JPH1045575A - シコニン含有hsp47合成抑制剤 - Google Patents

シコニン含有hsp47合成抑制剤

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JPH1045575A
JPH1045575A JP8218049A JP21804996A JPH1045575A JP H1045575 A JPH1045575 A JP H1045575A JP 8218049 A JP8218049 A JP 8218049A JP 21804996 A JP21804996 A JP 21804996A JP H1045575 A JPH1045575 A JP H1045575A
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shikonin
collagen
hsp47
extracellular matrix
synthesis
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JP8218049A
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Yoichi Shobu
洋一 清輔
Tomoko Tsuzuki
智子 都築
Toshimi Shiragami
俊美 白神
Masayoshi Morino
眞嘉 森野
Chikao Yoshikumi
親雄 吉汲
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Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コラーゲン合成を抑制することによって、細
胞外マトリックス産生の亢進の病態を示す病気を治療す
ることができる、分子量47キロダルトンの熱ショック
タンパク質の合成抑制剤を提供する。 【解決手段】 シコニンを有効成分として含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シコニンを有効成
分として含有する、分子量が47キロダルトン(kD)
の熱ショックタンパク質(以下、HSP47と称する)
の合成抑制剤に関する。本発明のHSP47合成抑制剤
は、特に、臓器内のコラーゲンの合成を抑制することに
より肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不
全に陥いる疾患)、心肥大、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、
交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮
症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マトリッ
クス(細胞外基質)産生亢進の病態を示す病気の患者の
生理学的状態を有効に改善させ、肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥
大、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じる
ケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リ
ウマチなどの細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す
病気を効果的に治療することができる。
【0002】
【従来の技術】近年、コラーゲンなどの細胞外マトリッ
クスの産生の亢進の病態を示す病気が大きな問題となっ
ている。ここでいう細胞外マトリックス産生の亢進の病
態を示す病気とは、例えば肝硬変、間質性肺疾患、慢性
腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥大、術後
の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイド
や肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチな
どを含む。
【0003】例えば、死亡者がわが国だけでも年間約2
万人にものぼるといわれている肝硬変は、肝臓が結合組
織の増殖のため固くなる病気の総称で、種々の慢性肝疾
患の終末像であるといわれ、肝全体にわたるびまん性の
肝線維症である。すなわち、炎症などの肝傷害が長期に
及ぶ慢性肝炎においては、線維芽細胞や伊東細胞などの
細胞外マトリックス(特にI型コラーゲン)産生の著し
い亢進を伴い肝臓は線維化する。肝の線維化が慢性的に
進行すると、ますます正常な肝再生は妨害され、肝細胞
に置き換わり、線維芽細胞とI型コラーゲンを主体とす
る細胞外マトリックスが肝組織のかなりの部分を占め、
多くの凝小葉からなる肝硬変に至る。肝硬変の進行に伴
い、線維隔壁が肝全体に進展し、その結果生じる血流の
異常は、肝実質細胞の変性を更に押し進める一因にもな
り、肝硬変における悪循環が続くことになり、更にはア
ルコール、ウイルス、自己免疫等種々の原因によって、
肝臓中に多量の膠質線維が生成され、肝細胞の壊死と機
能消失とが生じ、肝硬変患者は遂には死に至る。I型コ
ラーゲンは正常肝では全タンパク質量の約2%を占める
が、肝硬変となると10〜30%を占めるようになる。
【0004】また、間質性肺疾患は、肺胞及び肺胞管の
みならず、しばしば呼吸細気管支や終末気管支も巻き込
む下部気道の慢性炎症(肺胞炎 alveolitis)とその結果
である間質の線維化と肺胞内線維化を特徴とする疾患群
である。ここでいう間質性肺疾患とは、例えば、間質性
肺炎、肺線維症などのびまん性間質性肺疾患、特発性肺
線維症、透過性肺水腫、膠原病肺、サルコイドーシスな
どを含む。間質性肺疾患においては、線維化組織では細
