JPH08100011A - 光重合開始剤 - Google Patents

光重合開始剤

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JPH08100011A
JPH08100011A JP23365194A JP23365194A JPH08100011A JP H08100011 A JPH08100011 A JP H08100011A JP 23365194 A JP23365194 A JP 23365194A JP 23365194 A JP23365194 A JP 23365194A JP H08100011 A JPH08100011 A JP H08100011A
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group
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substituted
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boron
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JP23365194A
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English (en)
Inventor
Shuichi Sugita
修一 杉田
Hirotoshi Kamata
博稔 鎌田
Satoru Miyazaki
哲 宮崎
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Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 特殊なホウ素系触媒を用いて効率よく光重合
を行いうる重合開始剤。 【構成】 可視光から近赤外光までの任意の波長領域に
吸収を持つ陽イオン色素とシリル基を有するホウ素系触
媒を必須成分とする光重合開始剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、改良された重合速度を
有する光重合開始剤に関する。更に詳しくは特殊なホウ
素系触媒を用いることにより効率よく光重合を行いうる
光重合開始剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来光重合は塗膜の硬化、乾燥や印刷、
樹脂凸刷、プリント基盤作成用、レジストまたはフォト
マスク、白黒またはカラーの転写発色用シートもしくは
発色シート作成などの多方面の用途にわたり使用され、
特に最近では地球環境問題、省エネルギー、労務コスト
の上昇に対応する省力化等の観点から、光重合の特徴で
ある常温でも重合可能であること、速乾性、無溶剤化の
可能性等が注目され、開発が行われている。例えば紫外
光による硬化は、200〜400nmの紫外光を照射す
ることによつて重合性モノマーが急速硬化するものであ
り、各種工業分野において実用化されている。また近
年、紫外光の透過性が低い為に使用の制限を受ける厚膜
の塗装、隠ぺい率が高い顔料を含有した着色塗膜等に対
しても光重合が可能になるように、紫外光よりも波長の
長い可視光、近赤外光などを用いた光重合開始剤の開発
が進められている(例えば特開平5−194619
号)。
【0003】それらの光重合技術の中で、光吸収性色素
と、4個の置換基によって置換された4級ホウ素塩を組
み合わせた光重合開始剤が注目されている(例えば特開
昭62−143044号、特開平2−4804号)。こ
の技術は、光によって励起された色素に電子移動したホ
ウ素化合物から発生したラジカルを重合開始に利用する
システムであり、従来の光重合開始システムと比べて電
子移動及びラジカル発生効率の点で優れている上、任意
の光吸収性化合物を利用可能であるという特徴がある。
しかしながら光に対する感度、重合速度あるいは酸素存
在下での重合性等の点において必ずしも実用的に十分で
はないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来のホウ素
系触媒を利用した光重合開始剤系において、改良された
光感度及び重合速度を有する重合開始剤を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記問題点
を解決すべく光エネルギーを吸収する色素と併用するホ
ウ素系化合物の構造について検討を重ねた結果、ホウ素
原子に結合した置換基の少なくとも1つがシリル基ある
いは置換シリル基の場合に、一般の陽イオン染料と組み
合わせて従来の開始剤系よりもはるかに優れた重合開始
