JPH08325686A - 溶融金属めっき浴中のドロス除去装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋼板にめっきする溶融亜鉛や溶融アルミニウ
ム、溶融すず、溶融銅、溶融ハンダ等の溶融金属の品質
を確保するためにめっき浴中の溶融金属とドロスとを分
離する装置を提供する。 【構成】 複数の可動堰13をオーバルトラック状のガイ
ドレール14に支持して駆動装置17によって矢示Ｆ方向に
所定の速度で回転することにより、槽内のめっき浴２の
流れを止めながら緩やかに移動させるようにしたので、
トップドロスＡおよびボトムドロスＢの静置分離の促進
を可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融金属めっき浴中の
ドロス除去装置に係り、鋼板にめっきする溶融亜鉛や溶
融アルミニウム、溶融すず、溶融銅、溶融ハンダ等の溶
融金属の品質を確保するためにめっき浴中の溶融金属と
ドロスとを分離する装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、鋼板の表面に例えば亜鉛めっきを
施す方法の一つとして、一般に、溶融亜鉛を主成分とす
るめっき浴中に鋼板を連続的にどぶ漬けする、いわゆる
溶融亜鉛めっきがある。このめっき浴中には添加剤であ
るアルミニウムや鋼板から溶け出した鉄分等が含まれる
が、これらの成分が金属間化合物となっていわゆるドロ
スと呼ばれる粒子状不純物を生成する。

【０００３】このドロスはトップドロスとボトムドロス
とに大別される。すなわち、トップドロスはアルミの含
有比率が高いことから比重が軽く、めっき浴の上部に位
置し、ボトムドロスは鉄の含有比率が高いことから比重
が重く、めっき浴の下部に位置する。このようなドロス
の量がめっき浴中で増加すると、めっきの品質が著しく
損なわれるので、めっき浴中から除去する必要がある。

【０００４】このドロスを除去する方法として、例えば
図８に示すようなドロス分離槽が用いられている（例え
ば、特開平６−248405号公報参照）。この図において、
１は溶融金属めっき浴（以下、単にめっき浴という）２
を収容するめっきポットで、スナウト３を介して導き入
れられた鋼板Ｓがシンクロール４を経ながら連続的に溶
融金属めっきが施される。５はめっきポット１内にその
上方から挿入されてめっき浴２を吸い上げる吸い上げ管
で、めっき浴ポンプ６が接続される。

【０００５】７はドロス分離槽で、複数枚の上邪魔板８
と下邪魔板９とが所定の間隔で交互に取り付けられる。
10はドロス分離槽７の一端に取り付けられるめっき浴流
入管で、吸い上げ管５の端部が接続される。11はドロス
分離槽７の他端に取り付けられるめっき浴排出管で、め
っきポット１内に連結される戻り管12が接続される。そ
して、めっき浴ポンプ６で吸い上げられてめっき浴流入
管10から供給されためっき浴２は、ドロス分離槽７にお
いて順次上邪魔板８と下邪魔板９の間をくぐり抜ける際
に、槽内のめっき浴２中にトップドロスＡを浮上させる
とともにボトムドロスＢを沈澱堆積させる。これらトッ
プドロスＡ、ボトムドロスＢの除去された清浄なめっき
浴２はめっき浴排出管11から戻り管12を介してめっきポ
ット１内に戻される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
たドロス分離槽７は複数枚の上下邪魔板８，９を用いる
ことによってトップドロスＡ、ボトムドロスＢを高効率
で分離除去することを狙ったものであるが、さらに分離
効率を高めようとして邪魔板の枚数を増やすと、めっき
浴２の流路が狭くなり、流速が上がってかえって分離効
率が悪くなるという欠点があった。この欠点を補おうと
して槽を大型化すると設備費が嵩むという別の新たな問
題が生じることになる。

【０００７】なお、例えば特開平４− 99258号公報に
は、めっきポット底部周辺から溶融亜鉛めっき浴をポン
プで汲み出してサブポット（ドロス分離槽）に送り込
み、高温に保持するとともにAl濃度を0.14重量％以上に
高め、ボトムドロスをトップドロスとして浮上させて除
去するという槽内の流れを制御する邪魔板などを用いな
い方法が開示されているが、大きな容積を必要とするに
もかかわらず分離性能がよくないという問題がある。

