JPH08231617A - 光硬化性組成物の硬化方法 - Google Patents

光硬化性組成物の硬化方法

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JPH08231617A
JPH08231617A JP3266695A JP3266695A JPH08231617A JP H08231617 A JPH08231617 A JP H08231617A JP 3266695 A JP3266695 A JP 3266695A JP 3266695 A JP3266695 A JP 3266695A JP H08231617 A JPH08231617 A JP H08231617A
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JP3266695A
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Shuichi Sugita
修一 杉田
Hirotoshi Kamata
博稔 鎌田
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Showa Denko KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光硬化反応時に空気中に存在する酸素による
硬化阻害を抑制する方法。 【構成】 光硬化性組成物と混和しない液体を組成物と
空気層の間に介在させて光照射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光硬化性組成物の新規な
光硬化方法に関する。更に詳しくは光硬化反応時に空気
中に存在する酸素による硬化阻害を抑制するために、硬
化性組成物と空気層の間に液体を介在させて空気中の酸
素と遮断することによって光硬化反応を効率的に進行さ
せる硬化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、光重合は塗膜の硬化や印刷、樹脂
凸刷、プリント基盤作成用、レジストまたはフォトマス
ク、白黒またはカラーの転写発色用シートもしくは発色
シート作成などの多方面の用途にわたり使用され、特に
最近では地球環境問題、省エネルギー、労務コストの上
昇に対応する省力化等の観点から、光重合の特徴である
常温でも重合可能であること、即乾性、無溶剤化の可能
性等が注目され、盛んに開発が行われている。印刷イン
キの開発としては、無溶剤化、急速硬化による生産性の
向上、或いは硬化皮膜の物性改良を目的として紫外線硬
化インキの検討が進められている(例えば、特開平1−
229084号、特開平1−271469号及び特開平
2−22370号)。
【0003】また、塗料の開発としては速乾性及び着色
塗膜の硬化の検討が行われている(例えば特開昭52−
135341号、特開昭52−152436号、特開平
2−296875号及び特開平3−6265号)。特開
昭52−152436号明細書には、重合性不飽和樹脂
と光重合開始剤とを含有する系に顔料または隠ぺい率が
高い染料を含有した着色硬化塗膜の形成方法について開
示されている。
【0004】また近赤外光等、紫外光よりも長波長の光
を利用しての硬化も検討されており、従来の紫外線硬化
の欠点であった顔料などの入った光透過性の良くない着
色系材料あるいは成形体などの厚みのある材料の光硬化
が可能になったとされている(例えば、特開平1−11
1402号、特開平6−298819号)。しかしこれ
らの光によるラジカル重合反応は酸素による重合阻害が
著しく、空気中の酸素と接触する硬化物表面の硬化性が
抑制されると言う欠点を有していた。
【0005】上記問題点を解決するために大量の開始剤
を添加したり、表面にブリードして空気を遮断するワッ
クス等の添加剤を加えたりする方法が従来行われている
が、いずれも耐候性をはじめとする硬化物の諸物性に悪
影響を及ぼすとされている。また、各種不活性ガスを硬
化の際に用いて酸素濃度を低下させる方法が提案されて
いるが(例えば窒素−特開平4−301456号、二酸
化炭素−特開平4−258602号)、不活性ガスのコ
スト、酸素欠乏等の作業者の危険性等の問題点があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は簡便かつ経済
的な方法で、硬化時の空気による反応阻害を解決する、
光硬化性組成物の硬化方法を提供することを目的する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明ではこの課題を解
