JPH08301784A - Hsp47合成抑制剤 - Google Patents

Hsp47合成抑制剤

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JPH08301784A
JPH08301784A JP7136029A JP13602995A JPH08301784A JP H08301784 A JPH08301784 A JP H08301784A JP 7136029 A JP7136029 A JP 7136029A JP 13602995 A JP13602995 A JP 13602995A JP H08301784 A JPH08301784 A JP H08301784A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 分子量47キロダルトンの熱ショックタンパ
ク質の合成抑制剤を提供する。 【構成】 カワラタケ属に属する担子菌の菌糸体、培養
物又は子実体から得られる糖タンパク質複合体を有効成
分として含有する。 【効果】 コラーゲン合成を抑制するので、細胞外マト
リックス産生の亢進の病態を示す病気を治療することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カワラタケ属に属する
担子菌由来の糖タンパク質複合体を有効成分として含有
する、分子量47キロダルトンの熱ショックタンパク質
(以下、HSP47と称する)の合成抑制剤に関する。
本発明のHSP47合成抑制剤は、特に、臓器内のコラ
ーゲンの合成を抑制することにより肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後
の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは強皮症、動脈硬化、関節リ
ウマチなどの細胞外マトリックス(細胞外基質)産生亢
進の病態を示す病気の患者の生理学的状態を有効に改善
させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎
不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは
強皮症、動脈硬化、関節リウマチなどの細胞外マトリッ
クス産生亢進の病態を示す病気を効果的に治療すること
ができる。
【0002】
【従来の技術】近年、コラーゲンなどの細胞外マトリッ
クスの産生の亢進の病態を示す病気が大きな問題となっ
ている。ここでいう細胞外マトリックス産生の亢進の病
態を示す病気とは、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢
性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕
や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚
性瘢痕、或いは強皮症、動脈硬化、関節リウマチなどを
含む。
【0003】例えば、死亡者がわが国だけでも年間約2
万人にものぼるといわれている肝硬変は、肝臓が結合組
織の増殖のため固くなる病気の総称で、種々の慢性肝疾
患の終末像であるといわれ、肝全体にわたるびまん性の
肝線維症である。すなわち、肝炎などの肝傷害が長期に
及ぶ慢性肝炎においては、線維芽細胞や伊東細胞などの
細胞外マトリックス(とくにI型コラーゲン)産生の著
しい亢進を伴い肝臓は線維化する。肝の線維化が慢性的
に進行すると、ますます正常な肝再生は妨害され、肝細
胞に置き換わり、線維芽細胞とI型コラーゲンを主体と
する細胞外マトリックスが肝組織のかなりの部分を占
め、多くの凝小葉からなる肝硬変に至る。肝硬変の進行
に伴い、線維隔壁が肝全体に進展し、その結果生じる血
流の異常は、肝実質細胞の変性をさらに押し進める一因
にもなり、肝硬変における悪循環が続くことになり、さ
らにはアルコール、ウイルス、自己免疫等種々の原因に
よって、肝臓中に多量の膠質線維が生成され、肝細胞の
壊死と機能消失とが生じ、肝硬変患者は遂には死に至
る。I型コラーゲンは正常肝では全タンパク質量の約2
%を占めるが、肝硬変となると10〜30%を占めるよ
うになる。
【0004】また、間質性肺疾患は、肺胞及び肺胞管の
みならず、しばしば呼吸細気管支や終末気管支も巻き込
む下部気道の慢性炎症(肺胞炎 alveolitis )とその結
果である間質の線維化と肺胞内線維化を特徴とする疾患
群である。ここでいう間質性肺疾患とは、例えば、間質
性肺炎、肺線維症などのびまん性間質性肺疾患、特発性
肺線維症、透過性肺水腫、膠原病肺、サルコイドーシス
等を含む。間質性肺疾患においては、線維化組織では細
胞外マトリックスの過剰な産生と蓄積が認められてい
る。すなわち、間質性肺疾患の肺線維化組織では、肥大
した間質に著明なI型及びIII 型コラーゲンの集積がみ
られており、とくにIII 型コラーゲンは、線維化の早期
に肥厚した肺胞中隔に集積し、病期が進行し、後期には
I型コラーゲンが増加し、主要なコラーゲンとなる。基
底膜は早期に破壊されており、肺胞腔側へのコラーゲン
線維の侵入が観察される。
【0005】また、慢性腎不全とは慢性腎炎症候群の結
果、腎機能の荒廃により体内の恒常性が維持できなくな
った状態である。慢性腎不全の進行を病理学的にみると
糸球体硬化と間質線維化の進行である。糸球体硬化症
は、メサンギウム領域を中心とした細胞外マトリックス
の増生である。メサンギウム硬化症の成分は正常と比較
し、著明にIV型コラーゲンなどの糸球体基底膜の成分が