胞外マトリックスの過剰な産生と蓄積が認められてい
る。すなわち、間質性肺疾患の肺線維化組織では、肥大
した間質に著明なI型及び III型コラーゲンの集積がみ
られており、特に III型コラーゲンは、線維化の早期に
肥厚した肺胞中隔に集積し、病期が進行し、後期にはI
型コラーゲンが増加し、主要なコラーゲンとなる。基底
膜は早期に破壊されており、肺胞腔側へのコラーゲン線
維の侵入が観察される。
【0005】また、慢性腎不全とは慢性腎炎症候群の結
果、腎機能の荒廃により体内の恒常性が維持できなくな
った状態である。慢性腎不全の進行を病理学的にみると
糸球体硬化と間質線維化の進行である。糸球体硬化症
は、メサンギウム領域を中心とした細胞外マトリックス
の増生である。メサンギウム硬化症の成分は正常と比較
し、著明にIV型コラーゲンなどの糸球体基底膜の成分が
増加し、また間質成分であるI型コラーゲンも硬化症部
位に一致して増生している。すなわち、慢性に経過する
糸球体硬化に対しては、細胞外マトリックスの産生亢進
が大きな要因である。ここで慢性腎不全に陥いる疾患と
は、例えばIgA腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性
腎炎、糖尿病性腎症、慢性間質性腎炎、慢性糸球体腎炎
などを含む。
【0006】また、心筋細胞は高度に分化した細胞で、
分裂して増殖する能力を持ち合わせていない。したがっ
て、心臓に何らかの負荷が加わると、心筋細胞はその一
つ一つが肥大して収縮力を増大させ、心機能を保とうと
する。更に、負荷が長時間持続すると、虚血の要因を中
心に多彩な障害が蓄積され、負荷に対する代償機構に破
綻をきたし、心筋の収縮力は急激に低下し、心臓のポン
プ機能は損なわれて、心不全に陥いることが知られてお
り、心肥大は我が国における心不全の成因として最も大
きな部分を占めている。また、心肥大の形成は、心不全
発症の最大の危険因子になるばかりでなく、虚血性心疾
患や重篤な心室性不整脈の合併率が有意に高くなり、生
命予後を独立に規定する要因になっている。心肥大進展
時には個々の心筋細胞が著しく肥大するだけでなく、そ
の心筋細胞をしっかり束ねるために、間質の線維化が促
進され、細胞外マトリックスであるコラーゲンが増加す
る。また、心筋炎・心筋虚血などにより心筋細胞を失う
と、コラーゲンが生合成され間隙を置換する。間質の線
維化が過剰に進展すると、その結果、心筋は固くなり、
拡張が障害される。更に、筋小体機能も低下して心筋の
拡張期の弛緩も障害される。その他、術後の瘢痕や熱傷
性瘢痕、あるいは強皮症、動脈硬化等の細胞外マトリッ
クス産生亢進の病態を示す病気は、何らかの原因により
コラーゲン合成の異常亢進が起こり、線維化が進んで組
織の硬化変化を生ずることが主要な成因と考えられてい
る。
【0007】また、血管新生においても基底膜及び基底
膜中のコラーゲン合成が、重要な役割をはたすことが指
摘されている(Maragoudakis, E., Sarmonika, M., and
Panoutsacopoulous, M., "J. Pharmacol. Exp. The
r.", 244 : 729, 1988 ; Ingber, D. E., Madri, J.
A., and Folkman, J., "Endocrinology", 119 : 1768,
1986)。血管新生による疾患としては、例えば、糖尿
病性網膜症、後水晶体線維増殖症、角膜移植に伴う血管
新生、緑内症、眼腫瘍、トラコーマ、幹せん、化膿性肉
芽腫、血管腫、線維性血管腫、肥大性はん痕、肉芽、リ
ューマチ性関節炎、浮腫性硬化症、アテローム性動脈硬
化症、各種腫瘍などが知られている。このようにコラー
ゲンなどの細胞外マトリックスの産生の亢進の病態を示
す病気が大きな問題となっているにもかかわらず、従来
では副作用や薬理効果等の種々の面で満足すべき細胞外
マトリックス合成抑制剤(例えば、コラーゲン合成抑制
剤)は未だ開発されていなかったのである。
【0008】一方、熱ショックタンパク質(heat shock
protein;HSP、ストレスタンパク質ともいう)は、
細胞を何らかのストレス、例えば熱、重金属、薬剤、ア
ミノ酸類似体、又は低酸素(低濃度酸素)などで刺激す
ることにより、細胞に発現される一群のタンパク質であ
る。熱ショックタンパク質は、自然界に普遍的に存在し
ており、細菌、酵母、植物、昆虫、及びヒトを含む高等
動物により産生される。HSPは、その種類は多種多様
であるが、分子量の大きさからHSP90ファミリー
(例えば、90kD又は110kDのHSPなど)、H
SP70ファミリー(例えば、70〜73kDのHSP
など)、HSP60ファミリー(例えば、57〜68k
DのHSPなど)、低分子HSPファミリー(例えば、
20kD、25〜28kD、又は47kDのHSPな
ど)の4ファミリーに大別することができる。なお、本
明細書においては、特定分子量を有するHSPを、HS
Pとその直後に記載する数字とによって示すものとし、
例えば、分子量47kDのHSPを『HSP47』と称
するものとする。以上のように、HSPには多くの種類
が存在するが、これらは分子量だけでなく、構造、機
能、又は性質などもそれぞれ異なるものである。ストレ
スへの応答に加えて、これらのタンパク質の中には構成
的に合成されるものがあり、正常な環境の下で、タンパ
ク質のフォールディング、アンフォールディング、タン
パク質サブユニットの会合、タンパク質の膜輸送のよう
な、必須の生理的な役割を演じていることが示されてい
る。熱ショックタンパク質としてのこれらの機能は、分
子シャペロンと称される。
【0009】HSP47は、永田等によって1986年
に発見されたタンパク質で、分子量47キロダルトンの
塩基性タンパク質(pI=9.0)である。HSP47
の発現が増大するにつれて、コラーゲンの合成も増加す
ることが様々な細胞で示されている("J. Biol. Che
