JPH08290062A - 排ガス浄化触媒とその製造方法および排ガス浄化方法 - Google Patents

排ガス浄化触媒とその製造方法および排ガス浄化方法

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JPH08290062A
JPH08290062A JP7095107A JP9510795A JPH08290062A JP H08290062 A JPH08290062 A JP H08290062A JP 7095107 A JP7095107 A JP 7095107A JP 9510795 A JP9510795 A JP 9510795A JP H08290062 A JPH08290062 A JP H08290062A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 石油、石炭燃焼排ガスで使用する場合の必須
の性質であるSO2酸化活性の低減と、ひ素酸化物など
の揮発性酸化物による劣化を防止した触媒を提供すると
ともに、NH3消費量の増大を低減することができる脱
硝触媒を提供すること。 【構成】 Ti−V、Ti−Mo、Ti−W、Ti−V
−W、Ti−Mo−Vの組み合わせの酸化物、Cuまた
はFeを担持したモルデナイトなどのゼオライトなどの
NOxのNH3による還元活性を有する第1成分と、P
tを主成分にし、これにIr、Pd、Rh、Ruから選
ばれる1種以上の貴金属を添加し、該貴金属の添加量は
貴金属/Ptの重量比が0を超えて5以下の範囲で添加
した第2成分とからなる窒素酸化物のアンモニア還元機
能とアンモニアの酸化分解機能を有する排ガス浄化触媒
とその製法および該触媒を用いる排ガス浄化方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は未反応アンモニアの分解
活性を有する排ガス浄化硝触媒とその製造方法および該
触媒を用いる排ガスの浄化方法に係り、特に触媒の酸化
活性をコントロールすることにより、二酸化硫黄(SO
2)の三酸化硫黄(SO3)への転化抑制、アンモニア使
用量の増加の抑制、およびひ素などの揮発性酸化物蒸気
による未反応アンモニア分解活性の低下防止とを図って
高い脱硝性能と未反応アンモニアのリーク量の低減を長
期間維持できるようにしたアンモニア(NH3)を還元
剤とする排ガス浄化触媒とその製造方法および排ガス浄
化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】発電所、各種工場、自動車などから排出
される排煙中のNOxは、光化学スモッグや酸性雨の原
因物質であり、その効果的な除去方法として、アンモニ
ア(NH3)を還元剤とした選択的接触還元による排煙
脱硝法が火力発電所を中心に幅広く用いられている。触
媒には、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)あるい
はタングステン(W)を活性成分にした酸化チタン(T
iO2)系触媒が使用されており、特に活性成分の一つ
としてバナジウムを含むものは活性が高いだけでなく、
排ガス中に含まれている不純物による劣化が小さいこ
と、より低温から使用できることなどから、現在の脱硝
触媒の主流になっている(特開昭50−12681号公
報など)。
【0003】近年の環境保全の観点から発電所用大容量
ボイラなどの固定発生源にはNOx排出量に総量規制が
適用され、設備から排出される排ガス中のNOx量を極
めて低いレベルに抑えて運転することが必須になってき
ている。このためアンモニア還元方式の脱硝装置でも触
媒の充填量を増やし、アンモニア注入量を増加して脱硝
装置を高脱硝率で運転するなどの方法が検討されてい
る。このような高度な脱硝に対する需要に伴って、脱硝
反応に使用されなかった未反応アンモニアを低減するた
め分解触媒の設置、アンモニアの増加は免れない。この
ため、未反応アンモニア(以下リークNH3)もNOx
レベルと同程度まで低減することが必須となってきてい
るが、上記した高脱硝率運転では未反応アンモニアの増
加は免れない。このため未反応アンモニアを低減するた
めの分解触媒の設置、アンモニアの均一注入・混合など
が検討されている。本発明者らも貴金属を担持した多孔
体と酸化チタン系組成物とからなるアンモニアの分解活
性を有する脱硝触媒を発明し、それを用いて高脱硝率・
低リークNH3を実現できる排ガスの浄化方法を出願し
ている(特願平3−312308号、特願平4−138
514号など)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の触媒の