増加し、また間質成分であるI型コラーゲンも硬化症部
位に一致して増生している。すなわち、慢性に経過する
糸球体硬化に対しては、細胞外マトリックスの産生亢進
が大きな要因である。ここで慢性腎不全に陥いる疾患と
は、例えばIgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性
腎炎、糖尿病性腎症、慢性間質性腎炎、慢性糸球体腎炎
などを含む。その他、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、或いは
強皮症、動脈硬化等の細胞外マトリックス産生亢進の病
態を示す病気は、何らかの原因によりコラーゲン合成の
異常亢進が起こり、線維化が進んで組織の硬化変化を生
ずることが主要な成因と考えられている。
【0006】また、血管新生においても基底膜及び基底
膜中のコラーゲン合成が、重要な役割をはたすことが指
摘されている(Maragoudakis, E., Sarmonika, M., and
Panoutsacopoulous, M., "J. Pharmacol. Exp. The
r.", 244: 729, 1988; Ingber,D. E., Madri, J. A., a
nd Folkman, J., "Endocrinology", 119: 1768, 1986
)。血管新生による疾患としては、例えば、糖尿病性
網膜症、後水晶体線維増殖症、角膜移植に伴う血管新
生、緑内症、眼腫瘍、トラコーマ、幹せん、化膿性肉芽
腫、血管腫、線維性血管腫、肥大性はん痕、肉芽、リュ
ーマチ性関節炎、浮腫性硬化症、アテローム性動脈硬化
症、各種腫瘍などが知られている。このようにコラーゲ
ンなどの細胞外マトリックスの産生の亢進の病態を示す
病気が大きな問題となっているにもかかわらず、従来で
は副作用や薬理効果等の種々の面で満足すべき細胞外マ
トリックス合成抑制剤(例えば、コラーゲン合成抑制
剤)は未だ開発されていなかったのである。
【0007】一方、熱ショックタンパク質(heat shock
protein;HSP、ストレスタンパク質ともいう)は、
細胞に何らかのストレス、例えば熱、薬剤、放射線等を
加えることにより細胞に発現されるタンパク質である。
HSPは、その種類は多種多様であるが、分子量の大き
さから90ファミリー、70ファミリー、60ファミリ
ー、低分子ファミリーの4ファミリーに大別することが
できる。ストレスへの応答に加えて、これらのタンパク
質のいくつかは構成的に合成され、正常な環境のもと、
タンパク質のフォールディング、アンフォールディン
グ、タンパク質サブユニットの会合、タンパク質の膜輸
送のような、必須の生理的な役割を演じていることが示
されている。熱ショックタンパク質としてのこれらの機
能は、分子シャペロンと称される。
【0008】HSP47は、永田等によって1986年
に発見されたタンパク質で、分子量47キロダルトンの
塩基性タンパク質(pI=9.0)である。HSP47
の発現が増大するにつれて、コラーゲンの合成も増加す
ることが様々な細胞で示されている("J. Biol. Che
m.", 261: 7531, 1986; "Eur. J. Biochem.", 206: 32
3,1992; "J. Biol. Chem.", 265: 992, 1990; "J. Cli
n. Invest.", 94: 2481, 1994)。すなわち、HSP47
は、細胞内で小胞体内でのプロコラーゲンのプロセシン
グ、三重鎖ヘリックス形成、あるいは小胞体からゴルジ
装置へのプロコラーゲン輸送・分泌という局面で、コラ
ーゲンの特異的分子シャペロンとして機能しているとさ
れているので、増大したHSP47発現は、細胞外マト
リックスにおけるコラーゲン分子の蓄積を刺激する。こ
のようにコラーゲン結合熱ショックタンパク質であるH
SP47は、発現と同様に機能においても、細胞外マト
リックスタンパク質であるコラーゲンに密接に関連した
熱ショックタンパク質である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事
情に鑑み、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢
性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、強
皮症、動脈硬化、関節リウマチなどの細胞外マトリック
ス産生亢進の病態を示す病気の患者の生理学的状態を有
効に改善させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又
は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢
痕、強皮症、動脈硬化、関節リウマチなどの細胞外マト
リックス産生亢進の病態を示す病気を効果的に治療する
ことのできる、細胞外マトリックス合成抑制剤を提供す
るために、種々検討を重ねてきた。
【0010】上記したように、肝硬変、間質性肺疾患、
慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢
痕や熱傷性瘢痕、強皮症、動脈硬化、関節リウマチなど
の線維症は臓器内の細胞外マトリックスの著しく増加し
た病態が主病変と理解されている。肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後
の瘢痕や熱傷性瘢痕、強皮症、動脈硬化、関節リウマチ
などの細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病気に
