JP3040976B2 - トレハロースを含有する糖化液の製造方法 - Google Patents

トレハロースを含有する糖化液の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酵素法によるトレ
ハロース(O-α-D-glucopyranosyl-(1→1)-D-glucopyra
noside)を含有する糖液の製造方法に関する。更に詳し
くは、プレシオモナス(Plesiomonas) 属に属する新規微
生物由来の新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレ
ハロースホスホリラーゼを用いたトレハロースを含有す
る糖液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】トレ
ハロースは、凍結あるいは乾燥時に細胞や細胞内物質を
保護する作用を有しており、医薬、化粧品、食品等に保
存、安定剤等としての役割が期待されている物質であ
る。そこで、トレハロースを工業的に生産する多くの試
みがなされてきた。これらの技術は大別して三つに分類
する事ができる。その一つはトレハロースを菌体内に蓄
積する性質を有する微生物から該物質を抽出精製する方
法である〔ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・
ソサエテー(J.Am.Chem.Soc.)72巻,2059頁、1950年、ド
イツ特許第266584号、特開平3−130084
号、特開平5−91890号、特開平5−184353
号、特開平5−292986号〕。この方法は、微生物
の培養工程、微生物の分離工程、微生物からのトレハロ
ースの抽出工程、抽出したトレハロースの精製結晶化工
程から構成されており、製造工程が非常に煩雑である。
しかも、トレハロースの生産性も他の方法に比較して少
ないばかりでなく、多量の微生物抽出残査が廃棄物とし
て発生する事から経済的に効率の良い方法とは言えなか
った。
【0003】また、他の方法として、トレハロースを菌
体外(培地中)に生産する微生物が検索され、ブレビバ
クテリウム(Brevibacterium)属やコリネバクテリウム(C
orynebacterium) 属等の微生物を培養してトレハロース
を菌体外(培地中)に生産させる発酵法が開発されてい
る〔特開平5−211882号〕。しかしながら、本方
法においてもトレハロースの培地中への蓄積率は約3%
(w/v)程度と低収率であることから工業的規模でト
レハロースを大量生産するためには大容量の発酵槽とそ
れに見合う精製設備が必要であり経済的に問題がある。
しかも、本方法においても精製したトレハロースを得る
ためには除菌操作が必要とされるばかりでなく、培養時
に使用菌株が生産するトレハロース以外の夾雑物あるい
は培地成分等の除去に煩雑な工程を必要としている。
【0004】一方、これら発酵法の種々の問題点を一挙
に解決する方法として酵素法が既に開発されている。こ
れには、微生物由来のマルトースホスホリラーゼ(Malto
se:orthophosphate β-D-glucosyltransferase) と藻類
由来のトレハロースホスホリラーゼ( α, α-Trehalos
e:orthophosphate β-D-glucosyltransferase) を燐酸
存在下でマルトースに作用させてトレハロースを生産す
る方法(特許第1513517号、Agri.Biol.Chem.,49
巻, 2113頁, 1985年) 、および細菌由来のシュークロー
ズホスホリラーゼ(Sucrose:orthophosphate α-D-gluco
syltransferase)と担子菌由来のトレハロースホスホリ
ラーゼ( α, α-Trehalosep:orthophosphateα-D-gluco
syltransferase) を燐酸存在下で蔗糖に作用させてトレ
ハロースを得る方法(平成6年度日本農芸化学会大会講
演要旨集、3Ra14)とが報告されている。
【0005】これらの方法によればマルトースあるいは
蔗糖から60〜70%の高い収率でトレハロースが生成
する事が報告されている。また、本方法は使用する原料
が精製された高純度の糖質であることから、酵素反応に
より得られるトレハロースの精製も容易であり、他の方
法に比較して工業的に有利な方法と考えられている。し
かしながら、これらの方法においても使用される酵素、
特に、トレハロースホスホリラーゼの供給源はユーグレ
ナやマイタケなどのように藻類や担子菌であり、これら
から酵素を生産するためには経済的な問題ばかりでなく
技術的にも困難な点があった。しかも、得られるトレハ
ロースホスホリラーゼやこれに組み合わせて用いられる
シュークローズホスホリラーゼやマルトースホスホリラ
ーゼはそれぞれの酵素の至適pH領域が大きく異なるた
めに組み合わせて使用する際のpH管理が非常に困難で
あるばかりでなく、温度に対する安定性も非常に低く、
トレハロースの生成反応は25〜37℃程度の低温下で
しか行えなかった。このことは解放型の反応槽を用いて
行われる酵素反応時に雑菌汚染が起こることを示唆して
おり、これによる副次的な反応を防止するために厳密な
衛生管理を必要とする等の欠点を有している。さらに
は、これら公知の酵素を組み合わせて用いる場合、これ
らの酵素の有する基質濃度依存性の為に高濃度の原料が
使用出来なかった。この為、この方法も経済的に効率の
良い方法とは言えなかった。
【0006】以上のことから、製造および精製が容易
で、高い熱安定性を有し、基質濃度依存性が無い新たな
マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリ
ラーゼを見出すことができれば、安易に且つ大量に入手
できるマルトースを原料として高収率でしかも容易に且
つ効率よくトレハロースを製造することができる。
【0007】そこで、本発明の目的は、上記の各種条件
を満足する新規なマルトースホスホリラーゼおよびトレ
ハロースホスホリラーゼを用い、かつ基質としてマルト
ースを用いて、比較的高い温度及び比較的高い基質濃度
での酵素反応が可能であり、かつpHの調整が容易であ
るトレハロースの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、工業的に
使用するためのマルトースホスホリラーゼおよびトレハ
ロースホスホリラーゼが具備すべきこれらの諸性質を有
