【発明の詳細な説明】
ドープ化酸化亜鉛の粉末、その製造方法、および
前記粉末から得られるセラミック
本発明は、現在まで得ることができなかった締固め性および焼結性をもつ新規
ドープ化酸化亜鉛の粉末の製造方法に関する。本発明はさらに、得られた粉末お
よび同粉末を基にして製造されるセラミックにも適用される。
ビスマス、コバルト、マンガン、アンチモン、ニッケル、クロム、スズ、アル
ミニウム、チタンなどの金属元素または半金属元素でドープされた酸化亜鉛の粉
末は、とくに、バリスタなどある種の電子部品の製造の基礎となるという理由か
ら、産業界では非常に重要である。ビスマスは、電子部品に電気特性を付与し焼
結操作を促進するためになくてはならないドーパントであって、これら粉末の大
部分に見出される。バリスタの電気特性は、ドーピング元素の分布状態と、使用
酸化亜鉛の粉末の形態と、セラミック中の粒子の結合組成とにとくに依存する。
したがって、想定する応用例にこれらの特性を適合させこれら特性の再現性を保
証するためには、粒子の形態とドーピング元素の分布の均一性が制御できること
が必要である。
従来、ドープ化酸化亜鉛の粉末は、種々の元素の酸化物(酸化亜鉛、酸化ビス
マス、その他のドーパントの各々の酸化物)を、対応する塩または水酸化物のか
焼により個別に作り、次にこれらの酸化物を機械的方法により混合することによ
り作られている(米国特許第4.405.508号明細書、同第4.165.351号明細書)。し
かしながらそのような方法では、酸化物の混合物の均質性が不揃いで、どのよう
な注意を払っても同一のものを繰り返し得ることは非常に難しく、さらにこの混
合物を得るにはあらかじめ粉砕を行う必要があり、その方法では存在する粒子の
形態(大きさ、形、組織)を制御することも選択することも不可能である。さら
に、粉砕操作により不純物の混入が不可避であるため、得られた製品は比較的不
純物を含んでいる。米国特許第4.540.971号明細書は前記のタイプの方法につい
て記載している。この方法によれば酸化物を混合する前に、あらかじめ粒度を制
御(サブミクロン級)して調製する。そのため粉砕に特有の難点は取り除かれる
が、酸化物の混合物の不均質性は残る。
米国特許第5.039.452号明細書は、水様懸濁液の酸化亜鉛を、液体の種々のド
ーパントの酸化物の前駆体に混合し、沈殿剤を添加することによりこれら前駆体
を酸化物に変化させ、この酸化物をすでにある酸化亜鉛ともに沈殿させる方法に
ついて記載している。この方法により前記と同様、酸化物の混合物が得られる(
ただし機械的方法によってではなく水溶液を介して得られる)。ところが前記と
同様、この方法では粉末の形態の適切な制御を実現することも、全ての元素につ
いて充分な均質性を得ることも難しい。
さらに、米国特許第4.681.717号明細書、ヨーロッパ特許第0.272.964号明細書
、および同第0.482.444号明細書は、水酸化亜鉛およびドーパントの水酸化物を
作り、これら全体を沈殿させ、熱処理により酸化物に変換する製造方法について
言及している。この米国特許は、熱処理の前に水酸化物をシュウ酸塩に変換する
追加段階を行うことは可能であることを示している。同方法においては、混合(
各酸化物の前駆体の混合物)が行われるのは種々の元素の水酸化物またはシュウ
酸塩としてであり、その後、混合物は、熱処理をうけて酸化物をもたらす。この
米国特許の方法においては、他のドーパントとは非常に異なる特性と寸法をもつ
(原子がはるかに大きい)ビスマスの処理は、他とは別に行わなければならない
。すなわち、ドープ化酸化亜鉛の混合物は調製後、ビスマスの溶液に含浸され、
つぎに全体がか焼される。この条件では、とくにドーピング元素のうちの1つが
ビスマスからなる場合、この方法には、得られた粉末の均質性が悪いことおよび
