JP2004049234A - セレクチン変異体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】係る変異体をコードしているヌクレオチド配列、係るヌクレオチド配列を含む発現ベクター、および係る発現ベクターにより形質転換された宿主細胞もまた本発明の範囲内にある。
【選択図】なし
Description
(発明の属する技術分野)
この発明はセレクチン変異体に関するものである。さらに本発明は、これらの変異体をコードしている核酸、ならびにこれらの変異体を製造する方法および手段に関するものである。
【0002】
(従来の技術)
セレクチンは、構造的には、レクチンの細胞含有物、egf様および補体結合様ドメインを含んでいることによって[M.P.ベヴィラクア等、サイエンス(Science)、243巻1160−1165頁(1989);ジョンソン等、セル(Cell)、56巻1033−144頁(1989);L.A.ラスキー、セル(Cell)、56巻1045−1055頁(1989);M.ジーゲルマン等、サイエンス(Science)243巻1165−1172頁(1989);L.M.ストゥールマン、セル(Cell)、56巻;907−910頁(1989)]、そして機能的には、それらのレクチンドメインと細胞表面の炭水化物リガンドとの間の相互作用を介して細胞の結合を仲介するそれらの能力によって[B.ブランドレイ等、セル(Cell)、63巻861−863頁(1990);T.スプリンガーおよびL.A.ラスキー、ネイチャー(Nature)、349巻196−197頁(1991)]統一される、細胞接着分子である。
【0003】
細胞接着分子のセレクチンファミリーには、現在のところ、同定されている3つの成員:L−セレクチン(末梢リンパ節ホーミングレセプター(pnHR)、LEC−CAM−1、LAM−1、gp90MEL、gp100MEL、gp110MEL、MEL−14抗原、Leu−8抗原、TQ−1抗原、DREG抗原としても知られる)、E−セレクチン(LEC−CAM−2、LECAM−2、ELAM−1)およびP−セレクチン(LEC−CAM−3、LECAM−3、GMP−140、PADGEM)がある。このセレクチンファミリーの成員の構造を図9に示す。
【0004】
L−セレクチンは白血球上に見いだされ、末梢リンパ様組織への白血球の交通[ガラティン等、ネイチャー(Nature)、303巻30−34頁(1983)]および急性の好中球仲介炎症反応[S.R.ワトソン、ネイチャー(Nature)、349巻164−167頁(1991)]に関与している。L−セレクチンのアミノ酸配列およびコード化核酸配列は、例えば1992年3月24日登録の米国特許第5098833号に開示されている。L−セレクチンは、少なくとも二つの内皮糖蛋白上のシアリル化された、フコース化された、硫酸化された炭水化物リガンドを認識するらしく[D.D.トゥルー等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、111巻2757−2764頁(1990);Y.イマイ等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、113巻1213−1221頁(1991)]、このうち一方は最近クローニングされた[L.A.ラスキー等、セル(Cell)、(1992)(印刷中)、および同時係属の米国出願第07/834902号(1992年2月13日出願)]。
【0005】
E−セレクチンは、種々の炎症刺激により誘導される内皮接着分子である[P.P.ベヴィラクア等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、84巻9238−9242頁(1987);F.W.ルシンスカス等、ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immunol)、142巻2257−2263頁(1989);T.W.クイジュパース等、ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immunol)、147巻1369−1376頁(1991)]。E−セレクチン(ELAM−1)をコードしているクローニングされた遺伝子は、1992年1月14日登録の米国特許第5081034号に開示されている。E−セレクチンは、好中球および単球細胞表面炭水化物、シアリルルイスx(sLex)を認識し[J.B.ロウウェ等、セル(Cell)、63巻475−484頁(1990);M.L.フィリップス等、サイエンス(Science)、250巻1130−1132頁(1990);G.A.ワルツ等、サイエンス(Science)、250巻1132−1135頁(1990);M.テイーメイヤー等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、88巻1138−1142頁(1991)]、さらに、リンパ球の皮膚ホーミングサブセットの表面上のsLex様炭水化物の認識にも関与しているかも知れない[L.J.ピッカー等、ネイチャー(Nature)、349巻796−799頁(1991);Y.シミズ等、ネイチャー(Nature)、349巻799−802頁(1991)]。E−セレクチンにより認識される最小の大きさのsLex−関連炭水化物は、シアル酸α2−3ガラクトースβ1−4N−アセチルグルコサミン(フコースα1−3)なる構造のテトラサッカライドである[D.ティレル等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、88巻10372−10376頁(1991)]。
【0006】
P−セレクチンは、血小板のα顆粒および内皮細胞のワイブル−パレイド体中に見いだされる[R.ボンファンティ等、ブラッド(Blood)、73巻1109−1112頁(1989);R.マクエヴァー等、ジャーナル・オブ・クリニカル・インヴェスティゲーション(J.Clin.Inv.)、84巻92−99頁(1989)]。その、表面での発現は、トロンビン、サブスタンスP、ヒスタミンまたは過酸化物への暴露から数分以内に誘導され、好中球および単球細胞表面上のsLexと同一のまたは密接に関連する炭水化物を認識するようである[E.ラーセン等、セル(Cell)、59巻305−312頁(1989);E.ラーセン等、セル(Cell)、63巻467−474頁(1990);K.L.モーア等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、112巻491−499頁(1991);M.J.ポレイ等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、88巻6224−6228頁(1991)]。P−セレクチンアミノ酸およびコード化ヌクレオチド配列は、ジョンストン等、セル(Cell)、56巻1033−1044頁(1989)により開示されている。
【0007】
L−、E−およびP−セレクチンのレクチンドメインは、著明な配列相同性および構造類似性を示す。特に注目に値するのは、セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸19位、90位、109位および117位におけるシステイン(Cys)残基の保存であり、これは、各々Cys19およびCys117、ならびにCys90およびCys109の間に形成されるジスルフィド結合によって決定される2−ジスルフィド結合ループを含む三次元構造をもたらす。
【0008】
セレクチンにより見られる炭水化物リガンドの性質における類似性を示す多くの証拠が蓄積されている。3つのセレクチン全ての場合において、それらのレクチンドメインおよび炭水化物リガンドの間の接着性相互作用は、α2−3結合したシアル酸フコース残基の存在を必要とする[B.ブランドレイ等、セル(Cell)、63巻861−863頁(1990);L.コーラル等、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、172巻1349−1352頁(1990);T.スプリンガーおよびL.A.ラスキー、ネイチャー(Nature)、349巻196−197頁(1991);D.ティレル等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、88巻10372−10376頁(1991)]。L−およびP−セレクチンは、炎症反応の最中に内皮に沿った白血球の比較的親和性の低い「ローリング」に関与していることが示されているため、セレクチンのレクチンドメインとそれらの炭水化物リガンドとの間の接着性相互作用は、比較的弱いかも知れない[M.B.ローレンス等、セル(Cell)、65巻859−873頁(1991);K.レイ等、ブラッド(Blood)、77巻(12)2553−2555頁(1991);V.フォン・アンドリアン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、88巻1538−1542頁(1991)]。
【0009】
セレクチンのレクチンドメインおよびそれらの炭水化物リガンドの間の相互作用の分子的な詳細はあまり理解されていない。3種のセレクチンは全て接着にシアル酸を必要とするという事実は、フコイジン、硫酸デキストラン、およびポリホスホマンナンエステルのような或る種の負に荷電した炭水化物ポリマーが、或るセレクチン仲介細胞接着の有効な阻害剤であるという発見に結び付ける時、炭水化物の認識において正に荷電したアミノ酸が関与することと符合する。しかしながら、このような蛋白−シアル酸相互作用は非荷電側鎖によっても達成されるということが、C型レクチンに関連していないインフルエンザ赤血球凝集素糖蛋白と、その細胞表面リガンド、シアル酸との低親和性相互作用の結晶学的分析によって示唆され、この分析は、この相互作用が、いずれも正に荷電していない多様なアミノ酸側鎖を含んでいることを明らかにした[W.ワイス等、サイエンス(Science)、254巻1608−1615頁(1985)]。E−および恐らくはP−セレクチンレクチンドメインの単純面または窪み[M.J.ポリー等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)88巻6224−6228頁(1991)]がsLexの認識に関与していることが、sLex構造のNMR溶液分析によって示唆され、この分析は、重要なシアル酸およびフコース残基の両者がこの炭水化物リガンドの一つの面を向いて〜10オングストローム隔たっており、一方この炭水化物の不活性型(2−6連結したシアル酸を有する)は極めて異なった方向を向いたこれら二つの重要な機能的構成因子を持っている、ということを立証している。E−セレクチンのための別のリガンド、シアリルルイスa(sLea:シアル酸α2−3ガラクトースβ1−3N−アセチルグルコサミン(フコースα1−4))に対する類似の構造分析は、重要なシアル酸およびフコース残基がやはりテトラサッカライドの一つの面を向き、且つsLexの場合とほぼ同じ距離だけ隔てられていることを明らかにした。E.L.バーグ等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、265巻14869−72頁(1991);D.ティレル等(1991)、上記、を参照されたい。
【0010】
(発明が解決しようとする課題)
本発明の一つの目的は、セレクチンレセプターとそのリガンドとの相互作用にとって決定的な、セレクチンレクチンドメインのアミノ酸配列内の領域を同定することである。
【0011】
対応する天然のセレクチンレセプターと比較して、それらの各リガンドに対する改善されたリガンド結合特性を有する、特に、増大した親和性を有するセレクチンのアミノ酸配列変異体の製造を可能とすることが、もう一つの目的である。
【0012】
さらに別の目的は、セレクチンとそれらの各リガンドとの相互作用にとって決定的ではない、セレクチンレクチンドメイン配列を同定することである。
【0013】
対応する天然セレクチンと比較して、持続的または増大したリガンド結合親和性を有する、改善された薬理学的特性、例えば増大された物理的および/または化学的安定性、増大された半減期、低下したインビボクリアランスの速度、臨床的使用の間の副作用の重篤度または出現の低下等、を有するセレクチンアミノ酸配列変異体を提供することが、また別の目的である。
【0014】
リガンド結合性の増強されたセレクチン変異体は、セレクチン−セレクチンリガンド相互作用を遮断することにより、セレクチンによって仲介される病理学的炎症反応の有効なインヒビターとしての大きな治療上の可能性を有する。
これらのそしてさらなる本発明の目的は、当業者にとって明白であろう。
【0015】
発明の要約
sLexとセレクチンレクチンドメインとの間の接着性相互作用は、以下の二つの方法にしたがって分析された。第一に、ヒト−ウサギのキメラセレクチンレクチンドメインが、二つの種の間のアミノ酸配列の相違に基づいて作り出された。次いで、これらのキメラを使用して、抗ヒトセレクチン遮断モノクローナル抗体(Mab)により認識されるエピトープのマッピングを行なった。第二においては、セレクチン点突然変異を作り出し、一連の遮断および非遮断抗セレクチンMabとの結合について、そして固定化sLex糖脂質に接着するこれらの能力について分析した。次に、セレクチンの構造および/または機能の様々な側面に影響を及ぼす残基を、関連するC型レクチン、マンノース結合蛋白について決定された構造的相関を用いて作り出されたセレクチンレクチンドメインの三次元モデル上に重ね合わせた[W.ワイス等、サイエンス(Science)、254巻1608−1615頁(1991)]。総合すると、これらのデータは、炭水化物リガンドsLexの認識にとって決定的なセレクチンレクチンドメイン内の比較的小さな領域を規定する。
【0016】
炭水化物認識に主として関与しているセレクチンアミノ酸残基は、ジスルフィド結合したN−およびC−末端によって形成された逆平行βシート、および、2個の内部システインによって形成された配座的に隣接するジスルフィドループ、の近傍のレクチンドメインの表面上の一区画内にあることが判明した。したがって、sLexは明らかに、NおよびC末端ならびに小さなジスルフィド結合したループ由来の残基からなる、セレクチンレクチンドメインの比較的小さな領域によって認識される。
【0017】
さらに、正に荷電したアミノ酸側鎖がセレクチンの炭水化物リガンドの認識に不可欠な役割を有することがわかった。
【0018】
さらに、セレクチンのN末端領域の荷電したアミノ酸残基を非荷電残基に置換すると、各々の炭水化物リガンドに対するセレクチンの結合親和性が増大することが見いだされた。
【0019】
一つの態様において本発明は、対応する変化していないセレクチンに対する遮断モノクローナル抗体によって認識されるセレクチンレクチンドメインの部位におけるアミノ酸変化を有するセレクチンアミノ酸配列変異体を提供する。
【0020】
好ましい態様において、このアミノ酸変化は、ジスルフィド結合したN−およびC−末端によって形成された逆平行β鎖、および、レクチンドメインの2個の内部システインによって形成された隣接するジスルフィドループのアミノ酸、の近傍のレクチンドメインの表面上のアミノ酸を含む一区画内にある部位である。
【0021】
一つの特に好ましい態様において、このアミノ酸変化は、対応する天然セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸残基番号1−9、および90ないしC末端により定義される区画内にある。
【0022】
さらに好ましい態様において、このアミノ酸変化は、対応する天然セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸残基番号7−9、90−109および113により定義される三次元区画内にある。
【0023】
尚好ましい態様において、この変化は、対応する天然ヒトセレクチンのアミノ酸位置7−9、43−48、82−86、94−100および113のうちの1またはそれ以上にある。
【0024】
これよりさらに好ましい態様において、このアミノ酸変化はアミノ酸残基番号7−9または84−86、そして最も好ましくはアミノ酸残基番号8またはアミノ酸残基84および86にある。
全ての場合において、このアミノ酸変化は好ましくは置換である。
【0025】
特に好ましい態様において、このアミノ酸変化は、対応する天然セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸残基番号8の荷電アミノ酸を小さな非荷電アミノ酸に置換することである。
【0026】
この変異体は、好ましくは対応する天然セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸位置97、111および113のうち少なくとも一つの位置に正に荷電したアミノ酸を有する。
【0027】
さらに好ましい態様において、本発明に係るセレクチンアミノ酸配列変異体は、対応するセレクチンのegf様ドメインを保持している。
【0028】
その他の態様においてこの発明は、上記セレクチン変異体をコードしている核酸配列、形質転換宿主細胞中での該核酸配列を含みそしてその発現が可能な複製し得る発現ベクター、ならびに、該ベクターをもって形質転換される微生物および細胞培養に関するものである。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、
(a)対応する非変化セレクチンに対する遮断モノクローナル抗体によって認識される部位において、セレクチンレクチンドメイン中にアミノ酸変化を導入し;そして、
(b)得られたセレクチン変異体を、対応するセレクチンリガンドに対する結合親和性の増強についてスクリーニングする、
ことからなる方法を提供する。
【0030】
各々の天然リガンドに対する増強された結合親和性を有する本発明に係るセレクチン変異体は、そのリガンドに対する対応天然セレクチンの結合をブロックするのに使用することができ、したがってセレクチンにより仲介される病理学的炎症反応のインヒビターとして有用である。例えば、このようなL−セレクチン変異体(L−セレクチンアゴニスト)は、循環している白血球上のL−セレクチンが内皮細胞上のその天然リガンドに結合するのを有効にブロックする。この性質は、内皮細胞に対する循環白血球の過度の結合に付随する症状または状態、例えばリウマチ様関節炎、乾癬、多発性硬化症等に付随する炎症の処置に有用である。
【0031】
したがって本発明はさらに、セレクチンにより仲介される病理学的炎症反応に付随する症状または状態の処置または防止のための方法であって、係る症状または状態を有するまたはこれを進行させるおそれのある患者に、増強されたリガンド結合親和性を有するセレクチンアミノ酸配列変異体の治療的有効量を投与することからなる方法を提供する。
【0032】
本発明に係るセレクチン変異体は、該変異体を薬学上許容し得る担体と合し混合することにより、既知の方法に従って調合して薬学上有用な組成物とすることができる。このような薬用組成物は本発明の範囲内にある。
【0033】
さらに本発明は、上記のような変化を有するセレクチンレクチンドメインを含むアミノ酸配列(好ましくはegf様ドメインおよびショート・コンセンサス・リピート(SCR)配列と共に)の、免疫グロブリン不変ドメイン配列への融合を含むキメラ蛋白に関連するものである。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、相補的な部分を持つ一つの動物種由来のセレクチンまたは同じ動物種のセレクチンの異なった型または異なった動物種のセレクチンの同一の型の一部からなるハイブリッドセレクチンを提供する。
【0035】
さらなる態様において本発明は、7H5;8E4;3B7;1D6;4D9;1E5;9A1;7E10;1B3;14G2;11G5;および9H9より成る群から選ばれるモノクローナル抗体により認識される、またはこれらと競合する、実質上同一のE−セレクチンレクチンドメインエピトープと結合することのできる抗E−セレクチンモノクローナル抗体組成物に関するものである。
【0036】
天然リガンドに対する親和性の低下したセレクチン変異体は、セレクチンとそのリガンドとの結合を遮断するまたは増強させることのできる物質(例えば、ペプチド、発酵ブロス成分、炭水化物誘導体等)のためのスクリーニング検定に有用である。一つの態様において、被験物質の変異体セレクチンへの結合能力が測定されている。もし変異体セレクチンおよびリガンドに結合することは実質上できないが、天然セレクチンのそのリガンドへの結合には影響を及ぼすならば、これはリガンド結合の手段となる残基においてセレクチンと相互作用すると結論付けることができる。このような物質はセレクチン−リガンド結合のアンタゴニストとして特に興味深い。
【0037】
別の態様において、このセレクチン変異体は、動物の免疫に使用して、セレクチンの他のドメインに結合する抗体を同定することができる。
【0038】
さらなる態様において、この変異体は、セレクチンのリガンド結合ドメインに対し特異的に結合する他の抗体のスクリーニングに使用される。この態様においては、天然セレクチンに対し作製された抗体を、本発明に係るセレクチン変異体に結合するそれらの能力についてスクリーニングする。本発明に係る変異体と実質的に結合しない抗体を、リガンド結合部位に結合できるものとして選択する。他の診断上の態様は当業者には明らかであろう。
【0039】
(図面の簡単な説明)
図1:抗E−セレクチンモノクローナル抗体の特性。(A)抗E−セレクチンモノクローナル抗体によるE−セレクチントランスフェクトCOS細胞(斜線の入った棒)およびサイトカイン活性化HUVEC(無地の棒)へのHL60細胞の接着の阻害。細胞はMAb(10ug/ml)と共に室温で1時間プレインキュベートし、実施例1の実験方法の項に記載の通り、HL60細胞の接着を測定した。各々の棒は、対照の結合のパーセントとして表わされた三重の測定の平均+/−SDを表わす。(B)ヒト(無地の棒)およびウサギ(斜線の入った棒)のE−セレクチンに対する抗E−セレクチンMAbの結合。抗体(10μg/ml)を、組み替え可溶性ヒトまたはウサギE−セレクチンを結合させた96ウェル微量定量プレート上で、室温で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGとインキュベートし、洗浄し、そして標準的プロトコルを用いて発色させた。
【0040】
図2:E−セレクチン組み立て物。(A)成熟ポリペプチドの推定N末端から始まるヒトおよびウサギE−セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸整列。ウサギのペプチドにおけるアミノ酸置換を示してあり、他の全ての位置はヒトの残基と同一である。(B)MabおよびsLex結合部位のマッピングに使用されたE−セレクチン組み立て物。ヒトE−セレクチンはアミノ酸1−157を含み、ウサギE−セレクチンはアミノ酸1−156をコードしており、そしてHuRa−1はウサギE−セレクチンの残基10−156と隣接するヒトの残基1−9を含んでいた。各々は、CD16配列によりコードされているGPI結合を介して細胞表面に結合している。ヒトIgG1のヒンジ、CH2およびCH3領域にライゲーションされたヒトE−セレクチンのレクチン、egf様および補体結合様ドメイン(CBD)1および2を含むE−セレクチン−IgGキメラ(E Sel−IgG)もまた示してある[ワトソン等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、115巻235−243頁(1990)]。
