JP2010175079A - 車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法 - Google Patents

車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ハブの中心軸に対し内輪の中心軸が傾斜したり、或は第二の内輪軌道の真円度が悪化する事のない、良質の構造を安定して得られる車輪支持用転がり軸受ユニットを提供する。
【解決手段】ハブ2bの内端部に形成した段部8に内輪3を外嵌し、内輪3の外端面28をハブ2b側に形成した段差面12に突き当てた状態で、各転動体5に所望の予圧を付与する。又、上記ハブ2bに対して上記内輪3を、この予圧に基づいてこの内輪3に加わるスラスト荷重よりも大きな静止摩擦力を発生する締り嵌めにより外嵌する。その後、上記ハブ2bの内端部に設けた円筒部18を直径方向外方にかしめ広げて形成したかしめ部により、上記内輪3の内端面を抑え付ける。
【選択図】図1

Description

この発明の製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為に利用する。
自動車の車輪は、車輪支持用転がり軸受ユニットにより懸架装置に支持する。図4は、従来から広く実施されている車輪支持用転がり軸受ユニットの第1例を示している。この車輪支持用転がり軸受ユニット1は、ハブ2と、内輪3と、外輪4と、複数個の転動体5、5とを備える。このうちのハブ2の外周面の外端部(軸方向に関して外とは、自動車への組み付け状態で幅方向外寄りとなる側を言い、図8を除く各図の左側となる。反対に幅方向中央寄りとなる側を内と言い、図8を除く各図の右側となる。)には、車輪を支持する為の第一のフランジ6を形成している。又、このハブ2の中間部外周面には第一の内輪軌道7を、同じく内端部には外径寸法が小さくなった段部8を、それぞれ形成している。
上記段部8には、外周面に第二の内輪軌道9を形成した、上記内輪3を外嵌している。又、上記ハブ2の内端部には雄ねじ部10を形成し、この雄ねじ部10の先端部(図4の右端部)を、上記内輪3の内端面よりも内方に突出させている。そして、この雄ねじ部10に螺合したナット11と上記段部8の段差面12との間で上記内輪3を挟持する事により、この内輪3を上記ハブ2の所定位置に結合固定している。尚、上記雄ねじ部10の先端部外周面には、係止凹部13を形成している。そして、上記ナット11を所定のトルクで緊締した後、このナット11の一部で上記係止凹部13に整合する部分を直径方向内方にかしめ付ける事により、このナット11の緩み止めを図っている。
又、上記外輪4の内周面には、上記第一の内輪軌道7と対向する第一の外輪軌道14、及び、上記第二の内輪軌道9に対向する第二の外輪軌道15を形成している。そして、これら第一、第二の内輪軌道7、9と第一、第二の外輪軌道14、15との間に上記転動体5、5を、それぞれ複数個ずつ設けている。尚、図示の例では、転動体5、5として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車用の転がり軸受ユニットの場合には、これら転動体としてテーパころを使用する場合もある。
上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1を自動車に組み付けるには、上記外輪4の外周面に形成した第二のフランジ16により、この外輪4を懸架装置に固定し、上記第一のフランジ6に車輪を固定する。この結果、この車輪を懸架装置に対し回転自在に支持する事ができる。
又、特許文献1には、図5〜7の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1aが記載されている。この従来構造の第2例の車輪支持用転がり軸受ユニット1aは、ハブ2aと、内輪3と、外輪4と、複数個の転動体5、5とを備える。このうちのハブ2aの外周面の外端寄り部分には、車輪を支持する為の第一のフランジ6を形成している。又、このハブ2aの中間部外周面には第一の内輪軌道7を、同じく内端部には外径寸法が小さくなった段部8を、それぞれ形成している。
又、上記ハブ2aの内端部には、上記内輪3を固定する為のかしめ部17を構成する為の円筒部18を形成している。この円筒部18の肉厚は、図7に示した、この円筒部18を直径方向外方にかしめ広げる以前の状態で、先端縁(図7の右端縁)に向かう程小さくなっている。この為上記ハブ2aの内端面に、奥部に向かう程次第に内径が小さくなるテーパ孔19を形成している。