伴う線維化は、コラーゲン生合成増加やコラーゲン分解
能の低下により生ずると考えられている。例えば、肝の
線維化において、I型、III 型、IV型コラーゲンの合成
活性化が起こるが、特に主要成分であるI型コラーゲン
の合成活性化が重要な意味をもつ。
【0011】こうした状況下で、本発明者らは、意外に
も、カワラタケ属に属する担子菌由来の糖タンパク質複
合体が、病態を示す組織の細胞におけるHSP47の合
成を特異的に抑制することを見出した。すなわち、カワ
ラタケ属に属する担子菌由来の糖タンパク質複合体を投
与することにより、細胞内でのHSP47合成を抑制
し、臓器内でのコラーゲン合成を抑制し、ひいては肝硬
変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥い
る疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、強皮症、動脈硬
化、関節リウマチなどの細胞外マトリックス産生亢進の
病態を示す病気の治療が可能であることを見出したので
ある。本発明はこうした知見に基づくものであり、肝硬
変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥い
る疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、強皮症、動脈硬
化、関節リウマチなどの細胞外マトリックス産生の亢進
の病態を示す病気を効果的に治療することができるHS
P47の合成抑制剤であって、細胞内でのコラーゲンの
成熟及び輸送過程に重要な役割を果たしているコラーゲ
ン特異的な分子シャペロンである、HSP47の合成抑
制剤を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、カワ
ラタケ属に属する担子菌の菌糸体、培養物又は子実体か
ら得られる糖タンパク質複合体を有効成分として含有す
ることを特徴とする、HSP47合成抑制剤に関する。
【0013】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明のHSP47合成抑制剤において有効成分として用
いられる糖タンパク質複合体は、サルノコシカケ科のカ
ワラタケ属に属する担子菌から得られる糖タンパク質複
合体である。本発明のHSP47合成抑制剤に含有され
る、カワラタケ属に属する担子菌由来の糖タンパク質複
合体は、例えば、特公昭46−17149号、特公昭5
1−36322号、特公昭56−14274号、特公昭
56−14275号、及び特公昭56−14276号各
公報などに記載されている。すなわち、カワラタケ属に
属する天然の担子菌、または、カワラタケ属に属する担
子菌の人工培養によって得た菌糸体、培養物又は子実体
を、水または水に可溶性の少量の酸、塩基又は有機溶媒
を含む水系溶媒にて抽出する。
【0014】人工培養は、該菌種が着生している腐朽植
物体の一部、あるいはその植物体上に発生している子実
体の組織、または胞子を適当な寒天培地に移植し、数週
間培養し、この培養操作を更に2〜3回繰り返し行っ
て、雑菌の混入が無いのを確認後、これを母菌として液
体培地、あるいは固形培地に接種して培養を行う。尚、
液体培地における培養とは、静置、振盪、通気及び通気
攪拌培養等のことであり、固形培地とは寒天、ゼラチ
ン、澱粉、鋸屑、木材、パルプ、海綿、合成樹脂、ゴ
ム、砂粒等であって、それを適宜組み合わせてもよい。
上記の菌を培養するための培地は、固体、液体の何れで
も可であるが、液体の方が取り扱い及び生産性の上から
して非常に便利である。培養のための培地としては、通
常の培養に用いられる処方で十分であり、上記の菌の発
育に必要な諸栄養素が含有されていればよい。即ち、炭
素源としては、例えばブドウ糖、麦芽糖、乳糖、ショ
糖、デンプン、廃糖密等、窒素源としては例えばペプト
ン、肉エキス、酵母エキス、酵母、コーンステイーブリ
カー、アンモニウム塩類、尿素など、有機、無機の窒素
含有物を使用することができる。他の無機塩類として
は、例えばリン酸塩、マグネシウム塩、鉄塩、その他の
無機塩類が含まれる。この他に生長に必要なビタミン等
は適宜添加してもよい。培養の初発pHは約2〜7であ
って20〜33℃において通常2〜20日間培養を行う
のがよい。通気攪拌培養を行う場合には通気量0.1〜
2.0 l/l(培地)/min、攪拌速度30〜80
0rpmの範囲で実施するのが適当である。
【0015】カワラタケ属に属する担子菌は、抽出に際
しては、そのまま用いてもよいが通常、前処理、例え
ば、蒸留水、生理食塩水、各種緩衝液等にて洗浄を行っ
た後、乾燥をして、親油性有機溶媒(例えばn−ヘキサ
ン、ベンゼン、石油エーテル、クロロホルム、四塩化炭
素等)によって脱脂後、細粉するか、あるいは細粉せず
に抽出の原料とする。また、カワラタケ属に属する担子
菌を水性液体培地を用いて深部培養を行い、得られる培
養混合物、すなわち、菌体と培地における培養生成物と
の混合物であるブロス(broth)を乾燥処理した
後、水系溶媒により抽出し、さらに得られる抽出液より
分子量5000以下の物質を除去、精製してもよい。つ
まり、一旦、該培養物を乾燥した後、水系溶媒で抽出す
ることにより、目的とする糖タンパク質複合体を得る。
ここでいう "深部培養法" とは、通気と攪拌とを行いな
がら液中で培養する方法を意味するものであり、菌体の
増殖は液体培地の表面でなく、液層の深部において主と
して行われるのである。この際の通気量は一般には0.
