JPH08503522A - ナノ結晶金属 - Google Patents

ナノ結晶金属

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JPH08503522A
JPH08503522A JP6512603A JP51260394A JPH08503522A JP H08503522 A JPH08503522 A JP H08503522A JP 6512603 A JP6512603 A JP 6512603A JP 51260394 A JP51260394 A JP 51260394A JP H08503522 A JPH08503522 A JP H08503522A
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Abstract

(57)【要約】 ナノ結晶材料、特に平均粒径が約11nm未満のナノ結晶ニッケル、および粒径が約100nm未満のNiFeCr合金およびNiFeCrMn合金のような三元および四元のニッケル・鉄合金の製造方法を記載。ナノ結晶ニッケルは、水性酸性電解質セル内でパルス式DC電流を流すことによりカソード上に電着される。三元および四元のニッケル・鉄合金およびそのたの二元、三元、四元合金はDC電気メッキまたはパルス式DC電気メッキによって製造される。セル電解質はサッカリン等の応力緩和剤の添加により粒径の制御を補助することもできる。本発明の新規な生成物は、耐摩耗性被覆、水素貯蔵材料、磁性材料、および水素放出用触媒として用途がある。

Description

【発明の詳細な説明】 ナノ結晶金属 発明の分野 本発明は、ナノ結晶金属およびその合金およびその製造方法に関し、更に詳し くは粒径が11ナノメータ未満のナノ結晶ニッケルおよび粒径が約100ナノメ ータ未満のナノ結晶純金属、2元、3元、および4元合金の製造に関する。 発明の背景 ナノ結晶材料は、欠陥コアと歪み結晶格子領域とを大きな体積率(原子の50 %あるいはそれ以上)で含む不規則固体の新しいクラスである。密度が低く、境 界コア内の原子間に格子間隔が存在しない物理的な理由は、共通界面方向の方位 が異なる結晶格子間のミスフィットである。ナノ結晶系では、全てのミスフィッ トが集中して平衡状態からかけ離れた構造が形成されている領域である境界領域 を代償として、結晶内に低エネルギーの構造が維持されている(Gleiter,Nanoc rystalline Materials,Prog.in Matls Science,Vol 33,pp223-315,1989) 。ガラスのように熱的に誘起された不規則固体中には、このような不均一構造は 形成されない。ナノ結晶材料は典型的には粒界面境界の密度が高い(1019cm-3 )。このような高密度を達成するには、結晶が約100nm未満であることを必 要とする。過去数年にわたって、ナノ結晶をより小さく、約10nmにまで小さ くするために多大な努力が行われてきた。しかし、ナノ結晶を更に小さく(10 nm未満)すると、それよりも大きいナノ結晶に比べて、特に硬さ、磁気的挙動 、水素貯蔵、および耐摩耗性 といった性質上なお非常に有利になるであろう。 ナノ結晶材料は、超微粒材料、ナノ相(nanophase)材料、あるいはナノメー タサイズ結晶材料としても知られているもので、その作製法としては、スパッタ 、レーザ融発(laser ablation)、不活性ガス凝縮、オーブン蒸発、噴霧転化熱 分解(spray conversion pyrolysis)、火炎加水分解(flame hydrolysis)、高 速堆積(high speed deposition)、高エネルギーミリング(high eneryg milli ng)、ゾル・ゲル堆積(sol gel deposition)、および電着(electrodepositio n)等がある。