【0041】
図3:HuRa−1キメラへの遮断抗体の結合。ヒトE−セレクチンlec−egf−CD16(1欄)、ウサギE−セレクチンlec−egfCD16(2欄)およびHuRa1、ヒト−ウサギキメラE−セレクチンレクチン−egfCD16(3欄)によりトランスフェクトされたCOS細胞に結合する抗E−セレクチン抗体の免疫蛍光位置決定。トランスフェクトさせた細胞を固定し、抗E−セレクチンMab3B7(1列)、7H5(2列)、8E4(3列)または14G2(4列)で染色した。
【0042】
図4:遮断抗体の存在下でのHL60のHuRa−1への結合。抗E−セレクチン遮断Mabによる、ヒトE−セレクチンlec−egf−CD16(無地の棒)、ウサギE−セレクチンlec−egf−CD16(白抜きの棒)およびHuRa1 ヒト−ウサギキメラE−セレクチンレクチン−egf−CD16(斜線の入った棒)によりトランスフェクトされたCOS細胞へのHL60の結合の阻害。細胞を3B7、7H5、8E4、または14G2(10μg/ml)と1時間プレインキュベートし、HL60細胞の接着を実施例1の実験方法の項に記載のように測定した。各々の棒は三重の測定値の平均+/−SDを表わす。
【0043】
図5:抗E−セレクチンMabの突然変異体キメラとの反応性。示された突然変異を含むE−セレクチン−IgGキメラを、実施例1の実験方法の項に記載のELISAフォーマットを用いて、15の抗E−セレクチンMAbの各々による捕捉について試験した。示された結果は二重の測定値の平均+/−S.D.を表わし、対照または野生型結合のパーセンテージとして表現する。
【0044】
図6:固定化sLex糖脂質に対するアラニンスキャン突然変異体の結合。(A)指示されている残基がアラニンに突然変異しているE−セレクチン−IgGキメラを、実施例1の実験方法の項に記載されるELISA法によって、固定化2,3sLex糖脂質への結合について試験した。示された結果は、対照または野生型結合のパーセンテージとして表現された三重の測定値の平均+/−S.D.を表わす。(B)E−セレクチン−IgG突然変異体E8A(白抜きの正方形)または野生型E−セレクチン−IgG(塗りつぶした正方形)を、上記のELISAによって、示された濃度における固定化2,3sLex糖脂質への結合について試験した。示された結果は三重の測定値の平均+/−S.D.を表わす。
【0045】
図7:E−セレクチンのレクチンドメインのモデル。示されているのは、関連するC型レクチン、マンノース結合蛋白の公表されているモデルから導かれたE−セレクチンレクチンドメインのリボンモデルである[ワイス等、サイエンス(Science)、254巻1608−1615頁(1991)]。方向Aは、それらの突然変異がsLexまたはMab結合に影響を及ぼさなかったアミノ酸残基(茶色)、その突然変異がsLexの結合には影響しなかったが幾つかの非遮断Mabの結合に影響を及ぼした74位の残基(桃色)、それらの突然変異が遮断Mabの結合を破壊した7、9および98位の残基(赤色)、それらの突然変異がsLexの結合を破壊した97、99および113位の残基(黄色)、およびその突然変異がsLexに対するE−セレクチンの親和性を増強した8位の残基(緑色)を示している。下に記すように、残基8および113の突然変異は、幾らかの遮断Mabの結合にも影響していた。単結合のカルシウムは緑色の球として示す。sLexの溶液構造もまた方向Aに示す[ティレル等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、88巻10372−10376頁(1991);バーグ等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、265巻14869−14872頁(1991)]。暗紫色のループ(残基S43−Y48)および暗青色のループ(残基Y94−D100)は、マンノース結合蛋白中には見いだされない、E−セレクチンの炭水化物結合部位の近傍の2個のループを示す。方向Bは、方向Aと同様に着色された、炭水化物認識および/または遮断Mab結合に関与する残基と共に、炭水化物結合の「活性部位」を、その面から見た図を示す。
【0046】
図8:固定化sLexに対するL−セレクチン−IgG突然変異体K8Aの結合。L−セレクチン−IgG突然変異体K8A(白抜きの正方形)または野生型L−セレクチン−IgG(塗りつぶした正方形)を、上記のELISAによって、示された濃度における固定化2,3sLex糖脂質への結合について試験した。示された結果は三重の測定値の平均+/−S.D.を表わす。
【0047】
図9:cDNAクローニングにより決定されたセレクチン(LEC−CAM)ファミリー成員の構造。図示されているのはL−セレクチン、E−セレクチンおよびP−セレクチンに対する構造である。レクチン、表皮成長因子(EGF)、および複数のショート・コンセンサス。リピート(SCR)を、ジョンストン等、セル(Cell)、56巻1033頁(1989)により最初にGMP−140に対して提唱された仮説的ジスルフィド結合構造と共に示してある。N末端配列(後に成熟蛋白において開裂される)もまた、疎水性貫膜スパニングアンカー(TM)および細胞質尾と共に示す。P−セレクチンの二つの別の型もまた図示されており、その一つはscr−7ドメインが除去されており、もう一つは膜スパニングアンカーが除去されている。
【0048】
図10:セレクチン−IgGキメラによるHL−60細胞および好中球の染色。セレクチン−IgGキメラを、実施例3に記載のように、HL60細胞(AおよびC)またはヒト好中球(BおよびD)のいずれかの染色について、フローサイトメトリーによって試験した。(A)および(B)において、実線はP−セレクチン−IgG染色を、点線は10mMEGTA存在下でのP−セレクチン−IgG染色を、そして長点線はE−セレクチン−IgG染色を示す。キメラを用いずに(二次抗体のみ)なされた染色は、両方の細胞型についてE−セレクチン−IgG染色と同一であった。(C)HL60細胞を実施例3に示されるように処理し、(A)と同様にP−セレクチン−IgGで染色した。結果を、二次抗体のみによる染色を基準にした陽性に染色された細胞のパーセンテージ(+/−二つの測定値のSD)として表現する。(D)PMAによる活性化の前(塗りつぶした棒)または後(白抜きの棒)のヒト好中球を、示されている試薬で染色し、実施例3に記載のようにフローサイトメトリーによって評価した。結果を線形の平均蛍光として示す。
【0049】
図11:固定化sLex糖脂質およびスルファチドに対するPE−1キメラの結合。P−セレクチン−IgG(白抜きの円)、E−セレクチン−IgG(白抜きの正方形)またはPE−1(塗りつぶした円)を、示された濃度において、固定化2’3sLex糖脂質(A)、2’6sLex糖脂質(B)、またはスルファチド(C)との結合について、実施例3に記載のELISA法によって試験した。示されている結果は三重の測定値の平均+/−SDを表わす。
【0050】
図12:PE−1キメラによるHL60細胞の染色。P−セレクチン−IgG、E−セレクチン−IgG、およびPE−1キメラを、図10のようなフローサイトメトリーにより、HL60細胞との結合について試験した。各々のキメラにより陽性に染色されている細胞のパーセンテージ(二次抗体のみによる染色を基準にする)を示す。
【0051】
図13:抗体捕捉およびN82D E−セレクチンの2’3sLex結合。N82D E−セレクチンを生成させ、実施例1に記載のように試験した。(a)抗体捕捉;(B)2’3sLexとの結合;(C)添加カルシウムの存在下での2’3sLexとの結合。
【0052】
図14:突然変異体キメラとの抗P−セレクチンmAbの反応性。示された置換を有するP−セレクチン−IgGキメラを、第1表のようなmAb AK−6(塗りつぶした棒)、AC1.2(白抜きの棒)、およびCRC81(斜線の入った棒)による捕捉について試験した。示された結果は、二重の測定値の平均+/−SDを表わし、対照のP−セレクチン−IgG結合のパーセンテージとして表現する。
【0053】
図15:固定化糖脂質および細胞へのP−セレクチン−IgG突然変異体の結合。示された置換を有するP−セレクチン−IgGキメラを、図11のような固定化2’3sLex糖脂質(A)、2’6sLex糖脂質(B)、またはスルファチド(C)との結合について、そして図10のようなHL60細胞の染色(D)について試験した。
【0054】
I.定義
「セレクチン」という語は、その細胞外領域内に、レクチンドメイン、egf様ドメインおよび補体結合様ドメインを有し、細胞表面炭水化物リガンドとの相互作用を介して細胞結合を仲介する質的能力を有し、にも拘らず、それが細胞接着の仲介物質として尚機能するならば、より少数またはより多数のドメインを有し得る、細胞接着分子の呼称に使用される。この定義は特に、機能的貫膜ドメインを欠く「可溶性」セレクチン分子、ならびに天然セレクチンのアミノ酸配列およびグリコシル化変異体ならびに共有結合的修飾を包含する。
【0055】
「天然セレクチン」という表現は、配列全体におけるアミノ酸の相違によって証明される、個体毎に起こり得る、天然に起こる対立遺伝子変異を含む、ヒトまたはヒト以外の動物種の天然配列セレクチン分子の定義に用いられ、製造の様式についてのいかなる制限も持たない。したがって、天然セレクチンは任意の天然の供給源から得ることができ、合成もしくは組み替えDNA技術またはこうした方法の適当な組合せによって生成させることができる。この語は特に天然の哺乳動物の、例えばヒトおよびE−、L−およびP−セレクチンを包含する。
【0056】
本明細書および請求項全編に使用される「対応するセレクチン」という表現は、変化していない天然セレクチンレクチンドメインを有するセレクチン分子を意味するが、これは「セレクチン」に対する前記定義に合致する、該分子の他の部分に変化を有していてよい。即ち、例えばE−セレクチン変異体については、対応するセレクチンは任意の動物種の天然配列(変化していない)E−セレクチンレクチンドメインを有するが、他の点では天然に存在するE−セレクチンと異なっていてよい。
【0057】
請求項および本明細書全編において、或る変化は、対応する天然ヒトセレクチンのレクチンドメインのアミノ酸残基番号を表記して定義する。アミノ酸の番号付けは、天然ヒトE−、L−またはP−セレクチンアミノ酸配列のレクチンドメインの最初のN末端アミノ酸から始まる。天然ヒトE−セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸配列は図2(A)(アミノ酸1−120)に示す。天然ヒトL−セレクチンのレクチンドメインは、1992年3月24日登録の米国特許第5098833号の図1において残基39−155と指定されるアミノ酸残基番号を含む。本明細書に適用される配列番号付けに従うと、これらの残基はアミノ酸残基番号1−117と呼称される。P−セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸配列は、例えばL.A.ラスキー、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J.Cell.Biochem.)、45巻139−146頁(1991)の図2に示されている。後者の出版物は、三つのセレクチンのレクチンドメインの相対的配列相同性をも示している。
【0058】
「アミノ酸」および「アミノ酸類」という語は、天然に存在する全てのL−α−アミノ酸を意味する。この定義はノルロイシン、オルニチン、およびホモシステインの包含を意味する。アミノ酸は一文字または三文字表示のいずれかによって表わされる:
Asp D アスパラギン酸 Ile I イソロイシン
Thr T スレオニン Leu L ロイシン
Ser S セリン Tyr Y チロシン
Glu E グルタミン酸 Phe F フェニルアラニン
Pro P プロリン His H ヒスチジン
Gly G グリシン Lys K リジン
Ala A アラニン Arg R アルギニン
Cys C システイン Trp W トリプトファン
Val V バリン Gln Q グルタミン
Met M メチオニン Asn N アスパラギン
これらのアミノ酸は、それらの側鎖の化学的組成および性質に従って分類できる。これらは大きく分けて二つの群、荷電および非荷電に分類される。これらの群の各々は、アミノ酸をより正確に分類するための亜群に分けられる:
【0059】
I.荷電アミノ酸
酸性残基:アスパラギン酸、グルタミン酸
塩基性残基:リジン、アルギニン、ヒスチジン
【0060】
II.非荷電アミノ酸
親水性残基:セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン
脂肪族残基:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン
非極性残基:システイン、メチオニン、プロリン
芳香族残基:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン
「アミノ酸変化」および「変化」という語は、セレクチンアミノ酸配列におけるアミノ酸の置換、除去もしくは挿入またはそれらの任意の組合せを意味する。本発明に係るセレクチン変異体において、係る変化はセレクチンレクチンドメインアミノ酸配列の一つの部位または部位群におけるものである。
【0061】
本明細書中、置換変異体は、天然のセレクチンレクチンドメイン配列中の少なくとも1個のアミノ酸残基が除去され、その場所の同じ位置に異なったアミノ酸が挿入されている変異体である。置換は単一、即ち分子中ただ1個のアミノ酸が置換されていてよく、または複数、即ち2またはそれ以上のアミノ酸が同一分子内で置換されていてもよい。
【0062】
挿入変異体は、天然セレクチンレクチンドメイン配列中の特定の位置のアミノ酸と直接隣接して1またはそれ以上のアミノ酸が挿入されている変異体である。アミノ酸と直接隣接して、とは、当該アミノ酸のα−カルボキシまたはα−アミノ官能基のいずれかに結合していることを意味する。挿入は1またはそれ以上のアミノ酸であってよい。通常、挿入は1または2個の同類アミノ酸から成り立つであろう。挿入部位に隣接するアミノ酸と電荷および/または構造が類似のアミノ酸を同類と定義する。これとは異なり、本発明は、挿入部位に隣接するアミノ酸と実質上異なった電荷および/または構造を有するアミノ酸の挿入を包含する。
【0063】
除去変異体は、天然セレクチンレクチンドメインアミノ酸配列中1またはそれ以上のアミノ酸が除去されている変異体である。通常、除去変異体は、レクチンドメインアミノ酸配列の特定の領域内で1または2個のアミノ酸が除去されているであろう。
【0064】
本明細書中、置換変異体の表示は、文字の次に数字、次に文字によって成り立つ。最初(最も左)の文字は天然(変化していない)セレクチンレクチンドメイン中のアミノ酸を表わす。数字はそのアミノ酸置換が行なわれるアミノ酸位置を意味し、そして二番目(右側)の文字は天然アミノ酸の置換に使用されるアミノ酸を表わす。挿入変異体の表示は、文字「i」に続いてその挿入が始まる前の天然セレクチンアミノ酸配列中の残基の位置を指定する数字、続いて、施される挿入を全て示す1またはそれ以上の大文字から成る。除去変異体の表示は、文字「d」とこれに続く除去の開始位置の数から除去の終了位置の数から成り、それらの位置は、天然配列、対応する(E、LまたはP)セレクチンの変化していないレクチンドメインのアミノ酸配列に基づいている。前に述べたように、番号付けはセレクチンレクチンドメインのN末端アミノ酸配列(これは成熟天然セレクチン分子のN末端である)から始まる。複数の変化は、それらを読み易くするため、表記においてコンマ(,)で分ける。
【0065】
「をコードしている核酸分子」、「をコードしているDNA配列」、および「をコードしているDNA」という語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。DNA配列はこのようにしてアミノ酸配列をコードしている。
【0066】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係にあるように位置する時、「機能的に結合」している。例えば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNAは、もしそれが或るポリペプチドの分泌に参加するプレ蛋白として発現されるならば、当該ポリペプチドをコードしているDNAと機能的に結合しており;プロモーターまたはエンハンサーは、もしそれが或る配列の転写に影響を及ぼすならば、当該コード化配列と機能的に結合しており;または、リボゾーム結合部位は、もしそれが翻訳を促進するように位置しているならば、コード化配列と機能的に結合している。一般に、「機能的に結合」とは、結合しているDNA配列が隣接しており、且つ、分泌リーダーの場合は隣接し且つ読み取り相にある。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要はない。結合は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、常法に従って合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用する。
【0067】
「複製可能な発現ベクター」および「発現ベクター」という語は、通常二本鎖であって、その中に一片の外来DNAが挿入されているかも知れない、一片のDNAを意味する。外来DNAは、その宿主細胞中に天然には見いだされないDNAである、ヘテロローガスなDNAとして定義される。該ベクターは、この外来またはヘテロローガスなDNAを適当な宿主細胞中に運搬するのに使用される。いったん宿主細胞に入るとこのベクターは宿主の染色体DNAとは独立して複製することができ、該ベクターおよびその挿入された(外来)DNAのコピーが幾つか生成され得る。さらに、該ベクターは、その外来DNAをポリペプチドに翻訳させる必要な要素を含んでいる。外来DNAによりコードされているポリペプチドの多数の分子がこうして速やかに合成され得る。
【0068】
本発明の文脈において、「細胞」、「セルライン」、および「細胞培養」という表現は互換的に使用され、係る表現は全て子孫を包含する。さらに、全ての子孫は、故意のまたは偶然の突然変異のためにDNA含量が正確に同一でないことがあるということが理解される。元の形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物学的性質を有する突然変異体の子孫が包含される。
【0069】
「形質転換」とは、DNAを生物中に導入し、その結果そのDNAが染色体外要素としてまたは染色体への統合によって複製可能となることを意味する。
【0070】
「トランスフェクション」とは、何らかのコード化配列が実際に発現されるか否かに拘らず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。
【0071】
「形質転換された宿主細胞」および「形質転換された」とは、細胞中へのDNAの導入を意味する。この細胞は「宿主細胞」と呼称され、これは前核生物または真核生物細胞であってよい。典型的な前核生物宿主細胞は大腸菌の種々の菌株を包含する。典型的な真核生物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト胚腎臓293細胞のような哺乳動物細胞である。導入されたDNAは通常、挿入されたDNA断片を含むベクターの形をとっている。導入されたDNA配列は、宿主細胞と同じ種由来、または宿主細胞とは異なる種由来のものであってよく、または外来DNAを幾らか、そしてホモローガスなDNAを幾らか含む、ハイブリッドDNA配列であってもよい。
【0072】
「オリゴヌクレオチド」は、既知の方法[例えば、1988年5月4日公開のEP266032号に記載されるような固相技術を用いるホスホトリエステル、ホスファイト、もしくはホスホアミダイト化学、またはフレーラー等、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、14巻5399頁(1986)に記載されるようなデオキシヌクレオシドH−ホスファナート中間体を介する]によって化学合成される、長さの短い、一本鎖または二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである。次いでこれらはポリアクリルアミドゲル上で精製される。
【0073】
本明細書中で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」の技術は一般に、米国特許第4683195号(1987年7月28日登録)およびカレント・プロトコルズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)、アウスベル等編、グリーン・パブリッシング・アソシエイツ・アンド・ウィレイ−インターサイエンス、1991、2巻、15章に記載のように、少量の特定の断片の核酸、RNAおよび/またはDNAを増幅する方法を意味する。
【0074】
本明細書中使用される「モノクローナル抗体」という語は、実質上等質の抗体の集団、即ち、その集団を構成する個々の抗体が、少量存在するかも知れない天然に存在する可能性のある突然変異を除き同一であるような集団から得られる抗体を意味する。したがって、修飾語句「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではない抗体の性格を示す。モノクローナル抗体は、抗セレクチンリガンド抗体の可変(超可変を含む)ドメインと不変ドメインとのスプライシング(このうち1個だけがセレクチンを指向する)(例えば「ヒト化」抗体)、または軽鎖と重鎖のスプライシング、または或る種由来の鎖と別の種由来の鎖とのスプライシング、または、供給源の種または免疫グロブリンクラスもしくはサブクラスの指定に拘らず、ヘテロローガスな蛋白との融合、により生成されるハイブリッドおよび組み替え抗体、ならびに抗体フラグメント(例えばFab、F(ab’)2、およびFv)を包含する。キャビリー等、米国特許第4816567号;メイジ・アンド・ラモイ、モノクローナル・アンティボディー・プロダクション・テクニークス・アンド・アプリケーションズ(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)、79−97頁(マーセル・デッカー・Inc.、ニューヨーク、1987)。したがって修飾語句「モノクローナル」は、このような実質上等質な抗体集団から得られるような抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によってその抗体を産生することを必要としていると解釈すべきではない。
【0075】
「遮断モノクローナル抗体」という表現は、本発明に係るセレクチン変異体が、実施例1に記載の検定のような標準的な結合検定において、対応する(E、LまたはP)セレクチンの天然リガンドに結合することを阻害できるモノクローナル抗体を指すのに用いられる。