m.", 261 : 7531, 1986 ; "Eur. J. Biochem.", 206 :
323, 1992 ; "J. Biol. Chem.", 265 : 992, 1990 ;
"J. Clin. Invest.", 94:2481, 1994)。すなわち、H
SP47は、細胞内で小胞体内でのプロコラーゲンのプ
ロセシング、三重鎖ヘリックス形成、あるいは小胞体か
らゴルジ装置へのプロコラーゲン輸送・分泌という局面
で、コラーゲンの特異的分子シャペロンとして機能して
いるとされているので、増大したHSP47発現は、細
胞外マトリックスにおけるコラーゲン分子の蓄積を刺激
する。このようにコラーゲン結合熱ショックタンパク質
であるHSP47は、発現と同様に機能においても、細
胞外マトリックスタンパク質であるコラーゲンに密接に
関連した熱ショックタンパク質である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記事
情に鑑み、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又は慢
性腎不全に陥いる疾患)、心肥大、術後の瘢痕や熱傷性
瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、
強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外マト
リックス産生亢進の病態を示す病気の患者の生理学的状
態を有効に改善させ、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不
全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥大、術後の瘢
痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥
厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの
細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す病気を効果的
に治療することのできる、細胞外マトリックス合成抑制
剤を提供するために、種々検討を重ねてきた。
【0011】上記したように、肝硬変、間質性肺疾患、
慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥大、
術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロ
イドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマ
チなどの線維症は臓器内の細胞外マトリックスの著しく
増加した病態が主病変と理解されている。肝硬変、間質
性肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾
患)、心肥大、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の
後に生じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、
又は関節リウマチなどの細胞外マトリックス産生亢進の
病態を示す病気に伴う線維化は、コラーゲン生合成増加
やコラーゲン分解能の低下により生ずると考えられてい
る。例えば、肝の線維化において、I型、 III型、IV型
コラーゲンの合成活性化が起こるが、特に主要成分であ
るI型コラーゲンの合成活性化が重要な意味をもつ。
【0012】こうした状況下で、本発明者らは、意外に
も、シコンの成分であるシコニンが、病態を示す組織の
細胞におけるHSP47の合成を特異的に抑制すること
を見出した。すなわち、シコニンを投与することによ
り、細胞内でのHSP47の合成を抑制し、臓器内での
コラーゲン合成を抑制し、ひいては肝硬変、間質性肺疾
患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥
大、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じる
ケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リ
ウマチなどの細胞外マトリックス産生亢進の病態を示す
病気の治療が可能であることを見出したのである。本発
明はこうした知見に基づくものであり、肝硬変、間質性
肺疾患、慢性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、
心肥大、術後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生
じるケロイドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関
節リウマチなどの細胞外マトリックス産生の亢進の病態
を示す病気を効果的に治療することのできるHSP47
合成抑制剤であって、細胞内でのコラーゲンの成熟及び
輸送過程に重要な役割を果たしているコラーゲン特異的
な分子シャペロンであるHSP47の合成抑制剤を提供
することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、シコ
ニンを有効成分として含有することを特徴とする、分子
量47キロダルトンの熱ショックタンパク質の合成抑制
剤に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の合成抑制剤は、有効成分としてシコニン
(shikonin)を含有する。本発明の合成抑制剤
において有効成分として使用することのできるシコニン
は、式(I):
【化1】 で表される化合物であり、例えば、シコン等の生薬に含