内、本発明者らの特願平3−312308号および特願
平4−138514号になる触媒は、高い未反応アンモ
ニア分解活性を有しており、ガス焚ボイラなどの比較的
きれいな排ガス浄化に際しては非常に高い脱硝率と低リ
ークNH3濃度を実現することができる画期的な触媒で
あったが、次の(イ)〜(ハ)に示すような多くの改良
点も残されていた。
【0005】(イ)触媒成分である貴金属の酸化活性が
高く、同一脱硝率を得るためにはNH3/NO比を高く
する必要があり、アンモニア消費量が増大する。図4は
未反応アンモニアの分解活性を有しない脱硝触媒(A)
と特願平4−138514号になる未反応アンモニア分
解活性を有する従来触媒(B)のNH3/NO比を変化
させた場合の脱硝率とリークNH3量を示したものであ
るが、NH3/NO比を高めれば高脱硝率と低リークN
3量を満足できるものの、式(1) 2NH3+3/2O2 → N2+3H2O (1) のNH3の消費反応が無視できず、同一脱硝率を得るた
めにはNH3分解活性を持たないものに比し、多量のN
3注入が必要であった。
【0006】(ロ)NH3の酸化成分である貴金属の酸
化活性が高く、排ガスがSO2を含有する場合には下記
式(2) SO2+1/2O2 → SO3 (2) のSO2酸化反応が生じ、排ガス中のSO3濃度が高くな
り、後流機器の酸性腐食が増大する場合があった。
【0007】(ハ)石炭排ガスなどの排ガス中にひ素、
セレン、レニウムなどの揮発性酸化物が含まれる場合な
どの酸化反応によって揮発性酸化物が不揮発化して触媒
に蓄積し、リークNH3の分解率が経時的に低下すると
いう問題があった。
【0008】本発明の目的は、上記した従来触媒の問題
点をなくし、油、石炭燃焼排ガスで使用する場合の必須
の性質であるSO2酸化活性の低減の防止と、ひ素酸化
物などの揮発性酸化物による劣化を防止した排ガス浄化
触媒とその製造方法および排ガス浄化方法を提供するこ
とである。また本発明の目的は、排ガス中に添加する還
元剤であるNH3消費量の増大を低減することができる
脱硝触媒とその製造方法および排ガス浄化方法を提供す
ることである。
【0009】また、本発明の目的は、排ガス中の二酸化
硫黄(SO2)の三酸化硫黄(SO3)への転化抑制、ア
ンモニア使用量の増加の抑制、およびひ素などの揮発性
酸化物蒸気による未反応アンモニア分解活性の低下防止
とを図って高い脱硝性能と未反応アンモニアのリーク量
の低減を長期間維持できるようにしたアンモニア(NH
3)を還元剤とする排ガス浄化触媒とその製造方法およ
び排ガス浄化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、次の構成からなる。チタン酸化物およびモ
リブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム
(V)から選ばれた一種以上の元素の酸化物からなる組
成物または銅(Cu)もしくは鉄(Fe)を担持したゼ
オライトからなる組成物を第1成分とし、イリジウム
(Ir)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ル
テニウム(Ru)から選ばれる少なくとも一つの金属と
白金(Pt)とからなり、前記金属の白金(Pt)に対
する重量比が0を超えて5以下の割合で含まれる予め多
孔体に担持した第2成分とからなる窒素酸化物のアンモ
ニア還元機能とアンモニアの酸化分解機能を有する排ガ
ス浄化触媒である。
【0011】本発明の触媒は第1成分としてNOxのア
ンモニアによる還元反応に活性な触媒組成物、第2成分
として白金(Pt)を主成分とし、これにイリジウム
(Ir)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)また
はルテニウム(Ru)から選ばれる一種以上の貴金属と
を高シリカゼオライト、シリカ、アルミナなどの多孔物
質に担持せしめたものを用い、両者を混ぜ合せて得られ
る。
【0012】具体的には、第1成分としてはあらかじめ
公知の方法で調製したTi−V、Ti−Mo、Ti−
W、Ti−V−W、Ti−Mo−Vの組み合わせの酸化
物、CuまたはFeを担持したゼオライト(モルデナイ
トなど)などのNOxのNH3による還元活性を有する
ものを用い、第2成分としてはゼオライト、多孔質シリ
カ、多孔質アルミナにあらかじめ上記金属元素をイオン
交換、含浸などにより担持せしめた組成物を焼成したも
のを用いる。
【0013】第2成分中の貴金属とは、Ptを主成分に
し、これにIr、Pd、Rh、Ruから選ばれる一種以