1〜2.0 l/l(培地)/minであり、攪拌速度
は30〜800rpmの範囲である。約7日間の培養期
間で、目的とする糖タンパク質複合体が十分に産生され
る。この培養物の乾燥は、60℃〜150℃、好ましく
は90℃〜130℃において、水分含有率が約20重量
%以下になるように実施される。この乾燥処理に用いる
乾燥手段は特に限定されることはなく、ドラムドライア
ー、フラッシュドライアー、ザンバイ等一般の乾燥手段
が使用される。
【0016】カワラタケ属に属する天然の担子菌、また
は、カワラタケ属に属する担子菌の人工培養によって得
た菌糸体および/または子実体、あるいは乾燥処理を施
された培養混合物(broth)は、水系溶媒によって
抽出される。抽出は攪拌しても、又は攪拌しなくて抽出
を行ってもよい。水系溶媒とは、水を主体とした抽出溶
媒のことであって、水単独あるいは水に溶解し得る酸、
塩基、塩あるいは有機溶媒を1種ないし2種以上組み合
わせたものをいう。これらの中で、カワラタケ属に属す
る担子菌(カワラタケ属に属する担子菌の子実体あるい
は菌糸体)を0.01N〜2Nのアルカリ水溶液を用い
て抽出し、得られる抽出液を限外濾過、および又は逆浸
透圧法により処理して該抽出液中に含有される分子量5
000以下の低分子物を除去するのが、好ましい。特に
限定するものではないが、0.01N〜2Nのアルカリ
水溶液を、菌体原料(乾燥重量)に対し5〜200倍使
用するのが好ましい。0.01N〜2Nの濃度範囲のア
ルカリ水溶液を用いて上記担子菌を抽出するには、50
℃〜100℃、好ましくは80℃〜98℃の温度下で2
0分〜10時間行うと十分である。また、上記抽出操作
は1回でもよいが、必要に応じ数回(2回〜10回、好
ましくは3〜8回)反復して行ってもよい。また、水又
は希アルカリ水溶液により行い、逐次高濃度のアルカリ
水溶液を用いて多段階的に行ってもよい。すなわち、担
子菌から目的物質を抽出するには、水ないしは微量のア
ルカリを含む水系溶媒を最初に使用し、ついで次第に高
濃度のアルカリを含む水系溶媒へと逐次高濃度のアルカ
リを含む水溶液を抽出溶媒として使用することにより複
数回抽出処理(すなわち、多段的抽出)を行うものであ
る。なお、上記抽出過程の一部において、同一濃度の抽
出液による抽出を反復することも差し支えない。数回抽
出操作を反復した際、抽出の回数にかかわらず、上記温
度下での加熱時間の合計は20時間以下であることが有
効成分の分解を防止するうえから好ましい。用いるアル
カリには水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カ
ルシウム、アンモニア水などが包含されるが、特に水酸
化ナトリウムが好ましい。このようにして得られる抽出
液は希塩酸の如き鉱酸により、常法通り中和した後、次
の精製処理工程にかける。この場合、各抽出毎に抽出液
を精製処理してもよく、また、各抽出液を合わせて精製
処理してもよい。
【0017】精製処理工程は透析、限外濾過、逆浸透圧
処理、ゲル濾過、イオン交換樹脂処理、硫安などによる
塩析および有機溶媒による沈殿処理などの1種または2
種以上の方法の適用によって行われる。これらの方法の
うち、特に効果的に適用されるのは限外濾過および又は
逆浸透圧処理である。限外濾過法、逆浸透圧法において
用いる膜は、分画分子量5000〜15000表示の膜
であり、標準物質としてチトクロームc(分子量130
00)に対して阻止率98〜100%以上を有するもの
が有効である。また、上記膜を用いて本発明による抽出
液を精製するための操作条件に関しては、装置の形状、
抽出液の処理量などにより、若干の変動があることは当
然であるが、限外濾過の場合には圧力は0.5〜5kg
/cm2 、好ましくは1〜4kg/cm2 の加圧下で行
い、操作温度は膜の性状により異なるが通常5〜70℃
で行い、一方、逆浸透圧法の場合には、圧力は、通常、
20〜35kg/cm2 、好ましくは20〜25kg/
cm2 の範囲において、操作温度は膜の性状により異な
るが5〜20℃の範囲でそれぞれ行なうのが一般的であ
る。上記抽出液を精製するに当たっては、限外濾過法、
逆浸透圧法を各々単独で適用してもよく、両者を併用し
ても差し支えない。上記精製処理により、前記抽出液か
ら5000以下の低分子物を除去した後は噴霧乾燥又は
凍結乾燥した後、製品化するものである。
【0018】上記の如く、前記糖タンパク質複合体は、
担子菌の一種であるカワラタケ属(Coriolus)に属する
菌類を培養して得られる菌糸体、培養物(Brot
h)、又は子実体から抽出により得ることができる。前
記糖タンパク質複合体は、約18〜38%のタンパク質
を含み、超遠心分離測定法により測定する分子量が5,
000以上、好ましくは5,000〜1,000,00
0である。
【0019】本発明のHSP47合成抑制剤に含有され
る、カワラタケ属に属する担子菌由来の糖タンパク質複
合体の代表例は、一般名でPSKと呼称されているもの
であって、クレスチンという商品名で三共株式会社から
市販されている。PSKは、すでに臨床的に用いられて
おり、癌患者の生存期間を延長させる効果のあることが
実証されている(Nakazato, H., et al., "The Lance
t", 343: 1122-1126, 1994)。また、PSKについて
は、最近の新薬(1977年)第28集第14〜16
頁、最近の新薬(1978年)第29集第96〜101
頁、又は医薬品要覧(昭和54年5月第6版、薬業時報
社発行)第1346頁等にも記載されている。その性状
の一端を示すと次のとおりである。PSKは、カワラタ
【外1】 CM−101株[FERM−P2412(ATCC 2
0547)]の菌糸体を水系溶媒、例えば、熱水又はア
ルカリ溶液(例えば、アルカリ金属の水酸化物、特には
水酸化ナトリウムの水溶液)で抽出し、精製した後に乾
燥して得ることができる。PSKの主要画分の糖部分は
β−D−グルカンで、このグルカン部分の構造は、β1
→3、β1→4及びβ1→6結合を含む分枝構造であ
り、主な構成単糖は、グルコースやマンノースである。
また、PSKは約18〜38%のタンパク質を含む。タ
ンパク質の構成アミノ酸は、アスパラギン酸やグルタミ
ン酸等の酸性アミノ酸と、バリンやロイシン等の中性ア
ミノ酸が多く、リジンやアルギニン等の塩基性アミノ酸
は少ない。水に可溶であるが、メチルアルコール、ピリ
ジン、クロロホルム、ベンゼン又はヘキサンには殆ど溶
けない。約120℃から徐々に分解する。
【0020】なお、本発明の出発原料に関しては、前記
のカワラタケ菌CM−101株のみならず、カワラタケ
属に属する他のカワラタケ菌株(例えば、FERM−P
No.2413〜2426)、ニクスバタケ〔Coriol
us consors (Berk.) Imaz.〕、ヤキフタケ
【外2】 ミノタケ〔Coriolus biformis (Klotz.) Pat. 〕、アラ
ゲカワラタケ
【外3】 サカズキカワラタケ〔Coriolus conchifer (Schw.) Pa
t. 〕、又はハカワラタケ〔Coriolus pargamenus (Fr.)
