JPH08301781A - Hsp47合成抑制剤 - Google Patents

Hsp47合成抑制剤

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JPH08301781A
JPH08301781A JP7136027A JP13602795A JPH08301781A JP H08301781 A JPH08301781 A JP H08301781A JP 7136027 A JP7136027 A JP 7136027A JP 13602795 A JP13602795 A JP 13602795A JP H08301781 A JPH08301781 A JP H08301781A
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malt
extract
malt extract
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collagen
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JP7136027A
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Yoichi Shobu
洋一 清輔
Toshimi Shiragami
俊美 白神
Masayoshi Morino
眞嘉 森野
Chikao Yoshikumi
親雄 吉汲
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Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 分子量47キロダルトンの熱ショックタンパ
ク質の合成抑制剤を提供する。 【構成】 麦芽抽出物を有効成分として含有する。 【効果】 コラーゲン合成を抑制するので、細胞外マト
リックス産生の亢進の病態を示す病気を治療することが
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、麦芽抽出物を有効成分
として含有する、分子量47キロダルトンの熱ショック
タンパク質(以下、HSP47と称する)の合成抑制剤
に関する。本発明のHSP47合成抑制剤は、特に、臓
器内のコラーゲンの合成を抑制することにより肝硬変、
間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾
患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じ
るケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節
リウマチなどの細胞外マトリックス(細胞外基質)産生
亢進の病態を示す病気の患者の生理学的状態を有効に改
善させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性
腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通
事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動
脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリックス産
生亢進の病態を示す病気を効果的に治療することができ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、コラーゲンなどの細胞外マトリッ
クスの産生の亢進の病態を示す病気が大きな問題となっ
ている。ここでいう細胞外マトリックス産生の亢進の病
態を示す病気とは、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢
性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕
や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚
性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどを含
む。
【0003】例えば、死亡者がわが国だけでも年間約2
万人にものぼるといわれている肝硬変は、肝臓が結合組
織の増殖のため固くなる病気の総称で、種々の慢性肝疾
患の終末像であるといわれ、肝全体にわたるびまん性の
肝線維症である。すなわち、肝炎などの肝傷害が長期に
及ぶ慢性肝炎においては、線維芽細胞や伊東細胞などの
細胞外マトリックス(とくにI型コラーゲン)産生の著
しい亢進を伴い肝臓は線維化する。肝の線維化が慢性的
に進行すると、ますます正常な肝再生は妨害され、肝細
胞に置き換わり、線維芽細胞とI型コラーゲンを主体と
する細胞外マトリックスが肝組織のかなりの部分を占
め、多くの凝小葉からなる肝硬変に至る。肝硬変の進行
に伴い、線維隔壁が肝全体に進展し、その結果生じる血
流の異常は、肝実質細胞の変性をさらに押し進める一因
にもなり、肝硬変における悪循環が続くことになり、さ
らにはアルコール、ウイルス、自己免疫等種々の原因に
よって、肝臓中に多量の膠質線維が生成され、肝細胞の
壊死と機能消失とが生じ、肝硬変患者は遂には死に至
る。I型コラーゲンは正常肝では全タンパク質量の約2
%を占めるが、肝硬変となると10〜30%を占めるよ
うになる。
【0004】また、間質性肺疾患は、肺胞及び肺胞管の
みならず、しばしば呼吸細気管支や終末気管支も巻き込
む下部気道の慢性炎症(肺胞炎 alveolitis )とその結
果である間質の線維化と肺胞内線維化を特徴とする疾患
群である。ここでいう間質性肺疾患とは、例えば、間質
性肺炎、肺線維症などのびまん性間質性肺疾患、特発性
肺線維症、透過性肺水腫、膠原病肺、サルコイドーシス
等を含む。間質性肺疾患においては、線維化組織では細
胞外マトリックスの過剰な産生と蓄積が認められてい
る。すなわち、間質性肺疾患の肺線維化組織では、肥大
した間質に著明なI型及びIII 型コラーゲンの集積がみ
られており、とくにIII 型コラーゲンは、線維化の早期
に肥厚した肺胞中隔に集積し、病期が進行し、後期には
I型コラーゲンが増加し、主要なコラーゲンとなる。基
底膜は早期に破壊されており、肺胞腔側へのコラーゲン
線維の侵入が観察される。
【0005】また、慢性腎不全とは慢性腎炎症候群の結
果、腎機能の荒廃により体内の恒常性が維持できなくな
った状態である。慢性腎不全の進行を病理学的にみると
糸球体硬化と間質線維化の進行である。糸球体硬化症
は、メサンギウム領域を中心とした細胞外マトリックス
の増生である。メサンギウム硬化症の成分は正常と比較
し、著明にIV型コラーゲンなどの糸球体基底膜の成分が
増加し、また間質成分であるI型コラーゲンも硬化症部
位に一致して増生している。すなわち、慢性に経過する
糸球体硬化に対しては、細胞外マトリックスの産生亢進
