JPH08245854A - アクリル系多層構造ポリマー粉体 - Google Patents

アクリル系多層構造ポリマー粉体

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JPH08245854A
JPH08245854A JP3710895A JP3710895A JPH08245854A JP H08245854 A JPH08245854 A JP H08245854A JP 3710895 A JP3710895 A JP 3710895A JP 3710895 A JP3710895 A JP 3710895A JP H08245854 A JPH08245854 A JP H08245854A
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Hirobumi Uno
博文 宇野
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明弘 鳥谷
Jun Nakauchi
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 乾燥効率に優れ、圧搾脱水押出機等の乾燥方
法に適するアクリル系多層構造ポリマーの凝固粉を含む
粉体を提供する。 【構成】 アクリル系多層構造ポリマーの乳化ラテック
スの凝固粉を含むアクリル系多層構造ポリマー粉体であ
って、乾燥後の凝固粉の粒径212μm以下の微粉の割
合が40重量%以下であり、かつ、乾燥後の凝固粉の水
銀圧入法で測定した孔径5μm以下の空隙体積が単位重
量当たり0.7cc以下である。所定のモノマーを乳化重
合して、アクリル系多層構造ポリマーの乳化ラテックス
を製造し、これを凝固剤溶液中に流し込み、凝固させ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アクリル系多層構造ポ
リマー粉体に関する。本発明は、特に、乳化重合物のポ
リマーラテックスから得られる凝固粉を含み、優れた乾
燥特性を有するアクリル系多層構造ポリマーの粉体に関
する。
【0002】
【従来の技術】メタクリル系樹脂は、優れた耐候性、光
沢および透明性を有しているが、一方では耐衝撃性が低
いという欠点を有しており、その向上が望まれている。
耐候性を保持したまま耐衝撃性を付与するためにはアク
リル系エラストマーを導入することが有効な手段であ
り、これまでにゴム状ポリマー−硬質状ポリマーの2層
構造ポリマーや半ゴム状ポリマー−ゴム状ポリマー−硬
質状ポリマーの3層構造ポリマー等を混合する方法が知
られている(米国特許第3808180号、第3843
753号および第4730023号明細書および特開昭
62−230841号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これらの方法におい
て、メタクリル系樹脂本来の光沢および透明性を犠牲に
することなく耐衝撃性を付与させるためには、多層構造
ポリマー中のアルキルアクリレート等のゴム状成分の含
有割合を小さくしメタクリル酸アルキルエステルなどの
硬質単量体成分の割合を比較的大きくすることが必要と
なる。なぜなら、アクリルエラストマーは温度に対する
屈折率の変化が大きいので、ゴム状成分の割合が多くな
ると、温度変化により光学特性が損なわれやすくなるか
らである。従って、このような多層構造ポリマーは、必
然的に硬質状のものになり、溶融開始温度が235℃を
超えるような比較的高いものになる。
【0004】一方、多層構造ポリマーは、一般的には乳
化重合によって製造され、この乳化ラテックスを凝固し
た後、脱水乾燥工程を経て得られる。この際、溶融開始
温度が比較的高いような硬質状の多層構造ポリマーは、
凝固時にラテックス中のポリマー粒子同士の融着が起こ
り難く、回収した湿潤状態でのポリマーの含水率が比較
的高くなりやすい傾向がある。その結果、圧搾脱水押出
機や流動乾燥機等を用いて乾燥させる際に多くの熱量を
要することになり、乾燥効率が低下し、製品コストの上
昇を招くことが問題となる。
【0005】そこで、本発明者らは、このような状況に
鑑み、ポリマーの溶融開始温度が235℃以上である比
較的硬質状のアクリル系多層構造ポリマーの乾燥効率に
優れた凝固粉の粉体構造について検討した結果、凝固粉
が特定の空隙構造を持ち、かつ、微粉の割合が比較的少
ないものが圧搾脱水押出機等の乾燥方法に適し、その乾
燥効率に優れていることを見い出した。
【0006】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、ポリ
マーの溶融開始温度が235℃以上であり、かつ、内層
に単独で重合した場合のガラス転移温度Tgが25℃以
下であるポリマーを含む少なくとも1層の軟質重合体層
と、および最外層に単独で重合した場合にTgが50℃
以上であるポリマーを含む硬質重合体層とを有するアク
リル系多層構造ポリマーの乳化ラテックスを凝固して得
られる凝固粉を含むアクリル系多層構造ポリマー粉体で
あって、乾燥後の凝固粉の粒径212μm以下の微粉の
割合が40重量%以下であり、かつ、乾燥後の凝固粉の
水銀圧入法で測定した孔径5μm以下の空隙体積が乾燥
単位重量当たり0.7cc以下であるアクリル系多層構造
ポリマー粉体を提供する。
【0007】本発明に有用な多層構造ポリマーは、内層
に単独で重合した場合のガラス転移温度が25℃以下で
あるポリマーを含む少なくとも1層の軟質重合体層を有
し、また最外層に単独で重合した場合のTgが50℃以
上であるポリマーを含む硬質重合体層を有する。軟質重
合体層を構成するポリマーとしては、例えば、炭素数8
以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート40〜
90重量%およびこれらと共重合可能な少なくとも1つ
のビニル基を有する単官能性単量体10〜60重量%、
およびこれら単量体成分100重量%に対してグラフト
交叉剤0.1〜10重量%および少なくとも2つのビニ
ル基を有する多官能性架橋剤0.1〜10重量%からな
るポリマーがある。このアルキルアクリレートと単官能
性単量体の割合は、樹脂組成物の透明性が要求される場
合に屈折率により決定される。アルキルアクリレートが
40%未満では、得られるポリマーの耐衝撃性が低下し
易い。この軟質重合体のTgは、低いほど得られる樹脂