まれている。シコニンには、立体異性体が存在し、それ
らの任意の純粋の立体異性体又はそれらの混合物を、本
発明の合成抑制剤の有効成分として用いることができ
る。
【0015】本発明の合成抑制剤に含有されるシコニン
は、化学合成によって、又は天然物から抽出して精製す
ることによって、調製することができる。あるいは、市
販品を用いてもよい。本発明の合成抑制剤において有効
成分として用いるシコニンを、天然物から抽出する場合
には、例えば、シコニンを含有する植物の全体又は一部
分(例えば、全草、葉、根、根茎、茎、根皮、花、若し
くは果実)をそのまま用いて、又は簡単に加工処理(例
えば、乾燥、切断、湯通し、蒸気加熱、若しくは粉末
化)したもの(例えば、生薬)を用いて抽出する。抽出
条件は一般的に植物抽出に用いられる条件ならば特に制
限はない。シコニンを含有する植物としては、これに限
定するものではないが、例えば、ムラサキ(Litho
spermum erythrorhizon Sie
bold et Zuccarini)、又はアルネビ
ア・エウクロマ〔Arnebia euchroma
(Royle) Johnst.〕等を使用することが
できる。
【0016】本発明におけるシコニンを生薬から抽出す
る場合、これに限定するものではないが、例えば、シコ
ンから抽出することが好ましい。シコン(紫根;Lit
hospermi radix;Lithosperm
um root)とは、ムラサキの根を意味し、それら
の部分を単独であるいは任意に組み合わせて使用するこ
とができる。
【0017】本発明による合成抑制剤において有効成分
として用いることのできるシコン抽出物は、前記のシコ
ニンを含有していればよく、従って、シコンの粗抽出物
を用いることができる。本発明で用いることのできるシ
コン抽出物の製造方法としては、シコンを、水(例え
ば、冷水、温水、又は熱湯)によって抽出するか、又は
有機溶媒を用いて抽出することによって、得ることがで
きる。有機溶媒としては、例えば、炭素数1〜6のアル
コール(例えば、メチルアルコール、エチルアルコー
ル、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコー
ル、若しくはブチルアルコール)、エステル(例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、若しくは酢酸
ブチル)、ケトン(例えば、アセトン若しくはメチルイ
ソブチルケトン)、エーテル、石油エーテル、n−ヘキ
サン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、炭化水素
のハロゲン誘導体(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタ
ン、若しくはクロロホルム)、ピリジン、グリコール
(例えば、プロピレングリコール、若しくはブチレング
リコール)、ポリエチレングリコール、又はアセトニト
リルなどを用いることができ、これらの有機溶媒を単
独、又は適宜組み合わせ、一定の比率で混合し、更には
無水又は含水状態で用いることができる。好ましくは、
エーテル及び/又はジクロロメタン等が望ましい。水抽
出又は有機溶媒抽出の方法としては、通常の生薬抽出に
用いられる方法を用いることができ、例えば、(乾燥)
シコン1重量部に対し、水又は有機溶媒3〜300重量
部を用いて、攪拌しながら、その沸点以下の温度で加熱
還流、常温で超音波抽出、あるいは冷浸することが望ま
しい。抽出工程は、通常は5分〜7日間、好ましくは1
0分〜60時間実施し、必要に応じて、攪拌等の補助的
手段を加えることにより、抽出時間を短縮することがで
きる。
【0018】抽出工程終了後、濾過又は遠心分離等の適
当な方法により、水又は有機溶媒抽出液から、不溶物を
分離して粗抽出物を得ることができる。なお、本発明の
合成抑制剤において、天然物より抽出、分画したシコニ
ンを用いる場合には、前記の粗抽出物を特に精製するこ
となく、そのまま使用してもよい。常法による水抽出物
又は有機溶媒抽出物の他に、前記の粗抽出物を各種有機
溶媒又は吸着剤等により、更に処理した精製抽出物も、
本発明の合成抑制剤の有効成分として用いることができ
る。これらの粗抽出物及び各種の精製処理を終えた精製
抽出物を含むシコン抽出物は、抽出したままの溶液を用
いても、溶媒を濃縮したエキスを用いても良いし、溶媒
を留去し乾燥した粉末、更には結晶化して精製したも
の、あるいは粘性のある物質を用いても良く、またそれ
らの希釈液を用いることもできる。こうして得られたシ
コン抽出物は、シコンに含まれるシコニンを含み、同時
に原料のシコンに由来する不純物を含んでいる。
【0019】本発明の合成抑制剤は、シコニン、又はシ
コニンを含有する植物の抽出物、例えば、シコニンを含
有する生薬の抽出物(特には、シコン抽出物)を、それ
単独で、又は好ましくは製剤学的若しくは獣医学的に許
容することのできる通常の担体と共に、動物、好ましく
は哺乳動物(特にはヒト)に投与することができる。投
与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒
剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン
剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、
又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリ
ーム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることがで
きる。これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン
酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶ
どう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デ
キストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、
大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステ
アリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ
酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニ
ウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢
剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯
味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を
用いて、常法に従って製造することができる。例えば、
シコニン1重量部と乳糖99重量部とを混合して充填し
たカプセル剤などである。
【0020】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなか
で、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の
調製においては、有効成分としてのシコニン、又はシコ
ニンを含有する植物の抽出物、例えば、シコニンを含有
する生薬の抽出物(特には、シコン抽出物)の他に、例
えば、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、
植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブド
ウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助
剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任
意に用いることができる。また、本発明の合成抑制剤
は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用
いて投与してもよい。例えば、本発明の合成抑制剤をエ
チレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、
このペレットを治療すべき組織中に外科的に移植するこ
とができる。
【0021】本発明の合成抑制剤は、これに限定される
ものではないが、シコニンを、0.01〜99重量%、
好ましくは0.1〜80重量%の量で含有することがで
きる。また、シコニンを含有する植物の抽出物、例え
ば、シコニンを含有する生薬の抽出物(特には、シコン
抽出物)を有効成分として含有する本発明の合成抑制剤
は、その中に含まれるシコニンが前記の量範囲になるよ
うに適宜調整して、調製することができる。なお、シコ
ニンを含有する植物の抽出物、例えば、シコニンを含有
する生薬の抽出物(特には、シコン抽出物)を有効成分
として含有する合成抑制剤を、経口投与用製剤とする場
合には、製剤学的に許容することのできる担体を用い
て、製剤化することが好ましい。本発明の合成抑制剤を
用いる場合の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性
別、体重、症状の程度、又は投与方法などにより異な
り、特に制限はないが、シコニン量として通常成人1人
当り1mg〜10g程度を、1日1〜4回程度にわけ
て、経口的に又は非経口的に投与する。更に、用途も医
薬品に限定されるものではなく、種々の用途、例えば、
機能性食品や健康食品として飲食物の形で与えることも
可能である。
【0022】
【作用】上記したように、本発明の合成抑制剤に含有さ
れるシコニンは、細胞内のHSP47合成を特異的に抑
制する作用があるので、前記シコニンを投与すると細胞
内でのHSP47生合成が特異的に減少し、コラーゲン
の生合成が抑制される。その結果、細胞外マトリックス
産生も抑制されることになる。従って、前記シコニン
は、コラーゲンの増加を伴う細胞外マトリックス産生亢
進の病態を示す病気、例えば肝硬変、間質性肺疾患、慢
性腎不全(又は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥大、術
後の瘢痕や熱傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイ
ドや肥厚性瘢痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチ
などの予防及び治療に使用することができる。すなわ
ち、本発明の合成抑制剤は、コラーゲン特異的シャペロ
ンであるHSP47の合成を抑制することによりコラー
ゲンの合成を抑制する。
【0023】また、前記のように、血管新生において
も、基底膜及び基底膜中のコラーゲン合成が重要な役割
をはたすことが指摘されているので、本発明の合成抑制
剤は、血管新生の異常増殖に基づく多くの疾患の予防治
療薬として極めて有用であり、先に述べたような各疾
患、すなわち糖尿病性網膜症、後水晶体線維増殖症、角
膜移植に伴う血管新生、緑内症、眼腫瘍、トラコーマ、
乾せん、化膿性肉芽腫、血管腫、線維性血管腫、肥大性
はん痕、肉芽、リューマチ性関節炎、浮腫性硬化症、ア
テローム性動脈硬化症及び各種腫瘍などに用いることが
できる。更に、I型コラーゲンとフィブロネクチンを基
本骨格とする間質(interstitial stroma)が癌の転移に
おいて、離脱した癌細胞が近傍の脈管に侵入するまでの
ガイド役を果たすことが、明らかとなっているので〔"B
IOTHERAPY", 7 (8) : 1181, 1993〕、本発明の合成抑制
