JPH0839793A - 布帛類および紙葉類にプリント可能なインクジェットプリンタとプリントシステム、該システムに用いられるインクおよび該システムを用いて製造された物品の製造方法 - Google Patents

布帛類および紙葉類にプリント可能なインクジェットプリンタとプリントシステム、該システムに用いられるインクおよび該システムを用いて製造された物品の製造方法

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JPH0839793A
JPH0839793A JP6179205A JP17920594A JPH0839793A JP H0839793 A JPH0839793 A JP H0839793A JP 6179205 A JP6179205 A JP 6179205A JP 17920594 A JP17920594 A JP 17920594A JP H0839793 A JPH0839793 A JP H0839793A
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美由紀 藤田
Hiromitsu Hirabayashi
弘光 平林
Nobuyuki Kuwabara
伸行 桑原
Yuji Akiyama
勇治 秋山
Shoji Koike
祥司 小池
Masahiro Haruta
昌宏 春田
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J3/00Typewriters or selective printing or marking mechanisms characterised by the purpose for which they are constructed
    • B41J3/407Typewriters or selective printing or marking mechanisms characterised by the purpose for which they are constructed for marking on special material
    • B41J3/4078Printing on textile
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2002/14362Assembling elements of heads

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Textile Engineering (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Coloring (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 パーソナルユースのインクジェットプリンタ
において、布帛に対して高精彩のプリント(捺染)を可
能とする。 【構成】 一種類以上の布帛用プリントモード、および
その布帛用プリントモードを適宜選択できるよう構成す
るとともに、他のプリント媒体用のプリント条件と、そ
の条件の少なくとも一つを異ならせるようにする。ま
た、布帛用プリントモードによるインク打込み率や打込
み方法を各種設定できるよう構成することで、通常のイ
ンクジェットプリンタによりパーソナルユースで高精彩
な捺染を可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、普通紙またはOHP用
紙(インク受容層を備えた透光性シート)に、基準印字
条件でプリントを行うインクジェットプリント装置およ
び該装置を用いるプリント方法、またはこれによって得
られるインクジェットプリント物の製造方法に関し、特
に、普通紙および布帛にインク記録可能なプリンタとプ
リントシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】複写装置や、ワードプロセッサ、コンピ
ュータ等の情報処理機器、さらには通信機器の普及に伴
い、それらの機器の画像形成(記録)装置の一つとし
て、インクジェット方式による画像形成装置が普及して
きている。この方式の装置は、記録ヘッドを用いて記録
媒体の基準として普通紙にデジタルインク記録を行い、
普通紙の黒インク量を基準にすると、インク受容層を備
えた透光性シートに対しては、普通紙の黒インク量を2
倍にするOHPプリントモードを備えた装置が主流であ
る。
【0003】他方、近年インクジェット技術を用いた布
帛への捺染専用のインクジェット装置が実用化され、捺
染専用のインクジェット記録ヘッドを採用して、高精彩
なプリント生地を生産するようになってきている。この
種のインクジェット装置は、いずれも工業的な捺染装置
であり、ユーザーが手軽に思いのままのプリントを高精
彩に行うような装置ではない。例えば、その応用が工業
的な捺染分野に限定されているインクジェット捺染方法
に関する特開昭61−55277号公報では、染料に対
して実質的に非染着性である化合物を布帛素材に対して
0.1〜50重量%含有させたインクジェット染色用布
帛により、布帛におけるインクにじみを防止するもので
ある。
【0004】これに対して、普通紙へのインクジェット
記録を行うプリンタにおいて、布帛類への記録を可能に
した出願がある。これは、本願出願人によるものであ
り、特開昭62−53492号公報で参照されるもので
ある。これは、布帛類に25℃における粘度が1Pa・
s以上の記録液受容層を形成し、これを市販のレポート
用紙と重ね合わせて、直ちにインクジェットプリンタに
取り付け、インクジェットプリントする工程と、プリン
ト綿をアイロン定着した後、中性洗剤にて受容層液を除
去したプリント物を得る工程と、を開示している。この
出願も、布帛類のインク受容層を改良したもので、解像
度を向上し、ボヤケや滲みもない濃度のある画像を形成
できるものである。
【0005】さらに、普通紙の如き紙葉類と布帛類との
媒体としての相違点を課題にして、布帛自体を改良する
発明を開示している特開平2−61183号公報があ
る。この公報中では、インクジェット印刷を行う場合、
布帛における表面濃度を上げるため、布帛へのプリント
の色素の残留率を高めることを課題とし、布帛の全体も
しくは印刷しようとする面に非染着性高分子化合物を被
覆して皮膜を形成し、さらに該布帛の印刷しようとする
面と反対側の非印刷面側に、改めて高分子化合物を被覆
して皮膜を形成してインク流出防止となし、布帛上での
インクの残留率を高める発明を開示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術における
工業的捺染は、布帛にインクジェットプリントするヘッ
ド機構や装置自体は、使用する布帛の特性に合わせて専
用に設定されている捺染専用機にすることができ、使用
するインクとしても、布帛のインク受容層に合わせて専
用(例えば、反応性染料)に調製することができてい
た。しかも、工業的に行われる捺染では、普通紙へのイ
ンクジェットプリントを行う必要がないので、捺染用の
自由な条件での装置を利用することができる。
【0007】上記従来技術に共通の特徴構成は、布帛に
おけるインクの拡散をインク受容層によって抑えること
であるが、これも所定の位置にインクを集中させて、イ
ンクが形成する画像の濃度を維持する程度の画質向上で
しかなかった。
【0008】ところが、インクジェット技術を用いて普
通紙等の紙を主体として設定されている市販のプリンタ
ーは、ホスト装置などから転送されたカラー画像データ
を高精細にプリントできる、いわゆるインクジェットプ
リント装置の分野で、小型・低価格のカラーインクジェ
ットプリント装置として有効であり、画像を形成するイ
ンクも直接染料等の普通紙を基準とする染料や顔料を用
いて調整されたものである。また、普通紙等の紙を主体
として設定されている市販のプリンタにおける、選択モ
ードとしてのOHPプリントモードでは、黒強調を行う
べく所定面積あたり、普通紙に対して2倍のインクをプ
リントするモードを備えているものしかない。従って、
特開昭62−53492号公報のように従来の普通紙等
の紙を主体として設定されている市販のプリンタでの布
帛に対するプリントの画質もこの公報の出願時水準では
優れてはいるものの、布帛に適した高濃度かつ高画質を
提供するものではなかった。
【0009】本発明者達は、この従来の画質水準を大幅
に改善することに着眼し、普通紙等の紙を主体として設
定されている市販のプリンタにおいて、布帛に適した高
濃度かつ高画質を達成できる布帛類および紙葉類にプリ
ント可能なインクジェットプリンタとプリントシステ
ム、該システムに用いられるインクおよび該システムを
用いて製造された物品の製造方法を提供することを本発
明の主たる目的とした。
【0010】具体的には、従来からある汎用のインクジ
ェットプリンタの特性を生かし、ユーザーがこれに手軽
に布帛を装着して高精細な画像を描き出すという技術開
発を行い、紙へのプリントと布帛へのプリントとでは、
両者の繊維組織や表面形状に伴うインク吸収状態、およ
び着色の目的とともに通常の紙とは異なる要因を解消し
て、プリント装置の大型化、あるいはコスト高を招くこ
となく、通常のユーザーが使用する汎用のプリント装置
として提供する。
【0011】本発明は、上記従来の問題を解決するもの
で、布帛のインク受容層の改良ではなく普通紙等の紙を
主体として設定されている市販のプリンタに、特殊な操
作を必要とせずに、布帛へのプリントにおける繊維組織
や表面形状に伴うインク吸収状態、および着色に対して
も有効な印字条件の提供を行うことで、インクジェット
プリントの特性を最大限発揮することが可能な布帛類お
よび紙葉類プリントシステムを提供するものである。
【0012】特に、本発明は、布帛の黒色インクとは異
なるカラーインクによる画質の改善を行うもので、従来
の発想ではなかったカラーインクによる布帛のプリント
に対しても有効な印字条件の提供を行うことで、インク
ジェットプリントの特性を最大限発揮することが可能な
布帛類および紙葉類プリントシステムを提供するもので
ある。
【0013】また、本発明は、普通紙等の紙を主体とし
て設定されている市販のプリンタの普通紙基準を利用し
て、布帛へのプリントの画質向上を行う中で、布帛の種
類に対してより適切な印字条件の提供を行うことで、よ
り優れた布帛類および紙葉類プリントシステム提供する
ものである。
【0014】さらに、本発明者達が普通紙等の紙を主体
として設定されている市販のプリンタの普通紙基準を利
用して、布帛へのプリントの画質向上を行う中で、新た
に発見した布帛の特有現象、即ち、布帛がそのインク受
容の許容の限界近傍で、急激に変形を生じ、従来の紙の
挙動からは予期し得ない程の大きな波打ち状態を呈して
しまうことが見られた。これは、画質の濃度の向上を達
成してはいるが、布帛自体が大きな波打ち状態を固定し
てしまうので、最終物品としては品位が下がったものと
なってしまった。従って、この新たな問題を解決するこ
とは本発明の別の目的の1つとなる。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題に対
して、インクジェットヘッドを用い、該インクジェット
ヘッドとプリント媒体とを相対移動させながら前記イン
クジェットヘッドから前記プリント媒体に対して、設定
されたプリントモードに応じてインクを吐出させてプリ
ントを行うインクジェットプリンタであって、プリンタ
の相対的優先モードとして普通紙に基準印字条件でプリ
ントを行う第1優先プリントモードと、該第1優先プリ
ントモードの基準印字条件の少なくとも1つを相対的に
基準印字条件よりも高画質の印字条件に設定して布帛に
プリントを行う布帛プリントモードと、布帛プリントモ
ードよりも第1優先プリントモードを優先設定すると共
に、第1優先プリントモードに代えて布帛プリントモー
ドを設定する手段と、を有することを特徴とするインク
ジェットプリンタを提供することで、普通紙に基準印字
条件でプリントを行うモードを利用して、布帛に適した
画質濃度の向上を達成できた。特に、上記第1優先プリ
ントモードにおける黒色と異なる色のカラーインクを用
いてインク吐出してプリントするカラーインクプリント
条件を高画質の印字条件に変更したカラーインクプリン
ト条件を用いることで、従来の発想ではなかったカラー
インクによる布帛のプリントに対しても有効な印字条件
の提供を行うことで、インクジェットプリントの特性を
最大限発揮することが可能な布帛類および紙葉類プリン
トシステムを提供できた。
【0016】また、本発明は、インクジェットヘッドを
用い、該インクジェットヘッドとプリント媒体とを相対
移動させながら前記インクジェットヘッドから前記プリ
ント媒体に対してインクを吐出させてプリントを行うイ
ンクジェットプリントシステムであって、布帛に対する
画像形成を行うための一種類以上の布帛プリント優先モ
ードと、該一種類以上の布帛プリント優先モードを適宜
選択できる切り替え手段と、を有し、他のプリント媒体
に対してプリントを行うモードのプリント条件の少なく
とも一つを布帛プリント優先モードで異ならせると共に
プリントすべき画像信号をつくりだすホストコンピュー
タ上で設定可能であることを特徴とするインクジェット
プリントシステムを提供することで、普通紙等の紙を主
体として設定されている市販のプリンタの普通紙基準を
利用して、布帛へのプリントの画質向上を行う中で、布
帛の種類に対してより適切な印字条件を優先して提供す
ることができるので、より優れた布帛類および紙葉類プ
リントを共に達成することができるものである。さらに
は、前記布帛に対する画像形成を行うための一種類以上
の布帛プリントモード、および前記一種類以上の布帛プ
リントモードを適宜選択できる切り替え手段が、プリン
トする画像信号を作製するホストコンピュータ上で設定
可能にすることを特徴とするインクジェットプリントシ
ステム、または前記布帛に対する画像形成を行うための
一種類以上の布帛プリント優先モード、および前記一種
類以上の布帛プリント優先モードを適宜選択できる切り
替え手段が、プリントする画像信号に従ってプリント動
作を行う装置上で設定可能にすることで、操作者の操作
性を向上し、装置の複雑さをもたらすことなく、プリン
ターの普通紙基準を利用した合理的な布帛プリントモー
ドを容易に設定できる。
【0017】本発明にとって有効かつ具体的内容は、複
数色のインクを吐出させることが可能なインクジェット
プリントシステムであり、前記プリント媒体に対するイ
ンクの打ち込み量が、該複数色のインクのうち少なくと
も一色に関して多くすること、および前記複数色のイン
クを吐出させることが可能なインクジェットプリントシ
ステムにおいて吐出されるインクのうち、黒色を呈する
インクの前記プリント媒体に対する打ち込み量を、他の
色を呈するインクの打ち込み量以上に設定されてなるこ
とを特徴とするインクジェットプリントシステムであ
る。これによれば、従来、もっぱら紙やOHPフィルム
等を対象にしていたインクジェットシステムの形態はそ
のまま維持しつつ、これに加えて布帛に対するプリント
モードを一種類以上持っているため、これまで以上にイ
ンクジェットシステムの適用範囲を拡大することが可能
となるものである。
【0018】尚、本発明において、プリント用媒体とし
て用いられる布帛とは、素材、織り方、厚さを問わず、
あらゆる織物、不織布およびその他の布地を含む。とこ
ろで布帛を構成する繊維には天然繊維から合成繊維ま
で、種類も多く、またそれぞれにおいてインクの吸収性
も多様である。それゆえに前述の課題の点で述べたよう
に、インクの打ち込み量を多くするとはいっても一義的
には定めることはできない。またインクジェットを捺染
に応用するにおいても、その描こうとする画像(絵柄)
も多岐にわたり、必ずしも高い濃度でプリントすること
が好ましいとは言い切れない。さらにはその画像(絵
柄)が単色ではなく、多色である場合には、その色ごと
に濃淡が異なる場合も十分あり得ることである。このた
め、インクジェットで布帛にプリントするにおいても、
そのプリントモードは布帛という範疇で一種類設け、そ
のモードで全てをまかなうことは実質上不可能である。
ここで多色画像の場合で色ごとに濃淡が異なる場合に、
従来から知られているディザ等の面積階調の手法で表現
することも可能ではあるが、この階調数を多くすれば解
像度が低くなっていったり、また画像信号処理に時間を
費やすという弊害も起こりうるため、画像が高密度にな
った際には不十分となることもある。
【0019】以上のことから、各種の布帛にインクジェ
ットシステムを対応させるには、単に布帛用プリントモ
ードを紙とは別に一種類設定するのみでは不十分である
場合があり、それ以上の種類の布帛用プリントモードを
設定可能とすることがより好ましい。しかもこれらの一
種類以上の布帛用プリントモードを、自動あるいは主動
で適宜切り替え可能とすることがより好ましいことを本
発明者らは見出した。さらにこの内容によっては、従来
のプリントモードと一部を共有することも可能であり、
そのことから、システムとしても大型化、コスト高を招
くことなく、簡単にそのシステムのレベルを向上でき
た。
【0020】インクジェットでプリントを実現する場合
には、画像をドットで構成するため、ディジタルで画像
を取り扱う。したがって、画像信号をディジタル変換、
または加工してインクジェットヘッドにインク吐出のた
めの信号をつくり出すホストコンピュータがインクジェ
ットプリントシステムには存在する。したがって、上記
の布帛プリントモードの設定切り替えはこのホストコン
ピュータ上で、画像信号の送出と共に行うことが、シス
テムとして可能である。とくに近年では、コンピュータ
の分野でGUI(Graphical User In
terface)環境が発達してきたり、プリンタとの
間で双方向通信が可能になりつつあるため、このような
システム形態は有効である。
