【発明の詳細な説明】疾患を治療するためのペプチド薬剤 関連出願の記載
本発明は、1992年7月21日に出願された米国特許出願第07/917,487号の一部係
属出願である。発明の分野
本発明は、生物化学/分子生物学の分野の、細胞と細胞との望ましくない接着
から発生する疾患を、治療あるいは予防するために有用であるペプチドの同定が
重要視されている。背景技術
細胞間相互作用が、少なくとも一部はレセプター/リガンド相互作用に仲介さ
れることは、今や確証されている。レセプターの1つのクラスがペプチド配列「
RGD」を認識し、その他のレセプターが炭水化物リガンドを認識することは周知
である。
炭水化物ベースのリガンドを認識するレセプターの1つのクラスは、循環好中
球が刺激された血管内皮へ接着するのをを仲介する。これは、炎症応答の最初の
事象であり、なおその上に、アレルギーおよび自己免疫応答に関連するようであ
る。いくつかのレセプターが、この相互作用に関連し、これらは、gp90MEL(Leu8
)、ELAM-1およびGMP-140(PADGEM)ならび
に(Gong,J.-G.ら、Nature(1990)343:757; Johnston,G.I.ら、Cell (1989)56:
1033; Geoffrey,J.S.およびRosen,S.D.,J. Cell Biol. (1989)109:2463; Las
ky,L.A.ら、Cell (1989) 56: 1045)を含む、推定レクチン群を含む。これらの
レクチンは、L-セレクチン、E-セレクチン、およびP-セレクチンと命名されてき
た。
E-セレクチンはおそらく、3つのセレクチンのうち最も特徴づけられている。
それは、IL-1あるいはTNFに対する応答において、内皮細胞で一過性の発現をす
るという点で、特に興味深い(Bevilacqua,M.P.ら、Science(1989)243:1160
)。この誘導発現の経時変化(2-8時間)は、感染および損傷に応答する初期の
好中球溢出において、このレセプターの役割を示唆する。さらに、Bevilacquaら
(Bevilacqua,M.P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:9238を参照)
は、ヒト好中球あるいはHL-60細胞が、E-セレクチンレセプターをコードするcDN
Aを含むプラスミドでトランスフェクトされたCOS細胞に接着するであろうことを
記載している。内皮細胞-白血球接着分子をコードするDNA配列に関する情報は、
1990年11月15日公開のPCT公開W090/13300に開示されている。
最近、異なるいくつかのグループが、E-セレクチンのリガンドに関する報告を
公表した。Loweら、(1990)Cell,63:475-484は、HL-60変異細胞およびトラン
スフェクトされた細胞系の、E-セレクチン依存性接着と、シアリルLewis x(sLe
x)オリゴ糖、NeuAcα2-3Gal-β1-4(Fuc α1-3)-GlcNAcの発現と
の間に、正の相関性を報告している。α(1,3/1,4)フコシルトランスフェラー
ゼを含むプラスミドによる細胞のトランスフェクションによって、非骨髄COSあ
るいはCHO細胞系をE-セレクチンに依存する様式で結合し、sLex陽性紬胞に変換
し得た。抗-sLex抗体を用いるE-セレクチン依存性接着を阻害する試みは、抗体
による試験紬胞の凝集によって解明されなかった。シアリル化、フコシル化、ラ
クトサミノグリカンからなるオリゴ糖群の1つあるいはそれ以上のメンバーが、
E-セレクチンのレクチンドメインのリガンドであると、結諭された。Phillipsら
、(1990) Science,250:1130-1132は、sLexに対して既知の特異性を有する抗
体を使用したが、sLexはHL-60あるいはLEC11 CHO細胞がE-セレクチン依存性接着
により活性化内皮細胞に接着することを阻害する。末端sLex構造を有するジフコ
シル化糖脂質を含むリポソームは接着を阻害したが、非シアリル化Lex構造を含
むものは部分的に接着を阻害した。Walzら、(1990) Science,250:1132-1135
では、E-セレクチン-IgGキメラのHL-60細胞への結合が、sLexに特異的なモノク
ローナル抗体により、あるいは、sLex構造を有する糖タンパク質により阻害され
得たが、CD65あるいはCD15抗体による阻害は実証されなかった。両グループは、
sLex構造がE-セレクチンに対するリガンドであると、結論づけた。1991年4月11
日に出願され、現譲渡人に譲渡された、本明細書に参考として援用されている、
米国特許出願第07/683,458号に、前述の最小のテトラサッカライド構造および、
ELAM-1レセプターとの相
互作用が予測される基の同定が、開示およびクレームされている。
E-セレクチンと比較して、L-セレクチンおよびP-セレクチンに結合するリガン
ドの特性は、よく解明されていない。L-セレクチンは、L-セレクチン認識を阻害
する、末梢リンパ節高内皮細静脈のノイラミニダーゼ処理による、シアル酸を有
するリガンドに結合するようである。Trueら、1990, J.Cell Biol.111:2757
-2764。さらに、可溶性L-セレクチンを用いるその他の研究によって、直接結合
/阻害アッセイをすると特定の炭水化物部分が、重要なリガンド成分であり、こ
れらはマンノースおよびフコースを含み、特に硫酸化あるいはリン酸化されたも
のを含むことを示唆する。Imaiら、1990 J.Cell Biol.111:1225-1232。より最
近の研究は、L-セレクチンが、シアリルLewis Xに結合することを示唆している
。Foxall, C.ら、(1992)J.Cell Biology,117:895-902.