する酵素を生産する能力を持つ微生物を得るべくして広
く天然界を検索した。その結果、プレシオモナス属に属
する新規な微生物から新規なマルトースホスホリラーゼ
およびトレハロースホスホリラーゼを得、このマルトー
スホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを
用いることで、上記目的が達せられることを見出し本発
明を完成せしめたものである。
【0009】即ち、本発明は、以下に示す理化学的性質
を有するマルトースホスホリラーゼ及びトレハロースホ
スホリラーゼを燐酸の存在下でマルトースに作用させる
ことを特徴とするトレハロースの製造方法に関する。マルトースホスホリラーゼ (イ)作用:マルトース中のα−1,4−グルコピラノ
シド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコ
ースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ)基質特異性(分解反応):マルトースに作用し、
他の二糖類に作用しない。 (ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解反応の至適p
Hは7.0〜7.5であり、合成反応の至適pHは6.
0である。50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.
5〜7.0の範囲内で安定である。 (ニ)温度に対する安定性:pH6.0、15分間の加
熱条件下では45℃まで安定である。 (ホ)作用適温の範囲:50℃近傍に分解反応の至適作
用温度を有し、合成反応の作用適温は50〜55℃であ
る。 (ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではp
H5.0および8.0で完全に失活する。また、pH
6.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。 (ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモ
サクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイト、
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムで阻害される。 (チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電
点:3.8 (リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子
量:約92,000(ゲル濾過法による分子量は約20
0,000であり、2ケのサブユニットから構成されて
いる)。
【0010】トレハロースホスホリラーゼ (イ)作用:トレハロース中のα−1,1−グルコピラ
ノシド結合を燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グル
コースおよびβ−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ)基質特異性(分解反応):トレハロースに作用
し、他の二糖類に作用しない。 (ハ)至適pHおよび安定pH範囲:分解および合成反
応の至適pHは7.0である。50℃、10分間の加熱
条件下ではpH6.0〜9.0の範囲内である。 (ニ)温度に対する安定性:pH7.0、15分間の加
熱条件下では50℃まで安定である。 (ホ)作用適温の範囲:分解反応及び、合成反応の作用
適温は50〜55℃である。 (ヘ)失活条件:50℃、10分間の加熱条件下ではp
H5.0および9.5で完全に失活する。また、pH
7.0、15分間の処理では55℃で完全に失活する。 (ト)阻害:銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモ
サクシニイミド、p−クロロマーキュリベンゾエイトで
阻害される。 (チ)アイソエレクトロフォーカシング法による等電
点:4.5 (リ)SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分子
量:約88,000(ゲル濾過法による分子量は約20
0,000であり、2ケのサブユニットから構成されて
いる)。 以下本発明について説明する。
【0011】本発明で用いる2種の酵素は、本発明者ら
により新たに見出された菌株に由来する。この新規菌株
は、本発明者等により静岡県富士市田子の浦海岸の汚泥
中から新たに単離されたものである。この菌株は、バー
ジェーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バ
クテオロジー(Bergey's Mannual of Determinative Bac
teriolgy) 、第8版、第1巻に従って同定すると、単離
した菌株の菌学的諸性質を以下の表1に示しているよう
に、プレシオモナス(Pleseiomonas)属に属し、P.shigel
loidesの類縁菌と同定された。しかしながら、VPテス
トおよびウレアーゼテストが陽性であること、並びに、
D−マンノース、D−ガラクトース、L−アラビノー
ス、D−フラクトースを資化出来ること、並びに、pH
9のアルカリ性条件下でも生育出来る点において記載内
容と相違しており、しかも、トレハロースホスホリラー
ゼとマルトースホスホリラーゼの両酵素を菌体内および
培地中(菌体外)に生成・蓄積する点で既知菌株とは大
幅に異なる。なお、上記菌株プレシオモナスSH−35
は工業技術院生命工学工業技術研究所に条寄第5144
号(FERM BP-5144)として寄託している。
【0012】
【表1】
【0013】上記の新菌株は次のようにしてスクリーニ
ングした。まず、採取海岸汚泥を整理食塩水に懸濁し、
該懸濁液1滴を以下の組成の寒天培地に塗沫した。使用
した寒天平板培地は寒天2%(w/v)、トレハロース
またはマルトース1%、ポリペプトン0.5%、酵母エ
キス0.5%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシ
ウム・七水塩0.02%を含有する。かくして、寒天平
板を37℃にて好気的に培養し、平板上に現れた各コロ
ニーを得、各々のコロニーを寒天を除いた上記組成の液
体培地中で37℃にて24〜72時間、180r.p.
