JP3003978B2 - ペオニフロリン含有hsp47合成抑制剤 - Google Patents

ペオニフロリン含有hsp47合成抑制剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ペオニフロリン又はそ
の誘導体を有効成分として含有する、分子量47キロダ
ルトンの熱ショックタンパク質(以下、HSP47と称
する)の合成抑制剤に関する。本発明のHSP47合成
抑制剤は、特に、臓器内のコラーゲンの合成を抑制する
ことにより肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢
性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交
通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、
動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリックス
(細胞外基質)産生亢進の病態を示す病気の患者の生理
学的状態を有効に改善させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢
性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕
や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚
性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細
胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病気を効果的に
治療することができる。
【0002】
【従来の技術】近年、コラーゲンなどの細胞外マトリッ
クスの産生の亢進の病態を示す病気が大きな問題となっ
ている。ここでいう細胞外マトリックス産生の亢進の病
態を示す病気とは、例えば肝硬変、間質性肺疾患、慢性
腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や
熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性
瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどを含
む。
【0003】例えば、死亡者がわが国だけでも年間約2
万人にものぼるといわれている肝硬変は、肝臓が結合組
織の増殖のため固くなる病気の総称で、種々の慢性肝疾
患の終末像であるといわれ、肝全体にわたるびまん性の
肝線維症である。すなわち、肝炎などの肝傷害が長期に
及ぶ慢性肝炎においては、線維芽細胞や伊東細胞などの
細胞外マトリックス(特にI型コラーゲン)産生の著し
い亢進を伴い肝臓は線維化する。肝の線維化が慢性的に
進行すると、ますます正常な肝再生は妨害され、肝細胞
に置き換わり、線維芽細胞とI型コラーゲンを主体とす
る細胞外マトリックスが肝組織のかなりの部分を占め、
多くの凝小葉からなる肝硬変に至る。肝硬変の進行に伴
い、線維隔壁が肝全体に進展し、その結果生じる血流の
異常は、肝実質細胞の変性を更に押し進める一因にもな
り、肝硬変における悪循環が続くことになり、更にはア
ルコール、ウイルス、自己免疫等種々の原因によって、
肝臓中に多量の膠質線維が生成され、肝細胞の壊死と機
能消失とが生じ、肝硬変患者は遂には死に至る。I型コ
ラーゲンは正常肝では全タンパク質量の約2%を占める
が、肝硬変となると10〜30%を占めるようになる。
【0004】また、間質性肺疾患は、肺胞及び肺胞管の
みならず、しばしば呼吸細気管支や終末気管支も巻き込
む下部気道の慢性炎症(肺胞炎 alveolitis)とその結果
である間質の線維化と肺胞内線維化を特徴とする疾患群
である。ここでいう間質性肺疾患とは、例えば、間質性
肺炎、肺線維症などのびまん性間質性肺疾患、特発性肺
線維症、透過性肺水腫、膠原病肺、サルコイドーシスな
どを含む。間質性肺疾患においては、線維化組織では細
胞外マトリックスの過剰な産生と蓄積が認められてい
る。すなわち、間質性肺疾患の肺線維化組織では、肥大
した間質に著明なI型及び III型コラーゲンの集積がみ
られており、特に III型コラーゲンは、線維化の早期に
肥厚した肺胞中隔に集積し、病期が進行し、後期にはI
型コラーゲンが増加し、主要なコラーゲンとなる。基底
膜は早期に破壊されており、肺胞腔側へのコラーゲン線
維の侵入が観察される。
【0005】また、慢性腎不全とは慢性腎炎症候群の結
果、腎機能の荒廃により体内の恒常性が維持できなくな
った状態である。慢性腎不全の進行を病理学的にみると
糸球体硬化と間質線維化の進行である。糸球体硬化症
は、メサンギウム領域を中心とした細胞外マトリックス
の増生である。メサンギウム硬化症の成分は正常と比較
し、著明にIV型コラーゲンなどの糸球体基底膜の成分が
増加し、また間質成分であるI型コラーゲンも硬化症部
位に一致して増生している。すなわち、慢性に経過する
糸球体硬化に対しては、細胞外マトリックスの産生亢進
が大きな要因である。ここで慢性腎不全に陥いる疾患と
は、例えばIgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性
腎炎、糖尿病性腎症、慢性間質性腎炎、慢性糸球体腎炎
などを含む。その他、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、あるい
は強皮症、動脈硬化等の細胞外マトリックス産生亢進の
病態を示す病気は、何らかの原因によりコラーゲン合成
の異常亢進が起こり、線維化が進んで組織の硬化変化を
生ずることが主要な成因と考えられている。
【0006】また、血管新生においても基底膜及び基底
膜中のコラーゲン合成が、重要な役割をはたすことが指