組成物の低温時における耐衝撃性が良好になり、単独で
重合した場合のTgが25℃以下、さらに好ましくは1
0℃以下である。
【0008】炭素数8以下のアルキル基を有するアルキ
ルアクリレートの例としては、メチルアクリレート、エ
チルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチル
アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが
挙げられ、好ましくはn−ブチルアクリレートである。
これらは単独でまたは2種以上の組み合わせで用いられ
る。共重合可能な単官能性単量体の例としては、スチレ
ン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族
不飽和単量体およびフェニルメタクリレート、ナフチル
メタクリレートなどのビニル単量体が挙げられる。特に
屈折率を調整するための単量体としては、スチレンが好
ましい。
【0009】グラフト交叉剤とは、官能基の少なくとも
1個の反応性が他の反応性と異なるものであり、例え
ば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびフマ
ル酸のアリルエステルが挙げられるが、特にアリルアク
リレートおよびアリルメタクリレートが好ましい。ま
た、多官能性架橋剤とは、複数の官能基の反応性が同じ
ものであり、例えば、1,3−ブチレンジメタクリレー
トおよび1,4−ブタンジオールジアクリレートが挙げ
られる。
【0010】一方、最外層を構成するポリマーは、単独
で重合した場合のTgが50℃以上になる硬質重合体で
あり、例えば、炭素数4以下のアルキル基のアルキルメ
タクリレート60〜100重量%およびこれらと共重合
可能な不飽和単量体0〜40重量%からなるものが挙げ
られる。炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメ
タクリレートの例としては、メチルメタクリレート、エ
チルメタクリレートおよびn−ブチルメタクリレートが
挙げられ、特にメチルメタクリレートが好ましい。ま
た、これらと共重合可能な不飽和単量体の例としては、
グラフト交叉剤および多官能性架橋剤を除く上記したす
べての単量体のほかに、1,3−ブタジエン、2,3−
ブタジエン、ビニルトルエン、シクロヘキシルメタクリ
レート、ベンジルメタクリレート、アクリロニトリル、
メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらは単独でま
たは2種以上の組み合わせで用いられる。
【0011】この最外層は、内層部とグラフト結合し
て、弾性体とマトリックス樹脂との相溶性を向上させ、
かつ、弾性体を被覆することによって取扱いを容易にす
る働きがある。そのため、全量に対する最外層の割合は
10重量%以上60%重量以下であるのが好ましい。1
0重量%未満では、マトリックス樹脂との相溶性が悪く
なるとともに、弾性体の被覆が不完全になるため、粘着
性が大きくなり、取扱い性が悪くなることがある。ま
た、60重量%を超えると、全体に占める弾性体の含有
量が少なくなり、耐衝撃性の向上効果が発現しにくい。
【0012】なお、本発明における多層構造ポリマーの
内層および最外層に関しては、Tgおよび組成が前記の
条件を満たすものであれば任意の構造にすることができ
る。そのため、内層は少なくとも1層の軟質重合体層を
もっていれば、中間層や最内層を有する2層以上の多層
構造であってもよい。具体的な構造としては、例えば、
内層が軟質重合体層、外層が硬質重合体層の2層構造重
合体、または最内層が硬質重合体層、中間層が軟質重合
体層、最外層が硬質重合体層である3層構造重合体、ま
たは最内層が軟質重合体層、第二層が硬質重合体層、第
三層が軟質重合体層、最外層が硬質重合体層である4層
構造重合体などが挙げられる。これらのいずれの構造に
おいても、最外層以外の硬質重合体層のTgおよび軟質
重合体層のうち1層以外の層のTgは限定されない。
【0013】本発明におけるアクリル系多層構造ポリマ
ーのさらに具体的な例としては、炭素数8以下のアルキ
ル基を有するアルキルアクリレートおよびスチレンから
選ばれる少なくとも1種5〜70重量%、メチルメタク
リレート30〜95重量%、およびこれらの単量体成分
100重量%に対して0.2〜5重量%のグラフト交叉
剤および1〜5重量%の多官能性架橋剤からなる混合物
を重合して得られる20〜30重量%の最内層重合体、
(β)炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアク
リレート70〜90重量%、芳香族ビニル単量体10〜
30重量%、およびこれらの単量体成分100重量%に
対して1〜3重量%のグラフト交叉剤および0.1〜1
重量%の多官能性架橋剤からなる混合物を重合して得ら
れる25〜45重量%の中間層重合体、および(γ)メ
チルメタクリレート85〜97重量%および炭素数4以
下のアルキルアクリレート3〜15重量%からなる混合
物を重合して得られる35〜55重量%の最外層重合
体、の3層構造からなるものを挙げることができる。
【0014】炭素数8以下のアルキル基を有するアルキ
ルアクリレートおよび炭素数4以下のアルキル基を有す
るアルキルアクリレートとしては、例えば、前述したも
のがある。また、グラフト交叉剤および多官能性架橋剤
も、例えば、前述したものであってよい。本発明におけ
るアクリル系多層構造ポリマーは乳化重合によって製造
され、乳化重合は上記のポリマー構成単位を形成し得る
範囲で、任意の単量体組成をもって実施される。
【0015】重合開始の方法は、特に限定されないが、
ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオ
キサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化水素
などの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのア
ゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過
硫酸化合物、過塩素酸化合物、過ホウ酸化合物、または
過酸化物と還元性スルホキシ化合物との組み合わせから
なるレドックス系開始剤を用いて行われるのが好まし
い。
【0016】そして、前記単量体および重合開始剤など