m.で振盪培養した。次いで、各培養液を12,000
×gにて10分間、4℃で遠心分離し菌体と上澄液とに
分離した。かくして得られた菌体は少量の0.1M燐酸
緩衝液(7.0)に菌体を懸濁させ、以下に述べる方法
で活性を測定した。その結果、上記のような菌学的諸特
性を有する菌株を分離できた。
【0014】上記の新規な微生物は、新規なマルトース
ホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを生
産する菌である。次に、これらの酵素の製造方法につい
て説明する。上記の微生物(FERM P-14465)を適当な培地
に接種し、培養する。培養は、該菌体の生育温度の観点
から、25〜42℃の温度範囲とし、15〜70時間好
気的に培養することが適当である。上記の微生物を培養
することにより、本発明で用いるトレハロースホスホリ
ラーゼおよび/またはマルトースホスホリラーゼが生成
する。生成する酵素の大部分は菌体内に蓄積され、一部
分は菌体外(培地中)に蓄積される。そこで、菌体内あ
るいは菌体外(培地中)に生成蓄積されたマルトースホ
スホリラーゼおよび/またはトレハロースホスホリラー
ゼを採取する。また、上記培養は、バッチ式、連続式の
いずれによっても実施することができる。
【0015】上記培養に用いる培地について説明する。
炭素源としては、トレハロースやマルトースおよびこれ
らを含有する糖質を用いることができる。窒素源には各
種有機および無機の窒素化合物を用い、さらに培地は各
種の無機塩をさらに含むことができる。炭素源としてト
レハロースもしくは該物質を含有する糖質を用いると、
本発明の微生物はトレハロースホスホリラーゼを優先的
に生産する。また、マルトースもしくは該物質を含有す
る糖質を炭素源として用いると、本発明の微生物はマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼを同時に生産する。但し、この場合、トレハロースホ
スホリラーゼの生産量は、炭素源としてトレハロースを
用いた場合に比べれば、少なくなる傾向がある。さら
に、炭素源としてトレハロースとマルトースの両者又は
これらの物質を含有する糖質を用いると、トレハロース
ホスホリラーゼとマルトースホスホリラーゼとを同時に
生産させることができ、トレハロースとマルトースの量
を制御することで、トレハロースホスホリラーゼとマル
トースホスホリラーゼの生成割合をコントロールするこ
ともできる。
【0016】また、窒素源にはコーンスチープリカー、
大豆粕、あるいは各種ペプトン類等の有機窒素源、そし
て硫安、硝安、燐安、尿素等の無機窒素源などの一般に
微生物の培養に用いられている安価な化合物が使用可能
である。なお、尿素や有機窒素源は炭素源にもなること
はいうまでもない。
【0017】上記微生物の培養において使用するのに適
した培地としては、例えば、トレハロースホスホリラー
ゼを優先的に生産したい場合には、トレハロース1〜2
%(w/v)、酵母エキス2%、燐酸アンモニウム0.
15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリウム
0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%および
炭酸カルシウム0.2%を含むpH7.0〜7.5の液
体培地を用いることが適当である。また、マルトースホ
スホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼを同時に生
産したい場合には、マルトース1〜2%(w/v)、ポ
リペプトンS(日本製薬製)2〜3%、燐酸アンモニウ
ム0.15%、尿素0.15%、食塩1%、燐酸二カリ
ウム0.1%、硫酸マグネシウム・七水塩0.02%お
よび炭酸カルシウム0.2%を含む液体培地を用いるこ
とが適当である。尚、前記のように、マルトースを炭素
源として用いるとマルトースホスホリラーゼばかりでな
く、トレハロースホスホリラーゼもある程度の量生産さ
れる。従って、本発明で用いるトレハロース生産用の粗
酵素(マルトースホスホリラーゼとトレハロースホスホ
リラーゼとの混合物)を得るには、マルトースを炭素源
として用いことが便利かつ経済的である。
【0018】上記培養において、各酵素は、培養菌体内
又は培養上清中に蓄積される。本発明の製造方法では、
菌体内の酵素を、菌体ごと粗酵素として用いることがで
きる。さらに、菌体から菌体を破砕等した後に酵素を抽
出することで得た粗酵素を用いることもできる。さら