Pat.〕等の担子菌株も使用可能である。
【0021】本発明のHSP47合成抑制剤は、前記の
カワラタケ属に属する担子菌由来の糖タンパク質複合体
を、それ単独で、又は好ましくは製剤学的に許容するこ
とのできる通常の担体と共に投与することができる。投
与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒
剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン
剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、
又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリ
ーム若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができ
る。
【0022】これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、ア
ルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳
糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロー
ス、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロ
ース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タル
ク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコー
ル、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸などの賦形剤、結
合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希
釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿
剤、防腐剤、酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造
することができる。例えば、PSK1重量部と乳糖99
重量部とを混合して充填したカプセル剤などである。
【0023】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、直腸投与等が例示される。これらのなかで、
注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の調製
においては、有効成分としてのカワラタケ属に属する担
子菌由来の糖タンパク質複合体の他に、例えば、生理食
塩水、滅菌水リンゲル液等の水溶性溶剤、植物油、脂肪
酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖、塩化ナトリウ
ム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁
化剤、乳化剤等を任意に用いることができる。具体的に
一例を示すと、PSK10mgとマンニトール50mg
とを蒸留水に溶解して10mlとし、常法で除菌した
後、2mlづつを注射用小瓶に分注し、又はそのまま凍
結乾燥して注射剤とする。使用に際して、生理食塩水で
希釈して注射液とする。また、本発明のHSP47合成
抑制剤は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手
法を用いて投与してもよい。例えば、本発明のHSP4
7合成抑制剤をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレット
に取り込ませて、このペレットを治療すべき組織中に外
科的に移植することができる。
【0024】本発明のHSP47合成抑制剤は、これに
限定されるものではないが、カワラタケ属に属する担子
菌由来の糖タンパク質複合体を0.01〜99重量%、
好ましくは0.1〜80重量%の量で含有することがで
きる。本発明のHSP47合成抑制剤を用いる場合の投
与量は、病気の種類、患者の年齢、症状の程度、投与方
法などにより異なり、特に制限はないが、カワラタケ属
に属する担子菌由来の糖タンパク質複合体量として通常
成人1人当り1mg〜50g程度を、1日1〜4回程度に
わけて、経口的に又は非経口的に投与する。さらに、用
途も医薬品に限定されるものではなく、種々の用途、例
えば、機能性食品や健康食品として飲食物等の形で与え
ることも可能である。
【0025】
【作用】上記したように、本発明のHSP47合成抑制
剤に含有されるカワラタケ属に属する担子菌由来の糖タ
ンパク質複合体は、細胞内のHSP47合成を特異的に
抑制する作用があるので、前記カワラタケ属に属する担
子菌由来の糖タンパク質複合体を投与すると細胞内での
HSP47生合成が特異的に減少し、コラーゲンの生合
成が抑制される。その結果、細胞外マトリックス産生も
抑制されることになる。従って、前記カワラタケ属に属
する担子菌由来の糖タンパク質複合体は、コラーゲンの
増加を伴う細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病
気、例えば肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢
性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、強
皮症、動脈硬化、関節リウマチなどの予防及び治療に使
用することができる。すなわち、本発明のHSP47合
成抑制剤は、コラーゲン特異的シャペロンであるHSP
47の合成を抑制することによりコラーゲンの合成を抑
制する。
【0026】また、前記のように、血管新生において
も、基底膜及び基底膜中のコラーゲン合成が重要な役割
をはたすことが指摘されているので、本発明のHSP4
7合成抑制剤は、血管新生の異常増殖に基づく多くの疾
患の予防治療薬として極めて有用であり、先に述べたよ
うな各疾患、すなわち糖尿病性網膜症、後水晶体線維増
殖症、角膜移植に伴う血管新生、緑内症、眼腫瘍、トラ
コーマ、乾せん、化膿性肉芽腫、血管腫、線維性血管
腫、肥大性はん痕、肉芽、リューマチ性関節炎、浮腫性
硬化症、アテローム性動脈硬化症及び各種腫瘍などに用
いることができる。さらに、I型コラーゲンとフィブロ
ネクチンを基本骨格とする間質(interstitial stroma
)が癌の転移において、離脱した癌細胞が近傍の脈管