【0021】これに対し、上記の布帛プリントモードの
設定切り替えは、インクジェットヘッドの吐出制御部分
でも実施することは可能であるため、プリント動作を行
う装置上で行うことも可能である。この場合にはホスト
コンピュータで行う場合に比べ、実際のプリント画像を
確認しながら即座に切り替えられる利点がある。
【0022】さらに上述した事柄のうち、色ごとに濃淡
を意識的に現すような場合においては、その色別にイン
クの打ち込み量を適宜設定可能にできることが有効とな
る。一般に多色画像を表現する場合には、ブラック、シ
アン、マゼンタ、イエローの四種類の色を用いて実現で
きる。このことから、少なくともこの四色のうちの一色
の打ち込み量を多くする設定をもつことで実施すること
ができる。とくにブラックは他の色よりも濃度が高い
と、画像にも鮮やかさが明確に現れやすいため、ブラッ
クを他の色に対して多く打ち込むように設定できること
は有効である。
【0023】次に本発明に適したプリント方法は、前述
した布帛プリントモードが、プリントすべき画像データ
を、所定の画像データ配列にしたがって間引き、そして
この間引かれた画像データにしたがって主走査方向に前
記インクジェットヘッドを往復移動させつつインクの吐
出を行い、かつ前記インクジェットヘッドの往復移動を
一回行うごとに、前記プリント媒体を所定のノズル列の
長さ以下の距離で順次搬送させていくことにより画像を
形成させていくことを特徴とするインクジェットプリン
トシステムである。
【0024】ところで、従来の一般的な普通紙あるいは
コート紙に対応するプリント動作を図2を参照しながら
説明し、本発明の利点について説明する。本発明は、布
帛にプリントを行うという点より、そのプリントの対象
とする画像は、単色で表現される文字よりもカラーイメ
ージ画像が主体となるが、このような画像プリントの場
合にはマルチパスプリントがよく行われる。カラーイメ
ージ画像をプリントするに当たっては、文字のプリント
に比べ、発色性、階調性、一様性など様々な要素が必要
となる。特に一様性に関しては、複数のノズルを配列し
てなるインクジェットヘッドにおいては、その製作工程
差に生じるわずかなノズル単位のばらつきが、プリント
したときに、各ノズルから吐出されるインクの吐出量や
吐出方向に影響を及ぼし、最終的にはプリント画像の濃
度むらとして画像品位を劣化させる原因となる。その具
体例を図21および図22を用いて説明する。図21
(A)において、91は複数のノズルを配列してなるイ
ンクジェットヘッドであるが、ここでは簡単のために8
個の個々のノズル92によって構成されているものとす
る。93はノズル92よって吐出されたインク滴であ
り、通常はこの図のように揃った吐出量で、揃った方向
にインクが吐出されることが理想である。もし、このよ
うな吐出が行われれば、図21(B)に示したように紙
面上に揃った大きさのドットが着弾され、全体的にも濃
度むらのない一様な画像が得られることになる(図21
(C))。しかし、実際には先にも述べたようにノズル
1つ1つにはそれぞればらつきがあり、そのまま上記と
同じようにプリントをしてしまうと、図22(A)に示
したようにそれぞれのノズルより吐出されるインク滴の
大きさおよび方向にばらつきが生じ、紙面上においては
図22(B)に示すように着弾される。この図によれ
ば、インクジェットヘッドの主走査方向に対し、着弾さ
れたインク滴によって紙面を完全にうめることができ
ず、周期的に白紙の部分が存在したり、また逆に必要以
上にドットが重なり合ったり、あるいはこの図の中央に
見られるようなな白筋が発生したりしている。このよう
な状態で着弾されたドットの集まりはノズルの配列方向
に対し、図22(C)に示した濃度分布となり、結果的
には、通常人間の目でみた限りで、これらの現象が濃度
むらとして感知される。
【0025】そこでこの濃度むら対策として、次のよう
な方法が考案されている。図23および図24によりそ
の方法を説明する。この方法によると図21および図2
2で示したプリント領域を完成させるためにインクジェ
ットヘッド91を3回走査しているが、その半分の4画
素単位の領域は2パスで完成している。この場合インク
ジェットヘッドの8ノズルは、上4ノズルと、下4ノズ
ルのグループに分けられる。1ノズルが1回の走査でプ
リントをするドットは、規定の画像データを、ある所定
の画像データ配列(以下これを『プリントマスク』と称
する)に従い、約半分に間引いたものである。そして2
回目の走査時に残りの半分の画像データに対してドット
を埋め込み、4画素単位領域のプリントを完成させる。
以上のようなプリント方法を、以下『分割プリント法』
と称す。このような分割プリント法を行えば、図22で
用いたインクジェットヘッドと等しいものを使用して
も、各ノズル固有のプリント画像への影響が半減される
ので、プリントされた画像は図23(B)に示すように
なり、図22(B)に見るような黒筋や白筋が余り目立
たなくなる。従って濃度むらも図23(C)に示すよう
に図22の場合と比べ、かなり緩和される。
【0026】このようなプリントを行う際、1回目の走
査時と2回目の走査時では、画像データをある決まった
配列に従い互いに埋め合わせる形で分割するが、以前は
この画像データ配列(間引きパターン)とは図24に示
すように、縦横1画素毎に、丁度千鳥格子になるような
ものを用いることが最も一般的であった。従って単位プ
リント領域(ここでは4画素単位)においては千鳥格子
をプリントする1回目の走査と、逆千鳥格子をプリント
する2回目の走査によってプリントが完成されるもので
ある。図24の(A)、(B)および(C)はそれぞれ
この千鳥、逆千鳥パターンを用いたときに一定領域のプ
リントがどのように完成されて行くかを図21から図2
3と同様、8ノズルを持ったインクジェットヘッドを用
いて説明したものである。まず1回目の走査では、下4
ノズルを用いて千鳥パターン(ハッチングを施したドッ
ト)のプリントを行う(図24(A))。次に2回目の
走査では紙送りを4画素(ヘッド長の1/2)だけ行
い、逆千鳥パターン(ハッチングなしのドット)のプリ
ントを行う(図24(B))。さらに3回目の走査では
再び4画素(ヘッド長の1/2)だけの紙送りを行い、
再び千鳥パターンのプリントを行う(図24(C))。
このようにして順次4画素単位の紙送りと、千鳥、逆千
鳥パターンのプリントを交互に行うことにより、4画素
単位のプリント領域を1走査毎に完成させていく。以上
説明したように、同じ領域内に異なる2種類のノズルに
よりプリントが完成されていくことにより、濃度むらの
ない高画質な画像を得ることが可能である。
【0027】また、同時に布帛上にプリントされるイン
クの密度が低くなるので、その分深さ方向へのインク浸
透が少なくなり、表面濃度が向上する効果も期待でき
る。このことからも個々で述べたプリント方法は、布帛
プリントに大きな効果が期待できる。
【0028】以上、この図では同一領域内を2回の走査
でプリントを完成させる構成で説明してきたが、分割プ
リント法の効果は分割数を多くすればするほど現れるも
のである。上記で説明したプリント装置においても、1
回の走査でプリントする画素をさらに半分にし、紙送り
走査の幅を2画素(ヘッド長の1/4)にすれば、同じ
走査方向には4種類のノズルによって画像が完成される
ので、さらに滑らかで良好な画像をさらに濃度の高い状
態で得ることが可能となる。
【0029】従来、紙やOHP用紙等では、インクジェ
ットヘッドの個々のノズルの吐出方向のばらつきに起因
する着弾位置のずれや、カラー記録時の各色のインク打
ち込み順が、往復プリントでは往路と復路とで異なり、
そのことが画像品位に大きく影響されていた。すなわ
ち、ドット単位でインクを重ねたり細線を描いたりする
際に、往復で着弾位置がずれることによって画像形成が
乱れたり、また色の異なるインクを同一部分に重ねる際
に、その打ち込む順番が逆転すると混色してできる色の
色味が異なったりするものであった。これに対し、プリ
ント装置で往復のそれぞれの吐出インクの着弾位置を正
確に制御したり、インクの浸透を適切に制御することは
未だ困難で、通常のプリントモードでは往復走査ではな
く、片方向によるプリントが一般的であった。
【0030】これに対し、本発明者らによって布帛にイ
ンクジェットでプリントする場合の挙動を研究したとこ
ろ、上述したような問題はほとんど生じないことが明ら
かになった。つまり、インクの打ち込み順に関わらず、
布帛に着弾されたインクは常に着弾位置から一様に布帛
内に広がって吸収される。また、このようなことからド
ット径が大きくなることや、布帛プリントの風合い上そ
れほど厳しい着弾精度が要求されないことからも、布帛
への往復プリントは時間短縮のためにも有効であること
が見出され、本発明に至った。
【0031】すなわち、従来紙等にプリントを行う場合
に比べ、前述した分割プリント法に対する制約が布帛で
は格段に減少するため、この分割プリント法をさらに発
展させることができるものである。したがって、プリン
トマスクも使用する布帛の種類によってあらゆるものを
適用することが可能となり、さらに同一箇所におけるイ
ンクの重ね打ち込みも自由にとり得、画像濃度も任意に
定めることも可能となる。これにより布帛に対するプリ
ントの高画質化、適用の広範囲化が達成される。したが
って、プリントマスクを適切に定め、布帛プリントモー
ドに移行した際に、そのプリントマスクにしたがってイ
ンクジェットヘッドの往復走査で、100%、200
%、300%、400%、500%など、自由にインク
の打ち込みを可能とする。
【0032】これに対して、上記本発明における新規な
課題、すなわち、布帛がそのインク受容の許容の限界近
傍で、急激に変形を生じ、従来の紙の挙動からは予期し
得ない程の大きな波打ち状態を呈してしまう課題を、解
決することの条件としては、布帛にプリントを行うモー
ドが、該カラーインクに関して普通紙基準印字条件より
多くかつその3倍以下(最適には2倍以下)を、該黒色
インクに関して普通紙基準印字条件の4倍以下(最適に
は3倍以下)を、それぞれ単位面積当たりに与える最大
インク量とした基準布帛プリントモードとすることが良
い。
【0033】さらに、本発明に使用されるインクの好ま
しい条件としては、界面活性剤を含有する水性インク
で、該界面活性剤の含有率が、当該インクに対する臨界
ミセル濃度未満であり、かつ前記界面活性剤を水に対し
て与えたときの該水に対する臨界ミセル濃度より多くな
るように前記界面活性剤を含有させたことを特徴とする
インクジェットプリントシステム用インク、および前記
インクジェットプリントシステム用インク中に含有され
ている色材として、反応性染料を用いたことを特徴とす
るインクジェットプリントシステム用インクである。そ
してこれらのインクの利用は、複数種のインクジェット
プリントシステム用インクがそれぞれ収容された複数種
のインクタンクを、使用する布帛に応じて交換可能にし
てなるものである。
【0034】インクジェットシステムに利用されるイン
クとしては、市場に出回っている普通紙にも良好な画像
を得られることを目的として、浸透速度の速く境界にじ
みの少ないインクが近年開発されてきている。これに対
し、従来から知られている一般のインクを用いてプリン
トすると、市場に出回っている多くの普通紙では、その
インクの浸透速度が遅く、隣接して同時にプリントされ
るドット間で不必要な混色が発生してしまう。このた
め、異色境界ではにじみが発生し、プリント画像の品位
低下をまねく事が知られている。特にグラフィック画像
のようなグラフ、表の一部分、描画された絵などでは、
プリント面の一部分を塗りつぶす場合が多く見られるた
め、上記インクを用いることによって本発明の記録条件
の設定と相乗的効果を発揮し、この品位低下の影響を改
善することができる。
【0035】さらに、普通紙によっては紙面上の浸透状
態のむらが、塗りつぶし部分(以下この部分を『べた』
と称す)の一様性を損なわせたり、部分的な白浮きを発
生させたりすることがある。この原因は表面の不均一に
起因するものであるとされている。またこれにより、吐
出したインク滴が紙面に浸透する際に、紙を構成してい
る繊維の隙間、サイズ剤等、撥水の処理の薄い部分を選
択的に浸透するため、ドットの形状が真円ではなく星型
の不均一な形状になるという問題もみられる。このよう
な問題は、従来のインクを用いた場合では、特殊なコー
ティングを施した紙でなければ対応しきれなかったが、
このようなコート紙は高価なものがほとんどであり、ま
た流通経路も限られていることからあまり一般的とはい
えないという実状であった。
【0036】しかし、上記本発明の好ましい条件の界面
活性剤をインクへ添加することにより、普通紙への浸透
力、浸透速度を向上させることが有力な解決策である。
【0037】界面活性剤の添加は、その量が多すぎる
と、低湿環境下での蒸発等に起因するノズル部付近での
粘度上昇が顕著になり、吐出回復性の劣化が著しい。ま
た表面張力の極限までの低下、粘度の上昇とに伴い、イ
ンク滴の集束性が悪化し、吐出後に液滴が1つに集束せ
ず、主液滴とそれに続く微小液滴(サテライト)が生じ
る。この微小液滴の発生によって、文字品位の低下や罫
線の直線性を損なう等、多くの弊害が発生する。さらに
インクそのものの粘度も上昇するため、吐出後のインク
再充填までの時間も増大する。
【0038】以上のような問題をすべてを満足するため
には、やはり対インクおよび対水での界面活性剤の臨界
ミセル濃度に着目し、適切な領域に調整する必要があ
る。本発明と同出願人による特願平5−164845号
によれば、界面活性剤の濃度については浸透促進という
観点から、できる限り高濃度であることが望まれるが、
にじみ防止、べた均一性の保持等の観点からは実用上は
水中での臨界ミセル濃度より大であることが重要で、吐
出特性の向上、単ドットの品位の向上、回復動作の負荷
軽減をめざす上では、インクに対しての界面活性剤の含
有率が臨界ミセル濃度より小であることが重要であると
開示し、これら濃度に制限をつけたものとしている。
【0039】以上述べた事柄より、本発明における重要
な目的である複数媒体にインク記録可能なインクジェッ
トプリントシステムには、上述のような界面活性剤を添
加した超浸透性インクが非常に有効であることを本発明
者らは見出し、さらには布帛プリントモードに適用する
ことにおいても、非常に効果的に実現可能であることが
判明した。また布帛に対するインクの打ち込み量は、紙
等よりも多くする場合が存在するので、通常のインクで
は媒体である布帛へのインク吸収速度が衰えることにな
り、あまりはやい速度でインクを打ち込むと、完全に吸
収される以前に隣接インク滴との混色が起こり、出力画
像では境界にじみとして認識されてしまう。これを防ぐ
ためには、マルチスキャンの回数を多くして、少しずつ
乾燥させながらプリントさせていく方法や、1走査毎に
キャリッジの待機時間を設け、インクの吸収を待ってか
ら重ねプリントしていく方法が考えられるが、どちらに
しても時間をかけることで乾燥を促そうとするものなの
で、画像出力に要する時間は他のプリント媒体に比べ大
幅に劣ってしまう。このことからも、界面活性剤を添加
した超浸透性インクを適用すれば、瞬時に吸収・乾燥さ
せることができ、上記のような方法をインク乾燥のため
に行う必要もなく、良好な濃度を得ることができる。そ
して、界面活性剤による浸透性の付与により、布帛を構
成する糸へのインク吸収性が上がり、布帛表面付近の繊
維を均一に染色することができるという新たな利点もあ
り、布帛の深さ方向にインクが過度に通過することも防
止でき、界面活性剤を添加した超浸透性インクは布帛プ
リントモードに適しているといえる。
【0040】これに加え、インク中に含有される色材と
しても、従来の捺染技術においてもよく用いられている
反応性染料を用いることは、さらに布帛プリントモード
を各種の布帛に広く適用するに際して、一層有効である
ことも判明した。この反応性染料を用いたインクの場合
は、直接的な定着性は低いが、布帛にアルカリ処理を施
すことにより、セルロース繊維内の−OH基と反応し、
布帛上に鮮明で湿潤堅牢度の高い色相を得ることができ
る。また、インクとしては所要の色材を有するものであ
れば適宜のものを用いることができるので、染料に限ら
れず顔料を含むものであってもよい。
【0041】このように数種類のインクが利用可能とな
れば、使用する布帛に対するインクの適正に合わせ、使
用できる複数種のインクをそれぞれインクタンクの形態
で収容し、適宜それらが交換可能であることが、本発明
のインクジェットプリントシステムには重要な構成とな
る。そしてこれら各種のインクは、カラーに用いる4色
において、必ずしも全て同種類の組成である必要はな
く、2種類以上のインクを色ごとに使い分けをし、イン
クジェットシステム内で混在させてもよい。例えば、ブ
ラックのみは紙にも用いられている通常の浸透性をもつ
インクとし、他の色、すなわちシアン、マゼンタ、イエ
ローは界面活性剤を添加した超浸透性インクとして、全
色とも同一の打ち込み量であっても、ブラックは他の色
よりも布帛の表面近くに多く残留させるようにして相対
的に濃度を高くとる、ということも可能である。
【0042】一方、上に列挙した様々なインクは、布帛
のプリントに適しているばかりでなく、他のプリント媒
体にも通常は有効である。したがって、本発明のインク
ジェットプリントシステムにおいては、プリント媒体に
応じて、プリントモードと同時にインク自体も適切に選
択できることにもなる。
【0043】続いて、本発明の応用発明としては、上記
発明の特徴を利用して、プリント用布帛媒体に直接プリ
ントするか、あるいは他の転写媒体にプリントし、その
後プリント画像を布帛に移行させることのいずれかを行
うことを特徴とするインクジェットプリント物の製造方
法である。
【0044】ここで、さらにプリント用布帛媒体に直接
プリントする場合には、前記プリント用布帛媒体がプリ
ントに先立って10以上400以下のクラーク剛度を有
するように剛化処理を施してなることを特徴とするもの
