JPH0838172A - 新規β−アガラーゼ及びその製造方法 - Google Patents

新規β−アガラーゼ及びその製造方法

Info

Publication number
JPH0838172A
JPH0838172A JP6179244A JP17924494A JPH0838172A JP H0838172 A JPH0838172 A JP H0838172A JP 6179244 A JP6179244 A JP 6179244A JP 17924494 A JP17924494 A JP 17924494A JP H0838172 A JPH0838172 A JP H0838172A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
agarase
molecular weight
agarose
agar
activity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6179244A
Other languages
English (en)
Inventor
Hideki Nagae
英樹 永江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Tobacco Inc
Original Assignee
Japan Tobacco Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Tobacco Inc filed Critical Japan Tobacco Inc
Priority to JP6179244A priority Critical patent/JPH0838172A/ja
Publication of JPH0838172A publication Critical patent/JPH0838172A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 ビブリオ属微生物により産生される、比較的
低温かつ弱アルカリ性で最大活性を生じる新規なβ−ア
ガラーゼ、及びビブリオ属微生物を用いた該酵素の製
法。 【効果】 本酵素を利用することにより、これまで得る
ことができなかった、熱や酸に弱い海藻中の生理活性物
質の抽出が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、寒天及びアガロースの
β−1,4結合の分解活性を有する新規なβ−アガラー
ゼ並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、未利用生物資源の有効利用が考え
られている中で、海洋生物資源の新たな利用の研究は急
務の課題である。とりわけ、陸上植物と比較して高い光
合成能を有する海藻は、資源として大きな魅力がある。
しかしながら、海藻類の利用研究は、アメリカ東海岸に
おいて行われているジャイアントケルプのバイオマス資
源としての利用研究以外に目立った研究例はない。
【0003】海藻の細胞組織には特殊な多糖が多く含ま
れており、このため海藻の細胞組織は強固なものとなっ
ている。この強固な細胞組織の破壊が困難であること
が、海藻類の利用研究の進展を妨げる大きな原因であ
る。海藻の細胞組織が強固であるため、従来行われてい
る海藻成分の抽出方法では、これらの多糖を分解するた
めに、酸を加えたり、加熱等の処理を施している。しか
しながら、不安定な生理活性物質にとっては、このよう
な抽出法は好ましいものではない。それにもかかわら
ず、これらの生理活性物質こそが、新しい海洋生物資源
としての可能性を秘めているのである。従って、温和な
海藻多糖の分解法が望まれている。
【0004】また、陸上農作物と同様に、海藻の有用品
種を開発することも重要な課題である。そのためにも、
これらの特殊な細胞多糖の分解法の開発が望まれてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、海藻か
らの有用物質の抽出や、細胞融合による育種を行うため
には、温和な条件で、必要な反応のみを行うことが好ま
しい。そのような反応を実現するためには、酵素の使用
が最適である。アガラーゼは海藻多糖分解酵素の1種で
あり、現在数種類が知られている。
【0006】グラム陰性細菌であるシュードモナス・ア
トランティカが産生するアガラーゼが、シグマ社(セン
トルイス、アメリカ合衆国)及びカルバイオケム社(サ
ンジエゴ、アメリカ合衆国)から市販されている。しか
しながら、これらの市販アガラーゼは高価である。ま
た、その作用pHは酸性側にあり、至適温度も40℃と高
いため、温和でかつ弱アルカリ性である海水条件下での
実施には好ましいものではない。
【0007】一方、市販アガラーゼは、主にアガロース
ゲルからDNAを分離するために、遺伝子工学の分野に
おいて使用されている。しかしながら、この市販アガラ