に侵入するまでのガイド役を果たすことが、明らかとな
っているので〔"BIOTHERAPY", 7 (8): 1181, 1993 〕、
本発明のHSP47合成抑制剤を投与することにより、
癌の転移を抑制することも可能である。
【0027】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:抗HSP47ポリクローナル抗体の作製 (1)抗HSP47ポリクローナル抗体の調製 ヒトHSP47のN末端から2〜16番目のアミノ酸配
列に対応するアミノ酸15個からなるペプチド〔以下、
ヒトHSP47ペプチド(2−16)と称する;ラット
のHSP47の相当する部分と共通アミノ酸配列を示
す〕を自動ペプチド合成装置(PSSM−8システム,
島津制作所)を用いて作製し、スクシニミジル4−(p
−マレイミドフェニル)ブチレート〔SMPB:Succin
imidyl 4-(p-maleimidophenyl)butyrate〕を架橋剤とし
て用い、常法("Biochemistry", 18: 690, 1979 )によ
りラクトグロブリンと結合させ、感作抗原を作製した。
この感作抗原150μgを含むリン酸緩衝生理食塩水
〔組成:KCl=0.2g/l,KH2 PO4 =0.2
g/l,NaCl=8g/l,Na2 HPO4 (無水)
=1.15g/l:以下PBS(−)と称する:コスモ
バイオ,カタログ番号320-01〕0.2mlと、等量のフ
ロイント完全アジュバント(ヤトロン,カタログ番号RM
606-1 )とを混和し、得られた混合液0.2mlを、ル
ーラット(6週齢,雌性:日本クレア)の皮下に投与
し、免疫した。同様の方法で第2次及び第3次免疫を繰
り返した後、アジュバント(Hunter's TiterMax ;CytR
x Corporation ,米国ジョージア州)を用いて6回免疫
感作を行った。感作動物より採血し、常法により血清を
分離して採取し、以下に示す酵素抗体法(ELISA
法)及びウェスタンブロット法によって血清中の抗体価
を測定した。
【0028】(2)酵素抗体法(ELISA法)による
抗HSP47ポリクローナル抗体特性の評価 前項(1)で調製したヒトHSP47ペプチド(2−1
6)をPBS(−)に溶解し、10μg/mlの濃度の
ペプチド溶液を調製し、リジットアセイプレート(ファ
ルコン,カタログ番号3910)の各ウェルに前記ペプチド
溶液を50μlずつ滴下した。最も外側のウェルにはP
BS(−)50μlのみを入れ、湿潤下で4℃にて一晩
放置した後、前記ペプチド溶液を捨て、PBS(−)を
用いて各ウェルを洗浄した後、1%ウシ血清アルブミン
(以下、BSAと略称する)を含むPBS(−)100
μlを各ウェルに入れ、室温下で1時間放置した。PB
S(−)で3回洗浄した後、前項(1)で取得したルー
ラット血清50μlを各ウェルに入れ、1時間室温にて
放置した。PBS(−)で3回洗浄した後、各ウェルに
2次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG5
0μlを入れ、室温下で1時間放置した。PBS(−)
で2回洗浄した後、過酸化水素水4μlを加えた0.1
Mクエン酸バッファー(pH4.5)10mlにo−フ
ェニレンジアミン(OPD)タブレット(シグマ,カタ
ログ番号P8287 )1個(10mg)を溶解して調製した
基質液100μlずつを各ウェルに滴下し、室温にて遮
光下で30分間放置した後、各ウェルの492nmの吸
光度をマイクロプレートリーダー(東ソー,MPR−A
4i型)にて測定した。抗体価の上昇が確認された血清
を抗ヒトHSP47ポリクローナル抗体として以下の実
施例に用いた。
【0029】(3)ウェスタンブロット法による抗HS
P47ポリクローナル抗体特性の評価 Laemmliのバッファー系(Laemmli, N. K., "Nat
ure", 283 : pp.249-256, 1970)を用いて、HeLa細
胞のライセートのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を、以下の方法に従って
行った。濃縮ゲルの調製は次のように行った。蒸留水
6.1ml、0.5Mトリス(バイオ・ラッド,カタロ
グ番号161-0716)−HCl(pH6.8)2.5ml、
10%SDS(バイオ・ラッド,カタログ番号161-030
1)100μl、及び30%アクリルアミド(バイオ・
ラッド,カタログ番号161-0101)/N,N’−メチレン
ビスアクリルアミド(バイオ・ラッド,カタログ番号16
1-0201)1.3mlを混合して、15分間脱気し、10
%過硫酸アンモニウム(バイオ・ラッド,カタログ番号
161-0700)50μl及びN,N,N’,N’−テトラメ
チルエチレンジアミン(以下、TEMEDと略称する)
(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0800)10μlを
加えて、濃縮ゲルを調製した。
【0030】また、分離ゲルの調製は次のように行っ
た。蒸留水4.045ml、1.5Mトリス−HCl
(pH8.8)2.5ml、10%SDS100μl、
及び30%アクリルアミド/N,N’−メチレンビスア
クリルアミド3.3mlをゆっくり混合して、15分間
アスピレータで脱気し、10%過硫酸アンモニウム50
μl、及びTEMED5μlを加えた。
【0031】泳動バッファーとしては、トリス9.0
g、グリシン(バイオ・ラッド,カタログ番号161-071
7)43.2g、及びSDS3.0gに蒸留水を加えて
600mlにし、この溶液を蒸留水で5倍希釈したもの
を用いた。サンプルバッファーは、蒸留水2ml、2M
トリス−HCl(pH6.8)500μl、SDS0.
32g、β−メルカプトエタノール800μl、及び
0.05%(w/v)ブロモフェノールブルー(バイオ
・ラッド,カタログ番号161-0404)400μlを混合し
たものを用いた。
【0032】後述する実施例2に示す方法に基づいてH
eLa細胞を培養し、そのライセートを調製した。得ら
れたHeLa細胞ライセートのSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行った後、0.45μmニトロセル
ロース膜(Schleicher & Schuell,カタログ番号40119
6)にゲルを密着させ、タンパク質転写装置(Trans-Blo
t Electrophoretic Transfer Cell:バイオ・ラッド)
を用いて、室温にて100Vで、3時間ブロッティング
を行った。ブロッティングバッファーとしては0.02
5Mトリス及び0.192MグリシンよりなりpH8.