粉末の形態を調べることが不可能であることに起因する欠点が残るが、これは最
も頻繁に起こるケースである。また、これらの方法によって製造される粉末の比
表面積は通常あまり大きくないので、その応用例は限定される。同様の技術を対
象とするドイツ民主共和国特許第271.769号明細書についても同じことがいえる
が、同特許では水酸化物の代りに炭酸亜鉛が使われている。
このように、前記の先行技術による方法では、存在する全ての元素について均
質であって制御可能な形態をもつドープ化酸化亜鉛の粉末を実現することはでき
ない。
フランス特許第2.665.156号明細書は、前記の既知の方法から欠点を取り除く
、
ドープ化酸化亜鉛の粉末の製造方法について記載している。同方法においては粉
末は、元素(亜鉛、ドーピング元素)が原子レベルで化合し最終酸化物内で同じ
形態を再現する単相混合炭酸塩から成る単相前駆体の沈殿によって得られる。こ
のように、組成においても形態(これは混合炭酸塩の沈殿条件に基づいて制御が
可能)においても、元素の分布について良好な均質性が得られたことが確認され
た。このような条件においては、このような粉末により、ドーピング元素の均一
な分布が得られるセラミックの焼結を実現することが可能である。
以下の説明においては、標準的な方法により締固めまたは焼結後の粉末の「稠
密化」とは酸化亜鉛の理論密度(5.6)に対する締固めまたは焼結された物質
の実測密度の比であると定義する。
既知の方法によって得られたドープ化酸化亜鉛の粉末は、その最大値が高温部
に相当する稠密化曲線を呈している。したがって、良好な稠密化を得るためには
、通常比較的高い焼結温度が必要である。大部分の応用例とくにセラミックバリ
スタの場合には、最大の稠密化が求められるため、量産工程における焼結温度は
、現在、1200〜1300℃である。
本発明は、前記フランス特許第2.665.156号明細書に記載されている長所(均
質性、形態が制御可能)と同じ長所を有しながら、低温締固めの可能性と、同先
行特許において得られる粉末の焼結の緻密化/温度係数に比べてはるかに改善さ
れた焼結の緻密化/温度係数とを特徴とする、ドープ化酸化亜鉛の新しい粉末を
目的とする。本発明の別の目的は、前記の特徴に、大きな比表面積を得ることを
付加することである。
本発明によるドープ化酸化亜鉛の粉末は、ビスマスでドープされ、場合によっ
ては1種または複数の金属または半金属ドーパントを含み、5m2/g〜45m2
/gの比表面積と、950〜1000℃の焼結温度に対し少なくとも90%の稠
密化とを特徴とする、ドープ化酸化亜鉛から成る。
本発明による製造方法は、(種々の元素の前駆体が多相混合される他の方法と
は異なり)元素(亜鉛、ビスマス、その他のドーピング元素)が原子レベルで化
合する単相前駆体を沈殿させることを内容とする、前記フランス特許第2.665.15
6号明細書に記載の方法と同種である。この方法は以下の操作を含む。(a)、
溶媒を使用して、同溶媒に溶ける亜鉛塩の溶液を作り、前記溶液にビスマスの塩
または水酸化物と、場合によっては、亜鉛に対し比較的少量の1種または複数の
金属または半金属ドーピング元素の塩または水酸化物を加える。(b)、沈殿剤
と、場合によっては1種または複数の金属または半金属ドーピング元素とを含む
、少なくとも1つの水溶液を作る。(c)、(a)と(b)の操作で作った溶液
を混合して沈殿を発生させる。(d)、液相から沈殿物を分離する。(e)、熱
処理により前記沈殿物を分解する。他方、本発明の方法によれば、操作(b)の
沈殿剤の溶液として、シュウ酸塩、蟻酸塩、クエン酸塩、酢酸塩または酒石酸塩
のイオンを含む溶液を使用し、操作(c)の混合時に、一般式がZn(n-x-y)B
ixDyRm・zH2Oであり、単相混合した、亜鉛およびドーパントの、シュウ酸
塩、蟻酸塩、クエン酸塩、酢酸塩または酒石酸塩で構成される前駆体の沈殿を発