上の貴金属を添加し、該貴金属の添加量は貴金属/Pt
の重量比が0を超えて5以下の範囲で添加したものであ
り、該貴金属は塩化物、硝酸塩、有機塩の混合溶液の形
で同時に、あるいは逐次担持することにより複合化して
用いられる。
【0014】また、両成分を混合して触媒体とする方法
には、 予め調製した第1成分と、第2成分粉末をそのまま乾
式でペレット状に成形する方法、 両成分粉体を所定割合で水の存在下、必要に応じて有
機/無機バインダ、無機繊維などを添加して混練して得
たペーストをハニカム状に成形したり金属基板に塗布す
る方法 など従来の脱硝触媒に用いる一般的方法を用いることが
できる。さらに得られた成形体は必要に応じて乾燥・焼
成される。
【0015】例えば、チタン化合物にV、Mo、Wのう
ち少なくとも一種以上の元素の化合物を水とともに添加
混合し、乾燥、焼成したもの、またはCuまたはFeを
イオン交換して担持したゼオライトを第1成分とし、予
めゼオライト、シリカ、アルミナなどの多孔体にPtと
その他の金属としてIr、Pd、Rh、Ruから選ばれ
る少なくとも一つの金属を担持後、焼成して第2成分と
し、第1成分と第2成分を混合後、所定形状に成形し、
乾燥、焼成して本発明の触媒とする。
【0016】前記調製方法を含め、公知のどのような方
法で本発明の触媒を製造してもよく、(A)Ir、P
d、RhまたはRuがPtと共に多孔性担体に担持され
ており、Ptに対するIr、Pd、RhまたはRuの重
量比が0を超えて5以下、望ましくは0を超えて2以下
の範囲にあること、(B)貴金属担持多孔体(第2成
分)に対するNOのNH3の酸化活性を有する触媒成分
(第1成分)の重量比が、80%以上であり、全体の貴
金属含有量は100ppm以下であることが望ましい。
【0017】図3(a)〜(c)に本発明の触媒の使用
形態を示す。ボイラ1からの排ガスの流路に反応器2、
熱交換機3、電気集塵機4、煙突5をこの順に配置す
る。また反応器2の前流部にはNH3注入ライン6を設
ける。そして反応器2内の全部に、もしくは従来の酸化
チタン系触媒などの公知の脱硝触媒8と組み合せて一部
に本発明の触媒7を用いて脱硝触媒層を形成させる。図
3(a)は反応器2内の全部に本発明の触媒7を用いて
脱硝触媒層を形成させた例であり、図3(b)は反応器
2内に公知の脱硝触媒8の後流側に本発明の触媒7を配
置して脱硝触媒層を形成させた例であり、図3(c)は
反応器2内に二つの公知の脱硝触媒8の間に本発明の触
媒7を配置して脱硝触媒層を形成させた例である。図3
(a)〜(c)のいずれの場合にも本発明の触媒7の特
色であるNH3による窒素酸化物(NOx)の還元とそ
の際の未反応アンモニアを窒素と水に酸化分解してリー
クNH3を低減させる効果が得られることはもとより、
従来触媒に比べNH3の消費量を少なくでき、SO2のS
3への添加を低レベルで維持できるので、後流機器へ
の悪影響を小さくできるのみならず、長時間高い触媒活
性を維持することができる。
【0018】本発明の触媒7の特徴は前述したように第
2成分中の貴金属の種類と第2成分と第1成分を混合し
た点に特色があり、その調製法も前述の要件を満たせば
どのような調製法であっても採用できることは言うまで
もない。しかし、次のような方法を用いればより優れた
触媒を得ることができる。
【0019】本発明の触媒7の第1成分は、前記したよ
うな各種のものを使用することができるが、特に触媒成
分としてTi−V、Ti−V−Mo、Ti−W−Vなど
の元素からなる酸化物触媒を用いた場合に好結果をもた
らす。これらは、チタメタン酸などの含水酸化チタンの
スラリにバナジウム、モリブデン、タングステンの酸素
酸塩などの塩類を添加し、加熱ニーダを用いて水を蒸発
させながらペースト状にし、乾燥後、400℃から70
0℃で焼成、必要に応じて粉砕することによって得られ
る。
【0020】本発明の触媒7の第2成分は、あらかじめ
ゼオライト、シリカ、アルミナなどの多孔体のミクロポ
ア内にイオン交換や混練により担持して調製される。第
2成分に用いられる多孔体はモルデナイト、クリノプチ
ロライト、エリオナイト、Y型ゼオライトなどの水素置
換体、ナトリウム置換体、カルシウム置換体などのゼオ
ライト、表面積が100m2/gから500m2/gのシ
リカ、アルミナなどが使用できる。使用に際しての粒径
は1から10μm程度が良く、あらかじめ粉砕して用い
ることもできる。これらにPtおよびその他の貴金属
(Ir、Pd、RhあるいはRu)から選ばれる少なく
とも一以上の貴金属をその塩化物、硝酸塩、あるいはア
ンミン錯体の形で溶解した水溶液中に浸漬してイオン交
換するか、水溶液と共に蒸発乾固し、前記貴金属を0.