ーゼが分解することができるアガロースゲルは低温融解
性のものに限られている。加えて、その操作は、固化し
たアガロースゲルを65℃に加熱して再融解し、再び40℃
に冷却した後、酵素を添加するという煩雑なものであ
る。
【0008】従って、本発明は、海藻の細胞組織に含有
される多糖に対する分解活性を有し、かつその最大活性
が比較的低温及び弱アルカリ性で生じる、安価な酵素を
提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記事情
に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ビブリオ属に属する微
生物により産生される新規なβ−アガラーゼが比較的低
温かつ弱アルカリ性で最大活性を生じることを見出し、
本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の発明
を包含する。
【0010】(1)下記の理化学的性質を有することを
特徴とするβ−アガラーゼ。なお、下記性質において
は、既知のアガラーゼとの比較も併せて記載した。 作用 少なくとも寒天及びアガロ−スのβ−1,4結合を加水
分解して低分子化する反応を触媒する。 基質特異性 β−1,4ガラクトシド結合を有するアガロース,寒天
などのガラクタン系の多糖類及びネオアガロヘキサオー
ス以上のオリゴ糖に作用する。ネオアガロテトラオー
ス、ネオアガロビオース、アルギン酸には作用しにく
い。
【0011】至適pH 8 pH安定性 5〜9 至適温度 30℃
【0012】熱安定性 20分間加熱した場合、30℃では初期活性の約100 %を保
持し、35℃では約85%、40℃では約20%を保持する。 分子量 約72,000(7.5 % SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動による) 既知のアガラーゼでは、この分子量に該当する分子量を
有するものは報告されていない。
【0013】等電点 約4.7 アミノ末端アミノ酸配列 Val →Thr →Val →Ser →Asn →Ala →Asp →Phe →Tr
p →Asn 既知のアガラーゼでは、この配列に該当するアミノ末端
アミノ酸配列を有するものは報告されていない。
【0014】(2)ビブリオ(Vibrio)属に属し、前記
(1)に記載のβ−アガラーゼを生産する能力を有する
微生物を培養し、培養物中に該β−アガラーゼを生成・
蓄積させ、これを採取することを特徴とするβ−アガラ
ーゼの製造方法。 (3)微生物がビブリオ(Vibrio)sp. JT0107-L4 であ
ることを特徴とする前記(2)に記載の製造方法。
【0015】なお、本明細書において、オリゴ糖とは、
構成単糖が2個以上10個以下の糖をいい、多糖類とは、
単糖及びオリゴ糖以外の糖をいう。本発明のβ−アガラ
ーゼは、前記特徴を有する酵素の部分精製品と精製品の
両者を含むものである。本発明のβ−アガラーゼの一例
である後述の実施例1で得られた精製品(アガラーゼ00
72)の理化学的性質を以下に示す。
【0016】(1)酵素活性測定方法 本酵素の精製品又は部分精製品の活性測定は、酵素反応
によって生じた還元糖の量をネルソン−ソモギ法により
測定することにより行う。詳しくは、以下の通りであ
る。
【0017】20mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)に溶解
した0.2 %の低温融解性アガロース(シグマ社製)のゲ
ルを調製する。次に、アガラーゼ0072を含有する溶液20
μlに、このゲル180 μlを基質として混合し、30℃で
5分間反応させる。反応停止は銅試薬200 μlを添加す
ることによって行い、沸騰水中で10分間加熱する。加熱
後、水で急速冷却し、ネルソン試薬 200μlを添加した
後、更に蒸留水で全容積を 5.0mlとする。60分後に 6
60nmにおける吸光度を測定する。この測定値をガラク
トース量に換算し、 1分間当り 1マイクロモルのガラク
トース量に相当する還元糖を与える酵素活性を 1単位
(1 U)とする。
【0018】(2)至適pH pHを 4〜5.6 (酢酸緩衝液)、 5.6〜7.5 (リン酸緩
衝液)、 7.5〜8.8 (トリス塩酸緩衝液)、及び 8.8〜
9.5 (グリシン水酸化ナトリウム緩衝液)に調整した
0.2%の低温融解性アガロース(シグマ社製)のゲル180
μlにアガラーゼ0072溶液( 0.2μg/μl)20μl
を加え、30℃で5分間反応させた。反応後、銅試薬 200
μlを加えて沸騰水中で10分間加熱した後、水で急速冷
却し、ネルソン試薬 200μlを添加して蒸留水で全容積
を 5.0mlにした。60分後に 660nmにおける吸光度を
測定し、前述の方法で酵素活性を算出した。その結果を
図1に示す。図1において、横軸はpH、縦軸は最大酵
素活性値を 100%とした場合の相対値で表わした酵素活