摘されている(Maragoudakis, E., Sarmonika, M., and
Panoutsacopoulous, M., "J. Pharmacol. Exp. The
r.", 244 : 729, 1988; Ingber,D. E., Madri, J. A.,
and Folkman, J., "Endocrinology", 119 : 1768, 198
6)。血管新生による疾患としては、例えば、糖尿病性
網膜症、後水晶体線維増殖症、角膜移植に伴う血管新
生、緑内症、眼腫瘍、トラコーマ、幹せん、化膿性肉芽
腫、血管腫、線維性血管腫、肥大性はん痕、肉芽、リュ
ーマチ性関節炎、浮腫性硬化症、アテローム性動脈硬化
症、各種腫瘍などが知られている。このようにコラーゲ
ンなどの細胞外マトリックスの産生の亢進の病態を示す
病気が大きな問題となっているにもかかわらず、従来で
は副作用や薬理効果等の種々の面で満足すべき細胞外マ
トリックス合成抑制剤(例えば、コラーゲン合成抑制
剤)は未だ開発されていなかったのである。
【0007】一方、熱ショックタンパク質(heat shock
protein;HSP、ストレスタンパク質ともいう)は、
細胞に何らかのストレス、例えば熱、薬剤、放射線等を
加えることにより細胞に発現されるタンパク質である。
HSPは、その種類は多種多様であるが、分子量の大き
さから90ファミリー、70ファミリー、60ファミリ
ー、低分子ファミリーの4ファミリーに大別することが
できる。ストレスへの応答に加えて、これらのタンパク
質のいくつかは構成的に合成され、正常な環境のもと、
タンパク質のフォールディング、アンフォールディン
グ、タンパク質サブユニットの会合、タンパク質の膜輸
送のような、必須の生理的な役割を演じていることが示
されている。熱ショックタンパク質としてのこれらの機
能は、分子シャペロンと称される。
【0008】HSP47は、永田等によって1986年
に発見されたタンパク質で、分子量47キロダルトンの
塩基性タンパク質(pI=9.0)である。HSP47
の発現が増大するにつれて、コラーゲンの合成も増加す
ることが様々な細胞で示されている("J. Biol. Che
m.", 261 : 7531, 1986; "Eur. J. Biochem.", 206 : 3
23, 1992; "J. Biol. Chem.", 265 : 992, 1990; "J.
Clin. Invest.", 94 : 2481, 1994)。すなわち、HS
P47は、細胞内で小胞体内でのプロコラーゲンのプロ
セシング、三重鎖ヘリックス形成、あるいは小胞体から
ゴルジ装置へのプロコラーゲン輸送・分泌という局面
で、コラーゲンの特異的分子シャペロンとして機能して
いるとされているので、増大したHSP47発現は、細
胞外マトリックスにおけるコラーゲン分子の蓄積を刺激
する。このようにコラーゲン結合熱ショックタンパク質
であるHSP47は、発現と同様に機能においても、細
胞外マトリックスタンパク質であるコラーゲンに密接に
関連した熱ショックタンパク質である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事
情に鑑み、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢
性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交
通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、
動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリックス
産生亢進の病態を示す病気の患者の生理学的状態を有効
に改善させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は
慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、
交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮
症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリッ
クス産生亢進の病態を示す病気を効果的に治療すること
のできる、細胞外マトリックス合成抑制剤を提供するた
めに、種々検討を重ねてきた。
【0010】上記したように、肝硬変、間質性肺疾患、
慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢
痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥
厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの
線維症は臓器内の細胞外マトリックスの著しく増加した
病態が主病変と理解されている。肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後
の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイド
や肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチな
どの細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病気に伴
う線維化は、コラーゲン生合成増加やコラーゲン分解能
の低下により生ずると考えられている。例えば、肝の線
維化において、I型、 III型、IV型コラーゲンの合成活
性化が起こるが、特に主要成分であるI型コラーゲンの
合成活性化が重要な意味をもつ。
【0011】こうした状況下で、本発明者らは、意外に
も、芍薬(Paeoniae Radix)の成分であ
るペオニフロリン(Paeoniflorin)、又は