01wt%〜0.1wt%担持後焼成して貴金属塩を金
属に分解して用いる。Ptに添加するその他の貴金属の
添加比率はPtに対する重量比で0を超えて5以下、望
ましくは2以下が適当である。
【0021】第1、第2成分の混合比率は第2成分中の
貴金属担持量により最適値が異なるが、第2成分/第1
成分比(以下第2成分/第1成分比)として20/80
〜0.5/99.5望ましくは10/90〜1/99
(重量比)の範囲が適当である。
【0022】第1、第2成分の両方の成分の粉末に、水
と必要に応じて無機バインダ、成形助剤、無機繊維など
周知の成形性向上剤を添加し、ニーダなどの混練機で混
練してペースト状にする。
【0023】得られたペースト状触媒は無機繊維製網状
基材、溶射などにより粗面化した金属基板などに塗布さ
れ板状触媒に成形されるか、押出成形機により柱状ある
いはハニカム状に成形される。成形体は乾燥後硫酸塩が
硫酸塩として残存する温度、通常450℃〜550℃で
焼成して用いられる。
【0024】得られた本発明の触媒7は、図3のように
反応器2の脱硝触媒層の全部もしくは従来の公知の脱硝
触媒8と組み合わせて、その一部を構成する触媒7とし
て充填され、排ガス中のNOx濃度が高い領域では脱硝
触媒として、また、排ガス中のNOx濃度が低下した領
域では未反応(余剰)アンモニアの分解触媒として作用
する。使用条件としては、特に制限はないが、本発明の
触媒7の特徴であるリークNH3の低減効果が大きいの
は排ガス中のNOxと還元剤であるNH3のモル比(N
3/NOx比)が0.8以上の場合であり、高脱硝率
運転を行う脱硝装置として好適である。
【0025】本発明の触媒7の第2成分中のPtとこれ
に添加する貴金属の重量比率は特に重要であり、Ptに
対する他の貴金属の添加重量比が小さい場合には式
(1)〜(3)の副反応の抑制が十分でなく、また大き
すぎる場合には式(5)の反応が生じにくくなり、リー
クNH3の分解率の低下を招くようになる。前記重量比
率は0を超えて5重量比以下で選定できるが、2重量比
以下、または添加する貴金属によっては1重量比以下に
選定した場合に好結果を得易い。
【0026】本発明では、第2成分/第1成分比も重要
で前述した範囲のうち、貴金属担持量の大きいゼオライ
ト、シリカ、アルミナなどを用いて第2成分/第1成分
比が小さくなるように選定し、かつ触媒全体の貴金属担
持量が1から1000ppm望ましくは10から100
ppmの範囲にすることが好結果を与える。これは第2
成分の形成するミクロポアが第1成分の形成するマクロ
ポア内にまばらに存在してNH3が選択的に第1成分に
吸着し、脱硝反応に用いられ易くするためである。また
貴金属量を少なくすることは触媒単価を低くできるとい
う経済的効果以外に、脱硝反応とアンモニアの酸化反応
をNOの存在の有無によって分離され易くする効果もあ
る。
【0027】また、第2成分/第1成分比は、触媒層全
体を本発明の触媒7で構成する場合には小さく選定し、
従来触媒と組み合わせて一部に本発明の触媒7を使用す
る時には大きくすると同時に貴金属含有量も多くすると
好結果を得易い。
【0028】排ガスがひ素(As)、セレン(Se)お
よび/またはレニウム(Re)の揮発性酸化物を含有し
ていても本発明の触媒活性は低下しない。
【0029】
【作用】従来の未反応アンモニアの分解活性を有する脱
硝触媒は、貴金属を担持した多孔性担体とTi−W−V
系などに代表されるNOxのNH3による還元化性を有
する触媒成分とで構成されることを特徴としている(特
願平3−312308号および特願平4−138514
号など)。これらの従来の触媒は、Ti−W−V系など
の成分上で生じる下記式(4)の脱硝反応で余った/も
しくは使用されなかった未反応アンモニアを、貴金属表
面で式(5)の反応により一部NOに酸化し、その後残
留する未反応アンモニアで再び式(4)の反応により窒
素にまで還元することにより高い脱硝率と高い未反応ア
ンモニア分解活性とを発現するようにした画期的なもの