性をそれぞれ示す。この図より明らかなように、アガラ
ーゼ0072の至適pHは、8であった。
【0019】(3)至適温度 20mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)に溶解した 0.2%の
低温融解性アガロース(シグマ社製)のゲルを調製し、
このゲル180 μlに、アガラーゼ0072溶液( 0.4μg/
μl)20μlを加え、20℃、25℃、30℃、40℃、45℃に
おいて5分間反応させた。反応後、銅試薬 200μlを加
えて沸騰水中で10分間加熱した後、水で急速冷却し、ネ
ルソン試薬 200μlを添加して蒸留水で全容積を 5.0m
lにした。60分後に 660nmにおける吸光度を測定し、
前述の方法で酵素活性を算出した。その結果を図2に示
す。図2において、横軸は温度、縦軸は最大酵素活性値
を100%とした場合の相対値で表わした酵素活性をそれ
ぞれ示す。この図より明らかなように、アガラーゼ0072
の至適温度は、30℃であった。
【0020】(4)pH安定性 本酵素を、前述の至適pHを測定した場合の各緩衝液
(グリシン水酸化ナトリウム緩衝液を除く)で酵素溶液
を調製し、これを30℃で30分間保温した後、活性を測定
した。結果を図3に示す。図3において、横軸はpH、
縦軸は保温前活性値を100 %とした場合の相対値で表わ
した酵素活性をそれぞれ示す。残存活性が80%を越える
範囲として安定性を定めると、pH5〜9の間で安定で
あった。
【0021】(5)熱安定性 アガラーゼ0072溶液(0.2 μg/μl)20μlを、25
℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃及び55℃の水浴中で
20分間加熱した後、0.2 %の低温融解性アガロース(シ
グマ社製)のゲル180 μlに、アガラーゼ0072溶液(
0.2μg/μl)20μlを加え、30℃で5分間反応させ
た。反応後、銅試薬 200μlを加えて沸騰水中で10分間
加熱した後、水で急速冷却し、ネルソン試薬 200μlを
添加して蒸留水で全容積を 5.0mlにした。60分後に 6
60nmにおける吸光度を測定し、前述の方法で酵素活性
を算出した。その結果を図4に示す。図4において、横
軸は温度、縦軸は非加熱時の活性を100 %とした場合の
相対値で表わした酵素活性をそれぞれ示す。この図より
明らかなように、アガラーゼ0072の非加熱時の活性を10
0 %としたとき、30℃では約 100%、35℃では約85%、
40℃では約20%の残存活性を示し、55℃ではほぼ完全に
失活した。
【0022】(6)ミカエリス定数及び最大反応速度 3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースとD−ガラクト
ースが交互にβ−1,4結合、α−1,3結合してなる
ネオアガロヘキサオースを基質として、種々の濃度の基
質溶液を調製し、これにアガラーゼ0072溶液(0.2 μg
/μl)を加え、酵素活性測定方法に従い酵素活性を測
定した。基質濃度の逆数と、それに対応する酵素活性の
逆数を二次元座標上にプロットし、ラインウェ−バーバ
ルクの式を求め、これよりミカエリス定数は、 1.7±0.
5 mM、最大反応速度は、9.3 U/mg蛋白質であることがわ
かった。
【0023】(7)分子量 分子量は SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びゲ
ル濾過法で測定した。SDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動では、常法に従って、SDS を含むポリアクリルア
ミドゲルの濃度が7.5 %のゲルで、分子量マーカー(分
子量 200,000のミオシン、116,000 のβ−ガラクトシダ
ーゼ、66,000の牛血清アルブミン、42,000のアルドラー
ゼ)とともに電気泳動を行い、移動度から分子量を求め
たところ、約72,000であった。ゲル濾過法では、ファル
マシア社製のSuperdex 200なるゲル濾過カラムを用い
て、分子量マーカー(分子量160,000 のイムノグロブリ
ンG、67,000のヒト血清アルブミン、35,000のβ−ラク
トグロブリン)のゲル濾過を行い、各マーカー蛋白質の
溶出容量を測定した後、アガラーゼ0072のゲル濾過を行
い、その溶出容量とマーカー蛋白質の溶出容量を比較し
分子量を計算したところ、約72,000であった。
【0024】(8)アミノ末端アミノ酸配列 アガラーゼ0072のアミノ末端アミノ酸配列をエドマン分
解法により決定した。アガラーゼ0072溶液( 0.4μg/
μl) 32 μlを、 7.5% SDS−ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動を常法に従って行った後、該酵素をウェスタ
ンブロッティング法によりプロブロット(アプライドバ