上記ハブ2aの内端部に上記内輪3を固定すべく、上述の様な円筒部18の先端部をかしめ広げるには、上記ハブ2aが軸方向にずれ動かない様に固定した状態で、図6に示す様に、押型20を上記円筒部18の先端部に強く押し付ける。この押型20の先端面(図6の左端面)中央部には、上記円筒部18の内側に押し込み自在な円錐台状の凸部21を形成し、この凸部21の周囲に断面円弧状の凹部22を、この凸部21の全周を囲む状態で形成している。尚、この凹部22の断面形状は、この凹部22により上記円筒部18の先端部を塑性変形させる事により得られるかしめ部17の断面形状が、基端部から先端部に向かう程厚さ寸法が漸次小さくなる様に、特にこの厚さ寸法が先端部で急激に小さくなる様に、外径側に向かう程曲率半径が小さくなる複合曲面としている。
上述の様な形状並びに寸法の凸部21と凹部22とを有する押型20を上記円筒部18の先端部に押し付ければ、この円筒部18の先端部を直径方向外方にかしめ広げて、上記かしめ部17を形成する事ができる。そして、このかしめ部17とハブ2aの内端部に形成した段部8の段差面12との間で上記内輪3を挟持して、この内輪3を上記ハブ2aに固定できる。
尚、上記円筒部18を塑性変形させて(かしめ広げて)上記かしめ部17を形成する作業を行なうのに好ましくは、図8に示す様な揺動プレス装置23を使用する。この揺動プレス装置23は、押型20と、抑え治具24と、ホルダ25とを備える。上記円筒部18をかしめ広げて上記かしめ部17を形成する際には、上記ホルダ25を介して上記ハブ2aを上方に押圧しつつ、上記押型20を揺動回転させる。即ち、この押型20の中心軸と上記ハブ2aの中心軸とを角度θだけ傾斜させた状態で、この押型20を、このハブ2aの中心軸を中心として回転させる。この様な揺動プレスにより上記かしめ部17を形成する際には、上記押型20の円周方向の一部が上記円筒部18を押圧する事になり、上記かしめ部17への加工作業は部分的に且つ円周方向に連続して進行する事になる。この為、一般的な鍛造加工により上記かしめ部17を形成する場合に比べて、加工時に上記円筒部18に加える荷重を小さくできる。尚、上記抑え治具24は、上記押型20によるかしめ部17の加工時に上記ハブ2a及び内輪3が径方向に振れる事を防止する。
従来の車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法の場合には、各転動体5、5に予圧を付与し、しかもハブ2aに対する内輪3の嵌合状態を正規なものにする事が難しかった。即ち、近年、車輪支持用転がり軸受ユニットの剛性を高くする為、上記各転動体5、5に予圧を付与する事が行なわれている。この様な予圧は、上記内輪3の外端面28が上記ハブ2aの外周面に形成した段差面12に当接した状態で適正値になる様に、構成各部の寸法を規制している。
これに対して、これら各転動体5、5に予圧を付与すべく、上記内輪3の外端面28を上記段差面12に当接させた状態では、この予圧に基づいて上記内輪3に、この内輪3を段差面12から離す方向の軸方向荷重(スラスト荷重)が加わる。従来方法の場合には、この様な軸方向荷重に基づいて上記内輪3が、上記ハブ2aの内端部にかしめ部17を形成する以前に軸方向に変位し、この内輪3の外端面28と上記段差面12とが離隔していた。
そして、この様に内輪3の外端面28と上記段差面12とが離隔した状態から、上記かしめ部17の形成作業を行なうと、上記内輪3がこじられる様にして上記段差面12に向けて押圧される。即ち、上記かしめ部17の形成に伴って上記内輪3が段部8に押し込まれるが、この際に内輪3を押圧する力の方向はこの内輪3及び上記ハブ2aの軸方向に対し傾斜している。この為、この内輪3の外端開口周縁部が上記段部8の外周面と強く擦れ合いつつ(この段部8の外周面をかじりつつ)、この段部8に押し込まれる。
この結果、この段部8の外周面に僅かな凹みが生じて、上記内輪3の外周面に形成した第二の内輪軌道9の真円度が悪化したり、或はこの内輪3の中心軸が上記ハブ2aの中心軸に対し、僅かとは言え傾斜する可能性があった。これら真円度の悪化や中心軸の傾斜は、何れも車輪支持用転がり軸受ユニットの運転時に生じる振動の増大等、性能悪化の原因となる為、好ましくない。
特開平11−129703号公報
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法は、この様な性能悪化の原因となる段部の外周面の凹みや内輪の傾斜の発生を防止すべく発明したものである。