であった。 NH3+NO+1/4O2 → N2+3/2H2O (4) NH3+3/2O2 → NO+3/2H2O (5)
【0030】ところが、これらの触媒では、Pt、P
d、Rhなどの貴金属を単独で多孔性担体に担持せしめ
た成分を用いていたため高い未反応アンモニア分解率を
得ようとすると触媒の酸化活性が高くなることに起因す
る問題を生じていた。すなわち、式(1)のNH3消費
反応が大きく、高脱硝率を得るためには多くのNH3
添加が必要となること、式(2)による反応で排ガス中
のSO2をSO3に酸化し、排ガス流路の後流側に配置し
た機器へ悪影響を与えること、式(3)に例示される揮
発性酸化物が不揮発性酸化物に転化する反応で触媒表面
に不揮発性酸化物が蓄積することにより石炭排ガス中で
劣化が生じ易いことなどである。 2NH3+3/2O2 → N2+3H2O (1) SO2+1/2O2 → SO3 (2) As23+O2 → As25 (3)
【0031】本発明の触媒7では、式(5)の反応に特
に優れるPtをベースに、これにIr、Pd、Rhある
いはRuを添加されている点に特徴がある。このような
組成にすることにより、式(5)の反応活性は前記本発
明者らの従来触媒と同等で、しかも式(1)〜(3)の
副反応を大きく抑制することができる。その結果、未反
応アンモニアを効率よく除去できるにもかかわらず、ア
ンモニア消費量の増大やSO2のSO3への転化をほとん
ど招くことがない上、揮発性酸化物の不揮発化による触
媒の劣化も生じにくい。
【0032】これにより従来の触媒が使用できなかった
石油、石炭燃焼排ガスなどのSO2含有排ガスの脱硝装
置の未反応アンモニアの分解が可能になるほか、NH3
使用量の増大を招かない高脱硝率・低リークNH3の脱
硝装置を実現することが可能になる。
【0033】
【実施例】本発明の一実施例を説明する。本発明は以下
の実施例に限定されるものではない。以下、具体的実施
例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0034】実施例1 メタチタン酸スラリ(TiO2含有量:30wt%、S
4含有量:8wt%)67kgにパラタングステン酸
アンモニウム((NH41010・W1246・6H2O)
を2.41kgおよびメタバナジン酸アンモン0.63
kgとを加えて加熱ニーダを用いて水を蒸発させながら
混練し水分約36%のペーストを得た。これを3φの柱
状に押し出し造粒後、流動層乾燥機で乾燥し、次に大気
中550℃で2時間焼成した。得られた顆粒をハンマー
ミルで1μm以下の粒径が60%以上になるように粉砕
して第1成分である脱硝触媒粉末を得た。このときの組
成はV/W/Ti=2/5/92(原子比)である。
【0035】一方、塩化白金酸(H2[PtC16]・6
2O)0.332gと塩化イリジウム(IrCl4
0.217gとを水1リットルに溶解したものに、高表
面積微粒シリカ(富田製薬(株):マイコンF)500
gを加え、砂浴上で蒸発乾固してPtを担持した。これ
を180℃で2時間乾燥後、500℃で2時間焼成し、
0.025wt%Pt−0.025wt%Ir−シリカ
を調製して第2成分にした。このときのIr/Pt重量
比は1である。
【0036】これとは別に繊維径9μmのEガラス製繊
維1400本の捻糸を10本/インチの粗さで平織りし
た網状物にチタニア40%、シリカゾル20%、ポリビ
ニールアルコール1%のスラリーを含浸し、150℃で
乾燥して剛性を持たせ触媒基材を得た。
【0037】第1成分19.8kgと第2成分200g
とに、シリカ・アルミナ系無機繊維5.3kg、水17
kgを加えてニーダで混練し、触媒ペーストを得た。上
記基材2枚の間に調製したペースト状触媒混合物を置
き、加圧ローラを通過させることにより基材の編目間お
よび表面に触媒を圧着して厚さ約1mmの板状触媒を得
た。得られた触媒は、180℃で2時間乾燥後、大気中
550℃で2時間焼成した。本触媒中の第1成分と第2
成分の第2成分/第1成分比(重量比)は1/99で有
り、貴金属含有量は触媒基材・無機繊維を除いて5pp