が大きな要因である。ここで慢性腎不全に陥いる疾患と
は、例えばIgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性
腎炎、糖尿病性腎症、慢性間質性腎炎、慢性糸球体腎炎
などを含む。その他、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、強皮
症、動脈硬化等の細胞外マトリックス産生亢進の病態を
示す病気は、何らかの原因によりコラーゲン合成の異常
亢進が起こり、線維化が進んで組織の硬化変化を生ずる
ことが主要な成因と考えられている。
【0006】また、血管新生においても基底膜及び基底
膜中のコラーゲン合成が、重要な役割をはたすことが指
摘されている(Maragoudakis, E., Sarmonika, M., and
Panoutsacopoulous, M., "J. Pharmacol. Exp. The
r.", 244: 729, 1988; Ingber,D. E., Madri, J. A., a
nd Folkman, J., "Endocrinology", 119: 1768, 1986
)。血管新生による疾患としては、例えば、糖尿病性
網膜症、後水晶体線維増殖症、角膜移植に伴う血管新
生、緑内症、眼腫瘍、トラコーマ、幹せん、化膿性肉芽
腫、血管腫、線維性血管腫、肥大性はん痕、肉芽、リュ
ーマチ性関節炎、浮腫性硬化症、アテローム性動脈硬化
症、各種腫瘍などが知られている。このようにコラーゲ
ンなどの細胞外マトリックスの産生の亢進の病態を示す
病気が大きな問題となっているにもかかわらず、従来で
は副作用や薬理効果等の種々の面で満足すべき細胞外マ
トリックス合成抑制剤(例えば、コラーゲン合成抑制
剤)は未だ開発されていなかったのである。
【0007】一方、熱ショックタンパク質(heat shock
protein;HSP、ストレスタンパク質ともいう)は、
細胞に何らかのストレス、例えば熱、薬剤、放射線等を
加えることにより細胞に発現されるタンパク質である。
HSPは、その種類は多種多様であるが、分子量の大き
さから90ファミリー、70ファミリー、60ファミリ
ー、低分子ファミリーの4ファミリーに大別することが
できる。ストレスへの応答に加えて、これらのタンパク
質のいくつかは構成的に合成され、正常な環境のもと、
タンパク質のフォールディング、アンフォールディン
グ、タンパク質サブユニットの会合、タンパク質の膜輸
送のような、必須の生理的な役割を演じていることが示
されている。熱ショックタンパク質としてのこれらの機
能は、分子シャペロンと称される。
【0008】HSP47は、永田等によって1986年
に発見されたタンパク質で、分子量47キロダルトンの
塩基性タンパク質(pI=9.0)である。HSP47
の発現が増大するにつれて、コラーゲンの合成も増加す
ることが様々な細胞で示されている("J. Biol. Che
m.", 261: 7531, 1986; "Eur. J. Biochem.", 206: 32
3,1992; "J. Biol. Chem.", 265: 992, 1990; "J. Cli
n. Invest.", 94: 2481, 1994)。すなわち、HSP47
は、細胞内で小胞体内でのプロコラーゲンのプロセシン
グ、三重鎖ヘリックス形成、あるいは小胞体からゴルジ
装置へのプロコラーゲン輸送・分泌という局面で、コラ
ーゲンの特異的分子シャペロンとして機能しているとさ
れているので、増大したHSP47発現は、細胞外マト
リックスにおけるコラーゲン分子の蓄積を刺激する。こ
のようにコラーゲン結合熱ショックタンパク質であるH
SP47は、発現と同様に機能においても、細胞外マト
リックスタンパク質であるコラーゲンに密接に関連した
熱ショックタンパク質である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事
情に鑑み、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢
性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交
通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、
動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリックス
産生亢進の病態を示す病気の患者の生理学的状態を有効
に改善させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は
慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、
交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮
症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリッ
クス産生亢進の病態を示す病気を効果的に治療すること
のできる、細胞外マトリックス合成抑制剤を提供するた
めに、種々検討を重ねてきた。
【0010】上記したように、肝硬変、間質性肺疾患、
慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢
痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥
厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの
線維症は臓器内の細胞外マトリックスの著しく増加した
病態が主病変と理解されている。肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後
の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイド
や肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチな
どの細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病気に伴
う線維化は、コラーゲン生合成増加やコラーゲン分解能
の低下により生ずると考えられている。例えば、肝の線
維化において、I型、III 型、IV型コラーゲンの合成活
性化が起こるが、特に主要成分であるI型コラーゲンの
合成活性化が重要な意味をもつ。
【0011】こうした状況下で、本発明者らは、意外に
も、麦芽抽出物が、病態を示す組織の細胞におけるHS
P47の合成を特異的に抑制することを見出した。すな
わち、麦芽抽出物を投与することにより、細胞内でのH
SP47合成を抑制し、臓器内でのコラーゲン合成を抑
制し、ひいては肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又