P-セレクチンに対するリガンドは、シアリルLews xに関連するエピトープを有
すると考えられている。この結論は、抗体を用いる研究に基づいており、この抗
体はHL-60細胞が活性化血小板あるいはP-セレクチンを発現するCOS細胞に、P-セ
レクチンを介して接着することを阻害するという特異性を有する。Larsenら、(
1990)Cel1 63:467-474。その他の研究によって、HL-60細胞のp-セレクチントラ
ンスフェクト細胞への接着は、Lewisxエピトープを有するミルクから単離された
ペンタサッカライドにより阻害されることを示した。最近、P-セ
レクチンが、スルファチドに結合することが示された。Aruffo,A.ら、(1991)Cell
:67:35-44。
最近、セレクチンGMP-140あるいはP-セレクチン由来のペプチド、これらは以
下のセレクチン19-34、54-72および66-89を橋渡しするペプチドを含むが、好中
球のGMP-140への結合を阻害することが示された。PCT公開番号WO 92/01718、発
明者Mcever,R.;PCT公開番号WO 92/20708、発明者Heavner,G.ら、J. Biol. Ch em. 266
:22313-22318(1991)、およびJ. Blol. Chem. 267:19846-19853(1992
)。これらのペプチドが診断および治療に有用であることが示唆された。疾患、
特に、特定の細胞型でのセレクチン-リガンド結合を介して発生する細胞と細胞
との望ましくない接着に関連する疾患における、セレクチンの役割から、このよ
うなセレクチン-リガンド結合を調節し得る、新規リガンドの同定および単離が
、非常に必要とされる。発明の目的
本発明は、セレクチンリガンドの、それらのレセプターへの結合を阻害し、炎
症、癌あるいはその他の疾患過程を、細胞と細胞との接着事象を調節することに
より調節するペプチドを提供する。この局面において、本発明は、以下の式を有
するペプチドに関する。
SEQ ID NO:1
ここで、Xは、芳香族アミノ酸であり、nは、1、2あるいは
3であり、X'は、非極性アミノ酸であり、n'は、1、2あるいは3であり、X''
は、極性アミノ酸であり、そして、n''は、1あるいは2である。
本発明の第二の目的は、以下の式を有する、有効量のペプチドを、単独あるい
は組み合わせて投与することにより、疾患を治療あるいは予防するための方法の
記載である。
SEQ ID NO:2
SEQ ID NO:3
SEQ ID NO:4 あるいは
SEQ ID NO:5
本発明の第三の目的は、このペプチドの有効量を投与することにより、疾患を
治療あるいは予防する方法の記載であり、ここにおいて、該ペプチドは、アミノ
末端でアセチル化され、および/または、カルボキシル末端でアミド化される。
ペプチドは、インビボでの滞留循環時間を延ばすために、例えば、当該分野に公
知のポリエチレングリコールあるいは類似のポリマーを用いて、改変され得る。
本発明の第四の目的は、式1から5のペプチドに結合する抗体、および、疾患
を予防あるいは治療するための該抗体の使用方法の記載である。
本発明のこれらおよびその他の目的は、以下の開示の十分な考察により明白に
なる。図面の簡単な説明
図1は、アミノ末端でアセチル化され、および、そのカルボキシル末端でアミ
ド化された、SEQ ID NO:2のペプチドの、p-セレクチンへのHL-60細胞結合に対す
る効果を示す。
図2は、アミノ末端でアセチル化され、および、そのカルボキシル末端でアミ
ド化された、SEQ ID NO:2のペプチドの、E-セレクチンへのHL-60細胞結合に対す
る効果を示す。
表1は、本発明の特定ペプチドの吸光係数を示す。
表2は、マウスにおけるチオグリコレート誘導腹膜炎の阻害に対する、特定ペ
プチドの効果を示す。
表3は、HL-60細胞へのHUVEC細胞の結合の阻害に対する、特定ペプチドの効果
を示す。発明の詳細な説明
以下の本発明の記載では、しばしばある種の化学あるいは特許刊行物を参考と
している。これらの刊行物は、意図して全体を、本特許に援用している。
明細書に記載されている本発明は、特定の疾患を治療あるいは診断するための
薬剤あるいは診断薬として使用され得るペプチド群である。このペプチドは以下
の式を有する。
SEQ ID NO:1
ここで、Xは、芳香族アミノ酸であり、そして、nは、1、2あるいは3であり、X
'は、非極性あるいは極性の非荷電アミノ酸であり、そして、n'は、1、2あるい
は3であり、X''は、塩
基性アミノ酸であり、そして、n''は、1あるいは2である。芳香族、非極性ある
いは極性の非荷電特性を有するアミノ酸は、当該分野で周知である。Lehninger
,A.L.,Biochemistry(2nd,ed.Worth Publishers,inc.)(1975),ページ73-75
を参照のこと。
本発明で使用される好ましい非極性アミノ酸には、アラニン、バリン、ロイシ
ン、イソロイシン、プロリン、メチオニンが含まれる。極性非荷電アミノ酸には
、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。
塩基性アミノ酸には、リシン、アルギニン、およびヒスチジンが含まれる。芳香
族アミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが含まれ
る。
ある例では、D-アミノ酸からなるペプチドが好ましい。例えば、D-アミノ酸か
らなるペプチドは、インビボでの安定性を促進することが知られているので、特
定の疾患症状の治療において、ペプチドの安定性が重視される場合には、D-アミ
ノ酸ペプチドのほうが、L-アミノ酸ペプチドより好ましい。
20の通常のアミノ酸に加えて、周知の合成方法により合成され得る、その他の
アミノ酸も周知である。この群から選択された適切なアミノ酸は、式1に示され
ている通常のアミノ酸の1つあるいはそれ以上と置換され得る。
式1のペプチドは、アミノ末端でのアセチル化、および/または、カルボキシ
ル末端でのアミド化がなされ得る。
実施態様のペプチドは、以下の式を有する。
SEQ ID NO:2
式2に示されるアミノ酸配列は、P-セレクチン、E-セレクチン、およびL-セレク
チンレクチンドメイン中に存在する。1文字コードは、既知アミノ酸を示すため
に使用されている。
実施態様のペプチドは、式2のペプチドであり、アミノ末端でアセチル化され
、カルボキシル末端でアミド化されている。
本発明の上記記載から、ペプチドの生産および使用が明白になる。ペプチドの合成
本発明のペプチドは、当該分野の当業者には周知である確立された方法により
生産され得る。例えば、ペプチドは、J.Merrifield,J.Am.Chem.Soc. 85:21
49 (1964)に記載されている固相合成法により合成され得る。Merrifield法は、
米国特許第4,792,525号および米国特許第4,244,946号で使用されている。ペプチ
ド合成のさらなる方法は、米国特許第4,305,872号および米国特許第4,316,891号
に記述されている。テストペプチドの活性のアッセイ
最も一般的な形では、セレクチンリガンド結合を阻害するペプチドを同定する