【０００８】本発明は、上記のような従来技術の有する
課題を解決すべくなされたものであって、邪魔板等を用
いたドロス分離槽よりも大きな分離性能を備えた溶融金
属めっき浴中のドロス除去装置を提供することを目的と
する。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、めっきポット
内の溶融金属めっき浴中のドロスをドロス分離槽を用い
て除去する装置において、前記めっきポット内から前記
めっき浴を吸い上げて前記ドロス分離槽に送給するめっ
き浴ポンプと、前記ドロス分離槽の一方の側壁のほぼ中
間高さに開口した供給口が設けられためっき浴流入管
と、前記供給口から吐出されるめっき浴を所定の区間に
仕切りながら移動させる複数の可動堰からなるめっき浴
槽内移動手段と、清浄化しためっき浴を排出するめっき
浴排出口と、を備えたことを特徴とする溶融金属めっき
浴中のドロス除去装置である。

【００１０】

【作 用】本発明によれば、複数の可動堰によってめっ
き浴の流れを止めながら、前記可動堰を緩やかに移動さ
せるようにしたので、トップドロスおよびボトムドロス
の静置分離を促進させることが可能である。

【００１１】

【実施例】以下に、本発明の実施例について、図面を参
照して詳しく説明する。図１は本発明の実施例を模式的
に示す側断面図であり、図２はそのＸ−Ｘ矢視平面図で
ある。なお、図中における従来例と同一部材には同一符
号を付して説明を省略する。

【００１２】これらの図に示すように、ドロス分離槽７
Ａ内には、複数（例えば６枚）の可動堰13が、オーバル
トラック状のガイドレール14に支持棒15を介して支持装
置16によってほぼ等間隔に支持され、駆動装置17によっ
てギア機構18および後述する回転機構19を介して矢示Ｆ
方向に所定の速度で回転される。つぎに、各部の詳細に
ついて説明する。図３は図２のＣ部を拡大して一部断面
で示したもので、そのＹ−Ｙ矢視断面を図４に、またＺ
−Ｚ矢視断面を図５にそれぞれ示している。

【００１３】これらの図に示すように、ガイドレール14
は中空状とされて支持装置16が移動自在に内装される。
このガイドレール14の中空部の下面には全長にわたって
可動堰13を支持する支持棒15が移動できるようなスリッ
ト14ａが設けられ、その上面には後述する方向転換用ア
ーム20をガイドするガイド用溝21が穿設される。支持装
置16は、可動堰13の支持棒15の先端を回転自在に支持す
る駆動スペーサ22と、この支持棒15の先端部に取り付け
られた方向転換用アーム20とで構成される。この方向転
換用アーム20の先端に取り付けられる突起部20ａは前記
ガイド用溝21でガイドされる。上記した駆動スペーサ22
は、プレートタイプのチェーン23で連結されてガイドレ
ール14の中空部内を移動自在とされる（図５参照）。

【００１４】回転機構19は、図６に示すように、回転軸
24によって回転自在とされる一対のタイヤ25で構成され
る。このタイヤ25の回転軸24は、前記した駆動装置17に
よって駆動されるギア機構18に結合されており、チェー
ン23に駆動力を付与することにより、チェーン23に連結
された駆動スペーサ22を移動自在とする。なお、このタ
イヤ25の回転軸24にはレバー26を介してチェーン23側に
押し付けるスプリングなどの付勢手段27が取り付けられ
る。

【００１５】なお、前出図２に示したように、めっき浴
流入管10には槽のほぼ中間の高さ位置に開口するような
供給口10ａが設けられており、まためっき浴排出口28お
よびトップドロス排出口29はめっき浴を供給する側の側
壁に対向した側壁の側部にそれぞれ設けられる。このよ
うにしてドロス分離槽７Ａを構成することにより、めっ
き浴流入管10の供給口10ａからめっき浴２を流出しなが
ら、駆動装置17によって可動堰13を矢示Ｆ方向に所定の
速度で移動させる。このとき、可動堰13は図７（ａ）に
示すように、槽の中央ではめっき浴２の流れに対して直
角に、また壁部においては平行になるように、すなわち
イ、ロ、ハ、ニの各位置で図７（ｂ）に示すように方向
変換しながら回転移動する。そうすると、槽の中央にお
いて可動堰13の間のめっき浴２の流れは可動堰13の移動
速度と同じ速度の流れとなり、緩やかな層流流れとなっ
てトップドロスＡおよびボトムドロスＢの静置分離が促
進され、ボトムドロスＢを沈澱分離して底面に堆積さ
せ、トップドロスＡを浮上分離して浴面に浮遊させる。

