JPH0833448A

JPH0833448A - 低アレルギー性調製乳

Info

Publication number: JPH0833448A
Application number: JP6191215A
Authority: JP
Inventors: Akinori Yonekubo; 明得米久保; Tetsuo Kaneko; 哲夫金子; Takahiro Sugano; 貴浩菅野; Tamotsu Kuwata; 有桑田
Original assignee: Meiji Milk Products Co Ltd
Current assignee: Meiji Dairies Corp
Priority date: 1994-07-22
Filing date: 1994-07-22
Publication date: 1996-02-06
Anticipated expiration: 2018-06-23
Also published as: JP3419897B2

Abstract

(57)【要約】【構成】アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコ
サヘキサエン酸、コレステロールの含量を母乳並みのレ
ベルに調整してバランスよく配合してなることを特徴と
する低アレルギー性調製乳。【効果】脂質の面からみて、低アレルギー性調製粉乳
の母乳化が図られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、低アレルギー性調製乳
に関するものであり、更に詳細には、コレステロール及
び不飽和脂肪酸を強化した低アレルギー性調製乳に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】乳幼児が正常に発育、発達していくため
には、栄養素のバランスが良くとれた飲食品を摂取する
ことが重要であるが、中にはアトピー素因の強い乳幼児
の場合には、食餌制限を大きく受けることがある。

【０００３】このような場合には、牛乳蛋白質（カゼイ
ン、乳清蛋白質）や大豆蛋白質の加水分解物を窒素源と
して調製された乳幼児用低アレルギー食品が用いられ
る。しかし、このような分解物を用いた調製乳では、長
岡ら（日本農芸化学会誌、６６、３２２（１９９２））
や富田ら（特開平４−３６５４４４）の報告のように、
乳清蛋白質加水分解物及び／又はカゼイン加水分解物を
用いて調製したミルクのうち、乳清蛋白質加水分解物の
配合量の多いミルクで哺育した乳児において、血清コレ
ステロールの低下が認められている。

【０００４】乳幼児期の血清コレステロールは、母乳栄
養ではその値が高いが、これを一般の調製乳に変更する
と低下してしまうことから、母乳並みのコレステロール
摂取が生理的に好ましいことが報告されている（Ｋａｌ
ｌｉｏ，Ｍ．Ｊ．ｅｔａｌ．，Ｐｅｄｉａｔｒｉｃ
ｓ，８９，６６３〜６６６（１９９２））。しかし、蛋
白質の加水分解物をベースにした調製乳で哺育した乳児
にあっては、母乳栄養児に比べて低い血清コレステロー
ル値を示した。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、乳清蛋
白質の加水分解物を配合した調製乳で哺育された乳児の
血清コレステロール値が、母乳栄養児のそれに比して低
いという事実は、乳児の神経機能の発達にとって重要な
コレステロールの生体内でのレベルが充分でないことを
懸念させるものである。そこで、本発明者らは、コレス
テロールを母乳レベル以上に強化したミルクを調製し、
血清コレステロール値を母乳レベルにまで高める必要性
を認識した。

【０００６】また一方、母乳を脂質の面からみてみる
と、母乳中には、不飽和脂肪酸であるアラキドン酸（以
下、ＡＡということもある）、エイコサペンタエン酸
（以下、ＥＰＡということもある）及びドコサヘキサエ
ン酸（以下、ＤＨＡということもある）、並びに、コレ
ステロールがバランスよく含まれている。

【０００７】そして、乳幼児の脳や網膜を発達させるた
めに、ＤＨＡを母乳レベルにまで強化したミルクを調製
し、このようなミルクを用いて哺育が行なわれるように
なった。しかしながら、ＤＨＡ及び原料に由来するＥＰ
Ａは、血清中のコレステロール値を低下しうること
（Ｐ．Ｊ．Ｎｅｓｔｅｌ．，Ａｎｎｕ．Ｒｅｖ．Ｎｕｔ
ｒ．，ｖｏｌ．１０，１４９−１６７，１９９０）、ま
た、赤血球膜のＡＡレベルを低下させること（大元習
子、日本小児科学会誌、第９４巻、２２４−２３４、１
９９０；Ｓ．Ｅ．Ｃａｒｌｓｏｎｅｔａｌ．，Ｐｅ
ｄｉａｔｒ．Ｒｅｓ．，ｖｏｌ．３０，４０４−４１
２，１９９１）から、本発明者らは、ＤＨＡとＡＡとの
バランス、そして更にコレステロールとのバランスも母
乳並みにする必要性を認めた。

【０００８】これらの点に鑑み、本発明は、母乳化、特
にアレルギー低減化の面から母乳化した低アレルギー性
調製乳を創製することを目的とするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的達成
のためになされたものであって、低アレルギー性調製乳
の作製において、低アレルギー性のみでなく消化吸収利
用性の面から、蛋白質の加水分解物を窒素源として用い
る調製乳に着目した。