イオシステムズ社製)なる膜に吸着させ、これをアミノ
酸配列分析装置 477A 及び120Aプロテインシークエンサ
ー(アプライドバイオシステムズ社製)により、アミノ
末端側10個のアミノ酸配列を決定した。その結果、配列
は Val→Thr →Val →Ser →Asn →Ala →Asp →Phe →
Trp →Asn であった。
【0025】(9)その他の特性 溶解性:水に可溶 紫外線吸収スペクトル:λmax=280nm 本発明のβ−アガラーゼは、ビブリオ(Vibrio)属に属
し、該β−アガラーゼを生産する能力を有する微生物を
培養し、培養物中に該β−アガラーゼを生成・蓄積さ
せ、これを採取することにより得ることができる。
【0026】ここで用いる微生物としては、ビブリオ属
に属し、該β−アガラーゼを生産する能力を有する微生
物であれば、いずれでも用いることができる。その例と
しては、ビブリオ(Vibrio)sp. が挙げられ、具体的に
は、ビブリオ(Vibrio)sp.JT0107-L4 が挙げられる。
【0027】ビブリオ(Vibrio)sp. JT0107-L4 は、海
水中から分離されたものであって、下記の菌学的性質を
有するものである。 菌学的性質: 1)形態 マリンブロス2216培地に生育した細胞について、 (イ)桿菌であり、細胞の大きさは0.25〜 1.2μm×
0.5〜 2.5μm (ロ)運動性を有し、鞭毛を有する (ハ)グラム染色性は陰性 (ニ)胞子は形成しない
【0028】2)生育状態 マリンブロス2216平板培地での培養において、 (イ)18〜25℃で良好に生育する (ロ)淡黄色の色素沈着を有する (ハ)菌体の生育に従って、寒天ゲルは液化されるマリ
ンブロス2216の液体培地において、 (ニ)pH7〜9において旺盛に生育する
【0029】3)生理学的性質 (イ)O−Fテスト F (ロ)カタラーゼテスト 陽性 (ハ)オキシダーゼテスト 陽性 (ニ)グルコースからのガスの生成 無 (ホ)フォゲス−プロスカウエル反応 陰性 (ヘ)メチルレッド反応 陽性 (ト)ゼラチン分解能 有 (チ)エスクリン分解能 有 (リ)硝酸還元能 有 (ヌ)通性嫌気性 ビブリオ(Vibrio)sp. JT0107-L4 は、平成3年3月6
日付で、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
に FERM BP-4541 として寄託されている。
【0030】培養に用いる培地は、前記微生物が利用し
得る窒素源、無機物等を含み、寒天又はアガロース等を
炭素源として含むものを用いる。寒天、アガロースは、
市販のものを用いることができる。寒天、アガロース以
外の炭素源としては、肉エキス、カゼイン分解物、トリ
プトン、ペプトン等が挙げられ、好ましくはペプトンを
用いる。
【0031】窒素源としては、酵母エキスを用いる。更
に、塩類としては、塩化ナトリウム、クエン酸鉄、塩化
マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化
カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、臭化カ
リウム、塩化ストロンチウム、ホウ酸ナトリウム、ケイ
酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、硝酸アンモニウム、
リン酸水素二ナトリウム等を組み合わせて用いる。
【0032】寒天、アガロース以外の前記成分をすべて
含んだマリンブロス2216なる培地(ディフコ社製)に、
寒天又はアガロースを加えて用いることもできる。ま
た、前記塩類を適度に含む人工海水を用い、これにペプ
トン、酵母エキス、寒天等を加えた培地を用いることも
できる。寒天又はアガロースの濃度は、 0.1〜1.5 %が
好ましく、この際、寒天又はアガロースの濃度を任意に
変えることにより固体培地、液体培地を作り分けること
が可能であるが、酵素生産を目的とする場合は、濃度
0.1〜0.4 %の液体培養が好ましく、菌体の保存を目的
とするときは、濃度1.2〜1.5 %の固体培養が好まし
い。
【0033】培養条件は、培地の組成によって多少異な
るが、培養温度は、15〜30℃、好ましくは20〜25℃、pH
は、 7.0〜8.5 、好ましくは 7.8〜8.2 、培養時間は、
15〜48時間、好ましくは、18〜24時間である。以上のよ
うにして培養中に産生された本発明のβ−アガラーゼ
は、菌体外に蓄積されるので、培養終了後、菌体を遠心
分離、濾過等の方法を用いて除去して培養濾液を得る。
【0034】得られた酵素を含有する溶液を、真空濃縮
又は限外濾過膜を用いて濃縮して液状酵素として、ある
いは凍結乾燥法、噴霧乾燥法等により粉状酵素として用
いることができる。その他の方法としては通常用いられ
る精製方法、例えば硫安塩析、溶媒沈澱法により本発明
のβ−アガラーゼを分離精製することができる。あるい
は陰イオン交換カラム、ゲル濾過カラム等のカラムクロ