これらの方法にはそれぞれ特有の利点と欠点があって、これら全 ての方法が全てのタイプのナノ結晶材料に対して適しているわけではない。しか し、多くの材料について電着法が用いられることが分かってきた。電着法の主な 利点として、(a)多数の純金属、合金および複合材料をナノ結晶範囲の粒径で 電気メッキできること、(b)初期投資が少なくてよいこと、および(c)電気 メッキ、電解抽出および電鋳の分野で既存の知識が豊富なことがある。 電着法を用いて、何年にもわたってニッケルおよびその他の金属および合金の ナノ結晶電着材が作製され、粒径も10〜20nm範囲にまで小さくなってきた 。これまでは、約10nm未満の粒径を得ることはできなかった。結晶サイズが 小さくなるほど材料中の粒界および三重点の比率が増加する。室温硬さはホール ・ペッチ現象により粒径が小さくなるほど増加することが知られている。しかし 、材料中の三重点の個数が増加するに伴い、約30nm以下になると、通常のホ ール・ペッチ挙動からはずれてきて、粒径がある臨界値より小さくなると硬さが 増加しなくなることが分かった。すなわち、純ニッケルのナノ結晶材の場合、8 〜10nmの範囲でピークに達することが分かった。その他の材料では、粒径が 約10nm未満になると硬さか逆に低下する。 ニッケル・鉄の2元ナノ結晶合金がD.L.Grimmettのカリフォルニア大学での博 士論文(1990)に記載されている。ニッケル・燐のナノ結晶材およびコバルト・ タングステンのナノ結晶材も知られている(C.McMahon et al Microstr.Sci.1 7,447(1989)およびErb et al Nanostructured Mats Mol 2,383-390(1993) 。 ナノ結晶材料はアモルファス材料や従来の多結晶材料に比べて優れた磁気的性 質を持っている。特に重要なのは飽和磁化であり、これは粒径にはよらず高くな り得るはずである。ところが、ガス凝縮によるナノ結晶ニッケルについて行われ た研究(Gong et al.,J.Appl.Phys.69,5119,(1991))では、粒径の減少 に伴って飽和磁化が減少することが報告されている。しかし、本発明により電気 メッキで作製したナノ結晶ニッケルでは飽和磁化にほとんど変化がなかったこと から、上記報告された現象は製造方法に起因するものと考えられる。 発明の目的 本発明の目的の一つは、直径100nm未満のナノ結晶材料を作製するための 新規なパルス式電着法を提供することである。 もう一つの目的は、粒径が100nm未満であって、磁気的性質が向上したも のもある、ナノ結晶の金属、二元、三元および四元合金を提供することである。 更にもう一つの目的は、パルス式電着法により非常に微細なナノ結晶材料を製 造するための装置を提供することである。 発明の簡単な記述 本発明の一態様によると、所定金属材料をナノ結晶状態で基材上に電着する方 法であって、 (a)アノードおよびカソードを有する電解セルを準備する工程、 (b)該所定金属材料のイオンを含有する水性電解質を該電解セル内に導入す る工程、 (c)該電解質を約15℃〜約75℃の範囲内の温度に維持する工程、および (d)該アノードと該カソードとの間に、約0.1〜約5ミリ秒の範囲内の期 間中は流れるが約1〜約500ミリ秒の範囲内の期間中は流れないパルス間隔で 、ピーク電流密度が約0.1〜約3.0A/cm2の範囲内にあるDC電流を流 すことにより、該所定金属材料をナノ結晶状態で該カソード上に堆積させる工程 を含む電着方法が提供される。 本発明のもう一つの態様によると、粒径が11nm未満であり、8〜10nm の粒径範囲で硬さが最大になり、通常の結晶状態におけるのとほぼ同等の飽和磁 化特性を持つナノ結晶ニッケルが提供される。 