ためのアッセイには、適切なセレクチン、L-セレクチン、E-セレクチン、あるい
はP-セレクチンを、ペプチドの存在下に、適切なリガンドに接触させること、お
よ
び、ペプチドのセレクチンリガンド結合を阻害する程度を測定することが、包含
される。
いくつかのアッセイは、L-セレクチン、E-セレクチンあるいはP-セレクチンへ
の、セレクチンリガンドの結合を阻害するペプチドの能力を測定するために利用
され、そして、このようなアッセイは当該分野では公知である。例えば、セレク
チンおよびリガンドはともに、セレクチンとリガンドとからなる複合体を形成す
るのに十分な時間の間、溶液状態であり得、その後、その複合体は、複合体化さ
れていないセレクチンおよびリガンドから分離され、形成された複合体の量が測
定される。あるいは、複合体化されなかったセレクチンあるいは化合物が測定さ
れ得る。セレクチンリガンド結合に対する適切なペプチドの効果は、インキュベ
ーションの間に、ペプチドを存在させることにより容易に確かめられられる。
第2のおよびアッセイの構成は、固体表面にセレクチンあるいは推定リガンド
のいずれかを固定化すること、および、セレクチン-リガンド複合体を形成させ
、そこで、固定化された試薬に固定化されていない試薬を接触させることからな
る。セレクチン-リガンド複合体は、複合体化されていない試薬から分離され、
形成された複合体の量は、複合体中に存在する固定化されていない試薬の量を測
定することにより決定され得る。例えば、セレクチンリガンドはマイクロタイタ
ーウエルに固定され得、次に、ウエルに所望のセレクチンを加え、リガンドに結
合されたセレクチンの量を測定する。ここに、
セレクチンリガンド結合に対する適切なペプチドの効果は、そのペプチドをイン
キュベーションの間に存在させることにより、容易に確かめられる。
さらに他のアッセイは、セレクチンをマイクロタイターウエルに付着させ、式
1のペプチドが、特定のセレクチンリガンドを発現する細胞のセレクチンへの結
合を阻害する程度の測定である。例えば、阻害活性を有するペプチドは、好中球
および単球の、P-セレクチンへの結合を阻害するペプチドであるか、あるいは、
E-セレクチンに仲介される白血球の内皮細胞への接着を阻害するペプチドである
。この型のアッセイは、実施例の章で、阻害ペプチドを同定するために使用され
ており、そこでは、HL-60細胞の、P-セレクチンおよびE-セレクチンへの結合が
アッセイされる。この型のアッセイは、J. G.Genyら、Nature 343:757-760,19
90に、一般的に記載されている。アッセイに使用される細胞は、種々のトレーサ
ーで標識され得、蛍光染料を含む。このような染料の1つは、BCECF-AM、すなわ
ち、2',7'-bis-(2-カルボキシエチル)-5-(および6)-カルボキシ-フルオロセイ
ン、アセトキシメチルエステルであり、Molecular Probes,Inc.Eugene,Or.か
ら入手し得る(製造番号B-1150)。J.Cell Biol.,95:189-196(1982)もまた
参照のこと。
上記アッセイの変法は、遺伝子的に処理した細胞に、その表面上にL-セレクチ
ン、E-セレクチンあるいはP-セレクチンを高レベルに発現させ、その細胞を精製
セレクチンの代わり
に使用することである。放射標識されたCOS細胞は、このアッセイに使用され、L
-セレクチン、E-セレクチン、あるいはP-セレクチンをコードするcDNAでトラン
スフェクトされ得る。この細胞が、適切なペプチドの存在あるいは非存在下で、
マイクロタイターウエルに被覆されたリガンドに接着するために十分な時間をか
けた後に、接着されていない細胞は除去され、接着細胞数が決定される。接着細
胞数は、セレクチンに結合するリガンドの能力を示す。ペプチドの効果は、接着
細胞数の減少により、容易に測定される。この型のアッセイの応用の典型は、E-
セレクチンの同定である。例えば、ELAM-1の完全なcDNAが、IL-1刺激のヒト臍静
脈内皮から単離された全RNAを用いて開始するPCRにより得られた。得られたcDNA
を、CDM8プラスミド(Aruffo,A.およびSeed,B.,Proc.Natl. Acad.Sci.USA
(1987)84:8573)に挿入し、そのプラスミドをE. coliで増幅した。個々のコロ
ニーからのプラスミドDNAを単離し、COS細胞をトランスフェクトするために使用
した。HL-60細胞の接着を示すCOS細胞を生じる能力により、陽性プラスミドを選
択した。DNA配列分析で、ELAM-1をコードする、これらの陽性クローンの1つを
同定した(Bevilacqua,M.P.ら、Science(1989)243:1160;Polte,T.ら、Nucl eic Acids Res.
(1990)18:1083;Hession,C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
(1990)87:1673)。これらの刊行物は、ELAM-1およびその産生物をコードする
遺伝子物質の開示のために、本明細書に参考として援用されている。ELAM-1 cDN
Aの全ヌクレオ
チド配列、およびELAM-1タンパク質の推定アミノ酸配列は、Bevilacquaらによる
上記文献に記載されている。このDNAおよびアミノ酸配列は、本明細書に参考と
して援用されている(本明細書に参考として援用されている、1990年11月15日公
開された、公開PCT特許出願W090/13300もまた参照のこと)。
35サイクルのポリメラーゼチェーン反応によって、ELAM-1をコードする全長の
cDNAを得たが、これは、IL-1刺激のヒト臍靜脈内皮細胞から抽出された全RNAの
1μgを使用し、非翻訳フランキング配列のSEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:7に相
補的なプライマーを用いて行った。得られた2Kbの挿入断片をゲル精製し、哺乳
類発現ベクター、CDM8(ポリリンカーへのSall部位挿入により改変された)に直
接クローン化し、E. coli(MC1061/p3)で増殖させた。個々のコロニーからプラ
スミドを単離して、COS細胞をトランスフェクトした。推定E-セレクチンをコー
ドするプラスミドと思われるプラスミドを、トランスフェクト72時間後の、これ
らのトランスフェクトCOS細胞が、HL-60細胞との接着を示す能力に基づいて選択
した。
公表されているE-セレクチン配列に対応するが、2つの核酸置換を有する陽性
cDNAを、全ての実験に使用した。COS細胞を、3.5-5.0x105細胞あたり1μgの
プラスミドDNA、400 μg/ml DEAE-デキストラン、および100μMクロロキン(chl
oroquine)を用いて、4時間トランスフェクトし、次に、PBS中10% DMSOに短時間
さらした。細胞を、キャリアを含まない32PO4を用いて、一晩、代謝して標識し
、トランスフェクト後7
2時間に、0.02%アジドおよび2 mM EDTAを補充したPBS中に回収して、細胞接着の
研究に使用した。
同様に、COS細胞を、L-セレクチンおよび/またはP-セレクチンをコードするc
DNAでトランスフェクトし得る。L-セレクチンIgGキメラ構築物の生産および特徴
