JPH08261171A

JPH08261171A - スクロール形圧縮機

Info

Publication number: JPH08261171A
Application number: JP6037295A
Authority: JP
Inventors: Isamu Kawano; 勇川野; Akira Suzuki; 昭鈴木; Kazuaki Shiiki; 和明椎木; Shigeru Machida; 茂町田; Tatsuo Natori; 達雄名取
Original assignee: Hitachi Ltd
Current assignee: Hitachi Ltd
Priority date: 1995-03-20
Filing date: 1995-03-20
Publication date: 1996-10-08

Abstract

(57)【要約】【構成】各スクロールラップ先端部には溝（４）を形成
してこの溝にシール材（３）を設けた。該シ−ル材は弾
性力を有する高分子材料で形成され、かつシール材が接
触する旋回及び固定スクロール（１，２）の溝底面及び
ラップ側面に２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜または
陽極酸化皮膜処理をする。また、両歯形スクロール圧縮
機において、スクロールラップ先端部に形成した溝に設
けたシ−ル材の内・外周面の少なくとも一方の面の大部
分を溝壁面と接触させ、かつ他方の面の一部を溝壁面に
接触するようにして嵌入させている。さらに、シール材
とシール溝を複数に分割し中心部ほど高機能のシール材
を用いる。【効果】シール材とスクロール歯溝底面及びスクロール
ラップどうしの潤滑性，シール性が向上でき、寿命及び
性能の向上が図れる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、渦巻状に構成されたス
クロール部材によって三日月状の圧縮室が形成されるス
クロール圧縮機に関し、特にスクロールラップ先端部に
溝を形成してこの溝にシール材を設けた構造のスクロー
ル圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】スクロール圧縮機は、鏡板に渦巻状のラ
ップを直立して設けた２つのスクロール部材（旋回及び
固定スクロ−ル）を互いに噛み合わせて、一方のスクロ
ール部材を他方のスクロール部材に対して自転しないよ
うに拘束しながら相対的に旋回運動させ、スクロール部
材の外周部から中央部に向かって気体を圧縮させるもの
である。この種のスクロール圧縮機においては、スクロ
ールラップによって画成される圧縮室内の気体の圧力に
よって旋回スクロールと固定スクロールとが相互に離反
する力を受ける通常の構造のもの、及び旋回スクロール
鏡板の両面にラップを有しそれぞれの面に圧縮作動室を
形成して圧縮気体によるスラスト力をキャンセルさせる
両歯形（ダブル）構造のスクロ−ル圧縮機がある。

【０００３】なお、従来技術としては例えば特開平１−
３１３６８４号公報に記載されたものがある。この公知
技術によれば固定スクロールの間に配置され両面にラッ
プを直立した旋回スクロールは中央部に設けられた駆動
軸によって駆動され、駆動軸とは独立して外周部に配置
された平行軸によって旋回運動の補助を行い、旋回スク
ロールが円滑に運動するように構成されている。さらに
駆動軸は、滑り軸受で支持されていて各軸受部には潤滑
油が供給されるように構成されている。

【０００４】スクロールラップによって画成される圧縮
室内の気体の圧力によって旋回スクロールと固定スクロ
ールとが相互に離反する力を受ける構造とし、ラップ先
端に渦巻方向に分割したシール材を設けることは特開昭
６３−２１２７８８号公報などに記載されている。ま
た、スクロールラップによって画成される圧縮室内の気
体の圧力によって旋回スクロールと固定スクロールとが
相互に離反する力を受けるスクロ−ル圧縮においてその
表面処理として陽極酸化皮膜（硬質アルマイト）を形成
することは特開昭６３−２８９２８０号公報に記載され
ている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】旋回スクロールと固定
スクロールがラップを互いに内側にして噛み合わせ、旋
回スクロールが旋回運動することによりそれぞれのラッ
プ間で圧縮作動室を形成して気体を圧縮し、かつ各スク
ロールラップ先端部にシール材が嵌入されている構造の
スクロール圧縮機においては、シール材とそれに接触す
る相手材は、温度条件などの使用環境が、部材の寿命や
スクロール圧縮機の性能に直接関係するため非常に重要
である。