は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢
痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強
皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリ
ックス産生亢進の病態を示す病気の治療が可能であるこ
とを見出したのである。本発明はこうした知見に基づく
ものであり、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は
慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、
交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮
症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリッ
クス産生の亢進の病態を示す病気を効果的に治療するこ
とができるHSP47の合成抑制剤であって、細胞内で
のコラーゲンの成熟及び輸送過程に重要な役割を果たし
ているコラーゲン特異的な分子シャペロンであるHSP
47の合成抑制剤を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、麦芽
抽出物を有効成分として含有することを特徴とする、H
SP47の合成抑制剤に関する。
【0013】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明のHSP47合成抑制剤の有効成分として含有され
る麦芽抽出物は、特に限定されず、例えば、市販の麦芽
抽出物(MALT EXTRACT)をそのまま、ある
いは好ましくは市販の麦芽抽出物(MALT EXTR
ACT)を透析等の手段により低分子画分を除去したも
のを用いることができる。
【0014】また、麦芽を糖化した後、濾別し、濾過残
渣を水又は親水性溶媒で抽出し、抽出液から低分子画分
を除去して得られる麦芽抽出物を用いることが好まし
い。この場合、水又は親水性溶媒がアルカリ水溶液又は
アルカリ性親水性溶媒であり、そのアルカリ水溶液又は
アルカリ性親水性溶媒によって抽出して得られた抽出液
を中和して沈殿する物質を除去し、得られる上清から低
分子画分を除去して得られる麦芽抽出物を用いることが
より好ましい。また、水又は親水性溶媒で抽出した後、
得られた抽出液をpH3〜5に調整し、沈澱するタンパ
ク質を除去し、得られた上清を中和して沈殿する物質を
さらに除去し、得られる上清から低分子画分を除去して
得られる麦芽抽出物を用いることが更に好ましい。ま
た、アルカリ水溶液又はアルカリ性親水性溶媒によって
抽出した後、得られた抽出液をpH3〜5に調整し、沈
澱するタンパク質を除去し、得られた上清を中和して沈
殿する物質をさらに除去し、得られる上清から低分子画
分を除去して得られる麦芽抽出物を用いることが特に好
ましい。
【0015】特には、麦芽を糖化した後に濾過し、麦芽
糖化物濾過残渣を水又は親水性溶媒で抽出し、抽出液か
ら低分子画分を除去して得られる麦芽由来の生理活性物
質であって、(i)分子量約10000以上であり、
(ii)赤外線吸収スペクトルで3600〜3200cm
-1及び1700〜1600cm-1に吸収があり、(ii
i)プロトン核磁気共鳴スペクトルで、0.5〜6.0
ppm及び6.0〜8.5ppmにピークがあり、(i
v)紫外線吸収スペクトルで、200〜250nm及び
250〜350nmに吸収があり、(v)フェノール硫
酸呈色反応が陽性であり、(vi)銅フォーリン呈色反応
が陽性である、麦芽由来の生理活性物質(以下、麦芽由
来生理活性物質と称する)を用いることが好ましい。
【0016】本発明では、前記の麦芽抽出物を調製する
ための麦芽(malt)として、例えば、イネ科の穀類
種子を発芽させてつくったものを用いることができ、こ
れらの種子には、例えば、大麦、小麦、ライ麦、エン
麦、ハダカ麦、トウモロコシ等がある。これらの麦芽を
そのまま、あるいは粉砕し、さらに必要な場合には澱粉
を加え、温水を加え、糖化を行う。こうして得られた麦
芽糖化物を濾過する。ここで得られる麦芽糖化物濾液
は、一般に麦汁としてビール原料に利用されている。ま
た、もう一方の麦芽糖化物濾過残渣は、従来から家畜飼
料として用いられていたが、本発明ではこの麦芽糖化物
濾過残渣を、麦芽抽出物の原料として用いることができ
る。
【0017】続いて、前記の麦芽糖化物濾過残渣を、常
温若しくは加熱された水、又は常温若しくは加熱された
親水性溶媒で抽出し、抽出物を得ることができる。抽出
用の親水性溶媒としては、親水性有機溶媒、例えば、低
級アルコール(例えば、メチルアルコール若しくはエチ
ルアルコール)又はケトン類(例えば、アセトン)を用
いることができ、更に前記の親水性有機溶媒と水との混
合液を用いてもよい。抽出は、例えば、乾燥又は湿潤の
麦芽糖化物濾過残渣100重量部に対し、水、温熱アル
カリ水溶液又は親水性溶媒10〜1,000,000重
量部を加え、数時間〜1昼夜程度実施するのが好まし
い。この際、攪拌処理又は超音波処理を行ったり、ある
いは界面活性剤を添加して、抽出効果を高めることがで
きる。
【0018】また、前記の抽出用の水又は親水性溶媒が
pH10〜14のアルカリ水溶液であり、前記の抽出液
を中和(例えば、pH6.5〜7.5)して、生ずる沈
殿を除くことが好ましい。例えば、0.45〜0.55
N水酸化ナトリウム水溶液で抽出すると、麦芽糖化物濾
過残渣の品質を変えることなく、抽出効率を高め、しか
も得られる抽出物の水に対する溶解性を高めることがで
きる。また、水又は親水性溶媒で抽出した後に、得られ
る抽出液を、無機酸(例えば、塩酸)又は有機酸(例え
ば、シュウ酸)によって酸性(例えば、pH3〜5)に
してタンパク質を沈殿させて除去してから、得られる上
清を前記と同様に中和して生じる沈殿物をさらに除去し
てもよい。
【0019】前記の抽出工程により、あるいは場合によ
り、更に前記の中和処理及び/又は前記の酸性化・中和
処理(酸性化処理に続く中和処理)を行った後に、得ら
れる抽出物をそのまま本発明による合成抑制剤の有効成
分として用いることもできるが、得られた抽出物から、
例えば、透析、塩析、限外濾過、逆浸透処理、ゲル濾
過、有機溶媒による沈殿処理等の手段により、低分子画
分を除去して得られた生成物を用いることが好ましい。
特に、分子量10,000未満の画分を除去することが
好ましい。得られた麦芽抽出物は、そのまま使用しても
よいし、さらに濃縮して使用してもよい。また、これを
凍結乾燥、又は噴霧乾燥等粉末化して使用してもよい。
【0020】本発明のHSP47合成抑制剤は、前記の
麦芽抽出物を、それ単独で、又は好ましくは製剤学的に
許容することのできる通常の担体と共に投与することが
できる。投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、
