JPH0825552A - コーティング層を有する積層体とその製造方法 - Google Patents

コーティング層を有する積層体とその製造方法

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JPH0825552A
JPH0825552A JP18192994A JP18192994A JPH0825552A JP H0825552 A JPH0825552 A JP H0825552A JP 18192994 A JP18192994 A JP 18192994A JP 18192994 A JP18192994 A JP 18192994A JP H0825552 A JPH0825552 A JP H0825552A
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JP
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coating
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polytetrafluoroethylene
oligomer
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JP18192994A
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Akira Tange
彰 丹下
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NHK Spring Co Ltd
Original Assignee
NHK Spring Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】離型性と摺動性に優れたポリテトラフルオロエ
チレンオリゴマーを母材表面に強固に固定でき、しかも
省設備,低コストで実施できるようにすることが主たる
目的である。 【構成】Fe系の母材と、母材表面に形成された鱗片状
の多数の微小突起を有するFe−Al金属間化合物また
はリン酸亜鉛被膜からなる中間層と、この中間層を覆っ
た状態で中間層の鱗片構造に食い込むポリテトラフルオ
ロエチレンオリゴマーからなるコーティング層を具備し
た積層体である。ポリテトラフルオロエチレンオリゴマ
ーからなるコーティング層を形成するに当って、上記鱗
片構造の中間層の上にポリテトラフルオロエチレンオリ
ゴマーの粉体を付着させたのち、加熱することによって
ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの焼付けを行
う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば合成樹脂製品の
成形用金型のように離型性が要求されるものや、撥水
性,撥油性など液体をはじく性質が要求される部品、あ
るいはドライベアリングなどのように低摩擦・耐摩耗性
等が要求される摺動部品などに適したコーティング層を
有する積層体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合成樹脂製品の成形用金型は、成形後の
製品取出し時に製品が金型内面から円滑に離れることが
できるように、良好な離型性が要求される。特に、ウレ
タン樹脂やエポキシ樹脂等のように接着性を有する樹脂
を成形するための金型では、金型内面に樹脂が接着する
ことを避けるために、金型内面に離型剤が塗布されてい
る。
【0003】離型剤として用いられている通常のワック
スは樹脂との濡れ性が良いため、離型時にワックスが金
型内面から剥がれてしまう。そのため樹脂製品を1回成
形するたびに新たにワックスを金型内面に塗布する必要
があり、ワックスのコストがかなり高額になることや、
作業環境を悪化させる原因になることが従来より問題に
なっている。
【0004】一方、樹脂との濡れ性の小さいワックスを
金型内面に塗布すれば、離型時にワックスを金型内面に
残すことができる。しかしながらこのようなワックスを
用いたとしても、耐熱性のないワックスでは樹脂成形時
の加熱によって変質するために、当初の離型性を長期間
にわたって維持することができないといった問題があ
る。
【0005】また、離型性があるとされるポリテトラフ
ルオロエチレンを金型等の部品に焼付け塗装することに
よって離型性を付与したり、摩擦係数を下げることも行