に、菌体外の培養上清中にも酵素は含まれており、菌体
を分離した残りの培養液を粗酵素含有液として利用する
こともできる。さらに、これらの粗酵素は、エタノー
ル、アセトン、イソプロパノール等による溶媒沈澱法、
硫安分画法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過
クロマトグラフィー等の通常の方法を用いて、精製した
後に、本発明の製造方法に用いることもできる。尚、マ
ルトースホスホリラーゼとトレハロースホスホリラーゼ
とは、両者の等電点が異なることから、陰イオン交換ク
ロマトグラフィーにより分離することができる。マルト
ースホスホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼ
は、それぞれ粗酵素又は精製酵素として利用することが
できる。さらに、両酵素の活性を有する菌体および該菌
体を適当な担体に包括、吸着あるいは化学的に結合させ
た固定化菌体を使用することも可能である。さらには、
各酵素を公知の方法で固定化させた固定化酵素として使
用することもできる。例えば、菌体をアルギン酸やκ−
カラギーナンで固定したり、或いは抽出酵素を陰イオン
交換樹脂に吸着させたものを用いることができる。
【0019】このようにして得られる酵素は、前記の理
化学的性質を有するマルトースホスホリラーゼ及びトレ
ハロースホスホリラーゼである。これらの酵素の活性測
定は、前記のプレシオモナスSH−35株がマルトース
やトレハロースを加水分解するα−グルコシダーゼ(マ
ルターゼ)、グルコアミラーゼ、トレハラーゼ等を生産
しないので、加燐酸分解反応の測定にはそれぞれマルト
ースあるいはトレハロースを基質とし、燐酸塩存在下で
酵素反応させて生成するグルコースをグルコースオキシ
ダーゼ法で測定する簡便法が適用可能である。また、合
成反応はβ−D−グルコース1燐酸とグルコースの混合
液を基質とし、酵素反応により生成する無機燐酸を常法
により測定することで可能である。
【0020】酵素活性測定法(1)分解反応: 50mMの燐酸緩衝液(pH7)に溶
解させた20mMのマルトースもしくはトレハロース溶
液0.5mlに酵素液0.01mlを添加し、50℃で
15分間反応させた後、沸騰水浴中で3分間加熱して酵
素反応を止める。次いで、流水中で冷却した後、生成し
たグルコースをグルコースオキシダーゼ法(和光純薬工
業(株)製、グルコースC−IIテスト・ワコー)で測定
する。ここで1単位の酵素活性は同条件下で1分間に1
μmole(マイクロモル)のグルコースを生成する酵
素量とする。(2)合成反応: 70mMのヘペス(HEPES)緩衝
液(pH7.0)に溶解させた27mMのβ−D−グル
コース1燐酸Na塩と同濃度のグルコースとの混合溶液
0.15mlに0.05mlの酵素液を添加し、50℃
で15分間反応させた後、沸騰水浴中で2分間加熱して
酵素活性を止める。ついで、生成した無機燐酸を和光純
薬工業(株)製ピーテストワコーを用いて測定する。こ
こで1単位の酵素活性は同上条件下で1分間に1マイク
ロモル(μmole)の無機燐酸を生成する酵素量とす
る。
【0021】本発明の製造方法は、前記2種の酵素を燐
酸の存在下でマルトースに作用させるものである。燐酸
は、マルトースが加燐酸分解されるために必要であり、
反応液中0.1〜500ミリモル/リットル、好ましく
は5〜10ミリモル/リットルの濃度範囲とすることが
適当である。燐酸としては、例えば、オルト燐酸、燐酸
ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸2水素ナトリウム、燐
酸2水素カリウム等の無機燐酸及びその塩等を用いるこ
とができる。また、基質としては、マルトースを用い
る。但し、マルトースは、精製品であっても、或いはマ
ルトースを含有する糖質であってもよい。マルトース濃
度は、操作し易い粘度の溶液、及び仕込み1回当たりの
収量即ち経済性という観点から、10〜600g/リッ
トル、好ましくは200〜400g/リットルの範囲と
することが適当である。
【0022】酵素の濃度は、トレハロースの生成率や反
応時間等を考慮して適宜決めることができる。但し、通
常0.1〜50単位/g−基質とすることが適当であ
る。反応温度は、酵素の至適温度及び反応時間等を考慮
して適宜決められるが、雑菌汚染の防止等を考慮すると
30〜65℃、好ましくは45〜55℃の範囲であるこ
とが適当である。また、反応pHは、酵素の至適pHを
考慮すると、5.0〜9.0、好ましくは6.0〜7.