【０００６】本発明の目的は、各スクロールラップ先端
部に溝を形成してこの溝にシール材を設けたスクロール
圧縮機の寿命及び性能を向上させることにある。

【０００７】本発明の他の目的は、旋回スクロールと固
定スクロールが噛み合って形成される圧縮作動室に潤滑
油等の液体が存在しないタイプのオイルフリ−スクロ−
ル圧縮機において、スクロールラップ先端部の溝に設け
たシール材接触部の潤滑性、耐摩耗性を改善して圧縮機
の寿命及びを向上させることにある。

【０００８】本発明の更に他の目的は、スクロールラッ
プ先端部に設けたシール材の寿命を向上させると共にそ
のコストを低減するこのできるスクロ−ル圧縮機を得る
ことにある。

【０００９】本発明の更に他の目的は、スクロールラッ
プ先端部に設けたシール材の接触摩擦力を低減して圧縮
機の体積効率を向上することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の第１の特徴は、旋回スクロールと固定スクロ
ールがラップを互いに内側にして嵌合され、旋回スクロ
ールが旋回運動することによりラップ間に圧縮作動室を
形成して気体を圧縮し、かつ前記各スクロールラップ先
端部に溝を形成してこの溝にシール材を嵌入した構造の
スクロール圧縮機において、前記シール材は弾性力を有
する高分子材料で形成し、このシール材が接触する旋回
及び固定スクロールの少なくとも各溝底面に浸陽極酸化
皮膜、好ましくは２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜を
形成して、前記シール材が接触する部分の潤滑性、耐摩
耗性及び寿命を向上させたことにある。

【００１１】前記スクロールラップの各側面にもそれぞ
れ２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜を施すとさらに良
い。

【００１２】また、好ましくはスクロ−ルラップの先端
部に形成したチップシ−ルを設けるための溝は、スクロ
−ルラップの渦巻方向に複数に分割して設け、それぞれ
の溝にシ−ル材を介装し、かつ溝に介装された前記シー
ル材の渦巻方向長さを前記溝の渦巻方向長さより、圧縮
過程において発生する熱によるシール材の熱膨張を許容
するように短く構成する。

【００１３】本発明の第２の特徴は、鏡板両面にスクロ
ールラップを直立して形成した旋回スクロールと、この
旋回スクロールの両側に配置され前記各ラップに係合す
る一対の固定スクロールとを備え、前記旋回スクロ−ル
を自転させることなく公転可能に構成した両歯形スクロ
−ル圧縮機において、前記各スクロールラップ先端部に
溝を形成してこの溝に高分子材料で形成した弾性力を有
するシール材を設け、かつこのシ−ル材の内・外周面の
少なくとも一方の面の大部分を溝壁面と接触させ、かつ
他方の面の一部を溝壁面に接触するようにして嵌入させ
たことにある。

【００１４】なお、好ましくは前記シール材が接触する
旋回及び固定スクロールの各溝底面に２硫化モリブデン
含浸陽極酸化皮膜を施す。◆さらに好ましくは、ラップ
先端に設けたシール材介装用溝をスクロールの渦巻方向
に複数個に分割し、この分割された各溝にそれぞれシー
ル材を設けると共に、スクロ−ルの中心部側のシ−ル材
をスクロ−ルの外周部側のシ−ル材より耐熱性の高い材
質とする。また、スクロ−ルの中心部側のシ−ル材をス
クロ−ルの外周部側のシ−ル材より耐摩耗性の高い材質
とする。さらに、スクロ−ルの中心部側のシ−ル材をス
クロ−ルの外周部側のシ−ル材より摩耗係数の小さい材
質とする。また、スクロ−ルの中心部側のシ−ル材をス
クロ−ルの外周部側のシ−ル材より接触摩擦力の小さい
材質とする。

【００１５】本発明の第３の特徴は、鏡板両面にスクロ
ールラップを直立して形成した旋回スクロールと、この
旋回スクロールの両側に配置され前記各ラップに係合す
る一対の固定スクロールとを備え、前記旋回スクロ−ル
を自転させることなく公転可能に構成した両歯形スクロ
−ル圧縮機において、前記各スクロールラップ先端部に
溝を形成してこの溝に高分子材料で形成した弾性力を有
するシール材を設け、このシ−ル材が接触する各スクロ
ールの溝底面には陽極酸化皮膜を施したことにある。ま
た好ましくは、各スクロールラップの側面にも陽極酸化
皮膜を施す。さらに、前記陽極酸化被膜の厚さを０．０
０５〜０．０６ｍｍ、より好ましくは０．０２〜０．０
３ｍｍとする。なお、前記陽極酸化被膜の上に固体潤滑
材を塗布しても良い。