決するために光硬化時の雰囲気について鋭意検討した結
果、光照射時に光硬化性組成物と混和しない液体を、組
成物と空気層の間に介在させることによって空気中の酸
素による硬化阻害が改善されることを見いだし、本発明
を完成するに至つた。すなわち本発明によれば、重合性
不飽和化合物、光重合開始剤を必須成分とする光硬化性
組成物と空気層の間に、組成物と混和しない液体を介在
させて光照射することによって空気中の酸素の影響を受
けずに光硬化反応が行われ、光硬化物が得られる。
【0008】本発明の重合性不飽和化合物はラジカル重
合性の不飽和基を有する化合物であり、(メタ)アクリ
ル酸及びそのエステル類、スチレン、ビニルトルエン、
クロルスチレンなどのビニルベンゼン類、ビニルイソブ
チルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等の
ビニルエーテル類、(メタ)アクリロニトリル、(メ
タ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等の
(メタ)アクリル化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸
ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、アリル
アルコール、酢酸アリル、フタル酸ジアリル類等のアリ
ル基を含有するモノマー等が挙げられる。
【0009】さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ
ートなどの水酸基含有モノマー;ブチルイソシアネー
ト、フェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート
と上記水酸基含有モノマーとの付加物;リン酸と上記水
酸基含有モノマーとの付加物;N−ビニルピロリドン、
N−ビニルカルバゾール、Nービニルアセトアミド、ビ
ニルピリジン類などの含窒素不飽和モノマー、ジエチレ
ングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオー
ルジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアク
リレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、
ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのジ−、
トリ−またはテトラビニル化合物;前記の多価アルコー
ルとエチレンオキシドとの付加物に(メタ)アクリル酸
を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとプロピ
レンオキシドとの付加物に(メタ)アクリル酸を反応せ
しめた生成物;前記の多価アルコールとε−カプロラク
トンとの付加物に(メタ)アクリル酸を反応せしめた生
成物;含リン重合性不飽和モノマー等が包含される。
【0010】また本発明の重合性不飽和化合物としては
重合性オリゴマーも含まれ、ウレタンアクリレート樹
脂、ポリエステルアクリレート樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコンアクリレ
ート樹脂、メラミンアクリレート樹脂、特開平4−28
722号公報に開示されている(メタ)アクリル官能性
ポリオルガノシルセスキオキサン等が挙げられる。これ
らのオリゴマーは各種製造業者によって多種の化合物が
生産されており容易に入手可能である。上記重合性オリ
ゴマーは重合生成物の物性を決定する主成分であり、各
種用途に応じて要求される硬度、強度、耐久性、付着性
等の物性に応じて選択され任意量配合される。
【0011】本発明の重合開始剤は光エネルギーによっ
て重合性ラジカルを発生する化合物であればよく、従来
知られている紫外光重合開始剤、例えばベンジル、ベン
ゾイン、ベンゾインアルキルエーテルなどのベンゾイン
系、ベンジルアルキルケタールなどのケタール系、2,
2−ジアルコキシアセトフェノン、2−ヒドロキシー2
−メチルプロピオフェノンなどのアセトフェノン系、ベ
ンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ジエチルア
ミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、チオキサ
ントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサント
ン系、2−アルキルアントラキノンなどのアントラキノ
ン系、α−アシロキシムエステル、アシルホスフィンオ
キサイド、カンファーキノン、4,4’−ジエチルイソ
フタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブ
チルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−ニト
ロフルオレンなどがあげられる。
【0012】一般にP1型光開始剤と呼ばれる化合物は
それ単独でも使用可能であるが、P2型光開始剤と呼ば
れるベンゾフェノン系、ベンジル系、チオキサントン
系、アントラキノン系、カンファーキノン系等の紫外光
重合開始剤は、水素供与性化合物と併用して用いられ
る。更に詳細には特開平6−75374号に記載の紫外
光重合開始剤が挙げられる。また本発明の光重合開始剤
として400nm以上の、より長波長領域に感光性を有
する開始剤が挙げられる。好ましくは740nm以上の
近赤外光領域に感光性を有する開始剤、更に好ましくは
780nm以上の領域に吸収を持つ開始剤である。長波
長に感光性を有することにより従来の紫外光に比べて安
価でしかも安全性の高いハロゲンランプなどの光源を使
用できる上、長波長光は光の透過性に優れるため、単波
長の紫外光では困難であった厚みのある組成物、顔料な
どの遮蔽性のある組成物でも光硬化が可能である。
【0013】上記開始剤の例としては一般式(1)で表
わされる、400nm以上の波長領域に吸収を持つ陽イ
オン染料、 一般式(1); D+ ・ A- (式中、D+ は可視光又は近赤外光領域に吸収をもつ陽
イオンであり、A- は、各種陰イオンを示す)及び一般
式(2)で表わされる触媒の組み合わせが挙げられる。 一般式(2);
【0014】
【化2】
【0015】(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれ
ぞれ独立してアルキル基、アリール基、アリル基,アラ
ルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、複
素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル
基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アルキ
ニル基、ハロゲン原子または置換シリル基を示し、Z+
は各種陽イオンを示す)
【0016】上記一般式(1)の陽イオン染料と一般式
(2)の触媒を組み合わせると、光照射によつて分解が
起こり、陽イオン染料の色が消色するとともに重合が開
始される。ホウ素系触媒が共存していないと陽イオン染
料の消色反応が充分に進行せず、その結果陽イオン染料
の色が硬化物の色相を損なう場合があるが、触媒を共存
させることにより陽イオン染料の消色反応が完全に進行
し、また消色反応は不可逆であるので陽イオン染料の色
が硬化物の色相を損なうことがない。
【0017】ここで用いられる一般式(1)の陽イオン
染料において、陽イオン(D+ )として好ましいものと
しては、例えばシアニン、キサンテン、オキサジン、チ
アジン、ジアリルメタン、トリアリルメタン、ピリリウ
ム系陽イオン染料の陽イオンなどがあげられる。可視光
に吸収を持つ本発明の陽イオンの代表例としては表1に
示すもの、近赤外光に吸収を持つ陽イオンの例としては
表2に示すものが挙げられる。
【0018】
【表1】
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】また一般式(1)の陽イオン染料のカウン
ターアニオン(A- )は任意の陰イオンであり、例えば
塩素、臭素、沃素アニオン等のハロゲンアニオン、ベン
ゼンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニ
オン(トシレートアニオン)、メタンスルホン酸アニオ
ン等のスルホン酸アニオン、PF6 アニオン等種々のア
ニオン性化合物が挙げられるが、一般式(3)で表され
るホウ素アニオンが特に好ましい。 一般式(3);
【0022】
【化3】
【0023】(式中、R5 、R6 、R7 及びR8 はそれ
ぞれ独立してアルキル基、アリール基、アリル基,アラ
ルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、複
素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル
基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アルキ
ニル基、ハロゲン原子または置換シリル基を示す)
【0024】R5 、R6 、R7 及びR8 の具体例として
は、フェニル基、アニシル基、n−ブチル基、n−ペン
チル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチ
ル基、n−ドデシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキ
セニル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エト
キシフェニル基、トルイル基、t−ブチルフェニル基、
フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジエチルアミ
ノフェニル基、ビニル基、アリル基、トリフェニルシリ
ル基、ジメチルフェニルシリル基、ジブチルフェニルシ
リル基、トリメチルシリル基、ピペリジル基、チエニル
基、フリル基、ハロゲン原子などがあげられ、陰イオン
の具体例としては、nーブチルトリフェニルホウ素イオ
ン、n−ドデシルトリフェニルホウ素イオン、n−ブチ
ルトリアニシルホウ素イオン、n−オクチルトリアニシ
ルホウ素イオン、ジn−ブチルジフェニルホウ素イオ
ン、ジn−ドデシルジフェニルホウ素イオン、ジn−ブ
チルジアニシルホウ素イオン、ジn−ドデシルジアニシ
ルホウ素イオン、テトラフェニルホウ素イオン、テトラ
アニシルホウ素イオン、トリフェニルナフチルホウ素イ
オン、テトラブチルホウ素イオン、トリn−ブチル(ト
リフェニルシリル)ホウ素イオン、トリn−ブチル(ジ
メチルフェニルシリル)ホウ素イオン、ジメチルフェニ
ル(トリメチルシリル)ホウ素イオン、テトラフルオロ
ホウ素イオンなどがあげられる。
【0025】また、本発明におけるホウ素系触媒は一般
式(2)で表わされるが、式中に記載の4級ホウ素陰イ
オンの置換基R14 は、先に記載した一般式(3)の
4級ホウ素塩の置換基R58 と同様である。また陽イ
オン(Z+ )は一般式(4)
【0026】一般式(4);
【化4】
【0027】(式中、R11、R12、R13及びR14はそれ
ぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリ
ル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複
素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル
基、置換アラルキル基、置換アルケニル基または置換ア
ルキニル基を示す)
【0028】で表わされる4級アンモニウム陽イオンま
たは4級ピリジニウム陽イオン、4級キノリニウム陽イ
オン、ホスホニウム陽イオン、ナトリウム、カリウム、
リチウム、マグネシウム、カルシウム等の金属陽イオン
等があげられる。ホウ素系化合物の具体的な例として
は、テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニル
ホウ素、テトラメチルアンモニウムn−オクチルトリフ
ェニルホウ素、テトラメチルアンモニウムn−ドデシル
トリフェニルホウ素等が挙げられ、これらの化合物の詳
細な例は特開平6−75374号に記載がある。これら
陽イオン染料および触媒は単独または2種以上を混合し
て用いることもできる。
【0029】本発明の硬化方法は、光硬化性組成物を基
材に塗布、あるいは所定の容器に流し込みなどして所要
の形状にした後、組成物と混和しない液体を組成物と空
気が接触しないように加え(必要であれば基材全体を液
体に浸し)、硬化性組成物が空気中の酸素と接触しない
状態にした後、光照射することにより達成される。
【0030】例えば図1に示すように、組成物を所望の
形状の容器に流し込んだ後、組成物と混和しない液体を
組成物上に組成物表面が乱れないようゆっくり流し込
み、空気と組成物の間に液体層を設け、組成物と空気が
直接接触して空気中の酸素が組成物中に拡散して硬化阻
害を誘起するのを防止する。その際、液体は組成物と容
器の間に存在させる必要はない。その後所望の光照射を
上から、あるいは図1の容器が所望の光を透過するので
あれば下方あるいは横から実施することにより、本発明
の硬化方法を達成することが出来る。
【0031】また図2に示すように、光硬化性組成物を
含む基材全体を、組成物と混和しない液体中に浸すこと
も可能である。
【0032】いずれの場合も、組成物と混和しない液体
を、組成物と空気の間に5μ以上、好ましくは20μ以