であり、また前記プリント用布帛媒体がプリントに先立
って極性をもつ染料固着剤を含有し、プリント動作と同
時に前記プリント用布帛媒体への画像の定着を行わせて
なること、あるいは前記プリント用布帛媒体を用いてプ
リントを終えた後に極性をもつ染料固着剤でプリント画
像の定着処理を施してなることを特徴とするものであ
る。
【0045】これらに加え、前記プリント用布帛媒体を
用いてプリントを終えた後に熱処理または湿熱処理でプ
リント画像の定着を行うこと、および前記プリント画像
の定着をなした後に前記プリント用布帛媒体を洗浄処理
することを特徴とするインクジェットプリント物の製造
方法である。
【0046】本発明によるインクジェットプリントシス
テムでは、一般に市販されている各種の布帛に直接プリ
ントすることも可能であるが、この場合には従来からあ
るインクジェットプリント装置で、円筒状のプラテンロ
ーラにプリント媒体である布帛を押しつける部材をいっ
たん解除してプリント媒体を手動で装着した後押しつけ
部材を再び押しつけることでプラテンローラと布帛とを
密着させて装着する方式のものが多く利用されることに
なるが、そうしたプリント装置では、ほとんどの布帛に
対し搬送・プリントすることができたが、手動で布帛を
装着するので斜行などにより布目と搬送方向を合わせた
り、また、しわなく巻きつけて搬送させることが難し
く、高精細なインクジェットプリントを行うことは難し
い場合がある。さらに解除機構の繰り返し使用による押
しつけ力の劣化などで搬送性を安定させることも難し
く、また、装着動作そのものが操作性に劣ることなどの
課題もある。そこで近年インクジェットプリンタで主流
となりつつある、搬送手段への自動装着の機構を本発明
のインクジェットシステムにも適用することが好まし
い。この場合には布帛をそのままの形態で装着させよう
とするには、布帛自身は紙のように、いわゆる「こわ
さ」(以下、この「こわさ」を布帛に対しては『剛度』
と称することにする)がないため困難さが生ずる。
【0047】この布帛の自動装着機構への装着を実現す
るために、本発明者らと同一出願人による発明で、特願
平5−108226号および特願平5−230369号
において、布帛の剛化および平坦化を詳細に開示してい
る。本発明のインクジェットプリントシステムにおいて
も、この剛化された布帛を適用することは、高精細なプ
リントと安定した搬送をを実現する上で非常に有効な構
成である。したがって本発明においても、布帛をクラー
ク剛度が10以上400以下になるように剛化処理を施
してなることが特徴となるものである。なお、ここでク
ラーク剛度とは、JIS−P8143で規定しているク
ラーク法で表される値を採用する。
【0048】これに加え、上記の剛化処理のうち、カル
ボキシメチルセルロースやポリビニルアルコール、アク
リルアミド、デンプン、トラガカントガム、グアガム等
の糊剤を使用して行ったものについては、インクジェッ
トプリントが終了した後に元の布帛の風合いに戻すため
に洗浄処理で糊剤を除去している。この洗浄時に染料の
流出で画像劣化を起こさせないために、一般には布帛の
カチオン化処理やフィックス剤等の染着制御処理をプリ
ントに先立って実施している。しかしながらこの手法の
みでは、使用するインク、さらにいうならば使用する染
料やインクの打ち込み方法によっては不十分なこともあ
る。このために布帛に染料固着剤による処理を付加する
ことが有効である。
【0049】ここでいう染料固着剤による処理は、布帛
のプリントに使用されるインクに色材として含有される
染料が、一般にイオン性をもつ染料が多いことにより、
布帛に極性を持つ材料を添加させることが好ましい。こ
の布帛に対する処理により、プリント中、またはプリン
ト後にこの染料をイオン結合によって凝集させ、布帛を
構成する繊維に対する染料の固着性を上げる作用があ
る。したがって、上記布帛への処理は、プリント前でも
プリント後でも構わない。この処理に対する極性材料と
しては、たとえばポリアリルアミン塩、ポリアリルスル
ホン、ジチルジアリルアンモニウムクロライド等の水溶
性カチオン性高分子、酢酸ビニル重合体、変性合体ゴム
等のアニオン性高分子等を用いることができる。これら
を水あるいはアルコール等の溶剤に溶解、あるいは分
散、またはエマルジョンの状態で布帛に浸漬や塗布、噴
霧等の手法によって、含浸または積層させればよい。特
に、インクジェットプリント後に処理する場合において
は、凝集前の染料のにじみや流れだしを避けるため、処
理液の粘度を高めたり非水系によって行うことは、より
効果的である。
【0050】これらの処理剤は、洗濯をすることによっ
て除去可能であるので、プリント済みの布帛媒体に対
し、もとの布帛が持つ質感を損なうことはない。さらに
この処理後の画像の洗濯堅牢性を高めるために、プリン
ト後の布帛媒体に対し化学的な色止め処理やアイロンな
どの熱処理、あるいはスチ−マ−のような湿熱の蒸気処
理を行って画像の定着性を高めることも有効となる。も
ちろんインクジェットプリントシステムでプリント時
に、布帛媒体を加熱させることを伴ってもよい。
【0051】これら以外に、布帛に対する公知の前処理
の手法も、本発明には必要に応じて適用することは可能
である。このような前処理の例としては、先にもあげて
いるが、布帛に、アルカリ性物質、水溶性高分子、合成
高分子、水溶性金属塩、尿素およびチオ尿素から選ばれ
る物質を含有させる等である。以下にこれらの物質の代
表例を挙げる。
【0052】アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、モノ、
ジ、トリエタノールアミン等のアミン類、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸もしくは
重炭酸アルカリ金属塩等が挙げられる。さらに酢酸カル
シウム、酢酸バリウム等の有機酸金属塩やアンモニアお
よびアンモニア化合物等がある。また、スチーミングお
よび乾熱下でアルカリ物質となるトリクロロ酢酸ナトリ
ウム等も用い得る。特に好ましいアルカリ性物質として
は、反応性染料の染色に用いられる炭酸ナトリウムおよ
び重炭酸ナトリウムがある。
【0053】水溶性高分子としては、トウモロコシ、小
麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース、メ
チルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセル
ロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、
ローカストビーンガム、トラガントガム、グアガム、タ
マリンド種子等の多糖類、ゼラチン、カゼイン等の蛋白
質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の天然水溶
性高分子が挙げられる。
【0054】また、合成高分子としては、ポリビニルア
ルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、
アクリル酸系水溶性高分子、無水マレイン酸系水溶性高
分子等が挙げられる。これらの中でも多糖類系高分子や
セルロース系高分子が好ましい。
【0055】水溶性金属塩としては、アルカリ金属、ア
ルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型的なイオ
ン結晶を作るものであって、pH4〜10である化合物
が挙げられる。かかる化合物の代表的な例としては、ア
ルカリ金属系の化合物では、塩化ナトリウム、硫酸ナト
リウム、塩化カリウムおよび酢酸ナトリウム等が挙げら
れ、また、アルカリ土類金属系の化合物としては、塩化
カルシウムおよび塩化マグネシウム等が挙げられる。中
でもナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩類が好
ましい。
【0056】これら前処理において、上記物質等を布帛
に含有させる方法に特に制限はないが、通常行われる方
法としては、浸漬法、パッド法、コーティング法、スプ
レー法などを挙げることができる。
【0057】さらに、インクジェットプリントが終了し
た後、引き続き繊維への染料等インク中の色材の定着工
程を施すために、従来公知の方法を適用してプリント物
とすることもできる。例えば、前処理にアルカリ処理を
行った場合には、スチーミング法、HTスチーミング
法、サーモフィックス法等があり、あらかじめアルカリ
処理した布帛を用いない場合には、アルカリパッドスチ
ーム法、アルカリブロッチスチーム法、アルカリショッ
ク法、アルカリコールドフィックス法等がある。
【0058】一方他の転写媒体にプリントし、その後プ
リント画像を布帛に移行させることでプリント物を製造
する場合であるが、これは所望の画像の鏡像を、一度他
の転写媒体にプリントをした後、このプリントがなされ
た面と布帛とを接触させ、転写媒体にできている鏡像画
像を、物理的あるいは化学的な圧着処理によって布帛へ
転写、浸透させる方法である。このような場合には布帛
用の特別なプリント方法として、インク打ち込み量の調
整のみ成らず、特別に鏡像画像を形成する構成も必要と
なるものである。ここで利用される転写媒体としては、
打ち込まれたインクが適度に保持され、さらに布帛への
転写時に移行が速やかに行われればよいのであって、例
えばポリエチレンテレフタートや紙などのシート状の支
持体に、ポリビニルアルコールやセルロース、ワックス
等からなるインク保持層を設けて構成することができ
る。また、転写媒体から布帛への画像の転写手段に関し
ては、両者を重畳させた後に、加圧、加熱、レーザー照
射、溶剤によるインク保持層の溶解除去等、およびこれ
らの方法の組み合わせなど、公知の手段を利用すること
によって、圧転写、あるいは溶融転写を施すことが可能
となる。
【0059】したがって、布帛用のプリントモードが、
上記のような転写方式のためのもので追加されていても
よい。特に上記による転写方式は、転写媒体から実際に
転写される媒体が布帛に制限されなくともよいので、画
像表現媒体の範囲を広げるためにも独立なモードを持つ
ことは有効である。
【0060】最後に、本発明の第5は、上記のような手
段でできあがったインクジェットプリント物に対し、さ
らに裁断、および/または縫製を施して最終加工品を得
ることを特徴とするインクジェットプリント物の製造方
法である。これまでに述べてきたインクジェットプリン
トシステムでできあがったプリント物は、最終的には従
来からある捺染物と同様に取り扱うことが可能であるた
め、裁断や縫製を施すことは自由にできるものである。
【0061】いずれにしても、本発明によれば、布帛に
対する画像形成を行うための一種類以上の布帛プリント
モード、およびその一種類以上の布帛プリントモードを
適宜選択できる切り替え手段を、他のプリント媒体に対
してプリントを行うモードのプリント条件と少なくとも
一つを異ならせるように構成させているので、従来から
存在するプリント媒体はもちろんのこと、布帛に対して
も自由に画像表現を可能にすることができるインクジェ
ットプリントシステムを提供できるものである。このイ
ンクジェット技術を応用したインクジェットプリントシ
ステムは、高精彩な色表現を工業用のみならず広く一般
家庭の趣味的な分野への応用も可能とできる。本発明の
より具体的な構成は、以下の実施例から理解できよう。
【0062】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。
【0063】(実施例1)図5は本発明に用いるカラー
プリントが可能なインクジェットプリントシステムにお
けるプリント部分の概略構成を示したものである。この
図において、701はヘッドカートリッジである。これ
らは、4色のカラーインク、すなわちブラック、シア
ン、マゼンタ、イエローがそれぞれ収容されたインクタ
ンク群703と、それぞれの色のインクタンクに結合さ
れているインクジェットヘッド群702より構成されて
いる。この図においてインクタンク群703に記されて
いる、K、C、M、Yは、それぞれブラック、シアン、
マゼンタ、イエローの各カラーインクが収容されている
ことを示す。
【0064】このインクジェットヘッド群702中の1
つの色のインクを吐出する1つのインクジェットヘッド
上に配列される複数のノズル列の様子を、z方向から示
したものが図6であり、81はこの1つのインクジェッ
トヘッド上に配列される各ノズルにおける、インクを吐
出させる吐出口である。本図では吐出口801、すなわ
ちノズルがy軸に沿って平行に配列されているが、例え
ばこの図のxy平面上に多少の傾きを持っていてもよ
い。この場合には、ヘッドが進行方向xに進んで行くこ
とに対し、各ノズルからのインクの吐出は、それぞれタ
イミングをずらしながら行ってプリントされることにな
る。
【0065】再び図5を参照するに、704は搬送ロー
ラであり、705の補助ローラとともにプリント媒体7
08をおさえながら図の矢印iおよびjの方向に回転
し、プリント媒体708をy方向に随時送っていく。ま
た706は給送ローラーであり、プリント媒体の給送を
行うとともに、704,705と同様、プリント媒体7
08をおさえる役割も果たす。707は4つのインクカ
ートリッジを支持し、プリントとともにこれらを移動さ
せるキャリッジである。これはプリントしていないと
き、あるいはインクジェットヘッドの回復動作などを行
うときには図の一点鎖線で示した位置のホームポジショ
ン(h)に待機するようになっている。
【0066】プリント開始前、図のホームポジション位
置hにあるキャリッジ707は、プリント開始命令がく
ると、x方向に移動しながら、インクジェットヘッド群
702上の複数個の吐出口801よりインクを吐出し、
プリント媒体面上に幅dだけプリントする。プリント媒
体端部までデータのプリントが終了すると、キャリッジ
は−x方向に移動して元のホームポジションhに戻り、
再びx方向へのプリントを行う。あるいは、往復プリン
トであれば、−x方向に移動する段階で次のプリントも
行う。この最初のプリントが終了してから2回目のプリ
ントが始まる前までに、搬送ローラ704および補助ロ
ーラ705が矢印方向iおよびjへ回転することにより
所定幅だけのy方向への媒体搬送をする。このようにし
てキャリッジ走査と媒体搬送の繰り返しにより、一つの
プリント媒体上のデータプリントが完成する。このイン
クジェットプリントシステムにおいては、布帛プリント
モードに切り替えられると、第1優先プリントモードで
ある普通紙のプリントモードで機能する場合のインク打
ち込み量100%に対して、その2倍の200%までイ
ンクを打ち込んでいく設定がなされている。
【0067】ここで布帛プリントモードの動作を説明す
る前に、使用するインクジェットヘッド群702の構成
について、図7および図8を参照しながら説明し、次い
で本実施例におけるインクジェットプリントシステムに
用いられる一般的なインクについて説明をしておく。
【0068】図7はインクジェットヘッド群702の中
の1つのインクジェットヘッドの構成を示す分解図であ
る。この図において、配線基板1080の一端は、ヒー
ターボード1081の配線部分と相互に接続され、さら
に配線基板1080の他端部には、インクジェットプリ
ント装置本体からの電気信号を受け入れるための各電気
・熱エネルギー変換体に対応した複数個のパッドが設け
られている。このことによりインクジェットプリント装
置本体からの電気信号は、それぞれの電気・熱エネルギ
ー変換体に供給されるようになる。配線基板1080の
裏面を平面で支持する金属製の支持体1082は、イン
クジェットヘッドユニットの底板となる。押さえバネ1
083は、ノズルを形成するための溝がつけられている
溝付き天板1084のインク吐出口近傍の領域を、線上
に弾性的な押し圧を作用させるために、断面略U字形状
に折り曲げ形成した部分と、ベースプレートに設けた逃
げ穴を利用して引っかける爪と、バネに作用する力をベ
ースプレートで受ける一対の後脚を有している。このバ
ネ力により配線基板1080の取り付けは、溝付き天板
1084を圧接している。金属製支持体1082に対す
る配線基板1080の取り付けは、接着剤などによる貼
り付けで行うことができる。一方、インク供給管108
5の端部にはフィルター1086が設けられている。イ
ンク供給部材1087は、モールド成型で作られ、溝付
き天板1084もオリフィスプレート部1880と各イ
ンク供給口へと導く流路が一体的に形成されている。イ
ンク供給部材1087の金属製支持体1082に対する
固定は、インク供給部材1087の裏面側の2本のピン
(不図示)を支持体1082の2つの穴1088にそれ
ぞれ貫通突出させ、これを熱融着することにより簡単に
行われる。この際、オリフィスプレート部1880とイ
ンク供給部材1087との間の隙間を封止し、さらに金
属製支持体1082に設けられた溝1089を通り、オ
リフィスプレート部と金属製支持体1082前端部との
間の隙間を完全に封止する。
【0069】図8はブラック、シアン、マゼンタ、イエ
ローの4色のインクをそれぞれ吐出可能な上記4つのヘ
ッドユニット1174をフレーム枠1170で一体的に
組み立てた4ヘッド一体インクジェットカートリッジ7
02の構造を示している。4つのインクジェットヘッド
はフレーム1170内に所定の間隔で取りつけられ、し
かもノズル列方向のレジストも調整された状態で固定さ
れる。この場合にはインクジェットヘッドの機械的な基
準面を用いて調整することで、色間の相互着弾位置精度
を向上させている。ほかにフレーム枠にインクジェット
ヘッドを仮止めした上で実際に吐出させ、その着弾位置
を測定したデータを基にし、直接的に色間の相互着弾位
置を調整してさらに精度を高めてもよい。1171はフ
レームのカバーであり、1173は4つのインクジェッ
トヘッドの配線基板1080に設けられたパッドとイン
クジェットプリント装置本体からの電気信号をつなぐた
めのコネクタである。4つのインクジェットヘッドを一