5に調整されたトリスグリシンバッファー(Tris Gly R
unning and Blotting Buffer;Enprotech,米国マサチ
ューセッツ州,カタログ番号SA100034)にメタノールを
20%になるように加えて調製したバッファーを用い
た。
【0033】ブロッティング後、5%スキムミルク(雪
印乳業)を含むPBS(−)溶液にニトロセルロース膜
を室温にて30分間浸し、ブロッキングを行った。ブロ
ッキング後、スクリーナーブロッター(サンプラテッ
ク)を用いて、前項(1)で取得したルーラット血清を
1次抗体として、1次抗体反応を行った。1次抗体反応
は、2%スキムミルク(雪印乳業)を含むPBS(−)
にて10倍希釈した前記ルーラット血清200μlで、
室温にて120分間行った。1次抗体反応終了後、スロ
ー・ロッキング・シェイカーを用いて、PBS(−)で
5分間の振盪を2回、0.1%Tween20(バイオ
・ラッド,カタログ番号170-6531)を含むPBS(−)
溶液で15分間の振盪を4回、更にPBS(−)で5分
間の振盪を2回行うことにより、ニトロセルロース膜を
洗浄した。
【0034】洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗
ラットIgG抗体(Southern Biotechnology,カタログ
番号3030-05 )を、2%スキムミルクを含むPBS
(−)溶液で5000倍に希釈した溶液5mlを用い
て、2次抗体反応を2時間行った。反応終了後、PBS
(−)溶液、及び0.1%Tween20を含むPBS
(−)溶液で、1次抗体反応後の洗浄と同じ条件下にて
ニトロセルロース膜の洗浄を行った。余分なPBS
(−)溶液を除去した後、ウェスタンブロッティング検
出試薬(ECL Western blotting detection reagent;ア
マーシャム,カタログ番号RPN2106 )をニトロセルロー
ス膜上に振りかけ、1分間室温にて静置した後、余分な
検出試薬を除去し、ニトロセルロース膜をラップに包
み、反応面をX線フィルム(コダック X-OMAT, AR カタ
ログ番号165 1454)に密着させて露光させた。現像後、
HSP47に相当する分子量47キロダルトン付近のバ
ンドを測定することによって、抗HSP47ポリクロー
ナル抗体の反応性の検討を行った。抗体価の上昇が確認
された血清を、抗ヒトHSP47ポリクローナル抗体と
して、以下の実施例に用いた。
【0035】実施例2:ヒト培養癌細胞のHSP発現量
の測定 (1)ヒト培養癌細胞の培養 以下の各種ヒト培養癌細胞を、5%二酸化炭素条件下
で、熱ショック処理時以外は、37℃で培養した。肺癌
細胞株H69(ATCC HTB 119)、胃癌細胞
株KATO III (ATCC HTB 103)、前立
腺癌細胞株DU145(ATCC HTB 81)及び
大腸癌細胞株COLO 205(ATCC CCL 2
22)は、10%非働化ウシ胎児血清(以下、FBSと
略称する)を含むRPMI1640培地中で培養した。
腎癌細胞株ACHN(ATCC CRL 1611)、
及び子宮癌細胞株HeLa S3(ATCC CCL
2.2)は、10%非働化FBSを含むMEM培地にて
培養した。前立腺癌細胞株PC−3(ATCC CRL
1435)は、7%非働化FBSを含むF−12K培
地(シグマ,カタログ番号N 3520)にて培養し
た。神経腫瘍細胞株(神経芽細胞腫)SK−N−MC
(ATCC HTB 10)は、非必須アミノ酸(L−
アラニン8.9mg/l、L−アスパラギン・H2 O1
5mg/l、L−アスパラギン酸13.3mg/l、L
−グルタミン酸14.7mg/l、グリシン7.5mg
/l、L−プロリン11.5mg/l及びL−セリン1
0.5mg/l)及び10%非働化FBSを含むMEM
培地にて培養した。
【0036】(2)PSK処理及び熱ショック処理 播種2日後の前記各種ヒト培養癌細胞の培地中に、最終
濃度1mg/mlになるようにPSK(商品名クレスチ
ン)を添加し、24時間培養した。その後、45℃にて
15分間熱ショック処理をしてから、37℃にて終夜培
養した。対照試験は、PSKを添加しないこと以外は前
記と同様に実施した。
【0037】(3)ヒト培養癌細胞でのHSP発現量の
測定 前項(2)で処理した各細胞を、以下に示す方法により
ホモジナイズし、HSP発現量をウェスタンブロット法
にて測定した。すなわち、前項(2)で処理した細胞を
PBS(−)で洗浄した後、ライシスバッファー(ly
sis buffer)[1.0%NP−40、0.1
5M塩化ナトリウム、50mMトリス−HCl(pH
8.0)、5mM−EDTA、2mM−N−エチルマレ
イミド、2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、
2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペプスタチ
ン]1mlを加え、氷上で20分間静置した。その後、
4℃で12000rpmにて、20分間、遠心を行っ
た。遠心後の上清10μlをPBS(−)790μlに
加え、更にプロテインアッセイ染色液(Dye Reagent Co
ncentrate :バイオラッド,カタログ番号500-0006)2
00μlを加えた。5分間、室温にて静置した後、59
5nmで吸光度を測定してタンパク質定量を行った。
【0038】タンパク質定量を行った試料を用いて、L
aemmliのバッファー系にて、等量のタンパク質を
含むライセートのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳
動を行った。電気泳動後、実施例1で述べた方法に従っ
て、ブロッティング及びそれに続くブロッキングを行っ
た。すなわち、タンパク質転写装置(Trans-Blot Elect
rophoretic Transfer Cell:バイオ・ラッド)を用い