【００１６】本発明の第４の特徴は、旋回スクロールと
固定スクロールがラップを互いに内側にして嵌合され、
旋回スクロールが旋回運動することによりラップ間に圧
縮作動室を形成して気体を圧縮し、かつ前記各スクロー
ルラップ先端部に溝を形成してこの溝にシール材を設け
た構造のスクロール圧縮機において、前記シ−ル材をＰ
ＥＥＫ（ポリエ−テルエ−テルケトン）樹脂またはＰＩ
（ポリイミド）樹脂を主成分とする材料で構成し、かつ
前記シール材が接触する旋回及び固定スクロールの溝底
面にはモリブデン硫化物を含浸処理したアルミニュウム
の陽極酸化皮膜を施したことにある。

【００１７】

【作用】本発明は、シ−ル材を弾性力を有する高分子材
料で形成し、かつシール材が接触する旋回及び固定スク
ロールの溝底面には陽極酸化皮膜処理を施した構成とし
たので、前記シ−ル材やラップの先端部が旋回及び固定
スクロールの溝底面などに接触してもラップの損傷を防
ぎ、良好な運転が可能となる。

【００１８】特に、ラップ溝底面に２硫化モリブデン含
浸陽極酸化皮膜を施すことにより、さらにスクロールラ
ップ表面の潤滑性、耐摩耗性を増すことが出来る。した
がって、スクロール圧縮機の寿命及び性能を向上させる
ことができる。

【００１９】２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜処理を
ラップ側面にも施せば、ラップどうしの接触に対しすべ
りが良好になるから、スクロール圧縮機の性能をさらに
向上させることができる。

【００２０】鏡板両面にスクロールラップを直立して形
成した旋回スクロールと、この旋回スクロールの両側に
配置され前記各ラップに係合する一対の固定スクロール
とを備える両歯形スクロ−ル圧縮機において、スクロー
ルラップ先端部に溝を形成してこの溝に高分子材料で形
成した弾性力を有するシール材を設けると共にこのシ−
ル材を前記溝に常時接触するように嵌入させたもので
は、組立時にシ−ル材の脱落を防止できるから、特に組
立が複雑な両歯形スクロ−ル圧縮機においてその組立て
を容易に実施することができる。

【００２１】また、シール材嵌入用の溝を複数に分割
し、シール材も同様に分割してそれぞれの溝に介装する
ことにより、シ−ル材をそれぞれの使用条件に応じた最
適な材料、例えば中心部には高耐熱性材、高耐摩耗性
材、摩耗係数性の小さい材料などを使用し、外周部には
接触摩擦力の小さい材料を選択して配置することがで
き、より高寿命、高性能の圧縮機を得ることができる。
すなわち、使用条件の厳しいところのみ価格の高い高性
能の材料を使用し、シール材全体のコストを下げること
が可能となり、またスクロール外周部においてはスクロ
ールの圧縮作動室間の圧力差が小さくなるため接触摩擦
力の小さいシール材を設けることにより、良好なシール
性能が得られる。

【００２２】さらに、シール材の熱膨張補正のため、溝
に嵌入されるシール材の周方向長さを溝の周方向長さよ
り短くすれば、シール材の熱膨張によるシール材の破
損、スクロールラップ先端のスクロール溝の破損を防
ぎ、良好なシール性能を保つことができる。

【００２３】特に、オイルフリ−スクロ−ル圧縮機で
は、冷却作用をする潤滑油を使用しないため、スクロ−
ル圧縮機はかなりの高温となるので、本発明の採用によ
りその寿命、性能を大幅に向上できる。