散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エ
マルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等
の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所
投与のクリーム若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げる
ことができる。
【0021】これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、ア
ルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳
糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロー
ス、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロ
ース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タル
ク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコー
ル、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸などの賦形剤、結
合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希
釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿
剤、防腐剤、酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造
することができる。例えば、麦芽抽出物(特には前記の
麦芽由来生理活性物質)1重量部と乳糖99重量部とを
混合して充填したカプセル剤などである。
【0022】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、直腸投与等が例示される。これらのなかで、
注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の調製
においては、有効成分としての麦芽抽出物の他に、例え
ば、生理食塩水、滅菌水リンゲル液等の水溶性溶剤、植
物油、脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖、塩
化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防
腐剤、懸濁化剤、乳化剤等を任意に用いることができ
る。具体的に一例を示すと、麦芽抽出物(特には前記の
麦芽由来生理活性物質)10mgとマンニトール50m
gとを蒸留水に溶解して10mlとし、常法で除菌した
後、2mlづつを注射用小瓶に分注し、又はそのまま凍
結乾燥して注射剤とする。使用に際して、生理食塩水で
希釈して注射液とする。また、本発明のHSP47合成
抑制剤は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手
法を用いて投与してもよい。例えば、本発明のHSP4
7合成抑制剤をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレット
に取り込ませて、このペレットを治療すべき組織中に外
科的に移植することができる。
【0023】本発明のHSP47合成抑制剤は、これに
限定されるものではないが、麦芽抽出物(特には前記の
麦芽由来生理活性物質)を0.01〜99重量%、好ま
しくは0.1〜80重量%の量で含有することができ
る。本発明のHSP47合成抑制剤を用いる場合の投与
量は、病気の種類、患者の年齢、症状の程度、投与方法
などにより異なり、特に制限はないが、麦芽抽出物(特
には前記の麦芽由来生理活性物質)量として通常成人1
人当り1mg〜10g程度を、1日1〜4回程度にわけ
て、経口的に又は非経口的に投与する。さらに、用途も
医薬品に限定されるものではなく、種々の用途、例え
ば、機能性食品や健康食品として飲食物等の形で与える
ことも可能である。本発明のHSP47合成抑制剤は、
マウスを用いる経口投与法によって急性毒性試験を行な
ったが、毒性は全く認められなかった。
【0024】
【作用】上記したように、本発明のHSP47合成抑制
剤に含有される麦芽抽出物は、細胞内のHSP47合成
を特異的に抑制する作用があるので、前記麦芽抽出物を
投与すると細胞内でのHSP47生合成が特異的に減少
し、コラーゲンの生合成が抑制される。その結果、細胞
外マトリックス産生も抑制されることになる。従って、
前記麦芽抽出物は、コラーゲンの増加を伴う細胞外マト
リックス産生亢進の病態を示す病気、例えば肝硬変、間
質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾
患)、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又
は関節リウマチなどの予防及び治療に使用することがで
きる。すなわち、本発明のHSP47合成抑制剤は、コ
ラーゲン特異的シャペロンであるHSP47の合成を抑
制することによりコラーゲンの合成を抑制する。
【0025】また、前記のように、血管新生において
も、基底膜及び基底膜中のコラーゲン合成が重要な役割
をはたすことが指摘されているので、本発明のHSP4
7合成抑制剤は、血管新生の異常増殖に基づく多くの疾
患の予防治療薬として極めて有用であり、先に述べたよ
うな各疾患、すなわち糖尿病性網膜症、後水晶体線維増
殖症、角膜移植に伴う血管新生、緑内症、眼腫瘍、トラ
コーマ、乾せん、化膿性肉芽腫、血管腫、線維性血管
腫、肥大性はん痕、肉芽、リューマチ性関節炎、浮腫性
硬化症、アテローム性動脈硬化症及び各種腫瘍などに用
いることができる。さらに、I型コラーゲンとフィブロ
ネクチンを基本骨格とする間質(interstitial stroma
)が癌の転移において、離脱した癌細胞が近傍の脈管
に侵入するまでのガイド役を果たすことが、明らかとな
っているので〔"BIOTHERAPY", 7 (8): 1181, 1993 〕、
本発明のHSP47合成抑制剤を投与することにより、
癌の転移を抑制することも可能である。
【0026】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:麦芽抽出物の調製 本発明のHSP47合成抑制剤の有効成分として含有さ
れる麦芽抽出物は、特公平7−20988号公報の実施
例1に記載されている方法に従って調製した。すなわ
ち、大麦10kgを発芽させ、でんぷんを加え、糖化
し、濾過後乾燥した。得られた糖化残渣の一部100g
を、0.5N水酸化ナトリウム水溶液4リットルに入
れ、沸騰水溶液中で3時間抽出し、1N塩酸でpH4.