【００１０】しかしながら、このような調製乳で哺育す
ると、血清コレステロール値が低下し、また、脂質面で
の母乳化を図るためにＤＨＡ、ＥＰＡを強化すると、体
内でのコレステロール、ＡＡのレベルが低下するとの最
近の報告を併せ検討した結果、脂質面での母乳化に当
り、各成分のバランス、とりわけ、ＤＨＡ、ＥＰＡ、Ａ
Ａ及びコレステロールの４成分がバランス良く配合され
なければならない点にはじめて着目した。

【００１１】そして、ＤＨＡ、ＥＰＡを強化し、更にコ
レステロールを母乳レベルの１２０〜２００％に、及び
ＡＡを母乳レベルに補い、４成分のバランスをとった調
製乳を創製し、これを乳幼児に摂取したところ、乳幼児
の血清コレステロール値、アラキドン酸レベル、ＤＨＡ
レベルがいずれも母乳栄養児とほぼ同等となり、生体内
の脂質バランスが適正なものとなることを発見した。ま
た、いずれの成分も適正に強化されなければ生体の脂質
改善とはなり得ないことも確認した。本発明は、これら
の有用な新知見を基礎とし、更に研究の結果完成された
ものである。

【００１２】本発明を実施するには、従来から知られて
いる低アレルギー性調製乳を常法にしたがってＤＨＡ及
びＥＰＡを強化し、更にコレステロール及びＡＡを強化
すればよい。コレステロール、ＡＡは、それぞれ精製し
た純品を用いてもよいし、また、これらを豊富に含有す
る食品又は粗精製物を使用しても何ら差し支えない。

【００１３】例えば、ＡＡ強化のためには、微生物発酵
によって得られるＡＡを豊富に含むトリグリセリドもし
くは卵黄レシチンに含まれるＡＡ成分を用いることがで
きる。コレステロール強化のためには、乳脂肪や魚油、
動物油に含まれているコレステロールを精製脱臭工程で
除去する際、この除去された成分よりコレステロールを
回収し、これを精製したものを用いることができるし、
もちろん市販品も使用可能である。また、ＡＡ、コレス
テロール（必要あればＤＨＡ、ＥＰＡ）をともに含有す
る油脂成分、その精製物、粗精製物等の使用も可能であ
る。

【００１４】本発明においては、ＤＨＡ及びＥＰＡを強
化した調製乳において、特に赤血球膜でのＡＡの低下及
び血清中のコレステロールの低減を防止するために、育
児用調製乳に、ＤＨＡ、ＥＰＡの他に、上記のようにし
て得たＡＡ、コレステロール又はこれを適量含有する油
脂を添加配合する。これらの各成分の添加配合レベル
は、下記表１に示すような母乳における含量と同一ない
しそれに類似の、またコレステロールについては母乳よ
りも高いレベルにする。

【００１５】

【表１】

【００１６】そして常法にしたがい、例えば、乳清蛋白
質の処理物、カゼイン及び／又は大豆蛋白質の処理物、
糖類（乳糖、オリゴ糖）、ミネラル類、ビタミン類、そ
の他常用される成分を原材料として用い、更にそして、
ＡＡ、ＤＨＡ、ＥＰＡ、コレステロールを含有する必須
脂肪酸調整油脂（リノール酸、α−リノレン酸を主に含
む）を配合し、これらを常法にしたがって、溶解、混
合、清浄化した後、殺菌、濃縮、ホモゲナイズし、噴霧
乾燥その他の乾燥工程を経て、低アレルギー性調製粉乳
を得る。

【００１７】上記した乳清蛋白質の処理物は、乳清蛋白
質等各種蛋白質源を酸、アルカリ、及び／又は酵素で加
水分解して得た加水分解物のほか、これ（ら）の蛋白質
源を濃縮、分離、変性、分画、沈殿、その他の各種処理
して得たアレルギー低減化処理物を広く指すものであ
る。その非限定例としては、乳清蛋白質分解物（ホエイ
蛋白質濃縮物：ＷＰＣ、ホエイ蛋白質分離物：ＷＰＩ等
の分解物）、カゼイン分解物、大豆蛋白質分解物等が挙
げられ、市販品も適宜使用可能である。

【００１８】本発明に係る調製乳は、後記するところか
らも明らかなように、脂質バランスが適正で、消化吸収
利用性にすぐれ、しかもアレルギー性が低減化された卓
越したものである。

【００１９】以下、実施例により本発明を更に詳しく説
明する。

【００２０】

【実施例１】低アレルギー性調製粉乳１００ｋｇを調製
するに当り、先ず、下記の表２に示す原材料及び成分を
用意した。そしてこれらの原材料を常法にしたがって溶
解、混合、清浄化した後、殺菌、濃縮、均質化し、噴霧
乾燥して製品を得た。

【００２１】

【表２】

【００２２】

【実施例２】実施例１における原材料（必須脂肪酸調整
油脂２５．０ｋｇ）の４成分として、アラキドン酸とし
て９０ｇ、ドコサヘキサエン酸として３００ｇ、エイコ
サペンタエン酸として６０ｇ、コレステロールとして１
６０ｇを用いたほかは、同一の原材料を用意した。そし
てこれらの原材料を常法にしたがって溶解、混合、清浄
化した後、殺菌、濃縮、均質化し、噴霧乾燥して低アレ
ルギー性調製粉乳１００ｋｇを製造した。

