JPH08325057A - ジルコニア焼結体 - Google Patents
ジルコニア焼結体Info
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- JPH08325057A JPH08325057A JP7133548A JP13354895A JPH08325057A JP H08325057 A JPH08325057 A JP H08325057A JP 7133548 A JP7133548 A JP 7133548A JP 13354895 A JP13354895 A JP 13354895A JP H08325057 A JPH08325057 A JP H08325057A
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- JP
- Japan
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- sintered body
- zirconia
- tetragonal
- crystal
- cubic
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Abstract
(57)【要約】
【目的】強度を劣化させることなく、耐水性、特に水熱
下で相変態の抑制された焼結体表面の劣化の少ないジル
コニア焼結体を提供する。 【構成】Y2 O3 を3〜4モル%の割合で含有するジル
コニア焼結体であって、リートベルト法により求めた立
方晶相の割合が12〜40体積%であり、残部が正方晶
ジルコニアからなり、格子定数から求めた正方晶ジルコ
ニア中のY2 O3固溶量が2.3モル%以上、平均粒径
が0.5μm以下、相対密度が95%以上であり、且つ
175℃、47時間水熱処理後の変態層の厚みが30μ
m以下であることを特徴とするジルコニア焼結体を得
る。
下で相変態の抑制された焼結体表面の劣化の少ないジル
コニア焼結体を提供する。 【構成】Y2 O3 を3〜4モル%の割合で含有するジル
コニア焼結体であって、リートベルト法により求めた立
方晶相の割合が12〜40体積%であり、残部が正方晶
ジルコニアからなり、格子定数から求めた正方晶ジルコ
ニア中のY2 O3固溶量が2.3モル%以上、平均粒径
が0.5μm以下、相対密度が95%以上であり、且つ
175℃、47時間水熱処理後の変態層の厚みが30μ
m以下であることを特徴とするジルコニア焼結体を得
る。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度を有し、かつ熱
安定性、特に水の存在下での安定性に優れたジルコニア
焼結体に関する。
安定性、特に水の存在下での安定性に優れたジルコニア
焼結体に関する。
【0002】
【従来技術】従来、ジルコニア焼結体は、Y2 O3 をは
じめとする希土類元素などを固溶させることにより高温
相である正方晶相を準安定に存在させて、高強度化、高
靱性化したものが知られている。この高強度化、高靱性
化は、亀裂周辺で正方晶から単斜晶への相変態にともな
う体積膨張によりクラックを消失させることに起因して
いる。
じめとする希土類元素などを固溶させることにより高温
相である正方晶相を準安定に存在させて、高強度化、高
靱性化したものが知られている。この高強度化、高靱性
化は、亀裂周辺で正方晶から単斜晶への相変態にともな
う体積膨張によりクラックを消失させることに起因して
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】正方晶を多量に含有
するジルコニア焼結体は、100〜300℃に保持する
と強度劣化や剥離が生じる。これは、正方晶相が本来、
熱力学的に不安定な相であるため特定温度域では正方晶
から単斜晶への相変態が進みやすく、その結果、体積膨
張により微小亀裂が生じたり、圧縮応力が生じるためと
考えられている。
するジルコニア焼結体は、100〜300℃に保持する
と強度劣化や剥離が生じる。これは、正方晶相が本来、
熱力学的に不安定な相であるため特定温度域では正方晶
から単斜晶への相変態が進みやすく、その結果、体積膨
張により微小亀裂が生じたり、圧縮応力が生じるためと
考えられている。
【0004】このような欠点を解決するために、特公平
4−63024号では、Y2 O3 の添加量、立方晶、正
方晶、単斜晶の結晶相比および結晶粒径を特定の範囲に
限定することが提案されている。しかし、特公平4−6
3024号の方法では、確かに大気中での200〜30
