JPH08254211A - 予圧を付与された玉軸受とその製造方法 - Google Patents

予圧を付与された玉軸受とその製造方法

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JPH08254211A
JPH08254211A JP5765795A JP5765795A JPH08254211A JP H08254211 A JPH08254211 A JP H08254211A JP 5765795 A JP5765795 A JP 5765795A JP 5765795 A JP5765795 A JP 5765795A JP H08254211 A JPH08254211 A JP H08254211A
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JP
Japan
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inner ring
ball bearing
balls
raceway
shaft
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JP5765795A
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Seizo Miyazaki
晴三 宮崎
Yoshimi Gama
佳麋 蒲
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 総玉型の様に、玉5、5の数が多い玉軸受で
も、軌道面や転動面を傷付けずに組み立てる。 【構成】 軸2の外周面2個所位置に、それぞれが第
一、第二の内輪素子28、29により構成される内輪2
6、26を外嵌する。第一、第二の内輪素子28、29
同士を離した状態で外輪13内周面の外輪軌道14、1
4と内輪軌道27、27との間に玉5、5を組み込む。
そして、第一、第二の内輪素子28、29同士を近づけ
た後、内輪26、26同士の間隔を縮め、必要な予圧を
付与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばビデオテープ
レコーダ(VTR)用、ハードディスクドライブ(HD
D)用、ビデオテープレコーダ(VTR)用、レーザビ
ームプリンタ(LBP)用のスピンドルモータ、ロータ
リアクチュエータ、ロータリエンコーダ等、各種精密回
転部分に組み込んでこの回転部分を支承する、玉軸受の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】VTRやHDDのスピンドルを、振れ回
り運動(軸と直角な方向の運動)及び軸方向の振れを防
止しつつ回転自在に支持する為、玉軸受を使用している
が、従来は互いに独立した1対の玉軸受(深溝型或はア
ンギュラ型)を使用していた。又、回転支持部分への玉
軸受の組立作業の効率化を図る為、複列の玉軸受を使用
する事も考えられていた。
【0003】複列の玉軸受は、図13(A)に示す様
に、外周面に1対の深溝型の内輪軌道1、1を有する軸
2と、同図(B)に示す様に、内周面に1対の深溝型の
外輪軌道3、3を有する外輪4とを、同図(C)に示す
様に同心に組み合わせると共に、上記各内輪軌道1、1
と外輪軌道3、3との間にそれぞれ複数の玉5、5を、
転動自在に装着する事で構成される。尚、図13(C)
の6、6は、上記玉5、5を円周方向等間隔に保持して
おく為の保持器、7、7は、玉5、5装着部への塵芥等
の進入防止を図る為のシールである。
【0004】この図13(C)に示す様な複列深溝型玉
軸受は、従来から知られている構造であるが、上記VT
RやHDDのスピンドルを支持できる様なものは、従来
は製造が難しかった。これは、次の様な理由による。V
TRやHDDのスピンドルを支持する為の玉軸受は、振