われている。しかし、ポリテトラフルオロエチレンはさ
ほど離型性が良好でないことや、機械的強度が比較的低
いために使用期間中に摩滅し、長期間の使用には限界が
ある。
【0006】また、ポリテトラフルオロエチレンよりも
優れた離型性,低摩擦係数を示す材料として、低分子量
ポリテトラフルオロエチレンすなわちポリテトラフルオ
ロエチレンオリゴマー(TFEO)が知られている。し
かしポリテトラフルオロエチレンオリゴマーは低分子量
のために通常のポリテトラフルオロエチレンよりも更に
機械的強度が小さいことや、その小さな表面エネルギー
のために他の材料との濡れ性が著しく悪いため、安定し
て他の材料表面に固定する実用的な手段が確立されてい
ない。このためポリテトラフルオロエチレンオリゴマー
のもつ優れた離型性や摺動性が活かされていないのが現
状である。
【0007】また、特開平4−285199号公報に記
載されているように、ポリテトラフルオロエチレンオリ
ゴマー粒子を分散させた複合めっき液を用いて、被処理
物のめっきを行い、ポリテトラフルオロエチレンオリゴ
マー粒子が共析分散した複合めっき被膜を被処理物上に
形成することも提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述のようなポリテト
ラフルオロエチレンオリゴマー粒子を共析分散させた複
合めっき被膜を形成する場合、例えば自動車の懸架用F
RP板ばねや座席用シート・パッドのように大形の樹脂
部品を成形するために使用する比較的大きな金型の場合
にはかなり大きなめっき槽を必要とし、設備が大掛かり
となるばかりでなく、めっき液のコストも高くつく。ま
た、複雑な形状の部品に均一な被膜を形成しにくい。し
かもめっき液を使用するため作業環境に格別な配慮が必
要であるなど、実用化を図る上で困難な問題がある。
【0009】従って本発明の目的は、離型性や摺動性な
どに優れた性質をもつポリテトラフルオロエチレンオリ
ゴマーのコーティング層を母材表面に強固に固定するこ
とができ、しかもめっき槽のような大形の設備が不要で
あり、低コストで実施できるような積層体とその製造方
法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を果たすため
に開発された本発明の積層体は、図1に模式的に示した
ように、Feを主たる成分とする金属からなりかつ所定
形状に成形された母材と、この母材の少なくとも一部を
覆いかつ母材のFe成分と金属間化合物を形成した鱗片
状の多数の微小突起を有する中間層または極微細な鱗片
構造の微小突起を有する化成被膜からなる中間層と、上
記中間層を覆いかつこの中間層の上記微小突起の間に入
り込んだ状態で上記微小突起に固定されたポリテトラフ
ルオロエチレンオリゴマーの層とを具備したことを特徴
とするものである。
【0011】ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの
分子量は10000以下である。上記中間層は、例えば
Fe−Al金属間化合物、またはリン酸亜鉛被膜あるい
はリン酸マンガン被膜等の化成被膜である。
【0012】上記コーティング層(中間層とポリテトラ
フルオロエチレンオリゴマーの層)は、母材全体に設け
てもよいが、金型内面のように通常はコーティングを必
要とする箇所のみに設ければ足りる。
【0013】本発明の製造方法は、Feを主たる成分と
する母材のコーティングすべき部分に鱗片状の多数の微
小突起からなる中間層を形成する工程と、上記微小突起
にポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの粉体を付着
させる工程と、ポリテトラフルオロエチレンオリゴマー
の溶融温度以上の温度に加熱することによって上記ポリ
テトラフルオロエチレンオリゴマーの粉体を溶融させて
上記微小突起に焼付ける工程とを具備している。
【0014】上記中間層を形成する工程は、母材を溶融
アルミニウムに浸漬することによって母材表面にFe−
Al金属間化合物からなる鱗片状の多数の微小突起を形
成する方法や、スパッタリングによってAlを蒸着させ
たのち500℃〜1000℃の温度で真空もしくは不活
性ガス中で母材を加熱し母材表面にFe−Al金属間化
合物からなる鱗片状の多数の微小突起を形成する方法、
あるいは化成処理によって母材表面にリン酸亜鉛または
リン酸マンガンの被膜からなる鱗片状の多数の微小突起
を形成する方法が採用される。
【0015】
【作用】本発明のコーティング層は、ポリテトラフルオ