マトグラフィーを組み合わせて電気泳動的に単一バンド
になるまで精製する方法を用いることができる。
【0035】このようにして得られた培養液又は本発明
のβ−アガラーゼを、紅藻類に含まれる多糖である寒天
又はアガロースを基質として反応させることにより、ネ
オアガロビオース、ネオアガロテトラオース、ネオアガ
ロヘキサオース等のオリゴ糖を製造することができる。
【0036】アガロースは、D−ガラクトースと3,6
−アンヒドロ−L−ガラクトースが交互にα−1,3結
合、β−1,4結合を繰り返してなる多糖であり、従来
知られているアガラーゼは、このアガロースのβ−1,
4結合を加水分解し、4糖であるネオアガロテトラオー
スと6糖であるネオアガロヘキサオースを主に生産する
ものである。ネオアガロヘキサオース分子内にはβ−
1,4結合が二ヶ所残されるが、この二ヶ所は全く切断
されないか、どちらか一ヶ所のみが僅かに切断される可
能性を持っているに過ぎない。
【0037】本発明のβ−アガラーゼは、前記理化学的
性質から明らかなようにネオアガロヘキサオース以上の
オリゴ類に作用する酵素であるため、ネオアガロヘキサ
オースの一ヶ所のβ−1,4結合を切断することが可能
であり、このことによって、従来の方法では殆ど生成さ
れなかった2糖であるネオアガロビオースを大量に得る
ことが可能となる。
【0038】本発明のβ−アガラーゼの作用様式を下記
式に示す。
【0039】
【化1】 本発明のβ−アガラーゼを使用して2糖を生産するため
の原料としては、寒天、アガロース、又は寒天及びアガ
ロース由来のオリゴ糖を使用すればよく、好ましくはネ
オアガロヘキサオースを原料とすればよいが、必ずしも
精製された原料を使う必要はない。
【0040】本発明のβ−アガラーゼによって生産され
るオリゴ糖は、前述のように4糖以下の重合度の低いオ
リゴ糖を中心とするが、反応条件等により重合度の異な
るオリゴ糖を自由に製造することも可能である。このよ
うにして得られたオリゴ糖を分離精製することにより、
ネオアガロビオース、ネオアガロテトラオース及びネオ
アガロヘキサオースを単独で得ることも可能である。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではな
く、種々応用することが可能である。
【0042】(実施例1) アガラーゼ0072の製造 500 mlの人工海水(商品名シーライフ、マリンテック
社製)を調製し、これにペプトン5g(日本製薬社
製)、酵母エキス1g(ディフコ社製)を加え、pHを
8.0 に調整後、3,000 ml容の三角フラスコに移し、寒
天1g(極東社製)を加え、オートクレーブを用いて滅
菌操作を行った。これに−80℃で40%グリセロール中に
保存したビブリオ(Vibrio)sp. JT0107-L4 を室温で融
解後、その1mlを接種し、25℃、毎分150 回転で24時
間培養した。得られた培養液を前培養液とした。
【0043】本培養は、以下の手順で実施した。5,000
ml容のジャーファーメンター容器を用いて人工海水
(商品名シーライフ、マリンテック社製)3,000 mlを
調製し、これにペプトン60g(日本製薬社製)、酵母エ
キス12g(ディフコ社製)を加え、pHを8.0 に調整
後、寒天(極東社製)12gを加え、オートクレーブを用
いて滅菌操作を行った。これに前培養で得られた培養液
の30mlを接種し、25℃、毎分600 回転で20時間培養
し、得られた培養液を遠心分離して固形物を粗分離し、
更に0.2 μmの精密濾過膜を用いて濾過して培養濾液
2,800mlを得た。培養濾液中の酵素活性は0.9 U/m
lであった。次に、培養濾液を分画分子量10,000の限外
濾過膜を用いて約8倍に濃縮し、得られた濃縮液に対し
て5倍量の20mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)を添加
して再濃縮する工程を繰り返して初濃度の1/25塩濃度ま
で脱塩したところ、4.8 U/mlの粗酵素液350 mlを
得た。
【0044】得られた粗酵素液を、予め20mMトリス塩
酸緩衝液(pH 8.0)で平衡化したQAEトヨパール
(東ソー社製の強陰イオン交換樹脂)を担体としたカラ
ム( 2.6cm× 10 cm)に吸着させた後、20mMトリ
ス塩酸緩衝液(pH 8.0)から0.5M塩化ナトリウムを
含有する20mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)への直線
濃度勾配法(総溶出量 150ml)により溶出させ、0.35
M〜0.45Mの塩化ナトリウム濃度で溶出してくる画分30
mlを回収した。この画分を同緩衝液を加えて180 ml
に希釈し、前述の緩衝液で予め平衡化したMono−Q
(ファルマシア社製)なる強陰イオン交換樹脂を担体と
したカラム(1.0 cm×10cm) に吸着させ、前述の直
線濃度勾配法(総溶出量120 ml)により溶出させ、0.