れ回り運動及び軸方向の振れを防止する為、極めて高精
度なものとしなければならない。この為、上記スピンド
ル支持用の玉軸受は、アキシャル方向の予圧を付与した
状態で使用する。一方、深溝型の玉軸受を組み立てる
為、内輪軌道1と外輪軌道3との間に玉5、5を装着す
る場合には、図14に示す様に、上記内輪軌道1と外輪
軌道3とを偏心させて、これら両軌道1、3の間の円周
方向に亙る隙間8を一部で大きくする。そして、この隙
間8の大きくなった部分から上記内輪軌道1と外輪軌道
3との間に、所定数の玉5、5を挿入する。その後、上
記内輪軌道1と外輪軌道3とを同心にすると共に、上記
所定数の玉5、5を、円周方向等間隔に配置する。
【0005】この様に、円周方向一部にまとまって挿入
された複数の玉5、5を、円周方向等間隔に配置し直す
際には、各玉5、5を上記内輪軌道1及び外輪軌道3に
対して滑らせなければならない。この際、上記内輪軌道
1及び外輪軌道3が各玉5、5を強く押圧する状態(予
圧を付与した状態)にあると、上記内輪軌道1、外輪軌
道3、各玉5、5の転動面に傷が付き易い。そして、傷
が付いた場合には、回転時に振動を生じたり、或は耐久
性が損なわれる等の問題を生じる。
【0006】予圧を付与された玉軸受としては、他にも
従来から種々の構造のものが知られているが、部品点数
が多く小型化が難しかったり、或は組立作業が面倒であ
ったり、更には十分な回転精度を得られない等の問題が
あり、HDD用等の精密回転部分に組み込んで十分な性
能を得られるものではなかった。
【0007】これに対して、特開平6−221326号
公報、同6−344233号公報には、上述の様な不都
合を解消する構造として、図15に示す様な玉軸受が記
載されている。この玉軸受を構成する軸9は、図15
(A)に示す様に、小径部9aと大径部9bとを段部9
cで連続させており、第一の周面である大径部9bの外
周面に、深溝型の第一の内輪軌道10を形成している。
内輪11は、自由状態に於いて上記小径部9aの外径よ
りも少し小さな内径を有する。この内輪11は外周面
に、深溝型の第二の内輪軌道12を形成している。
【0008】この様な軸9と内輪11とを含む玉軸受を
造る場合、先ず、第一工程として、図15(B)に示す
様に、上記軸9の小径部9aに上記内輪11を、十分な
嵌合強度(予圧付与の反力でずれ動かない強度)を持た
せて外嵌する。そして、上記大径部9b外周面の第一の
内輪軌道10と内輪11外周面の第二の内輪軌道12と
のピッチP1 を、完成後の玉軸受に所定の予圧を付与す
る為に必要なピッチp1 (図15(D))よりも長く
(P1 >p1 )しておく。次いで、第二工程として、上
記第一工程により組み合わされた軸9及び内輪11を、
円筒形の外輪13の内側に挿入する。この外輪13の内
周面には、1対の深溝型の外輪軌道14、14を形成し
ている。この第二工程では、この1対の外輪軌道14、
14と前記第一、第二の内輪軌道10、12とを対向さ
せる。次に、第三工程として、上記軸9及び内輪11と
外輪13とを偏心させ、前記図14に示す様に、上記1
対の外輪軌道14、14と第一、第二の内輪軌道10、
12との間の円周方向に亙る隙間8を一部で大きくす
る。そして、この隙間8の大きくなった部分から、上記
隙間8内に、所定数の玉5、5を挿入する。次に、第四
工程として、上記1対の外輪軌道14、14と第一、第
二の内輪軌道10、12との間の隙間8内に挿入された
所定数の玉5、5を円周方向に移動させつつ、上記軸9
及び内輪11と外輪13とを同心にして、各玉5、5を
円周方向等間隔に配置する。これと共に、図15(C)
に示す様に、各玉列部分に保持器6、6を装着して、各
玉5、5が円周方向等間隔位置に留まる様にする。又、
必要に応じて、外輪13の両端部内周面にシール7、7
を装着する。この状態では、未だ各玉5、5に予圧は付
与されていない。そして、最後に第五工程として、上記