0の範囲であることが適当である。反応時間は、トレハ
ロースの生成率、酵素の添加量、反応容器の容量等によ
り適宜決定される。但し、一般には、工業的規模では約
50〜80時間の範囲であることが適当である。
【0023】上記反応により生成したトレハロースは、
澱粉糖の精製法と同様に、珪藻土濾過、イオン交換樹脂
による脱塩、イオン交換クロマトグラフィーによる分
画、濃縮、結晶化により、分離精製することができる。
【0024】
【実施例】以下本発明について実施例及び参考例により
さらに説明する。 参考例1菌体内および菌体外トレハロースホスホリラーゼの製造 トレハロース1%(w/v)、酵母エキス(Difco社製)
2%、燐酸アンモニウム0.15%、尿素0.15%、
食塩1%、燐酸二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム
・七水塩0.02%および炭酸カルシウム0.2%を含
むpH7.5の液体培地20リットルに予め同上培地で
一夜培養して得たプレシオモナスSH−35株種菌(FE
RM BP-5144)1リットルを無菌的に添加し、37℃、3
00rpm、通気量1v.v.mの条件下で24時間通
気攪拌培養をした。本培養液のトレハロースホスホリラ
ーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり1.5単
位であった。また同様にマルトースホスホリラーゼ活性
も測定したが、活性は微量であった。次いで、12,0
00×g、4℃で10分間遠心分離し、約160gの菌
体(湿潤時)および19.5リットルの上清液を得、ロ
ミコン(Romicon) 社製UF膜(YM-30 )で濃縮し、約1
リットル(約6,400単位)の菌体外濃縮粗酵素が得
られた。上清液中の酵素活性を測定した結果、全活性
(約30×103 単位)の約25%(7.5×103
位)の活性があった。また、菌体部分については10m
Mの燐酸緩衝液(pH7)で充分洗浄し、500mlの
同上緩衝液に懸濁させた後、超音波菌体破砕機で菌体を
破砕し、常法によりトレハロースホスホリラーゼ活性を
測定した結果、全活性の約75%(22.5×103
位)が菌体内に含まれていた。
【0025】参考例2 (マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホ
リラーゼ含有菌体内および菌体外酵素の製造)参考例1
で用いた培地成分中のトレハロースをマルトースに、酵
母エキスをポリペプトンFC(日本製薬(株)製)5%
(w/v)にそれぞれ代え、他は同様な方法でSH−3
5株(FERM BP-5144)を培養した。本培養液のマルトー
スホスホリラーゼ活性並びにトレハロースホスホリラー
ゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり0.5単位
のマルトースホスホリラーゼ活性と0.45単位のトレ
ハロースホスホリラーゼが含まれていた。次いで、同様
に遠心分離して約150gの菌体(湿潤時)および1
9.6リットルの上清液を得た。ついで、菌体および上
清中のマルトースホスホリラーゼ活性を測定した結果、
マルトースホスホリラーゼの全活性の約78%(約1
0,000単位)が菌体内に、そして約22%が菌体外
(培養上清)に含まれていた。また、トレハロースホス
ホリラーゼの全活性の約82%(約9,000単位)が
菌体内に、そして約18%が菌体外(培養上清)に含ま
れていた。培養上清は参考例1と同様な方法で濃縮し、
約1リットルの濃縮酵素が得られ、該濃縮酵素中には約
1,700単位のマルトースホスホリラーゼと1,43
0単位のトレハロースホスホリラーゼが含まれていた。
【0026】参考例3トレハロースホスホリラーゼの精製 参考例1で得られた菌体破砕エマルジョン気500ml
に硫安を加えて30%飽和とし、4℃で一夜放置した。
次いで、遠心分離をして沈澱物を除いて得られる上清液
にさらに硫安を加えて70%飽和とした。4℃で一夜放
置して生成する沈澱物を遠心分離で集め、0.4M食塩
を含む20mM燐酸緩衝液(pH7)に溶解させた後、
同上緩衝液で充分に透析した。
【0027】次いで、同上緩衝液で平衡化したDEAE−フ
ラクトゲル(メルク社製)カラムに通液し酵素を吸着さ
せた。吸着した酵素を同上緩衝液に含まれる0Mから
0.6Mの食塩の濃度勾配法で溶出させた後、UF膜
(アミコン社製、YM−30)で濃縮した。濃縮酵素は
0.2M食塩を含む同上緩衝液で平衡化したセファクリ
ルS−300(ファルマシア社製)カラムを用いてゲル
濾過クロマトグラフィーで精製した。得られた活性画分
を集め、1.5M硫安を含む同上緩衝液で充分に透析し
た後、1.5M硫安を含む同上緩衝液で平衡化したフェ
ニル・トヨパール(東ソー社製)カラムに通液し酵素を
吸着させた。吸着した酵素を同上緩衝液に含まれる1.
5Mから0Mの硫安の濃度勾配法で溶出させた後、得ら
れた活性画分を集め0.2M食塩を含む同上緩衝液で充
分に透析した。前述のUF膜を用いて濃縮した後、0.