本発明の望ましい態様によると、粒径が100nm未満であり、(a)Co、 Cr、CuおよびFeから成る群から選択された純金属と、(b)Ni、Fe、 Co、Zn、Ti、S、Mg、W、Cr、Cu、Mo、Mn、V、Si、P、C およびSから選択された2種類以上の元素を含む合金〔但し、二元合金において 第1の元素がニッケルである場合には第2の元素は鉄でも燐でもなく、また二元 合金において第1の元素がコバルトである場合には第2の元素はWではない〕と から成る群から選択されたナノ結晶金属材料が提供される。 本発明の更にもう一つの態様によると、粒径が約100nm未満であり、Ni FeX12型〔ここでX1およびX2はゼロまたはCr、Cu、Mn、P、S、S i、V、Co、Ti、Mo、P、お よびCから選択される〕のナノ結晶の三元または四元ニッケル・鉄合金が提供さ れる。 図面の簡単な説明 図1は本発明の方法に用いる装置の一実施態様の配置概念図であり、 図2はメッキサイクルにおける時間と電流密度との関係を示すグラフであり、 図3はナノ結晶ニッケルについて粒径と硬さ(VHN)との関係(ホール・ペ ッチのプロット)を示すグラフであり、 図4は本発明により製造したナノ結晶ニッケルの粒径と磁気飽和(emu/g )との関係を、従来技術と比較して示すグラフであり、 図5は本発明に用いる装置の他の実施態様の配置概念図であり、 図6は種々のクロム濃度の浴で製造したNiFeCr三元合金の組成を示すグ ラフであり、 図7はナノ結晶ニッケルの抵抗率を粒径の関数として示すグラフであり、 図8は抵抗率増分を粒間体積率の関数として示すグラフであり、 図9はナノ結晶および多結晶のニッケルについて分極曲線を示す。 望ましい実施態様の詳細な説明 既に説明したように、パルス式直流電着法により約11nm未満の粒径を持つ 超ナノ結晶材料、特にニッケル、の製造方法を見出した。パルス式DC電着法ま たはDC電気メッキ法により、ナノ結晶Co、Cr、CuおよびFeの他に、約 100nm未満の粒径を持つ三元または四元のニッケル・鉄合金も製造できる。 以下に特にナノ結晶ニッケルの製造について本発明を説明する。 図1は本発明の方法を実際に行うための研究室装置の概念図である。メッキセル 1は通常はガラスまたは熱可塑性プラスチック製であり、その中に収容された電 解質2は硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硼酸、および所定の粒径抑制剤、粒発生 剤、および応力緩和剤の酸性水溶液であり、これらについては後に詳細に説明す る。アノード3は、従来のDC電源5(最大出力:5アンペア、75ボルト)と 直列に電流計4(Beckman,Industrial 310)と接続されている。アノードは、 電着させる材料に応じて、白金またはグラファイトのような寸法不変アノード( dimensionally stable anoce:DSA)または反応性アノードのいずれでもよい。 ニッケル電着の場合には、アノードは電解ニッケルアノードであることが望まし い。カソード6はトランジスタ式スイッチ7を介して電源5に接続されている。 カソード6は鋼、黄銅、銅のような多種多様な金属またはグラファイトのような 非金属で作製してよい。カソード6は、それに電着したニッケルの離脱を容易に するには、チタンで作製することが望ましい。スイッチ7は波形生成器8(Wave TEK,Model 164)で制御され、波形のモニタはオシロスコープ9(Hitachi V212 )で行う。 電解質2の温度は、一定温度浴10(Blue M Electric Co.)を用いて約55 〜75℃の範囲内に維持する。望ましい温度範囲は約60〜70℃であり、最も 望ましくは約65℃である。pHの制御は、NiCO3粉末または7:1のH2S O4:HClを必要により添加して行う。 電着材の品質とその結晶構造はセル1内のピーク電流密度と電流のパルス速度 とに依存する。図2に最大電流密度(Ipeak)を時間の関数として示す。 