0℃における相変態をある程度抑制できるが、水の存在
下において正方晶が単斜晶に相変態して焼結体の表面の
劣化を防止するには至っていないのが現状である。
4−63024号では、Y2 O3 の添加量、立方晶、正
方晶、単斜晶の結晶相比および結晶粒径を特定の範囲に
限定することが提案されている。しかし、特公平4−6
3024号の方法では、確かに大気中での200〜30
0℃における相変態をある程度抑制できるが、水の存在
下において正方晶が単斜晶に相変態して焼結体の表面の
劣化を防止するには至っていないのが現状である。
【0005】従って、本発明の目的は、水の存在下でも
劣化の進行を抑制し、耐水性に優れ焼結体表面の劣化の
少ないジルコニア焼結体を提供することにある。
劣化の進行を抑制し、耐水性に優れ焼結体表面の劣化の
少ないジルコニア焼結体を提供することにある。
【0006】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、ジルコニ
ア焼結体の耐水性に影響を及ぼす因子について鋭意研究
を重ねた結果、焼結体中の立方晶の割合と正方晶中のY
2 O3 固溶量が特に大きな影響を及ぼすことを見出し
た。そして、原料の作製法や焼成方法を制御し、リート
ベルト法により求めた立方晶相の割合が12〜40体積
%であり、残部が正方晶ジルコニアからなること、格子
定数から求めた正方晶ジルコニア中のY2 O3 固溶量が
2.3モル%以上であること、平均粒径が0.5μm以
下であること、相対密度が95%以上であることを満足
する焼結体が、175℃、47時間水熱処理後において
変態層の厚みが30μm以下の優れた耐水性を有するこ
とを突き止め本発明に至った。
ア焼結体の耐水性に影響を及ぼす因子について鋭意研究
を重ねた結果、焼結体中の立方晶の割合と正方晶中のY
2 O3 固溶量が特に大きな影響を及ぼすことを見出し
た。そして、原料の作製法や焼成方法を制御し、リート
ベルト法により求めた立方晶相の割合が12〜40体積
%であり、残部が正方晶ジルコニアからなること、格子
定数から求めた正方晶ジルコニア中のY2 O3 固溶量が
2.3モル%以上であること、平均粒径が0.5μm以
下であること、相対密度が95%以上であることを満足
する焼結体が、175℃、47時間水熱処理後において
変態層の厚みが30μm以下の優れた耐水性を有するこ
とを突き止め本発明に至った。
【0007】ここで、立方晶相の比率は、焼結体のX線
回折測定をCuKα線で2θが20〜80°の範囲の測
定を行い、リートベルト法(泉富士夫、日本結晶学会
誌、第27巻、第23頁(1985))により正方晶と
立方晶の混合相として解析し、求めるものである。ま
た、正方晶中のY2 O3 固溶量は、上記リートベルト法
で格子定数a、cを決定し、下記数1により算出した。
回折測定をCuKα線で2θが20〜80°の範囲の測
定を行い、リートベルト法(泉富士夫、日本結晶学会
誌、第27巻、第23頁(1985))により正方晶と
立方晶の混合相として解析し、求めるものである。ま
た、正方晶中のY2 O3 固溶量は、上記リートベルト法
で格子定数a、cを決定し、下記数1により算出した。
【0008】
【数1】
【0009】以下、本発明を詳述する。本発明のジルコ
ニア焼結体は、第1に、結晶相として立方晶相の割合が
12〜40体積%、特に15〜30体積%であることが
重要である。この立方晶の割合が12体積%より少ない
と、水の存在下での相変態が進みやすく焼結体表面が劣
化しやすく、40体積%を越えると焼結体の強度が低く
なるためである。なお、この焼結体は上記の立方晶以外
の残部は正方晶からなり、単斜晶はX線回折測定では検
出されないレベルであることが望ましい。
ニア焼結体は、第1に、結晶相として立方晶相の割合が
12〜40体積%、特に15〜30体積%であることが
重要である。この立方晶の割合が12体積%より少ない
と、水の存在下での相変態が進みやすく焼結体表面が劣
化しやすく、40体積%を越えると焼結体の強度が低く
なるためである。なお、この焼結体は上記の立方晶以外
の残部は正方晶からなり、単斜晶はX線回折測定では検
出されないレベルであることが望ましい。
【0010】本発明によれば、正方晶中のY2 O3 の固
溶量が2.3モル%以上、特に2.6モル%以上である
ことが重要である。このY2 O3 固溶量が2.3モル%
より少ないと、水の存在下での焼結体の表面が劣化しや
すくなるためである。
溶量が2.3モル%以上、特に2.6モル%以上である