生させる。前記一般式においては、ビスマス原子Biおよび場合によってはその
他のドーパントの原子Dは亜鉛の原子Znで置換されており、Rは、シュウ酸塩
、蟻酸塩、クエン酸塩、酢酸塩または酒石酸塩の残基であり、nおよびmは整数
であり、xおよびyはnおよびmより小さい数値である。操作(e)において、
単相混合前駆体の形態と類似した形態をもつドープ化酸化亜鉛を得るため、適切
な条件下で、単相混合した、亜鉛の、シュウ酸塩、蟻酸塩、クエン酸塩、酢酸塩
または酒石酸塩の熱処理を行う。
「置換」という用語は広義の意味で解釈すべきであり、ある決まった結晶点の
みに限定された置換も、結晶格子への入れ込みも、あるいは同結晶格子への吸収
をも包含する。
このように、本発明においては、(先行方法による混合炭酸塩の代りに)混合
した、シュウ酸塩、蟻酸塩、クエン酸塩、酢酸塩または酒石酸塩から成る単相前
駆体からドープ化酸化亜鉛が得られる。同前駆体の中においては、元素(亜鉛、
ビスマス、その他のドーピング元素)が原子レベルで化合し、次に最終酸化物内
で同じ形態を再現する。このように、組成においても形態においても、元素の均
質性(分子レベルでの均質性)は完璧である。さらに、単相前駆体の沈殿条件を
制御することにより、同前駆体の形態(形、大きさ、組織)を選択することが可
能である。また、同前駆体に適切な熱処理を施すことにより同形態を維持するこ
とができ、したがって粉末について所望の形態を得ることができる。また、得ら
れた粉末は、大きい比表面積と、先行方法の実施によって得られる粉末よりもは
るかに高い密度の製品をもたらすすぐれた締固め性の双方を同時にもっているこ
とを、確認することができた。このような粉末は、とくに有機性の粘結剤を加え
た後冷間で締固めすることができ、その結果、50〜70%程度の稠密化を特徴
とするすぐれた粘着力をもつ素セラミックが得られる。またこのセラミックを少
なくとも90%稠密化するため、740℃〜1000℃の温度で締固めあるいは
焼結することも可能である。
本発明による粉末は通常、平均相当直径D50が0.4〜20μmの多面体形態
を呈する等方性粒子から成り、各粒子は大きさが0.01〜0.3μmの一次粒
子から成る。
本発明による粉末の性能は、粒子間の焼結度が低いこと(粉末の流動性が良好
であること)および、締固め時の粉砕性が高いことによるものである。また、粒
子の内部にビスマスに富む相が存在するため、焼結時に粒子内に液体が現れ、一
次粒子間に直接再配列する。その結果、粒子間に残っていたミクロン大のすきま
が取り除かれる。
本発明による方法の好ましい実施態様によれば、使用する混合前駆体は、一般
式がZn(1-x-y)BixDyC2O4・zH2Oである単相混合シュウ酸塩である。本
方法は以下の条件で実施される:(a)モル濃度が2〜6モル/リットルの可溶
性亜鉛塩の水溶液またはアルコール溶液を作る。(b)混合(c)時、単相混合
シュウ酸塩が沈殿するよう、シュウ酸イオンを含む水溶液を少なくとも1つ作る
。シュウ酸塩の溶液は20℃〜80℃の温度に維持し、亜鉛塩の溶液に混合する
。金属または半金属元素を(塩または水酸化物の形態で)含む溶液への同シュウ
酸塩の溶液の混合は、シュウ酸イオン数が金属または半金属イオンの総数とほぼ
等しくなるよう、正規組成条件に近い条件下で行うことが好ましい。
焼結による稠密化に対するより高い適性をもつ粉末をもたらす実施態様によれ
ば、(b)濃度が0.1〜1モル/リットルのシュウ酸塩溶液を2つ作る。(c
)亜鉛塩溶液を、一方のシュウ酸塩溶液−第1溶液−に加え、撹拌した後、混合
液の温度を20℃〜60℃の値に保ちつつ、もう一方のシュウ酸塩溶液−第2溶
液
−を加える。第2溶液は、濃度を上げるため(とくに0.5〜1モル/リットル
)、熱を加えて作ることができる。一方、第1溶液は濃度が低い(0.1〜0.