は、一括添加法、分割添加法、連続添加法、モノマー添
加法、エマルジョン添加法などの公知の任意の方法で添
加されてもよい。また、反応をスムーズに進めるために
反応系を窒素置換するとか、残量単量体を除去するため
に反応終了後反応系を昇温するとか、特別な触媒を添加
するとかの方法がとられてもよい。
【0017】各層のポリマーを形成し得るための重合温
度は、各層ともに、好ましくは30〜120℃、より好
ましくは50〜100℃の範囲である。また、単量体/
水の比は、特に限定されず、1/1〜1/5程度、通常
1/1.5〜1/3の範囲であるのがよい。その他、連
鎖移動剤、紫外線吸収剤などの、通常重合時に添加する
添加剤を用いることができる。
【0018】また、本発明において使用される乳化剤
は、特に限定されるものではないが、分子中に−PO3
2 または−PO2 M(ここで、Mはアルカリ金属また
はアルカリ土類金属を表す)で表される基を有する化合
物を用いるのが、後述する如き酢酸カルシウム水溶液で
凝固させることにより得られるポリマーをメタクリル系
樹脂に添加した際に、その樹脂組成物を用いて得られる
成形品の着色も発生せず、かつ、その樹脂組成物の金属
腐食性が小さくなり、好ましい。
【0019】乳化剤の具体例としては、下記の一般式
〔1〕または〔2〕
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】(ただし、R1 はそれぞれ炭素数4〜8の
アルキル基またはアルケニル基を表し、R′はそれぞれ
エチレン基またはプロピレン基を表し、Mはそれぞれア
ルカリ金属またはアルカリ土類金属を表し、nは4〜8
の整数であり、pおよびqはそれぞれ1または2であ
り、p+qは3である)で表されるリン酸エステル塩ま
たはそれらの混合物を挙げることができ、表されるリン
酸エステル塩またはそれらの混合物があり、好ましいリ
ン酸エステル塩としては、モノ−n−ブチルフェニルペ
ンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ブチルフェニルペ
ンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ペンチルフェニ
ルヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−ペンチルフェ
ニルヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘプチル
フェニルペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘプチ
ルフェニルペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ペ
ンチルオキシヘプタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ペ
ンチルオキシヘプタオキシエチレンリン酸、モノ−n−
ヘキシルオキシペンタオキシエチレンリン酸またはジ−
n−ヘキシルオキシペンタオキシエチレンリン酸のアル
カリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられる。か
かるアルカリ金属としてはナトリウムまたはカリウムが
好ましく、アルカリ土類金属としてはカルシウムまたは
バリウムが好ましい。これらのリン酸エステル塩は、そ
れぞれを単独でまたはそれぞれのモノエステルとジエス
テルとの混合物として使用することができる。
【0023】また、上記のリン酸エステル塩の使用量
は、重合させる単量体の種類、重合条件などと密接に関
連するので、一概に決定することはできないが、本発明
においては単量体100重量部に対して好ましくは0.
1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範
囲である。本発明における乳化ラテックスからポリマー
を回収する凝固方法としては、特に限定はないが、乾燥
効率を高めるためには凝固粉の含水量が少なく、かつ、
微粉量が少なくなる方法が好ましい。具体的には、例え
ば、乳化重合により得られたラテックスを、線速度0.
5m/秒以下で、濃度1.8〜20重量%の酢酸カルシ
ウムを含む水溶液からなる温度90℃以上の凝固剤溶液
中に流し込み、凝固させる方法が挙げられる。
【0024】目的とする含水量が少なくかつ微粉の割合
が少ない凝固粉を得るための凝固剤溶液の温度は、所望
のポリマーを形成し得る単量体の種類、量あるいは攪拌
による剪断力などの凝固条件の影響を受けるため一概に
は決定できないが、一般には90℃以上、好ましくは9
0℃〜100℃の範囲である。凝固液温度が90℃未満
では、凝固粉の含水量が高く、また微粉量が多くなるこ
とがある。
【0025】凝固剤の種類も、特に限定されることはな
いが、含水量を少なくするためには凝析力が比較的大き
なカルシウムイオンを含有する水溶性の化合物が好まし
く、酢酸カルシウム水溶液を用いるのがよい。酢酸カル
シウム水溶液の濃度は、一般には1.8〜20重量%、
好ましくは1.8〜5重量%である。1.8重量%未満
では安定してポリマーを回収できない場合や凝固粉の含
水率が高くなることがあり、また20重量%を超えると
酢酸カルシウム溶液の温度変化により酢酸カルシウムが
析出することがあり、好ましくない。なお、コストの点
から、酢酸カルシウムの使用量は少ない方が好ましい。
【0026】凝固剤としては、他に、硫酸マグネシウム
や硫酸アルミニウムを用いることができるが、硫酸マグ
ネシウムによる凝固では凝析力が弱いため、100℃以
下の温度では含水量が比較的多いものになる。このた
め、この方法で含水量を低くするためには、回収した湿
潤状のポリマーを高温加圧処理する必要がある。一方、
硫酸アルミニウムによる凝固では、アルミニウムイオン
の凝析力が強いため含水量は比較的少なくなるが、得ら
れるポリマーをメタクリル系樹脂に添加した際に樹脂組
成物が黄味を帯びてその光学特性が低下し、また熱着色
性の大きいものになる傾向がある。
【0027】回収に用いる酢酸カルシウムを必要に応じ
て他の酸や塩基と併用することも可能であるが、硫酸塩
や炭酸塩などの無機塩と併用する際には未溶解性のカル
シウム塩になるので好ましくない。ラテックスを凝固液
中に流し込むときの速度も、他の凝固条件の影響を受け
るため一概に決定することはできないが、線速度を0.