0にし、24時間静置した後、6,000rpmで30
分間遠心分離を行い、沈殿を除去した。得られた上清を
1N水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和し、再
び6,000rpmで30分間遠心分離を行い、得られ
た上清を減圧濃縮した後、透析用セルロースチューブ
(三光純薬、カタログ番号UC36−32−1000)
を用いて流水透析を行なったところ、分子量10,00
0未満の低分子化合物が除去されていた。得られた濃縮
溶液を凍結乾燥し、麦芽抽出物の乾燥物23gを得た。
【0027】前記の麦芽抽出物の乾燥物の、GPC−L
alls法により測定した重量平均分子量は、209,
000であった。この麦芽抽出物の乾燥物のゲルクロマ
トグラフ〔充填剤:セルロファインGLC−2000−
Cカラム:直径2.5cm×高さ45cm、分取3ml
/1フラクション、検出方法:フェノール硫酸呈色(4
90nm)、試料:30mg/3mlで注入〕を図1に
示す。このグラフから、分子量10,000以下のもの
が除去されていることが確認された。また、KBr錠剤
法により、日本分光A202型で前記麦芽抽出物の乾燥
物の赤外線スペクトルを測定した結果を図2に示す。3
600〜3200cm-1及び1700〜1600cm-1
に吸収が確認された。更に、3−(トリメチルシリル)
−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(DSS)を内部
標準物質として、JEOL JMN−GSX500型ス
ペクトロメーターを用いて、500MHzで前記麦芽抽
出物の乾燥物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し
た結果を、図3に示す。0.5〜6.0ppmと6.0
〜8.5ppmとにピークが確認された。更に、前記麦
芽抽出物の乾燥物の水溶液を、多目的記録用スペクトロ
メーター(島津Multipurpose Recor
ding spectrophotometer MP
S−2000)を用いて、紫外線可視吸光スペクトルを
測定した結果を、図4に示す。200〜250nm及び
250〜350nmに吸収が認められた。また、前記麦
芽抽出物の乾燥物のフェノール硫酸呈色反応は、陽性で
あって、糖の存在を示した。更に、前記麦芽抽出物の乾
燥物の銅フォーリン呈色反応も、陽性であって、タンパ
ク質の存在を示した。
【0028】実施例2:抗HSP47ポリクローナル抗
体の作製 (1)抗HSP47ポリクローナル抗体の調製 ヒトHSP47のN末端から2〜16番目のアミノ酸配
列に対応するアミノ酸15個からなるペプチド〔以下、
ヒトHSP47ペプチド(2−16)と称する;ラット
のHSP47の相当する部分と共通アミノ酸配列を示
す〕を自動ペプチド合成装置(PSSM−8システム,
島津制作所)を用いて作製し、スクシニミジル4−(p
−マレイミドフェニル)ブチレート〔SMPB:Succin
imidyl 4-(p-maleimidophenyl)butyrate〕を架橋剤とし
て用い、常法("Biochemistry", 18: 690, 1979 )によ
りラクトグロブリンと結合させ、感作抗原を作製した。
この感作抗原150μgを含むリン酸緩衝生理食塩水
〔組成:KCl=0.2g/l,KH2 PO4 =0.2
g/l,NaCl=8g/l,Na2 HPO4 (無水)
=1.15g/l:以下PBS(−)と称する:コスモ
バイオ,カタログ番号320-01〕0.2mlと、等量のフ
ロイント完全アジュバント(ヤトロン,カタログ番号RM
606-1 )とを混和し、得られた混合液0.2mlを、ル
ーラット(6週齢,雌性:日本クレア)の皮下に投与
し、免疫した。同様の方法で第2次及び第3次免疫を繰
り返した後、アジュバント(Hunter's TiterMax ;CytR
x Corporation ,米国ジョージア州)を用いて6回免疫
感作を行った。感作動物より採血し、常法により血清を
分離して採取し、以下に示す酵素抗体法(ELISA
法)及びウェスタンブロット法によって血清中の抗体価
を測定した。
【0029】(2)酵素抗体法(ELISA法)による
抗HSP47ポリクローナル抗体特性の評価 前項(1)で調製したヒトHSP47ペプチド(2−1
6)をPBS(−)に溶解し、10μg/mlの濃度の