4 M〜0.45Mの塩化ナトリウム濃度で溶出する画分16m
lを得た。これを、グレースジャパン社製遠心限外濾過
膜セントリコン10を用いて2mlに濃縮し、Superdex 2
00(ファルマシア社製)なるゲル濾過担体を用いたカラ
ム(2.6 cm×60cm)に供し、0.1 M塩化ナトリウム
を含有する20mMトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)で溶出
させ、ほぼ純品に近い精製酵素を得た(4 U/mg蛋白
質)。比活性は、培養上清の比活性に比べて47倍に上昇
し、活性収率は約10%であった。得られた酵素をドデシ
ル硫酸ナトリウム(SDS)を含むポリアクリルアミド
ゲルで電気泳動したところ、目的酵素は約72,000の分子
量を示した。
【0045】(実施例2) アガロースゲルの分解 10mMエチレンジアミン四酢酸を含有する40mMトリス
酢酸緩衝液(以下「TAE」という。)10mlに非低温
融解性の汎用アガロース(宝酒造社製) 100mgを加え
て加熱融解し、その60μlを冷却してゲル化した。これ
に0.05Uのアガラーゼ0072を20mMトリス塩酸緩衝液に溶
解した溶液25μlを添加し、30℃で45分間反応させた。
反応後のゲルは軟弱化していた。
【0046】この結果を定量的に調べるために、以下に
記載の手順により、生成した還元糖の量をネルソン−ソ
モギ法により測定した。即ち、まず、反応後のゲルに85
μlの銅試薬を添加して沸騰水中で10分間加熱し、水で
急速冷却した。これにネルソン試薬85μlを加え、次い
で蒸留水で全容積を 2.5mlにし、60分後に 660nmに
おける吸光度を測定した。その結果、ガラクトース量に
換算して約 600μg/mlのオリゴ糖が生成しているこ
とが確認された。
【0047】これに対して、シュードモナス・アトラン
ティカの産生する市販アガラーゼを用いて同様の実験を
行ったところ、オリゴ糖の収量は、約53μg/mlであ
った。即ち、アガラ−ゼ0072を使用して汎用アガロース
から得たオリゴ糖量は、市販アガラーゼを使用した場合
の約10倍であった。
【0048】(実施例3) アガロースゲルからのDN
Aの回収と制限酵素による反応 TAE 100mlに非低温融解性の汎用アガロース(宝酒
造社製) 800mgを加え、DNA電気泳動用のアガロー
スゲルを作製した。このアガロースゲルを用いて、制限
酵素 EcoRIで切断される塩基配列を1か所のみ有する環
状DNAの電気泳動を行った。泳動後、環状DNAを含
むアガロースゲルを切り出し、プラスティック棒で潰し
た後、アガラーゼ0072 50 μl(0.10U)を添加して30
℃で 120分間反応させた。反応後、フェノール 120μl
を添加して混合し、遠心分離によりその上清を得た。こ
の上清に 3M酢酸ナトリウム水溶液 7μlを添加し、更
に冷エタノール 140μlを添加して 15,000 rpm で15分
間遠心することによりDNAをエタノール沈殿させた。
上清を除去して沈殿に70%冷エタノール 140μlを加
え、15,000 rpmで15分間遠心した後、再び上清を除去
し、真空ポンプを用いて沈殿を5分間乾燥させた。これ
に滅菌蒸留水9μl、500mMトリス塩酸(pH7.5)、100m
M塩化マグネシウム、10mMジチオトレイトール、1000mM
塩化ナトリウムを含む反応緩衝液1μl及び制限酵素 E
coRI(宝酒造社製、12U/μl) 1μlを添加して混合
し、37℃で15分間反応させた。反応後、反応液中のDN
Aをアガロースゲル電気泳動で調べたところ、環状DN
Aが EcoRIによって切断されて生じた直鎖状DNAのみ
が見出された。
【0049】(実施例4)ネオアガロヘキサオース(シ
グマ社製)、ネオアガロテトラオース(シグマ社製)、
ネオアガロビオース(シグマ社製)、κ−カラギーナン
(和光純薬製)、アルギン酸ナトリウム(和光純薬製)
の各々2mgを20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 900μlに
溶解し、これにビブリオ(Vibrio)JT0107-L4培養液か
ら単離精製したアガラーゼ0072(0.15U)を含む100μl
の20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を添加し、30℃で5
分間(κ−カラギーナン、アルギン酸ナトリウム)又は
4時間(ネオアガロヘキサオース、ネオアガロテトラオ
ース、ネオアガロビオース)反応させた。
【0050】反応後、κ−カラギーナン、アルギン酸ナ
トリウム反応液については酵素活性測定方法に従って活