25モル/リットル)ため、室温で作ることが好ましい。第1混合液の方が沈殿
速度が遅いため大量の核が形成され、それにより、第2混合時、1〜5μm(平
均相当直径D50)程度のより小さな直径の粒子の形成が促進される。操作条件は
とくに以下のようにすることが可能である。亜鉛塩溶液をすばやく第1シュウ酸
塩溶液に流し込み、混合液を15〜120秒間撹拌し、第2シュウ酸塩溶液をす
ばやく流し込み、混合液の温度を20℃〜60℃に保って混合液を10〜60分
間撹拌する。
1種または複数のシュウ酸アンモニウム溶液を使用することが好ましい。事実
、同シュウ酸塩は水に非常に可溶性であり、液相に含まれるアンモニアイオンは
、分離段階において非常に簡単に除去される。この沈殿物の分離はとくに簡単な
ろ過で行われ、その後単数または複数の水洗が行われる。
塩化亜鉛および硝酸亜鉛は可溶性が高く、取り扱いが容易で、市場で安価に入
手できることから、亜鉛塩溶液は、塩化亜鉛または硝酸亜鉛の水溶液であること
が好ましい。
混合シュウ酸塩の分解のための熱処理は、同物質を380℃〜710℃の範囲
内の温度にもってゆく際、最大で100℃/hの温度上昇速度で混合シュウ酸塩
をゆっくりと加熱して実行することが好ましい。なお上記温度は0.5〜20時
間維持される。
シュウ酸塩の分解は2つの段階で行われることが認められた。1つはシュウ酸
塩の結晶水の消失に相当する100℃〜140℃で行われる段階であり、もう1
つは、おおむね330℃で始まる本来の意味での分解(COおよびCO2の消失
)に相当する段階である。質量の全消失量がおよそ57%になると分解が終了す
る。
本発明は、前記に記載の粉末の、締固め、または締固めと焼結によって作られ
るセラミックであって、とくにバリスタの製造を可能にする焼結セラミックにも
応用される。
本発明による方法および粉末は、添付の図面を参照しつつ、実施態様について
の以下の説明を読むことにより明らかになろう。
第1図、第2図および第3図は、例1に記載の熱分解比較線図である。
第4図と第5図は、それぞれ、例2と例5において得られたシュウ酸塩の粒子
の顕微鏡写真である。
第6図は、例3に記載の密度/比表面積線図である。
第7図と第8図は、例3と例4において得られた線図であって、締固め時に加
えられた圧力と焼結温度の変化に対する稠密化の推移を示す線図である。
第9図は、例5において得られた線図であって、焼結温度の変化に対する稠密
化の推移を示す線図である。
例1:90%Zn、5%Bi、3%Co、2%Mnのモル組成のドープ化酸化
亜鉛の粉末の製造。
この例は、ドーパントの含有量が多い(バリスタの製造の際通常使用される含
有量よりもはるかに高い含有量)場合でも、本発明による方法により、混合シュ
ウ酸塩から成る前駆体を作ることができることを示すためのものである。
a/− 20℃の蒸留水25mlに、12.26gのZnCl2と、0.71
4gのCoCl2・6H2Oと、0.396gのMnCl2・4H2Oと、1.57
6gのBiCl3とを溶かした。塩の全濃度は4モル/リットル程度であった。
b/− 20℃の蒸留水220mlに、7.105gのシュウ酸アンモニウム
を溶かした。その濃度は0.2モル/リットル程度であった。低温で混合される
この溶液を「低温シュウ酸塩溶液」と呼ぶ。
60℃の蒸留水130mlに、7.105gのシュウ酸アンモニウムを溶かし
た。塩の全濃度は0.4モル/リットル程度であった。この溶液を「高温シュウ
酸塩溶液」と呼ぶ。
c/− a/で得られた亜鉛塩の溶液とb/で得られた低温シュウ酸塩溶液を
すばやく混合する。沈殿物が形成されたので、室温で45秒間撹拌した。
c/で得られた溶液とb/で得られた高温シュウ酸塩溶液をすばやく混合した
。また沈殿があったので、35℃で15分間撹拌した。混合液のpHは6程度で
あった。
d/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が塩化物イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で50℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。
この粉末を定量分析(X線フルオレセイン)し、ドーパントの公称含有量を確
認した。形成された化合物は、Zn0.90Bi0.05Co0.03Mn0.02C2O4・2H2