体的に組み立てることは、取り扱い上の優位性に加え、
前述のごとくヘッド間の相互着弾位置精度を向上させる
点で有効であるが、インクジェットプリント装置本体と
の信号線接続数を少なくできる点でも大きな効果があ
る。たとえば、GNDラインなど4つのインクジェット
ヘッドに共通の信号線は、コネクタ基板1172上で共
通化して線数を減らすことができ、また、一体化回路基
板を設けて、インクジェットヘッドごとに時分割駆動を
行うようにすればプリント信号線の共通化も可能とな
る。こうした電気的接続数の減少はカラー機や多ノズル
高速機のように信号線数の多い装置では有効である。
【0070】また本実施例におけるインクジェットプリ
ントシステムに用いられる一般的なインクは以下のとお
りであるが、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの
順に、それぞれインク(A)、インク(B)、インク
(C)、インク(D)として、その成分を示しておく。
なお、今後特に断らない限り、%は重量基準とする。
【0071】 ・インク(A):ブラック用 (溶剤) トリエチレングリコール 7.0% ヘキサントリオール 7.0% イソプロピルアルコール 1.5% (界面活性剤) アセチレングリコールの エチレンオキサイド付加物 0.01% (商品名:アセチレノールEH、 川研ファインケミカル(株)製) (染料) フードブラック2 3.0% (残量) 水 ・インク(B):シアン用 (溶剤) インク(A)と同一 (界面活性剤) インク(A)と同一 (染料) ダイレクトブルー199 2.5% (残量) 水 ・インク(C):マゼンタ用 (溶剤) インク(A)と同一 (界面活性剤) インク(A)と同一 (染料) ダイレクトレッド227 2.5% (残量) 水 ・インク(D):イエロー用 (溶剤) インク(A)と同一 (界面活性剤) インク(A)と同一 (染料) ダイレクトイエロー86 1.5% (残量) 水 次に本実施例の布帛のプリントを行う際の動作を図1に
示し、図2に示す一般的な普通紙あるいはコート紙に対
応するプリント動作と比較しつつ説明する。本例では、
先に述べた分割プリント法に従い、4回のマルチパスプ
リントによって画像を完成させている。なお、本例にお
いては布帛として綿を用いている。
【0072】図2は本実施例でコート紙あるいは普通紙
をプリントする場合の状態を示したものであるが、本実
施例に用いるインクジェットヘッドのノズル数は32
で、通常4パス片方向プリント、媒体送り量は32/4
=8ノズル分としている。各プリント走査ではこの図で
示したプリントマスクに従ってプリントされ、各プリン
ト走査毎に8ノズル分の媒体送り走査がなされる。これ
ら第1プリント走査から第4プリント走査までの各プリ
ントマスクは互いに補完の関係にあり、4回のプリント
走査、媒体送り走査が行われた後、初めて単位画像領域
のプリントが完成されることになる。これらのプリント
マスクは、あらかじめプリント装置内で設定されてお
り、プリント走査時に、このプリントマスクのデータと
画像データとの間で論理積をとり、実際のプリントデー
タとする。
【0073】これに対し、図1は布帛にプリントする場
合の状態を示したものであるが、このモードでは、全部
で8回のプリント走査と4回の媒体送り走査によって画
像を完成させている。第1プリント走査と第2プリント
走査、第3プリント走査と第4プリント走査、のように
往復記録走査を対としてプリントを行っていく。これら
は同一のプリントマスクを用いており、両プリント走査
の間に媒体送り走査は入らない。従ってこれら連続する
2走査では、往路と復路の逆方向走査によって同一画素
にインクを打ち込んでいることになる。この連続する往
復2プリント走査の後、8ノズル幅の媒体送り走査が入
り、全8回のプリント走査で初めて単位画像領域のプリ
ントが完成されている。
【0074】図1では、200%のインクを打ち込む
分、図2の通常のプリントモードに比べて2倍のプリン
ト走査を必要とする。しかし、ここでは往復走査でプリ
ントしているので、キャリッジの走査回数およびプリン
トに要する時間は図2と同等である。一方、図2におい
ても、第2、第4プリント走査を復路方向で行えば、さ
らにプリント時間が短縮されることは可能であるが、通
常のコート紙や普通紙では往復プリントは画像劣化の原
因となり易い。図5で示した本実施例に用いるインクジ
ェットプリント装置では、4色のヘッドがキャリッジが
移動する方向、すなわち主走査方向に並列しているの
で、往路プリントと復路プリントではインク打ち込み順
が逆転してしまう。このような場合、インク色のプリン
ト面への打ち込み順によって混色部の色味が異なってし
まうことが確認されている。また、現状のプリント装置
では、往路プリント時の着弾位置と復路プリント時の着
弾位置を正確に制御することは未だむずかしく、このよ
うな着弾位置ずれが罫線や文字品位の劣化を招くことも
知られている。以上のような弊害を起こさないために
も、通常のプリントモードでは図2のような片方向プリ
ントに設定している。
【0075】以上説明したような布帛へのプリント方法
を適用することにより、通常の普通紙やコート紙と同様
に布帛にも良好な画像をプリントすることが可能とな
る。さらに布帛では、普通紙などと比べ、プリントされ
るべき面の表面凹凸が大きいことや、インクを打ち込ん
だ後のインクの浸透や広がりかたが大きいこと等によ
り、往復走査でプリントを行っても、色味の変化やイン
クの着弾位置ずれの影響が比較的少ないため、従来のプ
リント機構でも十分に往復プリントが可能である。従っ
て、布帛のために新たに特別な機構を追加することもな
く、コスト高となることもないものである。
【0076】(実施例2)図3は図1と同様のプリント
走査でありながら、ブラックのみ他の色よりもさらに多
く、400%のインク打ち込み量としたときのプリント
状態である。このプリント方法で実施例1と同様に、綿
に対してプリントを行っている。
【0077】この図においても往復8回のプリント走査
で画像を完成させてはいるが、各プリント走査で用いら
れるプリントマスクは、50%に間引かれているもので
ある。第1、第2、第3、第4の計4回のプリント走査
は同一のプリントマスクを用い、等しい画素にインクを
4回着弾させて400%のインクの打ち込みを達成して
いる。
【0078】このようなインクの色別に打ち込み量を設
定すること、とくに黒色インクの打ち込み量を多くする
設定を行うことによって、より黒色が映え、鮮明な画像
が布帛上においても得られる。一般に、人の目に映る画
像として、黒色は濃度がより濃いほうが、めりはりがき
き、鮮明に見える。従って上記構成をとることによって
画像はより鮮明さが向上するものである。
【0079】(実施例3)図4は実施例2と同様にブラ
ックのインク打ち込み量を他の色よりも多くしたいが、
使用する布帛が薄手のものである場合の例である。この
場合には、実施例2のように400%のインク打ち込み
量とすると、打ち込まれたインクが布帛の裏側にまで到
達し、さらには布帛自身のインク受容能力を越えてしま
うことが起こり得る。このことはブラックと他の色との
間の境界におけるにじみを助長したり、また布帛背面に
まで到達したインクによってプリント装置を汚染し、次
に給送されてくる布帛までをも汚染することになりかね
ない。また、インクの打ち込み量が多いときには、それ
だけその部分における布帛の体積増大もより大きくなり
やすく、このことが布帛媒体の波打ち状態を引き起こし
やすくなる。したがって、インク打ち込み量のデューテ
ィーを300%に調整し、これらの弊害を回避したもの
である。
【0080】この図においても実施例1および実施例2
と同様、往復8回のプリント走査で画像を完成させては
いるが、各プリント走査で用いられるプリントマスク
は、37.5%に間引かれているものである。第1、第
2、第3、第4の計4回のプリント走査は同一のプリン
トマスクを用い、等しい画素にインクを4回着弾させて
300%のインクの打ち込み量を達成している。
【0081】このようなインクの打ち込み量を設定して
も、使用した布帛の厚さが薄いため、前述の実施例2の
場合と比べ、プリントされた画像として劣ることはな
く、十分に黒色が映え、鮮明なものを表現することが可
能である。また布帛媒体の波打ち状態の発生も抑えるこ
とが可能となるため、インクジェットヘッドの破壊等の
弊害も防止することができる。
【0082】(実施例4)インクの組成として、界面活
性剤の含有率を、インクに対する臨界ミセル濃度未満で
あり、かつ水に対して与えたときのその水に対する臨界
ミセル濃度より多くなるようにして調製したものを用い
る。これを以下に示すインク(E)、インク(F)、イ
ンク(G)、インク(H)とする。
【0083】 ・インク(E):ブラック用 (溶剤) グリセリン 7.5% チオジグリコール 7.5% (界面活性剤) アセチレングリコールの エチレンオキサイド付加物 1.0% (商品名:アセチレノールEH、 川研ファインケミカル(株)製) (安定化剤) 尿素 7.5% (染料) フードブラック2 4.0% (残量) 水 ・インク(F):シアン用 (溶剤) インク(E)と同一 (界面活性剤) インク(E)と同一 (安定化剤) インク(E)と同一 (染料) ダイレクトブルー199 3.5% (残量) 水 ・インク(G):マゼンタ用 (溶剤) インク(E)と同一 (界面活性剤) インク(E)と同一 (安定化剤) インク(E)と同一 (染料) ダイレクトレッド227 3.5% (残量) 水 ・インク(H):イエロー用 (溶剤) インク(E)と同一 (界面活性剤) インク(E)と同一 (安定化剤) インク(E)と同一 (染料) ダイレクトイエロー86 2.5% (残量) 水 これらのインクを、図5に示した4個のインクタンク群
703に色別にそれぞれ収容し、実施例1で使用したイ
ンクタンクと交換する。ここでのインクタンクの交換手
段を図9に示す。この図9で、701は4ヘッドが一体
となっているヘッドカートリッジであり、インクジェッ
トヘッド702と7031から7034の4個からなる
インクタンク群703とで構成されているものである。
そして各ヘッドごとにインク供給管が設けられており、
この図ではそのうちの1色分についてのみ7021で代
表して示している。また、4個のインクタンク7031
から7034は任意に交換可能な構成であり、係合ガイ
ドおよびキャリッジ上の加圧手段によりインクジェット
ヘッド702と結合される。インクタンク7031から
7034は、それぞれの内部に、多孔質体からなるイン
ク保持部材が収納されており、インクジェットヘッド7
02に設けられているインク供給管先端のフィルタ70
21と圧接することにより機械的に結合がなされる。結
合後、インクジェットプリント装置本体内のインクジェ
ットヘッドの吸引回復ポンプ(不図示)等を用いて、交
換されたインクタンク7031から7034より強制的
にインクをインクジェットヘッド内に供給充填する。
【0084】このような交換用インクタンクをプリント
装置に適用させることは、任意にインクの種類を交換で
きることはもちろんのこと、インクの種類が固定されて
いる場合であっても、消耗された時点で即座にインクの
補充が可能となるものである。
【0085】このインクジェットプリントシステムを用
い、図1のプリント方法で、麻に対してプリント動作を
行わせた。麻は実施例1で使用した綿と比べ、吸湿率が
低いが、インクとして浸透性が高いものを用いているた
め、プリントされた画像としては、実施例1と同様、に
じみなどの画像劣化は全くなく、非常に良好であった。
【0086】(実施例5)実施例4に用いた4種類のイ
ンクに対し、ブラックのみ以下に示すインク(I)に変
更する。
【0087】 ・インク(I):ブラック用 (溶剤) グリセリン 5.0% チオジグリコール 5.0% イソプロピルアルコール 4.0% (安定化剤) 尿素 5.0% (染料) フードブラック2 3.0% (残量) 水 これらのインクを用い、さらにブラックに用いられるイ
ンクジェットヘッドのみ、その吐出口の面積を大きく
し、吐出量が他の色の2倍の量となるように設定し、あ
らかじめある程度のブラック強調を考慮しておく。具体
的には、360dpiのインクジェットヘッドで、ブラ
ックは80ng/dot、シアン、マゼンタ、イエロー
は40ng/dotとしている。他の条件は実施例1と
同様にしてプリント動作を実施した。このようにブラッ
クのみ、界面活性剤を用いないインクを適用することは
ブラックの文字品位および濃度に他色より重点をおくこ
とができる。
【0088】すでに述べたように界面活性剤を含んだイ
ンクはインク吸収性に大変優れている。このことはカラ
ー画像の異色同士の境界にじみを防ぎ、スループットの
向上につながるので、打ち込み量の多い布帛プリントに
は適したインクといえる。しかし、インク(I)のよう
に界面活性剤を含まないものに比べると、布帛のプリン
ト面上で大きな円となって広がるので、罫線や文字品位
の解像度においてはあまり良好とは言えなくなってしま
う。
【0089】このような場合、本例のようにブラックの
み濃度と解像度に重点をおいたインクと吐出量を適用さ
せることによって、さらに良好な画像を布帛上に描くこ
とができるようになる。
【0090】通常布帛以外のプリント媒体においても、
カラーは境界にじみ、ブラックは濃度と解像度を追求し
ていく方向が今日では一般的になってきている以上、布
帛プリントでも高濃度、高解像度が近い将来要求されて
くることは簡単に予想される。また、特に布帛プリント
においては、ブラックに深み(濃度)が求められること
も多く、この場合には、浸透速度を抑えたインクを適用
することで、繊維に沿って浸透してしまうインクの濃度
分を償うことができる。そのような場合、本例のよう
な、ブラックを80ng/dot、シアン、マゼンタ、
イエローを40ng/dotとした構成をとることによ
って布帛プリントにおいても所望の高濃度、高解像度な
画像が得られるのである。
【0091】さらに本例のように2種以上のインクを用
いた場合に、インク同士の性質の違いから互いに隣接し
て混在し難くいことがある。このようなとき、紙面上の
プリントでは特別なプリント方法を適用させない限り、
境界部でインクが反発しあい、白モヤが生じてしまうこ
とがある。しかし布帛プリントであれば、布帛の規則的
な繊維への吸収が優先されるので、特別な対処なしでも
このような弊害は現れにくい。
【0092】(実施例6)続いて布帛プリントにおける
捺染画像の効果を上げるためのインク組成分の色材とし
て、反応性染料を使用する例をあげる。ここに使用する
反応性染料とは、繊維の染色あるいは従来の捺染方法に
おいて広く使用されている水溶性のアゾ系、アントラキ
ノン系、フタロシアニン系その他の染料である。これら
の反応性染料はその構造中にスルホン酸基やカルボキシ
ル基のごとき水溶性の基を有し、かつ繊維の水酸基また
はアミノ基と反応して繊維と共有結合を生じ得る基、例
えばジクロルトリアジン基、モノクロルトリアジン基、
トリクロルビリミジン基、モノクロルジフルオロビリミ
ジン基、クロルベンゾチアゾール基、ジクロルピリダゾ
ン基、ジクロルキノキサリン基、エポキシ基、3−カル
ボキシピリジニオトリアジン基、−SO2 CH2 CH2
OSO3 H、−SO2 NHCH2 CH2 OSO3 H、−
NHCOCH2 CH2 OSO3 H、−NHCOCH2
2 Cl、NHCOCH=CH2 、−SO2 CH=CH
2 、−CH2 NHCOCl=CH2 、NHCOCBr=
CH2 、−NHCOCH2 Cl、−NHCH2 OH、−
PO3H等を有するものである。
【0093】具体例として以下に示すインク(J)から
インク(M)があげられる。
【0094】 ・インク(J):ブラック用 (溶剤) チオジグリコール 24.0% ジエチレングリコール 11.0% (染料) C.I.リアクティブブラック39 10.0% (残量) 水 ・インク(K):シアン用 (溶剤) インク(J)と同一 (染料) C.I.リアクティブブルー72 10.0% (残量) 水 ・インク(L):マゼンタ用 (溶剤) インク(J)と同一 (染料) C.I.リアクティブレッド24 10.0% (残量) 水 ・インク(M):イエロー用 (溶剤) インク(J)と同一 (染料) C.I.リアクティブイエロー85 10.0% (残量) 水 これらの反応性染料を用いたインク(以下、このインク
を『反応性インク』と称する)を、実施例1と同様にし
て、図5に示されるそれぞれの色に対応するインクタン
ク703に収容した後に、それぞれインクジェットヘッ
ド702と結合、布帛プリントモードに設定する。使用
する布帛には公知の手法でアルカリ処理された絹を用意
しプリント動作に移る。プリントが完了した布帛は、1
02℃に温度管理されたスチーマーで8分間、湿熱処理
を施し、染料と繊維内の−OH基と反応させる。その後
未反応の染料を水洗にて洗い流すことによって、鮮明な
プリント物が得られた。
【0095】(実施例7)次にこれまで述べてきたイン
クジェットプリント装置の変形例として、図10に示す
構成のインクジェットプリント装置について説明する。
本実施例の構成は図5のインクジェットプリント装置の
ヘッド構成を2段構えにしたものである。本実施例によ
れば、これまでの実施例1から実施例6までで説明して
きた、画像を完成させる一連のプリント走査を第1段階
とし、この第1段階終了後、数回のプリント媒体の送り
走査の後に、さらに完成されるべきプリント領域は、イ
ンクジェットヘッド1301により第2段階のプリント
走査が成されるものである。この時、第1段階、第2段
階ともに先に説明したマルチパスプリントを行っていて
もよいし、また行っていなくともよい。インク打ち込み
量を200%とするならば、第1段階では100%プリ
ントに留め、再び第2段階で新たに100%プリントす
る等、2回のプリント段階で効率よくプリント走査を分
配させればよい。
【0096】このような場合、第1段階のインクジェッ