能が発現することを見い出し、本発明を完成するに至っ
た。すなわち本発明によると、任意の光波長領域に吸収
をもつ陽イオン色素及び一般式(2)で表わされるホウ
素系触媒、 一般式(2);
【0006】
【化3】
【0007】(式中、Z+ はピリジニウム陽イオン、キ
ノリニウム陽イオン、ジアゾニウム陽イオン、モルホリ
ニウム陽イオン、テトラゾリウム陽イオン、アクリジニ
ウム陽イオン、ホスホニウム陽イオン、スルホニウムあ
るいはオキソスルホニウム陽イオン、硫黄陽イオン、酸
素陽イオン、炭素陽イオン、ハロゲニウム陽イオン、砒
素、コバルト、パラジウム、クロム、チタン、錫、また
はアンチモンの各種金属化合物の陽イオン、または金属
陽イオンを示し、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ
独立してアルキル基、アリール基、アリル基,アラルキ
ル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環
基、ハロゲン原子、置換アルキル基、置換アリール基、
置換アリル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、
置換アルキニル基または置換シリル基を示すが、R1
2 、R3 及びR4 のうち少なくとも1つの置換基がシ
リル基あるいは置換シリル基である。)を組み合わせて
光重合開始剤となし、光照射によって重合性不飽和化合
物を実用的な速度で重合させることができる光重合開始
剤が得られる。
【0008】本発明における重合開始剤は光重合性材
料、例えば印刷インキ、レジスト、接着剤、家具、電子
材料、建材などの塗装、木工、金属、プラスチック類等
の塗装、自動車の車体、内装、バンパー等の塗装、無機
材料のコーティング等に用いることが可能である。
【0009】本発明を構成する陽イオン色素と一般式
(2)のホウ素系触媒を併用することで光によって陽イ
オン色素の分解が起こり、陽イオン色素の色が消色する
とともにラジカルが発生し、その際重合性不飽和化合物
が共存すると重合が開始される。陽イオン色素の消色反
応は不可逆反応であり、陽イオン色素の色が重合物の色
相を損なうことはない点にも大きな特徴がある。この光
重合開始剤系の特徴を生かしつつ重合速度を改善する方
策として従来用いられてきたホウ素系触媒に変えて本発
明のシリル置換基を有するホウ素系化合物を使用すると
重合速度が大幅に改善され、実用的な重合時間で光重合
反応が完結する。また、従来のホウ素系触媒では困難で
あった、酸素存在下での重合に関しても改善された重合
性が得られる。
【0010】従来用いられていたホウ素系化合物の場合
置換基の全てがアルキル基、アリール基等の炭素系置換
基であり、したがって光反応によって発生するラジカル
はアルキルラジカル(例えばブチルラジカル)などであ
って、その安定性、重合開始能などの面で、実用的な重
合開始速度を得るには問題があった。しかし本発明のシ
リル置換基を有するケイ素系触媒を用いると、光反応に
よってケイ素原子上に遊離基を持つシリルラジカルを発
生させることが出来、従来のアルキルラジカルと比べて
安定性等の点において優れ、重合開始効率が向上するも
のと推定される。
【0011】本発明のシリル置換基を有するホウ素化合
物はD. Seyfertらが初めて合成したとされているが(Jo
urnal of Organic Chemistry 1961年 3034頁
参照)、近赤外光重合に応用した例はほとんど知られて
いない。わずかに特開平4−261406号公報にカウ
ンターアニオンがシリルホウ素である特殊な近赤外光吸
収色素とシリルホウ素のアンモニウム錯体との組み合わ
せが、また特開平5−59110号公報に可視光吸収色
素とシリルホウ素のアンモニウム錯体との組み合わせが
本文中に記載されているが重合性の向上などに関する検
討はなされておらず、したがって詳細な説明はなかっ
た。また上記公開特許は組成物表面をポリエステル箔で
覆った、事実上酸素の存在しない条件での重合反応に限
定されており、酸素存在下での重合反応については言及
されていない。さらにいずれの場合もシリルホウ素のカ
ウンターイオンがアンモニウムカチオンに限定されてお
り、シリルホウ素と一般のカチオン性化合物との錯体は
全く知られていなかった。
【0012】本発明におけるホウ素系触媒は一般式
(2)で表わされるが、ホウ素原子に結合している置換
基R1 、R2 、R3 、R4 のうち少なくとも1つが一般
式(5)で表されるシリル基あるいは置換シリル基であ
る。 一般式(5);−SiR567 (式中、R5 、R6 、R7 はそれぞれ独立に水素原子、
アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、ア