ペプチド溶液を調製し、リジットアセイプレート(ファ
ルコン,カタログ番号3910)の各ウェルに前記ペプチド
溶液を50μlずつ滴下した。最も外側のウェルにはP
BS(−)50μlのみを入れ、湿潤下で4℃にて一晩
放置した後、前記ペプチド溶液を捨て、PBS(−)を
用いて各ウェルを洗浄した後、1%ウシ血清アルブミン
(以下、BSAと略称する)を含むPBS(−)100
μlを各ウェルに入れ、室温下で1時間放置した。PB
S(−)で3回洗浄した後、前項(1)で取得したルー
ラット血清50μlを各ウェルに入れ、1時間室温にて
放置した。PBS(−)で3回洗浄した後、各ウェルに
2次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG5
0μlを入れ、室温下で1時間放置した。PBS(−)
で2回洗浄した後、過酸化水素水4μlを加えた0.1
Mクエン酸バッファー(pH4.5)10mlにo−フ
ェニレンジアミン(OPD)タブレット(シグマ,カタ
ログ番号P8287 )1個(10mg)を溶解して調製した
基質液100μlずつを各ウェルに滴下し、室温にて遮
光下で30分間放置した後、各ウェルの492nmの吸
光度をマイクロプレートリーダー(東ソー,MPR−A
4i型)にて測定した。抗体価の上昇が確認された血清
を抗ヒトHSP47ポリクローナル抗体として以下の実
施例に用いた。
【0030】(3)ウェスタンブロット法による抗HS
P47ポリクローナル抗体特性の評価 Laemmliのバッファー系(Laemmli, N. K., "Nat
ure", 283 : pp.249-256, 1970)を用いて、HeLa細
胞のライセートのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を、以下の方法に従って
行った。濃縮ゲルの調製は次のように行った。蒸留水
6.1ml、0.5Mトリス(バイオ・ラッド,カタロ
グ番号161-0716)−HCl(pH6.8)2.5ml、
10%SDS(バイオ・ラッド,カタログ番号161-030
1)100μl、及び30%アクリルアミド(バイオ・
ラッド,カタログ番号161-0101)/N,N’−メチレン
ビスアクリルアミド(バイオ・ラッド,カタログ番号16
1-0201)1.3mlを混合して、15分間脱気し、10
%過硫酸アンモニウム(バイオ・ラッド,カタログ番号
161-0700)50μl及びN,N,N’,N’−テトラメ
チルエチレンジアミン(以下、TEMEDと略称する)
(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0800)10μlを
加えて、濃縮ゲルを調製した。
【0031】また、分離ゲルの調製は次のように行っ
た。蒸留水4.045ml、1.5Mトリス−HCl
(pH8.8)2.5ml、10%SDS100μl、
及び30%アクリルアミド/N,N’−メチレンビスア
クリルアミド3.3mlをゆっくり混合して、15分間
アスピレータで脱気し、10%過硫酸アンモニウム50
μl、及びTEMED5μlを加えた。
【0032】泳動バッファーとしては、トリス9.0
g、グリシン(バイオ・ラッド,カタログ番号161-071
7)43.2g、及びSDS3.0gに蒸留水を加えて
600mlにし、この溶液を蒸留水で5倍希釈したもの
を用いた。サンプルバッファーは、蒸留水2ml、2M
トリス−HCl(pH6.8)500μl、SDS0.
32g、β−メルカプトエタノール800μl、及び
0.05%(w/v)ブロモフェノールブルー(バイオ
・ラッド,カタログ番号161-0404)400μlを混合し
たものを用いた。
【0033】後述する実施例3に示す方法に基づいてH
eLa細胞を培養し、そのライセートを調製した。得ら
れたHeLa細胞ライセートのSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動を行った後、0.45μmニトロセル
ロース膜(Schleicher & Schuell,カタログ番号40119
6)にゲルを密着させ、タンパク質転写装置(Trans-Blo
t Electrophoretic Transfer Cell:バイオ・ラッド)
を用いて、室温にて100Vで、3時間ブロッティング
を行った。ブロッティングバッファーとしては0.02
5Mトリス及び0.192MグリシンよりなりpH8.