その誘導体が、病態を示す組織の細胞におけるHSP4
7の合成を特異的に抑制することを見出した。すなわ
ち、ペオニフロリン又はその誘導体を投与することによ
り、細胞内でのHSP47の合成を抑制し、臓器内での
コラーゲン合成を抑制し、ひいては肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後
の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイド
や肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチな
どの細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病気の治
療が可能であることを見出したのである。本発明はこう
した知見に基づくものであり、肝硬変、間質性肺疾患、
慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢
痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥
厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの
細胞外マトリックス産生の亢進の病態を示す病気を効果
的に治療することのできるHSP47合成抑制剤であっ
て、細胞内でのコラーゲンの成熟及び輸送過程に重要な
役割を果たしているコラーゲン特異的な分子シャペロン
であるHSP47の合成抑制剤を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、ペオ
ニフロリン、あるいは、オキシペオニフロリン、ベンゾ
イルペオニフロリン、ベンゾイルオキシペオニフロリ
ン、アルビフロリン、ガロイルペオニフロリン、ペオニ
フロリンテトラアセテート、ペオニフロリンペンタアセ
テート、デスベンゾイルペオニフロリン、ペオニフロリ
ンテトラアセテートトシレート、ペオニフロリンモノベ
ンゾエートトリアセテート、及びペオニフロリンモノベ
ンゾエートからなる群から選んだペオニフロリン誘導体
を有効成分として含有することを特徴とする、HSP4
7合成抑制剤に関する。
【0013】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明のHSP47合成抑制剤に有効成分として含まれる
ペオニフロリン(Paeoniflorin;C2328
11=480.47)は、式
【化1】 (式中、Glcはグルコース残基である)で表される配
糖体であり、例えば、芍薬等の生薬に含まれている。な
お、前記のペオニフロリンには、多種の立体異性体が存
在するが、本発明では、それらの任意の純粋な立体異性
体又はそれらの混合物を用いることができる。
【0014】本発明のHSP47合成抑制剤に含有され
るペオニフロリンは、化学合成によって、又は天然物か
ら抽出して精製することによって、調製することができ
る。あるいは、市販品を用いてもよい。また、本発明の
HSP47合成抑制剤において有効成分として用いるペ
オニフロリンを、天然物から抽出する場合には、ペオニ
フロリンを含有する植物の全体又は一部分(例えば、全
草、葉、根、根茎、茎、根皮、若しくは花)をそのまま
用いて、又は簡単に加工処理(例えば、乾燥、切断、若
しくは粉末化)したもの(例えば、生薬)を用いて抽出
する。抽出条件は一般的に植物抽出に用いられる条件な
らば特に制限はない。
【0015】本発明におけるペオニフロリンは、生薬か
ら抽出する場合、これに限定するものではないが、例え
ば芍薬から抽出することが好ましい。本明細書において
は、植物としての「シャクヤク」(Paeonia l
actiflora Pallas)と、生薬としての
「芍薬」(Peony Root;PAEONIAER
ADIX)とを、カタカナと漢字とで区別して表記す
る。すなわち、芍薬とは、シャクヤク又はその近縁植物
(Paeoniaceae)の根の生又は乾燥物を意味
し、それらの部分を単独であるいは任意に組み合わせて
使用することができる。
【0016】本発明によるHSP47合成抑制剤におい
て有効成分として用いる芍薬抽出物は、前記のペオニフ
ロリンを含有していればよく、従って、芍薬の粗抽出物
を用いることができる。本発明で用いる芍薬抽出物の製
造方法としては、芍薬を、例えば、水(例えば、温水、
好ましくは熱湯)によって抽出するか、又は有機溶媒を
用いて抽出する。有機溶媒としては、例えば、メチルア
ルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸
メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセ
トン、メチルイソブチルケトン、石油エーテル、シクロ
ヘキサン、四塩化炭素、トルエン、ベンゼン、ジクロロ
メタン、クロロホルム、エーテル、ピリジン、ポリエチ
レングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリ
コール、又はアセトニトリルなどを用いることができ、
これらの有機溶媒を単独、又は適宜組み合わせ、一定の
比率で混合し、更には無水又は含水状態で用いることが
できる。好ましくは、エチルアルコール、メチルアルコ
ール、水、ブチレングリコール、含水アルコール、又は
アセトニトリル−水混合溶媒等が望ましい。
【0017】水抽出又は有機溶媒抽出の方法としては、
通常の生薬抽出に用いられる方法を用いることができ、
例えば(乾燥)芍薬1重量部に対し、水又は有機溶媒5
〜300重量部を用いて、攪拌しながら、その沸点以下
の温度で加熱還流することが望ましい。抽出工程は、通
常は5分〜7日間、好ましくは10分〜24時間実施
し、必要に応じて、攪拌等の補助的手段を加えることに
より、抽出時間を短縮することができる。
【0018】抽出工程終了後、濾過又は遠心分離等の適