【００２４】また、シ−ル材をＰＥＥＫ（ポリエ−テル
エ−テルケトン）樹脂またはＰＩ（ポリイミド）樹脂を
主成分とする材料で構成し、かつシール材が接触する旋
回及び固定スクロールの溝底面にはモリブデン硫化物を
含浸処理したアルミニュウムの陽極酸化皮膜を施した組
合せの構成とすれば、従来のものに比べ、摩擦係数を大
幅に低減でき、大幅な性能向上を図ることができる。

【００２５】

【実施例】本発明では、スクロール圧縮機の主構成品で
ある旋回スクロール及び固定スクロール表面に表面処理
をする。表面処理としてはアルミニュ−ムの陽極酸化皮
膜処理または２硫化モリブデンを含浸させた陽極酸化皮
膜処理を施す。陽極酸化皮膜処理はアルマイト処理とし
て知られている。アルマイト皮膜は緻密で非常に硬い皮
膜である。

【００２６】２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜処理と
は固体潤滑作用のある２硫化モリブデンをアルミニュ−
ムの陽極酸化皮膜に含浸させたものである。これはモリ
ブデン硫化物などの潤滑性成分を水溶液中でイオンの形
でアルマイトの微細孔の奥から電気化学的に含浸させ、
最終的に２硫化モリブデンを生成させてつくる陽極２次
電解方式で行う。２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜
（潤滑アルマイト）はアルマイト皮膜に比べ、摩擦相手
材との動摩擦係数を約１／３にできるものである。

【００２７】表面処理を行う個所は、スクロールラップ
先端のシ−ル材と常時接触するスクロ−ルの溝底面、及
び好ましくは接触の起こりやすいラップの側面にもす
る。

【００２８】また、両歯形スクロール圧縮機において
は、ラップ先端にシール材介装用の溝を設けてこれにシ
−ル材を嵌入する。好ましくは、溝を渦巻方向に分割し
て複数個設け、それぞれの溝に最適な材料のシ−ル材を
設ける。シール材に用いる高分子材料としてはエンジニ
アリングプラスチック、ＰＥＥＫ（ポリエ−テルエ−テ
ルケトン）樹脂系、ＰＩ（ポリイミド）樹脂系などがあ
る。例えば、エンジニアリングプラスチックは機能すな
わち価格、性能に比例してコストが急上昇する傾向があ
る。そのため、シール材嵌入用の溝を分割し、分割した
溝のうち、中心部に近い側には高性能の材料を使用す
る。これは、中心部には外周部より耐熱性，耐摩耗性が
高く摩耗係数の小さい材質を選択する。また、スクロー
ル外周部においてはスクロールの圧縮作動室間の圧力差
が小さくなるため接触摩擦力の小さいシール材を設け
る。また、シール材の熱膨張補正のため、溝に嵌入され
るシール材の周方向長さを溝の周方向長さより短くす
る。

【００２９】以下、本発明の具体的実施例を以下図面に
基づき説明する。

【００３０】図１は本発明の第１実施例を示すもので、
スクロールラップによって画成される圧縮室内の気体の
圧力によって旋回スクロールと固定スクロールとが相互
に離反する力を受ける構造のスクロール圧縮機（片歯形
スクロール圧縮機）におけるスクロ−ル部材の要部断面
図である。固定スクロール１と旋回スクロール２はラッ
プを互いに内側にして噛み合っている。それぞれのラッ
プ先端にはシール材嵌入用の溝４が設けられ、シール材
３が嵌入されている。シール材３は弾性力のある高分子
材料として例えばＰＥＥＫ系樹脂やＰＩ系樹脂を使用す
る。固定スクロール１と旋回スクロール２のラップ歯溝
底面５には２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜（潤滑ア
ルマイト）処理または陽極酸化皮膜（アルマイト）処理
を施している。この処理により、スクロール歯底面の潤
滑性、耐摩耗性が上昇し、シール材の円滑なシール効
果、寿命延長を図ることができる。