ルケニル基、アルキニル基、複素環基、シリル基、置換
アルキル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラ
ルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換
複素環基または置換シリル基である。)
【0013】本発明のホウ素系触媒におけるホウ素アニ
オンの具体的な例としては、トリフェニルシリルトリフ
ェニルホウ素イオン、ジフェニルメチルシリルトリフェ
ニルホウ素イオン、ジメチルフェニルシリルトリフェニ
ルホウ素イオン、トリトルイルシリルトリフェニルホウ
素イオン、トリフェニルシリルトリアニシルホウ素イオ
ン、ジ(トリフェニルシリル)ジフェニルホウ素イオ
ン、トリフェニルシリルトリブチルホウ素イオン、トリ
フェニルシリルトリメチルホウ素イオン、トリn−ブチ
ル(ジメチルフェニルシリル)ホウ素イオンなどがあげ
られる。
【0014】特に、発生するシリルラジカルの安定性、
重合開始能などを勘案した場合、シリル基の置換基の少
なくとも1つがフェニル基、トルイル基、ナフチル基等
のアリール基あるいは置換アリール基であることが好ま
しい。更に製造の容易さの点等をも考慮すると、トリフ
ェニルシリル基、トリトルイルシリル基、ジフェニルメ
チルシリル基等が置換シリル基として特に好ましい。ま
たホウ素原子の置換基は化合物の安定性、製造の容易さ
等を勘案すると、置換基の1つがシリル基に置換された
化合物が好ましく、更に好ましくは3個の(置換)アリ
ール基と1個のシリル基に置換されたトリアリールシリ
ルホウ素化合物である。
【0015】また式中に記載のシリルホウ素アニオンの
カウンターイオン(Z+ )は一般式(6) 一般式(6);
【0016】
【化4】
【0017】(式中、R8 、R9 、R10、及びR11はそ
れぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ア
リル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、
複素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリ
ル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基または置換
アルキニル基を示す)
【0018】で表わされる4級ホスホニウム陽イオン、
4級ピリジニウム陽イオン、4級キノリニウム陽イオ
ン、ジアゾニウム陽イオン、モルホリニウム陽イオン、
テトラゾリウム陽イオン、アクリジニウム陽イオン、一
般式(7)で表されるスルホニウム陽イオンあるいはオ
キソスルホニウム陽イオン等、各種硫黄化合物の陽イオ
ン、フラビリウム、ピラニウム等の酸素陽イオン、トロ
ピリウム、シクロプロピリウム等の炭素陽イオン、ヨー
ドニウム等のハロゲニウム陽イオン、砒素、コバルト、
パラジウム、クロム、チタン、錫、またはアンチモンの
各種金属化合物の陽イオン、ナトリウム、カリウム、リ
チウム、マグネシウム、カルシウム等の金属陽イオン等
である。 一般式(7);
【0019】
【化5】
【0020】(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ
独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル
基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素
環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル
基、置換アラルキル基、置換アルケニル基または置換ア
ルキニル基を示し、R15は酸素原子あるいは孤立電子対
を表す)
【0021】これらの陽イオンの中で、好ましいものは
ホスホニウム陽イオン、ピリジニウム陽イオン、スルホ
ニウム陽イオン、オキソスルホニウム陽イオンである。
使用するモノマー、オリゴマー等の重合性不飽和化合
物、溶剤、添加剤等に応じて各種カウンターイオンを選
択し、必要な溶解度、安定性、重合開始能等の諸物性を
顕現することが出来る。
【0022】本発明の一般式(1)で示される陽イオン
色素は可視光から近赤外光までの任意の光波長領域に吸
収を持つ色素であればよく、具体的には400nmから
2000nmの範囲の任意の波長領域に吸収があれば良
い。その中でも特に光の透過性、設備の安全性、コスト
等を勘案すると近赤外光領域に吸収を持つ陽イオン色素
が特に好ましい。ここでいう近赤外光に吸収をもつ陽イ
オンとは、740nm以上の波長領域に吸収を持つ陽イ
オンであり、好ましくは780nm以上の波長領域に吸