ことが重要である。このY2 O3 固溶量が2.3モル%
より少ないと、水の存在下での焼結体の表面が劣化しや
すくなるためである。
【0011】本発明のジルコニア焼結体は、上記のよう
に立方晶の割合、および正方晶中のY2 O3 固溶量を上
記のように制御することに関連して、焼結体中における
安定化剤としてのY2 O3 は3〜4モル%の割合で含有
されることが必要である。即ち、Y2 O3 量が3モル%
より少ないと立方晶層の割合が12体積%以上に至ら
ず、あるいは正方晶中のY2 O3 固溶量を2.3モル%
以上にできなくなり、4モル%を越えると立方晶の割合
が40体積%を越えてしまうためである。
に立方晶の割合、および正方晶中のY2 O3 固溶量を上
記のように制御することに関連して、焼結体中における
安定化剤としてのY2 O3 は3〜4モル%の割合で含有
されることが必要である。即ち、Y2 O3 量が3モル%
より少ないと立方晶層の割合が12体積%以上に至ら
ず、あるいは正方晶中のY2 O3 固溶量を2.3モル%
以上にできなくなり、4モル%を越えると立方晶の割合
が40体積%を越えてしまうためである。
【0012】さらに、焼結体中のジルコニア粒子は平均
で0.5μm以下、望ましくは、さらに1μmを越える
粒子が存在しないことも必要である。平均粒径が0.5
μmより大きいと焼結体表面の相変態を速める傾向にあ
るためである。
で0.5μm以下、望ましくは、さらに1μmを越える
粒子が存在しないことも必要である。平均粒径が0.5
μmより大きいと焼結体表面の相変態を速める傾向にあ
るためである。
【0013】また、焼結体の相対密度は95%以上であ
ることが必要である。相対密度が95%未満では高い強
度が望めないためである。
ることが必要である。相対密度が95%未満では高い強
度が望めないためである。
【0014】さらにまた、本発明のジルコニア焼結体
は、上述の各特性を有することに起因して175℃、4
7時間水熱処理後の焼結体表面の変態層の厚みが30μ
m以下の優れた耐水性を示すものである。この変態層は
正方晶が単斜晶に相変態した層であり、この相変態によ
りマイクロクラックが多数発生するため、その変態層は
薄いほどよいが、その厚みが30μmを越えるほどに大
きくなると、焼結体の表面から変態層が剥離したり、焼
結体全体にクラックが進展し焼結体の強度や靱性が大き
く劣化する恐れがある。
は、上述の各特性を有することに起因して175℃、4
7時間水熱処理後の焼結体表面の変態層の厚みが30μ
m以下の優れた耐水性を示すものである。この変態層は
正方晶が単斜晶に相変態した層であり、この相変態によ
りマイクロクラックが多数発生するため、その変態層は
薄いほどよいが、その厚みが30μmを越えるほどに大
きくなると、焼結体の表面から変態層が剥離したり、焼
結体全体にクラックが進展し焼結体の強度や靱性が大き
く劣化する恐れがある。
【0015】次に、本発明の焼結体を製造するには、ま
ず、原料粉末としてY2 O3 とジルコニアや分子レベル
で混合された原料、具体的には共沈法により生成された
Y2O3 −ZrO2 原料粉末を用いる。この共沈原料を
用いると、焼成条件により、前述したような立方晶の割
合、正方晶中のY2 O3 固溶量を容易に制御することが
可能である。
ず、原料粉末としてY2 O3 とジルコニアや分子レベル
で混合された原料、具体的には共沈法により生成された
Y2O3 −ZrO2 原料粉末を用いる。この共沈原料を
用いると、焼成条件により、前述したような立方晶の割
合、正方晶中のY2 O3 固溶量を容易に制御することが
可能である。
【0016】原料としてY2 O3 を3〜4モル%含有す
る共沈原料を用いて、所望の成形手段、例えば、金型プ
レス、冷間静水圧プレス、押出し成形等により任意の形
状に成形後、焼成する。焼成は、大気などの酸化性雰囲
気中で1300〜1500℃で焼成することにより、相
対密度95%以上に緻密化することができる。
る共沈原料を用いて、所望の成形手段、例えば、金型プ
レス、冷間静水圧プレス、押出し成形等により任意の形
状に成形後、焼成する。焼成は、大気などの酸化性雰囲
気中で1300〜1500℃で焼成することにより、相
対密度95%以上に緻密化することができる。
【0017】ここで、本発明によれば、焼結体中の立方
晶の割合や正方晶中のY2 O3 固溶量を制御する必要が
ある。本発明者は、焼成条件とこれらの因子との関係に
ついて調査した結果、図1乃至図3に示されるように、
焼成温度が高いほど、また焼成温度での保持時間が長い
ほど、立方晶の割合が増加し、正方晶中のY2 O3 固溶