ここ で、一般にOFF時間(toff)がON時間(ton)よりも長く、電流密度Ipea k は約1.0A/cm2と約3.0A/cm2の間で変化してよい。tonは約1. 0ミリ秒と約5.0 ミリ秒の間で変化してよく、望ましい範囲は1.5〜3.0ミリ秒であり、最適 値は2.5ミリ秒である。toffは約30ミリ秒から50ミリ秒までの範囲であ ればよく、45ミリ秒が最適である。Ipeakと、tonと、toffとを相互の関係 させて上記各範囲内で変化させるとよい。Ipeakが高すぎると電着材が焼けるし 、低すぎると粒径が大きくなる。 以下の実施例は本発明を説明するだけであって本発明を限定するものではない 。これらの実施例全てにおいて、上記の電解セルと、電解ニッケル製アノードと 、チタン製カソードとを用い、水性電解質(浴1)は蒸留水中に下記成分を含む 。 硫酸ニッケル(BDH) 300g/l 塩化ニッケル(BDH) 45g/l 硼酸(BDH) 45g/l pH調整のために、前記のようにNi2CO3、または7:1のH2SO4:HC lを添加した。標準メッキ時間3時間の間、温度を65℃に維持した。サッカリ ンは公知の応力緩和剤兼微粒化剤であり、これを約10g/lまで添加してよい 。添加できるその他の応力緩和剤および微粒化剤としてはクマリンナトリウムラ ウリル硫酸塩およびチオ尿素がある。浴温度が上昇したら、粒径抑制剤として燐 酸等を約0.5〜1g/lまでの比較的少量添加することが望ましい。実施例1 図1を参照して説明した装置と、上記に「浴1」として説明した基本電解質浴 組成とを用いて、0.1g/lのサッカリン(Aldrich)を添加し、pH値をp H2に調整した。Ipeakは1.9A/cm2、tonは2.5m秒、toffは45m 秒であった。その結果、厚さ0.250〜0.300mm)平均粒径35nmで 、ポロシティーの無いナ ノ結晶ニッケル電着層が得られた。実施例2 サッカリン濃度を2.5g/lに増加させた以外は実施例1と同じ手順および 条件とした。その結果、厚さ0.220〜0.250mm、平均粒径20nmで 、ポロシティーの無い電着層が得られた。実施例3 サッカリン濃度を5g/lに増加させた以外は実施例1と同じにした。その結 果、厚さ0.200mm、平均粒径11nmで、ポロシティーの無い電着層が得 られた。実施例4 pH値をpH4.5に調整し、サッカリン濃度を10g/lに増加させた以外 は実施例1と同じにした。その結果、厚さ0.200〜0.220mm、平均粒 径6nmで、ポロシティーの無い電着層が得られた。実施例5 実施例1〜3の生成層の硬さ試験を標準ビッカース硬さ法により行った。結果 を図3に纏めて示す。同図から、大きい粒径範囲では、ポロシティーの無い電着 ニッケルナノ結晶は周知のホール・ペッチ関係に従い、粒径の小さくなるに伴っ て硬さが増加していることが分かる。しかし、本発明による非常に小さい粒径に ついては、ホール・ペッチ関係から明らかに外れており、粒径8〜10nmの範 囲で最高硬さになっている。実施例6 実施例1〜3の生成層の飽和磁化を従来の方法により測定した。結果を、前出 のGong et al.の報告したガス凝縮法によるナノ結晶ニッケルの飽和磁化と比較 して、図4に纏めて示す。同図に示したように、Gong et al.の報告では粒径の 減少に伴い飽和磁化が減少 したのに対して、本発明による生成層は粒径変化に伴う飽和磁化の変化がほとん ど無く、最小の粒径の場合でも飽和磁化は従来のニッケルと実質的に同一である 。 本発明のナノ結晶材料、特にナノ結晶ニッケルは、種々の表面に対して硬質耐 摩耗性皮膜として用いることができる。また、水素貯蔵材料、水素放出用、およ び磁性材料としても用いることができる。 