収を持つ化合物である。近赤外光は従来一般に用いられ
ている紫外光に比べ波長が長く光の透過性に優れている
ため、従来の紫外光では困難であった光隠ぺい性の高い
各種顔料等添加系の組成物、厚みのある組成物等に対し
ても良好な光重合を行うことが出来る。
【0023】本発明の陽イオン(D+ )は400nm以
上の波長領域に吸収を有するものであれば特に制限はな
いが、好ましいものとしては例えばメチン、ポリメチ
ン、インドリン、シアニン、キサンテン、オキサジン、
チアジン、ジアリールメタン、トリアリールメタン、ピ
リリウム系陽イオン色素の陽イオンなどがあげられる。
かかる陽イオン色素のうち近赤外光領域に吸収を持つ化
合物としては、例えば表1に示す陽イオンが挙げられ
る。また可視光領域に吸収を持つ陽イオン色素の代表例
としては、例えば表2に示すような陽イオンが挙げられ
る。更に詳細には特開平5−59110号に記載されて
いる陽イオン色素等が挙げられる。
【0024】
【表1】
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】カウンターアニオンであるA- は任意の陰
イオンであるが、下記一般式(8)に示す4配位ホウ素
アニオンが特に好ましい。 一般式(8);
【0028】
【化6】 (式中、R16、R17、R18及びR19はそれぞれ独立して
アルキル基、アリール基、アリル基,アラルキル基、ア
ルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環基、ハロ
ゲン原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリ
ル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アル
キニル基または置換シリル基を示す)
【0029】具体例としては、n−ブチルトリフェニル
ホウ素イオン、n−オクチルトリフェニルホウ素イオ
ン、トリフェニルシリルトリフェニルホウ素イオン、n
−ブチルトリアニシルホウ素イオン、ジn−ドデシルジ
フェニルホウ素イオン、テトラフェニルホウ素イオン、
トリフェニルナフチルホウ素イオン、テトラブチルホウ
素イオン、トリn−ブチル(ジメチルフェニルシリル)
ホウ素イオンなどがあげられ、更に詳細には本発明者ら
が先に出願した(特開平6−75374号)特許明細書
に記載された陰イオン等が挙げられる。
【0030】本発明の光重合開始剤は一般に重合性不飽
和化合物と組み合わせて光重合性組成物として用いられ
る。その際用いられる重合性不飽和化合物は重合性オリ
ゴマー、重合性モノマーが挙げられ、重合性オリゴマー
としてはウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアク
リレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアク
リレート樹脂、シリコンアクリレート樹脂、メラミンア
クリレート樹脂、特開平4−28722号公報に開示さ
れている(メタ)アクリル官能性ポリオルガノシルセス
キオキサン等が挙げられる。これらのオリゴマーは各種
製造業者によって多種の化合物が生産されており容易に
入手可能である。上記重合性オリゴマーは重合生成物の
物性を決定する主成分であり、各種用途に応じて要求さ
れる硬度、強度、耐久性、付着性等の物性に応じて選択
され、任意量配合される。
【0031】また重合性モノマー類としては(メタ)ア
クリル酸と1価アルコールとのエステル化物、スチレ
ン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどのビニルベン
ゼン類、ビニルイソブチルエーテル、2−エチルヘキシ
ルビニルエーテル等のビニルエーテル類、(メタ)アク
リロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス
アクリルアミド等の(メタ)アクリル化合物類、酢酸ビ
ニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニル
エステル類、アリルアルコール、酢酸アリル、フタル酸
ジアリル類等のアリル基を含有するモノマー等が挙げら
れる。さらに該モノマーとして、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;ブチルイ
ソシアネート、フェニルイソシアネートなどのポリイソ
シアネートと上記水酸基含有モノマーとの付加物;リン
酸と上記水酸基含有モノマーとの付加物;N−ビニルピ
ロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセト
アミド、ビニルピリジン類などの含窒素不飽和モノマー