mに相当する。
【0038】実施例2〜4 実施例1の塩化イリジウムを硝酸パラジウム(Pd(N
32)0.271g(実施例2)、硝酸ロジウム(R
h(NO33・2H2O)0.393g(実施例3)お
よび塩化ルテニウム(RuCL4・5H2O)0.237
g(実施例4)に代え、他は実施例1と同様にして触媒
を調製した。
【0039】調製した触媒の貴金属含有量は5ppmで
あり、Pd/Pt、Rh/PtおよびRu/Pt重量比
はともに1である。
【0040】比較例1〜5 実施例1の貴金属に代え塩化白金酸、塩化イリジウム、
塩化パラジウム、塩化ロジウムおよび塩化ルテニウムの
単独塩類とし、添加量をそれぞれ0.665g、0.4
34g、0.542g、0.786g、0.474gと
して実施例1と同様に触媒を調製した。
【0041】実施例1〜4および比較例1〜5の触媒を
幅20mm×長さ100mmに切断し、3mm間隔で反
応器2(図3)に3枚充填し、表1に示した条件で脱硝
率と反応器2出口で検出される未反応アンモニアの濃度
を測定し、未反応アンモニアの分解率を算出した。これ
と同時に、反応器2内の触媒層の前後でのSO2の濃度
を測定してSO2の減少率からSO2の酸化率を算出し
た。
【0042】
【表1】
【0043】なお、ここで未反応アンモニアの分解率は
次式で求められるものである。 未反応NH3分解率(%)=([NH3]in−[NH3]de
nox−[NH3]out)÷([NH3]in−[NH3]denox)
×100 [NH3]in :反応器入口NH3濃度 [NH3]out :反応器出口NH3濃度(リークNH3
濃度) [NH3]denox :脱硝反応に使用されたNH3の濃度 得られた結果を表2にまとめて示す。
【0044】
【表2】
【0045】表2から明らかなように、比較例1の触媒
は高い未反応アンモニア分解率を有するもののSO2
化率は著しく高く、後流機器への悪影響が懸念される
上、脱硝率も低くSO2含有排ガス触媒としては不適当
である。また、比較例2〜5の触媒は、SO2酸化率は
低いが未反応アンモニアの分解率は非常に低く、リーク
NH3の低減を目的とする用途には不適当であることは
自明である。
【0046】一方、本発明になる実施例1〜5の触媒は
未反応アンモニアの分解率が高いにもかかわらず、高い
脱硝率を得ることができる上、SO2酸化率は比較例1
の触媒の1/4〜1/10以下と低い値である。
【0047】このように、本発明の上記実施例の触媒
は、Ptと他の貴金属を組み合わせることにより、高脱
硝率、高未反応アンモニア分解率を維持しつつ、SO2
酸化率を抑制した点に特徴がある。
【0048】また、実施例1の触媒と未反応アンモニア
分解率の高かった比較例1の触媒について、表1の条件
下でNH3濃度を変化させた場合の脱硝率と反応器2の
触媒層出口で検出されるアンモニア濃度(リークNH3
濃度)を測定し、図1に示した。実施例1および比較例
1の触媒ともに未反応アンモニアのリーク濃度が低い点
は同様であるが、脱硝率の挙動は大きく異なっている。
すなわち、比較例1の触媒では高脱硝率を得るためには
NH3/NO比を1を大きく超えてNH3を添加する必要
があるのに対し、実施例1の触媒では脱硝反応の量論量
である1近辺のNH3注入量で高脱硝率が達成でき、脱
硝装置の運転経費を大きく低減できることが可能であ
る。
【0049】実施例5〜8 実施例1〜4の全貴金属量は5ppmとそれぞれ同じ含
有量とし、Ir、Pd、Rh、RuのPtに対する重量
比を0.1、0.5、1、2、5とそれぞれ変化させて
触媒を調製した。
【0050】得られた触媒について、表1の条件でSO
2酸化率、脱硝率、未反応アンモニアの分解率を測定し
て得られた触媒について、表1の条件でSO2酸化率、
脱硝率、未反応アンモニアの分解率を測定した結果を図
2に示す。Ptに対する他の貴金属の添加量が0の点の
比較例1の触媒と比較すると、実施例5〜8の触媒は、
いずれの貴金属を添加した場合にもSO2酸化率の顕著
な抑制効果がみられると同時に脱硝率の向上が認められ