以上において本発明を特にナノ結晶ニッケルについて説明したが、ナノ結晶軟 umetal(76Ni−17Fe−5Cu−2Cr)(Woldman,Engineering Alloys,4th Ed,1962)についても、本発明の原理は同じく適用できる。その 他の三元および四元合金は、Ni、Fe、Co、Zn、W、Cr、Cu、Mo、 Mn、V、Ti、Mg、Si、P、CおよびSから選択された元素を含んでいて よい。軟質磁性材料は多くの用途に用いられるが、その内でも、高周波域での透 磁率を高め且つ渦電流損を減らすのに電気抵抗率が高い必要がある記録ヘッド用 として特に有用である。これらの材料は耐摩耗性も良い。また、パルス式DC電 気メッキは有用ではあるが、上記のようなナノ結晶(<50nm)のニッケル・ 鉄合金を生成するのに不可欠ではないということも分かった。良く条件制御した DC電気メッキで十分であることが分かった。実施例7 ニッケル・鉄・クロム三元合金の製造 簡単な研究室用電気メッキ良く51(図5)を加熱プレート52の上に載せた 。望ましくは、必ずではないが、グラファイト製のアノード54と、金属製の、 望ましくは銅製のカソード55とを、浴 51内の電解液56中に浸漬し、制御されたDC電源53に接続した。電解質を 構成する水溶液の成分(g/溶液l)は下記のとおりであった。 NiCl2・6H2O 50 CrCl3・6H2O 0〜100 FeCl2・4H2O 1 NaCl 0〜50 B(OH)3 25 NH4Cl 25 浴温度は約15℃〜約50℃(望ましくは室温)に維持し、浴のpHはクロム 含有量に応じて1〜3の範囲に維持した。クロムレベルが高い場合にはクロム水 酸化物の生成を防止するためにpHを低くする。電流密度は約50mA/カソー ドcm2に維持し、時間は約2時間までとし、攪拌(0〜500rpm)を継続 的に行った。 パルス式DC電解セルを用いた別の実施態様においては、周期的なパルス反転 を行った結果、粒径が若干小さくなり、表面品質が向上した。品質向上には、前 述の応力緩和剤の使用も有効であり、また更に、クエン酸ナトリウム、EDTA 、クエン酸、またはフッ化ナトリウムを加えても良い。 銅カソード上に電着した合金の組成をエネルギー分散型X線分光法で分析し、 その結果を浴のクロム濃度により図6にプロットした。同図から、合金のクロム 含有量はほぼ一定の約1%であるが、ニッケル含有量は浴中のクロム量が0g/ lのときに得られた最大値の約86%から浴中のクロム濃度が50g/lのとき に得られた最小値の約78%にまで低下する傾向があることが分かる。走査電子 顕微鏡観察によると生成した合金の粒径は100ナノメータ未満であり、X線回 折によると粒径は約10〜15ナノメータであり、一部 の粒径は約37nmに達している。 実施例3および4のナノ結晶純ニッケル生成物の電気的性質、機械的性質およ び磁気的性質をある程度詳細に調べた結果、従来の刊行物に掲載されている結果 (Gong et al.,J.Appl.Phys.69,5119(1991))に対してかなり意外な事実 として、実施例2、3、4の方法により生成したナノ結晶ニッケルの飽和磁化は 粒径に対してほぼ独立である。しかし、これは最近行われた計算(Szpunar et a l.,Condensed Matter Physics,印刷中)で、特別な大傾角粒界に位置する原子 の磁気モーメントがほんの僅かしか減少しない、という結果が出ていることと符 合している。アモルファス構造の場合でさえもMsの減少は20%未満であり、 10nmの粒径で粒間体積率が27%の場合はMsの全減少量は5%未満である 。 50nmのナノ結晶ニッケルの保磁力(Hc)は約2.0kA/mであり、こ れは従来の多結晶(100nm以上)の材料の値(3.0kA/m)よりも約5 0%低い。更に粒径が小さくなると、保磁力は多結晶材料のレベルまで増加する が、これは多磁区構造から単磁区構造への遷移によるものと考えられる。 