内輪11を段部9cに向け、軸9の外周面で軸方向(図
15の左方)に変位させる事により、上記第一、第二の
内輪軌道10、12のピッチを短くして、図15(D)
に示す様に、前記所定の予圧を付与する為に必要なピッ
チp1 とする。この状態で、上記複数の玉5、5に所定
の予圧が付与され、予圧を付与された玉軸受として完成
する。完成時にも、上記段部9cと内輪11の端面との
間には隙間が存在する。
【0009】この様にして得られた予圧を付与された玉
軸受では、内輪11の内周面と小径部9aの外周面との
間に、締まり嵌めの摩擦力に基づいて、上記予圧に見合
う軸方向荷重よりも大きな制止力が作用する。従って、
軸9と内輪11との間に接着剤を塗布しなくても、上記
内輪11がずれ動かず、付与された予圧が消滅する事が
なく、一体の玉軸受として取り扱える。この為、VTR
やHDDのスピンドルの軸受部を構成する作業が容易と
なる。又、アキシャル方向に亙って予圧が付与されてい
る為、上記スピンドルの回転支持を高精度に行なえる。
【0010】尚、上述した従来構造の第2例の場合、第
一の内輪軌道10を軸9の外周面に直接形成していた
が、図16に示した第3例の様に、それ自体は内輪軌道
を有しない軸2に、1対の内輪11、11aを外嵌する
事もできる。この様に、内輪11、11aを1対設ける
場合には、予圧付与時に、一方又は双方の内輪11、1
1aを変位させる。
【0011】適正な予圧付与を行なうべく、例えば軸9
の小径部9aに対する内輪11の変位量を調節する、所
謂予圧付与作業は、図17に示す様にして行なう。例え
ば前記図15に示す手順で造られる予圧を付与された玉
軸受を組み立てる場合、軸9を保持具15に嵌合保持す
ると共に、内輪11の端面に押圧駒16の先端縁を突き
当てる。そして、押し込み装置17により、これら保持
具15と押圧駒16との間隔を狭める事により、上記内
輪11を上記軸9の小径部9aに押し込み、上記各玉
5、5に予圧を付与する。
【0012】上記保持具15と基板18との間、並びに
上記押圧駒16と押し込み腕19との間には、それぞれ
圧電素子20a、20bを挟持している。これらの圧電
素子20a、20bは、上記内輪11の押し込み方向
(図17の上下方向)に亙って十分な剛性を有する。こ
れら各圧電素子20a、20bは、信号発生器21から
送り出される信号に応じて、増幅器22により駆動され
る。
【0013】上記信号発生器21は、例えば玉軸受の共
振周波数検出用の信号の他、上記小径部9aに内輪11
を押し込む為に要する力、即ちステックスリップを低減
させる為の信号を出力する。又、上記1対の圧電素子2
0a、20bは、逆位相、且つ同一振幅で駆動する。即
ち、一方の圧電素子20aが伸長している場合には、他
方の圧電素子20bが、同じ量だけ収縮する様にしてい
る。これは、両圧電素子20a、20bによる玉軸受の
振動に伴って、上記内輪11が小径部9aに押し込まれ
る(両圧電素子20a、20bが同時に伸長する事で押
し込み作業が行なわれる)事を防止し、軸9と内輪11
とを十分に軸方向に振動させる為である。一方、前記外
輪13の端面には振動センサ23の触針を突き当て、こ
の振動センサ23の出力を、FFT分析器24を介して
制御器25に入力している。この制御器25が、押し込
み装置17による前記押し込み腕19の変位量を規制す
る。
【0014】玉軸受の製造時、上記小径部9aに内輪1
1を押し込んで、上記各玉5、5に適正な予圧を付与す
る場合には、上記振動センサ23により玉軸受の共振周
波数を測定しつつ、上記押し込み装置17に圧油を送り
込み、押し込み腕19により内輪11を押圧する事で、
この内輪11を上記軸9の小径部9aに圧入嵌合する。
そして、上記共振周波数が予め設定した周波数にほぼ一
致した状態で、上記押し込み装置17への圧油の送り込
みを停止し、圧入作業を終了する。この状態で、適正な