トプリントヘッドが、ブラック、シアン、マゼンタ、イ
エローの4色であることに対し、第2段階のヘッドで
は、ブラック、レッド、グリーン、ブルーの4色でもよ
い。例えばこのような構成にすれば、常に2倍のインク
打ち込み量を必要としてきた、レッド、グリーン、ブル
ーに対し、他の4色と同等な量で扱えるので、画像全体
のインク打ち込み量を平均化することが可能となる。
【0097】さらに本実施例によれば、数回のプリント
走査および紙送り走査の時間で乾燥を促進させた後に、
第2段階のプリントがなされるので、濃度の向上を促
し、異色間のにじみの発生をさらに抑えやすくなる。ま
た、混色部では同時にプリントするインク量を少なくす
ることができるので、インクの過度な浸透を抑制するこ
ともでき、本実施例の構成は、布帛のプリントに好適で
あると言える。
【0098】また、これまでの実施例では第1段階のプ
リントのみであるので、16ノズルおきに各画像領域の
つなぎ位置が現れたが、本実施例では、これに第2段階
のプリントが加わるので、第1段階でのつなぎ部とは異
なる位置につなぎ部が現れるように、予めヘッドのy方
向の位置をセットさせておくこともできる。このように
することは、先に説明したマルチパスプリントのつなぎ
すじに対する効果をさらに向上するものである。
【0099】以上説明したように、本実施例によれば、
図21に示した構成のインクジェットプリント装置を用
い、予めインクジェットプリント装置のプリントモード
の1つとして与えておくことにより、布帛プリントの自
由度をさらに上げることができる。
【0100】なお、これまでの実施例と同様に本実施例
においても、上記特願平5−164845号、および特
願平5−108226号を適用することは、本発明の目
的を達成するために効果的であることはもちろんのこと
である。
【0101】(実施例8)これまでの実施例では、いず
れの場合も図5および図9に示したように、各色のイン
ク吐出を行うそれぞれのノズル群が主走査方向に配列さ
れたもので説明してきたが、カラー画像をプリントする
場合において、図11に示すような副走査方向に各色の
ノズル列を直線上に配列した一体構成も、とり得ること
が可能である。このインクジェットヘッドでは、ブラッ
クを16ノズル、およびシアン、マゼンタ、イエローを
各8ノズルとして1つのインクジェットヘッド上に縦方
向に各ノズルを並列させている。また、図12にはこの
インクジェットヘッドを用いたときの布帛プリントモー
ドでのプリント状態を示しているが、ここでは実施例2
と同様のインク打ち込みとして、50%の間引きマスク
を用い、2ノズル幅の紙送りを繰り返すことにより、ブ
ラックは8往復走査で400%のインク打ち込み、また
シアン、マゼンタ、イエローは4往復走査で200%の
インク打ち込みとして、画像を色ごとに順次完成させて
いくものである。この図において、1画素に対し1ドッ
トインクを打ち込んだ状態を白丸(100%)、2ドッ
ト打ち込んだ状態を黒丸(200%)、3ドットを斜線
(300%)、4ドットを×印(400%)でそれぞれ
表現している。
【0102】本実施例のような縦方向(副走査方向、す
なわちプリント媒体の送り方向)にカラーノズルが並列
されている場合、布帛プリント以外の100%のプリン
トモードでは、プリントマスクをそのままにして紙送り
量を倍にする方法、あるいは紙送り幅を固定のままプリ
ントマスクを25%にする方法がある。また、ブラック
強調を行わない場合には、紙送り量による調整はできな
いので、ブラックノズル部のみプリントマスクの間引き
率を半減させたり、実際にプリントノズル自体を半減さ
せる方法もある。
【0103】本実施例では、各色のインクを順次重ねて
行く構成となるので、異色間のにじみの発生を抑え易く
なる。また、混色部では同時にプリントするインク量を
少なくすることができるので、インクの過度な浸透を抑
制することもでき、本実施例の構成は、布帛のプリント
に好適であると言える。
【0104】以上説明したように、本実施例によれば図
11に示した構成のインクジェットヘッドを用い、図1
2に示した通常よりインク打ち込み量の多いプリント方
法を、予めインクジェットプリント装置のプリントモー
ドの1つとして与えておくことにより、布帛プリントに
おいてもプリントモードを選択するだけで、通常の普通
紙やコート紙或いはOHP用紙のようなプリント媒体と
同様に適切な濃度と画像品位を得ることができるように
なる。
【0105】なお、このような形態のインクジェットヘ
ッドを適用した場合でも、すでに述べた実施例で示した
プリントモードおよびインクの種類の切り替えなどは同
様に行うことができる。
【0106】(実施例9)図13は自動装着を可能にし
たインクジェットプリントシステムの場合におけるプリ
ント部分の構成例を示したものである。またこのシステ
ムを用いた場合のプリント用布帛媒体の構成、およびこ
れらによってインクジェットで捺染を行う際の方法を、
図14および図15に示す。
【0107】本実施例のインクジェット捺染方法を図1
3および図14を用いて簡略に説明する。予めインクジ
ェット用インクおよび基布に適した前処理(インク染着
制御処理)を施した基布を、表層にインク吸収性であっ
て剥離容易な粘着層を設けた普通紙(下紙)に貼り付け
てなる、カットシート状プリント用布帛媒体1707を
用意し、インクジェットプリント装置におけるプリント
媒体の搬送手段である搬送ローラ対(搬送駆動ローラ1
703および搬送従動ローラ1704)の搬送方向上流
側にセットする。インクジェット捺染の準備、すなわち
インクジェットヘッドの回復処理および画像データの設
定などが行われて、捺染工程を開始すると、まず、搬送
駆動ローラ1703およびそれに従動する搬送従動ロー
ラ1704が回転を始め、搬送駆動ローラ1703に先
端部がつき当たっているカットシート状プリント用布帛
媒体1707が回転している搬送ローラ対の圧接部に引
き込まれることによって、カットシート状プリント用布
帛媒体1707が搬送手段に自動的に装着される。この
とき、搬送駆動ローラ1703に接するカットシート状
プリント用布帛媒体1707の面は、インクジェットプ
リント装置に通常頻繁に用いられる普通紙と同様な下紙
側1601の面になるように構成しているので、安定し
た搬送を行うことができる。
【0108】また、搬送駆動されるカットシート状プリ
ント用布帛媒体の普通紙1601と、プリント面であっ
て、搬送従動ローラと圧接搬送される基布1602と
が、インク吸収性の粘着層1603によって貼り合わせ
てあるので、搬送駆動ローラによって下紙を安定して搬
送することによリ、インクジェットの高精彩なプリント
を可能とする搬送性を得ることができる。また、先に説
明したように、カットシート状プリント用布帛媒体の搬
送に同期をとって、搬送路上に設けられたインクジェッ
トプリント部が動作して、カットシート状プリント用布
帛媒体の基布上に画像データに応じたプリント(捺染)
が行われる。プリントが終了し、搬送手段によってイン
クジェットプリント装置から排出された捺染済みのカッ
トシート状布帛プリント媒体を自然乾燥した後、必要に
応じて加熱等による染料の固着処理を施した上で下紙を
はがしてインクジェット捺染された基布を洗浄処理を行
い、再び自然乾燥して、カットシート状の捺染布を得
る。
【0109】本実施例における基布1602は綿100
%の生地である。本実施例では綿100%の生地をカッ
トシート状に裁断・加工する際に搬送従動ローラと接す
る際の搬送性のより安定化、および、捺染後の布目管理
(横地・縦地の判別)の容易化、さらには、原反からの
取り枚数の経済性の向上などを目的として、布目とカッ
トシートの4辺とをほぼ合致させた長方形にしている。
【0110】続いてカットシート状プリント用布帛媒体
の具体的な加工について説明を加える。まず基布の染着
制御処理は、基布1602にインクに合わせて調製した
以下の処理液(P)を用いて、チンマータイプの捺染機
にて100メッシュ、ベタ柄のスクリーンを使用して含
浸させ、100℃で2分間乾燥させた。ここでインクと
しては、実施例6で示した組成のものを使用した。次
に、粘着層は以下に示す処理液(Q)を用いてドクター
ナイフコーターにより、普通紙1601上に均一に塗布
して設ける。基布の厚さやインクジェット捺染時のイン
ク付与量にもよるが、基布で吸収しきれずに滲み出して
きたインクを吸収して基布内での不如意なインクを広が
りを防止できるように、粘着層1603はインク吸収性
に優れたものであることが好ましい。これらの染着制御
処理を終えた基布と、粘着層を設けた普通紙との貼り合
せは、2本のゴムローラを80℃に加熱して圧着により
行なった。
【0111】 ・処理液(P) 尿素 10% 炭酸水素ナトリウム 3% メタニトロベンゼンスルフォン酸ナトリウム 1% 水 86% ・処理液(Q) ポリビニルアルコール 20% 水 80% ついで、このようにしてできあがった布帛媒体を、スリ
ットカッターを用いて、布目の方向に合わせて裁断す
る。ただし、布目の方向とカットシート状に裁断する際
の角度が一定で判別できるようにすれば、基布の材質・
用途によっては布目に対して所定の角度、たとえば45
度傾けてもよい。本実施例では、裁断と同時ないしは裁
断に前後して、下紙となる普通紙に切れ目1604を入
れて捺染後の剥離を容易にしている。同様の効果をもた
らすために、搬送性を損なわないように留意して粘着層
1603を全面に設けず、後端部に非貼り合わせ部を設
けたり、搬送方向に沿って非貼り合わせ部を設ける等を
行ってもよい。このようにしてプリント用布帛媒体がで
きあがる。
【0112】本実施例では、綿100%の基布に対し、
下紙の坪量・抄紙方向を変えてクラーク剛度を調整して
搬送性のテストを行った。坪量20g/m2 以下の軽量
紙を下紙として、剛度の小さい横目方向で貼り合わせて
得たクラーク剛度8のカットシート状プリント用布帛媒
体を用いて搬送テストを行ったところ、斜行や搬送しわ
が発生する頻度が高く、搬送性にかかわる不良の発生頻
度は総合的には48/50と高いため、実用不可能と判
定した。それに対して上記の軽量紙を剛度の高い縦目方
向で貼り合わせて得たクラーク剛度12のカットシート
状プリント用布帛媒体では、搬送不良が10/50に激
減するとともに、不良自体の程度も若干の斜行であって
搬送しわのような致命的な不良はなかった。また、坪量
38g/m2 の軽量紙を用いて作成した横目・縦目方向
のカットシート状プリント用布帛媒体のクラーク剛度は
それぞれ20および39であり、搬送テストではどちら
も不良の発生はなく、良好な搬送性が得られた。よっ
て、インクジェットプリント装置での搬送性の安定化お
よび自動装着を可能とするために、剛直度の小さい基布
を下紙との貼り合わせによってクラーク剛度10以上に
向上させればよいことが判明した。クラーク剛度の上限
および下限は、インクジェットプリント装置の構成にも
よるが、好ましくは400以下であり、より好ましくは
20以上300以下の範囲に調整するように、基布に応
じて粘着層・下紙を選定している。
【0113】クラーク剛度の限界は、落とし込むための
給紙トレイの角度とプリント方向との角度とに関係し、
あまりに小さいと、カットシート状プリント用布帛媒体
の自重と先端部で受ける搬送駆動ローラの駆動力によっ
て圧接部へ送ることが難しくなった。逆に、あまりに大
きいと、カットシート状プリント用布帛媒体の若干のカ
ールなどの非直線性の補正に関し、その先端部を搬送駆
動ローラの周面を利用して直線状にならわせることが難
しくなった。また、給紙トレイによらずに圧接部へ手動
でつき当てておく場合でも、搬送ローラの周面に沿って
保持することが必要であり、そのためにも上記の剛直度
の範囲が好ましいことが判明した。
【0114】本実施例では、プリント媒体をカットシー
ト状のものとしているが、ロール紙状、ロールフォール
ド紙状等、いわゆる連続紙形態のものでもよい。いずれ
にしても、運搬ないし流通、保管等に際しては適宜の工
夫を行うことができる。例えば、カットシート状のもの
では、流通、保管時のプリント特性(染着特性)の変化
を抑制するために、チャック付きアルミ蒸着袋に入れた
上で紙製の箱に詰めて提供することもできるし、目的・
用途によっては防湿紙などによる簡易包装を施してもよ
い。
【0115】インクジェットプリント後の洗浄は市販の
中性洗剤を用いた水洗いでもよいが、より染着性を向上
させるためにフィックス剤等を用いてもよく、錠剤・シ
ート状等の形態で、カットシート状プリント用布帛媒体
に同梱するなどして提供してもよい。また、さらに染着
性を向上させるために、洗浄に先立ってアイロンなどに
よる加熱処理を加えることが好ましい。
【0116】再び図13を参照するに、キャリッジ17
06には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4
色の濃淡インクがそれぞれ詰め込まれた4個のインクタ
ンク1701と、4色のインクを吐出するための4個の
プリントヘッド1174を一体化した一体プリントヘッ
ドカートリッジ1702が搭載されている。本実施例で
は自動装着を安定して行うために傾斜した給送トレイ1
705を設け、給送トレイに沿ってカットシート状プリ
ント用布帛媒体1707を挿入しておくだけで、その先
端部が搬送駆動ローラ1703に正しくつき当たる構成
としている。この状態で搬送駆動ローラ1703を回転
駆動することにより、カットシート状プリント用布帛媒
体1707の先端部は正しく搬送ローラ対の圧接部に導
かれて、斜行やしわを生じないで、搬送手段である搬送
ローラ対に自動装着される。本実施例では、前述のごと
くカットシート状プリント用布帛媒体の布目に合わせて
裁断してあるので、所定の布目の方向に対して安定した
画像を捺染でき、捺染布を切り出してパッチワークなど
に用いる場合に、捺染の柄と布目を揃えることが可能と
なるため、歪みのない高品位な創作が行える。給送トレ
イがない場合には、搬送駆動ローラと搬送従動ローラの
圧接部にカットシート状プリント用布帛媒体の先端部を
合わせておいて、搬送駆動ローラを回転駆動させるよう
にすればよい。本発明におけるカットシート状プリント
用布帛媒体は前述のごとく普通紙と同等の搬送特性を有
するものであり、その他公知の紙送りレジスト調整機構
などの適用も可能である。
【0117】1703は搬送駆動ローラで、1704の
搬送従動ローラとともに自動装着されたカットシート状
プリント用布帛媒体1707を抑えながら、図の矢印r
の方向に回転し、プリント媒体1707を随時送ってい
く。キャリッジ1706はプリントを行っていないと
き、あるいはインクジェットヘッドの回復作業などを行
うときにはホームポジション(不図示)に待機するよう
になっている。
【0118】プリント開始前、図の位置(ホームポジシ
ョン)にあるキャリッジ1706は、プリント開始命令
がくると、キャリッジガイド軸1708に沿って移動し
ながら、リニアエンコーダの読み取り信号に基づいてタ
イミングを取ってプリントヘッド1174上の各ノズル
よりプリント信号に応じて4色のインクを吐出すること
により、プリント媒体上に幅dだけのプリントを行う。
このプリント走査によりプリント媒体上には、ブラック
インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローイン
クの順でインクが着弾してドットが形成される。プリン
ト媒体端部までデータのプリントが終了すると、キャリ
ッジは元のホームポジションに戻り、再び次の行のプリ
ントを行う。この最初のプリントが終了してから2回目
のプリントが始まる前までに、搬送駆動ローラ1703
が回転することにより幅dだけのプリント媒体の搬送を
行う。このようにしてキャリッジの1走査ごとに、プリ
ントヘッドのプリント幅dだけのプリントとプリント媒
体の搬送を行う繰り返しにより、一つのプリント媒体上
のデータプリントが完成する。プリントが終了した時点
で搬送手段による排出が行われると同時に、プリント時
に平坦なプリント面を形成していたプラテン1709が
排出方向に傾斜して、後端部の排出を補助する構成とし
ている。排出の補助、およびカットシート状プリント用
布帛媒体のプリント部での安定した押さえを行うため
に、プリント部の下流側に拍車ローラなどの手段を設け
ても良い。
【0119】これらの構成では、布帛用のプリントモー
ドに加え、さらにプリントを行わせる布帛の操作性も同
時に考慮しているため、より手軽に布帛へのプリントを
楽しむことを可能にしている。
【0120】(実施例10)本実施例では布帛の搬送性
向上のための剛度調整を下紙の貼り合わせではなく、布
帛自体で剛化剤を用いて処理することにより行ってカッ
トシート状プリント用布帛媒体を得た例を示す。目標と
したクラーク剛度は実施例9と同様に、自動装着可能な
インクジェットプリント装置に適応可能な値であるクラ
ーク剛度10以上400以下、好ましくは20以上30
0以下とした。
【0121】布帛自体の剛度を向上させるために、以下
に示す糊剤を含有させた処理液(R)を用いる。具体的
な処理方法としては、布帛(本例では綿を使用する)を
処理液(R)中にいったん含浸させ、その後一定の荷重
がかかった状態で、互いに接しながら回転する2つのロ
ーラーの間に、この布帛を挟みこんで絞り、余分な処理
液を排除する。次いで100℃で2分間乾燥させるとあ
る一定の剛度をもつ布帛が得られる。この得られた処理
布のクラーク剛度は70であり、実施例9で示したイン
クジェットプリント装置で搬送テストを実施したところ
良好な搬送性が得られ、その後実施例1に示した一般的
なインクを用い、プリントを行った。これにより高精彩
な画像が得ることができた。
【0122】 ・処理液(R) アルギン酸ナトリウム 5% 水 95% 続いてこのプリントを行った布帛より糊剤を除去させる
ために水洗を行うが、この際にプリント画像中の染料を
布帛中に固着させるために、この布帛の画像の上から以
下の処理液(S)でドクターブレードにて全面塗布を行
い、次いで50℃、30分の乾燥を行った。なおこの処