Oの化学式の単相混合シュウ酸塩であった。
同化合物の混合単相特性は、重量熱分析(GTA)および熱量測定(DSC)
によって明らかにされた。第1図は、純粋なシュウ酸亜鉛の熱分解の特徴を示す
線図であり、第2図は、作った混合シュウ酸亜鉛の熱分解の特徴を示す同様の線
図であり、第3図は、シュウ酸亜鉛、シュウ酸ビスマス、シュウ酸マンガン、シ
ュウ酸コバルトなどのシュウ酸塩混合物(金属陽イオンが、作った混合シュウ酸
亜鉛と同じ比率で存在している混合物)の熱分解の特徴を示す同様の線図である
。温度を横軸にとり、%を単位とする質量損(TG)および質量損の導関数(D
TG)を縦軸にとっている。
水の2つの分子の消失に対応する140℃前後のマークA1と、CO1モルと
CO21モルの消失に対応する360℃前後のマークA2とが、純粋なシュウ酸亜
鉛の分解を示している(第1図)。
混合シュウ酸塩の分解の場合には、マークA2は低温側にずれているが(第2
図のA’2)、マークA1は変化していないA’1。
反対に、シュウ酸塩の混合物の分解は4つのマークとなって現れる。すなわち
A”1は水の消失に対応し変化していず、A”2は360℃前後のシュウ酸亜鉛の
分解に対応し、BおよびCはそれぞれ、235℃前後のシュウ酸コバルトとシュ
ウ酸マンガンの分解と、245℃前後のシュウ酸ビスマスとシュウ酸マンガンの
分解に対応している。
これらの曲線を比較することにより、共沈されたシュウ酸塩は、シュウ酸塩の
混合物ではなく、単相混合シュウ酸塩であることを確認することができる。
e/− 得られた混合シュウ酸塩の粉末を、400℃の定温域まで加熱した。
温度上昇速度は30℃/hであった。400℃の定温維持時間は1時間であった
。次の冷却速度は200℃/hであった。
B.E.T.(”Brunauer Emmett Teller”)法により測定した、ドープ化酸
化亜鉛の粉末の比表面積は40m2/gであった。
例2:97%Zn、1%Bi、1%Co、1%Mnのモル組成であって、平均
粒子寸法が約1.5μmの酸化亜鉛の粉末の製造。
a/− 20℃の蒸留水25mlに、13.22gのZnC12と、0.238
gのCoCl2・6H2Oと、0.198gのMnCl2・4H2Oと、0.315
gのBiC13とを溶かした。塩の全濃度は4モル/リットル程度であった。
b/− 20℃の蒸留水220mlに、7.105gのシュウ酸アンモニウム
を溶かした。塩の全濃度は0.2モル/リットル程度であった(いわゆる低温溶
液)。
60℃の蒸留水130mlに、7.105gのシュウ酸アンモニウムを溶かし
た。塩の全濃度は0.4モル/リットル程度であった(いわゆる高温溶液)。
c/− a/で得られた溶液とb/で得られた(低温溶液)をすばやく混合し
た。沈殿物が形成されたので、室温で45秒間撹拌した。
c/で得られた溶液とb/で得られた(高温溶液)をすばやく混合した。また
沈殿があったので、35℃で15分間撹拌した。混合液のpHは6程度である。
d/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が塩化物イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で50℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。
この粉末を定量分析(X線フルオレセイン)し、ドーパントの公称含有量を確
認した。形成された化合物は、Zn0.97Bi0.01Co0.01Mn0.01C2O4・2H2
Oの化学式の単相混合シュウ酸塩であった。
同化合物の混合単相特性は、重量熱分析(GTA)および熱量測定(DSC)
によって明らかにされた。
混合シュウ酸塩の粒子が、走査電子顕微鏡で観察された。第4図は、多面体形
態で平均直径が、1.5μmの等方性粒子の顕微鏡写真である。
e/− 得られた混合シュウ酸亜鉛、ビスマス、コバルト、マンガンの粉末を
、400℃(分解の終了380℃)から700℃(ZnO−Bi2O3線図におけ
る740℃前後での共晶の溶融)の定温域まで加熱した。温度上昇速度は400
℃までは30℃/hであり、次に定温域までは100℃/hであった。次の冷却
速
度は200℃/hであった。定温域の温度と継続時間とにより、5m2/gから
45m2/gまで変化する可能性のある酸化物の比表面積を固定することができ