5m/秒以下にしてなるべく低速で凝固液中に流し込
み、凝固させるのがよい。線速度が0.5m/秒を超え
る場合、凝固粉の含水量が比較的多くなり易い。
【0028】乳化ラテックスを凝固して得られた凝固粉
(湿潤状ポリマー)は、通常、1〜100倍程度の水で
水洗される。その後、遠心脱水機やデカンタ脱水機によ
り脱水後、圧搾脱水機や流動乾燥機などを用いて乾燥さ
せる。この際の乾燥は、凝固粉の含水量が低いほど乾燥
速度が速くなり、効率的である。ここで、問題とされる
水は、凝固粉中に存在する大きさが数μm以下の微小空
隙に存在する。そのため、凝固粉を乾燥した後の水銀圧
入法で測定した孔径5μm以下の空隙体積が乾燥単位重
量当たり0.7cc以下となるものが含水量が少なくな
り、乾燥効率に優れている。孔径5μm以下の空隙体積
が乾燥単位重量当たり0.7cc以上のものでは、凝固粉
中の含水量が相対的に多くなるため、乾燥速度が遅くな
る。
【0029】また、圧搾脱水押出機を用いて効率的に乾
燥させるための凝固粉の性状は、含水量を少なくするだ
けでなく、凝固粉の平均粒径が大きく、微粉量が少ない
ことが有効である。具体的には、乾燥後に、上記の空隙
構造を有し、かつ、粒径が212μm以下である微粉の
割合が40重量%以下となるような凝固粉であるのがよ
い。乾燥後に粒径212μm以下の微粉の割合が40重
量%超となるような凝固粉では、凝固粉の供給量を上げ
ると圧搾部で脱水された水の滞留が著しくなり、サージ
ング現象が起こりやすくなる。そのため、圧搾脱水押出
機への凝固粉の供給が制限され、限界供給量が少なくな
る。
【0030】圧搾脱水機による乾燥では、顆粒状で、ハ
ンドリング性に優れる乾燥粉が得られるので、特に好ま
しい。流動乾燥機による乾燥では、嵩密度が低くなり易
く、粉体としての流動性もよくないことが多く、ブロッ
キングが起こりやすくなる。また、微粉状となるため、
飛散し易く、作業性に劣ったり、粉塵爆発の危険性も残
されているという問題もある。圧搾脱水による乾燥で
は、このような不具合を解消し、極めて作業性に優れた
顆粒状の粉体が得られる。
【0031】乾燥して得られた多層構造ポリマー粉体
は、メタクリル樹脂および必要に応じて安定剤、可塑
剤、染料などを加え、ヘンシェルミキサー等で混合後、
押出機を用いて200〜300℃で溶融混練するなどの
公知の方法で処理することができ、射出成形法等の公知
の方法で成形することができる。このとき用いられるメ
タクリル樹脂の性状については特に限定されないが、例
えば、メタクリル酸メチル80〜100重量%、炭素数
8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート0〜
20重量%、およびこれらと共重合可能なビニル系不飽
和単量体0〜20重量%からなるものが挙げられる。炭
素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート
の例としては、前述したものがある。
【0032】多層構造ポリマー粉体とメタクリル樹脂と
の混合の際、その混合比は特に限定されず、場合によっ
てはそのすべてが多層構造ポリマー粉体であってもよ
い。ただし、成形加工性を維持するためには多層構造弾
性体の含有量として1〜50重量%が好ましい。
【0033】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明す
る。なお、実施例中の「部」は「重量部」を表し、
「%」は「重量%」を表す。また、実施例中の光学特性
およびアイゾット衝撃強度の評価は、下記の条件で射出
成形して得られる試験片を用いて行った。
【0034】射出成形機: (株)日本製鋼所製、V−
17−65型スクリュー式自動射出成形機 射出成形条件:シリンダー温度250℃、射出圧700
kg/cm2 試験片サイズ:110mm×110mm×2mm 70mm×12.5mm×6.2mm 1.ポリマーの溶融開始温度は、フローテスターを用
い、下記の条件下に測定した。
【0035】 シリンダー圧力:20 kgf/cm2 ダイ :L=10.00mm D=1.00mm 剪断応力 :4.903E5 dyn/cm2 測定開始温度 :100℃ 昇温速度 :6.0℃/分 余熱時間 :300秒 2.含水率(WC )%は、湿潤状ポリマー5gを180
℃で1時間熱風乾燥して乾燥重量(WD )を測定し、
式:WC =〔(5−WD )/WD 〕×100を用いて求
めた。 3.平均粒径の測定は、以下の手順で行った。すなわ
ち、湿潤状ポリマーを75℃で24時間乾燥させて得ら
れた乾燥粉約10gを、目開き63μm,106μm,
212μm,300μm,500μm,850μm,1
400μmおよび2000μmの篩いを目開きの大きい
ものを上にして順に重ねたものの最上段に入れて電動振
動機によって30分間ふるい分けを行った。その後、各
段の篩いの上にある粉体重量を測定し、篩いの目開き下
を通過した重量を積算し、試料重量に対する粒径平均値
を求めた。 4.微粉の割合は、3と同じ手順で操作を行い、212
μmの篩いを通過した粉体重量から試料重量に対する割
合を求めることにより行った。 5.孔径体積の測定は、湿潤状ポリマーを75℃で24
時間乾燥させて得られた乾燥粉を試料として用いて行っ
た。この試料(約0.12g)をガラス製キャピラリに
加え、30分間脱気して真空状態にした後、キャピラリ
中に水銀を充填し、ポロシメーター(アムコ MODE
L 2000型)を用いて測定した。 6.金属腐食性は、押出ペレット中に鏡面研磨した一般
軟鋼を入れ、250℃で60分間保持し、表面を観察
し、下記により評価した。
【0036】○……表面の変化なし △……表面の金属光沢が低下 ×……表面の金属光沢が失われた 7.全透(全光線透過率)は、ASTM D−1003
に準拠して測定した。 8.曇価は、ASTM D−1003に準拠して測定し
た。 9.YI値は、ASTM D−1925に準拠して測定
した。 10.アイゾット衝撃強度(ノッチ付き)は、ASTM