当な方法により、水又は有機溶媒抽出液から、不溶物を
分離して粗抽出物を得ることができる。なお、本発明の
HSP47合成抑制剤において、天然物より抽出、分画
したペオニフロリンを用いる場合には、前記の粗抽出物
を特に精製することなく、そのまま使用してもよい。常
法による熱水抽出物又は有機溶媒抽出物の他に、前記の
粗抽出物を各種有機溶媒又は吸着剤等により、更に処理
した精製抽出物も、本発明のHSP47合成抑制剤の有
効成分として用いることができる。これらの粗抽出物及
び各種の精製処理を終えた精製抽出物を含む芍薬抽出物
は、抽出したままの溶液を用いても、溶媒を濃縮したエ
キスを用いても良いし、溶媒を留去し乾燥した粉末、更
には結晶化して精製したもの、あるいは粘性のある物質
を用いても良く、またそれらの希釈液を用いることもで
きる。こうして得られた芍薬抽出物は、芍薬に含まれる
ペオニフロリンを含み、同時に原料の芍薬に由来する不
純物を含んでいる。
【0019】また、ペオニフロリン誘導体としては、生
薬中に本来含有されているペオニフロリン誘導体〔例え
ば、オキシペオニフロリン(Oxypaeoniflo
rin)、ベンゾイルペオニフロリン(Benzoyl
paeoniflorin)、ベンゾイルオキシペオニ
フロリン(Benzoyloxypaeoniflor
in)、アルビフロリン(Albiflorin)、ガ
ロイルペオニフロリン(Galloylpaeonif
lorin)など〕;抽出、分画の際の化学的処理によ
って変換した誘導体;及び化学的修飾を行った誘導体
〔例えば、ペオニフロリンテトラアセテート(Paeo
niflorin tetraacetate)、ペオ
ニフロリンペンタアセテート(Paeoniflori
n pentaacetate)、デスベンゾイルペオ
ニフロリン(Desbenzoylpaeoniflo
rin)、ペオニフロリンテトラアセテートトシレート
(Paeoniflorin tetraacetat
e tosylate)、ペオニフロリンモノベンゾエ
ートトリアセテート(Paeoniflorin mo
nobenzoate triacetate)、ペオ
ニフロリンモノベンゾエート(Paeoniflori
n monobenzoate)など〕等が含まれる。
【0020】本発明のHSP47合成抑制剤は、ペオニ
フロリン若しくはその誘導体、又はペオニフロリン含有
植物、例えば、ペオニフロリン含有生薬(特には、芍
薬)より抽出、分画したペオニフロリン含有抽出物を、
それ単独で、又は好ましくは製剤学的に許容することの
できる通常の担体と共に投与することができる。投与剤
型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、
顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、
シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は
注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリー
ム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができ
る。
【0021】これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、ア
ルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳
糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロー
ス、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロ
ース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タル
ク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコー
ル、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸
アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性
剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、
香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防
止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
例えば、ペオニフロリン1重量部と乳糖99重量部とを
混合して充填したカプセル剤などである。
【0022】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなか
で、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の
調製においては、有効成分としてのペオニフロリン若し
くはその誘導体、又はペオニフロリン含有植物抽出物、
例えば、ペオニフロリン含有生薬抽出物(特には、芍薬
抽出物)の他に、例えば、生理食塩水、滅菌水リンゲル
液等の水溶性溶剤、植物油、脂肪酸エステル等の非水溶
性溶剤、ブドウ糖、塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解
補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤等を
任意に用いることができる。具体的に一例を示すと、ペ
オニフロリン10mgとマンニトール50mgとを蒸留
水に溶解して10mlとし、常法で除菌した後、2ml
ずつを注射用小瓶に分注し、又はそのまま凍結乾燥して
注射剤とする。使用に際して、生理食塩水で希釈して注