図7に示したように、粒径11nmの材料の室温電気抵抗率は、従来の多結晶 材料で観察された抵抗率の値に比べて増加が3倍になっている。室温よりも低い 温度では、この倍率は5倍程度にまで増加する。この挙動は、粒間体積率の増力 旧こ伴って抵抗率が増加する材料において、粒界および三重点における電子の散 乱の観点で理解できる。これを明示するために、図7に示した各粒径について粒 間体積率の関数として抵抗率の増分を図8に示す。ここで抵抗率の増分は、全抵 抗率から、粒間体積率が無視できる従来の多結晶ニッケルの抵抗率を差し引いた ものと定義する。図8の粒間体積率は粒界厚さ1nmについて求めたものである 。 粒径が小さくなると、通常はホール・ペッチ強化によって硬さが増加する。電 着Niについてのホール・ペッチのグラフは図3に示してある。同図において粒 径30nm未満で直線から外れてはいるが、重要な発見はこの材料が、粒径が1 00μmから10nmまで減少すると硬さが5倍になることである。 この同じ材料は、乾式ピン・オン・ディスク試験での耐摩耗性が4倍向上した 。 2NのH2SO4溶液中でのポテンショダイナミック(動的分極)およびポテン ショスタティック(静的分極)試験により、ナノ結晶電着層の腐食挙動を調べた 。図9に示したように、ナノ結晶ニッケルは、活性態−不動態−過不動態の変遷 挙動が、普通の結晶のニッケルで観察される挙動と同じである。しかし、ナノ結 晶材料は不動態領域での電流密度が従来のニッケルよりも高い。これはナノ結晶 材料の表面の不動態層は欠陥濃度が増えているためであると考えられる。一方、 ナノ結晶プロセスによるNiは、従来のニッケルで普通観察される致命的な形の 粒界での局部腐食は生じなかった。したがって、全面腐食速度は幾分高いが、全 体として優れたニッケルの耐食特性はナノ結晶プロセスにより劣化することはな い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI C25D 3/56 A 9541−4K Z 9541−4K (72)発明者 エル−シェリク,アブデルモウナム エ ム. カナダ国,オンタリオ ケー7エル 1エ ス3,キングストン,ブロック ストリー ト 227,アパートメント #1 (72)発明者 チュン,セドリック ケー.エス. カナダ国,オンタリオ ケー7ケー 6ケ ー8,キングストン,ガスリー ドライブ 266,アパートメント 103 (72)発明者 オース,マーティン ジェイ. カナダ国,オンタリオ ケー7ケー 6ケ ー6,キングストン,ビレッジ ドライブ 47,アパートメント 806

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.基材上に所定金属材料をナノ結晶状態で電着する方法であって、下記の工 程: (a)アノードとカソードとを有する電解セルを準備する工程、 (b)該電解セル内に、該所定金属材料のイオンを含有する水性電解質を導入 する工程、 (c)該電解質を約15°から約75℃までの範囲の温度に維持する工程、お よび (d)該アノードと該カソードとの間に、約0.1〜約5ミリ秒の範囲内の期 間中は流れるが約1〜約500ミリ秒の範囲内の期間中は流れないパルス間隔で 、ピーク電流密度が約0.1〜約3.0A/cm2の範囲内にあるDC電流を流 すことにより、該所定金属材料をナノ結晶状態で該カソード上に堆積させる工程 を含む電着方法。 2.該所定金属材料が、粒径が100nm未満であり、(a)Co、Cr、C uおよびFeから成る群から選択された純金属であるかまたは、(b)Ni、F e、Co、Zn、W、Cr、Cu、Mo、Mn、V、Si、P、CおよびSから 選択された2種類以上の元素を含む合金であり、但し、二元合金において第1の 元素がニッケルである場合には第2の元素は鉄でも燐でもなく、また二元合金に おいて第1の元素がCoである場合には第2の元素はWではない、請求項1記載 の方法。 