【0076】
「免疫グロブリン」という語は一般に、通常、共に天然の「Y」立体配置でジスルフィド結合している軽鎖または重鎖を含むポリペプチドを指すが、それらの四量体または凝集体を包含するそれらの間の別の結合もまたその範囲内にある。
【0077】
免疫グロブリン(Ig)およびそれらの或る変異体は既知であり、多数のものが組替え細胞培養中で製造されている。例えば、米国特許第4745055号;EP256654号;フォールクナー等、ネイチャー(Nature)、298巻286頁(1982);EP120694号;EP125023号;モリソン、ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immun.)、123巻793頁(1979);ケーラー等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA)、77巻2197頁(1980);ラソ等、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、41巻2073頁(1981);モリソン等、アニュアル・レビュー・オブ・イミュノロジー(Ann.Rev.Immunol.)、2巻239頁(1984);モリソン、サイエンス(Science)、229巻1202頁(1985);モリソン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA)、81巻6851頁(1984);EP255694号;EP266663号;およびWO88/03559号を参照されたい。再構築された免疫グロブリン鎖もまた知られている。例えば、米国特許第4444878号;WO88/03565号;およびEP68763号ならびにそれらに引用されている参考文献を参照されたい。L−セレクチン−免疫グロブリンキメラは、例えば1991年6月13日公開のWO91/08298号に開示されている。E−セレクチン−免疫グロブリンキメラの生成および特性決定は、フォクサル等、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオロジー(J.Cell.Biol.)、1992(印刷中)により報告されている。P−セレクチン−免疫グロブリンキメラが同様の手法によって組み立てられた。本発明に係るキメラ中の免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgMから得ることができるが、好ましくはIgG1またはIgG3から得る。
【0078】
(課題を解決するための手段)
II.セレクチン変異体およびそれらの誘導体の組み立て
位置指定突然変異生成
【0079】
本発明に従うセレクチン変異体の製造は、好ましくは、先に製造された該蛋白の変異体または非変異体をコードしているDNAの位置特異的突然変異生成によって達成される。位置特異的突然変異生成は、所望の突然変異のDNA配列をコードしている特異的オリゴヌクレオチド配列、ならびに、途中に存在する連結部の両側に安定な二本鎖を形成するに充分な大きさおよび配列複雑度のプライマー配列を提供するに充分な数の隣接するヌクレオチドを使用することにより、セレクチン変異体の生成を可能にする。典型的には、長さ約20ないし25ヌクレオチドのプライマーが好ましく、該配列の連結部の両側で約5ないし10残基が変えられる。一般に、位置特異的突然変異生成の技術は、アーデルマン等、DNA、2巻183頁(1983)のような刊行物に例示されるように、当分野で良く知られている。
【0080】
理解されるように、位置特異的突然変異生成技術は、典型的には一本鎖および二本鎖の両方の型で存在するファージベクターを使用する。位置指定突然変異生成に有用な典型的ベクターは、例えばメシング等、サード・クリーヴランド・シンポジアム・オン・マクロモレキュールズ・アンド・リコンビナント・DNA(Third Cleveland Symposium on Macromolecules and Recombinant DNA)、編者A.ウォルトン、エルセヴィア、アムステルダム(1981)に開示されるような、M13ファージのようなベクターを包含する。これらのファージは市販品を容易に入手でき、これらの使用は一般に当業者には良く知られている。別法として、一本鎖ファージの複製起点を含むプラスミドベクター(ヴェイラ等、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enzymol.)、153巻3頁(1987))を使用して一本鎖DNAを得ることもできる。
【0081】
実施例1のE−セレクチン変異体の製造の際に従った特異的突然変異生成法は、クンケル等、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymol.)、154巻367−382頁(1987)により記載されていた。
一般に、位置指定突然変異生成は、例えば、まず、関連するセレクチンをコードしているDNA配列をその配列中に含む一本鎖ベクターを得ることによって実施することができる。所望の突然変異した配列を持つオリゴヌクレオチドプライマーを、一般的には合成によって、例えばクレア等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA)、75巻5765頁(1978)の方法によって製造する。次にこのプライマーを一本鎖のセレクチン配列含有ベクターとアニーリングし、大腸菌ポリメラーゼIクレノウフラグメントのようなDNA重合酵素を作用させて、突然変異所有鎖の合成を完成する。こうして、第一の鎖は元の非突然変異配列をコードしており第二の鎖は所望の突然変異を有しているヘテロ二本鎖が形成される。次いでこのヘテロ二本鎖ベクターを用いてJM101細胞のような適当な細胞を形質転換し、32P−標識突然変異生成プライマーから成る放射性プローブへのハイブリダイゼーションを介してクローンを選択するが、これは、突然変異した配列の配置を有する組み替えベクターを含んでいる。
【0082】
このようなクローンを選択した後、突然変異したセレクチンの領域を除去し、セレクチン産生のための適当なベクター、一般には適当な真核生物宿主の形質転換に典型的に使用される型の発現ベクターに入れることができる。本発明の文脈においては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または293(グラハム等、ジャーナル・オブ・ジェネラル・ヴァイロロジー(J.Gen.Virol.)、36巻59頁(1977)により記載されているヒト腎臓細胞)が、長期の安定なセレクチン産生体の製造に好ましい。しかしながら、他の多数の細胞型が好適に使用される事が知られていることから、特に試験目的のためにこの酵素を短期間だけ産生することを望む場合には、本発明はCHO産生に限定されない。例えば、下に述べるのは、分析目的のためのセレクチン変異体産生のための簡便な系を提供する、293細胞を使用する一過性の系である。
【0083】
セレクチンをコードしているDNA配列に突然変異を作るもう一つの方法は、制限酵素による消化によってこのDNAを適当な位置で開裂させ、適正に開裂したDNAを回収し、所望のアミノ酸をコードしているオリゴヌクレオチドおよび平滑末端を有するポリリンカーのような隣接領域を合成し(または、ポリリンカーを使用する代わりに合成オリゴヌクレオチドをセレクチンコード化DNAの開裂にも用いた制限酵素で消化し、それにより粘着末端を作り出す)、そしてこの合成DNAをセレクチンコード化構造遺伝子の残部にライゲーションすることを含む。
【0084】
PCR突然変異生成
PCR突然変異生成もまた、本発明に係るセレクチンアミノ酸変異体の製造に好適である。以下の説明はDNAに対するものであるが、この技術はRNAにも適用されることが理解されるべきである。PCR技術とは一般に以下の方法を指す。PCRにおいて少量の鋳型DNAが出発物質として使用される時、鋳型DNA中の対応する領域と配列が僅かに異なるプライマーを使用して、そのプライマーが鋳型と相違する位置においてのみ鋳型配列と異なっている特異的DNAフラグメントを比較的大量に作り出すことができる。プラスミドDNAに突然変異を導入するためには、プライマーのうち1個は突然変異の位置と一部重複するように、且つその突然変異を含むように設計し;他のプライマーの配列はこのプラスミドの反対の鎖の配列一つながりと同一でなければならないが、この配列は該プラスミドDNAのどこに位置していてもよい。しかしながら、第二のプライマーの配列は第一のプライマーの配列から200ヌクレオチド以内に位置し、その結果、最終的には、該プライマーを境界とするDNAの増幅された領域全体が容易に配列決定され得ることが好ましい。今述べたようなプライマー対を使用するPCR増幅は、プライマーにより特定される突然変異の位置で、そして鋳型のコピーは幾分誤りが起こり易いため、ひょっとすると他の位置で異なっているDNAフラグメントの集団を生成する。
【0085】
生成物に対する鋳型の比率が極端に低いと、生成物DNAフラグメントの大部分は所望の突然変異を組み込む。この生成物は、標準的DNA技術を用いて、PCR鋳型としての役割を有するプラスミド中の対応領域と置き換えるのに使用される。突然変異体第二プライマーを使用するか、または異なった突然変異体プライマーによる第二のPCRを実施し、得られた二つのPCRフラグメントを同時に三(またはそれ以上)部分ライゲーションでベクターフラグメントにライゲーションすることにより、突然変異を別々の位置に同時に導入することができる。
【0086】
宿主細胞培養およびベクター
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞上およびヒト胚腎臓セルライン293における発現[ウアラウプ及びチェイシン、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、77巻4216頁(1980);グラハム等、ジャーナル・オブ・ジェネラル・ヴァイロロジー(J.Gen.Virol.)、36巻59頁(1977)]が、本発明に係るセレクチン変異体の産生のためには最終的に好ましいが、本明細書に開示されるベクターおよび方法は、広範囲にわたる真核生物の宿主細胞での使用に適している。
【0087】
無論、一般にDNA配列の最初のクローニングおよび本発明において有用なベクターの組み立てには、前核生物が好ましい。例えば、E.coli K12菌株294(ATCC No.31446)およびE.coli菌株W3110(ATCC No.27325)が特に有用である。その他の好適な微生物菌株は、E.coli B、およびE.coli X1776(ATCC No.31537)のような大腸菌菌株を包含する。これらの例は無論例示を意図しており、限定的なものではない。
【0088】
前核生物は発現にも有用である。前記の菌株、ならびにバシルス・スブティリスのようなバシルス、および、例えばサルモネラ・ティフィムリウムまたはセラティア・マルセサンスのような他の腸内細菌科の細菌、および種々のシュードモナス種が発現のための有用な宿主の例である。
【0089】
一般に、宿主細胞と共存し得る種から誘導されたレプリコンおよび調節配列を含むプラスミドベクターを、これらの宿主と結び付けて使用する。ベクターは通常、複製部位、ならびに、形質転換された細胞における表現型の選択を提供し得る指標配列を持っている。例えば、大腸菌は典型的には、大腸菌種から誘導されたプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される(例えば、ボリヴァー等、ジーン(Gene)、2巻95頁(1977)を参照されたい)。pBR322はアンピシリンおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を持っており、したがって形質転換された細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322プラスミド、または他の細菌プラスミドまたはファージは、さらにその微生物が自身の蛋白を発現するために使用することのできるプロモーターを有するか、有するように修飾されねばならない。
【0090】
組み替えDNAの組み立てに最も普通に使用されるプロモーターは、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系(チャング等、ネイチャー(Nature)、375巻615頁(1978);イタクラ等、サイエンス(Science)、198巻1056頁(1977);ゲッデル等、ネイチャー(Nature)、281巻544頁(1979))およびトリプトファン(trp)プロモーター系(ゲッデル等、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、8巻4057頁(1980);EPO出願公開第36776号)、ならびにアルカリホスファターゼ系を包含する。これらが最も普通に使用されているが、他の微生物プロモーターも発見され利用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が公表され、当業者がそれらをプラスミドベクターと機能的にライゲーションできるようになっている(例えば、ジーベンリスト等、セル(Cell)、20巻269頁(1980)を参照されたい)。
【0091】
前核生物に加えて、酵母のような真核微生物もまた本発明において好適に使用される。サッカロミセス・セレビシアエ、または普通のパン酵母は真核微生物の中で最も一般的に使用されるが、他の幾つかの菌株もまた一般に使用可能である。例えば、サッカロミセス中での発現のためにはプラスミドYRp7(スティンチコーム等、ネイチャー(Nature)、282巻39頁(1979);キングズマン等、ジーン(Gene)、7巻141頁(1979);チェンパー等、ジーン(Gene)、10巻157頁(1980))が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母の突然変異株、例えばATCCNo.44076またはPEP4−1(ジョーンズ、ジェネティクス(Genetics)、85巻12頁(1977))のための選択マーカーを提供するtrp1遺伝子を既に含んでいる。そこで、酵母宿主細胞ゲノムの性格としてのtrp1損傷の存在が、トリプトファン不在下での増殖による形質転換の検出のための有効な環境を提供する。
【0092】
酵母ベクターにおける好適なプロモーター配列は、3−ホスホグリセラートキナーゼ(ヒッツェマン等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、255巻2073頁(1980))またはその他の解糖酵素(ヘス等、J.Adv.Enzyme Reg.、7巻149頁(1968);ホランド等、バイオケミストリー(Biochemistry)、17巻4900頁(1978))、例えばエノラーゼ、グリセロアルデヒド−3−ホスファートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスファートイソメラーゼ、3−ホスホグリセラートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスファートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼのためのプロモーターを包含する。好適な発現プラスミドの組み立てにおいて、これらの遺伝子に付随する終止配列もまた、発現が望まれる配列の3’で発現ベクター中にライゲーションされ、mRNAのポリアデニル化および終止を提供する。生育条件により制御される転写のさらなる利点を有するその他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する減成酵素群、ならびに上記のグリセロアルデヒド−3−ホスファートデヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用を司る酵素群のプロモーター領域である。酵母と共存し得るプロモーター、複製起点および終止配列を含むいかなるプラスミドベクターも適当である。
【0093】
微生物に加えて、多細胞生物から誘導される細胞の培養もまた宿主として使用することができる。原則として、脊椎動物由来であるか無脊椎動物由来であるかの如何に拘らず、いかなるこのような細胞培養も使用できる。しかしながら、脊椎動物細胞への関心が最も高く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は近年では日常的な方法となっている[ティシュー・カルチャー(Tissue Culture)、アカデミック・プレス、クルースおよびパターソン編(1973)]。このような有用な宿主セルラインの例は、VEROおよびHeLa細胞、CHOセルライン、およびW138、BHK、COS−7(ATCC CRL1651)、293、およびMDCK(ATCC CCL34)セルラインである。このような細胞のための発現ベクターは、通常(必要ならば)、複製起点、発現されるべき遺伝子の前に位置するプロモーター、ならびに必要なリボゾーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列を含む。
【0094】
哺乳動物細胞における使用のためには、発現ベクター上の調節機能がしばしばウイルス材料によって提供される。例えば、通常使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2から、そして最も頻繁にはシミアンウイルス40(SV40)から誘導される。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターはどちらも、SV40ウイルスの複製起点をも含むフラグメントとして該ウイルスから容易に得られることから、特に有用である(フィアス等、ネイチャー(Nature)、273巻113頁(1978))。ウイルスの複製起点に位置する、HindIII部位からBglI部位まで伸長しているおよそ250bpの配列が含まれるならば、より小さいまたは大きいSV40フラグメントもまた好適に使用される。さらに、調節配列が宿主細胞系と共存し得る限り、所望遺伝子配列に通常付随するプロモーターまたは調節配列を利用することも可能であり、そしてこれがしばしば望ましい。
【0095】
複製起点は典型的には、外来性の起点、例えばSV40または他のウイルス源(例えばポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)から誘導し得る起点を含むベクターを組み立てることによって、または宿主細胞の染色体複製機構によって提供される。もしベクターが宿主細胞の染色体中に統合されるならば、しばしば後者で充分である。
【0096】
細胞培養によって満足し得る量のヒトセレクチン変異体が産生される。しかしながら、二次コード化配列を用いる改良が、産生レベルをさらに向上させる働きをする。この二次コード化配列は、メソトレキサート(MTX)のような外部から調節されるパラメータによる影響を受けるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を含み、したがってMTX濃度の調節による発現の調節を可能にする。
【0097】
変異体セレクチンおよびDHFR蛋白の両者をコードしているDNA配列を含む本発明のベクターによるトランスフェクションのための好ましい宿主細胞を選択する際、使用するDHFR蛋白の型を考慮することが適切である。野生型DHFR蛋白を使用する場合、DHFRを欠失する宿主細胞を選択することが好ましく、それにより、ヒポキサンチン、グリシン、およびチミジンを欠く選択培地中での良好なトランスフェクションのためのマーカーとしてDHFRコード化配列を使用することができる。この場合の適当な宿主細胞は、ウアラウプおよびチェイシン、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(USA)(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA))、77巻4216頁(1980)に記載されるように製造され増殖される、DHFR活性を欠失するCHOセルラインである。
【0098】
これに対して、制御配列としてMTXに対する結合親和性の低いDHFR蛋白を使用するのならば、DHFR欠失細胞を使用する必要はない。突然変異体DHFRはMTXに対し耐性であるため、宿主細胞がそれ自身MTX感受性である限り、選択の手段としてMTX含有培地を使用することができる。MTXを吸収することのできる殆どの真核生物細胞はMTXに対し感受性であるようである。一つのこのような有用なセルラインは、CHOライン、CHO−K1(ATCC No.CCL61)である。
【0099】
利用し得る典型的なクローニングおよび発現方法
哺乳動物細胞を宿主細胞として使用する場合、トランスフェクションは一般に、グラハムおよびヴァン・デル・エブ、ヴァイロロジー、52巻546頁(1978)に記載のような燐酸カルシウム沈澱法によって実施する。しかしながら、核注入、電気穿孔、またはプロトプラスト融合のような、DNAを細胞中に導入するためのその他の方法もまた好適に用いられる。
【0100】
宿主として酵母を使用する場合、トランスフェクションは一般に、ヒネン、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、75巻1929−1933頁(1978)により教示されるようにポリエチレングリコールを使用して達成する。
【0101】
実質的な細胞壁構造物を含む前核生物細胞を使用する場合、好ましいトランスフェクションの方法は、コーエン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、69巻2110頁(1972)により記載されるようにカルシウムを使用するカルシウム処理、またはより最近では電気穿孔である。
【0102】
所望のコード化および調節配列を含む適当なベクターの組み立ては、標準的ライゲーション技術を使用する。分離されたプラスミドまたはDNAフラグメントを開裂し、整え、必要とされるプラスミドの形成のために望まれる型に再ライゲーションする。
【0103】
開裂は、適当な緩衝液中の制限酵素(または酵素群)で処理することによって行なう。一般に、プラスミドまたはDNAフラグメント約1μgを緩衝液約20μl中の酵素約1単位と共に使用し、個々の制限酵素に対する基質の量は製造者が明記している。)37℃で約1時間のインキュベーション時間で作用し得る。インキュベーションの後、フェノールおよびクロロホルムを用いる抽出により蛋白を除去し、核酸をエタノール沈澱によって水性画分から回収する。
【0104】
平滑末端が必要であるならば、この調製物をDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント(クレノウ)10単位を用いて15℃で15分間処理し、フェノール−クロロホルム抽出し、そしてエタノール沈澱させることができる。
【0105】