理液(S)は水溶液状態であるが、比較的高粘度である
ため、処理液塗布時に画像を形成している染料を流し去
ることはない。
【0123】 ・処理液(S) ポリアリルアミン塩酸塩 30% 水 70% この後に、約40℃の温水で家庭用洗濯機にて5分間の
水洗、乾燥、アイロン仕上げにより、元の綿の風合いを
持つプリント物とすることができた。
【0124】この構成では、先の実施例10に対し、布
帛媒体にさらに異なる部材を取り付けるようなことを行
っていないため、プリントの手軽さをより向上させてい
る。
【0125】(実施例11)本実施例では、図16のよ
うな、カットシート状プリント媒体の自動装着に加え、
自動給送機構を搭載したインクジェットプリント装置の
例を示す。また、本実施例ではインクジェットプリント
後にプリント用布帛媒体を加熱処理して染着率の向上を
図る機構をも合わせて持たせた。さらに、インクジェッ
トプリント部のプリント方式を改良して厚手のカットシ
ート布プリント媒体に対しても適応可能なようにプリン
トモードの選択機構等を有した操作パネル1910を設
けた。
【0126】本実施例における給送機構は、前述の実施
例9および実施例10で示したカットシート状プリント
用布帛媒体でも給送可能である。前述のごとく、カット
シート状プリント用布帛媒体はインクの染着制御を行う
ための前処理がなされており、搬送機構と同様に、プリ
ント面側に接する給送部材を駆動することは搬送性およ
びプリント特性の点から好ましくない。すなわち、イン
クジェットプリント装置で一般的に用いられる給送部材
の駆動側である給送駆動部材は、ゴム材などの弾性部材
であるが、ゴム材と前処理済みのカットシート状プリン
ト用布帛媒体のプリント面とが摩擦摺動されると、摺動
部のインク受容特性が変化して給送跡を発生させたり、
また、逆にゴム材へ前処理剤が若干ずつ転移した場合に
は、摩擦係数の低下による給送不良が生じたりする場合
がある。そこで本実施例では、給送駆動部材をカットシ
ート状プリント用布帛媒体の裏面(非プリント面)側に
限定した構成としている。本発明の実施例10で示した
カットシート状プリント用布帛媒体は、下紙を用いずに
搬送性の改善を行っているので、裏面側にも前処理剤が
あるが、給送駆動部材の保護の点から、裏面に対して転
移防止処理をさらに施す様にしてもよい。あるいは特別
な処理剤を用いずに、裁断前のロール状の状態などで裏
面に対して予め摺動摩擦処理を行うことによって、転移
する可能性のある前処理剤を除去するようにしてもよ
い。
【0127】本実施例における給送機構は必要に応じて
回転駆動される給送駆動ゴムローラ1902と、カット
シート状プリント用布帛媒体を積層保持し、必要に応じ
て上下する給送保持板1901と、カットシート状プリ
ント用布帛媒体の先端部に当接して積層されたカットシ
ート状プリント用布帛媒体を分離する分離パッド190
3、および分離給送されたカットシート状プリント用布
帛媒体を搬送ローラ対まで送出するための給送ガイド1
904とで構成される。
【0128】給送信号に応じて、まず給送保持板190
1が上昇して給送保持板に設けられたバネ部材の加圧力
によって給送保持板上に裏面を上にして積層保持された
カットシート状プリント用布帛媒体1707と給送駆動
ゴムローラ1902とが圧接される。その状態で給送駆
動ゴムローラが給送方向に回転駆動されると、カットシ
ート状プリント用布帛媒体が裏面で摩擦褶動力を受けて
給送される。このとき、積層されているカットシート状
プリント用布帛媒体間においても摩擦摺動力が発生する
ので、給送駆動ゴムローラに接する最上部のカットシー
ト状プリント用布帛媒体に引きずられ、その下側のもの
も同時に給送され始める。同時に、重ねて給送され始め
た複数枚のカットシート状プリント用布帛媒体の先端部
が、摩擦力の高い分離パッド1903にさしかかると、
下側から順次引き止められるので、分離パッド上を通過
する内に一枚のみが給送されることになる。分離給送さ
れたカットシート状プリント用布帛媒体は、依然回転を
継続する給送駆動ローラ1902によって給送ガイドを
介して回転駆動されている搬送ローラ対の圧接部に到達
し、搬送ローラに自動装着される。自動装着された時点
でタイミングをとって給送保持板1901が下降し、給
送駆動ローラ1902の給送力がカットシート状プリン
ト用布帛媒体に伝達されなくなリ、この時点で給送駆動
ローラの回転を停止して給送動作を終了する。本実施例
では、給送ガイドの部分でカットシート状プリント用布
帛媒体をUターンさせて上下反転させているので、給送
部で裏面が上側であったものが、搬送ローラ対を通過す
る時点ではプリント面が上側になっている。したがっ
て、インクジェットプリント部でのインクの吐出方向は
下向きである。インクの吐出方向はインクジェットプリ
ント方式によって多少は異なるが、好ましくは下向きか
ら横向きの範囲であればよく、給送ガイドでその方向に
送り出すようにすればよい。また、近年の複写機などで
用いられる両面プリントユニットと同様の機構を用い
て、いったん裏面給送されたカットシート状プリント用
布帛媒体を上下反転させるなどの構成をとっても良い。
【0129】いずれにしても、本実施例の給送機構でカ
ットシート状プリント用布帛媒体を分離給送する際に重
要な構成は、カットシート状プリント用布帛媒体の裏面
側から給送駆動する構成に限定することである。したが
って、本実施例の分離パッド方式以外の公知の方式、た
とえば、爪分離方式であっても適用可能であり、プリン
ト面の裏面側に給送駆動部材を圧接させるように構成す
ればよい。自動給送機構では上記のようにカットシート
状プリント用布帛媒体に対して何らかの摩擦摺動力が加
わるので、カットシート状プリント用布帛媒体のクラー
ク剛度は多少高く設定する必要があり、好ましくは25
以上300以下の範囲に調整することで給送特性が安定
することが見いだされた。
【0130】インクジェットプリント動作自体は図13
に示した実施例とほぼ同様の構成・動作であるので説明
を省くが、本実施例では、インクジェットプリント部の
下流側に加熱手段を設けており、必要に応じてカットシ
ート状プリント用布帛媒体に加熱処理を行える構成とし
ている。加熱手段は基本的にはプリンタ・複写機などの
分野で従来公知の加熱機構のいずれもが適用可能である
が、本実施例の目的とする染着率の向上に十分な効果が
得られるように構成されていればよい。また、カットシ
ート状プリント用布帛媒体の構成・布帛の材質および厚
み等に応じて、加熱条件を適宜調整・選択できるような
構成とすることがより好ましい。本実施例では主加熱手
段として反射笠付きの赤外線ヒータ1905を用いて、
インクジェットプリントに伴うカットシート状プリント
用布帛媒体の前記搬送動作に同期して所定の加熱条件で
通電制御する。プリント面側から直接加熱した場合に
は、プリントパターンの色分布などに応じて加熱むら・
インク蒸発むらが生ずる場合があるので、本実施例では
裏面側からの加熱を行うように構成している。しかし、
加熱手段の構成・加熱条件によってはプリント面側から
の直接加熱や、両面からの加熱を行うようにしてもよ
く、また、加熱板などを用いた接触加熱方式でもよい。
本実施例では赤外線加熱方式の補助構成として、加熱部
近傍の熱や蒸気の滞留を防止して安定した加熱制御を行
えるように送風手段(不図示)を設け、必要に応じて加
熱部に風の流れを生じさせている。また本実施例では裏
面からの赤外線加熱を行っているので、実施例9で示し
た下紙付きのカットシート状プリント用布帛媒体では、
熱受容面となる下紙の赤外線吸収効率を高めるために、
下紙に黒色の紙を用いるなどして、赤外線吸収特性の向
上を計ってもよく、また下紙および粘着層に添加剤を用
いる等して熱伝導性を高めたものや、搬送性・給送性に
考慮してなるべく薄いものを用いるようにしてもよい。
【0131】本実施例で示したカットシート状プリント
用布帛媒体が搬送可能なインクジェットプリント装置で
は、布帛の厚さ・材質に応じてインク打ち込み量を調節
・選択できるようにしている。普通紙を用いてプリント
を行う場合には、解像性の低下、色間の滲み出し、裏抜
けおよび定着時間増大などの点でインクの最大打ち込に
量は制限されるので、通常、インクの最大打ち込み量
は、水系インクの場合には16〜28nl/mm2 程度
に収めるように設計することが一般的である。しかしな
がら、本発明のようにカットシート状プリント用布帛媒
体にプリント(捺染)する場合には、布帛の材質・厚
さ、さらには前処理条件にもよるが、さらに多くのイン
クを受容できる場合がある。そこで本実施例では、プリ
ント周波数に対応するプリント速度よりも小さいプリン
ト速度で高密度プリント、たとえば1/2のプリント速
度で倍密度プリントしたり、同一のプリント領域を複数
回のプリント走査で重ねプリントしたり、インクの吐出
量を増加させるためのインクジェットヘッド駆動制御、
たとえば、熱インクジェットヘッドでは保温温度を高め
たり、マルチパルス駆動を行うことによって、必要に応
じてインクの打込量を増加させることを可能としてい
る。本実施例では操作パネル906上でプリントモード
を厚手布に指定すると、同一のプリント領域を3回の重
ねプリントで行う全色300%プリントを行い、薄手布
を指定すると全色200%、また普通紙では全色100
%プリントを行うようにしている。そのため布に応じて
最適なプリント条件を選択でき、糸の内部まで十分に染
色することが可能となり、深みのある捺染布を得ること
ができる。
【0132】このように、給送機構・加熱機構・打込量
増加機構を備えたインクジェットプリント装置を用いて
カットシート状プリント用布帛媒体に捺染するようにし
たので、操作性・染着性・色の深味が一段と優れた簡易
インクジェット捺染が行えるようになった。
【0133】(実施例12)本実施例では、図17に示
したようなプリンタドライバによって、ホストコンピュ
ータの画面上において布帛用プリントモードを設定する
場合の例であるが、ここで布帛用プリントモードを選択
することにより、その識別信号がホストコンピュータか
らインクジェットプリント装置に送られ、インクジェッ
トプリント装置内で、これに従って自動的に該当するプ
リントモードに変更される。ここではあらかじめプリン
ト用紙として、『布』を選択すると、先の実施例2で述
べたプリントモードに自動的に設定される構成になって
いる。さらにプリント部においては、インクジェットヘ
ッドのインク吐出口が配列されている面とプリント媒体
表面との間の距離(以下、『ヘッド・紙間距離』とい
う)を、同時に0.5mm伸ばす。ここでヘッド・紙間
距離を他のプリント媒体を利用するときよりも伸ばすこ
とについては、次に述べる理由による。
【0134】すなわち、既に述べたように、布帛の場合
にはインク受容量が多い。しかし、これに加え布帛、特
に天然繊維は、一般にその周囲の空気の湿度の大小によ
り吸湿度も増減しやすい。したがってここで設定された
プリントモードでプリントを行う場合においては、周囲
環境の湿度が高く、しかも画像中にブラックが占める部
分が多いと、そのプリント部分における布帛中の水分量
がかなり高くなることがいえる。この結果布帛自体に体
積膨張が生じるため、プリントされる面の平面性が乱
れ、布帛自体が波打つ状態になりやすくなる。この波打
ち現象が発生した場合、非プリント面、すなわち布帛の
背面側はプラテンで支持されているため、体積膨張した
布帛はその反対側のインクジェットヘッドに向かって持
ち上がろうとする。この持ち上がり量が多くなればイン
クジェットヘッドの走査中に両者が衝突することにな
り、インクジェットヘッドの破壊にも結び付く。このこ
とを回避するため、布帛プリントモードを設定した際
に、同時にヘッド・紙間距離をあらかじめ大きくするこ
とが重要になる。ただしこのヘッド・紙間距離を大きく
した場合、着弾精度を悪化させることにつながるが、前
述しているように、布帛の場合には、もともとドット径
が大きいことや、布帛プリントの風合い上それほど厳し
い着弾精度が要求されないことを考慮すると、このヘッ
ド・紙間距離を伸ばすことは実用上問題は生じない。な
お、このヘッド・紙間距離の変更については、キャリッ
ジ上にレバー等で機械的に切り替えるなど公知の手法
で、手動あるいは自動で行えるような構成をとっておけ
ばよい。
【0135】これらの構成では、インクジェットプリン
ト装置自身に対しては、布帛の装着以外はほとんど操作
を意識する必要がなく、すべてホストコンピュータ上で
プリントに対して最適な設定を自動的に行うことができ
る。このため使用者に対し、各種の状況下での設定を意
識させることがないという点で有効である。
【0136】(実施例13)図18は、インクジェット
捺染装置の中で、布帛の上に画像のプリントを終えた
後、その部分を順次送り出し、インクジェット捺染装置
より排出する際に、その排出口において布帛媒体の上下
動を規制するために、拍車709を設けた場合の装置の
例である。この拍車709は、通常は、プリント媒体が
上下に動いてインクジェットヘッド部に衝突することを
避けるために設けているものであるため、特に大きな力
をかける必要性はなく、また全面にわたって押さえなく
ともその機能は果たせるため、一定の間隔を開けて、し
かもほぼ点接触で押さえるように構成している。このよ
うな構成は、各種のプリント媒体を利用できる汎用のプ
リント装置において、簡易な機構で安定した媒体の搬送
を実現することができ、非常に有効な手段である。この
プリント装置を布帛のプリントに適用した場合には、上
述のように布帛プリントモードを設定した後、実際のプ
リント動作を開始すると、あらかじめプリント媒体の先
端部を一定量だけ空送りして、先端部全域が拍車の接触
部を通過する動作を行い、その後にインクジェットヘッ
ドからのインク吐出をはじめる。ここでプリント媒体先
端の移動量、すなわち図18における距離sは、使用す
るプリント装置によって定められるが、一般にこの拍車
はプリントヘッドの吐出部に近いところに設置したほう
が効果的であるため、20mmから50mm程度であ
る。本実施例においては、この距離sを40mmに設定
している。この動作は従来普通紙やOHPシートを利用
していた際には特に必要なものではなっかたが、布帛の
場合においては、吸湿性が高いことや折れ曲がりに弱い
こと等の性質があるため、安定で確実な搬送を確保する
という観点で非常に有効なものとなる。ただし布帛の形
態がカットシート状である場合には、この先端の空送り
量を考慮し、この長さの分以上をあらかじめ余分に長く
とった長さで裁断しておく必要がある。この場合にも布
帛に対してプリントを行った後は縫製等により加工する
ことがほとんどであることを考慮すれば、カットシート
状であっても、その寸法は正確に定形である必要もな
く、支障を与えるものではない。
【0137】(実施例14)図19および図20は、各
種の布帛にプリントを行うために、インクジェット捺染
装置におけるプリントモードを、使用する布帛と画質に
応じて各種の設定が行えるシステムに組み立て、その選
択の流れを示すものである。この各種の設定を行うにあ
たっては、上記実施例12において述べたように、ホス
トコンピュータでプリンタドライバから設定が可能であ
るが、それ以外に、実施例11でも述べたようなインク
ジェット捺染装置上のパネル等でスイッチによって設定
を行うこともできる。
【0138】まずホストコンピュータ上で所望の画像を
作成し、ついでその画像のプリント信号をこのホストコ
ンピュータからインクジェット捺染装置に送出する。こ
の際に、実施例12と同様に図17に示すようなプリン
トモード設定が表示される。通常は『用紙』の欄、すな
わちプリント媒体の種類の欄で『布』を選択すると、次
いで図19に示すような布帛プリント用の動作モードの
設定に移行する。この移行が行われると、従来からある
紙等のプリント時とは異なる細かなプリントモードの選
択が可能となり、使用する布帛および画像に応じて任意
に適切なプリントを実施することを実現している。以
下、図19を用い、また必要に応じて図20も併用しな
がら、これらの流れを順に説明していく。
【0139】布帛プリント用の動作モード設定に移行し
た後、はじめに使用する布帛の種類について、図19の
“布種選択”から“プリントモード設定部”の流れの中
で選択および設定を行う。ここでは、ROMや不揮発性
メモリ等によってあらかじめ記憶されている情報に基づ
いて、選択された布帛の種類に応じた各色のインクの打
ち込み量を定めたプリントモードの既定値に一義的に決
まる。これと同時に、インクジェットヘッドの走査方
法、および媒体先端部の空送り量が設定される。これら
の設定の中で、布帛の種類に関しては、図20の中でも
示しているように、標準布、厚手布、薄手布、密織布、
粗織布の中から選択できるように構成されている。な
お、この中でプリントモードの決定に関わる要素は、布
帛を形成している繊維体の大きさやその集合体の密度で
あるため、以前の説明でも述べた剛直化の有無に直接影
響されない。したがってこの選択にあたって、剛化の状
態は選択肢の中には入っていない。またプリントモード
の既定値は、高画質化のためにブラックを強調したもの
ですべて定めている。
【0140】次にこれらによって設定された各種のプリ
ントモードでプリントモード制御部103に移行し、画
像信号の中でプリントモードが組み入れられる。この経
路内において、必要に応じてプリントモードがさらに任
意に変更できるようにプリントモード変更部105が設
けられている。ここでは、先にプリントモード設定部1
02で述べたプリントモードの既定値に対し、各色のイ
ンク打ち込み量、インクジェットヘッドの走査方法、プ
リント媒体の先端空送り量に関し、任意に変更できるよ
うに構成されている。インク打ち込み量の変更につい
て、図20を用いて説明すると、各布種について、それ
ぞれブラック強調の解除および全色のインク打ち込み量
を減少させることによる淡色モードが設けられており、
出力した画像を、使用者の希望に応じて種々の形態にす
ることを可能とする流れを示している。たとえば標準布