5に調整されたトリスグリシンバッファー(Tris Gly R
unning and Blotting Buffer;Enprotech,米国マサチ
ューセッツ州,カタログ番号SA100034)にメタノールを
20%になるように加えて調製したバッファーを用い
た。
【0034】ブロッティング後、5%スキムミルク(雪
印乳業)を含むPBS(−)溶液にニトロセルロース膜
を室温にて30分間浸し、ブロッキングを行った。ブロ
ッキング後、スクリーナーブロッター(サンプラテッ
ク)を用いて、前項(1)で取得したルーラット血清を
1次抗体として、1次抗体反応を行った。1次抗体反応
は、2%スキムミルク(雪印乳業)を含むPBS(−)
にて10倍希釈した前記ルーラット血清200μlで、
室温にて120分間行った。1次抗体反応終了後、スロ
ー・ロッキング・シェイカーを用いて、PBS(−)で
5分間の振盪を2回、0.1%Tween20(バイオ
・ラッド,カタログ番号170-6531)を含むPBS(−)
溶液で15分間の振盪を4回、更にPBS(−)で5分
間の振盪を2回行うことにより、ニトロセルロース膜を
洗浄した。
【0035】洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗
ラットIgG抗体(Southern Biotechnology,カタログ
番号3030-05 )を、2%スキムミルクを含むPBS
(−)溶液で5000倍に希釈した溶液5mlを用い
て、2次抗体反応を2時間行った。反応終了後、PBS
(−)溶液、及び0.1%Tween20を含むPBS
(−)溶液で、1次抗体反応後の洗浄と同じ条件下にて
ニトロセルロース膜の洗浄を行った。余分なPBS
(−)溶液を除去した後、ウェスタンブロッティング検
出試薬(ECL Western blotting detection reagent;ア
マーシャム,カタログ番号RPN2106 )をニトロセルロー
ス膜上に振りかけ、1分間室温にて静置した後、余分な
検出試薬を除去し、ニトロセルロース膜をラップに包
み、反応面をX線フィルム(コダック X-OMAT, AR カタ
ログ番号165 1454)に密着させて露光させた。現像後、
HSP47に相当する分子量47キロダルトン付近のバ
ンドを測定することによって、抗HSP47ポリクロー
ナル抗体の反応性の検討を行った。抗体価の上昇が確認
された血清を、抗ヒトHSP47ポリクローナル抗体と
して、以下の実施例に用いた。
【0036】実施例3:ヒト培養癌細胞のHSP発現量
の測定 (1)ヒト培養癌細胞の培養 以下の各種ヒト培養癌細胞を、5%二酸化炭素条件下
で、熱ショック処理時以外は、37℃で培養した。肺癌
細胞株H69(ATCC HTB 119)及び胃癌細
胞株KATO III (ATCC HTB 103)は、
10%非働化ウシ胎児血清(以下、FBSと略称する)
を含むRPMI1640培地中で培養した。腎癌細胞株
ACHN(ATCC CRL 1611)及び子宮癌細
胞株HeLa S3(ATCC CCL 2.2)は、
10%非働化FBSを含むMEM培地にて培養した。神
経腫瘍細胞株(神経芽細胞腫)SK−N−MC(ATC
C HTB 10)は、非必須アミノ酸(L−アラニン
8.9mg/l、L−アスパラギン・H2 O15mg/
l、L−アスパラギン酸13.3mg/l、L−グルタ
ミン酸14.7mg/l、グリシン7.5mg/l、L
−プロリン11.5mg/l及びL−セリン10.5m
g/l)及び10%非働化FBSを含むMEM培地にて
培養した。
【0037】(2)麦芽抽出物処理及び熱ショック処理 播種2日後の前記各種ヒト培養癌細胞の培地中に、実施
例1で得られた麦芽抽出物を、最終濃度1mg/mlと
なるように添加し、24時間培養した。その後、45℃
にて15分間熱ショック処理をしてから、37℃にて終
夜培養した。対照試験は、実施例1で得られた麦芽抽出
物を添加しないこと以外は前記と同様に実施した。
【0038】(3)ヒト培養癌細胞でのHSP発現量の
測定 前項(2)で処理した各細胞を、以下に示す方法により
ホモジナイズし、HSP発現量をウェスタンブロット法
にて測定した。すなわち、前項(2)で処理した細胞を
PBS(−)で洗浄した後、ライシスバッファー(ly
sis buffer)[1.0%NP−40、0.1
5M塩化ナトリウム、50mMトリス−HCl(pH
8.0)、5mM−EDTA、2mM−N−エチルマレ
イミド、2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、
2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペプスタチ
ン]1mlを加え、氷上で20分間静置した。その後、
4℃で12000rpmにて、20分間、遠心を行っ
た。遠心後の上清10μlをPBS(−)790μlに
加え、更にプロテインアッセイ染色液(Dye Reagent Co
ncentrate :バイオラッド,カタログ番号500-0006)2
00μlを加えた。5分間、室温にて静置した後、59
5nmで吸光度を測定してタンパク質定量を行った。
【0039】タンパク質定量を行った試料を用いて、L
aemmliのバッファー系にて、等量のタンパク質を
含むライセートのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳
動を行った。電気泳動後、実施例2で述べた方法に従っ
て、ブロッティング及びそれに続くブロッキングを行っ
た。すなわち、タンパク質転写装置(Trans-Blot Elect
rophoretic Transfer Cell:バイオ・ラッド)を用い
て、室温にて100Vにて、0.45μmニトロセルロ
ース膜(Schleicher & Schuell,カタログ番号401196)
にゲルを密着させ、3時間ブロッティングを行った。ブ
ロッティングバッファーとしては、前記実施例2(3)
で用いたバッファーと同じものを用いた。ブロッティン
グ後、ニトロセルロース膜を10%スキムミルク(雪印
乳業)−PBS(−)溶液に室温にて30分間、インキ
ュベートし非特異的結合をブロックした。
【0040】ブロッキング後、スクリーナーブロッター
(サンプラテック)を用いて、ニトロセルロース膜の上