ロエチレンオリゴマーが多数の鱗片状の微小突起からな
る中間層に食い込むようにして母材表面に強固に固定さ
れており、耐摩耗性に優れ、機械的強度が大である。中
間層を構成する金属間化合物または化成被膜は硬く、し
かも母材との結合強度がきわめて大きい。
【0016】上記中間層を形成する前に、予め母材の表
面にホーニング等によって微小な凹凸を設けておくこと
により母材の表面積を増加させれば、母材と中間層との
結合が更に強固なものとなる。
【0017】鱗片状の微小突起の集合体である中間層は
表面積がきわめて大きいため、ポリテトラフルオロエチ
レンオリゴマーを鱗片構造中に強固に保持する役目を果
たすことができる。このため、単に離型性や摺動性が良
いだけでなく、耐摩耗性および機械的強度にも優れたも
のである。
【0018】本発明では、ポリテトラフルオロエチレン
オリゴマーの粉体を、静電粉体塗装もしくは界面活性剤
等によって分散させて液状とし、刷毛やスプレー散布あ
るいはデッピング等の簡易な手段によって塗布するた
め、簡易な設備で実施でき、作業環境が悪化することも
ないし、ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーを無駄
なく使用できる。
【0019】
【実施例】
[実施例1]図2にコーティングプロセスの一例を示
す。母材を製作する工程S1において、母材を機械加工
等によって所定形状に成形する。母材は、例えばFRP
板ばね成形用の鉄製金型のように、エポキシ樹脂等のマ
トリックス樹脂と接する面(金型内面)を有している。
この母材の主たる成分はFeである。
【0020】必要に応じて実施されるホーニング工程S
2において、母材のコーティングすべき面(例えば金型
内面等)に固体粒子を打付けることにより、ホーニング
を行う。このホーニング加工によって、母材表面に多数
の微小な凹凸が成形されるため、母材の表面積が加工前
に比べて増加する。但しこのホーニング工程S2は省略
することが可能である。
【0021】表面処理工程S3において、上記母材を溶
融アルミニウム中に浸漬することにより、Fe−Al金
属間化合物(母材のFe成分と溶融Alとによる金属間
化合物)からなる中間層を母材表面に生成させる。この
中間層は、図3に拡大して示すように、Fe−Al金属
間化合物からなる鱗片状の多数の微小突起が母材表面を
隙間無く覆っている。
【0022】このため中間層の表面積が飛躍的に増大す
るとともに、Fe−Al金属間化合物からなる微小突起
(中間層)と母材との結合力がきわめて大きいため、後
に塗布されるポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの
粒子を鱗片構造中に強固に保持する役目を果たす。Fe
−Al金属間化合物はきわめて硬く、ビッカース硬さで
HV1000もの高い硬度値を示すため、母材表面の耐
摩耗性を著しく向上させる。なお、図示例の鱗片構造
(中間層)の厚さは約30μmであった。
【0023】一方、コーティング材調製工程S4におい
て、ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの粉体(粒
径約4μm)を界面活性剤(住友スリーエム社・フロー
ラードFC135)等によって水中分散させた液(TF
EO分散液)を作る。
【0024】上記TFEO分散液を、塗布工程S5にお
いて刷毛塗り等の適宜の塗布手段によって中間層に塗布
する。なお、刷毛塗りの代りにスプレーによって塗布し
てもよいし、デッピング(浸漬)等の簡易な手段によっ
て塗布してもよい。あるいは静電塗装によってポリテト
ラフルオロエチレンオリゴマーの粉体を一定厚さに付着
させるようにしてもよい。
【0025】上記塗布工程S5を経たのち、焼付工程S
6において、ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの
融点(320℃)よりも高い温度(例えば350℃)で
適当な時間(例えば1時間)加熱し、焼付けを行う。図
4は焼付け後のコーティング層の表面状態を拡大したも
のである。
【0026】図4に示されるように、前述の中間層の鱗
片状微小突起の間に、ポリテトラフルオロエチレンオリ
ゴマーの粒子が入り込んだ状態で、ポリテトラフルオロ
エチレンオリゴマーの粒子同志が溶融し合って強固に結
合し合い、母材表面がポリテトラフルオロエチレンオリ
ゴマー層によって完全に覆われたものとなっている。ポ
リテトラフルオロエチレンオリゴマー層の厚さの一例
は、約15〜16μmである。