予圧を付与された玉軸受が完成する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】図15〜16に示す様
な構造を有する予圧を付与された玉軸受、並びに図17
に示す様な装置により実施される予圧を付与された玉軸
受の製造方法は、玉軸受を構成する玉の数が限定されて
いる場合には、特に問題を生じる事なく、前記各公報に
記載された様な効果を得られる。ところが、所謂総玉型
の玉軸受を始め、内輪軌道と外輪軌道との間に設ける玉
の数が多い玉軸受の場合には、図15〜16に示す様な
構造によっても、予圧を付与された玉軸受を造る事がで
きない。
【0016】この理由に就いて、前記図14を参照しつ
つ説明する。上記総玉型の玉軸受の場合には、内輪軌道
1と外輪軌道3との間に設けられる玉5、5の数が多
く、図14の2倍程度存在する。従って、これら両軌道
1、3の間に総ての玉5、5を挿入し、しかもこれら両
軌道1、3を図14に示す様に偏心させておく事はでき
ない。従って、図15〜16に示す様な構造では、そも
そも第一、第二の内輪軌道10、12と外輪軌道14、
14との間に玉5、5を挿入する事ができず、玉軸受の
組立作業を行なえない。この様な問題は、総玉型でな
い、保持器を設けた玉軸受の場合でも、円周方向に隣り
合う玉5、5同士の間隔が狭い玉軸受の場合にも同様に
生じる。本発明の予圧を付与された玉軸受とその製造方
法は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0017】
【課題を解決する為の手段】本発明の予圧を付与された
玉軸受とその製造方法のうち、請求項1に記載した予圧
を付与された玉軸受の発明は、前述した従来の予圧を付
与された玉軸受と同様に、内周面に複列の外輪軌道を有
する外輪と、この外輪の内側に挿通された軸と、この軸
の外周面に固設された複数の内輪と、これら各内輪の外
周面に設けられた内輪軌道と、これら各内輪軌道と上記
各外輪軌道との間に転動自在にそれぞれ複数個ずつ設け
られた玉とを備える。そして、これら複数の玉が、それ
ぞれ上記内輪軌道と外輪軌道との間で予圧を付与されて
いる。
【0018】特に、本発明の予圧を付与された玉軸受に
於いては、上記複数の内輪のうちの少なくとも一方の内
輪は、他方の内輪側に存在する第一の内輪素子と上記他
方の内輪から遠い側に存在する第二の内輪素子とを組み
合わせて成る。そして、当該内輪の外周面の内輪軌道
は、これら第一、第二の内輪素子の端部外周面同士の間
に掛け渡される状態で設けられている。又、少なくとも
上記第二の内輪素子は上記軸の外周面に、軸方向に亙る
変位可能に、且つ上記予圧に基づく反力により変位しな
い程度に大きな嵌合強度で外嵌固定されている。そし
て、上記予圧は、上記軸に対する上記第二の内輪素子の
外嵌固定位置の調節に基づいて付与されている。
【0019】一方、請求項2に記載した予圧を付与され
た玉軸受の製造方法は、第一、第二の内輪素子同士の間
に玉が入り込めるだけの隙間を設けた状態で、第一の内
輪素子に形成した内輪軌道の一部と外輪内周面の外輪軌
道との間に複数の玉を挿入する。その後、軸に対して上
記第二の内輪素子を第一の内輪素子に向け軸方向に押し
動かして内輪とし、この内輪を適正予圧付与に必要な位
置に移動させる。
【0020】
【作用】上述の様に構成される本発明の予圧を付与され
た玉軸受とその製造方法によれば、第一、第二の内輪素
子により構成される内輪の外周面の内輪軌道とこの内輪
軌道が対向する外輪軌道との間に、これら両軌道を偏心
させる事なく、玉を挿入できる。従って、総玉型の玉軸
受の様に、内輪軌道と外輪軌道との間に設ける玉の数が
多い構造でも、予圧を付与された玉軸受を、軌道面や転
動面を傷付ける事なく実現できる。
【0021】
【実施例】図1は本発明の予圧を付与された玉軸受の第
一実施例を示している。円筒状に形成された外輪13の
両端部内周面には、それぞれ深溝型の外輪軌道14、1