なども使用できる。
【0032】さらに該モノマーとして、ジエチレングリ
コールジアクリレート、1,6ーヘキサンジオールジメ
タクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレー
ト、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタ
エリスリトールテトラアクリレートなどのジ−、トリ−
またはテトラビニル化合物;前記の多価アルコールとエ
チレンオキシドとの付加物に(メタ)アクリル酸を反応
せしめた生成物;前記の多価アルコールとプロピレンオ
キシドとの付加物に(メタ)アクリル酸を反応せしめた
生成物;前記の多価アルコールとεー カプロラクトンと
の付加物に(メタ)アクリル酸を反応せしめた生成物;
含リン重合性不飽和モノマー等が包含される。更に詳細
な具体例は先に出願した(特開平6−75374号)特
許明細書に記載されている。
【0033】本発明の重合開始剤及び重合性不飽和化合
物等を含有する組成物の重合反応は各種ランプなどの光
発生装置による光照射により達成される。例えばハロゲ
ンランプ、キセノンランプ、太陽光等である。光重合反
応の際には酸素による重合阻害を低減するために低酸素
濃度下で光照射することが好ましい。例えば窒素、アル
ゴン、二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気、あるいは空気
中上記不活性ガスを硬化物表面にブローすることにより
酸素濃度を低減し、重合を促進させることが望ましい。
前に述べたように、本発明のホウ素系触媒を含む重合開
始剤は従来のホウ素系触媒をふくむ開始剤と比べて酸素
存在下での重合開始能に優れており、従来よりも高濃度
の酸素存在下でも重合反応を行うことができる。
【0034】また本発明の近赤外光重合開始剤を使用す
る際、従来知られている酸素除去剤、各種重合促進剤な
どを併用することが出来る。酸素除去剤としてはフォス
フィン、フォスファイト、フォスフォネート、各種還元
剤、一重項酸素クエンチャー等、重合促進剤としてはN
−フェニルグリシン、ペンタメチルアニリン、2−メル
カプトベンゾチアゾール等の連鎖移動剤として知られて
いる化合物、ナフトキノンジアジド系化合物などの光酸
発生剤、トリアジン化合物、芳香族オニウム塩、ビスイ
ミダゾール化合物等の各種電子受容性物質等が挙げられ
る。
【0035】本発明における一般式(1)で表される陽
イオン色素と一般式(2)で表されるホウ素系触媒は任
意の比率で使用可能であり、一般に10:1〜1:10
(モル比)の割合で使用されるが、ホウ素系触媒を陽イ
オン色素よりも大量に用いる方が好ましい。すなわち、
1:1〜1:10(モル比)の範囲が特に好ましい。本
発明の陽イオン染料及びホウ素系触媒は必要に応じて1
種、あるいは2種以上混合して用いることもできる。す
なわち吸収波長の異なる2種類以上の陽イオン色素を併
用し、広範囲の照射光を活用することもできるし、また
ホウ素系触媒も単独使用に限定されない。コスト、溶解
度、重合活性等の点を勘案して従来のシリル基を含まな
い、従来用いられているホウ素系触媒と併用してもよ
い。
【0036】本発明の重合開始剤は、陽イオン色素、ホ
ウ素系触媒を、各々重合性組成物全体の0.001重量
%以上用いることにより本発明の目的を達成することが
出来る。それ以下だと重合が充分に行われないおそれが
ある。好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。
大量に用いすぎることは、経済的観点上好ましくない。
更に、本発明の開始剤を含む重合性組成物には任意の添
加物、充填剤を添加することが出来る。ここでいう添加
剤としては、例えば一般に塗料用添加剤として用いられ
ている増粘剤、レベリング剤、チキソトロピック剤、分
散剤等が挙げられ、また充填剤としては、有機物、無機
物、或いはそれらの複合物、混合物が挙げられる。また
先にも述べたように、本発明の重合開始剤は特に従来用
いられてきた紫外光に較べて長波長領域に吸収を有する
陽イオン染料を用いるので、光透過性の低いカーボンブ
ラック等の黒色顔料、アルミニウム、チタン等のメタリ
ック顔料等を含有していても光重合を生起させることが
可能であり、それらの各種顔料などを添加することが可
能である。
【0037】本発明の光重合開始剤は先にも述べたよう
に、塗料、インク、接着剤等の光硬化性材料の重合開始
剤として好適である。これらの光硬化性材料は無溶剤型
材料として利用可能であり、地球環境改善に寄与するこ
とが期待される。従来の反応硬化性組成物は硬化前のポ
リマー成分を溶解させるために大量の溶剤を必要として
いたが、光硬化性材料は希釈剤として反応性化合物を用