た。
得られた酸化物の粉末は分析された。粉末は、平均相当直径D50が1μm程度
で多面体形態の等方性粒子から成り、各粒子は、0.01〜0.3μmの大きさ
の一次粒子の凝結体から成っていた(第5図)。
f/− 一定の比表面積のドープ化酸化亜鉛の粉末はラテックスを主成分とす
る1%の粘結剤とともに混合され、直径6mm、厚さ2mmのペレットになるよ
う一軸方向に圧縮された。使用圧力は280MPaであった。
粗セラミックの稠密度は、第5図の酸化物の比表面積(45〜1m2/g)に
よって、52%から64.5%までの範囲であった(第6図)。
これらペレットは、950℃で10時間、焼結された。温度上昇速度は7℃/
分であった。ただし250℃から400℃の間は、粘結剤を除去するため温度上
昇速度は1℃/分であった。45m2/gの粉末の場合、稠密度は85.5%で
あったが、28m2/gの粉末の場合、稠密度は91%に達し、第5図に図示す
る焼結サイクル用の比表面積が6.5m2/gの粉末の場合、97.5%に達し
た。これらの稠密度は、焼結サイクル(温度上昇速度、滞留時間)、成形時に加
える圧力、添加粘結剤の含有量および種類などのパラメータを変えることにより
さらに顕著に向上させることが可能であろう。この場合に選択された条件は、比
表面積が6.5m2/gの粉末に対しては最適であると思われるが、他の粉末に
関しては最適ではない。第6図は、加える圧力に対する、比表面積1m2/gの
粉末から作った粗セラミックの相対密度の変化(64.5%〜72%)を示す図
である。粘結剤の比率は一定にして、加える圧力を2倍にすることにより8%増
加させることができた。また、これにより、亀裂の発生を伴うことなく焼結時の
稠密度が、95.6%から97%に増加した。
同様に、比表面積が非常に大きい粉末の場合(45m2/g)、焼結サイクル
および粘結剤の含有量の最適化が可能であった。これらの粒子の粉砕性により、
化学的方法によって得られる細かな粉末の成形に通常用いられる粒化方法を用い
なくとも、高い稠密度が得られた。
例3:焼結温度に対する、ドープ化酸化亜鉛の粉末の稠密度の変化。
例2で作った混合シュウ酸塩の粉末を、例2eに記載したか焼サイクルにした
がい、空気下で、700℃の温度で1時間加熱した。得られたドープ化酸化亜鉛
の比表面積は14m2/gであった。
この粉末は例2fと同じ条件で圧縮された。
得られたペレットは、950℃から1250℃の間の種々の温度で焼結された
。焼結温度における滞留時間は1時間であった。第7図は、焼結温度に対する、
稠密度の変化を示す図である。稠密度は早くも1000℃で94%の最大値を示
した。したがって、同曲線から、この粉末は低温で焼結するのが有利であること
は明らかである。
したがってこの方法は、調製が容易であり(沈殿が簡単、薬品は通常のもので
安価)、かつドーパントの組成および分布、粒子の大きさ、形態、組織を制御で
きる方法である。結果として、使用方法が簡単で低温焼結に適しているので、現
在用いられている量産方法に比べ、セラミックの製造時間を短縮することが可能
である。
例4:97%Zn、1%Bi、1%Co、1%Mnのモル組成であって、平均
粒子寸法が約10μmのドープ化酸化亜鉛の粉末の製造。
a/− 45℃の蒸留水500mlに、13.22gのZnCl2と、0.2
38gのCoCl2・6H2Oと、0.198gのMnCl2・4H2Oと、0.3
15gのBiCl3とを溶かした。塩の全濃度は0.2モル/リットル程度であ
った。
b/− 20℃の蒸留水500mlに、14.21gのシュウ酸アンモニウム
を溶かした。濃度は0.2モル/リットル程度であった。
c/− a/とb/と得られた溶液をすばやく混合した。すぐ沈殿物の形成が
みられたので35℃で30分間撹拌した。混合液のpHは6程度である。
d/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が塩化物イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で50℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。
この粉末を定量分析(X線フルオレセイン)し、ドーパントの公称含有量を確
認した。形成された化合物は、Zn0.97Bi0.01Co0.01Mn0.01C2O4・2H2