射液とする。また、本発明のHSP47合成抑制剤は、
徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて
投与してもよい。例えば、本発明のHSP47合成抑制
剤をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ま
せて、このペレットを治療すべき組織中に外科的に移植
することができる。
【0023】本発明のHSP47合成抑制剤は、これに
限定されるものではないが、ペオニフロリン、その誘導
体、又はその医薬上許容される塩を、0.01〜99重
量%、好ましくは0.1〜80重量%の量で含有するこ
とができる。また、ペオニフロリン含有植物抽出物、例
えば、ペオニフロリン含有生薬抽出物(特には、芍薬抽
出物)を有効成分として含有する本発明のHSP47合
成抑制剤は、その中に含まれるペオニフロリンが前記の
量範囲になるように適宜調整して、調製することができ
る。なお、ペオニフロリン含有植物抽出物、例えば、ペ
オニフロリン含有生薬抽出物(特には、芍薬抽出物)を
有効成分として含有するHSP47合成抑制剤を、経口
投与用製剤とする場合には、製剤学的に許容することの
できる担体を用いて、製剤化することが好ましい。本発
明のHSP47合成抑制剤を用いる場合の投与量は、病
気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は
投与方法などにより異なり、特に制限はないが、ペオニ
フロリン量として通常成人1人当り1mg〜10g程度
を、1日1〜4回程度にわけて、経口的に又は非経口的
に投与する。更に、用途も医薬品に限定されるものでは
なく、種々の用途、例えば、機能性食品や健康食品とし
て飲食物等の形で与えることも可能である。なお、本発
明に用いられるペオニフロリンはマウスを用いた急性毒
性試験における経口投与ではほとんど死亡例を見ない程
毒性が極めて弱かった。
【0024】
【作用】上記したように、本発明のHSP47合成抑制
剤に含有されるペオニフロリン又はその誘導体は、細胞
内のHSP47合成を特異的に抑制する作用があるの
で、ペオニフロリン又はその誘導体を投与すると細胞内
でのHSP47生合成が特異的に減少し、コラーゲンの
生合成が抑制される。その結果、細胞外マトリックス産
生も抑制されることになる。従って、ペオニフロリン又
はその誘導体は、コラーゲンの増加を伴う細胞外マトリ
ックス産生亢進の病態を示す病気、例えば肝硬変、間質
性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾
患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じ
るケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節
リウマチなどの予防及び治療に使用することができる。
すなわち、本発明のHSP47合成抑制剤は、コラーゲ
ン特異的シャペロンであるHSP47の合成を抑制する
ことによりコラーゲンの合成を抑制する。
【0025】また、前記のように、血管新生において
も、基底膜及び基底膜中のコラーゲン合成が重要な役割
をはたすことが指摘されているので、本発明のHSP4
7合成抑制剤は、血管新生の異常増殖に基づく多くの疾
患の予防治療薬として極めて有用であり、先に述べたよ
うな各疾患、すなわち糖尿病性網膜症、後水晶体線維増
殖症、角膜移植に伴う血管新生、緑内症、眼腫瘍、トラ
コーマ、乾せん、化膿性肉芽腫、血管腫、線維性血管
腫、肥大性はん痕、肉芽、リューマチ性関節炎、浮腫性
硬化症、アテローム性動脈硬化症及び各種腫瘍などに用
いることができる。更に、I型コラーゲンとフィブロネ
クチンを基本骨格とする間質(interstitialstroma)が
癌の転移において、離脱した癌細胞が近傍の脈管に侵入
するまでのガイド役を果たすことが、明らかとなってい
るので("BIOTHERAPY", 7 (8): 1181,1993)、本発明の
HSP47合成抑制剤を投与することにより、癌の転移
を抑制することも可能である。
【0026】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:抗HSP47ポリクローナル抗体の作製 (1)抗HSP47ポリクローナル抗体の調製 ヒトHSP47のN末端から2〜16番目のアミノ酸配
列に対応するアミノ酸15個からなるペプチド〔以下、
ヒトHSP47ペプチド(2−16)と称する〕を自動
ペプチド合成装置(PSSM−8システム,島津製作
所)を用いて作製し、スクシニミジル4−(p−マレイ
ミドフェニル)ブチレート〔SMPB:Succini
midyl 4−(p−maleimidopheny
l)butyrate〕を架橋剤として用い、常法
(“Biochemistry”,18:690,19
79)によりラクトグロブリンと結合させ、感作抗原を
作製した。この感作抗原150μgを含むリン酸緩衝生
理食塩水〔組成:KCl=0.2g/l,KHPO
=0.2g/l,NaCl=8g/l,NaHPO
(無水)=1.15g/l:以下PBS(−)と称す
る:コスモバイオ,カタログ番号320−01〕0.2
mlと、等量のフロイント完全アジュバント(ヤトロ
ン,カタログ番号RM606−1)とを混和し、得られ
た混合液0.2mlを、ルーラット(6週齢,雌性:日
本クレア)の皮下に投与し、免疫した。同様の方法で第
2次及び第3次免疫を繰り返した後、アジュバント(H
unter’sTiterMax;CytRx Cor
poration,米国ジョージア州)を用いて6回免
疫感作を行った。感作動物より採血し、常法により血清
を分離して採取し、以下に示す酵素抗体法(ELISA
法)及びウェスタンブロット法によって血清中の抗体価
を測定した。
【0027】(2)酵素抗体法(ELISA法)による