本発明のうち、請求項1に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットは、前述した従来から知られている車輪支持用転がり軸受ユニットと同様に、一端部外周面に第一のフランジを形成し、中間部外周面に第一の内輪軌道を一体又は別体の内輪を介して設けたハブと、このハブの他端部に形成された、上記第一の内輪軌道を設けた部分よりも外径寸法が小さくなった段部と、外周面に第二の内輪軌道を形成してこの段部に外嵌した内輪と、内周面に上記第一の内輪軌道に対向する第一の外輪軌道及び上記第二の内輪軌道に対向する第二の外輪軌道を形成した外輪と、上記第一、第二の内輪軌道と上記第一、第二の外輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ設けられた転動体とを備える。そして、上記ハブの他端部で少なくとも上記段部に外嵌した内輪よりも突出した部分に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事で形成したかしめ部により、上記ハブに外嵌した内輪をこのハブに結合固定している。
、請求項1に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットは、上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前の状態で、上記ハブの他端部のうちで、上記内輪を外嵌した部分よりも突出した部分の外径を、この内輪を外嵌した部分の外径よりも小さくして、これら外径の異なる部分同士を段差部により連続させている。又、この段差部の寸法は、0.02〜0.12mmである。又、上記円筒部は、その内周面を奥部に向かう程次第に内径を小さくする方向に傾斜させる事で、その肉厚を上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前の状態で、先端縁に向かう程小さくしている。上記内輪は上記段部に対して締り嵌めにより外嵌され、且つ、この内輪の端面は上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前に、上記段部の端部に存在する段差面に当接している。又、上記各転動体には、上記内輪の端面をこの段差面に突き当てた状態で、予圧が付与されている。そして、上記締り嵌めに基づいてこの内輪に加わる静止摩擦力は、上記各転動体に付与された予圧に基づいてこの内輪に加わる軸方向荷重よりも大きい。
特に、請求項1に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法に於いては、上記内輪を上記ハブの段部に締り嵌めで外嵌する。そして、この内輪の端面をこのハブの段部の段差面に突き当てた状態で上記各転動体に予圧を付与すると共に、上記内輪を締り嵌めに基づく静止摩擦力によって上記段部に、この内輪の端面と上記段差面とを突き当てた状態で固定したまま、上記ハブの他端部に形成した上記円筒部のうちで外径が小さくなった部分を直径方向外方にかしめ広げる事で、上記ハブの他端部外周面に形成した段差部をかしめ作業に伴って折れ曲がる部分の起点として、かしめ部を形成する。
又、請求項2に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットは、やはり前述した従来から知られている車輪支持用転がり軸受ユニットと同様に、一端部外周面に第一のフランジを、中間部外周面に第一の内輪軌道を、それぞれ形成したハブと、このハブの他端部に形成された、上記第一の内輪軌道を形成した部分よりも外径寸法が小さくなった段部と、外周面に第二の内輪軌道を形成してこの段部に外嵌した内輪と、内周面に上記第一の内輪軌道に対向する第一の外輪軌道及び上記第二の内輪軌道に対向する第二の外輪軌道を、外周面に第二のフランジを、それぞれ形成した外輪と、上記第一、第二の内輪軌道と上記第一、第二の外輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ設けられた転動体とを備える。そして、上記ハブの他端部で少なくとも上記段部に外嵌した内輪よりも突出した部分に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事で形成したかしめ部により、上記段部に外嵌した内輪をこの段部の段差面に向け抑え付けて、この段部に外嵌した内輪を上記ハブに結合固定している。