開裂したフラグメントの大きさによる分離は、ゲッデル等、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、8巻4057頁(1980)により記載される6%ポリアクリルアミドゲルを用いて行なう。
ライゲーションのために、好適には正しい対形成をするよう末端処理された所望成分のほぼ当モル量を、DNA0.5μgにつき約10単位のT4DNAリガーゼで処理する。(開裂したベクターを成分として使用する場合は、細菌アルカリホスファターゼで前処理することにより、開裂したベクターの再ライゲーションを防ぐことが有用であるかも知れない。)
【0106】
上に論じたように、セレクチン変異体は好ましくは特異的突然変異によって生成させる。本発明の実施に有用な変異体は、所望の突然変異のDNA配列をコードしている特異的オリゴヌクレオチド配列、ならびに、途中に存在する突然変異の両側に安定な二本鎖を形成させるに充分な大きさおよび配列複雑度を有する配列を提供する、充分な数の隣接ヌクレオチドの使用によって、最も容易に形成される。
【0107】
組み立てられたプラスミド中に正しい配列を確認するための分析については、ライゲーション混合物を使用して、典型的にはE.coli K12(ATCC31446)またはその他の適当な大腸菌菌株を形質転換し、適宜アンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により良好な形質転換体を選択する。この形質転換体由来のプラスミドを調製し、メシング等、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)、9巻309頁(1981)による方法またはマクサム等、メソッズ・オブ・エンザイモロジー(Methods of Enzymology)、65巻499頁(1980)の方法により制限地図作成および/またはDNA配列決定することによって分析する。
【0108】
DNAを哺乳動物細胞宿主中に導入し、安定な形質転換体について培地中で選択した後、DHFR活性の競合的阻害剤であるMTXおよそ20000−500000nM濃度の存在下で宿主細胞培養を増殖させることにより、DHFR蛋白コード化配列の増殖をさせる。有効な濃度の範囲は無論DHFR遺伝子および蛋白の性質ならびに宿主の性格に高度に依存する。明らかに、一般的に規定される上限および下限を確定することはできない。適当な濃度の他の葉酸類似体またはDHFRを阻害する他の化合物を使用することもできる。しかしながら、MTX自身が簡便であり、容易に入手でき、そして有効である。
【0109】
グリコシル化変異体
ポリペプチドのグリコシル化は典型的にはN−結合またはO−結合のいずれかである。N−結合とは、アスパラギン残基の側鎖に炭水化物基が結合していることを指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(ここでXはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物基の酵素結合に対する認識配列である。O−結合グリコシル化とは、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうち一つがヒドロキシアミノ酸、最も普通にはセリンまたはスレオニンと結合していることを指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまたO−結合グリコシル化に含まれ得る。O−結合グリコシル化部位は、例えばリガンドのアミノ酸配列に対し1またはそれ以上のセリンまたはスレオニン残基を付加または置換することにより、修飾することができる。容易にするために、変化は通常、アミノ酸配列変異体に関して上に述べた技術を本質的に使用して、DNAレベルで施す。
【0110】
本発明に係るセレクチン変異体に対するグリコシドの化学的または酵素的結合を用いて炭水化物置換基の数またはプロフィルを修飾または増加させることもできる。これらの方法は、O−結合(またはN−結合)グリコシル化の可能なポリペプチドの生成を必要としないという点で有利である。使用される結合様式に応じて、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシ基、(c)遊離ヒドロキシ基、例えばシステインの遊離ヒドロキシ基、(d)遊離スルフヒドリル基、例えばセリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンの遊離スルフヒドリル基、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基、に結合することができる。これらの方法は、WO87/05330(1987年9月11日公開)、およびアプリンおよびリストン、CRC・クリティカル・レビューズ・イン・バイオケミストリー(CRC Crit.Rev.Biochem.)、259−306頁(1981)に記載されている。
【0111】
セレクチン変異体上に存在する炭水化物基は、化学的または酵素的に除去することもできる。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物への暴露を必要とする。この処理は、結合糖以外の殆どのまたは全ての糖の開裂をもたらすが、ポリペプチドは無傷のままである。化学的脱グリコシル化は、ハキムディン等、アーカイヴズ・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジクス(Arch.Biochem.Biophys.)、259巻52頁(1987)およびエッジ等、アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)、118巻131頁(1981)により記載されている。炭水化物基は、ソタクラ等、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth.Enzymol.)、138巻350頁(1987)により記載されるような種々のエンドおよびエキソグリコシダーゼによって除去することができる。グリコシル化は、ダスキン等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、257巻3105頁(1982)により記載されるようにツニカマイシンにより抑制される。ツニカマイシンは蛋白−N−グリコシダーゼ結合の形成を遮断する。
【0112】
本発明に係る変異体のグリコシル化変異体は、適当な宿主細胞の選択によっても生成させることができる。例えば酵母は哺乳動物系とは著しく異なったグリコシル化を導入する。同様に、セレクチン変異体の供給源とは異なった種(例えばハムスター、マウス、昆虫、豚、牛または羊)または組織(例えば肺、肝臓、リンパ、間葉または表皮)の起源を有する哺乳動物細胞が、変異体にグリコシル化を導入する能力について常套的にスクリーニングされている。
【0113】
共有結合的修飾
セレクチン変異体分子の共有結合的修飾は本発明の範囲内に包含される。このような修飾は、セレクチン変異体の標的とされるアミノ酸残基を、選ばれた側鎖または末端残基と反応し得る有機誘導体生成試薬と反応させることによって、または選ばれた組み替え宿主細胞に機能する翻訳後修飾の機構を利用することによって、常套的に導入される。得られた共有結合的誘導体は、生物活性、セレクチンリガンドのイムノアッセイ、または組み替え糖蛋白の免疫親和精製用の抗セレクチンリガンド抗体の製造、に重要な残基の同定を目的とする計画に有用である。例えば、ニンヒドリンとの反応後の蛋白の完全な生物活性の失活は、少なくとも一つのアルギニンまたはリジン残基がその活性のために決定的であることを示唆し、その後、選択された条件の下で修飾された個々の残基が、その修飾されたアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントの分離によって同定される。このような修飾は当分野における通常の知識の範囲内にあり、過度の実験をすることなく実施される。
【0114】
二機能性試薬による誘導体形成は、セレクチン変異体の分子内凝集体の製造、ならびに検定または親和精製への使用のためにセレクチン変異体を水不溶性支持体マトリックスまたは表面に架橋させるために有用である。さらに、鎖内架橋の研究は、コンホメーション構造についての直接的情報を提供するであろう。一般的に使用される架橋試薬は、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、ホモ二機能性イミドエステル類、および二機能性マレイミド類を包含する。メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミダートのような誘導体生成試薬は、光の存在下で架橋を形成することのできる光活性化中間体を生成する。別法として、臭化シアン活性化炭水化物のような反応性水不溶性マトリックスおよび米国特許第3959642;3969287;3691016;4195128;4247642;4229537;4055635;および4330440号に記載の反応性基質の系も、蛋白の固定化および架橋に使用される。
【0115】
或る種の翻訳後修飾は、発現されたポリペプチドに対する組み替え宿主細胞の作用の結果である。グルタミンおよびアスパラギン残基はしばしば翻訳後脱アミド化されて対応するグルタミン酸およびアスパラギン酸残基となる。これとは別にこれらの残基は緩和な酸性条件下で脱アミド化される。これら残基のいずれの型も本発明の範囲内にある。
【0116】
その他の翻訳後修飾には、プロリンおよびリジンのヒドロキシ化、セリンまたはスレオニン残基のヒドロキシ基のホスホリル化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化が包含される[T.E.クレイトン、プロテインズ:ストラクチャー・アンド・モレキュラー・プロパティーズ(Proteins:Structure and Molecular Properties)、W.H.フリーマン・アンド・Co.、サンフランシスコ、79−86頁(1983)]。
【0117】
その他の誘導体は、非蛋白性ポリマーに共有結合で結合した本発明に係る新規セレクチン変異体を含む。非蛋白性ポリマーは通常、親水性合成ポリマー、即ち天然では見いだされないポリマーである。しかしながら、天然に存在し、組み替えまたはインビトロ法によって生成されるポリマーは、天然から単離されるポリマーと同様に有用である。親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンは本発明の範囲内にある。特に有用なのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのようなポリビニルアルキレンエーテル類である。
【0118】
セレクチン変異体は、米国特許第4640835;4496689;4301144;4670417;4791192または4179337号に開示される方法によって、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン類のような種々の非蛋白性ポリマーと結合させることができる。
【0119】
セレクチン変異体は、例えばコアセルベーション技術または界面重合により製造されるマイクロカプセルに、コロイド薬物デリバリー系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに捕捉することができる。このような技術はレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington’sPharmaceutical Sciences)16版、A.オソール編(1980)に開示されている。
【0120】
セレクチン変異体−免疫グロブリンキメラの組み立て
セレクチン変異体の配列は、前記に定義された免疫グロブリン不変ドメイン配列に結合させることができる。得られた分子は通常、セレクチン免疫グロブリンキメラと称する。このようなキメラは、本質的にはWO91/08298(1991年6月13日公開)に記載のように組み立てることができる。
【0121】
通常、セレクチン変異体は、免疫グロブリンの不変領域のN末端に、可変領域に代わってC末端が融合するが、セレクチン変異体のN末端融合もまた望ましい。好ましくは、セレクチン変異体の貫膜領域は融合の前に不活性化または除去される。
【0122】
典型的には、このような融合は、少なくとも、免疫グロブリン重鎖の不変領域の機能的に活性なヒンジ、CH2およびCH3ドメインを保持する。融合は、さらに、不変領域のFc部分のC末端に、または重鎖のCH1もしくは軽鎖の対応領域のN末端に直接行なわれる。これは通常、適当なDNA配列を組み立て、それを組替え細胞培養中で発現させることによって達成する。しかしながら別法として、本発明に係るセレクチン変異体−免疫グロブリンキメラを既知の方法に従って合成することもできる。
【0123】
融合がなされる正確な部位は重要でない。個々の部位は良く知られており、セレクチン変異体の生物活性、分泌または結合特性を最適とするように選択することができる。
【0124】
幾つかの態様において、ハイブリッド免疫グロブリンは、本質的にはWO91/08298号(上記)に例示されるように、単量体、またはヘテロもしくはホモ多量体として、そしてとりわけ四量体の二量体として組み立てられる。
【0125】
好ましい態様においては、セレクチンリガンドのための結合部位を含む配列のC末端を、免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンG1のエフェクター機能を含む、抗体のC末端部分(特にFcドメイン)のN末端に融合させる。重鎖不変領域全体をリガンド結合部位を含む配列に融合させることは可能である。しかしながら、より好ましくは、パパイン開裂部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まる配列(これはIgG Fcを化学的に規定し、重鎖不変領域の最初の残基を114とする時の残基216[コベット等、上記]、または他の免疫グロブリンの類似部位である)を融合に使用する。特に好ましい態様においては、リガンド結合部位を含むアミノ酸配列(好ましくはegf様および補体結合ドメインを保持している)を、IgG1、IgG2またはIgG3重鎖のヒンジ領域およびCH2およびCH3またはCH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインと融合させる。融合が行なわれる正確な部位は重要でなく、最適な部位は常套的な実験により決定し得る。
【0126】
III.好ましいセレクチン変異体
通常、本発明に係るセレクチン変異体はレクチンドメインを有し、そのアミノ酸配列は天然セレクチン分子のアミノ酸配列と実質上ホモローガスである(通常、挿入または除去を無視した完全なアミノ酸配列一致を基準にして約80%以上)が、このドメイン内の或る特定の1またはそれ以上の部位における1またはそれ以上のアミノ酸残基の置換、除去または挿入を含んでいる。本発明に係るセレクチン変異体分子は、それらのレクチンドメインの変化の結果、対応する天然セレクチンリガンドに対する変化した(好ましくは増強された)親和性を示し得る。本発明に係るアミノ酸配列変異体は、セレクチンのリガンド結合性の修飾において重要であるまたはこれに影響し得ることが本発明者等によって確認された、或る部位における置換、挿入、または除去変異体の一つまたは組合せである。
【0127】
セレクチンの炭水化物リガンドの認識に主として関与していると同定されたアミノ酸残基は、ジスルフィド結合したNおよびC末端により形成された逆平行βシート、および、2個の内部システインにより形成された隣接するジスルフィド結合ループ、の近傍のセレクチンレクチンドメインの表面上の比較的小さな部分である。実施例に開示された実験的証拠に基づくと、この領域内の正に荷電したアミノ酸残基が炭水化物の認識にとって重要であることが特に信ぜられる。したがって、この領域、そして特に正に荷電したアミノ酸における変化は、セレクチン分子のリガンド結合性に最も大きな影響を与えると予想される。
【0128】
一般に、その部位にある天然の残基とは有意に異なった側鎖を有する上記定義の領域内のアミノ酸で置換することによって、セレクチン分子のリガンド結合性において実質的な変化が得られる。このような置換は、(a)例えばシートまたはらせんコンホメーションといったような、置換の領域におけるポリペプチドバックボーンの構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または、(c)側鎖のかさ、に影響を及ぼすと予想される。セレクチン分子の化学的および/または物理的性質に最大の変化をもたらすと予想される置換は、(a)塩基性(正に荷電している)残基を脂肪族または芳香族残基に置換し、(b)酸性残基を脂肪族または芳香族残基に置換し、(c)親水性残基を芳香族または脂肪族残基に置換し、(d)芳香族残基を酸性または塩基性残基に置換し、(e)脂肪族残基を酸性または塩基性残基に置換し、または(f)非極性残基を酸性または塩基性残基に置換する置換である。
【0129】
特に、E−セレクチンによるsLex認識にとって決定的であると判明した三つの正荷電アミノ酸残基、残基番号97のアルギニン(R)、残基番号111のリジン(K)、および残基番号113のリジン(K)は、図7に示されるE−セレクチンモデル上で互いに極めて近接して位置している。アミノ酸位置111および113のリジンは、幾つかの異なった種由来の3種のセレクチン全てにおいて保存されている。したがって、この位置における正に荷電した残基、例えばリジンの存在は、リガンド結合に必須であると信ぜられる。このアミノ酸残基を非荷電アミノ酸(アラニン)に置き換えるとsLex認識は完全に損なわれた。セレクチンレクチンドメインの97位のアルギニンの置換はE−およびL−セレクチンのみにおいて保存されており、一方P−セレクチンはこの部位にセリン(親水性非荷電アミノ酸)を持っている。E−セレクチンにおいてこの残基の代わりにアラニンで置換するとsLex結合は破壊され、したがってこの残基もまた炭水化物認識にとって決定的である。
【0130】
全く予期しなかった発見は、E−セレクチンアミノ酸配列の8位のグルタミン酸(荷電残基)をアラニンに置換した結果観察されるリガンド結合親和性の増大であった。L−およびP−セレクチンはこの部位に正電荷(K)を含み、L−セレクチンにおけるアラニンへのその突然変異はsLex認識を有意に増強させることが判明した(実施例2)。
【0131】
このように、セレクチンレクチンドメイン中の上記定義の部分内での変化、特に上記位置において荷電アミノ酸残基を非荷電残基に置き換えることから、セレクチン分子のリガンド結合性における実質的な変化が予想され得る。電荷に加えてアミノ酸のかさが重要な事柄である。
【0132】
セレクチンの単一部位置換変異体として組み立てられる変異体セレクチン分子の例を下の第1表に列記する。
【0133】
【表1】
【0134】
第1表に列挙された単一部位置換変異体セレクチン分子に加えて、好ましい複数部位置換変異体分子は、97、111および113位における前記の変化の1またはそれ以上と組み合わされた、セレクチンレクチンドメインの8位で置換された前記アミノ酸の任意のものを有する分子を包含する。
【0135】
アミノ酸領域7−9、43−48、82−86、および90−109、特に7、8、9、47、48、82、84、86、94、96、98および100位において単独または任意の組合せで同様の置換が可能である。
【0136】
本発明に係る変異体は、好ましくは天然セレクチンのegf様ドメインおよび補体結合ドメインを保持するが、分子の他の部分で、得られる変異体のリガンド結合性に有意な影響を及ぼさないさらなる変化(例えば同類アミノ酸置換)を含むことができる。さらに、リガンド結合に関与しないことが同定されているレクチンドメインの領域でも、さらなる変化が可能である。
【0137】
セレクチンのリガンド結合部位について本明細書に開示される情報は、ホモローグスキャニングおよび高度解析アラニンスキャニング突然変異生成のような、さらなる突然変異生成研究[B.C.カニングハム等、サイエンス(Science)、243巻1330−1336頁(1989);B.C.カニングハムおよびJ.A.ウェルズ、サイエンス(Science)、244巻1081−1085頁(1989);総説についてはJ.A.ウェルズ、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)、202巻390−411頁(1991)を参照されたい]、そして最終的には天然セレクチンの結晶構造を決定することによってさらに正確なものとすることができる。
【0138】
IV.治療用組成物
増強されたリガンド結合親和性を有するセレクチン変異体を使用して、対応するセレクチンレセプターのその天然リガンドへの結合を遮断することができる。例えば、増強されたリガンド結合性を有するL−セレクチン変異体は、循環する白血球上のL−セレクチンレセプターが内皮細胞上のその天然リガンドに結合するのを有効に遮断する。この性質は、内皮細胞への循環白血球の過度の結合に付随する徴候または状態、例えばリウマチ様関節炎、乾癬、多発性硬化症などの処置に有用である。
【0139】
本発明に係るセレクチン変異体は、該リガンドを薬学上許容し得る担体と混合することによる既知の方法に従って調合し、薬学上有用な組成物を製造することができる。好適な担体およびそれらの製剤は、オスロ等により編集されたレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)16版、1980、マック・パブリッシング・Co.に記載されている。これらの組成物は、典型的には、セレクチン変異体の有効量、例えば約0.5ないし約10mg/ml程度を適当量の担体と共に含有させ、患者への有効な投与に好適な薬学上許容し得る組成物を製造する。変異体は、非経口的に、または有効な形で血流まで運搬されることが確実な他の方法によって投与することができる。
【0140】
本発明の実施に使用されるセレクチン変異体の臨床投与に特に適した組成物は、無菌水溶液または凍結乾燥蛋白のような無菌の水和され得る粉末を包含する。典型的には、適当量の薬学上許容し得る塩もまた、その製剤を等張とするために、製剤中に使用される。
【0141】
本発明に係る薬用組成物の用量および所望の薬物濃度は、構想される個々の用途に応じて変わり得る。
本発明のさらなる詳細を以下の非限定的実施例において例示する。
【0142】
V.実施例
実施例1
A.実験方法
【0143】
抗E−セレクチンモノクローナル抗体の産生および特性決定