抗HSP47ポリクローナル抗体特性の評価 前項(1)で調製したヒトHSP47ペプチド(2−1
6)をPBS(−)に溶解し、10μg/mlの濃度の
ペプチド溶液を調製し、リジットアセイプレート(ファ
ルコン,カタログ番号3910)の各ウェルに前記ペプチド
溶液を50μlずつ滴下した。最も外側のウェルにはP
BS(−)50μlのみを入れ、湿潤下で4℃にて一晩
放置した後、前記ペプチド溶液を捨て、PBS(−)を
用いて各ウェルを洗浄した後、1%ウシ血清アルブミン
(以下、BSAと略称する)を含むPBS(−)100
μlを各ウェルに入れ、室温下で1時間放置した。PB
S(−)で3回洗浄した後、前項(1)で取得したルー
ラット血清50μlを各ウェルに入れ、1時間室温にて
放置した。PBS(−)で3回洗浄した後、各ウェルに
2次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG5
0μlを入れ、室温下で1時間放置した。PBS(−)
で2回洗浄した後、過酸化水素水4μlを加えた0.1
Mクエン酸バッファー(pH4.5)10mlにo−フ
ェニレンジアミン(OPD)タブレット(シグマ,カタ
ログ番号P8287)1個(10mg)を溶解して調製した基
質液100μlずつを各ウェルに滴下し、室温にて遮光
下で30分間放置した後、各ウェルの492nmの吸光
度をマイクロプレートリーダー(東ソー,MPR−A4
i型)にて測定した。抗体価の上昇が確認された血清を
抗ヒトHSP47ポリクローナル抗体として以下の実施
例に用いた。
【0028】(3)ウェスタンブロット法による抗HS
P47ポリクローナル抗体特性の評価Laemmliの
バッファー系(Laemmli, N. K., "Nature", 283 : pp.2
49-256, 1970)を用いて、HeLa細胞のライセートの
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動を、以下の方法に従って行った。濃縮ゲル
の調製は次のように行った。蒸留水6.1ml、0.5
Mトリス(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0716)−
HCl(pH6.8)2.5ml、10%SDS(バイ
オ・ラッド,カタログ番号161-0301)100μl、及び
30%アクリルアミド(バイオ・ラッド,カタログ番号
161-0101)/N,N’−メチレンビスアクリルアミド
(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0201)1.3ml
を混合して、15分間脱気し、10%過硫酸アンモニウ
ム(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0700)50μl
及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミ
ン(以下、TEMEDと略称する)(バイオ・ラッド,
カタログ番号161-0800)10μlを加えて、濃縮ゲルを
調製した。また、分離ゲルの調製は次のように行った。
蒸留水4.045ml、1.5Mトリス−HCl(pH
8.8)2.5ml、10%SDS100μl、及び3
0%アクリルアミド/N,N’−メチレンビスアクリル
アミド3.3mlをゆっくり混合して、15分間アスピ
レータで脱気し、10%過硫酸アンモニウム50μl、
及びTEMED5μlを加えた。泳動バッファーとして
は、トリス9.0g、グリシン(バイオ・ラッド,カタ
ログ番号161-0717)43.2g、及びSDS3.0gに
蒸留水を加えて600mlにし、この溶液を蒸留水で5
倍希釈したものを用いた。サンプルバッファーは、蒸留
水2ml、2Mトリス−HCl(pH6.8)500μ
l、SDS0.32g、β−メルカプトエタノール80
0μl、及び0.05%(w/v)ブロモフェノールブ
ルー(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0404)400
μlを混合したものを用いた。
【0029】後述する実施例2に示す方法に基づいてH
eLa細胞を培養し、そのライセートを調製した。得ら
れたHeLa細胞ライセートのSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行った後、0.45μmニトロセル
ロース膜(Schleicher & Schuell,カタログ番号40119
6)にゲルを密着させ、タンパク質転写装置(Trans-Blo
t Electrophoretic Transfer Cell:バイオ・ラッド)
を用いて、室温にて100Vで、3時間ブロッティング
を行った。ブロッティングバッファーとしては0.02
5Mトリス及び0.192MグリシンよりなりpH8.
5に調整されたトリスグリシンバッファー(Tris Gly R
unning and Blotting Buffer ; Enprotech,米国マサチ
ューセッツ州,カタログ番号SA100034)にメチルアルコ
ールを20%になるように加えて調製したバッファーを
用いた。ブロッティング後、5%スキムミルク(雪印乳
業)を含むPBS(−)溶液にニトロセルロース膜を室
温にて30分間浸し、ブロッキングを行った。ブロッキ
ング後、スクリーナーブロッター(サンプラテック)を
用いて、前項(1)で取得したルーラット血清を1次抗
体として、1次抗体反応を行った。1次抗体反応は、2
%スキムミルク(雪印乳業)を含むPBS(−)にて1
0倍希釈した前記ルーラット血清200μlで、室温に
て120分間行った。1次抗体反応終了後、スロー・ロ
ッキング・シェイカーを用いて、PBS(−)で5分間
の振盪を2回、0.1%Tween20(バイオ・ラッ
ド,カタログ番号170-6531)を含むPBS(−)溶液で
15分間の振盪を4回、更にPBS(−)で5分間の振
盪を2回行うことにより、ニトロセルロース膜を洗浄し