る。しかしながら、貴金属の添加量が増大するにしたが
って、未反応アンモニアの分解率の低下が認められ、I
r、Pd、Rh、RuのPtに対する重量比は5以下望
ましくは2以下がよいことが解る。
【0051】実施例9 実施例1の触媒の第2成分中の貴金属担持量を0.01
wt%に変更すると同時に、第2成分と第1成分の混合
比を0.5/99.5に変更し全貴金属量0.5ppm
の触媒を調製した。
【0052】実施例10〜12 比較例2〜4の触媒における第2成分の貴金属に代え、
Pd/Pt、Rh/Pt、Ru/Ptを重量比を2と
し、第2成分/第1成分比をそれぞれ2/98、20/
80、10/90に変更して触媒を調製した。この場合
の貴金属含有量は各々10ppm、100ppm、50
ppmである。
【0053】比較例6〜9 実施例9〜10触媒における第2成分の貴金属をすべて
Ptに置き換えてPt担持量が0.5、10、100、
50ppmの触媒を調製した。
【0054】得られた実施例9〜12および比較例6〜
9の触媒について、実施例1の場合と同様に表1の条件
で脱硝率、未反応アンモニア分解率、SO2酸化率を測
定し表3にまとめた。
【0055】
【表3】
【0056】表3からわかるように、本発明になる触媒
はPtと他貴金属の組み合わせにより、貴金属担持量の
少ないものから多いものまで、高脱硝率、高未反応分解
率および低SO2酸化率を保つことができることが分か
る。
【0057】実施例13〜16 石炭排ガスなどに含まれる酸化ひ素などの揮発性酸化物
を用いて本発明の触媒の劣化を加速させる試験をするた
め、実施例1〜4の触媒と比較例1の触媒を用い、表1
の組成のガス中に亜酸化ひ素(As23)水溶液を添加
・蒸発させ、As23濃度が50ppmになるように調
整した。この条件で5時間保持して触媒にひ素酸化物を
吸着させ、触媒性能の変化を調べた。表4に上記加速劣
化試験前後の触媒の未反応アンモニア分解率の変化をま
とめた。
【0058】
【表4】
【0059】この表4から明らかなように本発明になる
触媒は、石炭排ガスなどに含まれる亜酸化ひ素の蒸気に
よる劣化に対しても耐久性を示し、ダーティ排ガス脱硝
用触媒に最適なものである。
【0060】実施例17 実施例1の第1成分を8%のCuをイオン交換したモル
デナイトに代えて、その他は実施例1と同様にして触媒
を調製した。この触媒を用いて実施例1の場合と同様に
表1の条件で脱硝率、未反応アンモニアの分解率、SO
2酸化率を測定したところ、それぞれ98%、97%、
1.9%と、実施例1と同等の性能が得られた。
【0061】
【発明の効果】従来のNH3分解活性を有する脱硝触媒
の欠点であるNH3消費量の増大を低減できるととも
に、SO2酸化活性が非常に低くでき、脱硝触媒後流側
の被処理ガス流路に配置される機器の酸性腐食などの悪
影響を小さくできる。
【0062】さらに本発明になる触媒は、酸化ひ素を始
めとする揮発性酸化物蒸気を触媒毒として含有する石炭
燃焼排ガス、産業廃棄物燃焼炉排ガス、ゴミ焼却炉排ガ
ス処理に用いても未反応アンモニアの分解活性が長期間
低下せず、これらの排ガスを処理する脱硝反応器からリ
ークするアンモニアを低減するために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例になる脱硝触媒がアンモニ
アの使用量の低減に効果があることを示す図である。
【図2】 本発明の一実施例の触媒組成がSO2の酸化
率の抑制に好適であることを示す図である。
【図3】 本発明の触媒を被処理ガス流路に配置する実
施態様を示す図である。
【図4】 従来の本発明者らの発明した脱硝触媒の解決
すべき課題を示すための説明図である。
【符号の説明】
1…ボイラ、2…反応器、3…熱交換器、4…電気集塵
機、5…煙突、6…アンモニア注入ライン、7…本発明
の触媒、8…公知脱硝触媒
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年5月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 23/63 B01D 53/36 102H B01J 23/56 A