剤を投与することにより、癌の転移を抑制することも可
能である。
【0024】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:抗HSP47ポリクローナル抗体の作製 (1)抗HSP47ポリクローナル抗体の調製 ヒトHSP47のN末端から2〜16番目のアミノ酸配
列に対応するアミノ酸15個からなるペプチド〔以下、
ヒトHSP47ペプチド(2−16)と称する〕を自動
ペプチド合成装置(PSSM−8システム,島津製作
所)を用いて作製し、スクシニミジル4−(p−マレイ
ミドフェニル)ブチレート〔SMPB:Succinimidyl 4
-(p-maleimidophenyl)butyrate〕を架橋剤として用い、
常法("Biochemistry", 18:690, 1979)によりラクトグ
ロブリンと結合させ、感作抗原を作製した。この感作抗
原150μgを含むリン酸緩衝生理食塩水〔組成:KC
l=0.2g/l,KH2 PO4 =0.2g/l,Na
Cl=8g/l,Na2 HPO4 (無水)=1.15g
/l:以下PBS(−)と称する:コスモバイオ,カタ
ログ番号320-01〕0.2mlと、等量のフロイント完全
アジュバント(ヤトロン,カタログ番号RM606-1)とを混
和し、得られた混合液0.2mlを、ルーラット(6週
齢,雌性:日本クレア)の皮下に投与し、免疫した。同
様の方法で第2次及び第3次免疫を繰り返した後、アジ
ュバント(Hunter's TiterMax ; CytRx Corporation,米
国ジョージア州)を用いて6回免疫感作を行った。感作
動物より採血し、常法により血清を分離して採取し、以
下に示す酵素抗体法(ELISA法)及びウェスタンブ
ロット法によって血清中の抗体価を測定した。
【0025】(2)酵素抗体法(ELISA法)による
抗HSP47ポリクローナル抗体特性の評価 前項(1)で調製したヒトHSP47ペプチド(2−1
6)をPBS(−)に溶解し、10μg/mlの濃度の
ペプチド溶液を調製し、リジットアセイプレート(ファ
ルコン,カタログ番号3910)の各ウェルに前記ペプチド
溶液を50μlずつ滴下した。最も外側のウェルにはP
BS(−)50μlのみを入れ、湿潤下で4℃にて一晩
放置した後、前記ペプチド溶液を捨て、PBS(−)を
用いて各ウェルを洗浄した後、1%ウシ血清アルブミン
(以下、BSAと略称する)を含むPBS(−)100
μlを各ウェルに入れ、室温下で1時間放置した。PB
S(−)で3回洗浄した後、前項(1)で取得したルー
ラット血清50μlを各ウェルに入れ、1時間室温にて
放置した。PBS(−)で3回洗浄した後、各ウェルに
2次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG5
0μlを入れ、室温下で1時間放置した。PBS(−)
で2回洗浄した後、過酸化水素水4μlを加えた0.1
Mクエン酸バッファー(pH4.5)10mlにo−フ
ェニレンジアミン(OPD)タブレット(シグマ,カタ
ログ番号P8287)1個(10mg)を溶解して調製した基
質液100μlずつを各ウェルに滴下し、室温にて遮光
下で30分間放置した後、各ウェルの492nmの吸光
度をマイクロプレートリーダー(東ソー,MPR−A4
i型)にて測定した。抗体価の上昇が確認された血清を
抗ヒトHSP47ポリクローナル抗体として以下の実施
例に用いた。
【0026】(3)ウェスタンブロット法による抗HS
P47ポリクローナル抗体特性の評価 Laemmliのバッファー系(Laemmli, N. K., "Nat
ure", 283 : pp. 249-256, 1970)を用いて、HeLa細
胞のライセートのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を、以下の方法に従って
行った。濃縮ゲルの調製は次のように行った。蒸留水
6.1ml、0.5Mトリス(バイオ・ラッド,カタロ
グ番号161-0716)−HCl(pH6.8)2.5ml、
10%SDS(バイオ・ラッド,カタログ番号161-030
1)100μl、及び30%アクリルアミド(バイオ・
ラッド,カタログ番号161-0101)/N,N’−メチレン
ビスアクリルアミド(バイオ・ラッド,カタログ番号16
1-0201)1.3mlを混合して、15分間脱気し、10
%過硫酸アンモニウム(バイオ・ラッド,カタログ番号
161-0700)50μl及びN,N,N’,N’−テトラメ
チルエチレンジアミン(以下、TEMEDと略称する)
(バイオ・ラッド,カタログ番号161-0800)10μlを
加えて、濃縮ゲルを調製した。また、分離ゲルの調製は
次のように行った。蒸留水4.045ml、1.5Mト
リス−HCl(pH8.8)2.5ml、10%SDS
100μl、及び30%アクリルアミド/N,N’−メ
チレンビスアクリルアミド3.3mlをゆっくり混合し
て、15分間アスピレータで脱気し、10%過硫酸アン
モニウム50μl、及びTEMED5μlを加えた。泳
動バッファーとしては、トリス9.0g、グリシン(バ
イオ・ラッド,カタログ番号161-0717)43.2g、及
びSDS3.0gに蒸留水を加えて600mlにし、こ
れを蒸留水で5倍希釈したものを用いた。サンプルバッ
ファーは、蒸留水2ml、2Mトリス−HCl(pH
6.8)500μl、SDS0.32g、β−メルカプ
トエタノール800μl、及び0.05%(w/v)ブ
ロモフェノールブルー(バイオ・ラッド,カタログ番号
161-0404)400μlを混合したものを用いた。
【0027】5%二酸化炭素条件下で、37℃で、10
%非働化ウシ胎児血清(以下、FBSと略称する)を含
むMEM培地中でHeLa細胞を培養し、そのライセー
トを調製した。得られたHeLa細胞ライセートのSD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後、0.
45μmニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell,
カタログ番号401196)にゲルを密着させ、タンパク質転
写装置(Trans-Blot Electrophoretic Transfer Cell:
バイオ・ラッド)を用いて、室温にて100Vで、3時
間ブロッティングを行った。ブロッティングバッファー
としては0.025Mトリス及び0.192Mグリシン
よりなりpH8.5に調整されたトリスグリシンバッフ
ァー(Tris Gly Running and Blotting Buffer;Enprot
ech,米国マサチューセッツ州,カタログ番号SA100034)
にメチルアルコールを20%になるように加えて調製し
たバッファーを用いた。ブロッティング後、5%スキム
ミルク(雪印乳業)を含むPBS(−)溶液にニトロセ
ルロース膜を室温にて30分間浸し、ブロッキングを行
った。ブロッキング後、スクリーナーブロッター(サン
プラテック)を用いて、前項(1)で取得したルーラッ
ト血清を1次抗体として、1次抗体反応を行った。1次
抗体反応は、2%スキムミルク(雪印乳業)を含むPB
S(−)にて10倍希釈した前記ルーラット血清200
μlで、室温にて120分間行った。1次抗体反応終了
後、スロー・ロッキング・シェイカーを用いて、PBS
(−)で5分間の振盪を2回、0.1%Tween20
(バイオ・ラッド,カタログ番号170-6531)を含むPB
S(−)溶液で15分間の振盪を4回、更にPBS
(−)で5分間の振盪を2回行うことにより、ニトロセ
ルロース膜を洗浄した。洗浄終了後、ペルオキシダーゼ
標識ヤギ抗ラットIgG抗体(Southern Biotechnolog
y,カタログ番号3030-05)を、2%スキムミルクを含む
PBS(−)溶液で5000倍に希釈した溶液5mlを
用いて、2次抗体反応を2時間行った。反応終了後、P
BS(−)溶液、及び0.1%Tween20を含むP
BS(−)溶液で、1次抗体反応後の洗浄と同じ条件下
にてニトロセルロース膜の洗浄を行った。
【0028】余分なPBS(−)溶液を除去した後、ウ
ェスタンブロッティング検出試薬(ECL Western blotti
ng detection reagent;アマーシャム,カタログ番号RP
N2106)をニトロセルロース膜上に振りかけ、1分間室温
にて静置した後、余分な検出試薬を除去し、ニトロセル
ロース膜をラップに包み、反応面をX線フィルム(コダ
ック X-OMAT, AR,カタログ番号165 1454)に密着させて
露光させた。現像後、HSP47に相当する分子量47
キロダルトン付近のバンドを測定することによって、抗
HSP47ポリクローナル抗体の反応性の検討を行っ
た。抗体価の上昇が確認された血清を、抗ヒトHSP4
7ポリクローナル抗体として、以下の実施例に用いた。
【0029】実施例2:ヒト培養癌細胞のHSP発現量
の測定 (1)ヒト培養癌細胞の培養 胃癌細胞株KATO III (ATCC HTB 10
3)を、10%非働化FBS含有RPMI1640培地
中で、5%二酸化炭素条件下で、熱ショック処理時以外
は、37℃で培養した。
【0030】(2)シコニン処理及び熱ショック処理 播種2日後の胃癌細胞株KATO III の培地中には、
最終濃度1μMになるように前記式(I)で表されるシ
コニン(一丸ファルコス)を添加し、24時間培養し
た。その後、45℃にて15分間熱ショック処理をして
から、37℃にて終夜培養した。対照試験は、シコニン
を添加しないこと以外は前記と同様に実施した。
【0031】(3)ヒト培養癌細胞でのHSP発現量の
測定 前項(2)で処理した各細胞を、以下に示す方法により
ホモジナイズし、HSP発現量をウェスタンブロット法
にて測定した。すなわち、前項(2)で処理した細胞を
PBS(−)で洗浄した後、ライシスバッファー(ly
sis buffer)〔1.0%NP−40、0.1
5M塩化ナトリウム、50mMトリス−HCl(pH
8.0)、5mM−EDTA、2mM−N−エチルマレ
イミド、2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、
2μg/mlロイペプチン及び2μg/mlペプスタチ
ン〕1mlを加え、氷上で20分間静置した。その後、
4℃で12000rpmにて、20分間、遠心を行っ
た。遠心後の上清10μlをPBS(−)790μlに
加え、更にプロテインアッセイ染色液(Dye Reagent Co
ncentrate : バイオラッド,カタログ番号500-0006)2
00μlを加えた。5分間、室温にて静置した後、59
5nmで吸光度を測定してタンパク質定量を行った。タ
ンパク質定量を行った試料を用いて、Laemmliの
バッファー系にて、等量のタンパク質を含むライセート
のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。電
気泳動後、実施例1で述べた方法に従って、ブロッティ
ング及びそれに続くブロッキングを行った。すなわち、
タンパク質転写装置(Trans-Blot Electrophoretic Tra
nsfer Cell:バイオ・ラッド)を用いて、室温にて10
0Vにて、0.45μmニトロセルロース膜(Schleich
er & Schuell,カタログ番号401196)にゲルを密着さ
せ、3時間ブロッティングを行った。ブロッティングバ
ッファーとしては、前記実施例1(3)で用いたバッフ
ァーと同じものを用いた。ブロッティング後、ニトロセ
ルロース膜を10%スキムミルク(雪印乳業)−PBS
(−)溶液に室温にて30分間、インキュベートし非特
異的結合をブロックした。
【0032】ブロッキング後、ニトロセルロース膜の上
で、実施例1で製造した抗ヒトHSP47ラットポリク