、請求項2に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットは、上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前の状態で、上記ハブの他端部のうちで、上記内輪を外嵌した部分よりも突出した部分の外径を、この内輪を外嵌した部分の外径よりも小さくして、これら外径の異なる部分同士を段差部により連続させている。又、この段差部の寸法は、0.02〜0.12mmである。又、上記円筒部は、その内周面を奥部に向かう程次第に内径を小さくする方向に傾斜させる事で、その肉厚を上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前の状態で、先端縁に向かう程小さくしている。又、上記内輪は上記段部に対して締り嵌めにより外嵌されている。又、上記各転動体には、上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前の状態で、上記内輪の端面を上記段差面に突き当てる事により予圧が付与されている。そして、上記締り嵌めに基づいて上記内輪に加わる静止摩擦力は、上記各転動体に付与された予圧に基づいてこの内輪に加わる軸方向荷重よりも大きい。
特に、請求項2に記載した車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法に於いては、上記内輪を上記ハブの段部に締り嵌めで外嵌する。そして、この内輪の端面をこのハブの段部の段差面に突き当てた状態で上記各転動体に予圧を付与すると共に、上記内輪を締り嵌めに基づく静止摩擦力によって上記段部に、この内輪の端面と上記段差面とを突き当てた状態で固定したまま、上記ハブの他端部に形成した上記円筒部のうちで外径が小さくなった部分を直径方向外方にかしめ広げる事で、上記ハブの他端部外周面に形成した段差部をかしめ作業に伴って折れ曲がる部分の起点として、かしめ部を形成する。
上述の様に構成する本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法によれば、かしめ部を形成する際に、ハブに対して内輪を変位させる事がない。即ち、この内輪はかしめ部を形成する以前にハブの段部に外嵌し、各転動体に予圧を付与した状態のまま、この予圧に基づく軸方向荷重に拘らず、内輪の端面と段差面とが当接した状態のままとなる。従って、上記かしめ部の形成作業に伴って上記内輪に、この内輪及び上記ハブの中心軸に対し傾斜方向の力が加わっても、この内輪の外端開口周縁部が上記段部の外周面と強く擦れ合ったり、この内輪の中心軸が上記ハブの中心軸に対し傾斜する事がない。更に、上記ハブの他端部外周面に形成した段差部を、かしめ作業に伴って折れ曲がる部分の起点とできる為、かしめ広げ作業に伴って円筒部に無理な力が加わりにくくなって、かしめ広げ部分に亀裂等の損傷が発生しにくくなる。
この結果、内輪の外周面に設けた第二の内輪軌道の真円度を悪化させたり、或はこの内輪の中心軸を傾斜させたりする事がないので、性能の良好な車輪支持用転がり軸受ユニットを安定して得る事ができる。
本発明の実施の形態の第1例を、かしめ部を形成する以前の状態で示す部分断面図。 同じくかしめ部を形成した後の状態で示す半部断面図。 本発明の実施の形態の第2例を、かしめ部を形成した後の状態で示す半部断面図。 従来構造の第1例を示す半部断面図。 同第2例を示す半部断面図。 第2例の構造の製造時にハブに内輪を固定する為、このハブの内端部をかしめ広げる状態を示す部分拡大断面図。 同じくハブの内端部をかしめ広げる以前の状態で示す部分拡大断面図。 揺動プレス装置の要部縦断面図。
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、ハブ2bの内端部外周面に形成した段部8に内輪3を固定する方法に関する。車輪支持用転がり軸受ユニット全体の構造及び作用は、前述の図5に示した従来構造と同様であるから、同等部分に関する説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
