSn演算部55に
おいて算出された積分型補正トルクTSnが減算部57にお
いて減算される。その減算結果、TG−TSnはトルク下限
値部58において、トルクの下限値がTb例えば、45Kg・m
に制限される。さらに、減算部59において、TG−TSn−
TPnが算出されて、目標トルクTΦとされる。この目標
トルクTΦに基づきエンジントルク演算部60において、
「TΦ×1/(ρM・ρD・t)」が算出されて、エンジ
ントルクとしての目標トルクTΦ′が算出される。ここ
で、ρMは変速比、ρDは減速比、tはトルク比を示し
ている。そして、目標トルクTΦ′として0Kg・m以上
のものだけがスイッチ62を介して補正部63に出力され
る。この補正部63においては目標トルクTΦ′が水温、
大気圧、吸気温に応じて補正される。
そして、上記目標トルクTΦ′はTΦ′−Θs′変換
部64に送られて、該目標トルクTΦ′に応じ、メインス
ロットル弁THmとサブスロットル弁THsの2つのスロット
ルを1つと考えた場合の等価スロットル開度Θs′が求
められる。なお、TΦ′−Θs′関係は第13図に示して
おく。上記TΦ′−Θs′変換部64において求められた
等価スロットル開度Θs′はΘs′−Θs変換部65に送
られて、等価スロットル開度Θs′及びメインスロット
ル開度Θmが入力された場合のサブスロットル開度Θs
が求められる。そして、このサブスロットル開度Θsは
リミッタ66に出力される。このリミッタ66は上記サブス
ロットル開度Θsが小さすぎると、エンジン回転数Neが
低い時にエンジンストールを起こさせるので、サブスロ
ットル開度Θsに下限値を与えている。そして、サブス
ロットル開度Θsとなるようにサブスロットル弁が制御
されて、エンジン出力トルクが現在の路面状態で伝達し
うる最大のトルクとされる。
なお、本実施例のように2つのスロットル弁を用いず
に、1つのスロットル弁のみを有する場合には、上記等
価スロットル開度Θs′がそのまま上記スロットル弁の
開度となる。
[発明の効果] 以上詳述したように本発明によれば、一方の駆動輪に
スリップが発生すると、他方の駆動輪にもある程度ブレ
ーキを掛けるようにして、左右駆動輪のブレーキを全く
独立にした場合に発生する一方の駆動輪にブレーキがか
かって回転が減少するとデフの作用により今度は反対側
の駆動輪がスリップしブレーキがかかる好ましくない動
作を防止することができる車両の加速スリップ防止装置
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係わる車両の加速スリップ
防止装置の全体的な構成図、第2図は第1図のトラクシ
ョンコントローラの制御を機能ブロック毎に別けて示し
たブロック図、第3図は求心加速度GYと変数KGとの関係
を示す図、第4図は制御開始後の時間と変数KTとの関係
を示す図、第5図は車体加速度Bと変数KVとの関係を
示す図、第6図はスリップ加速度GFP(GFL)とブレー
キ液圧変化分ΔPとの関係を示す図、第7図はエンジン
回転数Neとメインスロットル開度Θmとの関係を示す
図、第8図は時間tと駆動輪速度VF,基準駆動輪速度
VΦ,車体速度VBの関係を示す図、第9図はスリップ
率と路面摩擦係数μとの関係を示す図、第10図は車体加
速度GBFと変数K1との関係を示す図、第11図はスリップ
量DVと係数KIとの関係を示す図、第12図はスリップ量D
Vと係数KPとの関係を示す図、第13図は目標トルクT
Φ′と等価スロットル開度Θs′との関係を示す図、第
14図はエンジン回転数Neとサブスロットル開度Θsの下
限値との関係を示す図、第15図は求心加速度GYとΔKpと
の関係を示す図、第16図はスロットル弁THm,THsを示す
図である。 11〜14……車輪速度センサ、15……トラクションコント
ローラ、16……エンジン、21……平均部、22……低車高
選択部、23,24……重み付け部、37,38……ΔP算出部、
46……求心G演算部、55……TSn演算部、56……TPn演算
部、65……Θm−Θs変換部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 政義 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 西川 進 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 船越 剛 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 池田 周司 東京都港区芝5丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一方の駆動輪速度VFRを検出する第1の駆
    動輪速度検出手段と、他方の駆動輪速度VFLを検出する
    第2の駆動輪速度検出手段と、非駆動輪の速度を検出す
    る非駆動輪速度検出手段と、この非駆動輪速度検出手段
    により検出された非駆動輪速度に基づいて基準速度VΦ
    を算出する基準速度算出手段と、(駆動輪速度VFR−基
    準速度VΦ)×a+(駆動輪速度VFL−基準速度VΦ)
    ×(1−a)[ただし、0<a<1]を一方の駆動輪の
    スリップ量DVFRとし、(駆動輪速度VFL−基準速度V
    Φ]×a+(駆動輪速度VFR−基準速度VΦ)×(1−
    a)[ただし、0<a<1]を他方の駆動輪のスリップ
    量DVFLとして計算するスリップ量算出手段と、スリップ
    発生時に上記スリップ量DVFR及び上記スリップ量DVFLと
    に基づいて駆動輪にブレーキを掛ける制動手段とを具備
    したことを特徴とする車両の加速スリップ防止装置。
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