【００３１】上述した材料の組合せにより得られる摩擦
係数は以下のようになった。

【００３２】シ−ル材が摺動する相手材シ−ル材の材質摩擦係数 (1)アルミ材（表面処理なし）ＰＥＥＫ系０．２０ＰＩ系０．０７５ (2)表面アルマイト処理ＰＥＥＫ系０．２４ＰＩ系０．０８ (3)表面潤滑アルマイト処理ＰＥＥＫ系０．０５ＰＩ系０．０６（試験条件：ＰＶ値１６００で、ピンディスク試験機による測定結果）図２は固定スクロール１２と旋回スクロール１３のラッ
プ歯溝底面１６だけでなく、ラップ側面１７にもそれぞ
れ２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜処理を施した場合
の例で、他の構成は図１の実施例と同じである。このよ
うに構成することにより、スクロール歯溝底面の潤滑
性、耐摩耗性を向上できるだけでなく、スクロールラッ
プ側面接触時にも円滑に動作させることができる。

【００３３】図３は本発明の第２実施例を示すもので、
旋回スクロール鏡板の両面にラップを有しそれぞれの面
に圧縮作動室を形成して圧縮気体によるスラスト力をキ
ャンセルさせる構造のスクロール圧縮機（両歯形スクロ
ール圧縮機）におけるスクロ−ル部材の要部断面図であ
る。旋回スクロール７の一方側に固定スクロール６、他
方側に固定スクロール８が噛み合っている。それぞれの
ラップ先端にはシール材嵌入用の溝１０が設けられ、シ
ール材９が嵌入されている。固定スクロール６，８と旋
回スクロール７のラップ歯溝底面１１に２硫化モリブデ
ン含浸陽極酸化皮膜処理を施している。この処理によ
り、スクロール歯底面の潤滑性、耐摩耗性が上昇し、シ
ール材の円滑なシール効果、寿命延長を図ることができ
る。

【００３４】図４は固定スクロール１８，２０と旋回ス
クロール１９のラップ歯溝底面２３だけでなくラップ側
面２４にも２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜処理を施
したもので、他は図３の実施例と同じである。このよう
にすればスクロールラップ側面の潤滑性、耐摩耗性も上
昇し、ラップ側面接触時にも円滑に動作させることがで
きその寿命を延長することができる。

【００３５】上記２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜処
理の代わりに陽極酸化皮膜処理を施しても潤滑性、耐摩
耗性の改善効果は得られる。

【００３６】図５は本発明の第３実施例を示すもので、
スクロールラップ先端部に設けられたシール溝は、溝Ａ
２５，溝Ｂ２６，溝Ｃ２７の３つに分割されている。そ
して、それぞれの溝にシール材Ａ２８、シール材Ｂ２
９、シール材Ｃ３０が嵌入される構造となっている。こ
の時、シール材Ａ、Ｂ、Ｃの長さは嵌入されるシール溝
Ａ、Ｂ、Ｃの長さより短くしている。これにより、圧縮
時に発生する熱によってシール材が熱膨張を起こしたと
き、隙間長さ分だけ傍聴可能であるためシール材及びシ
ール溝に負荷をかけることなく動作できる。なお、スク
ロール部材は上述した実施例同様、２硫化モリブデン含
浸陽極酸化皮膜処理を施したものである。

【００３７】図６及び図７は本発明の第４実施例を示す
もので、図６は両歯式スクロール圧縮機の旋回スクロー
ルの断面図、図７は図６に示すラップ先端の拡大図であ
る。両歯式スクロール圧縮機の旋回スクロールは鏡板３
２の両面にスクロールラップ３３を設けた構造となって
いる。スクロールラップ先端部にはシール材嵌入用の溝
３４があり、シール材３５が嵌入されている（図７参
照）。この時、シール材はその内周面の大部分は溝部と
接触し、その外周面も一部が溝部に接するようにしてい
る。このようにすれば、シ−ル材は溝部に摩擦力で保持
されるから、図６に示すように、両歯形スクロ−ル圧縮
機の組立作業時、鏡板の一方側の溝が下を向いているよ
うな場合でもシ−ル部材の脱落を防止でき、組立を容易
に行なうことができる。