D−256に準拠して測定した。 11.流動乾燥特性は、乾燥粉量で500gになるよう
に計量した湿潤状ポリマー{5×(100+WC )}g
を温風温度70℃、風量71cm3 /秒、温風の吹き出し
速度40cm/秒の条件で40分間乾燥し、その時の含水
率を求めることにより評価した。 12.圧搾脱水押出機における脱水速度は、下記の要領
で求めた。
【0037】 圧搾脱水押出機: 東芝機械株式会社製 TEM−1
20 2軸型方式 バレル口径: 120mm スクリュー回転数: 50〜200rpm 脱水用スリット間隙:0.2mm シリンダー設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/
C6=140/180/180/150/150/15
0(℃) 上記の装置は、総数10個のバレルブロックNo. 1〜N
o. 10を2本の各スクリュー軸芯がそれぞれ平行にな
るように連結固定して構成され、バレル内部には2本の
同一形状をもつスクリューが互いに噛み合った状態で軸
芯を平行にして挿入されている。
【0038】バレルの構成は、図1に示す如く、バレル
ブロックNo. 1,2,4,6,8,9および10は通常
の2軸押出機に使用されるものと同一構造であり、格別
の構造を有しないバレルブロックからなる。No. 3,5
および7の各バレルブロックの側面には液体のみを通す
ようなスリット間隔をもつ脱水用スリットが多数形成さ
れている。バレルブロック No.1の上面の原料投入口に
はホッパーが取り付けられ、ホッパーの上方には原料投
入装置が配設されている。
【0039】以上の構成からなるバレルに挿入されるス
クリューは、様々な構成が採れるように多種のスクリュ
ー構造および長さをもつスクリューブロックおよびニー
ディングディスクを適宜組み合わせて構成される。本実
施例では、各種スクリューブロックとニーディングディ
スクを組み合わせ、同一構造で全長が4465mmのスク
リューを2本得ている。
【0040】図2は上記スクリューの軸方向構造を示し
ており、バレルの先端に向けてスクリューSブロック長
/リード長(個数)またはニーディングディスクNブロ
ック長/枚(個数)が、駆動軸側から長さ調整用の2枚
の5mmのOリング、S160/160(5),S130
/130(3),S65/130(1),N130/7
(1),N65/5(1),N80/7(1),L50
/100(4),S160/160(2),S80/1
60(1),S260/130(1),S65/130
(1),N80/7(1),L50/100(1),S
160/160(2),S80/160(1),N13
0/7(1),S260/130(1),N130/7
(1),S260/130(1),N80/7(5),
S80/160(2),S130/130(1)の順序
で結合されている。なお、この記載中、Sはスクリュー
ブロックを、Nはニーディングディスクを示すととも
に、Lの付されたブロックはねじれ方向が左回りを意味
し、Lの付されていないブロックは右回り即ち順方向を
意味する。
【0041】かかる構成からなる2本一対のスクリュー
が互いに噛み合った状態で上記バレル2に貫通挿入さ
れ、その基端は変速機能を備える駆動源に連結される。
従って、こうして得られる本実施例の2軸押出型脱水機
は、バレルブロックNo. 1の部分が原料投入部、バレル
ブロック No.3,5,7が脱液部、バレルブロックNo.
4,6がニーディングディスクおよび逆スクリューブロ
ックからなる圧搾部を構成している。
【0042】このような二軸型圧搾脱水押出機に、凝固
後に遠心脱水して得られた湿潤状のポリマーを原料供給
口から供給したとき、バレルブロックNo. 10の出口か
らフレーク状の溶融したポリマーが得られる。各湿潤状
ポリマーの脱水速度は、湿潤状ポリマーの供給量と駆動
軸の回転数をバランスを保ちながら上げていったとき安
定的にフレーク状のポリマーが得られる上限の供給量を
乾燥ポリマー量で示した。
【0043】実施例1 (A)ステンレススチール製反応容器に脱イオン水30
0部を仕込んだ後加熱し、内温が80℃になった時点で
下記組成の混合物を投入した。 脱イオン水 5部 ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート 0.48部 二水塩(以下、ロンガリットという) 硫酸第1鉄 0.4×10-6部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 1.2×10-6部 得られた混合物を80℃で15分間保持後、あらかじめ
窒素置換しておいた下記組成の混合物を2時間かけて滴
下し、80℃に保ったまま1時間重合した。得られたラ
テックスの重合率は99%以上であった。
【0044】 メタクリル酸メチル54.0%、スチレン5.0% 40部 およびアクリル酸ブチル41.0%の混合物 1,3−ブチレンジメタクリレート 1.1部 マレイン酸ジアリル 0.14部 t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.08部 モノ−n−ペンチルフェニルヘキサオキシエチレン 1.20部 リン酸ナトリウムとジ−n−ペンチルフェニルヘキ サオキシエチレンリン酸ナトリウムの1:1混合物 (以下、乳化剤Aという) (B)引き続き、80℃で、上記反応器内に下記組成の
混合物(イ)を投入し、15分間保持した後、あらかじ
め窒素置換しておいた下記組成の混合物(ロ)を3時間
かけて滴下し、さらに3時間重合した。得られたラテッ
クスの重合率は99%以上であり、粒子径は0.25μ
mであった。
【0045】 (イ)ロンガリット 0.2部 脱イオン水 5部 (ロ)スチレン 10.0部 アクリル酸ブチル 50.0部 1,3−ブチレンジメタクリレート 0.2部 マレイン酸ジアリル 1.0部 クメンハイドロパーオキサイド 0.17部 乳化剤A 1.8部 (C)次に、上記反応器内に下記組成の混合物(ハ)を
投入し、30分間保持した後、あらかじめ窒素置換して
おいた下記組成の混合物(ニ)を4時間かけて滴下し、