Oの化学式の単相混合シュウ酸塩であった。
同化合物の混合単相特性は、重量熱分析(GTA)および熱量測定(DSC)
によって明らかにされた。
混合シュウ酸塩の粒子が走査電子顕微鏡で観察された。第8図は、多面体形態
で平均直径が10μmの等方性粒子の顕微鏡写真である。
e/− この粉末は例1eにしたがい熱分解された。ただし、950℃の焼結
温度において、比表面積が12m2/gで緻密度が92%のドープ化酸化亜鉛の
粉末が得られるよう、定温域を700℃とした。多面体形態の粒子の平均相当直
径D50は9μm程度であった。
例5:95%Zn、1%Bi、1%Co、1%Mn、2%Sbのモル組成であ
って、平均粒子寸法が約1.5μmの混合シュウ酸塩粉末の製造。
a/− 20℃の蒸留水100mlに、113.04gのZn(NO3)2・6
H2Oと、1.164gのCo(NO3)2・6H2Oと、1.148gのMn(N
O3)2・6H2Oと、1.9483gのBi(NO3)3・5H2Oとを溶かした。
塩の全濃度は4モル/リットル程度であった。
b/− 20℃の蒸留水880mlに、28.42gのシュウ酸アンモニウム
を溶かした。濃度は0.2モル/リットル程度であった。
c/− 20℃の蒸留水880mlに、28.42gのシュウ酸アンモニウム
を溶かした。濃度は0.2モル/リットル程度であった。
d/− SbCl3を1.8249g含む水溶液を沈殿前に加えた。
e/− a/とb/とで得られた溶液をすばやく混合した。すぐ沈殿物の形成
がみられたので混合液を室温で45秒間撹拌した。
f/− e/とc/とで得られた溶液をすばやく混合した。ここでも沈殿物の
形成がみられたので混合液を20℃に保って15分間撹拌した。混合液のpHは
6程度であった。
g/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が硝酸塩イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で50℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。この粉末を定量分析(X線フルオレ
セイン)し、ドーパントの公称含有量を確認した。形成された化合物は、Zn0. 97
Bi0.01Co0.01Mn0.01Sb0.02C2O4・2H2Oの化学式の単相混合シュ
ウ酸塩であった。
同化合物の混合単相特性は、重量熱分析(GTA)および熱量測定(DSC)
によって明らかにされた。
混合シュウ酸塩の粒子が走査電子顕微鏡で観察された。同粒子は例2の粒子と
同一であった。
h/− 作った混合シュウ酸塩の粉末を、例3に記載するか焼サイクルにした
がい、空気下で、700℃までの温度で5時間加熱した。得られたドープ化酸化
亜鉛の比表面積は20m2/gであった。
i/− この粉末は例3と同じ条件で圧縮された。
j/− 得られたペレットは、950℃から1250℃の間の種々の温度で焼
結された。焼結温度における定温維持時間は1時間であった。第9図は、焼結温
度に対する、稠密度の変化を示す図である。稠密度は早くも950℃で97%の
最大値を示した。したがって、同曲線から、この粉末は低温で焼結するのが有利
であることが明らかになる。
例6:97%Zn、1%Bi、1%Co、1%Mnのモル組成の混合蟻酸塩粉
末の製造。
a/− 20℃の蒸留水50mlに、57.71gのZn(NO3)2・6H2
Oと、0.582gのCo(NO3)2・6H2Oと、0.574gのMn(NO3
)2・6H2Oと、0.974gのBi(NO3)3・5H2Oとを溶かした。塩の
全濃度は4モル/リットル程度であった。
b/− 20℃の蒸留水150mlに、25.224gの蟻酸アンモニウムを
溶かした。濃度は2.7モル/リットル程度であった。
c/− a/とb/とを混合した。
d/− c/で得られた溶液に、1.5リットルのエタノールを加える。沈殿
物の形成がみられたので、15分間撹拌した。
e/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が硝酸塩イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で50℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。