【００３８】図８は本発明の第５実施例を示すもので、
両歯形スクロール圧縮機のシール溝例である。スクロー
ルラップ先端部に設けられたシール溝は、溝Ａ３６，溝
Ｂ３７，溝Ｃ３８の３つに分割されている。そして、そ
れぞれの溝にシール材Ａ３９，シール材Ｂ４０，シール
材Ｃ４１が嵌入される構造となっている。この時、使用
するシール材の材質を中心部に近いシール材Ａには耐熱
性や耐摩耗性の高い高分子材料、あるいは摩耗係数の小
さい高分子材料を使用する。使用条件がそれほど厳しく
ないシール材Ｂ、Ｃには耐熱性や耐摩耗性の低い材料を
使用する。また、シール材Ａ，Ｂに耐熱性や耐摩耗性の
高い材料を使用し、シール材Ｃのみ耐熱性や耐摩耗性の
低い材料を使用するという選択もある。さらに、シール
材Ａ，Ｂ，Ｃ全てを条件に応じたそれぞれ別の材料を使
うこともできる。また、外周部に使用するシール材Ｃに
は接触摩擦力の小さいものを使用し、圧縮作動室の圧力
差が少なくても、シール機能を発揮できるようにする。

【００３９】なお、各シール材Ａ，Ｂ，Ｃの外周面の一
部をそれぞれ溝部に接するようにすれば、組立を容易に
でき、また各シール材の長さをそれぞれが挿入される溝
の周方向長さより短くすることにより、圧縮時に発生す
る熱によってシール材が熱膨張を起こしたとき、隙間長
さ分だけ伸長できるためシール材及びシール溝に負荷を
かけることなく動作させることができる。

【００４０】図９は両歯式スクロール圧縮機におけるシ
ール材とこれを嵌入するラップ先端に形成された溝が鏡
板の各側で１つとし、シール材の長さを溝の周方向長さ
より短くした場合の例で、圧縮時に発生する熱によって
シール材が熱膨張を起こしたとき、隙間長さ分だけ伸長
できるためシール材及びシール挿入溝に負荷をかけるこ
となく動作させることができるものである。

【００４１】上記各実施例において、２硫化モリブデン
陽極酸化皮膜処理もしくは陽極酸化皮膜処理により施さ
れた皮膜の厚さは、５〜６０μｍ（０．００５〜０．０
６mm）、好ましくは２０〜３０μｍ（０．０２〜０．０
３mm）とすることが良く、滑らかな皮膜表面を形成する
事ができる。

【００４２】図１０は本発明の第６実施例を示すもの
で、スクロールラップの部分の拡大図である。ラップ及
びスクロ−ルの溝底面にはそれぞれ２硫化モリブデン陽
極酸化皮膜処理もしくは陽極酸化皮膜処理により形成さ
れた皮膜４３を設ける。この時、皮膜の厚さを２０〜３
０μｍ以下として、滑らかな皮膜表面を形成し、さら
に、その被膜表面に２硫化モリブデン等の固体潤滑剤４
４を塗布したもので、これにより表面の潤滑性、ラップ
間のシール性等をさらに向上させることができる。

【００４３】

【発明の効果】本発明によれば、以下の効果がある。

【００４４】（１）スクロール圧縮機の固定スクロール
及び旋回スクロールに２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮
膜または陽極酸化皮膜を形成することにより、シール材
接触部の潤滑性、耐摩耗性及び寿命を向上させることが
できる。

【００４５】（２）シール材の渦巻方向長さを溝のなが
さより短くしているため、シール材の熱膨張による負荷
が生じず、溝及びシール材の破損を防止でき、良好な作
動が可能となる。

【００４６】（３）両歯形スクロール圧縮機において、
シール材はその内周面の大部分は溝部と接触し、その外
周面も一部が溝部に接するようにすることにより、シ−
ル材は溝部に摩擦力で保持されるから、両歯形スクロ−
ル圧縮機の組立作業時、鏡板の一方側の溝が下を向いて
いるような場合でもシ−ル部材の脱落を防止でき、組立
を容易に行なうことができる。

【００４７】（４）シール材嵌入用の溝を渦巻方向に分
割することにより、シール材使用条件に応じ、シール材
の材質構造を変更することが容易にできる。特に、分割
したシール材のうち中心部に使用されるものは、耐熱性
や耐摩耗性の高いもの、あるいは摩耗係数の小さいもの
とすることにより、全体に高機能の同じ材料を使用する
ときと比べ、コストを下げることができる。また、外周
部には接触摩擦力の小さいシール材を設けることによ
り、体積効率を向上することができる。