量は減少し、さらに粒径は大きくなり、密度も高くなる
傾向にある。
晶の割合や正方晶中のY2 O3 固溶量を制御する必要が
ある。本発明者は、焼成条件とこれらの因子との関係に
ついて調査した結果、図1乃至図3に示されるように、
焼成温度が高いほど、また焼成温度での保持時間が長い
ほど、立方晶の割合が増加し、正方晶中のY2 O3 固溶
量は減少し、さらに粒径は大きくなり、密度も高くなる
傾向にある。
【0018】ところが、焼成温度における保持時間に対
するその立方晶の増加率、Y2 O3固溶量の減少率等
は、原料の特性や組成によって変動し、また焼成温度に
よっても大きく異なる。従って、立方晶の割合や正方晶
中のY2 O3 固溶量を制御するには、用いる原料と焼成
温度、焼成時間と各種の因子との関係を見極めた上で焼
成温度や時間を制御することにより任意に制御すること
が可能となる。
するその立方晶の増加率、Y2 O3固溶量の減少率等
は、原料の特性や組成によって変動し、また焼成温度に
よっても大きく異なる。従って、立方晶の割合や正方晶
中のY2 O3 固溶量を制御するには、用いる原料と焼成
温度、焼成時間と各種の因子との関係を見極めた上で焼
成温度や時間を制御することにより任意に制御すること
が可能となる。
【0019】
【作用】ジルコニア焼結体の水の存在下での正方晶から
単斜晶への相変態は、焼結体の表面で生じる。この相変
態した部分は焼結体の表面に層状に存在し、その厚さは
時間とともに増加する。
単斜晶への相変態は、焼結体の表面で生じる。この相変
態した部分は焼結体の表面に層状に存在し、その厚さは
時間とともに増加する。
【0020】本発明は、ジルコニアの耐水性を高めるに
は、この変態層の成長速度を抑制することが必要である
という知見に基づくものであり、その成長速度は、立方
晶の割合を12体積%以上、残部正方晶とし、正方晶中
のY2 O3 固溶量を2.3モル%以上、平均粒径を0.
5μm以下に制御することにより、小さく抑制できる。
ところが、立方晶の割合が40体積%を越えると高い強
度が得られなくなるため、耐水性と高強度を両立させる
ための範囲として、立方晶の割合を12〜40体積%に
設定した。
は、この変態層の成長速度を抑制することが必要である
という知見に基づくものであり、その成長速度は、立方
晶の割合を12体積%以上、残部正方晶とし、正方晶中
のY2 O3 固溶量を2.3モル%以上、平均粒径を0.
5μm以下に制御することにより、小さく抑制できる。
ところが、立方晶の割合が40体積%を越えると高い強
度が得られなくなるため、耐水性と高強度を両立させる
ための範囲として、立方晶の割合を12〜40体積%に
設定した。
【0021】本発明の焼結体は、上記の知見による結
果、175℃の水熱下で47時間保持した後においても
変態層の厚みが30μmを越えることがなく、優れた耐
水性を有するものである。これにより、ジルコニア焼結
体を水熱下に保持した場合においても焼結体の表面の劣
化を防止することが可能となる。
果、175℃の水熱下で47時間保持した後においても
変態層の厚みが30μmを越えることがなく、優れた耐
水性を有するものである。これにより、ジルコニア焼結
体を水熱下に保持した場合においても焼結体の表面の劣
化を防止することが可能となる。
【0022】また、本発明によれば、焼結体中の立方晶
の存在割合を決定する方法としてリートベルト法を採用
することも非常に重要である。これまで、ジルコニア焼
結体中の立方晶と正方晶の存在割合は、X線回折測定結
果から、立方晶のピーク、正方晶のピークの高さや面積
比より求められていたが、立方晶および正方晶の主ピー
クが重なるためにピーク分離が非常に難しく、正確な結
晶比率を求めることができなかった。そのため、従来法
により決定された結晶比率により特性の制御を行う場
合、特性がばらつきが生じ、従来法でみかけ上、同一の
結晶比率であっても全く特性が異なるといった問題があ
った。
の存在割合を決定する方法としてリートベルト法を採用
することも非常に重要である。これまで、ジルコニア焼
結体中の立方晶と正方晶の存在割合は、X線回折測定結
果から、立方晶のピーク、正方晶のピークの高さや面積
比より求められていたが、立方晶および正方晶の主ピー
クが重なるためにピーク分離が非常に難しく、正確な結
晶比率を求めることができなかった。そのため、従来法
により決定された結晶比率により特性の制御を行う場
合、特性がばらつきが生じ、従来法でみかけ上、同一の
結晶比率であっても全く特性が異なるといった問題があ
った。