【0027】なお、母材表面に予め前述のホーニング工
程S2が実施されている場合には、母材表面にホーニン
グによって多数の凹凸が形成されているため、そのアン
カー効果と母材の表面積の増加によって、ポリテトラフ
ルオロエチレンオリゴマーの固定強度を更に向上させる
ことが期待できる。
【0028】前記実施例によるコーティング層を有する
積層体を、エポキシ樹脂製品の成形用金型に適用したと
ころ、この金型は離型剤を塗布しなくても500回以上
の樹脂成形サイクルにわたって良好な離型性を示すこと
ができた。
【0029】離型性を定量化して表すために、水に対す
る接触角を測定する場合がある。そこで本発明者らは、
上記実施例によって得られたコーティング層の水に対す
る接触角と、従来のポリテトラフルオロエチレン板の水
に対する接触角を測定して両者を比較した。
【0030】その結果、ポリテトラフルオロエチレン板
の接触角が110°であったのに対し、本実施例の積層
体のコーティング層の接触角は135°とかなり大きな
値を示し、良好な離型性を示すことが裏付けられた。こ
の実施例は、優れた撥水性,撥油性を示すため、例えば
エポキシやウレタン等のように接着力の強い樹脂製品を
成形するための金型において、優れた離型性を発揮でき
るとともに、高い耐久性を発揮できる。
【0031】[実施例2]実施例1と同様のコーティン
グプロセス(図2)において、母材を制作する工程S1
と、必要に応じて行われるホーニング工程S2とを経た
のち、表面処理工程S3において、上記母材にスパッタ
リングによってAlを2μmの厚さに蒸着させる。その
のち、真空もしくはArやN2 などの不活性ガス雰囲気
中で500℃〜1000℃の温度(例えば800℃)で
1時間の加熱を行い、母材の表面にFe−Alの金属間
化合物を生成させる。それ以外のコーティングプロセス
は実施例1と同様である。こうして形成された中間層も
実施例1のFe−Al金属間化合物と同様に、鱗片状の
多数の微小突起が母材表面を隙間なく覆っている。
【0032】[実施例3]図5にコーティングプロセス
の他の例を示す。母材を製作する工程S1において、前
記実施例1と同様に母材を機械加工等によって所定の形
状に成形する。母材は、実施例1と同様の鉄製金型であ
る。
【0033】必要に応じて実施されるホーニング工程S
2において、母材のコーティングすべき面(例えば金型
内面等)に固体粒子を打付けることにより、ホーニング
を行う。このホーニング加工によって、母材表面に多数
の微小な凹凸が成形されるため、母材の表面積が加工前
に比べて増加する。但しこのホーニング工程S2は省略
することが可能である。
【0034】表面処理工程S3において、化成処理によ
って母材表面にリン酸亜鉛被膜を生成させる。化成処理
の一例は、第1リン酸亜鉛の水溶液に鉄を浸漬するもの
である。この化成処理による中間層は、図6に拡大して
示すように、リン酸亜鉛被膜[Zn3 (PO4 2 ・4
2 O+Zn2 Fe(PO4 2 ・4H2 O]からなる
鱗片状の多数の微小突起が母材表面を隙間無く覆ってい
る。
【0035】このためこの実施例も中間層の表面積が飛
躍的に増大するとともに、リン酸亜鉛被膜からなる微小
突起(中間層)と母材との結合力がきわめて大きいた
め、後に塗布されるポリテトラフルオロエチレンオリゴ
マーの粒子を鱗片構造中に強固に保持する役目を果た
す。この種の化成被膜も高い硬度値を示すため、母材表
面の耐摩耗性を著しく向上させる。この場合の鱗片構造
(中間層)の厚さは約1〜3μmと推定される。
【0036】コーティング材調製工程S4において、前
記実施例1と同様にポリテトラフルオロエチレンオリゴ
マーの粉体(粒径約4μm)を界面活性剤によって水中
分散させた液(TFEO分散液)を作る。このTFEO
分散液を、塗布工程S5において刷毛塗り,スプレー,
デッピング,静電塗装等の適宜の塗布手段によって塗布
する。
【0037】そののち、焼付工程S6において、ポリテ
トラフルオロエチレンオリゴマーの融点(320℃)よ
りも高い温度(例えば350℃)で適当な時間(例えば
1時間)加熱し、焼付けを行う。図7は焼付け後のコー
ティング層の表面状態を拡大したものである。同図に示
されるように、前述の中間層の鱗片状微小突起の間にポ
リテトラフルオロエチレンオリゴマーの粒子が入り込ん
だ状態でポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの粒子
同志が溶融し合って強固に結合し合い、母材表面がポリ
