JP2905836B2

JP2905836B2 - 浴中ドロスの分離排出方法と装置

Info

Publication number: JP2905836B2
Application number: JP6286394A
Authority: JP
Inventors: 勝佐藤; 一郎旭; 貞夫江端
Original assignee: Kawasaki Steel Corp
Current assignee: JFE Steel Corp
Priority date: 1994-03-31
Filing date: 1994-03-31
Publication date: 1999-06-14
Anticipated expiration: 2014-06-14
Also published as: JPH07268576A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融金属めっき鋼板に
用いる溶融亜鉛、溶融アルミニウム、溶融スズ、溶融
銅、溶融ハンダ等の溶融金属の品質を確保するため、遠
心分離によりめっき浴中の溶融金属とドロスとを分離排
出して、ドロスを除去する方法および装置に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】ストリップ（鋼板）の表面に亜鉛めっき
を施す方法の一つとして、一般に、溶融亜鉛を主成分と
するめっき浴中にストリップを連続的にどぶづけする、
いわゆる溶融亜鉛めっきがある。このめっき浴中には、
添加剤であるアルミニウムおよびストリップから溶け出
した鉄分が含まれるが、これらの成分が金属間化合物と
なっていわゆるドロスと呼ばれる微粒子不純物を生成す
る。

【０００３】このドロスは、アルミニウムの含有比率が
高いことから比重が軽く、めっき浴の上部に位置するト
ップドロスと、鉄の含有比率が高いことから比重が重
く、めっき浴の下部に位置するボトムドロスとに大別さ
れ、めっき浴中においては、上部にトップドロス、中間
部に溶融金属、そして下部にボトムドロスが位置する。

【０００４】めっき浴中のドロス量が増えると、めっき
の品質が著しく損なわれるので、めっき浴中からドロス
を除去する必要があるが、従来、このドロスを除去する
方法として、特開昭６３−２１９５３６号公報に開示の
手段が存在する。

【０００５】この従来技術は、めっき浴を遠心分離装置
によって、比重の軽いトップドロスと、比重の重い溶融
亜鉛とに分離し、トップドロスを上部に設けた排出口か
ら排出すると共に、溶融亜鉛を下部の排出口から排出す
ることによって、トップドロスを除去するものである。

【０００６】この従来技術における装置にあっては、め
っき浴槽内のめっき浴は、別個に設けられたポンプによ
って分離機内に配管を介して供給されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】上記従来技術において
は、別にポンプを必要とすることから、ポンプと分離機
をつなぐ配管およびその温度を維持する保温設備をも必
要とし、また分離機内部での溶融金属の酸化を防止する
ために、不活性雰囲気の維持が必要であり、そのための
設備をも必要とするため、設備を構成する付帯装置を多
く必要とすることで、設備コストだけでなく運転コスト
も高くなり、不経済であった。

【０００８】広く市販されている溶融金属用のポンプ
は、ポンプとしての機能だけを追求したものであり、不
純物の除去を兼ねる機能を持ち合わせてはいない。

【０００９】本発明は、こうした点に鑑み創案されたも
ので、めっき浴を汲み上げるポンプ自体に遠心分離の機
能を持たせて、めっき浴を汲み出しながら、同時に不純
物であるドロスを分離排出して除去することを技術的課
題とし、めっき浴の清浄化に関する補助装置を不要とす
ることで、低コストの簡単な装置を提供することによっ
て品質の良いめっき浴を得ることを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】そのため、本発明に係る
方法は、めっき浴中に浸漬した略筒状のケーシング内
で、筒体内にその筒体と一体にして設けた羽根体を筒体
と共に高速回転させて筒体の底部開口部から筒体内にめ
っき浴を汲み上げ、遠心力のはたらきおよび比重の大小
によって筒体の周壁内面側から順にトップドロスを多く
含んだトップドロス富化浴、清浄めっき浴、およびボト
ムドロスを多く含んだボトムドロス富化浴に分離し、そ
れぞれ異なる吐出し口から排出することとした。

【００１１】また、本発明に係る装置は、めっき浴中に
浸漬される略筒状のケーシングと、ケーシング内に挿通
された筒体と、この筒体と一体にして組み立てられる羽
根体とから構成した。