【0023】本発明では、このような問題に対してリー
トベルト法を用いた算出した立方晶の割合と特性との関
係が非常に相関性に優れていること、しかもこの方法に
より求めた立方晶の割合で特性を制御した場合に非常に
再現性に優れることから、このリートベルト法により真
の結晶相比率を求めることができるという結論に至り、
この方法により求めた結晶比率で特定範囲に特性を制御
することで、耐水性に優ればらつきの少ない良好な焼結
体を安定に製造できるのである。
トベルト法を用いた算出した立方晶の割合と特性との関
係が非常に相関性に優れていること、しかもこの方法に
より求めた立方晶の割合で特性を制御した場合に非常に
再現性に優れることから、このリートベルト法により真
の結晶相比率を求めることができるという結論に至り、
この方法により求めた結晶比率で特定範囲に特性を制御
することで、耐水性に優ればらつきの少ない良好な焼結
体を安定に製造できるのである。
【0024】
【実施例】原料として、Y2 O3 3モル%含有ジルコニ
ア共沈原料(平均粒径0.5μm、BET比表面積6m
2 /g、陽イオン不純物0.5%)、Y2 O3 4モル%
含有ジルコニア共沈原料(平均粒径0.6μm、BET
比表面積7m2 /g、陽イオン不純物0.5%)および
Y2 O3 5モル%含有ジルコニア共沈原料(平均粒径
0.5μm、BET比表面積7m2 /g、陽イオン不純
物0.5%)を準備した。また、平均粒径が2μmのジ
ルコニア粉末に平均粒径が1μmのY2 O3 粉末を3〜
5モル%の割合で添加しボールミルにて48時間混合し
た。そして得られた共沈原料および混合粉末を用いて直
径20mm、3mmの円板上の形状にプレス成形し、こ
れを大気中で1300〜1500℃で最高12時間焼成
した。
ア共沈原料(平均粒径0.5μm、BET比表面積6m
2 /g、陽イオン不純物0.5%)、Y2 O3 4モル%
含有ジルコニア共沈原料(平均粒径0.6μm、BET
比表面積7m2 /g、陽イオン不純物0.5%)および
Y2 O3 5モル%含有ジルコニア共沈原料(平均粒径
0.5μm、BET比表面積7m2 /g、陽イオン不純
物0.5%)を準備した。また、平均粒径が2μmのジ
ルコニア粉末に平均粒径が1μmのY2 O3 粉末を3〜
5モル%の割合で添加しボールミルにて48時間混合し
た。そして得られた共沈原料および混合粉末を用いて直
径20mm、3mmの円板上の形状にプレス成形し、こ
れを大気中で1300〜1500℃で最高12時間焼成
した。
【0025】得られた焼結体に対して、X線回折測定を
CuKα線を用いて2θが20〜80°の範囲で測定を
行なった後、この回折図形からリートベルト法により立
方晶相の割合を求めた。リートベルト法では、立方晶と
正方晶との混合物比や格子定数等をパラメータとして計
算により求められたX線回折図形と、試料の実測のX線
回折図形との相違を最小二乗法で近似させていくことに
より試料中の結晶相の比率を推定した。
CuKα線を用いて2θが20〜80°の範囲で測定を
行なった後、この回折図形からリートベルト法により立
方晶相の割合を求めた。リートベルト法では、立方晶と
正方晶との混合物比や格子定数等をパラメータとして計
算により求められたX線回折図形と、試料の実測のX線
回折図形との相違を最小二乗法で近似させていくことに
より試料中の結晶相の比率を推定した。
【0026】また、リートベルト法により決定した正方
晶の格子定数a、cを用いて、前述した数1により正方
晶中のY2 O3 固溶量を求めた。数1は、予めY2 O3
が所定の割合で完全固溶したジルコニアから格子定数の
変化を求め、その変化からY2 O3 固溶量と格子定数
a、cとの関係を数式化したものである。
晶の格子定数a、cを用いて、前述した数1により正方
晶中のY2 O3 固溶量を求めた。数1は、予めY2 O3
が所定の割合で完全固溶したジルコニアから格子定数の
変化を求め、その変化からY2 O3 固溶量と格子定数
a、cとの関係を数式化したものである。
【0027】さらに、電子顕微鏡写真からジルコニア粒
子20個の平均粒径を算出した。それらの結果を図1〜
図3に示した。図1は、立方晶の割合と焼成温度、焼成
時間との関係を示したもの、図2は正方晶中のY2 O3
固溶量と焼成温度、焼成時間との関係を示したもの、図
3は、ジルコニア平均粒径と焼成温度、焼成時間との関
係を示したものである。
子20個の平均粒径を算出した。それらの結果を図1〜
図3に示した。図1は、立方晶の割合と焼成温度、焼成
時間との関係を示したもの、図2は正方晶中のY2 O3