では、通常CMYで200%、Bkで300%のインク
打ち込みであるが、このブラック強調を解除した場合に
は、CMYで200%、Bkで200%へと変更され、
さらに淡色モードと設定したときには、CMYで100
%、Bkで100%へと変更可能とする。また薄手布の
場合には、通常CMYで100%、Bkで200%であ
るが、これにブラック強調の解除を指定したときにはC
MYで100%、Bkで100%と変更される。
【0141】以上説明した制御過程を経ることで、プリ
ントモードの設定が各種設けられていても、定められる
プリントモードの種類としては幾つかのグループに分け
られ、さらに従来の紙等に行うプリントモードと共有す
ることができるため、使用者が設定するプリントモード
の種類が多くなっても、装置全体の大きさを大きくした
り、またコストを大幅に上げるという問題は発生しな
い。またこれまで説明した図20の中で、薄手布および
粗織布については淡色モードへの移行が示されていない
が、これらはブラック強調を解除した時点で全色のイン
ク打ち込み量が100%となっており、これよりもさら
に下げることができないことからによる。仮にこれらの
打ち込み量を100%よりも下げた場合には、部分的に
画像形成のためのドットが欠落することとなり、画像形
成上問題が生ずる。
【0142】以上説明した過程を経て、使用する布帛に
対して所望の画像を形成するにあたって、プリントモー
ドを決定した後は、これらの信号は図19におけるプリ
ンタ動作設定部へと移行する。ここでは具体的には、画
像信号をバッファの中にため込んだり、プリンタの制御
系にインク打ち込み量やインクジェットヘッドの走査方
法、先端部空送り量の制御等の信号を、プリンタの制御
回路に送出したりするものである。これらの過程によっ
てプリント部分の実際の動作が開始される。この際に、
前述したように布帛の場合にはコックリングの影響を受
けやすいことから、ヘッド・紙間の距離を大きくするこ
とが挙げられた。この点に対する指示や実際の動作モー
ドを、プリント動作と共に使用者に知らせるために、注
意事項表示部106が接続されている。なおこれらの情
報の表示方法は、ホストコンピュータの画面上であって
も、またプリント装置に設けられたパネル上であって
も、いずれの手法も利用することができる。
【0143】ここまで説明した中で、プリントモードの
変更等の各種の変更を行う場合に関し、その例を挙げな
がら具体的に説明しておく。まずプリントモードの変更
を行う場合であるが、これはもともと既定値として定め
られている値があらゆる布帛の中で、最も一般的な素材
で設定しているため、使用する布帛の素材が変わった場
合においては、これらの各種設定が適切でない場合が存
在し得ることから設けている。また使用する布帛の素材
が変わらなくとも、プリントする画像の内容によって
は、上述の初期設定を変更して行ったほうが好ましい場
合もあり得る点もその理由である。このような場合に、
既定値に対して各色のインク打ち込み量を故意に変更、
つまり減少させることができる。このような既定値から
の変更を行いたい場合には、たとえば図17の『設定変
更』欄を選択すると、さらに続いて現在選択されている
用紙(ここでは布帛)において変更できる種類の一覧が
表示され、設定の変更を可能にしてもよい。例えば全体
に均一な色合いで画像をプリントする場合には、特にブ
ラックの打ち込み量を多くして強調する必要性がないの
で、標準布を用いている場合でもブラック強調を解除す
る等の利用のしかたがある。また裏面に紙を貼付して剛
直化をなした布帛を使用する場合には、先端部のコック
リングに対する安定性が比較的高いため、先端空送りを
解除して利用することもできる。以上のように、あらか
じめ各種の布帛に対して適切なプリントモードに設定は
してあるが、使用者の目的に応じてその設定を、容易に
切り替えられるようにしたものである。
【0144】なお、プリント媒体の先端空送り解除につ
いては、使用する布帛の長さが短い場合や、カットシー
ト状の布帛全体に画像を表現したい場合などにこのモー
ドを活用することができるが、この先端空送り解除のモ
ードを実行する場合は、実施例13で述べたプリント媒
体の搬送上の問題がない場合に限ることはいうまでもな
い。
【0145】なお、これまで説明してきた実施例では、
インクの打ち込み量を変化させるにおいて、1画素に打
ち込むインク滴の数をプリントモード毎にマルチパスプ
リントで制御していく方法で説明してきた。しかし、1
画素へ打ち込むインク量を調整する方法はこれに限った
ものではない。打ち込むインク滴は1つだとしても、イ
ンク滴自体の量を制御すれば、本発明の目的を達成させ
ることは可能である。通常インクジェット方式では、そ
れに用いるインクジェットヘッド自体の温度が上がる
と、吐出量(インク滴の量)が大きくなることが知られ
ている。従って本発明においても、布帛用プリントモー
ドに設定された場合には、通常よりヘッド温度を上げた
状態でプリントするようにプリントモードの設定が行わ
れれば、他のプリントモードと全く変わらないプリント
シーケンスおよびスループットで、ある程度高い濃度の
プリント生地が得られるようになる。ただしインクジェ
ットヘッドの吐出能力にも限界があり、このような温度
制御手段によっても、実際には2つ分のインク滴と同等
の量のインクを1度に吐出することは難しい。したがっ
て、このような方法はインクの打ち込み量が2倍に満た
ない、すなわち100〜200%の間に適正値が存在す
る布帛の場合に有効な方法であるといえる。
【0146】このような方法をとれば、1ドット以下の
微妙な調整も可能となる。したがって、これまでの実施
例のプリント方法と本方法を組み合わせれば、200%
以上のインク打ち込み量を必要とするプリント用布帛媒
体に対しても、より最適なインクの打ち込み量でプリン
トすることも可能となる。また、本方法は、各色の吐出
量を上げるのみでなく、ブラック強調のように特別に1
色のみを強調したい場合にも有効である。この場合にも
ブラックヘッドのみ他のヘッドより高温に調整すること
により、適正な量の補正が可能となる。通常ではこのよ
うに1度に大きなインク滴を打ち込む方法は、布帛に対
するインクの定着性不良を招き、異色境界でのにじみ等
の画像弊害が起こりやすい状態となるが、本発明で採用
している浸透性の高いインクによってプリントすれば、
このような画像弊害を免れることができる。
【0147】この構成によれば、1つのインクジェット
捺染装置で、紙等の従来からあるプリント媒体に加え、
布帛といった新たなプリント媒体への対応を同列に付加
し、しかもこの布帛へのプリントに対して、使用者の好
みに応じてプリント方式の設定変更を任意に行えるよう
にしているため、より高度で複雑な色表現を可能にして
いる。
【0148】(実施例15)図25はインクジェットプ
リント装置にもっている各種のプリントモードをプリン
ト媒体別に分類、一覧にしたものである。この中では、
これまでの実施例の説明で述べてきたインクの打ち込み
量に加え、プリント方法、すなわちインクジェットヘッ
ドの走査方法も同時に挙げているものである。ここで
K、C、M、Yのそれぞれは、実施例1で説明したイン
ク色の略語と同一である。
【0149】この表で明らかなように、インクジェット
プリンタで最も一般的に使用される普通紙では、各色イ
ンクの打ち込み量を100%に設定し、プリント方法を
50%マスクの往復走査(2pass)で行う。このモ
ードに対し、高画質、つまりブラックを強調させる場合
には、上記走査をさらにもう1往復行わせ、従って全2
往復で200%の打ち込み量とする。一方ここでブラッ
ク以外は、この2往復(4pass)で100%打ち込
みのままでにしておく必要性があるため、マスクを25
%のものに切り替えている。
【0150】またOHP用紙の場合では、投影により画
像を拡大する使用法より、画像品位に対しては精度が要
求される。このためブラック強調は標準で行い、さらに
インクの着弾位置のばらつきをより解消させるために、
25%のマスクを採用し、これに伴い走査回数を上げて
いる。これに対し、コート紙の場合はインクの発色性が
高いためブラック強調は必ずしもなくともよいが、イン
ク着弾時の各ドットの広がりを普通紙に比べて均一に制
御できるため、OHP用紙のCMYと同一の走査によっ
て高画質化を図っている。
【0151】これらのプリント媒体に対し、布帛の場合
でも同様の考え方をすることができる。ただしインクの
打ち込み量を多くする必要性があることから、インクジ
ェットヘッドの走査回数は4往復(8pass)が必要
となるものである。また布帛の場合には、他のプリント
媒体に対して相対的にインクの打ち込み量が多いため、
プリント動作に伴って発生するインクジェットヘッド内
の蓄熱量の増加も相対的に早くなる。従って従来から一
般的に行われている回復操作も、その動作間隔を短くす
ることもよりよい。とくにこの点については、蓄熱量と
残留気泡との相関から、吸引回復に対して効果があり、
累積吐出ドット数を記憶し、これに基づいて吸引動作の
タイミングを設定することが有効である。
【0152】このように布帛にプリント可能なインクジ
ェットプリント装置において、布帛プリントを実施する
際、インクの打ち込み量を最適に設定することに加え、
同時にインクジェットヘッドの走査方法も最適に切り替
えることも本発明の特徴であり、重要な部分である。
【0153】以上、各種の実施例によって本発明をより
具体的に説明してきた。なお、本発明は、インクジェッ
トプリント方式を採用する場合には、その中でも、イン
ク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱
エネルギーを発生する手段を備え、前記熱エネルギーに
よりインクの状態変化を生起させる方式、すなわちキヤ
ノン株式会社が提唱するバブルジェット方式のインクジ
ェットヘッド、プリント装置を用いることで優れた効果
をもたらすものである。かかる方式によればプリントの
高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0154】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、
コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特
に、オンデマンド型の場合には、インクが保持されてい
るシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体
に、プリント情報に対応していて核沸騰を越える急速な
温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加する
ことによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せし
め、インクジェットヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさ
せて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応したインク
内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成
長,収縮により吐出用開口を介してインクを吐出させ
て、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパ
ルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われ
るので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、
より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米
国特許第4463359号明細書、同第4345262
号明細書に記載されているようなものが適している。な
お、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許
第4313124号明細書に記載されている条件を採用
すると、さらに優れたプリントを行うことができる。
【0155】インクジェットヘッドの構成としては、上
述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電
気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角
液流路)の他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されて
いる構成を開示する米国特許第4558333号明細
書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も
本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変
換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出
部とする構成を開示する特開昭59−123670号公
報や、熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に
対応させる構成を開示する特開昭59−138461号
公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。
すなわち、インクジェットヘッドの形態がどのようなも
のであっても、本発明によればプリントを確実に効率よ
く行うことができるようになるからである。
【0156】加えて、インクジェットヘッドは、プリン
ト装置の形態に対応して構成できることは勿論であり、
所謂ラインプリンタ形態のものに対しては、プリント媒
体の幅に対応した範囲にわたって吐出口を配列したもの
とすればよい。また、上例のようなシリアルタイプのイ
ンクジェットヘッドとしては、装置本体に固定されたイ
ンクジェットヘッド、あるいは装置本体に装着されるこ
とで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインク
の供給が可能になる交換自在のチップタイプのインクジ
ェットヘッド、あるいはインクジェットヘッド自体に一
体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの
インクジェットヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0157】また、本発明のプリント装置の構成とし
て、インクジェットヘッドの吐出回復手段、予備的な補
助手段等を付加することは、本発明の効果を一層安定で
きるので、好ましいものである。これらを具体的に挙げ
れば、プリントヘッドに対してのキャッピング手段、ワ
イピング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あ
るいはこれとは別の加熱素子、またはこれらの組み合わ
せを用いて加熱を行う予備加熱手段、プリントとは別の
吐出を行なう予備吐出手段を挙げることができる。
【0158】さらに加えて、以上説明した本発明の実施
例においては、インクを液体として説明しているが、室
温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化も
しくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジ
ェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範
囲内で温度調整を行って、インクの粘性を安定吐出範囲
にあるように温度制御するものが一般的であるから、プ
リント信号付与時にインクが液状をなすものを用いても
よい。加えて、熱エネルギーによる昇温を、インクの固
体状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使
用せしめることを積極的に防止するため、またはインク
の蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって
液化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネ
ルギーのプリント信号に応じた付与によってインクが液
化し、液状インクが吐出されるものや、プリント媒体に
到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、
熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のイン
クを使用する場合も本発明は適用可能である。このよう
なインクについては、特開昭54−56847号公報、
あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるよ
うな、多孔質シート凹部または貫通孔に液状又は固形物
として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向す
るような形態としてもよい。本発明においては、上述し
た各種のインクに対し、最も有効なものは、上述した膜
沸騰方式を実行するものである。
【0159】さらに加えて、本発明の形態としては、コ
ンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用い
られるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置の形
態をとるもの等であってもよい。
【0160】以上述べた本発明によって選られたプリン
ト物は、その後所望の大きさに切り離され、切り離され
た片は、縫着,接着,溶着等、最終的な加工品を得るた
めの工程が施され、ワンピース,ドレス,ネクタイ,水
着等の衣類や布団カバー,ソファカバー,ハンカチ,カ
ーテン等に加工することができる。布帛を縫製等により