性を測定し、ネオアガロヘキサオース、ネオアガロテト
ラオース及びネオアガロビオース反応液については高速
液体クロマトグラフィー(カラム:Shim Pack KS-802、
移動相:水、流速:0.5ml/分、温度:70℃)で反応生
成物を分析した。その結果、ネオアガロヘキサオースの
みが分解されており、ネオアガロテトラオースとネオア
ガロビオースが生成していることが判った。
【0051】(実施例5) アガラーゼ0072を用いたオ
リゴ糖の製造 2mgの低温融解性アガロース(シグマ社製)を溶解し
た1mlの20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0 )に、ビブ
リオ(Vibrio)sp. JT0107-L4 培養液から単離精製した
アガラーゼ0072(0.01U)を含む7μlの20mMトリス塩
酸緩衝液(pH8.0 )を添加し、30℃で24時間反応させ
た。反応液に含まれるオリゴ糖を高速液体クロマトグラ
フィー(カラム:Shim Pack KS-802、移動相:水、流速
1ml/分、温度:70℃)で分析したところ、固形物の
73%が6糖以下のオリゴ糖からなっており、310 μgの
ネオアガロビオース、820 μgのネオアガロテトラオー
スが得られた。
【0052】
【発明の効果】本発明の新規β−アガラーゼは、海藻の
細胞組織に含有される、寒天、アガロース等の多糖類に
対する分解活性を有し、しかもその最大活性が比較的低
温かつ弱アルカリ性で生じる。この酵素を利用すること
により、これまで得ることができなかった、熱や酸に弱
い海藻中の生理活性物質の抽出が可能となる。また、海
藻細胞のプロトプラスト調製に利用することもできる。
【0053】更に、本発明の新規β−アガラーゼは、酵
素精製工程について市販のアガラーゼよりも簡便であ
る。このように、本発明の新規β−アガラーゼは、従来
の生化学研究用のみならず、高機能性食品、海藻組織培
養、海藻中のファインケミカルズ抽出法等への応用が期
待でき、極めて有用な酵素である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のβ−アガラーゼの至適pHを示す図で
ある。
【符号の説明】
○ 酢酸緩衝液 ▲ リン酸緩衝液 ● トリス塩酸緩衝液 ■ グリシン水酸化ナトリウム緩衝液
【図2】本発明のβ−アガラーゼの至適温度を示す図で
ある。
【図3】本発明のβ−アガラーゼのpH安定性を示す図
である。
【符号の説明】
○ 酢酸緩衝液 ▲ リン酸緩衝液 ● トリス塩酸緩衝液
【図4】本発明のβ−アガラーゼの熱安定性を示す図で
ある。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記理化学的性質を有するβ−アガラー
    ゼ。 作用 少なくとも寒天及びアガロ−スのβ−1,4結合を加水
    分解して低分子化する反応を触媒する。 基質特異性 β−1,4ガラクトシド結合を有するアガロース,寒天
    などのガラクタン系の多糖類及びネオアガロヘキサオー
    ス以上のオリゴ糖に作用する。ネオアガロテトラオー
    ス、ネオアガロビオース、アルギン酸には作用しにく
    い。 至適pH 8 pH安定性 5〜9 至適温度 30℃ 熱安定性 20分間加熱した場合、30℃では初期活性の約100 %を保
    持し、35℃では約85%、40℃では約20%を保持する。 分子量 約72,000(7.5 % SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
    動による) 等電点 約4.7 アミノ末端アミノ酸配列 Val →Thr →Val →Ser →Asn →Ala →Asp →Phe →Tr
    p →Asn
  2. 【請求項2】 ビブリオ(Vibrio)属に属し、請求項1
    記載のβ−アガラーゼを生産する能力を有する微生物を
    培養し、培養物中に該β−アガラーゼを生成・蓄積さ
    せ、これを採取することを特徴とするβ−アガラーゼの
    製造方法。
  3. 【請求項3】 微生物がビブリオ(Vibrio)sp. JT0107
    -L4 であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