さらに1時間重合した。得られたラテックスの重合率は
99%以上であり、粒子径は0.27μmであった。
【0046】上記により得られた重合体のラテックスを
Lx−とする。 (ハ)ロンガリット 0.2部 脱イオン水 5部 (ニ)メタクリル酸メチル 57部 アクリル酸メチル 3部 t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.1部 ノルマルオクチルメルカプタン 0.2部 (D)ステンレス製容器に回収剤として1.8%酢酸カ
ルシウム水溶液を仕込み、攪拌下に90℃に昇温し、先
に製造したラテックスを線速度0.5m/秒以下で連続
的に添加し、その後30分間この温度に保持した。室温
まで冷却した後ポリマーを脱イオン水で洗浄しながら遠
心脱水機で濾別して、白色の湿潤状ポリマーを得た。こ
れを圧搾脱水機または流動乾燥機にて乾燥させて、ポリ
マーAを得た。この際の凝固粉特性および乾燥特性を表
1に示す。
【0047】実施例2 (A)ステンレススチール製反応容器に脱イオン水30
0部を仕込んだ後加熱し、内温が80℃になった時点で
下記組成の混合物を投入した。 ロンガリット 0.48部 硫酸第1鉄 0.4×10-6部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 1.2×10-6部 得られた混合物を80℃に15分間保持後、あらかじめ
窒素置換しておいた下記組成の混合物を2時間かけて滴
下し、80℃に保ったまま1時間重合した。得られたラ
テックスの重合率は99%以上であった。
【0048】 メタクリル酸メチル54.0%、スチレン6.0% 40部 およびアクリル酸ブチル40.0%の混合物 1,3−ブチレンジメタクリレート 1.1部 マレイン酸ジアリル 0.14部 t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.08部 乳化剤A 1.20部 (B)引き続き、80℃で、上記反応器内に下記組成の
混合物(イ)を投入し、15分間保持した後、あらかじ
め窒素置換しておいた下記組成の混合物(ロ)を3時間
かけて滴下し、さらに3時間重合した。得られたラテッ
クスの重合率は99%以上であり、粒子径は0.23μ
mであった。
【0049】 (イ)ロンガリット 0.2部 脱イオン 5部 (ロ)スチレン 11.0部 アクリル酸ブチル 49.0部 1,3−ブチレンジメタクリレート 0.2部 マレイン酸ジアリル 1.0部 クメンハイドロパーオキサイド 0.17部 乳化剤A 1.8部 (C)次に、上記反応器内に下記組成の混合物(ハ)を
投入し、30分間保持した後、あらかじめ窒素置換して
おいた下記組成の混合物(ニ)を3時間かけて滴下し、
さらに1時間重合した。得られたラテックスの重合率は
99%以上であり、粒子径は0.27μmであった。
【0050】得られた重合体のラテックスをLx−と
する。 (ハ)ロンガリット 0.2部 脱イオン水 5部 (ニ)メタクリル酸メチル 95部 アクリル酸メチル 5部 t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.2部 ノルマルオクチルメルカプタン 0.3部 (D)ステンレス製容器に回収剤として1.8%酢酸カ
ルシウム水溶液を仕込み、攪拌下に90℃に昇温し、先
に製造したラテックスを線速度0.5m/秒以下で連続
的に添加し、その後この温度に30分間保持した。室温
まで冷却した後ポリマーを脱イオン水で洗浄しながら遠
心脱水機で濾別して、白色の湿潤状ポリマーを得た。こ
れを圧搾脱水機または流動乾燥機にて乾燥させてポリマ
ーBを得た。この際の凝固粉特性および乾燥特性を表1
に示す。
【0051】次に、この粉体2000gとメタクリル樹
脂(アクリペット(登録商標)VH:三菱レイヨン
(株)製品)2000gとの混合物を、外形40mmφの
スクリュー型押出機((株)日本製鋼所製、P−40−
26AB−V型、L/D=26)を使用し、シリンダー
温度200〜260℃、ダイ温度250℃で溶融混練し
てペレットとし、多層構造アクリル弾性体の含有率25
%の耐衝撃性メタクリル樹脂組成物を得た。
【0052】この樹脂組成物の評価結果を表2に示す。 実施例3 (A)ステンレススチール製反応容器に脱イオン水30
0部を仕込んだ後加熱し、内温が80℃になった時点で
下記組成の混合物を投入した。 ロンガリット 0.48部 硫酸第1鉄 0.4×10-6部 エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 1.2×10-6部 得られた混合物を80℃に15分間保持後、あらかじめ
窒素置換しておいた下記組成の混合物を2時間かけて滴
下し、80℃に保ったまま1時間重合した。得られたラ
テックスの重合率は99%以上であった。
【0053】 メタクリル酸メチル33.0%およびアクリル酸メ 40部 チル67.0%の混合物 1,3−ブチレンジメタクリレート 1.1部 マレイン酸ジアリル 0.14部 t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.08部 乳化剤A 1.20部 (B)引き続き、80℃で、上記反応器内に下記組成の
混合物(イ)を投入し、15分間保持した後、あらかじ
め窒素置換しておいた下記組成の混合物(ロ)を3時間
かけて滴下し、さらに3時間重合した。得られたラテッ
クスの重合率は99%以上であり、粒子径は0.23μ
mであった。
【0054】 (イ)ロンガリット 0.2部 脱イオン水 5部 (ロ)スチレン 11.0部 アクリル酸ブチル 49.0部 1,3−ブチレンジメタクリレート 0.2部 マレイン酸ジアリル 1.0部 クメンハイドロパーオキサイド 0.17部 乳化剤A 1.8部 (C)次に、上記反応器内に下記組成の混合物(ハ)を
投入し、30分間保持した後、あらかじめ窒素置換して
おいた下記組成の混合物(ニ)を3時間かけて滴下し、
さらに1時間重合した。得られたラテックスの重合率は
99%以上であり、粒子径は0.27μmであった。