2M食塩を含む同上緩衝液で平衡化したスーパーデック
ス(Superdex)200(ファルマシア社製)で再度ゲル濾
過クロマトグラフィーを行い、得られた活性画分を前述
の方法で濃縮してポリアクリルアミドゲルデイスク電気
泳動法(PAGE)並びにSDS−PAGE法において
均一な菌体内トレハロースホスホリラーゼ精製酵素(5
ml、約7,880単位、活性収率約35%)が得られ
た。また、菌体外酵素についても上記と同様の方法で精
製濃縮して、トレハロースホスホリラーゼ精製酵素(5
ml、約2,400単位、活性収率約32%)を得た。
【0028】参考例4マルトースホスホリラーゼの精製 参考例2で得られたマルトースホスホリラーゼ含有菌体
及び培養上清を参考例3と同様な方法で精製し、PAG
E法及びSDS−PAGE法において均一な菌体内マル
トースホスホリラーゼ(5ml、約2,800単位、活
性収率約28%)及び菌体外トレハロースホスホリラー
ゼ(5ml、約425単位、活性収率約25%)をそれ
ぞれ得た。
【0029】参考例5マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリ
ラーゼの酵素化学的諸性質 参考例1及び2で得られたプレシオモナスSH−35株
(FERM P-14465)が生産する新規マルトースホスホリラー
ゼおよびトレハロースホスホリラーゼの一般的な酵素化
学的特性を以下に示す。なお、予備実験の結果、菌体内
および菌体外の両酵素共にほぼ同様な理化学的諸性質を
示したので、ここでは菌体内酵素の諸性質を示してい
る。
【0030】(イ)作用 10mM燐酸緩衝液(pH7.0)に溶解させた1%
(w/v)のマルトース及びトレハロース溶液にマルト
ースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼ
を基質1gに対してそれぞれ5単位(分解反応)添加
し、50℃で5時間反応させた後、沸騰水浴中で3分間
加熱して酵素を失活させて得られる糖化液中の糖を高速
液体クロマトグラフ法で測定した結果、グルコース及び
グルコース1燐酸がそれぞれ検出された。また、10m
Mのトリス(Tris)塩酸緩衝液(pH7.0)に溶
解させた1%(w/v)のグルコースおよびβ−D−グ
ルコース1燐酸Na塩もしくはα−D−グルコース1燐
酸Na塩の混合溶液を基質とし、マルトースホスホリラ
ーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを基質1gに対
してそれぞれ5単位添加し50℃で5時間反応させた
後、前述のように処理して糖組成を測定した結果、グル
コースとβ−D−グルコース1燐酸からはマルトースお
よびトレハロースがそれぞれ検出されたが、グルコース
とα−D−グルコース1燐酸からの二糖類の合成反応は
検出されなかった。
【0031】生成糖の分析は以下の方法で行った。即
ち、加熱失活させて得られる糖化液中の不溶物を0.4
5μmのメンブレンフィルターで濾別して得られる濾液
を供試糖液とし、YMC−Pack、ODS−AQ(A
Q−304、YMC社製)カラムを用いる高速液体クロ
マトグラフィー法で測定した。なお、移動相には水を用
い、カラム温度を30℃とし検出には示差屈折計を用い
た。(ロ)基質特異性(分解反応) 先に述べた活性測定法(分解反応)に示した基質(マル
トースもしくはトレハロース)に代えて各種糖類を基質
とした場合の活性を相対活性として表した。結果を表2
に示す。
【0032】
【表2】
【0033】(ハ)至適pHおよび安定pH範囲 精製酵素を用いて分解および合成反応の最適pHを測定
した。その結果、図1のAに示したように、マルトース
ホスホリラーゼの分解反応(白丸で示す)の最適pHは
7.0〜7.5であり、合成反応(黒丸で示す)は6.
0が最適であった。また、図1のBに示すように、トレ
ハロースホスホリラーゼは分解反応(白丸)及び合成反
応(黒丸)共に7.0が最適であった。なお、pH分解
反応の場合は20mMの燐酸緩衝液を、合成反応の場合
には、MES(pH5.5〜6.5)、MOPS(pH
値6.5〜7.0)、HEPES(pH7.0〜8.
0)、トリスー塩酸(pH7.5〜9.0)の各緩衝液
を用いて調整した。また、精製した両酵素を各緩衝液中
で10分間、50℃で処理し、それらの残存酵素活性を
分解反応で測定した結果、図2に示したように、マルト
ースホスホリラーゼ(白丸)はpH5.5〜6.5の範
囲で、また、トレハロースホスホリラーゼ(黒丸)はp
H6.0〜9.0まで安定であった。なお、pHは酢酸
(pH5.0〜5.5)、燐酸(pH6.0〜8.