ヒトおよびウサギE−セレクチンの両者に対するモノクローナル抗体を、E−セレクチンを一過性に発現するCOS細胞でマウスを免疫することによって生成させた。COS細胞(ダルベッコ燐酸緩衝化塩水(DPBS)中5x107/0.8mlを、電気穿孔(350V、250μF、バイオ−ラド・ジーン・パルサー)によってヒトまたはウサギE−セレクチンcDNA20μgでトランスフェクトし、氷上で10分間インキュベートし、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)/10%牛胎児血清(FBS)中に再懸濁し、107細胞/225cm2組織培養フラスコで蒔いた。トランスフェクトされた細胞を48−72時間において非酵素的に収穫し、2回洗浄し、DPBSに再懸濁した。マウスは1x107細胞を用いて常套的にi.p.で免疫し、2−3週間毎に追加免疫した。免疫されたマウスの脾細胞を標準技術を用いてSP2/0細胞と融合させることによりハイブリドーマを生成させた[ガルフリ等、ネイチャー(Nature)、266巻550−552頁(1977)]。ハイブリドーマ上清を、E−セレクチントランスフェクトさせたおよび対照/非トランスフェクトCOS細胞由来の膜の洗浄剤抽出物で被覆したイムロン2微量定量プレート(ダイナテク・ラボラトリーズ・Inc.、チャンティリー、VA)に対する分別結合酵素結合免疫検定(ELISA)によってスクリーニングした。粗製の膜画分を2%トリトンX−100、150mM NaCl、50mMトリスpH7.5(2.5x108細胞当量/ml)中で抽出した。抽出物を50mM Na2CO3pH9.6中に希釈し、検定プレート上に直接被覆した。さらに抗ヒト抗体を、非処理HUVECと比較した、rhIL−1a(550pg/ml)およびrhTNF(400U/ml)で4時間処理したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対する選択的結合についてELISAによってスクリーニングした。これらのmAbの特異性を、サイトカイン処理HUVEC、および一時的にトランスフェクトさせたCOS細胞を用いて、免疫ブロッティング、免疫沈降、および間接的免疫蛍光によって確認した(調製においてはウォリツキー等)。
【0144】
Mab7H5(IgG3)、8E4(IgG2A)、3B7(IgG1)、1D6(IgG1)、4D9(IgG3)、1E5(IgG1)、9A1(IgG1)、7E10(IgG1)、および1B3(IgM)がヒトE−セレクチンに対して生成され、一方MAb14G2(IgG1)、11G5(IgM)、および9H9(IgM)がウサギE−セレクチンに対して産生された。標準技術[ホーゲンラードおよびライト、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods Enzymol)、121巻375−381頁(1986)]により腹水を生成させ、抗体を、記載[レイク等、ジャーナル・オブ・イミュノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods)、100巻123頁(1987)]のカプリル酸沈澱法により精製した。Mab BBA1およびBBA2はブリティッシュ・バイオテクノロジー(オクスフォード、英国)から購入し、一方Mab ENA−1はサン・バイオ(ユーデン、オランダ)から購入した。
【0145】
接着検定
ゼラチン被覆96ウェル組織培養プレート上に蒔いたHUVECの融合培養(コスター・Corp.、ケンブリッジ、MA)をrhIL−1a(550pg/ml)およびrhTNF(400U/ml)で4時間処理した。ウェルをDPBSで3回洗浄し、1%BSAおよび指定のMAb 10ug/mlを含有するDPBS中37℃で1時間インキュベートした。HL60細胞を2回洗浄し、RPMI培地1640(ジブコ・ラボラトリーズ、グランド・アイランド、N.Y.)中に5x106細胞/mlで再懸濁し、6カルボキシフルオレセイン(6−CFDA)40ug/mlにより37℃で30分間標識した。6−CFDAをロードしたHL60細胞(100000/ウェル)を加え、25℃で20分間インキュベートした。ウェルをRPMIで満たし、プレートを密封し、逆さにして500xGで6分間遠心した。非接着細胞を吸引によって除き、プレートをサイトフルオロ2300蛍光プレート読み取り機(ミリポア・Corp.、ベッドフォード、MA)で読み取った。
【0146】
トランスフェクションの18時間前に、COS細胞を5x105細胞/直径35mmのウェルで蒔いた。細胞をDPBSで洗浄し、DNA2μgを、10%ニュートリドーマ(ベーリンガー−マンハイム、インディアナポリス)、50μMクロロキン、および500ng/mlDEAEデキストランを含有するDMEM1mlに加えた。37℃で2.5時間インキュベーションした後、ウェルを吸引し、細胞を、10%FBSおよび10%DMSOを含有するイスコーヴの改良ダルベッコ培地(IMDM)中で2.5分間インキュベートした。ウェルを吸引し、細胞を、10%FBSを含有するIMDM中、37℃で48−72時間増殖させた。接着検定のために、5x1066−CFDAをロードしたHL60細胞を直径35mmの各ウェルに加え、25℃で30分間インキュベートした。ウェルをRPMIで3回洗浄し、接着細胞に付随する蛍光をサイトフルオロ2300プレート読み取り機で測定した。
【0147】
間接的免疫蛍光
一時的にトランスフェクトさせたCOS細胞を、1%(重量/容量)ホルムアルデヒドを含有するDPBS中で25℃で15分間固定した。DPBSで2回洗浄した後、細胞を、10%ウマ血清を含有するDPBS(DPBS/10%HS)を用いて室温で30分間遮断した。細胞を、DPBS/10%HS中5ug/mlのmAb387、8E4、7H5、または14G2と共に30分間インキュベートし、次いでDPBSで3回洗浄した。ローダミンをコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGと共に30分間インキュベーションした後、細胞をDPBSで洗浄し、ザイス・アクシオスコープ顕微鏡で蛍光を観察した。
【0148】
ヒト−ウサギキメラE−セレクチン組み立て物
COS細胞の表面上での、先端が切除された型のヒトおよびウサギE−セレクチンの発現を、グリコシル−ホスファチジルイノシトール結合(GPI)を介する細胞表面への固定のためのシグナル配列を含むCD16のカルボキシ末端の37のアミノ酸とセレクチン配列とを融合させることによって達成した[スキャロン等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、86巻5079−5083頁(1989)]。全てのE−セレクチンフラグメントをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成させ、CD16配列を含むよう修飾したプラスミドベクターpBC12BI[B.R.カレン、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)(S.L.バーガーおよびA.R.キメル編)、152巻684−704頁(1987)]中にクローニングした。組み替え遺伝子を、pBC12BI中でラットのプレプロインシュリン遺伝子由来の開始Metコドンを用いて発現させると、主たる翻訳産物はインシュリンシグナル配列から誘導された5個のアミノ酸を含む。ヒトレクチン−egf組み立て物は−15ないし+157のアミノ酸を含み[ベヴィラクア等、サイエンス(Science)、243巻1160−1165頁(1989)]、ウサギレクチン−egfは残基−17ないし+156を含んでいた[ラリガン等、ジャーナル・オブ・DNA・アンド・セル・バイオロジー(J.ofDNA and Cell Biology)、11巻149−162頁(1992)]が、一方HuRa−1はウサギE−セレクチンの残基10ないし156と隣接するヒトE−セレクチンのアミノ酸−15ないし+9を含んでいた。細胞表面へのGPI固定に必要なCD16配列を各組み立て物のカルボキシ末端に融合させた。
【0149】
E−セレクチン−IgGキメラ突然変異体の組み立ておよび発現
E−セレクチン−IgGキメラの生成および特性決定は前に述べられている(フォクサル等、1992、上記)。クンケルの方法[クンケル等、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymol.)、154巻367−382頁(1987)]により、ミュータジーン・ファージミド・イン・ビトロ・ミュータゲネシス・キット(バイオラド)を製造者の指示に従って使用して、このキメラのレクチンドメインに突然変異を導入した。正しい突然変異体をDNA配列決定により確認し、この突然変異体キメラを、293細胞のトランスフェクションによって一時的に発現および分泌させた[ワトソン等、ネイチャー(Nature)、349巻164−167頁(1991)]。次いで、得られた上清中の各キメラの濃度を、前記のような抗ヒトIgG1−Fc特異的マウスmAbを用いるELISAによって定量した[ワトソン等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、110巻221−2229頁(1990)]。点突然変異の部位は、カニングハムおよびウェルズの命名法(1989):野生型残基−位置−突然変異体残基、を用いて定義する。
【0150】
E−セレクチン−IgG突然変異体のモノクローナル抗体結合
突然変異体E−セレクチン−IgGキメラと種々の抗体との反応性を、精製したMabを微量定量ウェル上に被覆し、次いでBSAで遮断する、前記ELISAフォーマット[ワトソン等、1990、上記]を用いて測定した。等濃度の野生型または突然変異体キメラを含有する293細胞上清をウェル中でインキュベートし、続いて洗浄し、そして、捕捉されたキメラをHRPコンジュゲートヤギポリクローナル抗ヒトFc抗体で検出した。
【0151】
E−セレクチン−IgG突然変異体のシアリルルイスX結合
固定化されたsLex糖脂質に対する突然変異体E−セレクチン−IgGキメラの結合に対する検定を、本質的には記載のように(フォクサル等、1992、上記)実施した。簡単に述べると、sLex糖脂質を微量定量ウェル上で乾燥し、蒸留水で洗浄し、次いでBSAで遮断した。ビオチニル化ヤギF(ab’)抗ヒトIgGFcおよびアルカリホスファターゼ−ストレプトアビジン(カルタグ、サウス・サンフランシスコ、CA)を、等濃度の野生型または突然変異体キメラを含有する293細胞上清中に各々1:1000で希釈し、ウェルへの添加前に複合体を形成させた。次にこれらの上清をsLex糖脂質被覆表面上でインキュベートし、次いで洗浄し、基質(p−ニトロフェニルホスファート)を添加し、そして405nmのO.D.を測定した。
【0152】
E−セレクチンレクチンドメインのモデルの作成
ラットのマンノース結合蛋白(MBP)の結晶構造に基づいて、E−セレクチンのモデルを作成した[ワイス等、1991、上記]。E−セレクチンの配列を、提供されたマウスL−セレクチン(LHR)[ラスキー等、セル(Cell)、56巻1045−1055頁(1989)]およびMBPという二つの蛋白の整列を用いて、これら二つの蛋白の配列と共に並べた[ワイス等、1991、上記]。MBPと比較してE−セレクチン中の11の挿入および二つの除去を、MBP構造中の4個の表面ループにマッピングした。MBP(分子1)は三段階でE−セレクチンに変形された。第一に、挿入/除去を含んでいるものを除いた全ての残基を、インサイト−IIプログラム(バイオシム・テクノロジーズ、サンディエゴ)を用いてE−セレクチン配列に変えた。もし可能なら、E−セレクチン側鎖のコンホメーションはMBPのそれと同様に維持し、さもなければこれらは回転異性体ライブラリー[ポンダーおよびリチャーズ、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、193巻775−791頁(1987)]、パッキングおよび水素結合の考慮に基づくものとした。第二に、E−セレクチン挿入/除去に対する考え得るループ構造を、インサイト−IIプログラムを用いてプロテイン・データ・バンク[バースタイン等、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、112巻535−542頁(1977)]内の結晶構造の検索から突き止めた。第三に、MBP結晶構造中に存在する30の水分子の各々を、E−セレクチンモデルにおけるそれらの保持に関して評価した。7個の水だけがE−セレクチンモデルに含まれており、うち4個がMBP水分子23、24、25および30に対応した。
【0153】
このE−セレクチンモデルをディスカヴァープログラム(バイオシム・テクノロジーズ、サンディエゴ)を用いて6000サイクルのエネルギー最小化に付した。全原子アンバー(AMBER)フォースフィールド[ウェイナー等、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)、106巻765−784頁(1984)、ウェイナー等、ジャーナル・オブ・コンピュテイショナル・ケミストリー(J.Comp.Chem.)、7巻230−252頁(1986)]を全ての計算に使用し、非結合相互作用については14オングストロームカットオフ、そして線形誘電(e=4.0*r)を用いた。インサイト−IIを用いて水素原子をこの構造に加え、Ser、ThrおよびTyr側鎖上および水分子上の水素の位置を、もし存在するならば水素結合における適正な並び方について視覚的に確認した。エネルギー最小化は各々1000サイクルの六段階で実施した。段階1においては、力の定数100kcal/オングストロームを用いてそれらの当初の位置に拘束された残基S2−V27、Q30−S40、Y49−R54、W60−V61、N75−N82、E88−I93およびW103−T119のCa原子を用いて、最も急な下降勾配の最小化を採用した。主としてb鎖およびaヘリックスにおける残基間の水素結合を含む105の水素結合制約(50kcal/mole)をさらに考慮に入れた。これは、Eセレクチンモデルに存在する二次構造の完全性を保存しつつループ構造および側鎖の運動を可能にした。段階2および3においては、Ca係留力定数をそれぞれ50および10kcal/オングストロームに低減し、コンジュゲート勾配最小化を利用した。段階4および5においては、Ca拘束を解除し、そして最後に段階6において水素結合の拘束を解除した。MBP結晶構造は、MBPにおける2個のCa2+結合部位を占有する2個のHo2+原子を含む。E−セレクチンは1個のCa2+結合部位を保持するが、2個目を開放している(結果を参照されたい)。アンバー(AMBER)フォースフィールド(ウェイナー等、1984、および1986、上記)はCa2+についての表示を含まないので、Ca2+原子を除去し、Ca2+と協調する側鎖(E80、N82、E88、N105、D106)をこの最小化工程全般にわたり固定した。
【0154】
B.結果
【0155】
一連のE−セレクチン抗体の特性決定
E−セレクチンの構造および機能の研究を容易にするために、本発明者等は、ヒトおよびウサギE−セレクチンに対する一連の遮断および非遮断Mabを作成した(実験方法を参照されたい)。三つの抗ヒトE−セレクチンMab(7H5、8E4および3B7)が、サイトカイン活性化HUVECおよびE−セレクチントランスフェクトCOS細胞に対するHL60細胞の接着を阻害することがわかった(図1A)。交差反応性の研究は、これら三つの遮断MabはウサギE−セレクチンを認識せず(図1B)、これらMabにより認識されるエピトープのマッピングを容易にするという結果を証明した(下記を参照されたい)。入手し得る市販の抗ヒトE−セレクチンMAb、BBA1、BBA2およびENA−1もまたウサギE−セレクチンと交差反応しなかった(図1B)。これら三つの市販のMAbは、本発明者等の細胞接着検定においていずれもE−セレクチン仲介HL60接着を有意に遮断しなかった(図1A)が、BBA2は低温で実施された細胞接着検定において明瞭な接着遮断活性を持ち[ピゴット等、ジャーナル・オブ・イミュノロジー(J.Immunol.)、147巻130−135頁(1991);C.フィップス−私信]、ENA−1は活性化されたHUVECに対する好中球の接着を遮断することが示されている[リユーウェンバーグ等、クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・イミュノロジー(Clin.exp.Immunol.)、81巻496−500頁(1990)]。さらに、BBA2およびENA−1はいずれも固定化されたsLex糖脂質へのE−セレクチンの結合を有効に阻害する(フォクサル等、1992、上記)。sLexは白血球細胞表面上のE−セレクチンに対する主要な炭水化物リガンドであるので、この一連の遮断抗体(7H5、8E4、3B7、BBA2およびENA−1)により認識されるエピトープの分析は、炭水化物の認識およびその結果としての細胞接着に関与するE−セレクチンの領域を示すと思われた。さらに、他の、非遮断Mabにより認識される領域のマッピングは、炭水化物の認識および細胞接着に関与しないレクチンドメインの領域を示すことにより、遮断抗体について見いだされた部位を確認および強調するに違いない。故に、炭水化物相互作用に関与するE−セレクチンの領域を分析する最初の工程は、遮断および非遮断抗E−セレクチンMabにより認識されるエピトープをマッピングすることから成る。
【0156】
E−セレクチンモノクローナル抗体結合の分析
E−セレクチン突然変異生成への取り組みは、二つの主要な考察により推進された。第一の考察は、マウスL−セレクチン遮断Mab、Mel 14により認識されるエピトープの位置付けに関するかつての仕事から導かれた[ボウエン等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、107巻1853−1862頁(1990)]。この仕事は、この抗体がマウスL−セレクチンのN末端の53のアミノ酸内部の或る領域を認識することを証明した。E−セレクチンに対する遮断抗体はレクチンドメインのこのN末端内に含まれるエピトープをも認識できると思われ、故にこの領域は突然変異生成の標的となった。第二の方法は、アラニンスキャニングおよび種同族体突然変異生成プロトコルの両者を用いて、レクチンドメイン内の正に荷電した残基を標的とした[カニングハムおよびウェルズ、サイエンス(Science)、244巻1081−1085頁(1989)]。他の観察に加えて、全てのセレクチンがその炭水化物リガンドの一部として負に荷電したシアル酸を必要とするという事実は、シアル酸の負に荷電したカルボキシラートとレクチンドメイン内の1またはそれ以上の正に荷電した残基との間の電荷により仲介される相互作用の形成を示すものとして解釈することができる。
【0157】
上記のように、抗ヒトE−セレクチン遮断MabでウサギE−セレクチンと反応するものはなく、ヒトおよびウサギE−セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸配列の分析は、16の相違のうち5つがN末端の9個のアミノ酸内にまとまっていることを示した(図2A)。遮断Mabがこの領域にマッピングされるかを決定するために、N末端の9アミノ酸がヒトE−セレクチン由来の対応配列に置換された、ウサギE−セレクチンレクチンおよびegf様ドメインを含むキメラ蛋白を生成させた(Hu−Ra−1)(図2Bを参照されたい)。この組み立て物は、発現された蛋白をグリコシル−イノシトールホスファート結合により細胞表面に固定するに充分なCD16の領域を伴う、レクチンおよびegf様ドメインの融合として生成された(図2B)。前のデータが、セレクチンレクチンドメインの全体のコンホメーションが、隣接するegf様ドメインの存在を必要とすることを示唆したため、egf様ドメインを含めた。ヒトレクチン−egf−CD16、ウサギレクチン−egf−CD16、またはヒト−ウサギキメラ(Hu−Ra−1)によりトランスフェクトされたCOS細胞上の間接的免疫蛍光は、ウサギE−セレクチンバックグラウンド中のヒトアミノ酸1−9はMAb 7H5および8E4結合を付与するに充分であるが、MAb 3B7結合を付与するには充分でないことを証明した(図3)。同様の実験において、ENA−1はHuRa−1と結合したがBBA2は結合しなかった(示されていない)。さらに、Hu−Ra−1トランスフェクトCOS細胞へのHL60細胞の接着はMAb 7H5および8E4により阻害されたが、MAb 3B7または非遮断MAb 14G2による影響を受けなかった(図4)。これらのデータは、ヒトE−セレクチンのN末端の9アミノ酸に対する三つの遮断Mab(7H5、8E4およびENA−1)により認識されるエピトープの位置付けと符合する。
【0158】
さらなるMabマッピング分析を容易にし且つ直接的炭水化物結合研究を可能にするために(下記参照)、前記のL−セレクチン−IgGキメラに類似するE−セレクチン−ヒト免疫グロブリンG(IgG)キメラのレクチンドメインに突然変異を導入した(図2B)[ワトソン等、1990、1991、上記;フォクサル等、1992、上記)。このE−セレクチン−IgGキメラは、各々の一時的細胞トランスフェクション検定から生成させたヒトIgGの量を分析することにより、個々の突然変異体それぞれの容易な定量を可能にした(実験方法を参照されたい)。ヒトIgG尾部を含めることによって、さらに、各突然変異体が一連の抗−E−セレクチン抗体、ならびに固定化sLexに結合する能力の迅速な分析が、標識化抗IgG抗体の使用により可能となった。このようにして、全体的なレクチンの構造(全MAbによる認識の喪失)、局所的構造(Mabのサブセットによる認識の喪失)、および炭水化物認識(殆どまたは全てのMabによる認識を保持したままでの糖認識の喪失)に影響を及ぼす突然変異体が速やかに区別できた。
【0159】
図5は、E−セレクチンに対する種々のモノクローナル抗体の結合に影響すると思われる幾つかの突然変異を示すものである。ヒトおよびウサギE−セレクチンのレクチンドメインのキメラ組み立て物(HuRa−1)は、N末端の9アミノ酸を、三つの遮断抗体(8E4、7H5およびENA−1)に対するエピトープの少なくとも一部を形成するとして同定したので、本発明者等は最初に、ウサギとヒトとの間で異なっている五つの位置(残基2、4、5、7および9)に集中して、この領域内でさらなる突然変異体を組み立てた。残基2、4および5が突然変異したヒトE−セレクチン−IgGキメラは全抗体に対する結合を保持したが、これは、これらのアミノ酸がMAb結合にとって決定的でないことを示している(データは示されていない)。しかしながら、7および9位のヒトE−セレクチンアミノ酸をウサギE−セレクチン配列に見いだされるそれらの対応部分で置き換える突然変異は、抗体7H5、8E4およびENA−1の結合の喪失をもたらした(図5A)。これら3つのmAbの結合の喪失は、HuRa−1キメラにより示された結合の獲得と直接対応する。別のN末端突然変異体E8AはBBA2およびENA1の結合を損なうことがわかった(図5C)。このように上記のヒト−ウサギキメラの研究に一致して、E−セレクチンレクチンドメインの7、8および9位の残基は4つの抗E−セレクチン遮断Mabにより認識されるエピトープに寄与している。
【0160】
7、8および9位の突然変異は、Mab 3B7を除く全ての遮断抗体のマッピングを可能にした。E−セレクチンレクチンドメインの他の部位においてヒトの残基をウサギの対応部分に置き換えると、残基98および101における二重の突然変異がこの遮断Mabの結合を完全に損なうことが明らかとなった(図5B)。重要なことに、これら二つの部位(98および101)においてヒトの残基をHuRa−1バックグラウンド中に入れるという逆の実験もまた行なった。得られた突然変異体はMab 3B7と結合することがわかり、したがってこの部位がこの遮断Mabにより認識されるエピトープを含んでいることが確認された(データは示されていない)。最後に、101位におけるバリンからアラニンへの置換を含むE−セレクチン−IgG突然変異体はMab 3B7に対する結合を保持し、98位のEが3B7エピトープの重要な構成因子であることを示した。