づけは、Watson S.R.ら(1990)J.Cell Biol. 110:2221-2229により、すでに
記載されている。このキメラは、2つの相補的な結合ドメインを有し、天然に発
現したものと一致する。Watson S.R.ら、(1991)J.Cell Biol.115:235-243
を参照のこと。P-セレクチンキメラは、Walz,G.ら(1990)Science 250:1132-1
135、およびAruffo,A.ら(1991)Cell,67:35-44に、それぞれ記載されている
ように構築された。このキメラは、適切な宿主細胞、例えば293細胞で発現され
、精製された。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、好ましい精
製法である。E-セレクチンおよびP-セレクチンは、キメラの大きさに合わせ、分
泌されやすいように切り出された相補結合ドメインで構築された。上記アッセイ
の変法は、遺伝子工学的に処理した細胞に、その表面上にL-セレクチン、E-セレ
クチンあるいはP-セレクチンを高レベルに発現させ、その細胞を精製セレクチン
の代わりに使用することである。放射標識COS細胞が、この型のアッセイに使用
され、L-セレクチン、E-セレクチン、あるいはP-セレクチンをコードするcDNAで
トランスフェクトされ得る。この細胞が、マイクロタイターウエルに被覆された
リガンドに接着するために十分な時間をかけた後に、接着さ
れていない細胞は除去され、接着細胞数が決定される。接着細胞数は、セレクチ
ンに結合するリガンドの能力を示す。特定のペプチドがセレクチンリガンド結合
を阻害する能力は、そのペプチドの存在下でのアッセイの実施により、測定され
る。従って、式1の任意の候補ペプチドが、前述のアッセイでの陽性結果により
、セレクチンガンド結合を阻害するように、改変され得る。これらのアッセイは
、式1の化合物からなる群の種々のメンバーの相対効果を決定する、容易なスク
リーニング法を提供する。ペプチドの非治療用の使用
炎症の治療あるいは予防への使用に加えて、さらに下記に記載されているよう
に、式1のペプチドは、インビトロおよびインビボにおける診断および前処理に
有用である。式1のペプチドは以下のようである。
SEQ ID NO:1
ここで、Xは、芳香族アミノ酸であり、そして、nは、1、2あるいは3であり、X
'は、非極性あるいは極性の非荷電アミノ酸であり、そして、n'は、1、2あるい
は3であり、x''は、塩基性アミノ酸であり、そして、n''は、1あるいは2である
。
式1のペプチドの実施態様には、以下のペプチドが含まれる。
SEQ ID NO:2
SEQ ID NO:3
SEQ ID NO:4 あるいは
SEQ ID NO:5
ペプチドはアミノ末端でアセチル化され、および/または、カルボキシル末端で
アミド化され得る。あるいは、ペプチドの薬学的に受容可能な塩の形態は、当該
分野で公知の方法により調製され得る。
ペプチドは、固体基質に連結して、生物学的試料由来のセレクチンレセプター
タンパク質の精製に使用され得る。これは、最も便利にはアフィニティークロマ
トグラフィーカラムとして結合基質を準備し、セレクチンレセプタータンパク質
を含有することが予測される試料をアフィニティカラムにかけ、セレクチンタン
パク質が吸着され、そして夾雑物質が吸着されない条件下で実施される。次に、
セレクチンレセプタータンパク質は順次溶出されるが、これは、例えば、式1か
ら5のペプチドの競合量を含有するように溶出溶液を調製するか、あるいは、pH
を調整するか、または、塩パラメーターを調整することによる。アフィニティー
精製の方法はよく理解されており、所定の最適化実験で、この方法の実施のため
の適切な条件がつくられる。
ペプチドはまた、セレクチンあるいは関連の炭水化物結合レセプターリガンド
の、存在あるいは非存在を決定するための、検出試薬として有用である。このよ
うな診断アッセイにおける使用においては、セレクチンレセプタータンパク質、
あるいは、これと密接に関連するレセプタータンパク質を含
有することが予測される生物学的試料を、レセプタータンパク質とペプチドとの
複合体化が生じる条件下で、式1から5のペプチドで処理し、形成した複合体が
検出される。種々様々のプロトコールが、このような方法に使用され得、免疫ア
ッセイに適用されるプロトコールに類似している。従って、形成された複合体の
量が直接測定される、直接アッセイが使用され得る、または、標識セレクチンレ
セプタータンパク質が生物学的試料とともに供給される、あるいは生物学的試料
と競合する、競合アッセイが使用され得る。アッセイのある形態では、複合体が
直接検出されるように、標識された形態のペプチドが都合よく供給される。別の
方法では、複合体は、大きさによる分離、第二標識試薬、あるいはその他の手段
によって、検出され得る。適切な標識は、当該分野で公知であり、放射標識、蛍
光標識、酵素標識、発色団標識、あるいは、これらのアプローチを混合したもの
含む。
ペプチドはまた、生物学的液体中の、表面リガンドのようなセレクチンレセプ
ター結合化合物の量を検出するための、競合試薬として使用され得る。このよう
なアッセイを実施するために、式1のペプチドは、上記のように標識され、生物
学的試料と混合され、適切なレセプタータンパク質に接触させられ、次に、生物
学的試料の存在下に、標識ペプチドのセレクチンレセプターへの結合の減少が測
定される。
ペプチドはまた、インビボでのイメージング研究に使用され得る。このような
アッセイへの使用のために、インジウム
111、テクニチウム99、ヨウ素131などを含むシンチグラフ標識のような、インビ
ボイメージング法により検出され得る標識がペプチドに付与される。
ペプチドと標識、例えば、イメージング用放射標識、クロマトグラフ支持体、
あるいは、ペプチドを使用するのに関連する有用なその他の部位を含む、との結
合法は、当該分野で周知である。
抗体もまた、これらのペプチドを適切なキャリアに結合し、この結合した物質
を、適当なアジュバントを含有させて、標準的な免疫プロトコールに従って、哺
乳類あるいはその他の脊椎被験体に投与することにより、調製され得る。適切な
免疫原性のキャリアは、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、
破傷風トキソイド、ウシ血清アルブミン(BSA)のような種々の血清アルブミン
、および、ロタウイルスVP6タンパク質のようなある種のウイルスタンパク質を
含む。次に、これらの結合した物質は、ウサギ、ラット、あるいはマウスのよう
な被験体に、繰り返し注射して投与され、抗体力価が、標準的な免疫アッセイ法
によってモニターされる。得られた抗血清は、それ自身が投与され得るか、ある
いは、免疫により生じた抗体分泌細胞が、標準的な方法で不死化され得て、ペプ
チドに対して免疫血清反応性であるモノクローナルの調製源として使用され得る
。得られた抗体は、式1の関連ペプチドの存在および/または量を決定するため
のアッセイ系に有用である。このようなアッセイは、以下に記載す
るような治療処置におけるペプチドの循環レベルをモニターするのに有用である
。
式1から5のペプチドに結合する抗体もまた、重要な治療への適用性を有する