【００１２】羽根体は、筒体に一体的に組付き、筒体の
中心に立設された回転軸と、回転軸の上部に横設された
案内板と、回転軸に案内板の下位で一体的に組付き、筒
体の底部開口部からめっき浴を汲み上げる汲み上げ羽根
とを有する。

【００１３】そして、羽根体の案内板の内端部にトップ
ドロスを多く含むトップドロス富化浴が排出されるトッ
プドロス富化浴排出口を形成し、案内板の中間部に清浄
めっき浴が排出される清浄めっき浴排出口を形成し、さ
らに案内板の外端部にボトムドロスを多く含むボトムド
ロス富化浴が排出されるボトムドロス富化浴排出口を形
成した。

【００１４】なお、羽根体の案内板のトップドロス富化
浴排出口の外端部から、ガイド輪部を垂下設すると良
い。

【００１５】また、羽根体の案内板の清浄めっき浴排出
口の入口部分に圧送羽根を設けると共に出口部分にボリ
ュート部を設け、さらにボリュート部に吐出し管を連設
することもできる。

【００１６】同様に、羽根体の案内板のトップドロス富
化浴排出口およびボトムドロス富化浴排出口の出口部分
にボリュート部を設け、ボリュート部に吐出し管を連設
しても良い。

【００１７】さらに、羽根体の回転軸の軸方向に窒素ガ
ス供給通路を形成すると共に、回転軸の下端部に窒素ガ
ス吹き出し口を形成しても良い。

【００１８】

【作用】羽根体を回転することによって、汲み上げ羽根
のはたらきにより、筒体の底部開口部から筒体内へめっ
き浴が汲み上げられる。

【００１９】この汲み上げられためっき浴は、汲み上げ
羽根の回転による遠心力によって、比重の最も大きいボ
トムドロスを多く含んだボトムドロス富化浴が筒体周壁
の内面に位置し、その内側に次に比重の大きい清浄めっ
き浴が位置し、さらにその内側に最も比重の軽いトップ
ドロスを多く含んだトップドロス富化浴が位置する。

【００２０】筒体内でそれぞれに分離した後、汲み上げ
羽根の押上げ力によって最も外側に位置するボトムドロ
ス富化浴は、案内板の外端部に形成されたボトムドロス
富化浴排出口から排出され、その内側に位置する清浄め
っき浴は案内板の中間部に形成された清浄めっき浴排出
口から排出され、さらにその内側に位置するトップドロ
ス富化浴は案内板の内端部に形成されたトップドロス富
化浴排出口から排出される。

【００２１】なお、案内板のトップドロス富化浴排出口
の外端部から、ガイド輪部を垂下設することによって、
トップドロス富化浴および清浄めっき浴をより円滑に分
離し、それぞれの排出口に確実に案内することができ
る。

【００２２】また、案内板の清浄めっき浴排出口の入口
部分に圧送羽根を設けると共に出口部分にボリュート部
を設け、さらにボリュート部に吐出し管を連設すること
によって、清浄めっき浴を確実に排出することができ
る。

【００２３】すなわち、圧送羽根の推進力によって清浄
めっき浴を大きな力で押し出すことができ、ボリュート
部によってその押し出された清浄めっき浴を清浄めっき
浴吐出し管に円滑に案内するものである。

【００２４】同様に、案内板のトップドロス富化浴排出
口およびボトムドロス富化浴排出口の出口部分にボリュ
ート部を設け、ボリュート部に吐出し管を連設すること
にいよって、トップドロス富化浴とボトムドロス富化浴
とを、それぞれ排出することが可能である。

【００２５】さらに、回転軸の軸方向に窒素ガス供給通
路を形成すると共に、回転軸の下端部に窒素ガス吹き出
し口を形成して、めっき浴中に窒素ガスを供給すること
によって、筒体内の酸化を防止すると共に、筒体内の液
面の調整を行い、これによってトップドロス富化浴と清
浄めっき浴の位置を調整することで、排出条件の最適化
を図っている。

【００２６】

【実施例】図１に本発明装置の一実施例の主要部分を示
す。この装置は、溶融亜鉛めっき浴Ｍに使用するもので
ある。分離する不純物は、トップドロスと呼ばれる浮遊
物と、ボトムドロスと呼ばれる沈澱物である。