4を形成している。この外輪13の内側には軸2を挿通
しており、この軸2の外周面の中間部2個所位置で、上
記各外輪軌道14、14の内側部分に、それぞれ内輪2
6、26を外嵌固定している。これら各内輪26、26
の外周面中間部には、それぞれ深溝型の内輪軌道27、
27を形成している。そして、これら各内輪軌道27、
27と上記各外輪軌道14、14との間にそれぞれ複数
個ずつの玉5、5を、転動自在に設けている。そして、
これら複数の玉5、5が、それぞれ上記内輪軌道27、
27と外輪軌道14、14との間で予圧を付与されてい
る。図1で各玉5、5の直径方向に記載した一点鎖線
は、それぞれ上記両軌道27、14に対する玉5、5の
接触角の方向を示している。
【0022】上述の構成に就いては、前述の特開平6−
221326号公報、同6−344233号公報に記載
された構造の場合と同様である。特に、本実施例の予圧
を付与された玉軸受に於いては、上記両内輪26、26
は、それぞれ第一の内輪素子28と第二の内輪素子29
とを組み合わせて成る。これら両内輪素子28、29の
うち、第一の内輪素子28、28が、当該内輪素子2
8、28が構成する内輪26とは別の内輪26側(軸2
の中央寄り)に存在し、第二の内輪素子29、29が上
記別の内輪26から遠い側(軸2の端部寄り)に存在す
る。このうち、軸2の中央寄りに設けた第一の内輪素子
28、28の内端部外周面には係止鍔30、30を、そ
れぞれ全周に亙って形成している。この係止鍔30、3
0は、後述する玉軸受の製造作業時に、これら各第一の
内輪素子28、28を軸方向に移動させる為に利用す
る。
【0023】そして、上記各内輪26、26の外周面の
内輪軌道27、27は、これら第一、第二の内輪素子2
8、29の端部外周面同士の間に掛け渡される状態で設
けられている。又、これら両内輪素子28、29は、そ
れぞれ上記軸2の外周面に、軸方向に亙る変位可能に外
嵌している。そして、少なくとも上記各第二の内輪素子
29、29は、上記各玉5、5に付与した予圧に基づく
反力により変位しない程度に大きな嵌合強度で外嵌固定
している。第一の内輪素子、28、28の嵌合強度は、
これよりも多少小さくても良い。この様な玉軸受に於い
て上記各玉5、5には、上記軸2に対する上記各第二の
内輪素子29、29の外嵌固定位置の調整に基づいて予
圧が付与されている。
【0024】次に、上述の様な構造を有する玉軸受の製
造方法に就いて、図2〜8により説明する。先ず、図2
に示す様に、軸2の外周面2個所位置に、それぞれ第一
の素材31、31と第二の素材32、32とを外嵌す
る。これら両素材31、32を外嵌する位置は、玉軸受
を完成した後に上記第一、第二の内輪素子28、29が
存在する位置よりも軸端に寄った部分としている。上記
両素材31、32の外周面は、第一の素材31、31の
内端部外周面に係止鍔30、30を形成している点を除
き、単なる円筒面としている。即ち、これら両素材3
1、32の外周面には、未だ内輪軌道27、27(図
1)は形成していない。
【0025】上記第一、第二の素材31、32を外嵌し
た軸2は、旋盤等の加工装置に装着し、これら第一、第
二の素材31、32の外周面に、図3に示す様に内輪軌
道27、27を形成する。この様に、第一、第二の両素
材31、32を軸2に外嵌した後、内輪軌道27、27
を形成するのは、外嵌作業に伴う弾性変形がこれら内輪
軌道27、27の形状誤差や寸法誤差に結び付く事を防
止する為である。この様にして内輪軌道27、27を形
成する事で、上記第一、第二の両素材31、32が、そ
れぞれ第一、第二の内輪素子28、29になる。
【0026】この様にして第一、第二の内輪素子28、
29を造ったならば、次の工程で図4に示す様に、第一
の内輪素子28、28を完成品(図1)に見合う位置近
くにまで移動させる。この移動作業は、移動治具の端部
を上記係止鍔30、30に係止する事で行なう。尚、こ
の工程では、上記第一の内輪素子28、28の内端面同