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン酸化物およびモリブデン、タング
    ステン、バナジウムから選ばれた一種以上の元素の酸化
    物からなる組成物または銅もしくは鉄を担持したゼオラ
    イトからなる組成物を第1成分とし、イリジウム、パラ
    ジウム、ロジウム、ルテニウムから選ばれる少なくとも
    一つの金属と白金とからなり、前記金属の白金に対する
    重量比が0を超えて5以下の割合で含まれる予め多孔体
    に担持した第2成分とからなることを特徴とする窒素酸
    化物のアンモニア還元機能とアンモニアの酸化分解機能
    を有する排ガス浄化触媒。
  2. 【請求項2】 第2成分中のイリジウム、パラジウム、
    ロジウム、ルテニウムから選ばれる少なくとも一つの金
    属の白金に対する重量比が0を超えて2以下であること
    を特徴とする請求項2に記載の窒素酸化物のアンモニア
    還元機能とアンモニアの酸化分解機能とを有する排ガス
    浄化触媒。
  3. 【請求項3】 第2成分/第1成分比(重量比)が20
    /80〜0.5/95.5であり、触媒中の貴金属の含
    有量が100ppm以下であることを特徴とする排ガス
    浄化触媒。
  4. 【請求項4】 チタン化合物にバナジウム、モリブデ
    ン、タングステンのうち少なくとも一種以上の元素の化
    合物を水とともに添加混合し、乾燥、焼成したもの、ま
    たは銅または鉄をイオン交換して担持したゼオライトを
    第1成分とし、予めゼオライト、シリカ、アルミナなど
    の多孔体に白金とその他の金属としてイリジウム、パラ
    ジウム、ロジウム、ルテニウムから選ばれる少なくとも
    一つの金属を担持後、焼成して第2成分とし、第1成分
    と第2成分を混合後、所定形状に成形し、乾燥、焼成し
    て触媒とすることを特徴とする窒素酸化物の還元機能と
    アンモニアの酸化分解機能を有する排ガス浄化触媒の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 第2成分/第1成分比が20/80〜
    0.5/95.5となる重量比で各々の成分を混合し、
    かつ触媒中の貴金属の含有量が100ppm以下となる
    ように貴金属を混合することを特徴とする請求項4記載
    の窒素酸化物の還元機能とアンモニアの酸化分解機能を
    有する排ガス浄化触媒の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし3のいずれかに記載の排
    ガス浄化触媒と排ガスとをアンモニアの存在下に接触さ
    せ、排ガス中の窒素酸化物を還元除去するとともに、未
    反応のアンモニアの酸化分解を行うことを特徴とする排
    ガス浄化方法。
  7. 【請求項7】 排ガスが硫黄酸化物と窒素酸化物を含有
    し、排ガス中の窒素酸化物に対するアンモニアのモル比
    を0.8以上となるようにアンモニアを該排ガスと混合
    することを特徴とする請求項6記載の排ガス浄化方法。
  8. 【請求項8】 排ガスがひ素、セレンおよびレニウムの
    少なくともいずれかの元素の揮発性酸化物を含有するこ
    とを特徴とする請求項6または7記載の排ガス浄化方
    法。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし3のいずれかに記載の排
    ガス浄化触媒を脱硝触媒とを組み合わせて排ガス中の窒
    素酸化物を還元除去するとともに、未反応のアンモニア
    の酸化分解を行うことを特徴とする排ガス浄化方法。
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