【００２７】羽根体２は、その中心である回転軸１、こ
の回転軸１の上部に横設された案内板、そして汲み上げ
羽根４を４枚、圧送羽根５を８セット、トップドロス富
化浴排出口６を４ケ所、ボトムドロス富化浴排出口７を
１カ所（全周）、および筒体３を有する。

【００２８】これら各部分は一体物であり、回転軸１に
伝達される回転力によって一緒に回転する。

【００２９】ケーシング８にはボリュート部９が設けら
れ、また清浄めっき浴吐出し管１５が連結されており、
羽根体２の回転軸１はケーシング８に軸受を介して取付
けられており（図示せず）、電動機によって駆動され
る。

【００３０】めっき浴Ｍは、筒体３底部の開口部１３か
ら汲み上げ羽根４によって筒体３内に汲み上げられ、さ
らにこの汲み上げ羽根４によって加速されながら、筒体
３に沿って上昇して行く。

【００３１】その際に、筒体３内でトップドロスは内側
に浮き、ボトムドロスは外側に沈澱する傾向を示す。

【００３２】めっき浴Ｍが筒体３内の上部に達すると、
内側に浮いたトップドロスを多く含んだトップドロス富
化浴Ｄｔは、圧送羽根５よりも内側を通ってトップドロ
ス富化浴排出口６から案内板の上面に出て、再びめっき
浴Ｍへ戻る。

【００３３】このトップドロス富化浴排出口６にボリュ
ート部と吐出し管（それぞれ図示せず）を設けると、ト
ップドロス富化浴Ｄｔの分離排出ができる。

【００３４】なお、本実施例においては、ガイド輪部１
４を設けたので、トップドロス富化浴Ｄｔと隣接する清
浄めっき浴Ｋとを、より確実に分離することが可能であ
る。

【００３５】また、外側に沈んだボトムドロスを多く含
んだボトムドロス富化浴Ｄｂは、圧送羽根５よりも外側
を通ってボトムドロス富化浴排出口７から排出され、再
びめっき浴Ｍへ戻る。

【００３６】このボトムドロス富化浴排出口７にもボリ
ュート部と吐出し管（それぞれ図示せず）を設けると、
トップドロス富化浴Ｄｔの分離排出ができる。

【００３７】清浄めっき浴Ｋは、圧送羽根５によってボ
リュート部９へ送り込まれ、清浄めっき浴排出口１０お
よび吐出し管１５を通って回収される。

【００３８】また、本実施例においては、回転軸１の軸
方向に窒素ガス供給通路１１を形成すると共に、回転軸
１の下端部に窒素ガス吹き出し口１２を形成して、めっ
き浴Ｍ中に窒素ガスを供給することによって、筒体３や
羽根体２等が酸化するのを防止すると共に、筒体３内の
液面の調整を行い、これによってトップドロス富化浴Ｄ
ｔと清浄めっき浴Ｋの位置を調整することで、排出条件
を最適化を図っている。

【００３９】この装置を使用して、あらかじめドロス量
測定装置によりドロス量を測定した溶融亜鉛浴（トップ
ドロス約０．４wt% 、ボトムドロス約０．２wt% ）の分
離排出して回収した結果を表１に示す。なお、このとの
きの運転条件は毎分１５００回転、揚程１ｍでの吐出し
量が毎分８４リットルであった。

【００４０】

【００４１】なお、トップドロスはアルミニウムと鉄が
主成分の不純物、ボトムドロスは鉄と亜鉛が主成分の不
純物であることから、参考までにアルミニウムと鉄の濃
度を示してある。

【００４２】この表から清浄めっき浴Ｋ中の不純物の濃
度が、供給されためっき浴Ｍのそれと比較して大幅に減
少していることが分かり、これによって本発明装置は、
溶融亜鉛めっき浴Ｍから不純物を効果的に除去するポン
プ機能を有する装置であることが確認できる。

【００４３】

【発明の効果】本発明は上記した構成となっているの
で、以下に示す効果を奏する。従来の分離機にめっき浴
を供給するためのポンプとほぼ同様の簡単な構成で、め
っき浴を、清浄めっき浴と、浮遊物（トップドロス）を
多く含むめっき浴（トップドロス富化浴）と、沈澱物
（ボトムドロス）を多く含むめっき浴（ボトムドロス富
化浴）とに分離し、それぞれを別個の排出口で排出して
吐き出すことができるので、従来のような分離機および
それに付帯する数多くの設備を一切を必要とせず、よっ
て極めて低コストでめっき浴の分離を達成できる。