0)、炭酸(pH8.9)の各緩衝液を用いて調整し
た。
【0034】(ニ)作用適温 両酵素の分解反応および合成反応の作用適温を測定した
結果、図3に示したように、マルトースホスホリラーゼ
(A、白丸:分解反応、黒丸:合成反応)、トレハロー
スホスホリラーゼ(B、白丸:分解反応、黒丸:合成反
応)共に分解反応は50℃、合成反応は50〜55℃の
範囲であった。(ホ)温度による失活の条件 マルトースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリ
ラーゼのそれぞれの安定pHであるpH6.0および
7.0の条件下で15分間処理し、残存する失活を無処
理と比較して常法により測定した。その結果、図4に示
したように、マルトースホスホリラーゼ(白丸)は55
℃で、また、トレハロースホスホリラーゼ(黒丸)は6
0℃で完全に失活した。(ヘ)阻害剤 両酵素の合成反応における活性を各種阻害剤存在下で測
定し、無添加時の活性を100%とする相対活性で表し
た結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】(ト)等電点 アイソゲル(FMC BioProducto社製) を用いるアイソエレ
クトロフォーカシング法により、両酵素の等電点を測定
した結果、図5に示したようにマルトースホスホリラー
ゼは3.8、トレハロースホスホリラーゼは4.5であ
った。(チ)分子量 両精製酵素の分子量をSDS−PAGE法並びにセファ
クリルS−200を用いるゲル濾過法により測定した。
その結果、図6に示したように、ゲル濾過法では両酵素
の分子量は約200,000であったが、SDS−PA
GE法ではマルトースホスホリラーゼが約92,000
そしてトレハロースホスホリラーゼが約88,000で
あったことから、これらの酵素はそれぞれ2ケのサブユ
ニットから構成されていることが予想された。上記の理
化学的諸性質を既知のマルトースホスホリラーゼおよび
トレハロースホスホリラーゼと比較して表4および表5
にまとめた。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】実施例1 10mlの10mM燐酸緩衝液(pH6)に溶解させた
10、20、30、および40%(W/V)の各マルト
ース溶液に参考例3および参考例4と同様な方法で調製
した菌体内精製トレハロースホスホリラーゼおよび菌体
内精製マルトースホスホリラーゼを各々基質重量1g当
たり5単位(分解活性)添加し、55℃で70時間反応
させた。反応終了後、反応液を100℃で5分間加熱し
て酵素を失活させて得られる糖化液中のトレハロース含
有量を測定した。その結果、基質重量に対してそれぞれ
58.2、58.1、58.6.57.9%のトレハロ
ースが生成していた。なお、トレハロースの定量は以下
の方法で行った。即ち、加熱失活させた糖化液に水を加
え、約1%(W/V)とした後、該糖化液0.5mlに
グルコアミラーゼ(生化学工業製、ピュアグレード30
U/mg)を0.01単位添加し、50℃、pH5.0
で1時間反応させて未反応のマルトースをグルコースに
完全に分解させた。次いで100℃の沸騰水浴中で5分
間加熱してグルコアミラーゼを失活させた後、生成する
不溶性蛋白質を0.45μmのメンブレンフィルターで
除去して得られる濾液中のトレハロース含有量をYMC
−Pack ODS−AQ(AQ−304、YMC社
製)カラムを用いる液体クロマトグラフ法(HPLC
法)で測定した。なお、測定は移動相に水を用い、カラ
ム温度を30℃として、検出には示差屈折計を用いた。
【0040】実施例2 10mlの5mM燐酸緩衝液(pH6)に溶解させた2
0%(W/V)のハイマルトースシラップ(日本食品化
工製、商品名MC−95、糖組成:グルコース2.5
%、マルトース95.2%、マルトトリオース0.8
%、マルトテトラオース1.5%)に、参考例3および
4と同様な方法で調製した菌対外精製トレハロースホス
ホリラーゼおよび菌体外精製マルトールホスホリラーゼ
を基質重量1g当たり各々5単位添加し、以下実施例1
と同様に反応させた。生成したトレハロースをHPLC
法で測定した結果、使用した基質重量に対して54.3
%であった。
【0041】実施例3 実施例2と同様な方法で調製してトレハロースホスホリ
ラーゼおよびマルトースホスホリラーゼを含有する菌体
約1kg(湿潤時)を得た。常法により酵素活性(分解
活性)を測定した結果、該菌体には55単位/g(湿潤
時)のトレハロースホスホリラーゼおよび68単位/g
(湿潤時)のマルトースホスホリラーゼ活性を有してい
た。調製した菌体1kgを10mMの燐酸緩衝液(pH
6.5)に含まれる30%(W/V)のマルトース溶液
250リットル中に添加し、50℃で80時間反応させ
た後、菌体を遠心分離して除いた。得られた上清液の一
部をグルコアミラーゼ処理し、その糖組成をHPLC法
で測定した。その結果、トレハロース58.1%、グル
コース39.6%、グルコース1燐酸2.3%であっ
た。ついで、得られた糖化上清液約240リットル(固
形物72kg)に固形物重量に対して0.1%の工業用
粗グルコアミラーゼ(新日本化学社製、商品名スミチー
ム#3,000)を添加し、pH5.5、55℃で20
時間再糖化して残存するマルトースをグルコースにほぼ
完全に加水分解した。次いで常法により活性炭脱色、イ
オン交換樹脂による脱塩などで精製し、減圧下で濃縮し
て濃度約75%(W/V)の精製糖化液(固形物約65
kg)を得た。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、新規なマルトースホス
ホリラーゼおよびトレハロースホスホリラーゼを用い
て、トレハロースを酵素的に製造することができる。ま
た、本発明のトレハロースの製造方法は、pHの調整が
容易であり、高い基質(マルトース)濃度でも、高収率
でトレハロースが得られる。さらに、反応温度も高くす
ることが可能であり、より高い反応温度を選ぶことで高
収率でトレハロースが得られる。さらに、高温での酵素
反応が可能であることから、反応中の雑菌汚染から免れ
ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの反応至適曲線〔シンボル:分解反応(○)、合成反
応(●)〕。
【図2】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼのpH安定性〔シンボル:マルトースホスホリラーゼ