ことに注目することは、重要である。このような抗体は、P-セレクチン、E-セレ
クチン、あるいはL-セレクチンに結合する能力を有し、セレクチンと関連リガン
ドとの結合を阻害する。同様に、特定細胞の型の細胞と細胞との接着を予防ある
いは阻害し、重要な医療への適用性を有する。
ペプチドのキャリアとの結合法は、当該分野で公知であり、本願発明の化合物
のヒドロキシル基が、官能基を提供し、例えば、Pierce Chemical Company, Roc
kford, IL.から販売されているような、ホモあるいはヘテロ2官能性リンカーが
使用され得る。ある種の共有結合リンカーが、米国特許第4,954,637号に記載さ
れている。
ネズミあるいはヒトのモノクローナル調製物が、末梢血リンパ球あるいは動物
脾細胞の融合のような、当該分野で公知である方法により、インビボあるいはイ
ンビトロ不死化によって、得られ得る。これは、KohlerおよびMillstein (1975)
,Nature, 256:495;およびFendlyら、(1987), Hybridoma, 6:395に記載されてい
る。インビトロ法は、概して、Luben, R.およびMohler, M., (1980), Molecular Immunology
, 17:635;Reading, C. Methods in Enzymology, 121(Part One):18
;あるいはVoss, B., (1986), Methods in Enzymology, 121:2
7に記載されている。組み換えおよび/またはヒト化抗体もまた、当該分野では
公知の方法により産生され得る。投与プロトコール
本発明のペプチドは、疾患を予防あるいは治療する必要がある被験体に投与さ
れる。従って、このペプチドは、予防的あるいは治療的に使用され得る。本明細
書および添付の請求の範囲に使用されているように、「疾患」とは、感染性疾患
(すなわち、細菌、ウイルスなどの感染症)、および非感染性疾患(すなわち、
癌)のことである。初期感染症の成行きである炎症反応、あるいは、敗血症を含
むその合併症は、感染性疾患の定義に含まれる。
動物モデル系は、疾患を予防あるいは治療するためのペプチドの有効性を試験
するのに利用され、このようなモデル系は、当該分野の当業者に周知である。例
えば、敗血症を治療あるいは予防するための、本発明のペプチドの有益な効果が
、いくつかの動物モデルの1つで実証され得る。好ましい動物モデルはヒヒであ
り、Taylorら,(1987), J. of Clinical Inv., 79:918、およびTaylorら,(1988
), Circulatory Shock, 26:227に記載されている。敗血症を起こす細菌にさらし
たときのヒヒの応答は、治療/予防処置に対する応答の仕方が、ヒトの応答と類
似している。従って、ヒヒにおける特定の処置により、どのようにヒトが応答す
るかが示される。
ペプチドは、好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアと
ともに投与されるが、キャリアの特性は投与方法は異なる。例えば、経口投与で
は通常は固体キャリア、I.V.投与では液体の塩溶液キャリアが使用される。典型
的には、注射組成物は、液体溶液あるいは懸濁液として調製され、注射の前の液
体賦形剤の溶液あるいは懸濁液用として適する固体形態にも調製される。ペプチ
ドはまた、乳化されるか、あるいは、リポソーム賦形剤に活性成分がカプセル化
され得る。
適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、
エタノールなど、およびその組合せである。さらに、必要であれば、賦形剤は、
湿潤剤あるいは乳化剤、またはpH緩衝剤のような補助物質を、少量含有し得る。
このような投与形態の実際の調製方法は、当該分野では周知であるか、あるいは
明白である。例えば、Remington' s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishin
g Company, Easton, PA,第17版1985年を参照のこと。処方剤は、種々の賦形剤
、例えば、局方グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸
マグネシウム、ナトリウムサッカリンセルロース、炭酸マグネシウムなどの賦形
剤を使用し得る。経口組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放
出形態、あるいは粉末の形態をとり得る。DMSOのような浸透促進剤をともなった
経皮処方剤での、リガンド分子の直接被験体投与が、特に有用である。その他の
局所処方剤が、皮膚炎症を治療するために投与され得る。さらに、経粘膜投与は
、胆汁酸あるいはフシジン酸(fusidic acid)誘導体のような浸
透剤を用い、必要に応じてさらに界面活性剤分子と組み合わせて、有効であり得
る。これらの処方剤は、例えば、坐薬、あるいは鼻薬スプレー製剤に有用である
。坐薬について、賦形剤組成物は、ポリアルキレングリコールあるいはトリグリ
セリドのような、従来から用いられているバインダーおよびキャリアを含む。こ
のような坐薬は、約0.5%から約10%(w/w)の範囲、好ましくは約1%から2%の範囲の
活性成分を含有する混合物から形成され得る。
鼻内処方剤は、通常、鼻粘膜に対する刺激、あるいは繊毛機能の著しい混乱を
起こさない賦形剤を含有する。水、生理食塩水、あるいはその他の物質のような
希釈剤が、本発明に使用され得る。鼻処方剤はまた、クロロブタノールおよびベ
ンズアルコニウムクロライドのような防腐剤を含有し得るが、これらに限定はさ
れない。界面活性剤は、鼻粘膜による目的のタンパク質の吸収を促進するために
存在し得る。
典型的には、本発明の組成物は、1%未満から約95%、好ましくは約10%から約50
%の活性成分を含有する。好ましくは、小児には約10mgと50mgとの間、ならびに
、成人には約50mgと1000mgとの間で投与される。投与回数は、患者の応答性に基
づいて与えられる管理により決定される。その他の有効な投与量は、所定の試験
で確立された投与応答曲線により、当業者によって容易に決定され得る。
投与されるべき投与量の決定には、特定の型のセレクチンレセプターを全て完
全に阻害する必要はないことに注目され
る。通常の治癒経過を進行させるためには、少なくとも白血球あるいは好中球が
、損傷、感染、あるいは疾患状態が生じている場所の組織に到達されなければな
らない。阻害剤として投与されなければならないペプチドの量は、治療中の疾患
のタイプなどの種々の因子を考慮して、患者特有の必要性に基づいて、注意深く
調整されなければならない。
ペプチドはまた、投与用にリポソームあるいはマイクロスフェアに取り込まれ
得る。両組成物の調製方法は、当該分野では公知である。例えば、米国特許第4,
789,734号には、生物学的物質のリポソームへのカプセル化が記載されている。
マイクロスフェアは、ペプチドを含有し、そのペプチドを緩慢な放出様式で徐々
に放出するように調製され得る。米国特許第4,906,474号、第4,925,673号および