テトラフルオロエチレンオリゴマー層で完全に覆われた
ものとなっている。
【0038】この実施例を合成樹脂製品の成形用金型に
適用したところ、離型剤を塗布することなく500回以
上の樹脂成形サイクルにわたって良好な離型性を示すこ
とができた。
【0039】前記実施例1〜3の摩擦摩耗特性を評価す
るため、図10に概念的に示すピン・ブロック式の摩擦
摩耗試験機10を用いて耐摩耗性の試験と摩擦係数の測
定を行った。その結果を図8と図9に示す。試験機10
は、一定速度(例えば100rpm)で回転する円柱状
の試験片11の両側からV溝付きのブロック12を押付
け、一定時間(例えば1分間)ごとに押付け荷重を段階
的に増加させてゆく。そして回転に要したトルクと押付
け荷重とから摩擦係数を測定するとともに、過度な押付
け力によって試験片11とブロック12とが焼付きを生
じた時の押付け荷重を測定して試験片11とブロック1
2の摩擦摩耗特性を調べるものである。試験片11は黄
銅製のロックピン14によって主軸15に連結される。
【0040】ここでは鋼種AISI3135を母材とす
る試験片11と、AISI1137からなるブロック1
2とを用い、試験片11とブロック12に前記実施例1
〜3のコーティング層を施したものと、コーティング層
を設けなかった場合の比較例(母材のままの未処理品)
とを比較し、摩擦摩耗特性を調べた。試験片11とブロ
ック12とが接する部位の雰囲気は、大気中(乾式)と
油中(スピンドル油)との2条件とした。
【0041】図8に示す焼付荷重の測定結果と、図9に
示す摩擦係数の測定結果から判るように、大気中では未
処理品(比較例)は約150Lbsで焼付いてしまい、
摩擦係数も0.18以上の大きな値となっている。一
方、Fe−Al金属間化合物の上にポリテトラフルオロ
エチレンオリゴマーのコーティング層を施したもの(実
施例1,2)は、焼付荷重が700Lbsと向上し、摩
擦係数も0.09であって未処理品に比べてかなり低い
値を示している。
【0042】また、リン酸亜鉛被膜の上にポリテトラフ
ルオロエチレンオリゴマーのコーティング層を施したも
の(実施例3)は、焼付荷重が1200Lbs以上と大
幅に向上し、摩擦係数も0.06であって未処理品に比
べて格段に低い値を示している。
【0043】一般に、油中で鉄同志を接触させた場合の
摩擦係数は0.1程度とされているが、実施例1〜3の
コーティング層が設けられた積層体は、空気中,油中の
いずれにおいても0.1よりも低い摩擦係数を示すこと
から、ドライ軸受(ドライベアリング)等の摺動部品と
しての用途においても優れた性能を発揮することが予想
される。油中での試験では、未処理品の焼付荷重は40
0Lbs,摩擦係数は0.11を示している。
【0044】また、油中において、実施例1,2の焼付
荷重は1750Lbs、実施例3の焼付荷重は1300
Lbsであり、未処理品に比べて格段に高い値を示すと
ともに、摩擦係数がそれぞれ0.06および0.075
と非常に小さい値となっている。このように実施例1〜
3のコーティング層に潤滑油を併用すると、乾燥状態よ
りも更に優れた摩擦・摩耗特性を示すことが裏付けられ
た。
【0045】なお、実施例3において、中間層として前
述のリン酸亜鉛被膜の代りにリン酸マンガン被膜を形成
しても実施例3とほぼ同等の摩擦・摩耗特性を発揮する
ことができた。また、ウレタン樹脂の発泡成形等に用い
るアルミニウム合金製の金型のようにAlを主たる成分
とする母材の場合、母材表面にホーニングによって多数
の微小な凹凸を形成して表面積を増加させ、その上に前
記実施例と同じポリテトラフルオロエチレンオリゴマー
の粉体を塗布し、焼付けることによっても、優れた離型
性を得ることができた。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、離型性および摺動性に
優れたポリテトラフルオロエチレンオリゴマーを母材表
面に強固に固定することができ、しかも金型等の大形の
部材に適用する場合にも、めっき槽のような大形設備を
使用する必要がなく、多量のめっき液も不要であり、低
コストで安全に実施できる。また、複雑な形状の母材に
も容易にポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの被膜
を強固に固定することができ、機械的強度が高くかつ耐
摩耗性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層体の一部を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の第1実施例および第2実施例のコーテ