固溶量と焼成温度、焼成時間との関係を示したもの、図
3は、ジルコニア平均粒径と焼成温度、焼成時間との関
係を示したものである。
【0028】この図1および図3の結果から、焼成温度
が高いほど、また焼成温度での保持時間が長いほど、立
方晶の割合が増加し、正方晶中のY2 O3 固溶量は減少
し、さらに粒径は大きくなり、密度も高くなる傾向にあ
ることがわかった。
が高いほど、また焼成温度での保持時間が長いほど、立
方晶の割合が増加し、正方晶中のY2 O3 固溶量は減少
し、さらに粒径は大きくなり、密度も高くなる傾向にあ
ることがわかった。
【0029】これらの結果を踏まえ、前述の共沈原料お
よび混合粉末により作製した成形体を焼成炉内に配置
し、表1の温度まで200℃/時間の速度で昇温し、大
気中で表1の最高温度で所定時間保持した後、300℃
/時間の速度で室温まで降温した。
よび混合粉末により作製した成形体を焼成炉内に配置
し、表1の温度まで200℃/時間の速度で昇温し、大
気中で表1の最高温度で所定時間保持した後、300℃
/時間の速度で室温まで降温した。
【0030】得られた焼結体に対して、前述した方法に
より立方晶相の割合、正方晶中のY2 O3 固溶量および
平均粒径を算出し、さらにアルキメデス法により、相対
密度を測定した。
より立方晶相の割合、正方晶中のY2 O3 固溶量および
平均粒径を算出し、さらにアルキメデス法により、相対
密度を測定した。
【0031】また、焼結体を密封容器中で175℃飽和
水蒸気中に47時間保持し、断面を鏡面仕上げし金属顕
微鏡で観察しボイドの多い層の厚さを測定し、これによ
り耐水性の評価をおこなった。この層は、ラマン散乱に
よれば、正方晶または立方晶が単斜晶に相変態した層で
あることを確認した。また、焼結体をJISR1601
の試験片に加工し、上記の耐水性試験の前後の3点曲げ
強度を測定し、強度の変化をみた。これらの結果は表2
に示した。
水蒸気中に47時間保持し、断面を鏡面仕上げし金属顕
微鏡で観察しボイドの多い層の厚さを測定し、これによ
り耐水性の評価をおこなった。この層は、ラマン散乱に
よれば、正方晶または立方晶が単斜晶に相変態した層で
あることを確認した。また、焼結体をJISR1601
の試験片に加工し、上記の耐水性試験の前後の3点曲げ
強度を測定し、強度の変化をみた。これらの結果は表2
に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】表1および表2の結果から明らかなよう
に、立方晶の割合が12体積%より少ない試料No.1、
40体積%を越える試料No.9、10はいずれも耐水性
試験で表層に相変態層が観察された。また、立方晶の割
合が適量であっても正方晶中のY2 O3 固溶量が2.3
モル%より少ない試料No.7は、平均粒径が0.5μm
を越え、しかも耐水性も劣るものであった。これにより
耐水性を向上させるには、立方晶の割合と正方晶中のY
2 O3 の固溶量を制御することが必要であることがわか
った。
に、立方晶の割合が12体積%より少ない試料No.1、
40体積%を越える試料No.9、10はいずれも耐水性
試験で表層に相変態層が観察された。また、立方晶の割
合が適量であっても正方晶中のY2 O3 固溶量が2.3
モル%より少ない試料No.7は、平均粒径が0.5μm
を越え、しかも耐水性も劣るものであった。これにより
耐水性を向上させるには、立方晶の割合と正方晶中のY
2 O3 の固溶量を制御することが必要であることがわか
った。
【0035】これに対して、すべての因子が好適範囲に
制御された本発明品は、高い強度を有し、耐水性テスト
においても変態層の厚みが30μm以下と焼結体の表面
の劣化の少ないものであった。
制御された本発明品は、高い強度を有し、耐水性テスト
においても変態層の厚みが30μm以下と焼結体の表面
の劣化の少ないものであった。
【0036】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のジルコニア
焼結体は、立方晶の割合、正方晶中のY2 O3 固溶量、
平均粒径を制御することにより、耐水性、特に水熱下で
相変態の抑制され、焼結体表面の劣化が抑制されたジル
コニア焼結体を提供できる。これにより、ジルコニア焼
結体の水の存在下で使用される部品に適用することがで
きる。
焼結体は、立方晶の割合、正方晶中のY2 O3 固溶量、
平均粒径を制御することにより、耐水性、特に水熱下で
相変態の抑制され、焼結体表面の劣化が抑制されたジル
コニア焼結体を提供できる。これにより、ジルコニア焼