で、実施例2にて製造した抗ヒトHSP47ラットポリ
クローナル抗体により、1次抗体反応を行った。その
後、PBS(−)で5分間づつ、溶液を取り替えて2回
の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーによって行
い、更にPBS(−)−0.1%Tween20(バイ
オ・ラッド,カタログ番号170-6531)溶液で15分間づ
つ、溶液を取り替えて4回の洗浄を行った。最終的に、
PBS(−)で5分間づつ、2回の洗浄を行った。
【0041】洗浄終了後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗
ラットIgG抗体(Southern Biotechnology,カタログ
番号3030-05 )を、2%スキムミルクを含むPBS
(−)溶液で5000倍に希釈して調製した抗体溶液5
mlを用いて、2時間、2次抗体反応を行った。反応終
了後、ニトロセルロース膜に関して、PBS(−)溶液
で5分間づつ溶液を変えて2回、更にPBS(−)−
0.1%Tween20溶液で15分間づつ溶液を変え
て5回の洗浄をスロー・ロッキング・シェイカーにより
行った。最後にPBS(−)溶液で5分間づつ2回の洗
浄を行った。余分なPBS(−)溶液を除去した後、ウ
ェスタンブロッティング検出試薬(ECL Western blotti
ng detection reagent;Amersham,カタログ番号RPN210
6 )をニトロセルロース膜上に振りかけ、1分間インキ
ュベートした後、余分な検出試薬を除去し、ニトロセル
ロース膜をラップに包み、反応面をX線フィルム(コダ
ック X-OMAT, AR ,カタログ番号165 1454)に密着させ
て露光し、現像してHSP47の有無の検討を行った。
結果を表1に示す。表中、「↓」は、対照に比べて、H
SP47発現量が減少したことを意味する。
【0042】
【表1】 癌種 癌細胞 HSP47発現量変化 肺 H69 ↓ 子宮 HeLa S3 ↓ 胃 KATO III ↓ 腎臓 ACHN ↓ 神経 SK−N−MC ↓
【0043】表1に示すとおり、麦芽抽出物は、肺癌細
胞株H69、子宮癌細胞株HeLaS3、胃癌細胞株K
ATO III 、腎臓癌細胞株ACHN、及び神経腫瘍細
胞株SK−N−MCにおいてHSP47の発現を抑制し
た。従って、麦芽抽出物は、HSP47の発現を抑制す
る活性を有し、HSP47合成抑制剤として有用である
ものと結論することができ、このことは、麦芽抽出物が
細胞外マトリックス産生の亢進に抑制的に働くことを示
している。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のHSP4
7合成抑制剤は、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性
腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、術後の瘢痕や
熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性
瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞
外マトリックス産生の亢進の病態を示す病気に罹患した
細胞にみられるコラーゲン合成亢進を改善する作用を有
する。従って、本発明によるHSP47合成抑制剤を投
与することにより、臓器、組織の線維化、硬化が阻止さ
れ、その結果、前記病気の患者の生理学的状態を有効に
改善させ、前記病気を効果的に治療することができる。
また、本発明のHSP47合成抑制剤は、血管新生の異
常増殖を伴う各種疾患の予防治療にも有用である。さら
に、I型コラーゲンとフィブロネクチンを基本骨格とす
る間質が、癌の転移において離脱した癌細胞が近傍の脈
管に侵入するまでのガイド役を果たすことが、明らかと
なっているので、本発明のHSP47合成抑制剤を投与
することにより、癌の転移を抑制することも可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた麦芽抽出物の乾燥物のクロ
マトグラフを例示したものである。
【図2】実施例1で得られた麦芽抽出物の乾燥物の赤外
吸収スペクトルを例示したものである。
【図3】実施例1で得られた麦芽抽出物の乾燥物の核磁
気共鳴スペクトルを例示したものである。
【図4】実施例1で得られた麦芽抽出物の乾燥物の紫外
可視吸光スペクトルを例示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 35/78 ACV A61K 35/78 ACV

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 麦芽抽出物を有効成分として含有するこ
    とを特徴とする、分子量47キロダルトンの熱ショック
    タンパク質の合成抑制剤。
  2. 【請求項2】 麦芽抽出物が、麦芽を糖化し、得られた
    麦芽糖化物を濾過し、得られた麦芽糖化物濾過残渣を水
    又は親水性溶媒で抽出し、得られた抽出液から分子量1
    0,000未満の低分子化合物画分を除去して得られる
    生成物である、請求項1に記載の分子量47キロダルト
    ンの熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
  3. 【請求項3】 前記の水又は親水性溶媒がアルカリ性で
    あり、そのアルカリ性の水又は親水性溶媒による抽出に
    よって得られた抽出液を中和して沈殿する物質を除去す
    る、請求項2に記載の分子量47キロダルトンの熱ショ
    ックタンパク質の合成抑制剤。
  4. 【請求項4】 水又は親水性溶媒で抽出した後、得られ
    た抽出液をpH3〜5に調整し、沈澱するタンパク質を
    除去し、得られた上清を中和して沈殿する物質をさらに
    除去する、請求項2又は3に記載の分子量47キロダル
    トンの熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
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