加工して衣類やその他の日用品とする方法は、例えば
「最新ニット縫製マニュアル」(センイジャーナル社発
行)や月刊誌「装苑」(文化出版局発行)等、公知の書
籍に多数記載されている。
【0161】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、一
種類以上の布帛用プリントモード、およびその一種類以
上の布帛用プリントモードを適宜選択できる切替手段
を、他のプリント媒体用のプリントのプリント条件と少
なくとも一つを異ならせるように有し、しかもこの布帛
用のプリントモードによるインク打ち込み量やインク打
ち込み方法を各種設定できるようにしたシステムである
ことにより、通常の、すなわち工業要の捺染装置ではな
い、例えばパーソナルユースでも表面濃度が高く、高精
彩なプリント生地が自由に、短時間で得られるようにな
った。
【図面の簡単な説明】
【図1】布帛プリントモードの一実施形態の説明図であ
る。
【図2】普通紙,コート紙に対するプリントモードの説
明図である。
【図3】布帛プリント時のブラック強調モードの説明図
である。
【図4】布帛プリントモードの別な実施形態の説明図で
ある。
【図5】本発明に適用可能なインクジェットプリントシ
ステムにおけるプリント部の概略を示す模式的斜視図で
ある。
【図6】本発明の実施例において用いたインクジェット
ヘッドの吐出口配列の説明図である。
【図7】本発明に適用可能なインクジェットヘッドの構
成例を示す分解斜視図である。
【図8】本発明に適用可能なカラーインクジェットヘッ
ドの構成例を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の一実施例にかかる分離型タンクの斜視
図である。
【図10】本発明に適用可能なインクジェットプリント
システムにおけるプリント部構成の他の例を示す模式的
斜視図である。
【図11】本発明に適用可能な他の形態のインクジェッ
トヘッドの説明図である。
【図12】図11のインクジェットヘッドを用いた場合
の布帛プリントモードの一実施形態の説明図である。
【図13】本発明に適用可能で、プリント媒体の自動装
着が可能なインクジェットプリントシステムにおけるプ
リント部の概略を示す模式的側断面図である。
【図14】本発明に適用可能なカットシート状プリント
用布帛媒体の一構成例を示す斜視図である。
【図15】図14のカットシート状プリント用布帛媒体
を用いてプリントを行う方法を説明するブロック図であ
る。
【図16】本発明に適用可能で、プリント媒体の自動装
着と自動給送が可能なインクジェットプリントシステム
におけるプリント部の概略を示す模式的側断面図であ
る。
【図17】ホストコンピュータ上で布帛プリントモード
を選択する際の表示の一例を示す図である。
【図18】布帛プリントモードでプリント媒体の先端空
送りを行う際の説明図である。
【図19】本発明のインクジェットプリントシステムに
おける各種プリントモードを設定する際の説明図であ
る。
【図20】図19における各種プリントモード設定の流
れを説明する図である。
【図21】インクジェットプリント時の理想形態の説明
図である。
【図22】インクジェットプリント時の実際の形態の説
明図である。
【図23】インクジェットプリントにおける分割プリン
ト法の説明図である。
【図24】インクジェットプリントにおける分割プリン
ト法の補正行程の説明図である。
【図25】本発明のインクジェットプリントシステムに
おける各種プリントモードの説明図である。
【符号の説明】
701,1301 ヘッドカートリッジ 702 インクジェットヘッド群 703 インクタンク 704 搬送ローラ 705 補助ローラ 706 給送ローラ 707 キャリッジ 708 プリント媒体 801 吐出口 1601 搬送基材としての普通紙 1602 基布 1603 接着層 1703 搬送駆動ローラ 1704 搬送従動ローラ 1707 カットシート状布プリント媒体 1910 操作パネル
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B41M 5/00 E D06P 5/00 111 A (72)発明者 秋山 勇治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小池 祥司 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 春田 昌宏 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクジェットヘッドを用い、該インク
    ジェットヘッドとプリント媒体とを相対移動させながら
    前記インクジェットヘッドから前記プリント媒体に対し
    て、設定されたプリントモードに応じてインクを吐出さ
    せてプリントを行うインクジェットプリンタにおいて、 プリンタの相対的優先モードとして普通紙に基準印字条
    件でプリントを行う第1優先プリントモードと、 該第1優先プリントモードの基準印字条件の少なくとも
    1つを相対的に基準印字条件よりも高画質の印字条件に
    設定して布帛にプリントを行う布帛プリントモードと、 布帛プリントモードよりも第1優先プリントモードを優
    先設定すると共に、第1優先プリントモードに代えて布
    帛プリントモードを設定する手段と、を有することを特
    徴とするインクジェットプリンタ。
  2. 【請求項2】 上記布帛プリントモードは、上記第1優
    先プリントモードにおける黒色と異なる色のカラーイン
    クを用いてインク吐出してプリントするカラーインクプ
    リント条件を高画質の印字条件に変更したカラーインク
    プリント条件を用いることを特徴とする請求項1に記載
    のインクジェットプリンタ。
  3. 【請求項3】 上記布帛プリントモードは、上記第1優
    先プリントモードにおける黒色インクを用いてインク吐
    出してプリントする黒色インクプリント条件を高画質の
    印字条件に変更した黒インクプリント条件を用いること
    を特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリン
    タ。
  4. 【請求項4】 上記プリントモードは、ドットマトリク
    スで予め2値に設定されているプリントマスクとプリン
    ト画像データとの論理積により、インクを吐出する吐出
    部と走査型インクジェットヘッドの走査回数を決定し、
    順次画像を形成するモードであり、上記布帛プリントモ
    ードは、プリントマスクのインク吐出すべきドット比率
    または、該走査回数を上記第1優先プリントモードに対
    して相対的に増加させたものであることを特徴とする請
    求項1ないし請求項3いずれかに記載のインクジェット
    プリンタ。
  5. 【請求項5】 インクジェットヘッドを用い、該インク
    ジェットヘッドとプリント媒体とを相対移動させながら
    前記インクジェットヘッドから前記プリント媒体に対し
    てインクを吐出させてプリントを行うインクジェットプ
    リンタにおいて、 異なる色のカラーインクを用いてインク吐出してプリン
    トするカラーインクプリント条件と、該カラーインクプ
    リント条件よりも相対的に高画質の条件であって該異な
    る色のカラーインクとは異なる黒色インクを用いてイン
    ク吐出してプリントする黒色インクプリント条件と、を
    優先条件として、布帛にプリントを行う基準布帛プリン
    トモードと、 該基準布帛プリントモードのカラーインクプリント条件
    と黒色インクプリント条件の少なくとも一方を布種に応
    じて変更された条件で布種に応じたプリントを行う選択
    布帛プリントモードと、 該基準布帛プリントモードに代えて該選択布帛プリント
    モードを設定する手段と、 を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
  6. 【請求項6】 インクジェットヘッドを用い、該インク
    ジェットヘッドとプリント媒体とを相対移動させながら
    前記インクジェットヘッドから前記プリント媒体に対し
    てインクを吐出させてプリントを行うインクジェットプ
    リントシステムにおいて、 布帛に対する画像形成を行うための一種類以上の布帛プ
    リント優先モードと、該一種類以上の布帛プリント優先
    モードを適宜選択できる切り替え手段と、を有し、他の
    プリント媒体に対してプリントを行うモードのプリント
    条件の少なくとも一つを布帛プリント優先モードで異な
    らせると共にプリントすべき画像信号をつくりだすホス
    トコンピュータ上で設定可能であることを特徴とするイ
    ンクジェットプリントシステム。
  7. 【請求項7】 前記布帛に対する画像形成を行うための
    一種類以上の布帛プリントモードと前記一種類以上の布
    帛プリント優先モードとを適宜選択できる切り替え手段
    とが、プリントする画像信号に従ってプリント動作を行
    う装置上で設定可能にすることを特徴とする請求項6に
    記載のインクジェットプリントシステム。
  8. 【請求項8】 複数色のインクを吐出させることが可能
    なインクジェットプリントシステムであって、前記プリ
    ント媒体に対するインクの打ち込み量が、該複数色のイ
    ンクのうち少なくとも一色に関して多くすることを特徴
    とする請求項6に記載のインクジェットプリントシステ
    ム。
  9. 【請求項9】 前記複数色のインクを吐出させることが
    可能なインクジェットプリントシステムにおいて吐出さ
    れるインクのうち、黒色を呈するインクの前記プリント
    媒体に対する打ち込み量を、他の色を呈するインクの打
    ち込み量以上に設定されてなることを特徴とする請求項
    8に記載のインクジェットプリントシステム。
  10. 【請求項10】 前記布帛プリント優先モードが、プリ
    ントすべき画像データを、所定の画像データ配列にした
    がって間引き、該間引かれた画像データにしたがって主
    走査方向に前記インクジェットヘッドを往復移動させつ
    つインクの吐出を行い、かつ前記インクジェットヘッド
    の往復移動を一回行うごとに、前記プリント媒体を所定
    のノズル列の長さ以下の距離で順次搬送させていくこと
    により画像を形成させていくことを特徴とする請求項9
    に記載のインクジェットプリントシステム。
  11. 【請求項11】 請求項6ないし請求項10いずれかに
    記載のインクジェットプリントシステムに使用されるイ
    ンクであって、界面活性剤を含有する水性インクで、該
    界面活性剤の含有率が、当該インクに対する臨界ミセル
    濃度未満であり、かつ前記界面活性剤を水に対して与え
    たときの該水に対する臨界ミセル濃度より多くなるよう
    に前記界面活性剤を含有させたことを特徴とするインク
    ジェットプリントシステム用インク。
  12. 【請求項12】 前記インクジェットプリントシステム
    用インク中に含有されている色材として、反応性染料を
    用いたことを特徴とする請求項11に記載のインクジェ
    ットプリントシステム用インク。
  13. 【請求項13】 複数種のインクジェットプリントシス
    テム用インクがそれぞれ収容された複数種のインクタン
    クを、使用する布帛に応じて交換可能にしてなることを
    特徴とする請求項12に記載のインクを用いたインクジ
    ェットプリントシステム。
  14. 【請求項14】 請求項6のインクジェットプリントシ
    ステムによって、プリント用布帛媒体に直接プリントす
    るか、あるいは他の転写媒体にプリントし、その後プリ
    ント画像を布帛に移行させることのいずれかを行うこと
    を特徴とするインクジェットプリント物の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記プリント用布帛媒体がプリントに
    先立って10以上400以下のクラーク剛度を有するよ
    うに剛化処理を施してなることを特徴とする請求項6な
    いし10いずれかに記載のインクジェットプリントシス
    テム。
  16. 【請求項16】 前記布帛は、プリントに先立って10
    以上400以下のクラーク剛度を有するように剛化処理
    を施してなることを特徴とする請求項1ないし5いずれ
    かに記載のインクジェットプリンタ。
  17. 【請求項17】 前記プリント用布帛媒体がプリントに
    先立って極性をもつ染料固着剤を含有し、プリント動作
    と同時に前記プリント用布帛媒体への画像の定着を行わ
    せてなることを特徴とする請求項14に記載のインクジ
    ェットプリント物の製造方法。
  18. 【請求項18】 前記プリント用布帛媒体を用いてプリ
    ントを終えた後に極性をもつ染料固着剤でプリント画像
    の定着処理を施してなることを特徴とする請求項14に
    記載のインクジェットプリント物の製造方法。
  19. 【請求項19】 前記プリント用布帛媒体を用いてプリ
    ントを終えた後に熱処理または湿熱処理でプリント画像
    の定着を行うことを特徴とする請求項14に記載のイン
    クジェットプリント物の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記プリント画像の定着をなした後に
    前記プリント用布帛媒体を洗浄処理することを特徴とす
    る請求項19に記載のインクジェットプリント物の製造
    方法。
  21. 【請求項21】 請求項20に記載のインクジェットプ
    リント物に対し、さらに裁断、および/または縫製を施
    して最終加工品を得ることを特徴とするインクジェット
    プリント物の製造方法。
  22. 【請求項22】 複数色のインクを吐出できるインクジ
    ェットヘッド機構を用い、該インクジェットヘッド機構
    とプリント媒体とを相対移動させながら前記インクジェ
    ットヘッド機構から前記プリント媒体に対してインクを
    吐出させてプリントを行うインクジェットプリンタにお
    いて、 プリンタの相対的優先モードとして普通紙に黒色インク
    と異なる色のカラーインクを単位面積当たりに与える最
    大インク量をそれぞれの基準印字条件とする第1優先プ
    リントモードと、 布帛にプリントを行うモードであって、該カラーインク
    に関して該基準印字条件の2倍を、該黒色インクに関し
    て該基準印字条件の3倍を、それぞれ単位面積当たりに
    与える最大インク量とした基準布帛プリントモードと、 該基準布帛プリントモードのカラーインクまたは黒色イ
    ンクの単位面積当たりに与える最大インク量の少なくと
    も一方を、布種に応じて変更された条件で布種に応じた
    プリントを行う選択布帛プリントモードと、 該基準布帛プリントモードに代えて該選択布帛プリント
    モードを設定する手段と、 を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
  23. 【請求項23】 インクジェットヘッドを用い、該イン
    クジェットヘッドとプリント媒体とを相対移動させなが
    ら前記インクジェットヘッドから前記プリント媒体に対
    して、設定されたプリントモードに応じてインクを吐出
    させてプリントを行うインクジェットプリンタにおい
    て、 プリンタの相対的優先モードとしてOHP用紙に基準印
    字条件でプリントを行う第1優先プリントモードと、 該第1優先プリントモードの基準印字条件の少なくとも
    1つを相対的に基準印字条件よりも高画質の印字条件で
    布帛にプリントを行う布帛プリントモードと、 布帛プリントモードよりも第1優先プリントモードを優
    先設定すると共に、第1優先プリントモードに代えて布
    帛プリントモードを設定する手段と、を有することを特
    徴とするインクジェットプリンタ。
  24. 【請求項24】 インクジェットヘッドを用い、該イン
    クジェットヘッドとプリント媒体とを相対移動させなが
    ら前記インクジェットヘッドから前記プリント媒体に対
    して、設定されたプリントモードに応じてインクを吐出
    させてプリントを行うインクジェットプリンタにおい
    て、 プリンタの相対的優先モードとして普通紙に基準印字条
    件でプリントを行う第1優先プリントモードと、 該第1優先プリントモードの基準印字条件の黒色インク
    と該黒色インクと異なる色のカラーインクに対する所定
    面積あたりのインク打込量をそれぞれ多くした高画質印
    字条件に変更したプリント条件で、10以上400以下
    のクラーク剛度を有するように剛化処理が施され且つ極
    性をもつ染料固着剤を含有してなる布帛にプリントを行
    う布帛プリントモードと、 第1優先プリントモードに代えて布帛プリントモードを
    設定する手段と、を有することを特徴とするインクジェ
    ットプリンタ。
  25. 【請求項25】 請求項24のインクジェットプリンタ
    に連結してプリントすべき画像信号をつくりだすホスト
    コンピュータを有し、該ホストコンピュータ上で上記黒
    色インクと該黒色インクと異なる色のカラーインクに対
    する所定面積あたりのインク打込量を上限が第1優先プ
    リントモードの基準印字条件の4倍以内で変更設定でき
    ることを特徴とするインクジェットプリントシステム。
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