第3,625,214号。
本発明のペプチドは、広範囲の疾患、例えば、リウマチ様関節炎および多発性
硬化症のような自己免疫疾患を治療するのに有用である。本発明の組成物は、あ
らゆる疾患状態を治療するのに有効であり、免疫系は、組織損傷、浮腫、炎症、
および/または、痛みを生じる程の白血球の組織中での凝集を、身体が引き起こ
すのに抵抗する。
再潅流損傷は、臨床心臓学では重要な問題である。虚血心筋層での白血球接着
を減少する治療薬は、血栓崩壊剤の治療効果を有意に促進し得る。プラスミノー
ゲン活性化因子あるいはストレプトキナーゼのような、薬剤による血栓崩壊治療
は、重篤な心筋虚血を有する多くの患者において、回復不能
となる心筋細胞が壊死する前に、冠状動脈の障害物を軽減し得る。しかし、多く
のこのような患者が、血流の回復にもかかわらず、いまだに心筋神経症にかかっ
ている。この「再潅流損傷」は、虚血範囲での白血球の血管内皮への接着に関連
していることは知られており、おそらく、トロンビンおよびサイトカインにより
血小板および内皮を活性化させて白血球に接着させるようにすることに一部原因
する(Romsonら、Cirulatlon 67:1016-1023, 1983)。これらの接着した白血球
は、血流回復により助けられて、内皮を通り、虚血心筋層の入り口に移動し得る
。
白血球が血管表面に接着することにより仲介される、虚血および再潅流が臓器
損傷の原因となって、その他の多くの一般的な臨床異常が存在するが、これらに
は、卒中、腸間膜および末梢血管疾患、臓器移植、および、循環ショック(多く
の臓器が損傷をうけた後に血流回復する場合)が含まれる。
本発明の処方剤はまた、心臓発作後の、望ましくない組織損傷の後遺症を予防
するするために、投与され得る。心臓発作が生じて、抗凝集剤あるいは血栓崩壊
剤(例えば、tPA)などの適用により、その患者が意識を回復したときに、血餅
が形成された内皮の内側は、しばしば損傷をうける。抗血栓剤が血餅を除去する
と、酸素が奪われていた血餅下の損傷組織およびその他の損傷組織が活性化され
る。次に、活性化された内皮細胞は、細胞が損傷をうけて数時間以内に、ELAM-1
レセプターなどのセレクチンレセプターを合成する。レセプタ
ーは、血管壁にひろがり、白血球表面の糖複合体リガンド分子に接着する。白血
球の多くは迅速に捕捉され、活性化内皮細胞域周辺に運び込まれ、炎症、浮腫お
よび壊死を引き起こし、それにより患者の生存可能性を減少させる。
心臓発作による損傷患者の治療に加えて、肉体損傷患者が、肉体部分が重篤な
損傷をうけた後の通常の経過である、炎症および浮腫の量を回復するために、本
発明の処方剤で治療され得た。本発明の処方剤を使用して治療し得るその他の症
状には、種々の型の関節炎および成人呼吸窮迫症候群が含まれる。本開示を読ん
だ後には、当該分野の当業者は、本発明の処方剤の投与により、治療および/ま
たは軽減し得る、その他の疾患状態および/または徴候を理解するであろう。
インビボでのこのペプチドの半減期は、必要であれば、当業者に公知の方法に
よって増大し得ることを認識するのは、重要である。このような方法は、米国特
許第4,629,784号に記載されている。従って、ペプチドの循環時間の増大が必要
であるときには、前述の方法により改変され得る。
以下の実施例は例示するが、本発明を限定することを意図しない。実施例1 阻害ペプチド結合アッセイ
実施態様ペプチドSEQ ID NO:2は、アミノ末端でアセチル化され、および/ま
たは、カルボキシル末端でアミド化されているが、以下のように、セレクチンリ
ガンド阻害結合活性についてアッセイされた。セレクチンの調製
50 mM炭酸緩衝液、pH 9.5の75 ul中の0.625 ugのPあるいはE-セレクチンを、
黒色マイクロフルオ(microfluor)プレートの各ウエルに加えた。セレクチンを
、4℃で一晩インキュベートし、適切なセレクチンのウエルへの結合を最大にさ
せた。炭酸緩衝液をウエルから吸引して、結合されていないセレクチンキメラを
除去した。次に、PBSの5%BSA溶液100 ulを、キメラを含む全てのウエルに加え、
プレートを60分間室温に放置し、BSAがウエルをブロックするのに十分な時間を
かけた。以下のように調製した、標識細胞懸濁液を添加する直前に、BSAをウエ
ルから吸引した。細胞の調製
HL-60細胞をアッセイに使用した。約1.5x107細胞を、培養培地を含まない、
カルシウムおよびマグネシウムを含有するダルベッコのPBSで洗浄し、その細胞
を5 mlのPBSに懸濁した。DMSO中の10 mM BCECF-AM 5 ulを加え、細胞懸濁液を
、3
7℃で40分間インキュベートして、その後、取り込まれなかった標識をPBSで洗浄
除去した。最後に、細胞濃度を、PBS中3.0x106細胞/mlに調整した。ペプチドの調製
貯蔵ペプチド溶液を、以下のように調製した。7.47 mg[Mr1138.6]のペプチド
を、カルシウムおよびマグネシウムを含有するダルベッコPBSの1000 ulに溶解し
、その溶液を遠心分離して、微粒子物質を除去した。上清を取り出し、アミノ酸
分析でペプチド濃度を決定した。ペプチド濃度は、949 uMであった。溶液をPBS
で2倍連続希釈し、ペプチド濃度を828、414、207、103.5、51.8、25.9、12.9、
および6.4 7uMにした。細胞選択接着アッセイ
HL-60細胞および上記で調製した試薬を使用して、HL-60細胞の、PあるいはE-
セレクチンへの結合を阻害するペプチドの能力を、以下のように決定した。標識
細胞の懸濁液125 ulを、最終ペプチド濃度が552、276、138、69、34.5、17.25、
8.63および4.31 uMの、8種の各ペプチド濃度の250 ulに加えた。標識細胞懸濁
液500 ulを、PBSの1000 ulに加え、コントロールおよび非特異蛍光ウエルに使用
した。
各混合物、コントロール、あるいはペプチド混合物の75 ulを、マイクロフル
オプレートのウエルに移し、37℃で1時間インキュベートした。最後に、結合さ
れていない細胞を、全
てのウエルから吸引した。
バックグラウンド蛍光を、同数の標識されていない細胞を使用して、調節した
。
次に、細胞を溶解するために、0.1 M トリス緩衝液(pH 9.5)中2%Triton X-1
00を、マイクロフルオプレートの全てのウエルに加えて、最終容量を75 ulにし
た。プレートを1時間室温に放置した後に、マイクロプレート蛍光光度計を使用
して、各ウエルの538 nmの蛍光を記録した。試料を485 nmで励起した。
アミノ末端でアセチル化され、および、カルボキシル末端でアミド化されたペ
プチドについて、図1および図2にその結果を示す。P-セレクチン結合のIC50が
、約77.5 uMであることは、図1から明らかである。これに対し、E-セレクチン
結合のIC50が、約102 uMであることは、図2から明らかである。IC50は、最大蛍
光の二分の一を与えるペプチド濃度であった。実施例2 敗血症の予防あるいは治療
アミノ末端でアセチル化され、および/または、カルボキシル末端でアミド化
されている、実施態様ペプチドSEQ ID N0:2の有効性は、Taylorら,(1987), J.of Clinical Inv.