た。洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットI
gG抗体(Southern Biotechnology,カタログ番号3030
-05)を、2%スキムミルクを含むPBS(−)溶液で5
000倍に希釈した溶液5mlを用いて、2次抗体反応
を2時間行った。反応終了後、PBS(−)溶液、及び
0.1%Tween20を含むPBS(−)溶液で、1
次抗体反応後の洗浄と同じ条件下にてニトロセルロース
膜の洗浄を行った。余分なPBS(−)溶液を除去した
後、ウェスタンブロッティング検出試薬(ECL Western
blotting detection reagent;アマーシャム,カタログ
番号RPN2106)をニトロセルロース膜上に振りかけ、1分
間室温にて静置した後、余分な検出試薬を除去し、ニト
ロセルロース膜をラップに包み、反応面をX線フィルム
(コダック X-OMAT, AR カタログ番号165 1454)に密着
させて露光させた。現像後、HSP47に相当する分子
量47キロダルトン付近のバンドを測定することによっ
て、抗HSP47ポリクローナル抗体の反応性の検討を
行った。抗体価の上昇が確認された血清を、抗ヒトHS
P47ポリクローナル抗体として、以下の実施例に用い
た。
【0030】実施例2:ヒト培養癌細胞のHSP発現量
の測定 (1)ヒト培養癌細胞の培養 ヒト培養子宮癌細胞株HeLa S3(ATCC CC
L 2.2)を、5%二酸化炭素条件下で、熱ショック
処理時以外は、37℃で、10%非働化ウシ胎児血清
(FBS)を含むMEM培地にて培養した。
【0031】(2)ペオニフロリン処理及び熱ショック
処理 播種2日後の培養ヒト子宮癌細胞株HeLa S3の培
地中に、最終濃度100μMになるようにペオニフロリ
ン(松浦薬業製、キシダ化学販売、キシダ化学カタログ
番号378-60093)を添加し、24時間培養した。その後、
45℃にて15分間熱ショック処理をしてから、37℃
にて終夜培養した。対照試験は、ペオニフロリンを添加
しないこと以外は前記と同様に実施した。
【0032】(3)ヒト培養癌細胞でのHSP発現量の
測定 前項(2)で処理した細胞を、以下に示す方法によりホ
モジナイズし、HSP発現量をウェスタンブロット法に
て測定した。すなわち、前項(2)で処理した細胞をP
BS(−)で洗浄した後、ライシスバッファー(lys
is buffer)〔1.0%NP−40、0.15
M塩化ナトリウム、50mMトリス−HCl(pH8.
0)、5mM−EDTA、2mM−N−エチルマレイミ
ド、2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、2μ
g/mlロイペプチン及び2μg/mlペプスタチン〕
1mlを加え、氷上で20分間静置した。その後、4℃
で12000rpmにて、20分間、遠心を行った。遠
心後の上清10μlをPBS(−)790μlに加え、
更にプロテインアッセイ染色液(Dye Reagent Concentr
ate : バイオラッド,カタログ番号500-0006)200μ
lを加えた。5分間、室温にて静置した後、595nm
で吸光度を測定してタンパク質定量を行った。タンパク
質定量を行った試料を用いて、Laemmliのバッフ
ァー系にて、等量のタンパク質を含むライセートのSD
Sポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。電気泳動
後、実施例1で述べた方法に従って、ブロッティング及
びそれに続くブロッキングを行った。すなわち、タンパ
ク質転写装置(Trans-Blot Electrophoretic Transfer
Cell:バイオ・ラッド)を用いて、室温にて100Vに
て、0.45μmニトロセルロース膜(Schleicher & S
chuell,カタログ番号401196)にゲルを密着させ、3時
間ブロッティングを行った。ブロッティングバッファー
としては、前記実施例1(3)で用いたバッファーと同
じものを用いた。ブロッティング後、ニトロセルロース
膜を10%スキムミルク(雪印乳業)−PBS(−)溶
液に室温にて30分間、インキュベートし非特異的結合
をブロックした。
【0033】ブロッキング後、スクリーナーブロッター
(サンプラテック)を用いて、ニトロセルロース膜の上
で、実施例1にて製造した抗ヒトHSP47ラットポリ
クローナル抗体により、1次抗体反応を行った。その
後、PBS(−)で5分間ずつ、溶液を取り替えて2回
の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーによって行
い、更にPBS(−)−0.1%Tween20(バイ
オ・ラッド,カタログ番号170-6531)溶液で15分間ず
つ、溶液を取り替えて4回の洗浄を行った。最終的に、
PBS(−)で5分間ずつ、2回の洗浄を行った。洗浄
終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体
(Southern Biotechnology,カタログ番号3030-05)を、
2%スキムミルクを含むPBS(−)溶液で5000倍
に希釈して調製した抗体溶液5mlを用いて、2時間、
2次抗体反応を行った。反応終了後、ニトロセルロース
膜に関して、PBS(−)溶液で5分間ずつ溶液を変え
て2回、更にPBS(−)−0.1%Tween20溶
液で15分間ずつ溶液を変えて5回の洗浄をスロー・ロ
ッキング・シェイカーにより行った。最後にPBS
(−)溶液で5分間ずつ2回の洗浄を行った。余分なP
BS(−)溶液を除去した後、ウェスタンブロッティン
グ検出試薬(ECL Westernblotting detection reagen
t;Amersham,カタログ番号RPN2106)をニトロセルロー
ス膜上に振りかけ、1分間インキュベートした後、余分
な検出試薬を除去し、ニトロセルロース膜をラップに包