【００４８】（５）２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜
処理や陽極酸化皮膜処理の皮膜厚さを２０〜３０μｍと
することにより良好な皮膜表面を形成することができ、
さらにその被膜表面に２硫化モリブデン等の固体潤滑材
を塗布してやることにより、さらに潤滑性，シール性を
向上させるころができ、スクロール圧縮機の寿命、性能
を向上させることができる。

【００４９】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例を示す要部の断面図であ
る。

【図２】図１の変形例を示す要部の断面図である。

【図３】本発明の第２実施例を示す要部の断面図であ
る。

【図４】図３の変形例を示す要部の断面図である。

【図５】本発明の第３実施例を説明するスクロ−ル部材
の平面図である。

【図６】本発明の第４実施例を示す両歯式スクロール圧
縮機の旋回スクロールの断面図である。

【図７】図６に示すラップ先端の拡大図である。

【図８】本発明の第５実施例を示す両歯式スクロール圧
縮機の平面図（ａ）と断面図（ｂ）である。

【図９】図８の変形例示す両歯式スクロール圧縮機の平
面図である。

【図１０】本発明の第６実施例を示すスクロールラップ
の部分の拡大図である。

【符号の説明】

１，６，８，１２，１８，２０……固定スクロール、
２，７，１３，１９……旋回スクロール、３，９，１
４，２１，３５……シール材、４，１０，１５，２２，
３４……溝、５，１１，１６，２３，……ラップ溝底
面、１７，２４……ラップ側面、２５，３６……溝Ａ、
２６，３７……溝Ｂ、２７，３８……溝Ｃ、２８，３９
……シール材Ａ、２９，４０……シール材Ｂ、３０，４
１……シール材Ｃ、３１……スクロールラップ先端部、
３２……鏡板、３３……スクロールラップ、４２，４３
……皮膜、４４……固体潤滑剤。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者町田茂茨城県土浦市神立町502番地株式会社日立製作所機械研究所内 (72)発明者名取達雄茨城県土浦市神立町502番地株式会社日立製作所機械研究所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】旋回スクロールと固定スクロールがラップ
を互いに内側にして嵌合され、旋回スクロールが旋回運
動することによりラップ間に圧縮作動室を形成して気体
を圧縮し、かつ前記各スクロールラップ先端部に溝を形
成してこの溝にシール材を設けた構造のスクロール圧縮
機において、前記シ−ル材を弾性力を有する高分子材料
で形成し、かつ前記シール材が接触する旋回及び固定ス
クロールの溝底面には陽極酸化皮膜を施したことを特徴
とするスクロール圧縮機。
【請求項２】請求項１において、シール材が接触する旋
回及び固定スクロールの溝底面に、２硫化モリブデン含
浸陽極酸化皮膜を施したことを特徴とするスクロール圧
縮機。
【請求項３】旋回スクロールと固定スクロールがラップ
を互いに内側にして嵌合され、旋回スクロールが旋回運
動することによりラップ間に圧縮作動室を形成して気体
を圧縮し、かつ前記各スクロールラップ先端部に溝を形
成してこの溝にシール材を嵌入した構造のスクロール圧
縮機において、前記シール材は弾性力を有する高分子材料で形成し、こ
のシール材が接触する旋回及び固定スクロールの少なく
とも各溝底面に２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮膜を形
成して、前記シール材が接触する部分の潤滑性、耐摩耗
性及び寿命を向上させたことを特徴とするスクロール圧
縮機。
【請求項４】請求項３において、前記シール材が接触す
る旋回及び固定スクロールの溝底面及びスクロールラッ
プの各側面にそれぞれ２硫化モリブデン含浸陽極酸化皮
膜を施したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項５】請求項１乃至４のいずれかにおいて、スク
ロ−ルラップの先端部に形成したチップシ−ルを設ける
ための溝は、スクロ−ルラップの渦巻方向に複数に分割
して設け、それぞれの溝にシ−ル材を介装し、かつ溝に
介装された前記シール材の渦巻方向長さを前記溝の渦巻