い得るので本質的に無溶剤化が可能であり、無溶剤化あ
るいは溶剤量の大幅な低減が可能となる。本発明のシリ
ルホウ素系触媒は重合開始能が高い上各種のカウンター
カチオンを適宜選択することが可能であるので、溶解度
の制御による溶剤の選択枝の拡大、溶剤量の一層の低減
等が期待される。
【0038】勿論従来の溶剤で希釈した形で用いても何
等差し支えはないが、地球環境面からの資源節約、環境
破壊防止等の観点及びコスト面等から使用溶剤量は可能
な限り少量であることが望ましい。その際用い得る溶剤
としては、陽イオン色素及びホウ素系触媒の化学的安定
性を損なわない化合物であれば、従来塗料用に用いられ
ている一般の溶剤など、例えばトルエン、キシレン等の
芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン等の脂
肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン等のケトン類、ジエチレングリコール
ジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエ
ーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸
アミル等のエステル類、メチルセルソルブ、エチルセル
ソルブ等のエチレングリコールのモノエーテル類などが
使用可能である。これらの溶剤1種または2種以上を混
合して使用することが出来る。また、溶媒、あるいは分
散媒として水を使用することも可能である。
【0039】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明する。 (実施例1)ペンタエリスリトールトリアクリレート−
ヘキサメチレンジイソシアネート−ウレタンプレポリマ
ー70g、ノナエチレングリコールジアクリレート30
g、アセトン30gを十分に混合した後、近赤外光吸収
性陽イオン色素(表1番号3、陰イオンはn−ブチルト
リフェニルホウ素アニオン)0.1g、ホウ素系触媒
(テトラブチルホスホニウムトリフェニルシリルトリフ
ェニルホウ素)0.3gを溶解し、サンプル1とした。
【0040】(実施例2)ホウ素系触媒をテトラメチル
ホスホニウムトリフェニルシリルトリフェニルホウ素に
変える以外は実施例1と同様にサンプル2を作成した。
【0041】(実施例3)ホウ素系触媒をトリメチルス
ルホニウムトリフェニルシリルトリフェニルホウ素に変
える以外は実施例1と同様にサンプル3を作成した。
【0042】(実施例4)ホウ素系触媒をテトラブチル
ホスホニウム(ジフェニルメチルシリル)トリフェニル
ホウ素に変える以外は実施例1と同様にサンプル4を作
成した。
【0043】(比較例1)ホウ素系触媒を、シリル置換
基を含まないテトラブチルアンモニウムn−ブチルトリ
フェニルホウ素に変える以外は実施例1と同様に比較サ
ンプル1を作成した。
【0044】(比較例2)ホウ素系触媒のカウンターカ
チオンを、テトラブチルアンモニウムカチオンに変える
以外は実施例1と同様に比較サンプル2を作成した。
【0045】(実施例5)陽イオン色素を表1番号3か
ら番号1(陰イオンはn−ブチルトリフェニルホウ素ア
ニオン)に変える以外は実施例1と全く同様にサンプル
5を作成した。
【0046】(比較例3)ホウ素系触媒をテトラメチル
アンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素に変える以
外は実施例5と全く同様に比較サンプル3を作成した。
【0047】(実施例6)陽イオン色素を表2番号2の
可視光吸収色素(陰イオンはn−ブチルトリフェニルホ
ウ素アニオン)に変える以外は実施例1と全く同様にサ
ンプル6を作成した。
【0048】(比較例4)ホウ素系触媒をテトラブチル
アンモニウムn−オクチルトリフェニルホウ素に変える
以外は実施例6と全く同様に比較サンプル4を作成し
た。
【0049】(実施例7)陽イオン色素を表2番号3の
可視光吸収色素(陰イオンはn−ブチルトリフェニルホ
ウ素アニオン)に変える以外は実施例1と全く同様にサ
ンプル7を作成した。
【0050】(比較例5)ホウ素系触媒をテトラブチル
アンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素に変える以
外は実施例7と全く同様に比較サンプル5を作成した。
【0051】[サンプルの重合試験及び重合性評価]作
成したサンプルをアプリケーターにてアルミ基板上に1
00μmの厚さに塗布し、窒素雰囲気下、波長400〜
1200nmの範囲に分光分布を有する出力1500W
のハロゲンランプを実施例1〜5、実施例8、比較例1
〜3は、800nm以下の波長カットフィルターを通し