【0161】
7H5遮断Mabにより認識されるエピトープの複雑度は突然変異K113Aによって明らかとなる(図5C)。レクチンドメインのC末端にあるこの突然変異は、このMAbの結合を完全に損なう。7H5の結合はレクチンドメインのN末端(7および9位、図5A)に施された二点突然変異によっても破壊されることから、この遮断抗体により認識されるエピトープはNおよびC末端の両者から誘導されるということを結論付けることができる。事実、残基98および101における突然変異(図5B)に対して見いだされる7H5結合の部分的喪失は、このMabによって同様に認識されるNおよびC末端部位とこの領域との近接した整列と符合する。この結果の一つの解釈は、これらの領域がレクチンドメインの三次構造において近接して整列しているかも知れないということである(下記参照)。
【0162】
非遮断Mabの全ての結合が、遮断Mab認識を破壊する突然変異によって大きく影響されるとは思われなかった(図5A−D)。これは、これら二つのクラスのMabがレクチンドメイン中の遠く離れた部位を認識する事に符合する。例えば、突然変異体K74Aはこれらの非遮断抗体の幾つか(9H9、1B3、11G5、4D9および1D6)の結合を完全に喪失し、他のもの(14G2)の結合を部分的に喪失した(図5E)。この突然変異体は本発明者等が分析した遮断Mabのいずれの結合にも影響せず、この事はE−セレクチンのこの領域が炭水化物認識に直接関与していないかも知れないという事を示唆している。
【0163】
最後に、幾つかの突然変異体(M10A、Y12A、E14A、I93A、Y94A、I95A、K96A、E98AおよびM103A)は、E−セレクチンの補体結合様ドメイン1および2内の決定基を認識する9A1および7E10を包含する、抗E−セレクチン群内の全ての抗体に対する結合の喪失をもたらした。ヒトIgG濃度に基づいて基準化された量のこれら突然変異体が抗体被覆ウェルに添加された場合ですら、この結果が得られた。故にこれらの突然変異は、組み替えE−セレクチンドメインに対して大きな影響を及ぼすように見え、また、モノクローナル抗体反応性の見かけの欠如は、変性および/または減成に起因していたのであろう。
【0164】
E−セレクチン突然変異体による炭水化物の認識
上記の遮断Mabマッピングのデータは、E−セレクチンのNおよびC末端領域ならびに残基98および101を取り巻く領域が炭水化物認識に関与していることと符号したが、結合したモノクローナル抗体による抗原上の大きなシャドウキャスト[典型的には680−880A2[ジン等、1992、上記;デイヴィーズおよびパドラン、アニュアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)、59巻439−473頁(1990)]は、抗体エピトープから比較的遠い炭水化物認識部位の立体障害による遮断の原因となっているかも知れない。故に本発明者等は、プラスチック微量定量ウェル上に固定化したsLex糖脂質に対する幾つかのE−セレクチン−IgG突然変異体の結合能力を分析した[カメヤマ等、カーボハイドラート・リサーチ(Carbohydrate Res.)、209巻c1−c4(1991)]。この検定はかつて妥当性を確認されており(フォクサル等、1992、上記)、E−セレクチン−IgGキメラの結合は、カルシウム依存性であり、E−セレクチン遮断Mabにより阻害され、そして炭水化物のα2−3シアル酸型の存在に依存することが示された。
【0165】
図6Aに見ることができるように、分析された種々の突然変異体によって三つの異なる型の結果が得られた。幾つかの突然変異は、固定化されたsLexに対するEセレクチンの結合に影響を及ぼさなかった。これらの突然変異は、いかなるモノクローナル抗体の結合にも影響しない(突然変異体K32A、K67AおよびR84A、K86A)か、または非遮断抗体のみの結合に影響する(突然変異体K74A)かのいずれかの型であるとわかった。この結果は、E−セレクチンのこの領域が炭水化物認識に関与していないという前述の可能性と一致した。もう一つの影響の型は、R97、K99およびK113位における突然変異によって例示された。これらの部位のいずれかを、完全に(R97およびK113)またはほぼ完全に(K99)アラニンに変換すると、sLexに対するE−セレクチンの結合が損なわれた。R97およびK99位における突然変異は遮断抗体の結合に影響しないことがわかったが、K113における突然変異は遮断抗体7H5の結合を完全に損なうことがわかった(上記参照)。さらに、R97およびK99に隣接する98および101位の突然変異は別の遮断Mab 3B7の結合を損なった。これらの結果は、遮断Mab結合部位の位置を炭水化物認識のために重要な残基と一体化するものであり、E−セレクチンのこれらの領域が炭水化物の結合に直接関与していることと符合した。sLex結合に及ぼすE−セレクチン突然変異の、最後の、幾らか予想外の影響は、E8A突然変異体によって例示された。図6Aは、この突然変異体が野生型E−セレクチンキメラと同じ濃度でウェルに添加される時、sLexに対する結合を増強するらしいことを示している。野生型E−セレクチンとE8A突然変異体とを比較する用量反応曲線(図6B)は、この突然変異体が野生型の〜5倍の結合活性でsLexに結合したことを明らかにしている。突然変異体E8Aによるこの増強された結合は完全にカルシウム依存性であり、炭水化物の不活性α2−6シアル酸型上では起こらなかった(データは示されていない)。前記のように、この領域(即ち、残基7、8および9)内での突然変異は幾つかの遮断Mabの結合に大きく影響する。したがって、E−セレクチンのこの領域もまた炭水化物認識に重要な役割を果たしていると考えられる。
【0166】
Eセレクチンのモデル
上に述べた結果は、炭水化物認識に関与するE−セレクチン直線配列の領域についての幾つかの重要な結論を可能にするが、それらの妥当性は、それらをこの蛋白のレクチンドメインの構造モデルに適用するならば増大するであろう。結晶学的データの不在下において、分子の三次元モデルを、関連分子の構造的相関を用いて組み立てることができる[グリーア、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、153巻1027−1042頁(1981)]。近年、E−セレクチンのレクチンドメインとホモローガスなC型レクチンである、マンノース結合蛋白(MBP)のX線構造が決定された(ワイス等、1991、上記)。上記の機能的突然変異の相対的重要性をより完全に理解するために、本発明者等は、これらの構造データを用いてE−セレクチンレクチンドメインのモデルを作り出した。
【0167】
MBP相関からのE−セレクチンレンチンモデルの導出は、(121のうち)78のE−セレクチン残基を含む、両者に共通する二次構造を基礎とした(ワイス等、1991、上記)(図7)。二つの表面ループ:MBPのK152−S154およびV199−D200にそれぞれ対応する、S43−Y48およびY94−D100、のコンホメーションのみが異なる三つのE−セレクチンのモデルを評価した。S43−Y48ループはMBPに比べ3残基の挿入を含み、Y94−D100ループは5残基の挿入を含んでいる。エネルギー最小化前のE−セレクチンモデルは0.17オングストローム(78Ca原子)の二乗平均(r.m.s.)偏差を有し、最良エネルギー最小化モデルでは0.68オングストロームであった。比較目的のため、本発明者等はさらに、MBP結晶構造を、E−セレクチンモデルに利用したのと同じエネルギー最小化法に付した。最小化されたMBP(分子1のみ)は、結晶構造に対して0.45オングストロームのCa r.m.s.偏差を示した(残基K110−C217、即ち7個のNおよびC末端残基を除く)。よってこのエネルギー最小化法はE−セレクチンモデルの二次構造を維持し、これは、最小化の最中に二次構造のCa原子および水素結合を最初に拘束することによって達成された。
【0168】
ワイス(ワイス等、1991、上記)は、全体の構造にとって重要な、MBPの小さなおよび大きな疎水性の核の存在に注目した。小さい核については、6個のうち2個の残基のみがE−セレクチンにおいて保存されている(G52、A115)が、このモデルは、蛋白の折り畳みを乱すことなく他の4個のE−セレクチン側鎖にも適合し得た。大きい核においては、14個のうち6個の残基のみが保存されている。A155(MBP)からY49(E−セレクチン)への一つの置換は、Y49側鎖の導入に適応するため、a−ヘリックス−2(K32−L42)を、蛋白中心から僅かに遠方へ動かすことになる。このY49側鎖は、上に述べたS43−Y48およびY94−D100の二つのループと相互作用する。このヘリックスの反対側(N末端)の端では、P138(MBP)からI29(E−セレクチン)への置換もまたa−ヘリックス−2における僅かな移動に寄与していた。しかしながら、大きい疎水性核におけるE−セレクチン内の置換は、a−ヘリックス−2の僅かな移動により作られた内部空間を満たす。したがって、MBPの疎水性核領域とE−セレクチンレクチンドメインとにおける比較的多数のアミノ酸の変化は、このモデルによって調和し得る。
【0169】
MBP結晶構造は、その結晶構造中、2個のHo2+イオンによって占められている2個の推定Ca2+結合部位を含む。ワイス、上記、により示されたように、部位2はE−セレクチンにおいて保持されている:E80 Oe2、N82Od1、E88 Oe2、N105 Od1、D106 Od2、D106バックボーンカルボニル酸素、および1個の水分子がこのCa2+と協調している。他のCa2+結合部位は、前に記したように恐らくE−セレクチンには存在しない(図7)。D89(MBPにおけるD194)はE−セレクチンでは保存されているが、MBP中のD161はE−セレクチンにおいてK55により置換されており、MBPの部位1のCa2+と協調する別の二つの側鎖、即ちE165およびD188は、E−セレクチンにおいてN57およびN83により置換されている。Asn側鎖はそのOd1原子を介してCa2+と尚協調しているが、N57は、2個の残基の欠失および恐らくはコンホメーションを変化させる一部分であるループに隣接している。同様に、N83は、MBPとは異なった、提唱されているE−セレクチンのコンホメーションを有するループの一部である。このループは挿入または欠失を含まないが、MBP配列HGSGは、4位のGlyをもってII’型の逆行を形作っており、これはバックボーンのコンホメーションをGlyのみに許容している。(136゜、148゜)。E−セレクチン配列RQKDは、GからQへのそしてGからDへの置換に起因する異なったループコンホメーションを必要としていた。したがって、ただ1個のカルシウム結合部位がE−セレクチンレクチンドメインに存在するように見える。
【0170】
無論、このモデルの最も興味深い側面は、その突然変異がモノクローナル抗体の結合および/またはsLex認識に影響すると思われるアミノ酸側鎖の位置である。このモデルからわかるように(図7)、遮断Mab認識に関与するアミノ酸残基は、ジスルフィド結合したNおよびC末端により形成される逆平行βシート、ならびに2個の内部システインにより形成される隣接するジスルフィド結合したループの近傍の、レクチンドメインの表面に或る一区画を形成しているようである。即ち、その全てが種々の遮断Mabの結合に影響する、7、8、9、98、101および113位のアミノ酸側鎖は、全て、E−セレクチンの表面上に互いに極めて接近して見いだされた(〜80平方オングストロームの区画内)。特に重要なのは残基7、9および113の側鎖の近接した整列であって、これは、これらの残基での突然変異が7H5遮断Mabの結合に及ぼす影響と符合した。これらの残基を含むジスルフィド結合したループがやはり残基7、8、9および113と接近していることから、残基98および101における突然変異が7H5結合に及ぼす部分的影響もまた、該モデルと符合する。該モデルはさらに、非遮断抗体(K74)により認識される側鎖が、遮断抗体を結合すると思われる側とは反対のレクチンドメインの側に見いだされることを明らかにしている(図7)。この結果は、非遮断抗体により認識される領域が炭水化物認識部位からかなりの距離にある事と一致する。このように、E−セレクチンのモデルは、遮断モノクローナル抗体により認識されるこの分子の比較的小さな区画が炭水化物の認識に関与しているらしいことを示唆している。
【0171】
sLex結合に関与していることがわかった所在アミノ酸の調査は、遮断モノクローナル抗体により認識される領域が炭水化物認識に関与しているという解釈と符合する。その突然変異がsLex結合を増強するとわかった残基E8、および、その突然変異が炭水化物結合を損なうとわかった残基K113の接近した間隔は、このモデル上ではっきりと見ることができる。恐らく、より興味深いのは、完全にまたは殆ど完全にsLex認識を損なう他の二つの突然変異の近位性である。図7のモデルに見られるように、その突然変異が実際にsLex認識を損なった残基R97は、その突然変異がやはりsLex結合を損なったK113部位にかなり接近して見いだされた。やはりsLex結合への大きな負の効果を示したK99突然変異もまたこの領域の近傍に見いだされた。この同じループ(D100)内の別の残基の突然変異はsLex結合に影響しなかった(図6A)。これらの結果は、sLexの認識が、NおよびC末端ならびに小さなジスルフィド結合したループ由来の残基から成る、E−セレクチンレクチンドメインの比較的小さな領域によるという事と符合する。さらに、これらの結果はまた、この炭水化物リガンドの認識における、少なくとも1個の正に荷電したアミノ酸側鎖(R97、K99またはK113)の役割を示唆する。最後に、図7に示されたモデルは、その突然変異がsLex結合に影響しなかった幾つかの側鎖が、見かけのsLex結合部位とはかなり離れた分子の側に位置することを証明している。
【0172】
C.考察
前述のデータは、E−セレクチンおよびその炭水化物リガンドsLexの間の相互作用についての貴重な情報を提供する。この実施例に開示される仕事は、遮断および非遮断モノクローナル抗体結合部位のマッピングを、与えられたE−セレクチン突然変異体がその天然炭水化物リガンドsLexと結合する能力と結び付けているという点で独特である。遮断Mabマッピングデータと、sLex結合に影響をおよぼす突然変異の位置との一致は、ここで同定されたE−セレクチンレクチンドメインの小さな領域が、前に定義されたsLexの表面との結合に直接関与しているという仮説と符合する。この案はさらに、多くの非遮断モノクローナル抗体がレクチンドメインの反対側にマッピングされるように見えるという事実により支持される。
【0173】
本明細書に記載される突然変異生成の最も興味深い側面の一つは、sLex認識にとって決定的な2個の正に荷電した残基(R97およびK113)が、E−セレクチンモデル上に極めて接近して現われるという発見である(図7)。この突然変異生成分析の主たる推測は、正に荷電した残基が重要であるという可能性に基づいており、これら側鎖のうちいずれかの欠失が炭水化物認識に負の影響を及ぼすという発見が、セレクチンレクチンドメイン中の正に荷電した側鎖が炭水化物認識に関与している可能性を支持する(ストゥールマン等、1987、上記;イェドノック等、1987、上記;ラスキー等、1989)。この認識を達成する一つの可能な手段は、これらの側鎖とsLex中に見いだされるシアル酸残基のカルボキシラート基との間の電荷相互作用によるものである。sLex結合におけるカルボキシラート基の重要性は、シアル酸部位にカルボン酸基のみを有するsLex様化合物がE−セレクチンによって効果的に認識され得ることを明らかにした有機合成研究によって強調される(J.マッサーおよびB.ブランドレイ、非公開の観察)。したがって、電荷により仲介される或る型の相互作用がEセレクチンに対するsLex接着に関与しているのではないかと考えられる。三つのセレクチンは全て接着にシアル酸を必要としているらしく、また、K113が幾つかの異なった種由来の三つのセレクチン全てに見いだされるのに対し、正に荷電した残基(R)はL−およびE−セレクチンのみの97位に見いだされ、一方ヒトP−セレクチンはこの部位にSを含むということは興味深い。全てのセレクチンの113位におけるKの保存は、本明細書に記載される突然変異生成分析と相まって、恐らくは塩橋または水素結合の形成による、シアル酸認識におけるこの残基の直接的役割と符合する。97位におけるセレクチン間のより緊縮性の低い保存は、この残基が明らかに炭水化物認識に関わってはいるものの、糖結合への直接的影響は残基K113よりは小さいであろう事を示している。興味深いことに、D100のアラニンへの突然変異はsLex結合への影響を示さず、これは、この領域内の正に荷電した残基のみがsLex認識に関わっているという推測に一致する。
【0174】
本明細書に開示されるデータはさらに、E−セレクチンのN末端が炭水化物結合に関与していることに対する強力な証拠を提供する。N末端の突然変異生成は最初、抗マウスL−セレクチン遮断Mab、Mel 14がこの糖蛋白のN末端にマッピングされるらしい事を証明する、かつてのデータにより示唆された。この研究に合致して、幾つかの抗E−セレクチン遮断モノクローナル抗体が、やはりこの糖蛋白のN末端にある残基を認識することが判明した。事実、本発明者等が分析した五つの遮断抗体のうち、四つ(BBA2、ENA1、8E4および7H5)がE−セレクチンのこの領域と結合することが直接示され、この事は炭水化物認識におけるこの部位の重要な役割と符合する。Aへの突然変異が炭水化物結合を増強させたこの領域の一つの残基(E8)の発見もまた、この部位がsLex認識に関わっている事と符合する。さらに、8位の突然変異によるsLexの認識の増強は、生物学的重要性を持っているかも知れない。先に指摘されたように、セレクチンは、白血球インテグリンにより仲介される、より強固な接着への前駆体として、比較的親和性の低い「ローリング」型接着を仲介しているように見える(ブッチャー、1991、上記;ローレンスおよびスプリンガー、1991、上記;レイ等、1991、上記;フォン・アンドリアン等、1991、上記)。EセレクチンのN末端領域が、この領域の荷電残基を取り込むことによって炭水化物認識の相対的親和性の低下を導いたということが考え得る。興味深いことに、他の二つのセレクチン(L−およびP−)はこの部位に正電荷(K)を含み、L−セレクチンにおけるこのKのAへの突然変異もまた同様にsLex認識を5ないし10倍増強するようである(実施例2を参照されたい)。即ち、この部位の電荷は炭水化物結合の親和性を低下させる役割を持ち、この事は、炭水化物がこの領域と密接に関連していることと符合する。
【0175】
ここに述べた残基はsLex認識と直接関わっているかも知れないが、間接的影響もまた、これら突然変異体の幾つかによる、結合の低下において役割を果たしているかも知れない。例えば、残基K99のアラニンへの突然変異はE−セレクチンによるsLex認識を部分的に低下させた。この残基は、sLex結合に大きく影響する、接近して向かい合っているR97AおよびK113A突然変異からは比較的遠く、この事は、K99A突然変異が間接的な機構によってsLex結合に影響していた可能性と符合する。K99からAへの突然変異が、R97がもはや炭水化物と安定な接触を形成しないようにこのループのコンホメーションを変化させるならば、それがこのような間接的影響の一つであろう。もう一つの間接的影響は、egf様およびレクチンドメイン間の相互作用を含み得る。前のデータは、L−およびE−セレクチン接着分子の両者において、egf様ドメインの除去が、レクチンドメインに対する抗体によるエピトープの認識の低下をもたらすことを明確に立証した(ボウエン等、1990、上記;ワルツ等、1990、上記)。これらの結果は、egfドメインの一つの役割が、恐らくはこれらモチーフのそれぞれにおける残基の間の密接な接触によって、レクチンドメイン構造の仲介をすることにあるという可能性と符合する。故に、ここに記載された突然変異の一つまたはそれ以上による結合の喪失は、レクチンおよびegf様ドメインの間の相互作用のレベルの低下に起因していたということが考えられる。しかしながら、他の蛋白における点突然変異体の結晶学的研究は、構造上の相違が高度に局在化することを示しているということを強調せねばならない(ジン等、1992、上記;ウェルズ、1991、上記およびこれらの引用文献)。さらに、レクチン特異的モノクローナル抗体による突然変異体R97AおよびK99Aへの結合の保持は、レクチンおよびegf様ドメインの間の相互作用の幾らかを阻害することにより予想され得るレクチンドメイン構造の大きな破壊と矛盾することに留意すべきである(ボウエン等、1990、上記:ワルツ等、1990、上記)。
【0176】
近年、ジェングおよび共同研究者は、P−セレクチンに対する好中球の結合を阻害することのできるmAbがこの分子の残基19−34にマッピングされる事、そして、この部分に対応するペプチドが、やはりP−セレクチンに対する好中球の結合を阻害することを示した(ジェング等、1991、上記)。本明細書に示されるE−セレクチンのモデルにおいて、残基19−34は、sLexが結合すると思われる部位の反対側にあるループを形成している。E−セレクチン中のこの配列内に作られた二つの突然変異体は、sLexまたはmAb結合に影響を及ぼさず(突然変異体K32A)、また誤折り畳み蛋白をももたらさなかった(突然変異体Y18A、Q20A、R22A)。したがって、このループの大量の突然変異分析は実施されていないが、本発明者等のデータは、E−セレクチンによる炭水化物認識におけるその直接的関与と符合しない。
【0177】
上記の突然変異に加えて、E−セレクチンレクチンドメインにおける別の置換、N82DがsLex認識に劇的に作用することが判明した。抗体捕捉および2’3sLex結合の研究の結果を図13に示す。この置換はmAbのいずれの結合にも影響しなかった(A)が、2’3sLexへのE−セレクチンの結合を完全に損なった(B)。82位のアスパラギンはそのOδ1分子を介してCa++キレート化に参加すると予想される。N82D置換におけるこのアスパラギンからのアミノ基の除去は、演繹的には、この相互作用を破壊するとは予想され得ない。しかしながら、N82D突然変異体はカルシウム親和性の低下によってリガンド結合を失ったということが可能であると考えられた。この可能性を試験するために、N82D突然変異体を、添加カルシウムの存在下で2’3sLex結合について試験した。図13(C)に見られるように、N82D突然変異体は、40mMの高カルシウム濃度においてもsLexと結合しなかった。故に、このE−セレクチン突然変異体による結合の喪失は、恐らく、レクチンドメインによるカルシウムキレート化の喪失に起因するのではないのであろう。むしろこれらの結果は、E−セレクチンによるリガンド認識における、E−セレクチンレクチンドメインの82位のアスパラギンの末端アミノ基の役割を示唆している。
【0178】
実施例2