士の間隔D1 は、完成品に於けるこれら両内端面同士の
間隔D0 (図1)よりも少し大きく(D1 >D0 )して
おく。この状態で上記第二の内輪素子29、29は、適
正予圧付与に必要な位置よりも軸2の端部に大きく寄っ
た部分に残る為、これら第一、第二の内輪素子28、2
9同士の間には、玉5、5(図5)が入り込めるだけの
十分に大きな隙間が設けられる。
【0027】そこで、このままの状態で図5に示す様に
上記軸2の周囲に外輪13を配置し、第一の内輪素子2
8、28に形成した内輪軌道27、27の一部と外輪1
3内周面の外輪軌道14、14との間にそれぞれ複数ず
つの玉5、5を挿入する。この挿入作業は、先ず、上記
一方の第一の内輪素子28が上方に位置する状態(図5
の左側を上に、右側を下に、それぞれ位置させた状態)
で行なう。そして、一方(図5の左方)の第一の内輪素
子28外周面の内輪軌道27と一方の外輪軌道14との
間に複数の玉5を挿入すると共に、挿入した総ての玉
5、5を当該内輪軌道27と外輪軌道14との間に位置
させる。次いで、上記一方の第一の内輪素子28に向け
て一方の第二の内輪素子29を近づけ、上記複数の玉
5、5が第一、第二の内輪素子28、29の端面同士の
間の隙間に落ち込まない様にする。
【0028】次いで、上記軸2を上下反転させ(図5の
左側を下に、右側を上に、それぞれ位置させ)、他方
(図5の右方)の第一の内輪素子28外周面の内輪軌道
27と他方の外輪軌道14との間に複数の玉5を挿入す
る。そして、挿入した総ての玉5、5を当該内輪軌道2
7と外輪軌道14との間に位置させてから、上記他方の
第一の内輪素子28に向けて他方の第二の内輪素子29
を近づけ、上記複数の玉5、5が第一、第二の内輪素子
28、29の端面同士の間の隙間に落ち込まない様にす
る。この状態で複列に配置された玉5、5が、図6〜7
に示す様に、それぞれが軸2に外嵌固定された1対の内
輪26、26外周面の内輪軌道27、27と外輪13の
両端部内周面の外輪軌道14、14との間に転動自在に
保持される。但し、この状態では未だ上記各玉5、5へ
の予圧付与は行なわれていない。
【0029】そこで、上記外輪13の両端部内周面にシ
ール7、7(図1)を装着した後、図8に示す様に軸2
の端部を保持具15に保持し、この保持具15の端面を
何れかの内輪26の外端面に突き当てた状態で、押圧駒
16により上記軸2を上記保持具15に向け押し付け
る。そして、上記内輪26を上記適正予圧に必要な位置
に移動させ、前記複列に配置された複数の玉5、5に適
正な予圧付与を行なう。尚、この際に玉軸受の共振周波
数を観察しつつ、上記押圧駒16の押圧量を規制する
が、この様な予圧付与装置の構造及び作用は、前述の図
17に記載した従来装置と同様である為、同等部分には
同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】上述の様に構成される本発明の予圧を付与
された玉軸受とその製造方法によれば、第一、第二の内
輪素子28、29により構成される各内輪26、26の
外周面に設けた内輪軌道27、27と、これら各内輪軌
道27、27が対向する外輪軌道14、14との間に
は、これら両軌道27、14を偏心させる事なく、玉
5、5を挿入できる。従って、総玉型の玉軸受の様に、
内輪軌道27、27と外輪軌道14、14との間に設け
る玉5、5の数が多い構造でも、予圧を付与された玉軸
受を、軌道面や転動面を傷付ける事なく実現できる。
【0031】尚、上述の説明から明らかな通り、完成後
の玉軸受だけを見た場合には、玉5、5の転動面は第一
の内輪素子28、28の外周面に形成した内輪軌道2
7、27の一部には当接しない。従って、完成後の状態
だけを見れば、上記第一の内輪素子28、28はなくて
も良い。但し、この第一の内輪素子28、28を省略し
た場合には、製造途中の段階で上記各玉5、5の位置が