方向長さより、圧縮過程において発生する熱によるシー
ル材の熱膨張を許容するように短く構成したことを特徴
とするスクロール圧縮機。
【請求項６】鏡板両面にスクロールラップを直立して形
成した旋回スクロールと、この旋回スクロールの両側に
配置され前記各ラップに係合する一対の固定スクロール
とを備え、前記旋回スクロ−ルを自転させることなく公
転可能に構成した両歯形スクロ−ル圧縮機において、前記各スクロールラップ先端部に溝を形成してこの溝に
高分子材料で形成した弾性力を有するシール材を設け、
かつこのシ−ル材の内・外周面の少なくとも一方の面の
大部分を溝壁面と接触させ、かつ他方の面の一部を溝壁
面に接触するようにして嵌入させたことを特徴とするス
クロール圧縮機。
【請求項７】請求項６において、前記シール材が接触す
る旋回及び固定スクロールの各溝底面に２硫化モリブデ
ン含浸陽極酸化皮膜を施したことを特徴とするスクロー
ル圧縮機。
【請求項８】請求項１乃至７のいずれかにおいて、ラッ
プ先端に設けたシール材介装用溝をスクロールの渦巻方
向に複数個に分割し、この分割された各溝にそれぞれシ
ール材を設けると共に、スクロ−ルの中心部側のシ−ル
材をスクロ−ルの外周部側のシ−ル材より耐熱性の高い
材質としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項９】請求項１乃至８のいずれかにおいて、ラッ
プ先端に設けたシール材介装用溝をスクロールの渦巻方
向に複数個に分割し、この分割された各溝にそれぞれシ
ール材を設けると共に、スクロ−ルの中心部側のシ−ル
材をスクロ−ルの外周部側のシ−ル材より耐摩耗性の高
い材質としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項１０】請求項１乃至９のいずれかにおいて、ラ
ップ先端に設けたシール材介装用溝をスクロールの渦巻
方向に複数個に分割し、この分割された各溝にそれぞれ
シール材を設けると共に、スクロ−ルの中心部側のシ−
ル材をスクロ−ルの外周部側のシ−ル材より摩耗係数の
小さい材質としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項１１】請求項１乃至９のいずれかにおいて、ラ
ップ先端に設けたシール材介装用溝をスクロールの渦巻
方向に複数個に分割し、この分割された各溝にそれぞれ
シール材を設けると共に、スクロ−ルの中心部側のシ−
ル材をスクロ−ルの外周部側のシ−ル材より接触摩擦力
の小さい材質としたことを特徴とするスクロール圧縮
機。
【請求項１２】鏡板両面にスクロールラップを直立して
形成した旋回スクロールと、この旋回スクロールの両側
に配置され前記各ラップに係合する一対の固定スクロー
ルとを備え、前記旋回スクロ−ルを自転させることなく
公転可能に構成した両歯形スクロ−ル圧縮機において、前記各スクロールラップ先端部に溝を形成してこの溝に
高分子材料で形成した弾性力を有するシール材を設け、
このシ−ル材が接触する各スクロールの溝底面には陽極
酸化皮膜を施したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項１３】請求項１２において、各スクロールラッ
プの側面にも陽極酸化皮膜を施したことを特徴とするス
クロール圧縮機。
【請求項１４】請求項１，２，３，４，１２，１３のい
ずれかにおいて、前記陽極酸化被膜の厚さを０．００５
〜０．０６ｍｍとしたスクロール圧縮機。
【請求項１５】請求項１４において、前記陽極酸化被膜
の厚さを０．０２〜０．０３ｍｍとしたスクロール圧縮
機。
【請求項１６】請求項１５において、前記陽極酸化被膜
の上に固体潤滑材を塗布したスクロール圧縮機。
【請求項１７】旋回スクロールと固定スクロールがラッ
プを互いに内側にして嵌合され、旋回スクロールが旋回
運動することによりラップ間に圧縮作動室を形成して気
体を圧縮し、かつ前記各スクロールラップ先端部に溝を
形成してこの溝にシール材を設けた構造のスクロール圧
縮機において、前記シ−ル材をＰＥＥＫ（ポリエ−テル
エ−テルケトン）樹脂またはＰＩ（ポリイミド）樹脂を
主成分とする材料で構成し、かつ前記シール材が接触す
る旋回及び固定スクロールの溝底面にはモリブデン硫化
物を含浸処理したアルミニュウムの陽極酸化皮膜を施し
たことを特徴とするスクロール圧縮機。