結体の水の存在下で使用される部品に適用することがで
きる。
【図1】ジルコニア焼結体中の立方晶の割合と焼成温
度、保持時間との関係を示したものである。
度、保持時間との関係を示したものである。
【図2】ジルコニア焼結体中の正方晶中のY2 O3 固溶
量と焼成温度、保持時間との関係を示したものである。
量と焼成温度、保持時間との関係を示したものである。
【図3】ジルコニア焼結体のジルコニア平均粒径と焼成
温度、保持時間との関係を示したものである。
温度、保持時間との関係を示したものである。
Claims (1)
- 【請求項1】Y2 O3 を3〜4モル%の割合で含有する
ジルコニア焼結体であって、リートベルト法により求め
た立方晶相の割合が12〜40体積%、残部が正方晶ジ
ルコニアからなり、格子定数から求めた正方晶ジルコニ
ア中のY2 O3固溶量が2.3モル%以上、平均粒径が
0.5μm以下、相対密度が95%以上であり、且つ1
75℃、47時間水熱処理後の変態層の厚みが30μm
以下であることを特徴とするジルコニア焼結体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7133548A JPH08325057A (ja) | 1995-05-31 | 1995-05-31 | ジルコニア焼結体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7133548A JPH08325057A (ja) | 1995-05-31 | 1995-05-31 | ジルコニア焼結体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08325057A true JPH08325057A (ja) | 1996-12-10 |
Family
ID=15107394
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7133548A Pending JPH08325057A (ja) | 1995-05-31 | 1995-05-31 | ジルコニア焼結体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08325057A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0908425A1 (en) * | 1997-10-13 | 1999-04-14 | Tosoh Corporation | Zirconia sintered body, process for production thereof, and application thereof |
JP2001181031A (ja) * | 1999-12-20 | 2001-07-03 | Kyocera Corp | 光コネクタ用ジルコニア焼結体およびその製造方法 |
JP2006298711A (ja) * | 2005-04-22 | 2006-11-02 | Toray Ind Inc | ZrO2質焼結体およびその製造方法、粉砕機用部材、粉砕機 |
WO2009125793A1 (ja) * | 2008-04-09 | 2009-10-15 | 東ソー株式会社 | 透光性ジルコニア焼結体及びその製造方法並びにその用途 |
-
1995
- 1995-05-31 JP JP7133548A patent/JPH08325057A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0908425A1 (en) * | 1997-10-13 | 1999-04-14 | Tosoh Corporation | Zirconia sintered body, process for production thereof, and application thereof |
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US9309157B2 (en) | 2008-04-09 | 2016-04-12 | Tosoh Corporation | Translucent zirconia sintered body, process for producing the same, and use of the same |
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