定まらず(内輪軌道27、27に当接したままの状態に
できず)、玉軸受の製造作業を行なう事ができなくな
る。従って、実際上は上記第一の内輪素子28、28を
省略する事はできず、これら第一の内輪素子28、28
を設ける事は必須要件になる。
【0032】次に、図9は本発明の第二実施例を示して
いる。本実施例の場合には、複列に配置した玉5、5を
それぞれ保持器6、6により保持する事で、円周方向に
隣り合う玉5、5同士の間に間隔をあけている。円周方
向に隣り合う玉5、5同士の間隔が十分に広ければ、前
記図14に示す様に内輪軌道1と外輪軌道3とを偏心さ
せて、これら両軌道1、3の間に玉5、5を挿入でき
る。これに対して、保持器6を設けた場合でも円周方向
に隣り合う玉5、5同士の間隔が狭い場合には、本実施
例の様に、各内輪26、26を第一、第二の内輪素子2
8、29から成る分割型とする必要がある。保持器6、
6を設けた分、玉5、5の数を少し少なくした以外の構
成及び作用、並びに製造方法に関しては、上述した第一
実施例と同様である。
【0033】次に、図10は本発明の第三実施例を示し
ている。本実施例の場合には、第一の内輪素子28、2
8外周面の係止鍔30、30(図1〜6)を省略する代
わりに、第二の内輪素子29、29の外端部外周面に係
止凹溝33、33を形成している。本実施例の場合に
は、第一、第二の内輪素子28、29の外周面に内輪軌
道27、27を形成する際には内輪26、26同士の間
隔を、完成品の間隔よりも少しだけ広くしておく。そし
て、内輪軌道27、27形成後に、上記係止凹溝33、
33に治具を係止して、上記各第一の内輪素子28、2
8と上記各第二の内輪素子29、29との間隔を広げ、
内輪軌道27、27と外輪軌道14、14との間に玉
5、5を挿入する。玉5、5の挿入作業を行なう為、第
一、第二の内輪素子28、29の間に隙間をあける際
に、第一の内輪素子28、28ではなく第二の内輪素子
29、29を移動させる以外の構成及び作用、並びに製
造方法に関しては、上述した第一実施例と同様である。
【0034】次に、図11は本発明の第四実施例を示し
ている。本実施例の場合には、1対の第一の内輪素子2
8、28aのうち、一方(図11の右方)の第一の内輪
素子28aを、軸2と一体に形成している。予圧調整
は、図11の左側の内輪26の嵌合位置を調節する事で
行なう。その他の構成及び作用、並びに製造方法に関し
ては、上述した第三実施例と同様である。
【0035】次に、図12は本発明の第五実施例を示し
ている。本実施例の場合には、複列に配置された玉5、
5のうち、一方(図12の左方)の玉5、5部分が総玉
型の玉軸受を構成し、他方(図12の右方)の玉5、5
部分が、保持器付の玉軸受を構成している。しかも、保
持器付の玉軸受を構成する玉5、5は、円周方向に亙っ
て十分な間隔をあけて配置されている。従って、この保
持器付の玉軸受を構成する玉5、5は、前記図14に示
す様な方法で、内輪軌道12と外輪軌道14との間に挿
入できる。従って、この保持器付の玉軸受を構成する内
輪11は分割不能な一体構造としている。本実施例の構
造を組み立てる際には、上記保持器付の玉軸受部分に就
いては、前記従来方法により行ない、総玉型の玉軸受部
分を組み立てる際には、本発明方法により行なう。その
他の構成及び作用、並びに製造方法に関しては、前述し
た第一実施例と同様である。
【0036】
【発明の効果】本発明の予圧を付与された玉軸受とその
製造方法は、以上に述べた通り構成される為、総玉型を
含め、隣り合う玉同士の間隔が狭い玉軸受の場合でも、
予圧を付与した一体型の玉軸受を実現できて、各種回転
支持部分を精度良く支持できる。即ち、本発明は、玉数
を多くする事で負荷容量の増大を図れるだけでなく、軌
道面のうねりや玉の等配ずれで生じる非回転同期振れ等
の不都合を低減できる構造を実現可能とするものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す断面図。