み、反応面をX線フィルム(コダック X-OMAT,AR,カタ
ログ番号165 1454)に密着させて露光し、現像してHS
P47の有無の検討を行った。その結果によれば、ペオ
ニフロリンは子宮癌細胞株HeLa S3においてHS
P47の発現を抑制した。すなわち、ペオニフロリン
は、HSP47の発現を抑制するHSP47合成抑制剤
の活性を有するものと結論づけられ、この事実は、ペオ
ニフロリンが細胞外マトリックス産生の亢進に抑制的に
働くことを示している。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のHSP4
7合成抑制剤は、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性
腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や
熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性
瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞
外マトリックス産生の亢進の病態を示す病気に罹患した
細胞にみられるコラーゲン合成亢進を改善する作用を有
する。従って、本発明によるHSP47合成抑制剤を投
与することにより、臓器、組織の線維化、硬化が阻止さ
れ、その結果、前記病気の患者の生理学的状態を有効に
改善させ、前記病気を効果的に治療することができる。
また、本発明のHSP47合成抑制剤は、血管新生の異
常増殖を伴う各種疾患の予防治療にも有用である。更
に、I型コラーゲンとフィブロネクチンを基本骨格とす
る間質が、癌の転移において離脱した癌細胞が近傍の脈
管に侵入するまでのガイド役を果たすことが、明らかと
なっているので、本発明のHSP47合成抑制剤を投与
することにより、癌の転移を抑制することも可能であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 17/02 A61K 31/00 617C 25/06 626A 35/04 635B 43/00 643B A61K 35/78 643D 35/78 C // C07H 17/04 F C07H 17/04 (56)参考文献 特開 平7−258104(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 31/70 A61K 35/78 C07H 17/04 CAPLUS(STN) JICSTファイル(JOIS) MEDLINE(STN) REGISTRY(STN)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ペオニフロリン、あるいは、オキシペオ
    ニフロリン、ベンゾイルペオニフロリン、ベンゾイルオ
    キシペオニフロリン、アルビフロリン、ガロイルペオニ
    フロリン、ペオニフロリンテトラアセテート、ペオニフ
    ロリンペンタアセテート、デスベンゾイルペオニフロリ
    ン、ペオニフロリンテトラアセテートトシレート、ペオ
    ニフロリンモノベンゾエートトリアセテート、及びペオ
    ニフロリンモノベンゾエートからなる群から選んだペオ
    ニフロリン誘導体を有効成分として含有することを特徴
    とする、分子量47キロダルトンの熱ショックタンパク
    質の合成抑制剤。
  2. 【請求項2】 ペオニフロリン含有植物の抽出物を有効
    成分として含有することを特徴とする、分子量47キロ
    ダルトンの熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
  3. 【請求項3】 芍薬の抽出物を有効成分として含有する
    ことを特徴とする、分子量47キロダルトンの熱ショッ
    クタンパク質の合成抑制剤。
  4. 【請求項4】 ペオニフロリン、あるいは、オキシペオ
    ニフロリン、ベンゾイルペオニフロリン、ベンゾイルオ
    キシペオニフロリン、アルビフロリン、ガロイルペオニ
    フロリン、ペオニフロリンテトラアセテート、ペオニフ
    ロリンペンタアセテート、デスベンゾイルペオニフロリ
    ン、ペオニフロリンテトラアセテートトシレート、ペオ
    ニフロリンモノベンゾエートトリアセテート、及びペオ
    ニフロリンモノベンゾエートからなる群から選んだペオ
    ニフロリン誘導体を有効成分として含有することを特徴
    とする、細胞外マトリックス産生の亢進の病態を示す病
    気の治療剤。
  5. 【請求項5】 ペオニフロリン含有植物の抽出物を有効
    成分として含有することを特徴とする、細胞外マトリッ
    クス産生の亢進の病態を示す病気の治療剤。
  6. 【請求項6】 芍薬の抽出物を有効成分として含有する
    ことを特徴とする、細胞外マトリックス産生の亢進の病
    態を示す病気の治療剤。
  7. 【請求項7】 細胞外マトリックス産生の亢進の病態を
    示す病気が肝硬変、間質性肺疾患、又は慢性腎不全であ
    る、請求項4〜6のいずれか一項に記載の治療剤。
  8. 【請求項8】 ペオニフロリン、あるいは、オキシペオ
    ニフロリン、ベンゾイルペオニフロリン、ベンゾイルオ
    キシペオニフロリン、アルビフロリン、ガロイルペオニ
    フロリン、ペオニフロリンテトラアセテート、ペオニフ
    ロリンペンタアセテート、デスベンゾイルペオニフロリ
    ン、ペオニフロリンテトラアセテートトシレート、ペオ
    ニフロリンモノベンゾエートトリアセテート、及びペオ
    ニフロリンモノベンゾエートからなる群から選んだペオ
    ニフロリン誘導体を有効成分として含有することを特徴
    とする、癌転移の抑制剤。
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