上記ハブ2bの内端部外周面に形成した段部8に上記内輪3を、締り嵌めにより外嵌している。そして、この内輪3の外端面28を上記段部8の段差面12に突き当てた状態で、各転動体5、5に所望の予圧を付与している。そして、上記締り嵌めに基づいて上記内輪3に加わる静止摩擦力を、上記各転動体5、5に付与された予圧に基づいてこの内輪3に加わる軸方向荷重よりも大きくしている。従って、上述の様にこの内輪3の外端面28を上記段差面12に突き当てて各転動体5に所望の予圧を付与した状態では、上記ハブ2bの内端部に形成した円筒部18をかしめ広げる以前でも、上記内輪3はそのまま(内輪3の外端面28を段差面12に突き当てたまま)の位置に保持される。
上述の様に上記内輪3を上記ハブ2bの段部8に締り嵌めで外嵌すると共に、上記各転動体5、5に予圧を付与したならば、前述した従来技術の場合と同様、揺動かしめにより上記円筒部18を直径方向外方にかしめ広げる事で、図2に示す様なかしめ部17を形成する。特に、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法によれば、この様にして上記かしめ部17を形成する際に、上記ハブ2bに対して上記内輪3を変位させる事がない。
即ち、この内輪3、上記かしめ部17を形成する以前に上記ハブ2bの段部8に外嵌し、上記各転動体5、5に予圧を付与した状態のまま、この予圧に基づく軸方向荷重に拘らず、上記内輪3の外端面28と上記ハブ2bの外周面に形成した段差面12とが当接した状態のままとなる。従って、上記かしめ部17の形成作業に伴って上記内輪3に、この内輪3及び上記ハブ2bの中心軸に対し傾斜方向の力が加わっても、この内輪3の外端開口周縁部が上記段部8の外周面と強く擦れ合ったり、この内輪3の中心軸が上記ハブ2bの中心軸に対し傾斜する事がない。
更に、図示の例では、上記ハブ2bの内端部で、上記内輪3との嵌合部よりも突出した部分の外径を、この嵌合部の外径よりも小さくしている。即ち、上記ハブ2bの内端部に形成した円筒部18の基端部外周面で、上記内輪3の内端開口部に形成した、断面形状が四分の一円弧状の曲面部26よりも少しだけ第二の内輪軌道9に寄った部分に、0.02〜0.12mm程度の僅かな段差Hを有する、断面円弧状の段差部27を形成している。そして、上記円筒部18のうちの外径の小さくなった部分を、揺動かしめにより直径方向外方にかしめ広げ、上記曲面部26を抑え付ける様にしている。この様に円筒部18を直径方向外方にかしめ広げる際には、上記段差部27がかしめ広げ作業に伴って折れ曲がる部分の起点となる。この為、かしめ広げ作業に伴って上記円筒部18に無理な力が加わりにくくなって、かしめ広げ部分に亀裂等の損傷が発生しにくくなる。
尚、上述の様に締り嵌めに基づいて内輪3に加わる静止摩擦力を、各転動体5、5に付与された予圧に基づいてこの内輪3に加わる軸方向荷重よりも大きくする技術は、ハブ2bの内端部に揺動かしめによりかしめ部17を形成する事で、このハブ2bに対し内輪3を固定する車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法に適用した場合に、特に優れた作用・効果を奏する事ができる。但し、この様な技術を、一般的なかしめ加工によりかしめ部を形成する事で、ハブ2に対し内輪3を固定する車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法に適用した場合にも、本発明による作用・効果を奏する事ができる。即ち、内輪をハブに対し押し込む為の押し込み治具がこの内輪を押圧する力の作用方向を、より上記ハブの中心軸方向に近くできる。従って、上記内輪を上記段部に締り嵌めで外嵌して上記各転動体に予圧を付与した後に、上記かしめ部の形成を行なえば、より良質の車輪支持用転がり軸受ユニットを得られる。
[実施の形態の第2例]
次に、図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の製造方法の対象となる車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、ハブ2cの中間部外周面に第一の内輪軌道7を設けるのに、このハブ2cの中間部に、外周面に第一の内輪軌道7を形成した別体の内輪3aを外嵌している。この図3に示した様な構造の場合には、この別体の内輪3aの内端面が段差面12aとなり、上記ハブ2cの内端部でこの段差面12aよりも内方に突出した部分が、外周面に第二の内輪軌道9を形成した内輪3を外嵌する為の段部8aとなる。この様な本例の場合も、上述した第1例の場合と同様に、上記内輪3を上記ハブ2cの内端部に、各転動体5、5に付与された予圧に基づいてこの内輪3に加わる軸方向荷重よりも大きな静止摩擦力を発生させる締り嵌めで外嵌する事により、上述の第1例と同様の作用・効果を得られる。