JP6179244A 1994-07-29 1994-07-29 新規β−アガラーゼ及びその製造方法 Pending JPH0838172A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6179244A JPH0838172A (ja) 1994-07-29 1994-07-29 新規β−アガラーゼ及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP6179244A JPH0838172A (ja) 1994-07-29 1994-07-29 新規β−アガラーゼ及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0838172A true JPH0838172A (ja) 1996-02-13

Family

ID=16062463

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP6179244A Pending JPH0838172A (ja) 1994-07-29 1994-07-29 新規β−アガラーゼ及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0838172A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105349461A (zh) * 2015-11-26 2016-02-24 福建农林大学 一株产琼胶酶溶藻弧菌及应用
CN108699549A (zh) * 2015-12-29 2018-10-23 天野酶制品株式会社 新型β-半乳糖苷酶

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105349461A (zh) * 2015-11-26 2016-02-24 福建农林大学 一株产琼胶酶溶藻弧菌及应用
CN105349461B (zh) * 2015-11-26 2019-03-08 福建农林大学 一株产琼胶酶溶藻弧菌及应用
CN108699549A (zh) * 2015-12-29 2018-10-23 天野酶制品株式会社 新型β-半乳糖苷酶
CN108699549B (zh) * 2015-12-29 2022-08-09 天野酶制品株式会社 β-半乳糖苷酶

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH04278087A (ja) 新規ヘパリチナーゼ、その製造法及びその生産菌
JP3865801B2 (ja) 新規なβ−アガラーゼ,その製造方法及びその用途
JPH0838172A (ja) 新規β−アガラーゼ及びその製造方法
JP3761236B2 (ja) 新規なβ−グルコシダーゼ、その製造法および用途
JPH0480675B2 (ja)
JP3040976B2 (ja) トレハロースを含有する糖化液の製造方法
JP3014950B2 (ja) トレハロースの製造方法
JPH0928375A (ja) トレハロースホスホリラーゼおよびその調製法
RU2077577C1 (ru) Штамм бактерии delcya marina - продуцент щелочной фосфатазы и способ получения щелочной фосфатазы
JP3529173B2 (ja) 新規な寒天分解酵素及びそれを用いるネオアガロビオースの製造法
JPH01228465A (ja) 新規なβ−アガラーゼ及びその製造法
JP3027449B2 (ja) 新規シクロマルトデキストリナーゼ、その製造法及び該酵素を生産する微生物
JP4439153B2 (ja) 耐熱性マンノースイソメラーゼ及び該酵素を用いたマンノースの製造法
JPH05252947A (ja) アガラーゼ活性を有する新規酵素、その製造方法および前記酵素を産生する新規微生物
JP3055041B2 (ja) α−1,2−マンノシダーゼ、その製造方法およびその生産菌
JPH07163385A (ja) オリゴ糖の製造方法
JPH07322878A (ja) 新規なα−アガラーゼ及びその製造方法
JP3026312B2 (ja) キチン分解物の製造法
JPH10229876A (ja) α−1,3−多分岐デキストラン水解酵素、その製造法及び環状イソマルトオリゴ糖の製造法
JPH04211369A (ja) 好塩性アルカリアミラーゼおよびその製造方法
JP2001120266A (ja) キチナーゼ及びその製造法
JPH0365149B2 (ja)
JPH08275776A (ja) 新規キチナーゼ及びその製造方法
JPH0466083A (ja) α―グルコシダーゼおよびその製造法
JPH0239238B2 (ja) Kitosanaazenoseizoho