【0055】 (ハ)ロンガリット 0.2部 脱イオン水 5部 (ニ)メタクリル酸メチル 95部 アクリル酸メチル 5部 t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.2部 ノルマルオクチルメルカプタン 0.3部 (D)ステンレス製容器に回収剤として1.8%酢酸カ
ルシウム水溶液を仕込み、攪拌下に90℃に昇温し、先
に製造したラテックスを線速度0.5m/秒以下で連続
的に添加し、その後30分間保持した。室温まで冷却し
た後ポリマーを脱イオン水で洗浄しながら遠心脱水機で
濾別して、白色の湿潤状ポリマーを得た。これを圧搾脱
水機または流動乾燥機にて乾燥させてポリマーCを得
た。この際の凝固粉特性および乾燥特性を表1に示す。
【0056】実施例4 反応容器に回収剤として2.6%硫酸マグネシウム水溶
液を仕込み、攪拌下に90℃に昇温し、実施例2で得ら
れた重合体ラテックスLx−を線速度0.5m/秒以
下で連続的に添加し、その後30分間この温度に保持し
た。さらに、上記で得られたスラリーを、加圧処理が可
能なGL釜に移し、130℃で30分間加圧状態に保っ
た。室温まで冷却した後ポリマーを脱イオン水で洗浄し
ながら遠心脱水機で濾別して、白色の湿潤状ポリマーを
得た。これを圧搾脱水機または流動乾燥機にて乾燥させ
てポリマーDを得た。この際の凝固粉特性および乾燥特
性を表1に示す。
【0057】比較例1 反応容器に回収剤として2.6%硫酸マグネシウム水溶
液を仕込み、攪拌下に90℃に昇温し、実施例1で得ら
れた重合体ラテックスLx−を線速度0.5m/秒以
下で連続的に添加し、その後30分間この温度に保持し
た。室温まで冷却した後ポリマーを脱イオン水で洗浄し
ながら遠心脱水機で濾別して、白色の湿潤状ポリマーを
得た。これを圧搾脱水機または流動乾燥機にて乾燥させ
てポリマーEを得た。この際の凝固粉特性および乾燥特
性を表1に示す。
【0058】比較例2 反応容器に回収剤として1.8%酢酸カルシウム水溶液
を仕込み、攪拌下に75℃に昇温し、実施例1で得られ
た重合体ラテックスLx−を線速度0.5m/秒以下
で連続的に添加し、その後30分間この温度に保持し
た。室温まで冷却した後ポリマーを脱イオン水で洗浄し
ながら遠心脱水機で濾別して、白色の湿潤状ポリマーを
得た。これを圧搾脱水機または流動乾燥機にて乾燥させ
てポリマーFを得た。この際の凝固粉特性および乾燥特
性を表1に示す。
【0059】比較例3 反応容器に回収剤として1.8%酢酸カルシウム水溶液
を仕込み、攪拌下に90℃に昇温し、実施例1で得られ
た重合体ラテックスLx−を線速度0.5m/秒以下
で連続的に添加し、その後30分間この温度に保持し
た。室温まで冷却した後ポリマーを脱イオン水で洗浄し
ながら遠心脱水機で濾別して、白色の湿潤状ポリマーを
得た。さらにこの湿潤状ポリマーを大型ヘンシェルミキ
サーを用いて攪拌を行い、微小粉砕された湿潤状ポリマ
ーを得た。これを圧搾脱水機または流動乾燥機にて乾燥
させてポリマーGを得た。この際の凝固粉特性および乾
燥特性を表1に示す。
【0060】実施例5〜9 乳化剤およびその添加量を表2に示したように変更した
以外は、実施例2の操作を繰り返した。結果を表2に示
す。 実験例1 実施例2で得られた圧搾脱水押出機による乾燥粉と、流
動乾燥機による乾燥粉との特性を比較した。
【0061】品質は双方ともに良好であったが、流動乾
燥機による乾燥粉は平均粒径340μmのままであるた
め、小粒フレーク状で平均粒径が850μmになる圧搾
脱水押出粉に比べて微細であり、流動性に乏しく、ブロ
ッキング性にも劣っていた。また、この流動乾燥機によ
る乾燥粉2000gまたは圧搾脱水による小粒フレーク
状の乾燥粉2000gとメタクリル樹脂(アクリペット
(登録商標)VH:三菱レイヨン(株)製品)2000
gとを賦形のため混合物としたところ、流動乾燥機によ
る乾燥粉は微粉状であるため粉塵の飛散が大きかった
が、圧搾脱水による小粒フレーク状の乾燥粉では粉塵の
飛散はほとんどなかった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、特定の空隙構造を持ち
かつ微粉の割合が比較的少ないアクリル系多層構造ポリ
マーの凝固粉が得られ、この凝固粉は圧搾脱水押出機等
の乾燥方法に適し、その乾燥効率が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱水速度の測定に用いた2軸スクリュー圧搾脱
水押出機の概略構成図。
【図2】図1に示す押出機のスクリューの構成図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中内 純 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社大竹事業所内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリマーの溶融開始温度が235℃以上
    であり、かつ、内層に単独で重合した場合のガラス転移
    温度Tgが25℃以下であるポリマーを含む少なくとも
    1層の軟質重合体層と、および最外層に単独で重合した
    場合にTgが50℃以上であるポリマーを含む硬質重合
    体層とを有するアクリル系多層構造ポリマーの乳化ラテ
    ックスを凝固して得られる凝固粉を含むアクリル系多層
    構造ポリマー粉体であって、乾燥後の凝固粉の粒径21
    2μm以下の微粉の割合が40重量%以下であり、か
    つ、乾燥後の凝固粉の水銀圧入法で測定した孔径5μm
    以下の空隙体積が単位重量当たり0.7cc以下であるア
    クリル系多層構造ポリマー粉体。
  2. 【請求項2】 軟質重合体層が、炭素数8以下のアルキ
    ル基を有するアルキルアクリレート40〜90重量%お
    よびこれらと共重合可能な少なくとも1つのビニル基を
    有する単官能性単量体10〜60重量%、およびこれら