1、1a 車輪支持用転がり軸受ユニット
2、2a、2b、2c ハブ
3 内輪
4 外輪
5 転動体
6 第一のフランジ
7 第一の内輪軌道
8、8a 段部
9 第二の内輪軌道
10 雄ねじ部
11 ナット
12、12a 段差面
13 係止凹部
14 第一の外輪軌道
15 第二の外輪軌道
16 第二のフランジ
17 かしめ部
18 円筒部
19 テーパ孔
20 押型
21 凸部
22 凹部
23 揺動プレス装置
24 抑え治具
25 ホルダ
26 曲面部
27 段差部
28 外端面

Claims (3)

  1. 一端部外周面に第一のフランジを形成し、中間部外周面に第一の内輪軌道を一体又は別体の内輪を介して設けたハブと、このハブの他端部に形成された、上記第一の内輪軌道を設けた部分よりも外径寸法が小さくなった段部と、外周面に第二の内輪軌道を形成してこの段部に外嵌した内輪と、内周面に上記第一の内輪軌道に対向する第一の外輪軌道及び上記第二の内輪軌道に対向する第二の外輪軌道を形成した外輪と、上記第一、第二の内輪軌道と上記第一、第二の外輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ設けられた転動体とを備え、上記ハブの他端部で少なくとも上記段部に外嵌した内輪よりも突出した部分に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事で形成したかしめ部により、上記ハブに外嵌した内輪をこのハブに結合固定した車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、上記各転動体には予圧が付与されており、上記内輪は上記段部に対して締り嵌めにより外嵌され、且つ、この内輪の端面は上記円筒部を直径方向外方にかしめ広げる以前に、上記段部の端部に存在する段差面に当接しており、上記締り嵌めに基づいてこの内輪に加わる静止摩擦力は、上記各転動体に付与された予圧に基づいてこの内輪に加わる軸方向荷重よりも大きい事を特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
  2. 一端部外周面に第一のフランジを、中間部外周面に第一の内輪軌道を、それぞれ形成したハブと、このハブの他端部に形成された、上記第一の内輪軌道を形成した部分よりも外径寸法が小さくなった段部と、外周面に第二の内輪軌道を形成してこの段部に外嵌した内輪と、内周面に上記第一の内輪軌道に対向する第一の外輪軌道及び上記第二の内輪軌道に対向する第二の外輪軌道を、外周面に第二のフランジを、それぞれ形成した外輪と、上記第一、第二の内輪軌道と上記第一、第二の外輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ設けられた転動体とを備え、上記ハブの他端部で少なくとも上記段部に外嵌した内輪よりも突出した部分に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事で形成したかしめ部により、上記段部に外嵌した内輪をこの段部の段差面に向け抑え付けて、この段部に外嵌した内輪を上記ハブに結合固定した車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、上記各転動体には予圧が付与されており、上記内輪は上記段部に対して締り嵌めにより外嵌されており、この締り嵌めに基づいてこの内輪に加わる静止摩擦力は、上記各転動体に付与された予圧に基づいてこの内輪に加わる軸方向荷重よりも大きい事を特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
  3. 請求項1〜2の何れかに記載した車輪支持用転がり軸受ユニットを造る為の車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法であって、内輪をハブの段部に締り嵌めで外嵌し、この内輪の端面をこのハブの段部の段差面に突き当てて各転動体に予圧を付与すると共に、上記内輪を締り嵌めに基づく静止摩擦力によって上記段部に、この内輪の端面と上記段差面とを突き当てた状態で固定したまま、上記ハブの他端部に形成した円筒部を直径方向外方にかしめ広げる事でかしめ部を形成する車輪支持用転がり軸受ユニットの製造方法。
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