,79:918、およびTaylorら,(1988),Circulatory Shock,26:
227に記載のように、ヒヒ敗血症モデル系での敗血症の治療あるいは予防に有用
であることが示された。簡単には、これは、
死を阻むか、あるいは、敗血症動物の生命を、E. collの致死量あるいは致死量
以下の投与にまで延長することにより、ペプチドが敗血症治療に有効であるかを
決定することからなる。E. coliの致死量あるいは致死量以下の投与量は、それ
ぞれ、約4x1010および0.4x1010微生物である。E. coliの致死量を受けるヒヒ
は、例外なく16-32時間以内に死亡する。Taylorら,(1987),J. of Clinical In v.
, 79:918、およびTaylorら、Circulatory Shock, 26:227 (1988)。
ヒヒの死の阻止、あるいは生命の延長におけるペプチドの有効性は、2つの投
与手順により試験され、そのペプチドは生理食塩水で送達される。最初に、体重
1kgあたり1から10mgのペプチドが、致死量の細菌を与える、24、22、および21
時間前に、3回の別投与で投与される。あるいは、E. coliの同投与量が、細菌
を与えると同時に、単回投与され得る。両方の例では、ペプチドは、複数回ある
いは単回投与治療をうけるヒヒの生命をかなり延長し、48時間以上長生きさせる
。実施例3 腹膜炎の予防あるいは治療
特定の本発明のペプチドが、腹膜炎の予防に有効であることが示された。最も
有効なペプチドは、SEQ ID NO:2、アミノ末端でアセチル化されたSEQ ID NO:2、
SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:5であった。実験は、ネズミチオグリコレート誘
導腹膜炎モデルを使用して実施した。アッセイ材料および方法
は、一般的に、Lewinsohn, D.ら、J. Immun., (1987)138:4313-4321、あるいは
、Watson, S.ら、Nature (1991) 349:164-166に記載されている。
このアッセイは、好中球の腹膜腔への移動を阻害するペプチドの能力を測定す
る。この移動は、腹膜腔にチオグリコレートが存在することにより開始される。
チオグリコレートは周知の有効な炎症因子であり、腹腔内投与されると、好中球
のマウス腹膜への移動をおこす。Lewinsohn, D.ら、J. Immun. (1987) 138:4313
-4321.
簡潔には、体重が約25グラムの、雌スイスウエブスター(Swiss Webster)マ
ウスに、200 ulのリン酸緩衝液(PBS)中に適切なペプチドを含有させてあるい
は含有させないで、尾の静脈に注射した。ペプチドは、実施例1に記載のように
調製し、37℃で30分間インキュベートして、ペプチドを溶解して遠心分離した。
ペプチド溶液のpHを、NaOHあるいはHClを加えて中性に調整し、0.2uフィルター
による濾過で滅菌した。ペプチド濃度は、各ペプチドの実験的に決定されたそれ
ぞれのモル吸光係数を用いる275 nmの吸光度、あるいは、アミノ酸成分分析のい
ずれかによって決定した。吸光係数は、表1に示す。
ペプチドあるいはPBSによる注射の直後に、マウスに、製造業者BBLに記載に従
って調製したチオグリコレート培地の1mlを、腹腔内に注射した。チオグリコレ
ート溶液注射の3時間後に、マウスをCO2窒息により殺し、ヘパリンを添加(5U/m
l)した、0.1%ウシ血清アルブミンを含有する0.9%塩化ナトリウムの5 mlで洗浄し
て、腹膜内の多くの細胞を取り出した。細胞数は、カルターカウンター(Coulte
r Counter)で決定した。細胞は計数のために、市販の生理等張溶液(Isoton II
)で洗浄液を1:50に希釈して調製し、Baxter Diagnostics, Inc.か
ら入手したS/P Lyslng and Hemoglobin Reagentを加えて、溶解した(最終希釈1
:100)。細胞核を、下限および上限をそれぞれ3.9および5.7 umにしたサイズウ
インドウで計数した。
表2は、PBSあるいはペプチドを含有するPBSを注射したマウスの腹腔内の細胞
数を示す。マウスの体重1kgあたりに注射されたペプチドの量もまた、表に示
す。試験された全てのペプチド、SEQ ID NO:2、アミノ末端がアセチル化されたS
EQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、およびSEQ ID NO:5は、PBSコントロー
ルに比較して、より少ない腹腔内細胞に明らかにされるように、実質的な阻害活
性を示した。最も有効なペプチドは、SEQ ID NO:2、アミノ末端がアセチル化さ
れたSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、およびSEQ ID NO:5であった。
好中球性炎症は、特定のヒト疾患に直接関連することが示された。実施例には
、上記のような腹膜炎、成人呼吸窮迫症候群、および再潅流損傷が含まれる。好
中球は、炎症部位への好中球の溢出を促進する。好中球は、好中球と内皮層との
間の接着相互作用により、この影響を及ぼす。好中球溢出を阻害する化合物は、
十分な医薬用途を有する。従って、上記の実験でのPBSコントロールに比較して
、腹腔内好中球の減少を考慮し、本発明のペプチドが炎症要素を有する疾患に対
して、広範囲の医薬への適用性を有することが結論され得る。実施例4 HUVEC細胞のHL-60細胞への結合阻害
癌細胞の周知の特性は、転移と呼ばれるプロセスである、その発症部位から身
体に拡散する能力である。このプロセスは、最初の腫瘍部位から血液への溢出、
および引続く血液の溢出に関連する。従って、癌細胞の溢出が調節され得れば、
転移を予防あるいは阻害することが可能である。以下の実験は、本発明のペプチ
ドが、ヒト癌細胞、HL-60細胞のヒト内皮細胞への接着を阻害し、従って、転移
癌の治療および予防に適用されることを示す。このことは、ペプチドの、その他
の明白な医療有用性を証明する。
ヒト 臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、血清含有培地である、内皮細胞培養培地CS
-C-500中で培養した。HL-60細胞を、10%胎児ウシ血清を含有するRPMI培地中で増
殖させた。HUVEC細胞を、
細胞接着アッセイ用に、Type 5コラーゲンを有する96ウエルマイクロタイタープ
レートに104細胞/ウエルを播種した。細胞をコンフルエンスの状態まで培養し
(3-4日増殖)、次に、その細胞を、組み換えインターロイキン-1β5ngで刺激し
て、37℃で4-6時間インキュベートして、E-セレクチンを発現させた。コントロ
ール細胞は、増殖培地のみでインキュベートした。HL-60細胞を、1%ウシ血清ア
ルブミン(BSA)を含有するリン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄し、適切なペプチド
とともに、4℃で30分間インキュベートした。ペプチド-HL-60混合物を、HUVECを
含むウエルに移し、4℃で15分間インキュベートした。ウエルを、PBSおよび100
μlのRPMI培地で2回洗浄し、プレートを-20℃で凍結して、そして解凍した。溶
解細胞のミエロペルオキシダーゼ活性レベルを、0.01 Mリン酸カリウム緩衝液pH
6.0中の0-ジアニシジン/過酸化水素溶液を加えて測定した。生成物の形成は、
450 nmで測定した。Bevilaqua, M.ら、J. Clin. Invest. 76:2003-2008を参照の