上存在させることが望ましい。光硬化反応時に、空気中
から組成物に、硬化を阻害する酸素が拡散するのを防止
するには最低限5μ程度の液体の存在が好ましい。液体
を必要以上に大量に用いることは、経済面、あるいは光
照射の効率を減じる可能性があることから、好ましくな
い。特に、短波長の紫外光を用いる場合は、芳香族化合
物などの紫外光吸収性液体を使用することは不利とな
る。
【0033】一般に、より長波長すなわち可視光、さら
に好ましくは近赤外光を用いると、液体による光の減衰
が少なく、効率的に光硬化を達成することが出来る。本
発明の光硬化性組成物と混和しない液体とは、組成物と
相溶性のないかあるいは非常に小さい液体化合物であれ
ばよく、一般の光硬化性組成物は重合性(メタ)アクリ
ル基等を含有する比較的極性の高い親油性化合物である
ので、その場合本発明で用いる代表的な液体としては水
が挙げられる。あるいは石油エーテル、リグロイン、流
動パラフィン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロ
ヘキサン等の非極性液状化合物も用い得る。安全性、経
済性、入手性等を勘案すると特に好ましくは水である。
【0034】その際、硬化性組成物に親水性の化合物を
添加すると水と混和する恐れがあるので親水性化合物あ
るいはアセトン、低級アルコール等の水溶性あるいは親
水性溶媒の大量の使用は望ましくない。また本発明の液
体は、光硬化性組成物よりも比重が小さいことが好まし
い。また本発明の液体が光硬化性組成物よりも比重が大
きい場合でも、組成物の粘度が充分に大きく、光硬化時
に組成物層と酸素遮断液体層の逆転が起こらなければ本
発明の硬化方法を実施することが出来る。
【0035】すなわち光硬化時に組成物と液体の混合が
起こらず、かつ組成物と空気層(一般に組成物の上方)
の間に液体が存在する形式で、本発明の硬化方法が実施
される。本発明の光硬化方法は光重合性材料、例えば印
刷インキ、レジスト、接着剤、家具、電子材料、建材な
どの塗装、木工、金属、プラスチック類等の塗装、自動
車の車体、内装、バンパー等の塗装、無機材料のコーテ
ィング、FRP,人工大理石等の各種成形体、ポッティ
ング剤、シーリング剤、封止剤等の硬化、光重合による
印刷刷版作成等に応用可能である。
【0036】本発明における光硬化性組成物には任意の
充填剤を添加することが出来る。ここでいう充填剤とし
ては、有機物、無機物、或いはそれらの複合物、混合
物、各種染料、顔料等が挙げられる。有機の充填剤とし
ては、例えば重合等によって得られた高分子化合物を微
細に粉砕したもの等が挙げられ、また無機の充填剤とし
ては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、石英、ガ
ラス、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、雲母、硫酸
アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チ
タン、リン酸カルシウム等の粉末及びそれら粉末の表面
を多官能(メタ)アクリレート系モノマーまたはシラン
カップリング剤で被覆処理したもの等が挙げられる。
【0037】また複合物には上記無機充填剤をエチレン
性不飽和化合物に混合し、重合硬化させた後に微細に粉
砕したもの等が挙げられる。また、異種の充填剤を2種
以上別途に添加、或いは混合した後に添加しても何等差
し支えない。また上記顔料、着色染料としては、カーボ
ンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、チタンホワ
イト、クレー等の白色顔料、アルミパウダー、アルミペ
ースト、銀粉等のメタル系顔料、タルク、シリカ、炭酸
カルシウム、水酸化アルミ等の体質顔料をはじめとする
市販の各種顔料等の他、各種文献など(例えば「染料便
覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「最新顔料
便覧」日本顔料技術協会編集、昭和51年刊)に記載さ
れている公知のもの等が使用できる。
【0038】また本発明の組成物には各種の硬化促進剤
等を添加することができる。特に光吸収性色素とホウ素
系触媒を組み合わせた重合開始系ではビスイミダゾール
化合物、スルホニウム、ヨードニウム化合物等の有機オ
ニウム化合物、トリアジン化合物、有機過酸化物等を添
加することにより硬化効率を向上させることができる。
【0039】本発明に用いられる重合開始剤は組成物の
0.001重量%以上用いることにより本発明の目的を