【００２３】

【実施例３】１グループ男児５名、女児５名からなる乳
児を８グループに分け、各グループ毎に、母乳（母乳栄
養児）、従来の蛋白質分解調製乳（従来調製乳区）、実
施例２のＡＡ、ＤＨＡ、ＥＰＡ、コレステロールの所定
量のうち、ＤＨＡの所定量を含む調製粉乳（ＤＨＡ
区）、同じくＤＨＡとコレステロールの所定量を含む調
製粉乳（ＤＨＡ＋コレステロール区）、同じくＤＨＡ、
ＡＡ、及びコレステロールの所定量を含む調製粉乳（Ｄ
ＨＡ＋ＡＡ＋コレステロール区）、同じくＤＨＡ、ＥＰ
Ａ及びＡＡの所定量を含む調製粉乳（ＤＨＡ＋ＥＰＡ＋
ＡＡ区、）、同じくＤＨＡ、ＥＰＡ及びコレステロール
の所定量を含む調製粉乳（ＤＨＡ＋ＥＰＡ＋コレステロ
ール区）、同じくＤＨＡ、ＥＰＡ、ＡＡ及びコレステロ
ールの所定量を含む調製粉乳（ＤＨＡ＋ＥＰＡ＋ＡＡ＋
コレステロール区）で２週間哺育し、各調製粉乳で哺育
した乳児の赤血球膜リン脂質中のＡＡ及びＤＨＡレベル
並びに血清コレステロール濃度を測定し、下記の表３及
び表４の結果を得た。

【００２４】

【表３】

【００２５】

【表４】

【００２６】上記結果から明らかなように、ＤＨＡ、Ｅ
ＰＡ、ＡＡ及びコレステロールを添加した調製乳（ＤＨ
Ａ＋ＥＰＡ＋ＡＡ＋コレステロール区）で哺育した乳児
の赤血球膜リン脂質（ホスファチジルエタノールアミ
ン）中のＡＡ及びＤＨＡレベル並びに血清中のコレステ
ロール濃度は、母乳（母乳栄養児区）で哺育した場合と
同レベルであった。

【００２７】これに対して、他の試験区においては、い
ずれも各成分のバランスがとれず、本発明によってはじ
めて、母乳栄養児の赤血球膜リン脂質と同じＡＡ及びＤ
ＨＡパターン並びに血清コレステロール濃度になること
がここに立証された。

【００２８】

【発明の効果】本発明によって、低アレルギー性調製乳
において、コレステロール、ＡＡ、ＥＰＡ、ＤＨＡの各
成分を母乳並みにバランス良く配合することに成功し、
特に油脂の面から母乳の代替となりうる低アレルギー性
の新規調製乳を製造することができる。

【００２９】また、アレルギー患者にあっても、本発明
品を飲用することにより、血清コレステロールの低下を
招来することなく、赤血球膜リン脂質のＡＡレベル及び
ＤＨＡレベルを母乳栄養児と同程度とすることができ
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者桑田有東京都東村山市栄町１−21−３明治乳業株式会社栄養科学研究所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】コレステロールを母乳レベルの１２０〜
２００％に、及び不飽和脂肪酸を母乳並みのレベルに強
化、配合してなることを特徴とする低アレルギー性調製
乳。
【請求項２】不飽和脂肪酸が、リノール酸、α−リノ
レン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸及びドコ
サヘキサエン酸からなる群から選ばれるものであること
を特徴とする請求項１に記載の調製乳。
【請求項３】低アレルギー性調製乳粉末１００ｇ当
り、コレステロール７０〜２７０ｍｇ、アラキドン酸１
５〜９０ｍｇ、エイコサペンタエン酸２０〜６０ｍｇ、
ドコサヘキサエン酸６５〜３００ｍｇを含有してなるこ
とを特徴とする粉末状の低アレルギー性調製乳。
【請求項４】調乳してコレステロールを母乳レベルの
１２０〜２００％に、及び不飽和脂肪酸を母乳並みのレ
ベルに調整するものであることを特徴とする請求項３に
記載の調製乳。
【請求項５】調乳してコレステロールを母乳レベルの
１２０〜２００％に、及び不飽和脂肪酸を母乳並みのレ
ベルに調整して液状製品としてなることを特徴とする請
求項４に記載の調製乳。
【請求項６】調製液１００ｍｌ当り、コレステロール
１１〜４０ｍｇ、アラキドン２〜１３ｍｇ、エイコサペ
ンタエン酸３〜８ｍｇ、ドコサヘキサエン酸９〜４０ｍ
ｇを含有してなることを特徴とする請求項４又は請求項
５に記載の調製乳。
【請求項７】乳清蛋白質の処理物を含有してなること
を特徴とする請求項１〜請求項６のいずれか１項に記載
の調製乳。
【請求項８】処理物が、加水分解物であることを特徴
とする請求項７に記載の調製乳。