【００４４】また、本発明によって清浄な溶融金属めっ
き浴が得られるので、より品質の高いめっき鋼板を提供
できると共に、清浄めっき浴が得られることから、めっ
き浴中の浴中機器の寿命の延長が可能になる。

【００４５】さらに従来、人力によって行っていた柄杓
等による溶融亜鉛めっき浴の不純物除去作業をなくすこ
とができるので、安全性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置の一実施例を示す正面断面図。

【符号の説明】

１；回転軸２；羽根体３；筒体４；汲み上げ羽根５；圧送羽根６；トップドロス富化浴排出口７；ボトムドロス富化浴排出口８；ケーシング９；ボリュート部１０；清浄めっき浴排出口１１；窒素ガス供給通路１２；窒素ガス吹出し口１３；開口部１４；ガイド輪部１５；吐出し管Ｍ；めっき浴Ｋ；清浄めっき浴Ｄｔ；トップドロス富化浴Ｄｂ；ボトムドロス富化浴

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者江端貞夫岡山県倉敷市水島川崎通１丁目（番地なし）川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (56)参考文献特開平５−295506（ＪＰ，Ａ) 特開平３−31460（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) C23C 2/00 - 2/40

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】めっき浴(M) 中に浸漬した略筒状のケー
シング(8) 内で、筒体(3) 内に、該筒体(3) と一体にし
て設けた羽根体(2) を前記筒体(3) と共に高速回転させ
て前記筒体(3) 底部の開口部から該筒体(3) 内にめっき
浴(M) を汲み上げ、遠心力の働きおよび比重の大小によ
って前記筒体(3) の周壁内面側から順にトップドロスを
多く含んだトップドロス富化浴(Dt)、清浄めっき浴(K)
、およびボトムドロスを多く含んだボトムドロス富化
浴(Db)に分離し、それぞれ異なる排出口から排出して成
る浴中ドロスの分離排出方法。
【請求項２】めっき浴(M) 中に浸漬される略筒状のケ
ーシング(8) と、該ケーシング(8) 内に挿通された筒体
(3) と、該筒体(3) の中心に一体にして立設組付けした
回転軸(1) の上部に案内板を横設し、該案内板の下位で
前記回転軸(1) に、前記筒体(3) の底部開口部から前記
めっき浴(M) を汲み上げる汲み上げ羽根(4) を一体的に
組付けた羽根体(2) と、から構成され、前記羽根体(2)
の案内板の内端部にトップドロスを多く含むトップドロ
ス富化浴(Dt)が排出されるトップドロス富化浴排出口
(6) を形成し、前記案内板の中間部に清浄めっき浴(K)
が排出される清浄めっき浴排出口(10)を形成し、さらに
前記案内板の外端部にボトムドロスを多く含むボトムド
ロス富化浴(Db)が排出されるボトムドロス富化浴排出口
(7) を形成して成る浴中ドロスの分離排出装置。
【請求項３】羽根体(2) の案内板のトップドロス富化
浴排出口(6) の外端部から、ガイド輪部(14)を垂下設し
た請求項２記載の浴中ドロスの分離排出装置。
【請求項４】羽根体(2) の案内板の清浄めっき浴排出
口(10)の入口部分に圧送羽根(5) を設けると共に出口部
分にボリュート部(9) を設け、該ボリュート部(9) に吐
出し管(15)を連設した請求項２または３記載の浴中ドロ
スの分離排出装置。
【請求項５】羽根体(2) の案内板のトップドロス富化
浴排出口(6) およびボトムドロス富化浴排出口(7) の出
口部分にそれぞれ個別あるいはまとめて一つのボリュー
ト部を設け、該ボリュート部にそれぞれ個別あるいはま
とめて一つの吐出し管(15)を連設した請求項２、３また
は４記載の浴中ドロスの分離排出装置。
【請求項６】羽根体(2) の回転軸(1) の軸方向に窒素
ガス供給通路(11)を形成すると共に、前記回転軸(1) の
下端部に窒素ガス吹き出し口(12)を形成した請求項２、
３、４または５記載の浴中ドロスの分離排出装置。