【図2】製造方法の第一工程を示す断面図。
【図3】同第二工程を示す断面図。
【図4】同第三工程を示す断面図。
【図5】同第四工程を示す断面図。
【図6】同第五工程を示す断面図。
【図7】図6の側方から見た図。
【図8】予圧を調整する方法を実施する装置を示す縦断
面図。
【図9】本発明の第二実施例を示す断面図。
【図10】同第三実施例を示す断面図。
【図11】同第四実施例を示す断面図。
【図12】同第五実施例を示す断面図。
【図13】従来の玉軸受の第1例の部品と完成品とを示
す断面図。
【図14】玉を挿入する為、外輪軌道と内輪軌道とを偏
心させた状態を示す図。
【図15】従来の玉軸受の第2例を製造工程順に示す断
面図。
【図16】同第3例を製造工程順に示す半部断面図。
【図17】予圧を調整する方法を実施する装置の1例を
示す断面図。
【符号の説明】
1 内輪軌道 2 軸 3 外輪軌道 4 外輪 5 玉 6 保持器 7 シール 8 隙間 9 軸 9a 小径部 9b 大径部 9c 段部 10 第一の内輪軌道 11、11a 内輪 12 第二の内輪軌道 13 外輪 14 外輪軌道 15 保持具 16 押圧駒 17 押し込み装置 18 基板 19 押し込み腕 20a、20b 圧電素子 21 信号発生器 22 増幅器 23 振動センサ 24 FFT分析器 25 制御器 26 内輪 27 内輪軌道 28、28a 第一の内輪素子 29 第二の内輪素子 30 係止鍔 31 第一の素材 32 第二の素材 33 係止凹溝

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪
    と、この外輪の内側に挿通された軸と、この軸の外周面
    に固設された複数の内輪と、これら各内輪の外周面に設
    けられた内輪軌道と、これら各内輪軌道と上記各外輪軌
    道との間に転動自在にそれぞれ複数個ずつ設けられた玉
    とを備え、これら複数の玉が、それぞれ上記内輪軌道と
    外輪軌道との間で予圧を付与されている、予圧を付与さ
    れた玉軸受に於いて、上記複数の内輪のうちの少なくと
    も一方の内輪は、他方の内輪側に存在する第一の内輪素
    子と上記他方の内輪から遠い側に存在する第二の内輪素
    子とを組み合わせて成り、当該内輪の外周面の内輪軌道
    は、これら第一、第二の内輪素子の端部外周面同士の間
    に掛け渡される状態で設けられており、少なくとも上記
    第二の内輪素子は上記軸の外周面に、軸方向に亙る変位
    可能に、且つ上記予圧に基づく反力により変位しない程
    度に大きな嵌合強度で外嵌固定されており、上記予圧
    は、上記軸に対する上記第二の内輪素子の外嵌固定位置
    の調節に基づいて付与されている、予圧を付与された玉
    軸受。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載した予圧を付与された玉
    軸受の製造方法であって、第一、第二の内輪素子同士の
    間に玉が入り込めるだけの隙間を設けた状態で、第一の
    内輪素子に形成した内輪軌道の一部と外輪内周面の外輪
    軌道との間に複数の玉を挿入した後、軸に対して上記第
    二の内輪素子を第一の内輪素子に向け軸方向に押し動か
    して内輪とし、この内輪を適正予圧付与に必要な位置に
    移動させる、予圧を付与された玉軸受の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010175079A (ja) * 1999-12-20 2010-08-12 Nsk Ltd 車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法

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