ィングプロセスを示すフローチャート。
【図3】鱗片状のFe−Al金属間化合物の金属組織を
顕微鏡で2000倍に拡大した写真。
【図4】ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーが被着
されたFe−Al金属間化合物の金属組織を顕微鏡で2
000倍に拡大した写真。
【図5】本発明の第3実施例のコーティングプロセスを
示すフローチャート。
【図6】鱗片状のリン酸亜鉛被膜の金属組織を顕微鏡で
2000倍に拡大した写真。
【図7】ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーが被着
されたリン酸亜鉛被膜の金属組織を顕微鏡で2000倍
に拡大した写真。
【図8】本発明の実施例と比較例の焼付荷重を示す図。
【図9】本発明の実施例と比較例の摩擦係数を示す図。
【図10】摩擦摩耗試験機の概要を示す分解斜視図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09D 127/18 PFG

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Feを主たる成分とする金属からなりかつ
    所定形状に成形された母材と、この母材の少なくとも一
    部を覆いかつ母材のFe成分と金属間化合物を形成した
    鱗片状の多数の微小突起を有する中間層または極微細な
    鱗片構造の微小突起を有する化成被膜からなる中間層
    と、上記中間層を覆いかつこの中間層の上記微小突起の
    間に入り込んだ状態で上記微小突起に固定されたポリテ
    トラフルオロエチレンオリゴマーの層とを具備したこと
    を特徴とするコーティング層を有する積層体。
  2. 【請求項2】上記中間層がFe−Al金属間化合物であ
    る請求項1記載のコーティング層を有する積層体。
  3. 【請求項3】上記中間層がリン酸亜鉛被膜またはリン酸
    マンガン被膜のいずれか一方の化成被膜である請求項1
    記載のコーティング層を有する積層体。
  4. 【請求項4】Feを主たる成分とする母材のコーティン
    グすべき部分を溶融アルミニウム中に浸漬することによ
    って母材表面にFe−Al金属間化合物からなる鱗片状
    の多数の微小突起を形成する工程と、上記微小突起にポ
    リテトラフルオロエチレンオリゴマーの粉体を付着させ
    る工程と、ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの溶
    融温度以上の温度に加熱することによって上記ポリテト
    ラフルオロエチレンオリゴマーの粉体を溶融させて上記
    微小突起に焼付ける工程とを具備したことを特徴とする
    コーティング層を有する積層体の製造方法。
  5. 【請求項5】Feを主たる成分とする母材のコーティン
    グすべき部分をスパッタリングによってAlを蒸着させ
    たのち500℃〜1000℃の温度で真空もしくは不活
    性ガス中で母材を加熱し母材表面にFe−Al金属間化
    合物からなる鱗片状の多数の微小突起を形成する工程
    と、上記微小突起にポリテトラフルオロエチレンオリゴ
    マーの粉体を付着させる工程と、ポリテトラフルオロエ
    チレンオリゴマーの溶融温度以上の温度に加熱すること
    によって上記ポリテトラフルオロエチレンオリゴマーの
    粉体を溶融させて上記微小突起に焼付ける工程とを具備
    したことを特徴とするコーティング層を有する積層体の
    製造方法。
  6. 【請求項6】Feを主たる成分とする母材のコーティン
    グすべき部分の表面に化成処理によってリン酸亜鉛また
    はリン酸マンガンの被膜からなる鱗片状の多数の微小突
    起を形成する工程と、上記微小突起にポリテトラフルオ
    ロエチレンオリゴマーの粉体を付着させる工程と、ポリ
    テトラフルオロエチレンオリゴマーの溶融温度以上の温
    度に加熱することによって上記ポリテトラフルオロエチ
    レンオリゴマーの粉体を溶融させて上記微小突起に焼付
    ける工程とを具備したことを特徴とするコーティング層
    を有する積層体の製造方法。
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