て、また実施例6、7、比較例4、5は800nm以上
の波長カットフィルターを通して3分間照射した。
【0052】得られた塗膜を剥し、FT−IRにて残留
二重結合を定量した。結果を表3に示す。残留二重結合
が少ないほど、重合が進行していることを示す。一般に
光硬化反応においては反応が終了した時点でも二重結合
が20〜40%残留するとされており、本発明の光重合
開始剤を用いると3分間の光照射で光反応がほぼ完了し
ていることがわかる。一方、従来のホウ素系触媒を用い
た場合、同時間の光照射では残留二重結合が50%以上
残り、光反応が完了していない。
【0053】
【表3】
【0054】(実施例8)酸素存在下での重合反応 上記重合試験と同様に、実施例1の組成物を塗布した基
板を酸素濃度0.5%の雰囲気で上記ハロゲンランプを
10分間照射した。塗膜表面は十分に硬化しており、表
面タックは全く見られなかった。
【0055】(比較例6)実施例8と同様に、比較例1
の組成物を塗布した基板を酸素濃度0.5%の雰囲気で
上記ハロゲンランプを10分間照射した。塗膜表面は全
く硬化していない様子であり、指で触れると組成物が指
に付着した。
【0056】
【発明の効果】本発明により、重合速度及び酸素存在下
での重合性の改良された、かつ溶解度、安定性等の各種
物性及び製造方法などの適切な選択、制御が可能な光重
合開始剤が提供された。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1)で表わされる陽イオン色素
    と一般式(2)で表わされるホウ素系触媒を必須成分と
    する光重合開始剤。 一般式(1);D+ ・A- (式中、D+ は可視光から近赤外光までの任意の波長領
    域に吸収を持つ陽イオンであり、A- は、各種陰イオン
    を示す) 一般式(2); 【化1】 (式中、Z+ はピリジニウム陽イオン、キノリニウム陽
    イオン、ジアゾニウム陽イオン、モルホリニウム陽イオ
    ン、テトラゾリウム陽イオン、アクリジニウム陽イオ
    ン、ホスホニウム陽イオン、スルホニウムあるいはオキ
    ソスルホニウム陽イオン、硫黄陽イオン、酸素陽イオ
    ン、炭素陽イオン、ハロゲニウム陽イオン、砒素、コバ
    ルト、パラジウム、クロム、チタン、錫、またはアンチ
    モンの各種金属化合物の陽イオン、または金属陽イオン
    を示し、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立して
    アルキル基、アリール基、アリル基,アラルキル基、ア
    ルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環基、ハロ
    ゲン原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリ
    ル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アル
    キニル基または置換シリル基を示すが、R1 、R2 、R
    3 及びR4 のうち少なくとも1つの置換基がシリル基あ
    るいは置換シリル基である。)
  2. 【請求項2】 ホウ素系触媒が下記一般式(3)で表さ
    れる請求項1の光重合開始剤。 一般式(3); 【化2】 (式中、Z+ 、R1 、R2 、R3 は一般式(2)と同
    じ、R5 、R6 、R7 はそれぞれ独立に水素原子、アル
    キル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、アルケ
    ニル基、アルキニル基、複素環基、シリル基、置換アル
    キル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラルキ
    ル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換複素
    環基または置換シリル基を示す。)
  3. 【請求項3】 ホウ素系触媒が下記一般式(4)で表さ
    れる請求項1の光重合開始剤。 一般式(4);Z+ ・Ar3 −B- − SiR56
    7 (式中、Z+ 、R5 、R6 、R7 は一般式(3)と同
    じ、Arはアリル基または置換アリール基を示す。)
  4. 【請求項4】 陽イオン色素が近赤外領域に吸収領域を
    有する陽イオン色素である、請求項1、2及び3の光重
    合開始剤。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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