実施例1のE−セレクチンに対する記載と本質上同様にして、マウスL−セレクチン−IgGキメラを製造した。製造者の指示に従ってミュータ−ジーン・ファージミド・インビトロ・ミュータゲネシス・キット(バイオラド)を使用し、クンケル等、1987、上記、の方法に従って、L−セレクチンのアミノ酸8位のリジン(K)をアラニン(A)に置換した。正しい突然変異体をDNA配列決定によって確認し、突然変異体キメラをヒト胚腎臓293細胞のトランスフェクションにより、一時的に発現および分泌させた(ワトソン等、1991、上記)。キメラの濃度を、ワトソン等、1991、上記、に記載のように抗−ヒトIgG1−Fc特異的マウスmAbを用いELISAによって定量した。本質的には実施例1に記載のようにして、シアリルルイスX結合検定を実施した。結果を図8に示す。
【0179】
実施例3
A.実験方法
P−セレクチンリガンドのためのフローサイトメトリー検定
【0180】
P−セレクチンとその細胞リガンドとの相互作用をフローサイトメトリー検定を用いて研究した。この検定に用いられた細胞は、HL60細胞(10%ハイクローンFBSを添加した高グルコースダルベッコMEM中に維持)または新鮮なヒト好中球であった。ヒト好中球は、フィコール−ハイパーク勾配により単核細胞を除去し、続いて3%硫酸デキストランで処理して赤血球を除去することにより、ヘパリン処理した末梢血から精製した。得られた細胞は>90%好中球であった。P−セレクチン−IgGで染色する前に、両方の型の細胞をダルベッコのPBS/1%牛血清アルブミン/0.1%アジ化ナトリウム/1%正常ウサギ血清(染色液)中で30−60分間氷上でプレインキュベートした。この最初のインキュベーションの後、P−セレクチン−IgG 1ugを106細胞の100ulアリコートに加え、氷上で30−60分間インキュベートした。次に細胞を染色液で洗浄し、染色液100ulに再懸濁し、ここにフィコエリトリン−コンジュゲートF(ab’)2ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)2ulを加えた。この細胞を氷上で15−30分間インキュベートし、染色液で2回洗浄し、染色液0.5mlに再懸濁した後、FACスキャンによるフローサイトメトリー分析(ベックマン−ディキンソン)に付した。染色がP−セレクチンとそのリガンドとの相互作用であったことを決定するため、この染色を10mM EGTAの存在下においても行なった。プロテアーゼの感受性およびこの相互作用に対するシアル酸の必要性を決定するため、D−PBSおよび1%BSAに入れたHL−60細胞を、トリプシンまたはアースロバクターもしくはクロストリジウムのシアリダーゼのいずれかと共に37℃でインキュベートし、この後染色液に再懸濁した。リガンドの発現における活性化の影響を決定するために、ヒト好中球を、染色液に再懸濁する前に10分間、50ng/mlの酢酸ミリスチン酸ホルボールと共に37℃でインキュベートした。様々な炭水化物が染色を阻害する能力を調べるために、P−セレクチンキメラの添加直前に試薬を細胞に加え、且つこれをこの細胞が第二段階抗体の添加前に洗浄されるまで存在させた。この検定の考え得る複雑化の要因は、ヒトIgGFcレセプター(FcgR、M.W.ファンガー、イミュノロジー・トゥデイ(Immunol.Today)、10巻92−99頁(1989))を有するセレクチン−IgGキメラを細胞の染色(HL60細胞および好中球)の染色に使用することにあった。この検定媒へのウサギIgG(正常なウサギ血清の形で)の添加は、殆どの場合においてこの結合を遮断した。しかしながら、ヒト好中球による幾つかの実験においては、この相互作用を完全に遮断するために、検定媒にヒトFcgRに対するマウスmAb(メダレックス・Inc.、ウェスト・レバノン、NH)を加えねばならなかった。
【0181】
抗セレクチンモノクローナル抗体
突然変異体キメラを特性決定するために、以下の抗ヒトP−セレクチンモノクローナル抗体を購入した:バイオデザイン・インターナショナル(ケネバンクポート、ME)からのmAb AK−6(CLB−トロンブ/6)およびCRC81、およびベクトン・ディキンソン(サンノゼ、CA)からのmAb AC1.2。抗E−セレクチンmAb 9A1、7E10、3B7、および9H9は実施例1に記載した。
【0182】
野生型および突然変異体キメラの組み立ておよび発現
P−セレクチン−IgGおよびE−セレクチン−IgGキメラの生成および特性決定は前に記載されている(D.アサ等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、117巻895−902頁(1992))。PE−1キメラは二段階で組み立てられた。第一に、P−セレクチンのシグナルペプチド、レクチンドメイン、およびEGFドメインの一部をコードしているEcoRI−XhoIフラグメントをpRK5/P−セレクチン−IgGプラスミドから除去した。pRK5は1989年3月15日公開のEP307247号に開示されている。このフラグメントを、EcoRIおよびBglIIで消化してE−セレクチンシグナルペプチドおよび殆どのE−セレクチンレクチンドメインを除去しておいたpRK5/E−セレクチン−IgGプラスミド中に挿入した。第二に、実施例1に記載のようにクンケルの方法(T.A.クンケル等、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymol.)、154巻367−382頁(1987))を用いるオリゴヌクレオチド指定除去突然変異生成によって、P−セレクチンレクチンドメインをE−セレクチンEGFドメインにフレーム内で結合させた。発現されたPE−1組み立て物は、P−セレクチン由来のシグナルペプチドおよびレクチンドメイン、次いでE−セレクチンのEGF、CR1およびCR2ドメイン、そしてP−セレクチン−IgGおよびE−セレクチン−IgG組み立て物の両者に共通するIgG1ヒンジ、CH2およびCH3ドメインから成っていた。
【0183】
アミノ酸置換を実施例1に記載のようにしてP−セレクチン−IgGキメラのレクチンドメインに導入した。野生型および突然変異体キメラを293細胞により発現および分泌させ、やはり実施例1に記載のようにして抗セレクチンmAb反応性について定量および試験した。突然変異体キメラは以下の命名法を用いて定義する:K113Aは113位のリジン(K)がアラニン(A)に変化している。
【0184】
シアリルルイスxおよびスルファチドに対するセレクチン−IgGキメラの結合
固定化sLex糖脂質またはスルファチドに対する異なるセレクチン−IgGキメラの結合のための検定を記載のように実施した(D.アサ等、上記)。簡潔に述べると、2’3sLex糖脂質、2’6sLex糖脂質、または牛脳スルファチド(シグマ、セントルイス、MO)を微量定量プレート上で乾燥し、蒸留水で洗浄し、次いでBSAで遮断した。ビオチニル化ヤギ抗ヒトIgG Fcおよびアルカリホスファターゼ−ストレプトアビジン(カルタグ、サウスサンフランシスコ、CA)を、等濃度の野生型または突然変異体キメラを含有する293細胞上清中にそれぞれ1:1000で希釈し、ウェルへの添加前に複合体を形成させた。次にこれらの上清をsLex糖脂質またはスルファチド被覆表面上でインキュベートし、次いで洗浄し、基質(p−ニトロフェニルホスファート)を添加し、そして405nmのO.D.を測定した。
【0185】
P−セレクチンレクチンドメインモデルの作成
E−セレクチンレクチンドメインモデル(B.K.ブランドレイ等、上記)について前に記載されたようにして、ラットマンノース結合蛋白(MBP)(K.ドリッカマー等、サイエンス(Science)、254巻1608−1615頁(1991))の結晶構造に基づいて、P−セレクチンレクチンドメインのモデルを作成した。簡潔に述べると、MBPの残基を、可能ならば側鎖のコンホメーションをMBPのそれと同様のままで、P−セレクチン配列に変化させた。そうでない場合、側鎖のコンホメーションは、回転異性体ライブラリー(J.W.ポンダーおよびF.M.リチャーズ、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、193巻775−791頁(1987))、パッキングおよび水素結合の考慮に基づいた。MBPに比べP−セレクチンにおける11の挿入および2個の除去のための可能なループ構造は、プロテイン・データ・バンク内の結晶構造の検索によって突き止めた(F.C.バーンスタイン等、ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)、112巻535−542頁(1977))。最後に、このP−セレクチンモデルを、E−セレクチンについて記載された方法を用いるエネルギー最小化の反復サイクルに付した(B.K.ブランドレイ等、上記)。
【0186】
結果
リガンドの結合を司るP−セレクチン内の残基を評価するための出発点として本発明者等は、HL60細胞および好中球を染色するP−セレクチン−IgGキメラを用いるフローサイトメトリー検定を開発した。E−セレクチン−IgGはこの検定でHL60細胞または好中球と結合しなかったのに対し、P−セレクチン−IgG染色は両細胞型に対して強い蛍光シフトをもたらした(図10、AおよびB)この結合はEGTAにより阻害されたが、この事は、P−セレクチンのリガンドとの相互作用にカルシウムが必要であることを反映している。さらなる対照は、P−セレクチン−IgGキメラを用いたこの検定が、P−セレクチン/リガンド結合の公表されている特性を反映していることを示した。特に、トリプシンまたはシアリダーゼのいずれかによるHL60細胞の処理は染色を損なった(図10C)。さらに、P−セレクチン−IgG染色は硫酸デキストランおよびマンノース−1−ホスファートにより阻害されたが、フコイジンまたはマンノース−6−ホスファートによっては阻害されなかった(図10C)。ヒト好中球をPMAで活性化した後、L−セレクチンの表面発現は低下しCD11/18の表面発現は増大したが、P−セレクチンリガンドの表面発現は変化しなかった(図10D)。好中球に加えて、単球およびNK/LGL細胞は、P−セレクチン−IgGで染色される時陽性であったが(データは示されていない)、これはこれらの細胞上でのP−セレクチンリガンドの発現と符合する。
【0187】
上記のように、E−セレクチン−IgGキメラは可溶性FACS検定においてHL60細胞または好中球と結合しなかった。本発明者等は、この高い親和性の結合の付与に必要なP−セレクチンの領域のマッピングに役立てるために、この発見を活用した。E−セレクチンについての本発明者らの研究は、そのリガンド結合部位をそのレクチンドメイン内の領域に限局していたため、本発明者等は、E−およびP−セレクチン結合における見かけの相違をそれらのレクチンドメインの相違に帰することができるか否かを決定しようとした。その結果として本発明者等は、E−セレクチンレクチンドメインをP−セレクチン由来のレクチンドメインに置き換えたE−セレクチン−IgGから成るキメラ(PE−1)を組み立てた。このキメラが正しく折り畳まれているかを見るため、本発明者等はE−およびP−セレクチンの様々なドメインに特異的な抗体に対するその結合を試験した。このPE−1キメラはE−セレクチンのCR1およびCR2ドメインに対する抗体とは良好に反応した(mAb 9A1および7E10、第I表)が、E−セレクチンのレクチンドメインに対する抗体とは良好に反応しなかった(mAb 3B7および9H9、第I表)。PE−1はP−セレクチンに対する遮断抗体と結合し(L.G.ドゥ・ブルイジュニ−アドミラール等、ブラッド(Blood)、80巻134−142頁(1992))(AK−6、第I表)、この事は、P−セレクチンのレクチンドメインに対するこのmAbにより認識されるエピトープの位置と符合する。対照的に、P−セレクチンに対する非遮断抗体、AC1.2およびCRC81はPE−1を認識しなかった(第I表)。この後者の結果は、AC1.2結合におけるP−セレクチンのEGFおよび/またはCRドメイン内の残基の寄与を示した先の研究と一致する(M.A.ジュティーラ等、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン(J.Exp.Med.)、175巻1565−1573頁(1992))。これらの結果は、PE−1キメラが正しく折り畳まれている事に符合し、そして遮断mAb AK−6により認識されるエピトープの少なくとも一部がP−セレクチンのレクチンドメインにある事を示すものである。
【0188】
E−セレクチン−IgG上へのP−セレクチンレクチンドメインの移動が炭水化物特異性を移動させたのか否かを決定するために、本発明者等は、様々な固定化糖脂質に対するPE−1の結合を調べた。この結合は、P−セレクチン−IgGまたはE−セレクチン−IgGのいずれかによるものと比較した。図11に示されるように、PE−1キメラは、試験された三つの糖脂質:2’3sLex(図11A)、2’6sLex(図11B)およびスルファチド(図11C)全てに結合するという点でP−セレクチン−IgGに極めて類似しているように見えた。故に、P−セレクチンのレクチンドメインは、これら精製された糖脂質に対する結合における特異性を移動させるに充分であるようである。
【0189】
次いで本発明者等は、さらにP−セレクチンレクチンドメインがHL60細胞上でP−セレクチンリガンドに対する高親和性結合を付与し得るか否かを見るために、PE−1キメラを細胞染色について試験した。図12に見られるように、PE−1キメラはHL60細胞と結合した。しかしながら、PE−1染色において見られた蛍光のシフトは、P−セレクチン−IgGにおいて見られた程大きくなかった(図12)。故に、P−セレクチンのレクチンドメインが明らかにHL60細胞の染色を付与したように見えるものの、P−セレクチンのEGFおよび/またはCR1ドメインの幾らかの寄与が、これらの細胞との完全な、高い親和性の結合に必要であるのかも知れない。同様の結果が、好中球をこれら三つのキメラで染色した場合に見られた(データは示されていない)。
【0190】
PE−1キメラを使用する上の結果は、P−セレクチンのレクチンドメインが、固定化糖脂質および細胞へのE−およびP−セレクチンの結合における相違の原因である要素を含んでいることを示した。故に、本発明者等は、P−セレクチンとそのリガンドとの相互作用の原因である残基をさらに位置決定するために、P−セレクチンレクチンドメインの突然変異生成を実施した。P−セレクチン突然変異生成は、本発明者等の前の研究でリガンドへのE−セレクチンの結合にとって重要であることがわかっている部位に集中させた。二つの理由のためにこの方法を採った。第一に、上に述べたように、E−およびP−セレクチンによる糖の認識における類似性を示す豊富な証拠が存在する。したがって、E−セレクチン仲介接着にとって重要な部位はP−セレクチン仲介結合にも参加するであろうと考えるのが妥当である。第二の理由は実験の考察から導かれた。E−セレクチンの研究において本発明者等はレクチンドメイン構造に及ぼす点突然変異の影響のための構造的対照としての役割を有する全抗体を作成することができた。これにより、E−セレクチンレクチンドメインの折り畳みに大きく影響するアミノ酸置換を考慮から除外することができた。この研究において、抗P−セレクチンmAbはわずか三つ(AK−6、AC1.2、CRC81)に限定され、うち一つだけ(AK−6)がレクチンドメイン内の決定基との結合を明瞭に示した(上記参照)。特異的側鎖の置換ではなく大きなコンホメーション効果のためにリガンドを結合させない突然変異体の生成および分析を回避するために、本発明者等は、E−セレクチン分析において正しく折り畳まれた蛋白をもたらした突然変異のみにこの分析を限定した(実施例1)。
【0191】
P−セレクチン突然変異生成の出発点として本発明者等は、E−セレクチンモデルが作成されたのと同じ方法でP−セレクチンレクチンドメインの三次元モデルを作成した。二つのモデルの比較は、2’3sLexへのE−セレクチンの結合にとって最も重要であると思われる残基のうち、3個:Y48、K111およびK113がP−セレクチンにおいて保存されていることを明らかにした。E−セレクチンにおいて、置換Y48F、K111AおよびK113AがそれぞれsLex結合を著しく低下させた。RからAへの84位の突然変異はE−セレクチンによるsLex結合に影響せず、EからAへの8位の突然変異はE−セレクチンによるsLex結合を増強した。図14は、抗P−セレクチンmAbの結合に及ぼすP−セレクチンのこれらの位置での相補的置換の影響を示している。これらの置換のいずれも非遮断抗体(AC1.2およびCRC81)による捕捉に有意な影響を及ぼさなかったのに対し、置換K8A、K111AおよびK113Aの各々は、遮断抗体AK−6の結合を部分的に低下させた(図14)。これらの結果は、P−セレクチンのレクチンドメインにAK−6エピトープの一部を位置せしめたPE−1キメラの上記結果に一致する。これらの結果は、P−セレクチンレクチンドメインの同じ面に沿ってこれら三つの位置が比較的接近して並んでいるという事とも符合する。さらに、E−セレクチンにおける相補的置換K8AおよびK113Aは、E−セレクチンに対する幾つかの遮断mAbの結合を完全に損なった。また、E−セレクチンと同様に、P−セレクチンにおいて48および84位の残基の突然変異はmAb結合に影響を及ぼさなかった(図14)。
【0192】
次に本発明者等は、これらのP−セレクチン突然変異体を固定化糖脂質および細胞への結合について評価した(図15)。2’3sLex糖脂質へのこの一連の突然変異体の結合の測定は、P−セレクチンはこの炭水化物を結合させる際にE−セレクチンと同じ残基の幾つかを使用しているらしいということを示した(図15A)。置換K8AおよびK84Aを有するP−セレクチン突然変異体が2’3sLexを尚結合させるのに対し、突然変異体Y48FおよびK113Aは完全に陰性であった。E−セレクチンにおいて突然変異体K111Aは2’3sLexを全く結合させなかった。しかしながらここで、P−セレクチン突然変異体K111Aは2’3sLexへの部分的結合を仲介し、これは恐らくE−およびP−セレクチンによるこの糖の認識の微妙な相違を示すものであろう。sLexの2’6型に対する結合のためには、異なった残基の組が重要であるように見えた(図15B)。置換K8A、K111AおよびK113Aは結合を破壊し、一方Y48Fは影響が無かった。突然変異体K84Aもまた、尚2’6sLexを結合させた(図15B)。スルファチド結合を評価した際、第三のパターンが現われた(図15C)。突然変異K113AのみがP−セレクチンによるスルファチド結合を有意に低下させた。これらの結果は、P−セレクチンの同じ面が、各々の糖の結合に用いられる残基に微妙な相違を有しながら、これら三つの糖脂質の結合に参加しているように見えることを示している。
【0193】
リガンドとP−セレクチンとの相互作用を測定するためのより適切な検定は細胞結合検定であることから、この突然変異体の群をHL60細胞の染色に対するフローサイトメトリーによって評価した(図15D)。興味深いことに、細胞について見られる結合パターンは固定化糖脂質2’3sLexについて観察されたものと酷似している。K8AおよびK84Aは共にHL60細胞に結合し、Y48FおよびK113Aは結合せず、そしてK111Aは部分的にだけHL60細胞に結合した。好中球を染色した場合に同様の反応性が見られた(データは示されていない)。したがってP−セレクチンのこの窪み内の残基の突然変異は、細胞上の同種のリガンドとの結合にも影響した。さらに、精製された糖脂質とこの突然変異体群との反応性の比較は、P−セレクチンによって見られる、炭水化物の性質への或る可能性ある洞察を提供した(考察を参照されたい)。
【0194】
E−セレクチンにおいて、97位のアルギニンもまた糖の認識にとって重要であった。アラニンへのこの残基の突然変異はE−セレクチン/2’3sLex結合を完全に損なった(実施例1)。P−セレクチンの97位の残基はセリンであり、上の結果はP−セレクチンがリガンドとの結合にE−セレクチンと同じ領域を使用しているらしいことを示した。故に本発明者等は、この、97位における残基の相違がE−およびP−セレクチンによるリガンド結合の相違を説明し得るか否かを試験した。E−およびP−セレクチンレクチンドメインの三次元モデルの調査は、アミノ酸97は、マンノース結合蛋白と比較した場合セレクチンへの挿入である残基94−100により形成されるループの中にある事を明らかにした。これら二つのセレクチンの配列は、このつながり − E−セレクチンのTIKREKDVに対しP−セレクチンのYIKSPSAP − によってかなり異なっており、したがってこれらのループは異なったコンホメーションを有すると予想されるであろう。セレクチンへの特異性の付与という面での97位の残基の重要性を試験するために、本発明者等は94−100ループをE−セレクチン由来の対応残基で置き換えたP−セレクチン−IgG突然変異体:S97R、P98E、S99K、A100D、P101Vを作成した。次に本発明者等は、この突然変異体(REKDVと略記)を、抗体、糖脂質および細胞との結合について試験した。三つの抗P−セレクチンmAb(AK−6、AC1.2およびCRC81)の各々に対するP−セレクチン−IgG REKDV突然変異体の結合は、対照P−セレクチン−IgG結合のおよそ70%であった。この事は、この突然変異体の折り畳みはほぼ正しいが、幾らかの微妙な構造の乱れが存在し得ることを示しているように思われる。したがって、この突然変異体は精製された糖脂質のいずれとも結合しなかった(データは示されていない)。しかしながら、対照のP−セレクチン−IgGで見られる結合よりは有意に低いものの、REKDV突然変異体はHL60細胞と確かに結合した(70%の細胞が陽性(REKDV突然変異体に対するMFI290)対97%の細胞が陽性(対照P−セレクチン−IgGに対するMFI416))。このように、E−セレクチンからP−セレクチンへのこのループ(残基97を含む)の移動は、得られるP−セレクチン突然変異体がその細胞リガンドを認識する能力を完全には破壊しなかった。これらの結果は、E−およびP−セレクチンの間の結合の相違のうち少なくとも幾らかが、この領域外の相違に起因しているに違いないということを意味していると思われる(考察を参照されたい)。
【0195】
考察