(○)、トレハロースホスホリラーゼ(●)〕。
【図3】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの作用適温〔シンボル:分解反応(○)、合成反応
(●)〕。
【図4】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの温度安定性〔シンボル:マルトースホスホリラーゼ
(○)、トレハロースホスホリラーゼ(●)〕。
【図5】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの等電点。
【図6】 プレシオモナスSH−35株の生産するマル
トースホスホリラーゼおよびトレハロースホスホリラー
ゼの分子量。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/64 C12N 9/00 - 9/99 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下に示す理化学的性質を有するマルト
    ースホスホリラーゼ及びトレハロースホスホリラーゼを
    燐酸の存在下でマルトース含有水溶液に作用させ、得ら
    れるトレハロースとマルトースとを含む水溶液を濃縮す
    ることを特徴とするトレハロースを含有する糖化液の製
    造方法。マルトースホスホリラーゼ (イ) 作用: マルトース中のα−1,4−グルコピラノシド結合を燐
    酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコースおよびβ
    −D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ) 基質特異性(分解反応): マルトースに作用し、他の二糖類に作用しない。 (ハ) 至適pHおよび安定pH範囲: 分解反応の至適pHは7.0〜7.5であり、合成反応
    の至適pHは6.0である。50℃、10分間の加熱条
    件下ではpH5.5〜7.0の範囲内で安定である。 (ニ) 温度に対する安定性: pH6.0、15分間の加熱条件下では45℃まで安定
    である。 (ホ) 作用適温の範囲: 50℃近傍に分解反応の至適作用温度を有し、合成反応
    の作用適温は50〜55℃である。 (ヘ) 失活条件: 50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.0および
    8.0で完全に失活する。また、pH6.0、15分間
    の処理では55℃で完全に失活する。 (ト) 阻害: 銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモサクシニイミ
    ド、p−クロロマーキュリベンゾエイト、ドデシルベン
    ゼンスルホン酸ナトリウムで阻害される。 (チ) アイソエレクトロフォーカシング法による等電
    点: 3.8 (リ) SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分
    子量: 約92,000(ゲル濾過法による分子量は約200,
    000であり、2ケのサブユニットから構成されてい
    る)。トレハロースホスホリラーゼ (イ) 作用: トレハロース中のα−1,1−グルコピラノシド結合を
    燐酸存在下で可逆的に加燐酸分解し、グルコースおよび
    β−D−グルコース1−燐酸を生成する。 (ロ) 基質特異性(分解反応): トレハロースに作用し、他のニ糖類に作用しない。 (ハ) 至適pHおよび安定pH範囲: 分解および合成反応の至適pHは7.0である。50
    ℃、10分間の加熱条件下ではpH6.0〜9.0の範
    囲内である。 (ニ) 温度に対する安定性: pH7.0、15分間の加熱条件下では50℃まで安定
    である。 (ホ)作用適温の範囲: 分解反応及び、合成反応の作用適温は50〜55℃であ
    る。 (ヘ) 失活条件: 50℃、10分間の加熱条件下ではpH5.0および
    9.5で完全に失活する。また、pH7.0、15分間
    の処理では55℃で完全に失活する。 (ト) 阻害: 銅、水銀、カドミウム、亜鉛、N−ブロモサクシニイミ
    ド、p−クロロマーキュリベンゾエイトで阻害される。 (チ) アイソエレクトロフォーカシング法による等電
    点: 4.5 (リ) SDSポリアクリルアミド電気泳動法による分
    子量: 約88,000(ゲル濾過法による分子量は約200,
    000であり、2ケのサブユニットから構成されてい
    る)。
  2. 【請求項2】 マルトースホスホリラーゼ及びトレハロ
    ースホスホリラーゼを、トレハロース濃度が最大生成量
    に達するまで、または最大生成量に達する以前まで、マ
    ルトース含有水溶液に作用させる請求項1記載のトレハ
    ロースを含有する糖化液の製造方法。
  3. 【請求項3】 マルトース含有水溶液が、マルトースの
    水溶液またはマルトースを含有する糖質の水溶液である
    請求項1または2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 トレハロースとマルトースとを含む水溶
    液を、糖が析出しない濃度まで濃縮する請求項1〜3の
    いずれか1項に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 トレハロースとマルトースとを含む水溶
    液が、トレハロース及びマルトース以外の糖質も含む水
    溶液である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 トレハロースとマルトースとを含む水溶
    液にグルコアミラーゼを作用させ、得られるトレハロー
    スとグルコースとを含む水溶液または得られるトレハロ
    ースとグルコースとマルトースとを含む水溶液を濃縮す
    る請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 トレハロースとグルコースとを含む水溶
    液またはトレハロースとグルコースとマルトースとを含
    む水溶液を、糖が析出しない濃度まで濃縮する請求項6
    記載の製造方法。
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