達成することが出来る。一般式(1)で表される陽イオ
ン染料、一般式(2)で表されるホウ素系触媒の組み合
わせの場合は、各々0.001重量%以上用いればよ
い。それ以下だと硬化が充分に行われず、硬化が不十分
に終わるおそれがある。好ましくは、0.01〜10重
量%の範囲である。大量に用いすぎることは、経済的観
点上、好ましくない。2種あるいはそれ以上の開始剤を
併用することも可能である。また、陽イオン染料とホウ
素系触媒の比率は任意であるが、10:1〜1:10
(モル比)の範囲が好ましい。本発明の硬化方法を採用
することで酸素による硬化阻害が著しく低減され、従来
空気中での完全硬化が困難で、不活性ガスの使用で酸素
濃度を低減させたり、ワックス、アミン化合物等硬化物
の物性に悪影響を及ぼすおそれのある酸素阻害低減物質
を添加したり、あるいは空気と組成物を遮断するフィル
ムなどを使用する必要があった組成物を、簡便に光硬化
させることが可能になった。
【0040】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明する。な
お、硬化物の評価における完全硬化とは、硬化後の表面
硬度がJIS−K−5400に準拠した鉛筆引っかき試
験機での測定で鉛筆硬度がB乃至それよりも硬く、更に
カッターナイフで硬化塗膜を傷つけ、塗膜の内面を目視
観察及び手で触れ、べとつき、タックが全くない状態を
いう。
【0041】(実施例1)ペンタエリスリトールトリア
クリレート45g、ウレタンアクリレートオリゴマー
(商品名UA−306H 共栄社化学製)50g、紫外
線重合開始剤2,2−ジエトキシアセトフェノン0.1
gを充分に混合し、サンプル1とした。このサンプルを
10ml容量のガラス製サンプル瓶に2ml添加した。
その上に水をO.3ml、組成物の液面が乱れないよ
う、ゆっくり添加し、硬化性組成物の表面が水で覆われ
るようにした。250〜450nmの波長領域に分光分
布を有する出力100Wの高圧水銀ランプを3分間照射
した。組成物は完全硬化していた。
【0042】(実施例2)実施例1の紫外線重合開始剤
に変えて、近赤外光吸収性陽イオン染料(表1、番号
3、陰イオンはn−ブチルトリフェニルホウ素アニオ
ン)0.1g、ホウ素系触媒テトラブチルアンモニウム
n−ブチルトリフェニルホウ素0.1gを光重合開始剤
として用いる以外は実施例1と同様、サンプル2を作製
した。このサンプルを実施例1と同様サンプル瓶に入
れ、水を添加した。800〜950nmの波長領域に分
光分布を有する出力1500Wのハロゲンランプを5分
間照射した。陽イオン染料の青色が消色すると共に硬化
反応が起こり、組成物は完全硬化した。
【0043】(実施例3)サンプル2の組成物にアルミ
ペースト(昭和アルミパウダー社製 商品名 561P
S、粒径44μ以下、加熱残分65.9%)5gを加え
る以外は実施例2と同様にサンプル3を作成し、実施例
2と同様ハロゲンランプを照射した。組成物は完全硬化
していた。
【0044】(実施例4)アルミペーストに変えてチタ
ンホワイト(石原産業社製 商品名CR90)30gを
用いる以外はサンプル3と同様にサンプル4を作成し、
実施例2と同様ハロゲンランプを照射した。組成物は完
全硬化した。
【0045】(実施例5)UA−306Hに変えて、エ
ポキシアクリレート樹脂(昭和高分子社製 リポキシS
P−4010)を用いる以外はサンプル2と同様にサン
プル5を作成し、実施例2と同様ハロゲンランプを照射
した。組成物は完全硬化した。
【0046】(実施例6)陽イオン染料として、表1に
おける陰イオンがトシレートアニオンである番号3の染
料を用いる以外は実施例2と同様にサンプル6を合成
し、実施例2と同様ハロゲンランプを照射した。組成物
は完全硬化した。
【0047】(実施例7)陽イオン染料として、表2に
おける番号8の染料(陰イオンはテトラフェニルホウ素
アニオン)を用いる以外は実施例2と同様にサンプル7
を合成した。可視光領域(400〜700nm)に分光
分布を有する出力1500Wのハロゲンランプを5分間
照射した。組成物は完全硬化していた。
【0048】(実施例8)ホウ素系触媒として、エチル
ピリジニウムn−ブチルトリフェニルホウ素を用いる以
外は実施例2と同様にサンプル8を合成し、ハロゲンラ
ンプを照射した。組成物は完全硬化した。
【0049】(実施例9)水に変えてヘキサン0.3m
lを光照射前に添加する以外は実施例2と全く同様にサ
ンプル9を作成し、ハロゲンランプを照射した。組成物
は完全硬化していた。
【0050】(比較例1)光照射前に組成物と混和しな
い液体を加えない以外は実施例2と全く同様に比較サン