こと。
表2は、3つの実験の結果を示した。データは、癌細胞の内皮細胞への結合、
すなわち、HL-60細胞の臍静脈内皮細胞への結合を50%阻害(IC50)するペプチド
濃度の形で示した。これらのデータを検討すると、ほとんどのペプチドがHL-60
細胞の結合を有効に阻害することが、直ちに明らかとなる。最も有効なものは、
SEQ ID NO:2、AcSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5である。これらのデー
タは、本発明のペプチドが、癌の治療あるいは予防に、十分に医療適用性を有す
ることを
証明した。
本発明の範囲は、以下の請求の範囲に記載されているものであるが、本明細書
に記載されているもの、および請求されているものと置換可能な多くの等価材料
および方法が存在することは、当該分野の当業者には明白であり、従って、これ
らは請求の範囲内にある。
配列表
(1)一般的情報:
(i)出願人:メイチャー,ブルース エイ.
ブリッグス,ジョン ビー.
(ii)発明の名称:疾患を治療するためのペプチド薬剤
(iii)配列数:11
(iv)連絡住所:
(A)住所人:グライコメッド インコーポレイテッド
(B)番地:アトランティック アベニュー 860
(C)市:アラメダ
(D)州:カリフォルニア
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:94501
(v)コンピューター読み出し形態:
(A)媒体型:フロッピーデイスク
(B)コンピューター:IBM PC互換用
(C)操作システム:PC-DOS/MS-DOS
(D)ソフトウェア:パテントインリリース#1.0、バージョン#1.25
(vi)現在の出願データ:
(A)出願番号:米国第08/038,385号
(B)出願日:1993年3月29日
(C)分類:
(viii)代理人/事務所情報:
(A)氏名:ギオッタ,グレゴリー ジェイ.
(B)登録番号:32,028
(C)照会/記録番号:92016-1.1
(iX)電話回線情報:
(A)電話:(510)814-3226
(B)テレファックス:(510)523-5815
(C)テレッスクス: n/a
(2)配列番号(SEQ ID NO):1の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:6アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号 :ペプチド
(B)存在位置:1..2
(D)他の情報:/ラベル=X
/注記=「Xは芳香族アミノ酸である」
(xi)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:ペプチド
(B)存在位置:2..3
(D)他の情報:/ラベル=x
/注記=「xは1、2、または3である」
(xi)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号 :ペプチド
(B)存在位置:3..4
(D)他の情報:/ラベル=X’
/注記=「X’は非極性アミノ酸である」
(xi)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:ペプチド
(B)存在位置:4..5
(D)他の情報:/ラベル=x’
/注記=「x’は1、2、または3である」
(xi)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:ペプチド
(B)存在位置:5..6
(D)他の情報:/ラベル=X’’
/注記=「X’’は極性アミノ酸である」
(xi)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:ペプチド
(B)存在位置:6
(D)他の情報:/ラベル=x''
/注記=「x''は1、または2である」
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):1:
(2)配列番号(SEQ ID NO):2の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:8アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):2:
(2)配列番号(SEQ ID NO):3の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:7アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):3:
(2)配列番号(SEQ ID NO):4の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:7アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):4:
(2)配列番号(SEQ ID NO):5の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:6アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):5:
(2)配列番号(SEQ ID NO):6の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:31塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):6:
(2)配列番号(SEQ ID NO):7の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:29塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列の特徴:配列番号(SEQ ID NO):7:
(2)配列番号(SEQ ID NO):8の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:6アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):8:
(2)配列番号(SEQ ID NO):9の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:5アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):9:
(2)配列番号(SEQ ID NO):10の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:5アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):10:
(2)配列番号(SEQ ID NO):11の情報:
(i)配列の特色:
(A)長さ:4アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(xi)配列:配列番号(SEQ ID NO):11:
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 39/395 D 9284−4C
N 9284−4C
C07K 5/103 8318−4H
16/44 8318−4H
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AU,CA,JP,NO