f/− 混合蟻酸塩の粉末を、例3に記載するか焼サイクルにしたがい、空気
下で、600℃までの温度で1時間加熱した。得られたドープ化酸化亜鉛の比表
面積は10m2/gであった。
g/− この粉末は例3と同じ条件で圧縮された。
h/− 得られたペレットは950℃で焼結されたが、例3の焼結サイクルに
したがい定温域維持時間は2時間であった。この状態で得られた稠密度は94%
であった。
例7:97%Zn、1%Bi、1%Co、1%Mnのモル組成の混合クエン酸
塩粉末の製造。
a/− 20℃の蒸留水50mlに、57.71gのZn(NO3)2・6H2
Oと、0.582gのCo(NO3)2・6H2Oと、0.574gのMn(NO3
)2・6H2Oと、0.974gのBi(NO3)3・5H2Oとを溶かした。塩の
全濃度は4モル/リットル程度であった。
b/− 20℃の蒸留水200mlに、30.128gのジアンモニウム炭酸
クエン酸塩を溶かした。濃度は0.7モル/リットル程度であった。
c/− a/とb/とを混合した。
d/− c/で得られた溶液に、1リットルのエタノールを加えた。沈殿物の
形成がみられたので、15分間撹拌した。
e/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が硝酸塩イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で50℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。
f/− 混合蟻酸塩の粉末を、例3に記載するか焼サイクルにしたがい、空気
下で、600℃までの温度で1時間加熱した。得られたドープ化酸化亜鉛の比表
面積は10m2/gであった。
g/− この粉末は例3と同じ条件で圧縮された。
h/− 得られたペレットは950℃で焼結されたが、例3の焼結サイクルに
したがい定温域維持時間は2時間であった。この状態で得られた稠密度は91%
であった。
例8:97%Zn、1%Bi、1%Co、1%Mnのモル組成の混合酒石酸塩
粉末の製造。
a/− 20℃の蒸留水250mlに、298.65gのZn(NO3)2・6
H2Oと、3.01gのCO(NO3)2・6H2Oと、2.95gのMn(NO3
)2・6H2Oと、5.02gのBi(NO3)3・5H2Oとを溶かした。塩の全
濃度は4モル/リットル程度であった。
b/− 45℃の蒸留水1000mlに、184.15gの酒石酸アンモニウ
ムを溶かした。濃度は1モル/リットル程度であった。
c/− a/にb/を混合し、沈澱物を15分間撹拌した。
e/− 沈殿物をろ過し、洗浄水が硝酸塩イオンまたはアンモニアイオンを含
まなくなるまで水洗した。沈殿物を乾燥器で90℃未満の温度で24時間乾燥し
た。次に、沈殿物の焼結を分離し分別した。
f/− 混合蟻酸塩の粉末を、例3に記載するか焼サイクルにしたがい、空気
下で、700℃までの温度で2時間加熱した。得られたドープ化酸化亜鉛の比表
面積は8m2/gであった。
g/− この粉末は例3と同じ条件で圧縮された。
h/− 得られたペレットは950℃で焼結されたが、例3の焼結サイクルに
したがい定温域維持時間は2時間であった。この状態で得られた稠密度は91%
であった。
【手続補正書】
【提出日】1995年11月17日
【補正内容】
(1)明細書第7頁3行〜9行の記載を次のように訂正します。
『第4図と第5図は、例2において得られたシュウ酸塩混合物と酸化物の粒子の
顕微鏡写真である。
第6図は、例2に記載の密度/比表面積線図である。
第7図は、例2において得られた線図であって、締固め時に加えられた圧力の
変化に対する稠密化の推移を示す線図である。』
(2)明細書の記載を次のように訂正します。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 シュナイダー ディディエ
フランス共和国 エフ―26120 マリッサ
ール レ テレ―ルージュ(番地なし)
(72)発明者 ルッセ アベル
フランス共和国 エフ―31520 ラモンヴ
ィル リュー ジャン―ムーラン 16
(72)発明者 ルグロ ルネ
フランス共和国 エフ―31320 ペシャブ
ー シュマン ラティエ(番地なし)
(72)発明者 ペニエー アラン
フランス共和国 エフ―31320 ペシャブ
ー アレ デ プラターヌ 6