    単量体成分100重量%に対してグラフト交叉剤0.1
    〜10重量%および少なくとも2つのビニル基を有する
    多官能性架橋剤0.1〜10重量%からなるポリマーを
    含む請求項1記載の粉体。
  3. 【請求項3】 硬質重合体層が、炭素数4以下のアルキ
    ル基のアルキルメタクリレート60〜100重量%およ
    びこれらと共重合可能な不飽和単量体0〜40重量%か
    らなるポリマーを含む請求項1または2記載の粉体。
  4. 【請求項4】 アクリル系多層構造ポリマーの、全量に
    対する最外層の割合が10〜60%重量である請求項1
    〜3のいずれかに記載の粉体。
  5. 【請求項5】 アクリル系多層構造ポリマーが、(α)
    炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレー
    トおよびスチレンから選ばれる少なくとも1種5〜70
    重量%、メチルメタクリレート30〜95重量%、およ
    びこれらの単量体成分100重量%に対して0.2〜5
    重量%のグラフト交叉剤および1〜5重量%の多官能性
    架橋剤からなる混合物を重合して得られる20〜30重
    量%の最内層重合体、(β)炭素数8以下のアルキル基
    を有するアルキルアクリレート70〜90重量%、芳香
    族ビニル単量体10〜30重量%、およびこれらの単量
    体成分100重量%に対して1〜3重量%のグラフト交
    叉剤および0.1〜1重量%の多官能性架橋剤からなる
    混合物を重合して得られる25〜45重量%の中間層重
    合体、および(γ)メチルメタクリレート85〜97重
    量%および炭素数4以下のアルキルアクリレート3〜1
    5重量%からなる混合物を重合して得られる35〜55
    重量%の最外層重合体、の3層構造からなる請求項1〜
    4のいずれかに記載の粉体。
  6. 【請求項6】 メタクリル酸メチル80〜100重量
    %、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリ
    レート0〜20重量%、およびこれらと共重合可能なビ
    ニル系不飽和単量体0〜20重量%からなるメタクリル
    系樹脂をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の粉
    体。
  7. 【請求項7】 所定のモノマーを分子中に−PO3 2
    または−PO2 M(ここで、Mはアルカリ金属またはア
    ルカリ土類金属を表す)で表される基を有する化合物を
    乳化剤として用いて重合して、ポリマーの溶融開始温度
    が235℃以上であり、かつ、内層に単独で重合した場
    合のガラス転移温度Tgが25℃以下であるポリマーを
    含む少なくとも1層の軟質重合体層と、および最外層に
    単独で重合した場合にTgが50℃以上であるポリマー
    を含む硬質重合体層とを有するアクリル系多層構造ポリ
    マーの乳化ラテックスを製造し、この乳化ラテックス
    を、線速度0.5m/秒以下で、濃度1.8〜20重量
    %の酢酸カルシウムを含む水溶液からなる温度90℃以
    上の凝固剤溶液中に流し込み、凝固させることを含むア
    クリル系多層構造ポリマー粉体の製造方法。
  8. 【請求項8】 軟質重合体層のポリマーが、炭素数8以
    下のアルキル基を有するアルキルアクリレート40〜9
    0重量%およびこれらと共重合可能な少なくとも1つの
    ビニル基を有する単官能性単量体10〜60重量%、お
    よびこれら単量体成分100重量%に対してグラフト交
    叉剤0.1〜10重量%および少なくとも2つのビニル
    基を有する多官能性架橋剤0.1〜10重量%を用いて
    重合される請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 硬質重合体層のポリマーが、炭素数4以
    下のアルキル基のアルキルメタクリレート60〜100
    重量%およびこれらと共重合可能な不飽和単量体0〜4
    0重量%を用いて重合される請求項7または8記載の方
    法。
  10. 【請求項10】 酢酸カルシウム水溶液の濃度が1.8
    〜5%である請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 【請求項11】 乳化剤が下記一般式〔1〕および
    〔2〕で表される化合物から選ばれる少なくとも1種で
    ある請求項7〜10のいずれかに記載の方法。 【化1】 【化2】 (ただし、R1 はそれぞれ炭素数4〜8のアルキル基ま
    たはアルケニル基を表し、R′はそれぞれエチレン基ま
    たはプロピレン基を表し、Mはそれぞれアルカリ金属ま
    たはアルカリ土類金属を表し、nは4〜8の整数であ
    り、pおよびqはそれぞれ1または2であり、p+qは
    3である)
  12. 【請求項12】 ポリマーの溶融開始温度が235℃以
    上であり、かつ、内層に単独で重合した場合のガラス転
    移温度Tgが25℃以下であるポリマーを含む少なくと
    も1層の軟質重合体層と、および最外層に単独で重合し
    た場合にTgが50℃以上であるポリマーを含む硬質重
    合体層とを有するアクリル系多層構造ポリマーの乳化ラ
    テックスを凝固して得られる凝固粉であって、乾燥後に
    粒径212μm以下の微粉の割合が40重量%以下であ
    り、かつ、水銀圧入法で測定した孔径5μm以下の空隙
    体積が単位重量当たり0.7cc以下であるアクリル系多
    層構造ポリマー粉体を与えるような凝固粉を、圧搾脱水
    方法により乾燥させることを含む、顆粒状の多層構造ポ
    リマー粉体の製造方法。
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