て、室温にて100Vにて、0.45μmニトロセルロ
ース膜(Schleicher & Schuell,カタログ番号401196)
にゲルを密着させ、3時間ブロッティングを行った。ブ
ロッティングバッファーとしては、前記実施例1(3)
で用いたバッファーと同じものを用いた。ブロッティン
グ後、ニトロセルロース膜を10%スキムミルク(雪印
乳業)−PBS(−)溶液に室温にて30分間、インキ
ュベートし非特異的結合をブロックした。
【0039】ブロッキング後、スクリーナーブロッター
(サンプラテック)を用いて、ニトロセルロース膜の上
で、実施例1にて製造した抗ヒトHSP47ラットポリ
クローナル抗体により、1次抗体反応を行った。その
後、PBS(−)で5分間づつ、溶液を取り替えて2回
の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーによって行
い、更にPBS(−)−0.1%Tween20(バイ
オ・ラッド,カタログ番号170-6531)溶液で15分間づ
つ、溶液を取り替えて4回の洗浄を行った。最終的に、
PBS(−)で5分間づつ、2回の洗浄を行った。
【0040】洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗
ラットIgG抗体(Southern Biotechnology,カタログ
番号3030-05 )を、2%スキムミルクを含むPBS
(−)溶液で5000倍に希釈して調製した抗体溶液5
mlを用いて、2時間、2次抗体反応を行った。反応終
了後、ニトロセルロース膜に関して、PBS(−)溶液
で5分間づつ溶液を変えて2回、更にPBS(−)−
0.1%Tween20溶液で15分間づつ溶液を変え
て5回の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーにより
行った。最後にPBS(−)溶液で5分間づつ2回の洗
浄を行った。余分なPBS(−)溶液を除去した後、ウ
ェスタンブロッティング検出試薬(ECL Western blotti
ng detection reagent;Amersham,カタログ番号RPN210
6 )をニトロセルロース膜上に振りかけ、1分間インキ
ュベートした後、余分な検出試薬を除去し、ニトロセル
ロース膜をラップに包み、反応面をX線フィルム(コダ
ック X-OMAT, AR ,カタログ番号165 1454)に密着させ
て露光し、現像してHSP47の有無の検討を行った。
結果を表1に示す。表中、「↓」は、対照に比べて、H
SP47発現量が減少したことを意味する。
【0041】
【表1】 癌種 癌細胞 HSP47発現量変化 肺 H69 ↓ 子宮 HeLa S3 ↓ 大腸 COLO 205 ↓ 胃 KATO III ↓ 腎臓 ACHN ↓ 前立腺 DU 145 ↓ 前立腺 PC−3 ↓ 神経 SK−N−MC ↓
【0042】表1に示すとおり、PSKは、肺癌細胞株
H69、子宮癌細胞株HeLa S3、大腸癌細胞株C
OLO 205、胃癌細胞株KATO III 、腎臓癌細
胞株ACHN、前立腺癌細胞株DU 145、前立腺癌
細胞株PC−3、及び神経腫瘍細胞株SK−N−MCに
おいてHSP47の発現を抑制した。従って、PSK
は、HSP47の発現を抑制する活性を有し、HSP4
7合成抑制剤として有用であるものと結論することがで
き、このことは、PSKが細胞外マトリックス産生の亢
進に抑制的に働くことを示している。
【0043】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のHSP4
7合成抑制剤は、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性
腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や
熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性
瘢痕、強皮症、動脈硬化、関節リウマチなどの細胞外マ
トリックス産生の亢進の病態を示す病気に罹患した細胞
にみられるコラーゲン合成亢進を改善する作用を有す
る。従って、本発明によるHSP47合成抑制剤を投与
することにより、臓器、組織の線維化、硬化が阻止さ
れ、その結果、前記病気の患者の生理学的状態を有効に
改善させ、前記病気を効果的に治療することができる。
また、本発明のHSP47合成抑制剤は、血管新生の異
常増殖を伴う各種疾患の予防治療にも有用である。さら
に、I型コラーゲンとフィブロネクチンを基本骨格とす
る間質が、癌の転移において離脱した癌細胞が近傍の脈
管に侵入するまでのガイド役を果たすことが、明らかと
なっているので、本発明のHSP47合成抑制剤を投与
することにより、癌の転移を抑制することも可能であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 35/84 ACV A61K 35/84 ACV ADS ADS

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カワラタケ属に属する担子菌の菌糸体、
    培養物又は子実体から得られる糖タンパク質複合体を有
    効成分として含有することを特徴とする、分子量47キ
    ロダルトンの熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
  2. 【請求項2】 カワラタケ属に属する担子菌の菌糸体、
    培養物又は子実体から得られる糖タンパク質複合体がP
    SKである、請求項1に記載の分子量47キロダルトン
    の熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
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