3.基材上に所定金属材料をナノ結晶状態で電着する方法であって、下記の工 程: (a)アノードとカソードとを有する電解セルを準備する工程、 (b)該電解セル内に、該所定金属材料のイオンを含有する酸性の 水性電解質を導入する工程、 (c)該電解質を約55°から約75℃までの範囲の温度に維持する工程、お よび (d)該アノードと該カソードとの間に、約1.0〜約5ミリ秒の範囲内の期 間中は流れるが約30〜約50ミリ秒の範囲内の期間中は流れないパルス間隔で 、ピーク電流密度が約1.0〜約3.0A/cm2の範囲内にあるDC電流を流 すことにより、該所定金属材料をナノ結晶状態で該カソード上に堆積させる工程 を含む電着方法。 4.該所定金属材料がニッケルである請求項3記載の方法。 5.該アノードをニッケル、白金およびグラファイトから選択する請求項3記 載の方法。 6.該カソードをチタン、鋼、黄銅、銅、ニッケルおよびグラファイトから選 択する請求項5記載の方法。 7.該電解質が更に約10g/l以下の応力緩和剤兼細粒化剤を含有する請求 項6記載の方法。 8.該応力緩和剤兼細粒化剤をサッカリン、クマリンナトリウムラウリル硫酸 塩、およびチオ尿素から選択する請求項7記載の方法。 9.該電解質が更に粒径抑制剤を含む請求項8記載の方法。 10.該粒径抑制剤が燐酸である請求項9記載の方法。 11.該電流が1.5〜3.0ミリ秒の期間は流れるが40〜50ミリ秒の期 間は流れない請求項3記載の方法。 12.周期的なパルス反転の工程を含む請求項1記載の方法。 13.該浴を60〜70℃の範囲の温度に維持する請求項11記載の方法。 14.該電流が2.5ミリ秒間は流れるが45ミリ秒間は流れない請求項12 記載の方法。 15.該浴を温度65℃に維持する請求項13記載の方法。 16.該ピーク電流密度が1.5〜2.2A/cm2の範囲内である請求項1 1記載の方法。 17.該ピーク電流密度が約1.9A/cm2である請求項16記載の方法。 18.平均粒径が11ナノメータ未満であり、粒径範囲8〜10nmにおいて 硬さが最大になり、飽和磁化が普通の結晶の状態における値と実質的に等しいナ ノ結晶ニッケル材料。 19.請求項3記載の方法により製造されたナノ結晶ニッケル材料。 20.粒径が100nm未満であり、(a)Co、Cr、CuおよびFeから 成る群から選択された純金属と、(b)Ni、Fe、Co、Zn、Ti、Mg、 W、Cr、Cu、Mo、Mn、V、Si、P、CおよびSから選択された2種類 以上の元素を含む合金とから成る群から選択され、但し、二元合金において第1 の元素がNiである場合には第2の元素はFeでもPでもなく、また二元合金に おいて第1の元素がCoである場合には第2の元素はWではない、ナノ結晶金属 材料。 21.粒径が約100nm未満であり、NiFeX12型〔ここでX1および X2は同じまたは異なり、Cr、Co、Cu、Mo、Mn、V、Ti、Mg、S i、P、CおよびSから成る群から選択される〕のナノ結晶の三元または四元ニ ッケル・鉄合金。 22.X1およびX2がCrおよびMnから選択される請求項21記載のナノ結 晶合金。 23.X1およびX2がCrおよびMoから選択される請求項21記載のナノ結 晶合金。 24.X1およびX2がMoおよびMnから選択される請求項2 1記載のナノ結晶合金。 25.X1およびX2がCuおよびCrから選択される請求項21記載のナノ結 晶合金。 26.該電解質が、サッカリン、クエン酸ナトリウム、EDTA、クエン酸、 フッ化ナトリウム、クマリン、ナトリウムラウリル硫酸塩、およびチオ尿素から 成る群から選択した10g/l以下の応力緩和剤兼細粒化剤を含む請求項1記載 の方法。 27.周期的なパルス反転工程を含む請求項3記載の方法。
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