【００１６】そして、浴面に浮遊しているトップドロス
Ａはトップドロス排出口29から槽外に排出され、一方、
清浄になっためっき浴２はめっき浴排出口28から排出さ
れ、戻り管12を介してめっきポット１内に戻される。寸
法が縦；800 mm×横；600 mm×高さ；600 mmのドロス分
離槽７Ａに、溶融亜鉛めっき浴を毎分80リットルの割合
で供給してドロス分離を行った。このとき、可動堰13を
約１m/min のゆっくりした速度で移動しながら、約２ト
ンの溶融亜鉛めっき浴を約１時間循環してトップドロス
ＡとボトムドロスＢを分離した。そして、分離運転後の
保全作業として人手によってそれぞれのドロスをすくっ
て回収した。その量を測定した結果を表１に示した。な
お、比較のために、上下邪魔板をそれぞれ３枚ずつ取り
付けた従来のドロス分離槽（前出図８参照）を用いて同
様の条件でドロス分離を行った結果を表１に併せて示し
た。

【００１７】

【表１】

【００１８】この表から明らかなように、本発明例のド
ロス回収量は従来例のそれに比べてトップドロスＡ、ボ
トムドロスＢのいずれも２倍強も上回っており、本発明
例の分離性能が高いことがわかる。なお、上記実施例に
おいて、可動堰13を移動するチェーン23の回転に一対の
タイヤ25を用いるとして説明したが、本発明はこれに限
るものではなく、チェーン23の型式によっては例えばス
プロケットなどを用いてもよい。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
以下の効果を奏するものである。 同一寸法のドロス分離槽の場合で、邪魔板を用いた
従来例の分離性能を上回る分離性能が得られること。 清浄な溶融金属めっき浴を得るとともに、無駄のな
いドロス除去を行うことができること。 清浄な溶融金属めっき浴が得られることから、より
品質の高いめっき鋼板を製造することができること。 清浄な溶融金属めっき浴が得られることから、浴中
設置の機器の寿命の延長が可能になること。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を模式的に示す側断面図であ
る。

【図２】図１のＸ−Ｘ矢視平面図である。

【図３】図２におけるＣ部を拡大して一部断面で示す平
面図である。

【図４】図３のＹ−Ｙ矢視断面図である。

【図５】図３のＺ−Ｚ矢視断面図である。

【図６】回転機構を拡大して示す平面図である。

【図７】（ａ）本発明の可動堰の動きの説明図、（ｂ）
方向転換アームの動きの説明図である。

【図８】従来例を模式的に示す側断面図である。

【符号の説明】

１ めっきポット ２ めっき浴（溶融金属めっき浴） ３ スナウト ４ シンクロール ５ 吸い上げ管 ６ めっき浴ポンプ ７Ａ ドロス分離槽 10 めっき浴流入管 12 戻り管 13 可動堰 14 ガイドレール（めっき浴槽内移動手段） 15 支持棒 16 支持装置 17 駆動装置（めっき浴槽内移動手段） 18 ギア機構（めっき浴槽内移動手段） 19 回転機構（めっき浴槽内移動手段） 20 方向転換用アーム 20ａ 突起部 21 ガイド用溝 22 駆動スペーサ 23 チェーン 24 回転軸 25 タイヤ 26 レバー 27 付勢手段 28 めっき浴排出口 29 トップドロス排出口 Ａ トップドロス Ｂ ボトムドロス Ｓ 鋼板

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 めっきポット内の溶融金属めっき浴中
   のドロスをドロス分離槽を用いて除去する装置におい
   て、 前記めっきポット内から前記めっき浴を吸い上げて前記
   ドロス分離槽に送給するめっき浴ポンプと、 前記ドロス分離槽の一方の側壁のほぼ中間高さに開口し
   た供給口が設けられためっき浴流入管と、 前記供給口から吐出されるめっき浴を所定の区間に仕切
   りながら移動させる複数の可動堰からなるめっき浴槽内
   移動手段と、 清浄化しためっき浴を排出するめっき浴排出口と、を備
   えたことを特徴とする溶融金属めっき浴中のドロス除去
   装置。