セレクチン−炭水化物相互作用についての研究は、各接着分子により見られる糖構造の詳細な理解の欠如によって、妨げられ続けている。しかしながら、直接結合の研究、可溶性炭水化物阻害の研究、および可能性ある精製リガンドの構造およびコンホメーション分析を包含する幾つかの試みからの結果は、セレクチンの認識における共通点を示している。これらの発見の多くはsLex核の構造の周りに集中している。しかしながらこれらの提起された類似性の多くは、実験的に操作された環境の下での強制された結合の所産であるのかも知れない(考察についてはA.ヴァーキ、Cur.Opin.Cell Biol.、4巻257−266頁(1992)を参照されたい)。固相炭水化物リガンドおよびトランスフェクトされた、過剰発現されたセレクチンを用いるインビトロ検定は、レセプターおよびリガンド両者の密度が不自然に高いことから、誤解を導き得る(A.ヴァーキ、上記)。さらに、関連の無い糖が、構造的類似性の故に、このレクチン相互作用を阻害することがある(A.ヴァーキ、上記)。P−セレクチンとその細胞リガンドとの相互作用を測定するための本明細書において使用されるフローサイトメトリー検定は、感受性且つ簡便でありつつこれらの制限の殆どを退けるべきである。本明細書に記載される実験は、細胞を染色するためのP−セレクチン−IgGキメラを用いて観察される、測定された結合が、この相互作用を正確に表わすことを示すものである。現在までの研究は、P−セレクチンが、単一の、恐らくは特異な、120Kdの主要な糖蛋白を結合させることを示している(R.D.カミングズ等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、118巻445−456頁(1992))。同じ糖蛋白が好中球およびHL60細胞の両者から単離されており(R.D.カミングズ等、上記)、P−セレクチンのためのこのような結合部位の数は細胞当り10000−20000であると見積もられている(R.P.マクエヴァー等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、112巻491−499頁(1991)、R.D.カミングズ等、上記、M.C.バーント、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、266巻5371−5374頁(1991))。sLexは恐らくこの糖蛋白リガンドの何らかの構成成分を形成し、且つsLexは幾らかのP−セレクチン結合を付与するに充分なのであろう。しかしながらsLexは、P−セレクチン接着の、飽和され得る、親和性の高い結合性を付与するには充分でない(R.P.マクエヴァー等、上記)。故にP−セレクチンリガンドは、sLexに加えて特異性および親和性を付与する構造的特徴を持っていなければならない(R.D.カミングズ等、上記;R.D.カミングズ、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオロジー(J.Cell.Biol.)、115巻557−564頁(1991))。
【0196】
P−セレクチンリガンドの蛋白部分は、(a)糖を正しい立体配置で提示し、(b)結合活性を増強する、多価の糖を提示し、そして(c)P−セレクチンとの蛋白/蛋白接触に参加する、ことによって、この特異性および親和性に寄与し得る(R.D.カミングズ等、上記)。事実、GlyCAM1リガンドによる多価リガンドのL−セレクチンへの提示の役割が、既に提起されている(D.ドウベンコ等、セル、69巻927−938頁(1992))。本明細書に記載される検定において、P−セレクチン−IgG結合は、細胞のプロテアーゼ処理によって無くなり、これはこの糖蛋白の必要性と一致する(T.J.アハーン等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、267巻11104−11110頁(1992))。上に述べたように、シアル酸はP−セレクチンの結合にとって決定的であり、シアリダーゼ処理もまた結合を破壊した。最も重要なことには、EGTAによるカルシウムキレート化の除去もやはり、結合の喪失、全てのC型レクチンにより遂行される生物学上関連する相互作用の特徴である結果を導いた(K.ドリッカマー等、上記)。驚くべき発見は、E−セレクチン−IgGキメラがこの流体相染色検定においてはHL60細胞または好中球に結合しないという事であった。これは、E−セレクチン炭水化物リガンド、sLexがこれらの細胞により明らかに発現されるという事実にも拘らずである(F.C.A.ゲータ、サイエンス(Science)、250巻1130−1132頁(1990);A.アルフォ、サイエンス(Science)、250巻1132−1135頁(1990))。さらに、本発明者および他の者(J.アルフォード等、ジャーナル・オブ・リューコサイト・バイオロジー(J.Leuk.Biol.)、52巻85−88頁(1992))は、E−セレクチン−IgGはこのキメラが固体基質上に提示される時にはHL60細胞および好中球と結合でき、この事は、流体相における結合の低下が同種の細胞表面リガンドに対するE−セレクチンのより低い親和性に起因しているのかも知れない事を示唆しているという事を発見した。このように、E−セレクチンおよびP−セレクチンは、可溶性Igキメラとしても、またこれらが内皮/血小板細胞表面上に発現される場合においても、細胞への結合において明らかに異なっている。
【0197】
E−およびP−セレクチンの間のこの相違の少なくとも一部分は、これらのレクチンドメインの相違に起因するに違いない。E−セレクチン−IgG組み立て物上へのP−セレクチンレクチンドメインの移動は、P−セレクチン−IgGより低い強度ではあったが、細胞を染色する分子(PE−1)を生成した。炭水化物反応性は、関連するレクチンドメインと共に完全に移動した。即ち、PE−1は、P−セレクチン−IgGとは識別できず、E−セレクチン−IgGとはかなり異なった様式で、精製された糖脂質と反応した。故に、各々のセレクチンのレクチンドメインはこれらの比較的小さな糖との反応性における違いを決定するに充分であるように見える。この結果はカンサス等(G.S.カンサス等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol)、114巻351−358頁(1991))による研究と一致するが、この研究では、L−およびP−セレクチンのドメインを交換し、L−セレクチン特異的炭水化物リガンドと遮断mAb LAM1−3により規定されるエピトープの両者を結合させるフコイジンおよびPPMEが、少なくとも一部分は、L−セレクチンレクチンドメインのC末端67アミノ酸残基にマッピングされることが示された。これらの著者はさらに、CRドメインがPPMEまたはフコイジン特異性の付与にとって重要でないことを証明した(G.S.カンサス等、上記)。セレクチンのEGFおよびCRドメインはこれらのレセプターにとって重要な構造上の役割を果たしている事が明らかに示されている(B.ボウエン等、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオロジー(J.Cell.Biol.)、107巻1853−1862頁(1990);M.A.ジュティーラ等、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン(J.Exp.Med.)、175巻1565−1573頁(1992);A.アルフォ等、サイエンス(Science)、250巻1132−1135頁(1990);C.フェニー等、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオロジー(J.Cell.Biol.)、115巻235−243頁(1991))。P−セレクチン中のこれらのドメインがさらにその糖蛋白リガンドと重要な接触を行なうことに参加しているかどうかは、ここで答えることはできない。しかしながら、確かにこの研究の結果は、何らかのそのような接触の性質に限定を加えるものである。第一に、本発明において使用されるP−セレクチン−IgGキメラはP−セレクチンのレクチン、EGFおよびCR1ドメインのみを含んでいる(S.ドウベンコ等、上記)。よってCR2−CR9はP−セレクチンおよびそのリガンドの間の高親和性結合にとって必要な接触を形成するはずがなく、また、マウスP−セレクチンがCR2ドメインを欠くということに留意するのは興味深い(S.アイゼンマン等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、267巻15176−15183頁(1992)。さらに、PE−1キメラは細胞に結合したのであるから、何らかの存在し得る蛋白/蛋白接触部位がP−セレクチンのレクチンドメインにマッピングされ得る。PE−1およびP−セレクチン−IgGの間の染色の相違は、共通するレクチンドメインと相互作用するP−またはE−セレクチンEGFドメインの微妙なコンホメーション効果を反映しているかも知れない。しかしながら、EGFまたはCR1ドメインにより仲介される蛋白/蛋白接触が除外できないということを強調することが重要である。
【0198】
最近の二つの研究は、細胞接着にとって重要であり得るP−セレクチンレクチンドメインの領域を同定した。ジェングおよび共同研究者は、P−セレクチンに対する好中球の結合を阻害することのできるmAbはこの分子の残基19−34にマッピングされる事、そしてこの部分に対応するペプチドもまたP−セレクチンへの好中球の結合を阻害することを示した(J.G.ジェング等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、266巻22313−22318頁(1991))。このグループは、P−セレクチン仲介接着を遮断する、P−セレクチンのレクチンドメイン由来の別のペプチド(残基23−30、54−63および70−79に対応する)を記載した(J.G.ジェング等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、「レクチン−ドメイン・ペプタイズ・フロム・セレクティンズ・インタラクト・ウィズ・ボウス・セル・サーフィス・リガンズ・アンド・Ca2+・イオンズ」(印刷中)(1991))。P−セレクチンのモデルにおいて、これらの残基は、本発明者等がセレクチン−炭水化物結合および細胞接着にとって重要であると同定したレクチンドメインの部位の反対側にある(実施例1を参照されたい)。ジェングおよび共同研究者により特性決定された残基は、P−セレクチンのリガンドの炭水化物および/または蛋白構成成分を結合させ得るP−セレクチンの第二の部位を表わすのかも知れない。この観点から、REKDV突然変異体に関する結果が、E−およびP−セレクチンの間の特異性の相違が全てこの研究において同定された領域により説明できる訳ではないという事を示した事を思い起こすことは重要である。故に、P−セレクチン結合特異性の付与におけるこの部位とジェング等により記載された部位との可能性ある共同は、探求に値する。
【0199】
ここに示された結果は、2’3sLexに対するE−セレクチン結合にとって重要であるとかつて同定された部位は、このリガンドに対するP−セレクチン結合にとってもやはり重要である事を立証している。この部位の内部で保存されている残基のうち2個、Y48およびK113における突然変異は、E−およびP−セレクチン両者による2’3sLex結合および細胞接着を完全に損なった。抗P−セレクチン遮断mAb AK−6はこの同じ部位にマッピングされ、全ての抗E−セレクチン遮断mAbもまたそうであった。さらに、Mel−14、インビトロおよびインビボでL−セレクチン仲介接着を遮断するmAbはこの領域にマッピングされる(B.ボウエン等、上記。三つのセレクチン全てに対する接着遮断mAbがこの部位内部の残基に結合するという事実は、これらの蛋白の接着機能に対するその重要性を強調するものである。
【0200】
2’3sLex、2’6sLexおよびスルファチドに対する一連のP−セレクチン突然変異体の結合を、それらが細胞を結合させる能力と比較することによって、P−セレクチンリガンドの炭水化物成分の性質についての幾らかの洞察を得ることができる。上に記したように、一つの研究は、E−およびP−セレクチンは、関連する、しかし異なった炭水化物特異性を有することを示した(T.J.アハーン、上記)。例えば、これらの著者は、P−セレクチンリガンドのsLex成分とE−セレクチンとの相互作用はP−セレクチン結合を排除することを見いだした(T.J.アハーン、上記)。P−セレクチン結合を遮断する2’6シアリル特異的レクチンを使用して、彼等はさらに、P−セレクチンリガンドが、2’3sLexを含む一本の腕と、末端のシアリル−2’6βGalを含むもう一本の腕とを有する二座配位炭水化物構造を含み得る事を提唱した(A.デル等、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、259巻10925−10935頁(1984);T.J.アハーン、上記)。しかしながら、P−セレクチン突然変異体に関する本発明者等の結果は、細胞接着における2’6結合したシアル酸の役割に異議を呈するように思われる。突然変異体K8AはsLexの2’6型に全く結合しなかったが、細胞上のP−セレクチンリガンドには結合した。さらに、Y48F突然変異体は細胞には全く結合しなかったが、2’6sLexには結合した。したがって2’6sLex結合はリガンド結合には関わっていなかった。しかしながら、本明細書中使用された固相検定における2’6sLexへの結合は、2’3sLexおよびスルファチド結合と比較して弱く、これらの結果の解釈には注意を要する。したがって、P−セレクチンに対する2’6シアリル化炭水化物の提示は、本発明者等の固相検定では再現されないリガンド認識の重要なパラメータを提供するという事が考えられる(D.ドウベンコ等、上記)。
【0201】
その生物学的関連性が最近疑われてきているP−セレクチンの第二の結合活性は、スルファチドとの相互作用である。P−セレクチンによるスルファチド結合は、この相互作用がカルシウム依存性でない事、これはプロテアーゼにより除去されない事、そしてスルファチドを発現する細胞(赤血球および血小板)は必ずしもP−セレクチンを結合する訳ではない事、という観察によると、恐らくインビボでは関わっていないであろう(R.D.カミングズ等、ジャーナル・オブ・セルラー・バイオロジー(J.Cell.Biol.)、118巻445−456頁(1992))。さらに、ここで研究されたP−セレクチン突然変異体によるスルファチド結合は細胞の結合に相関しなかった。例えば、突然変異体Y48Fはスルファチドを良く結合させるが、細胞には全く接着しなかった。細胞の結合は2’3sLexとの結合にのみ相関していた。2’3sLexを結合させる各々の突然変異体は細胞を結合させた(K8AおよびK84A)が、2’3sLexを結合させない突然変異体(Y48FおよびK113A)は細胞と結合せず、そして一つの突然変異体(K111A)は2’3sLexおよび細胞の両者に部分的結合を示した。これは、近年の研究が、2’3sLexの発現が、活性化された血小板をP−セレクチンを介して結合させる細胞の能力と相関していることを証明する(ドゥ・ブリュイジュヌ−アドミラール等、上記)とすると興味深く、そしてこれはポリー等のmABおよび炭水化物遮断研究と符合している(S.ハコモリ等、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・USA(Proc.Natl.Acad.sci.USA)、88巻6224−6228頁(1991))。
【0202】
P−セレクチンとそのリガンドとの相互作用における2’6結合シアル酸またはスルファチドの関与を排除することはできないが、本明細書に示されたデータは、それらの果たしているかも知れないこの役割(もし有るとすれば)に対し明確に異議を呈する。E−およびP−セレクチンの間の結合の特異性は、2’3sLexが提示される様式から誘導することができる(即ち糖脂質対糖蛋白)。しかしながら、2’3sLexはいずれかのセレクチンにより認識される天然に存在する炭水化物リガンドではないかも知れない事、そしてセレクチン結合におけるこれらの相違はサッカライド自身の微妙な変化により説明し得るという事を容認しなければならない(A.ヴァーキ、上記)。スルファチド、ならびに硫酸化グリカンヘパリン、フコイジン、および硫酸デキストランは、リガンドに類似していることによりP−セレクチンの機能を阻害することができる(R.D.カミングズ等、ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)、118巻445−456頁(1992))。sLex、硫酸化グリカン、およびスルファチドは全て、P−セレクチンとそのリガンドとの相互作用に役割を果たし得る負の電荷を有しており(ドゥ・ブリュイジュヌ−アドミラール等、上記;実施例1)、これらの糖類は、P−セレクチン/リガンド相互作用にとって重要な共通部位(例えばK113)に結合することにより、セレクチン仲介接着を阻害することができる。
【0203】
実施例4
ヒトE−セレクチンの全細胞外部分(アミノ酸1Mないし532S)をコードしているcDNA配列を、グリコシルホスファチジルイノシトール結合(GPI)を介する細胞表面結合のためのシグナル配列を含むCD16のカルボキシ末端37アミノ酸と融合させた。この融合組み立て物をプラスミドベクターpEF−Bos中にクローニングし[ミズシマおよびナガタ、ヌクレイック・アシズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、18巻5322頁(1990)]、GPI結合させたE−セレクチンをヒトEF−1α染色体プロモーターの調節下で発現させた。標準的オリゴヌクレオチド指定突然変異生成技術を使用し実施例1に記載のようにして、このcDNA組み立て物中に点突然変異を導入した。COS−7細胞における一過性発現を使用して、構造/機能に及ぼす各々のE−セレクチン突然変異体の影響を追求した。
【0204】
突然変異体E−セレクチンの機能を、実施例3に記載のようにヒト好中球を用いた接着検定を実施することにより決定した。以下の突然変異が、一連のMabによるそれらの認識を変えることなく好中球結合を損なうことがわかった:Y48F、Y94F、R97A、K111a、およびK113A E−セレクチン。105位における突然変異(N105D)は、レクチンegfドメインに特異的なモノクローナル抗体の結合の著名な低下を示し、この事は著しい構造の乱れを示唆した。さらに、E8A、およびR84、K86Aは、好中球の結合能の増強を示した。これらの結果は、実施例1に開示されたsLex結合検定により得られた結果と一致する。
【0205】
上記の内容は特定の好ましい態様を示すものであるが、本発明はこれらに限定されないことが理解されるであろう。本発明の全体的概念から逸脱することなく、開示された態様に様々な修飾が施され得るということが当業者には考えられるであろう。このような修飾は全て本発明の範囲内にあることが意図されている。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】抗E−セレクチンモノクローナル抗体の特性を示す図である。
【図2】E−セレクチン組み立て物を示す図である。
【図3】HuRa−1キメラへの遮断抗体の結合を示す図である。
【図4】遮断抗体の存在下でのHL60のHuRa−1への結合を示す図である。
【図5A】抗E−セレクチンMabの突然変異体キメラとの反応性を示す図である。
【図5B】抗E−セレクチンMabの突然変異体キメラとの反応性を示す図である。
【図5C】抗E−セレクチンMabの突然変異体キメラとの反応性を示す図である。
【図5D】抗E−セレクチンMabの突然変異体キメラとの反応性を示す図である。
【図5E】抗E−セレクチンMabの突然変異体キメラとの反応性を示す図である。
【図6】固定化sLex糖脂質に対するアラニンスキャン突然変異体の結合を示す図である。
【図7】E−セレクチンのレクチンドメインのモデルを示す図である。
【図8】固定化sLexに対するL−セレクチン−IgG突然変異体K8Aの結合を示す図である。
【図9】cDNAクローニングにより決定されたセレクチン(LEC−CAM)ファミリー成員の構造を示す図である。
【図10A】セレクチン−IgGキメラによるHL−60細胞および好中球の染色を示す図である。
【図10B】セレクチン−IgGキメラによるHL−60細胞および好中球の染色を示す図である。
【図10C】セレクチン−IgGキメラによるHL−60細胞および好中球の染色を示す図である。
【図10D】セレクチン−IgGキメラによるHL−60細胞および好中球の染色を示す図である。
【図11】固定化sLex糖脂質およびスルファチドに対するPE−1キメラの結合を示す図である。
【図12】PE−1キメラによるHL60細胞の染色を示す図である。
【図13】抗体捕捉およびN82D E−セレクチンの2’3sLex結合を示す図である。
【図14】突然変異体キメラとの抗P−セレクチンmAbの反応性を示す図である。
【図15】固定化糖脂質および細胞へのP−セレクチン−IgG突然変異体の結合を示す図である。
Claims (25)
- ヒトE−、L−またはP−セレクチン変異体であって、対応する天然ヒトE−、L−またはP−セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸残基番号7〜9、97、111および113からなる群から選ばれる部位(1個または複数)に置換されたアミノ酸を有する、その他は対応する天然ヒトセレクチンの配列を保持している、天然セレクチン分子以外のセレクチン変異体。
- ヒトE−またはL−セレクチン変異体であり、対応する天然ヒトE−またはL−セレクチンのレクチンドメインのアミノ酸残基番号8の荷電アミノ酸が非荷電のアミノ酸で置換されている請求項1に記載の変異体。
- 置換されたアミノ酸が、アラニン、バリン、セリン、またはスレオニンである請求項2に記載の変異体。
- 置換されたアミノ酸がアラニンである請求項3に記載の変異体。
- E8A E−セレクチンまたはE8A L−セレクチンである請求項4に記載の変異体。
- 対応する天然ヒトセレクチンのレクチンドメインのアミノ酸位111および113の少なくとも1個が正に荷電したアミノ酸である請求項1に記載の変異体。
- アミノ酸位111および113の両方に正に荷電したアミノ酸を有する請求項6に記載の変異体。
- 該正に荷電したアミノ酸がリジンまたはアルギニンである請求項7に記載の変異体。
- 対応する天然ヒトセレクチンのレクチンドメインのアミノ酸位111および113に天然アミノ酸を保持している請求項8に記載の変異体。
- E−またはL−セレクチン変異体であり、対応する天然ヒトセレクチンのレクチンドメインのアミノ酸位97、111および113にそれぞれ正に荷電したアミノ酸を有する請求項7に記載の変異体。
- 対応する天然ヒトセレクチンのレクチンドメインのアミノ酸位97、111および113に天然アミノ酸を保持している請求項10に記載の変異体。
- 対応する天然ヒトセレクチンのレクチンドメインのアミノ酸位111および113の少なくとも1個が非荷電のアミノ酸で置換されている請求項1に記載の変異体。
- 該非荷電のアミノ酸がアラニンである請求項12記載の変異体。
- 請求項1に記載の変異体をコードする単離されたDNA分子。
- 請求項2に記載の変異体をコードする請求項14に記載のDNA分子。
- 請求項5に記載の変異体をコードする請求項14に記載のDNA分子。
- 請求項16に記載のDNA分子を含む、形質転換宿主細胞中でそれを発現することができる複製可能な発現ベクター。
- 請求項17に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
- 真核生物のものである請求項18に記載の宿主細胞。
- 哺乳動物のものである請求項18に記載の宿主細胞。
- 請求項14に記載のDNA分子を含む、形質転換宿主細胞中でそれを発現することができる複製可能な発現ベクター。
- 請求項12に記載の変異体をコードする請求項14に記載のDNA分子。
- 請求項22に記載のDNA分子を含む、形質転換宿主細胞中でそれを発現することができる複製可能な発現ベクター。
- 請求項23に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
- 請求項13に記載の変異体をコードする請求項14に記載のDNA分子。
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