ローナル抗体により、1次抗体反応を行った。その後、
PBS(−)で5分間ずつ、溶液を取り替えて2回の洗
浄をスロー・ロッキング・シェイカーによって行い、更
にPBS(−)−0.1%Tween20(バイオ・ラ
ッド,カタログ番号170-6531)溶液で15分間ずつ、溶
液を取り替えて4回の洗浄を行った。最終的に、PBS
(−)で5分間ずつ、2回の洗浄を行った。洗浄終了
後、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ラットIgG抗体(So
uthern Biotechnology,カタログ番号3030-05)を、2%
スキムミルクを含むPBS(−)溶液で5000倍に希
釈して調製した抗体溶液5mlを用いて、2時間、2次
抗体反応を行った。反応終了後、ニトロセルロース膜に
関して、PBS(−)溶液で5分間ずつ溶液を変えて2
回、更にPBS(−)−0.1%Tween20溶液で
15分間ずつ溶液を変えて5回の洗浄をスロー・ロッキ
ング・シェイカーにより行った。最後にPBS(−)溶
液で5分間ずつ2回の洗浄を行った。余分なPBS
(−)溶液を除去した後、ウェスタンブロッティング検
出試薬(ECL Westernblotting detection reagent;Ame
rsham,カタログ番号RPN2106)をニトロセルロース膜上
に振りかけ、1分間インキュベートした後、余分な検出
試薬を除去し、ニトロセルロース膜をラップに包み、反
応面をX線フィルム(コダック X-OMAT,AR,カタログ番
号165 1454)に密着させて露光し、現像してHSP47
の有無の検討を行った。
【0033】その結果、対照試験、すなわち、シコニン
を添加しなかった胃癌細胞株KATO III では、分子
量約47kDのバンドが一本検出された。なお、分子量
は、分子量マーカー(ウシカーボニックアンヒドラー
ゼ、卵白オバルブミン、及びウシ血清アルブミン)によ
り決定した。シコニンを添加した胃癌細胞株KATOII
I では、分子量約47kDのバンドが検出されなかっ
た。すなわち、シコニンは、HSP47の発現を抑制す
る合成抑制剤の活性を有するものと結論付けられ、この
事実は、シコニンが細胞外マトリックス産生の亢進に抑
制的に働くことを示している。
【0034】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の合成抑制
剤は、例えば、肝硬変、間質性肺疾患、慢性腎不全(又
は慢性腎不全に陥いる疾患)、心肥大、術後の瘢痕や熱
傷性瘢痕、交通事故等の後に生じるケロイドや肥厚性瘢
痕、強皮症、動脈硬化、又は関節リウマチなどの細胞外
マトリックス産生の亢進の病態を示す病気に罹患した細
胞にみられるコラーゲン合成亢進を改善する作用を有す
る。従って、本発明による合成抑制剤を投与することに
より、臓器、組織の線維化、硬化が阻止され、その結
果、前記病気の患者の生理学的状態を有効に改善させ、
前記病気を効果的に治療することができる。また、本発
明の合成抑制剤は、血管新生の異常増殖を伴う各種疾患
の予防治療にも有用である。更に、I型コラーゲンとフ
ィブロネクチンを基本骨格とする間質が、癌の転移にお
いて離脱した癌細胞が近傍の脈管に侵入するまでのガイ
ド役を果たすことが、明らかとなっているので、本発明
の合成抑制剤を投与することにより、癌の転移を抑制す
ることも可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 31/12 ADA A61K 31/12 ADA 35/78 35/78 C

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シコニンを有効成分として含有すること
    を特徴とする、分子量47キロダルトンの熱ショックタ
    ンパク質の合成抑制剤。
  2. 【請求項2】 シコニンを含有する植物の抽出物を有効
    成分として含有することを特徴とする、分子量47キロ
    ダルトンの熱ショックタンパク質の合成抑制剤。
  3. 【請求項3】 シコンの抽出物を有効成分として含有す
    ることを特徴とする、分子量47キロダルトンの熱ショ
    ックタンパク質の合成抑制剤。
JP8218049A 1996-07-31 1996-07-31 シコニン含有hsp47合成抑制剤 Pending JPH1045575A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003007927A1 (fr) * 2001-07-12 2003-01-30 Yamatsu, Isao Inhibiteurs de synthese et de fonction pour proteines de choc thermique
EP2046313A4 (en) * 2006-07-10 2012-01-25 Glucox Biotech Ab USE OF NAPHTHOQUINONES IN THE TREATMENT AND CONTROL OF DIABETES, INSULIN RESISTANCE AND HYPERGLYCEMIA
JP2019108291A (ja) * 2017-12-18 2019-07-04 公立大学法人大阪市立大学 抗線維化剤

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WO2003007927A1 (fr) * 2001-07-12 2003-01-30 Yamatsu, Isao Inhibiteurs de synthese et de fonction pour proteines de choc thermique
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