プル1を作成し、ハロゲンランプを照射した。組成物内
部は硬化したものの、組成物表面はタックが残り、指で
触れると未硬化組成物が指についた。
【0051】(実施例10)実施例2の組成物(サンプ
ル2)を2.5×7cm大のアルミ板に約100μmの
厚さで塗布した。こうして得られた試験片を水浴中にゆ
っくり浸し、実施例2と同様5分間ハロゲンランプを照
射した。塗膜は完全硬化していた。
【0052】(比較例2)実施例10と全く同様にして
作成した試験片を、窒素を導入することによって酸素濃
度を3%に制御したボックス中に入れ、実施例10と同
様ハロゲンランプを照射した。塗膜の表面は硬化不十分
であり、指で触れるとタックが残った。
【0053】(実施例11)実施例2の組成物を厚さ1
0mmのテフロン製鋳型に9mmの厚さに注入し、その
上に水を約0.3mmの厚さで添加した。実施例10と
同様ハロゲンランプを10分間照射した。その後鋳型を
はずし、硬化物を取りだした。硬化物は陽イオン染料の
色が完全に消色するとともに完全硬化していた。
【0054】実施例1〜9に示すように、光硬化性組成
物の上に組成物が空気と接触しないように組成物と混和
しない液体を介在させることで、組成物を光照射で完全
硬化させることができる。比較例1に示すように、本発
明の液体が存在しないと組成物表面が硬化不十分とな
る。また実施例10に示すように組成物を塗布した基材
全体を組成物と混和しない液体中に浸してもよい。比較
例2に示した酸素濃度を3%に低減した雰囲気でも硬化
不十分な組成物も、完全に硬化させることができる。更
に実施例11のような厚みの大きい組成物においても本
発明の硬化方法を適用することができる。
【0055】
【発明の効果】本発明により、従来空気中で光照射によ
って完全硬化が困難であった光硬化性組成物を、窒素な
どの不活性気体あるいはワックス、光遮断性フィルム等
を用いることなく簡便かつ安全な方法で、空気中で完全
硬化が可能な光硬化性組成物を光硬化する方法が提供さ
れた。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成物の硬化を示す図。
【図2】組成物の他の硬化を示す図。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09D 4/00 PEN C09D 4/00 PEN 5/00 PNV 5/00 PNV

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合性不飽和化合物、光重合開始剤を必
    須成分とする光硬化性組成物を、組成物と混和しない液
    体を組成物と空気層の間に介在させて光照射することを
    特徴とする光硬化性組成物の硬化方法。
  2. 【請求項2】 光重合開始剤が400nm以上の可視光
    又は赤外光感光性の開始剤であり、400nm以上の波
    長領域に分光分布を有する光を照射することを特徴とす
    る請求項1の硬化方法。
  3. 【請求項3】 光重合開始剤が一般式(1)で表わされ
    る400nm以上の可視光又は赤外光領域に吸収をもつ
    陽イオン染料、一般式(2)で表わされるホウ素系触媒
    である請求項2の光硬化方法。 一般式(1); D+ ・ A- (式中、D+ は可視光あるいは赤外光領域に吸収をもつ
    陽イオンであり、A-は、各種陰イオンを示す) 一般式(2); 【化1】 (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立して
    アルキル基、アリール基、アリル基,アラルキル基、ア
    ルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環基、置換
    アルキル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラ
    ルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、ハロ
    ゲン原子または置換シリル基を示し、Z+ は各種陽イオ
    ンを示す)
  4. 【請求項4】 光硬化性組成物が重合性不飽和化合物、
    光重合開始剤及び顔料または着色染料を含有することを
    特徴とする請求項1、2又は3の硬化方法。
  5. 【請求項5】 光硬化時に介在させる液体が水である、
    請求項1ないし4の硬化方法。
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