JPH08216313A - 高誘電率積層板 - Google Patents

高誘電率積層板

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JPH08216313A
JPH08216313A JP7023607A JP2360795A JPH08216313A JP H08216313 A JPH08216313 A JP H08216313A JP 7023607 A JP7023607 A JP 7023607A JP 2360795 A JP2360795 A JP 2360795A JP H08216313 A JPH08216313 A JP H08216313A
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Harumi Negishi
春已 根岸
Takeshi Sugimura
猛 杉村
Mare Takano
希 高野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高誘電率、低誘電正接で、切削性加工性及び
寸法安定性の良好な積層板。 【構成】 (a)エポキシ樹脂、(b)フェノール類付
加共役ジエン系重合体、及び(c)硬化促進剤を配合し
てなる熱硬化性樹脂100重量部に対し誘電率が10以
上の無機粉末を80〜250重量部添加し、ガラス布も
しくはガラス不織布に含浸乾燥して得たプリプレグを積
層成形してなる事を特徴とする高誘電率積層板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は誘電率の高い特徴を有す
る積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年電子技術の多様な発展にともない、
電子装置に用いる絶縁材料にも多様な性能が要求される
ようになってきている。特にプリント配線板は極めて広
範囲の用途に使用され基板に対する要求特性も益々多岐
にわたっている。このような状況のもと誘電特性に関す
る要求も数多い。これまでプリント配線板における高速
伝搬、高特性インピーダンス、配線板の薄型化、クロス
トークの減少などを目的として低誘電率配線板の開発を
行ってきたが、一方高周波、マイクロウェ−ブ回路その
他配線板における遅延回路の形成、低インピーダンス回
路における配線板の特性インピーダンスの整合、配線パ
ターンの細密化、基板自身にコンデンサー効果を持たせ
た素子の複合回路化等の要求から高誘電率積層板が必要
とされている。そこで、従来の積層板やプリント配線板
用銅張積層板用のフェノール樹脂、エポキシ樹脂等や低
誘電率樹脂のフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂
等に高誘電率の無機粉末を添加し、ガラス布もしくはガ
ラス不織布に含浸乾燥して得たプリプレグを積層成形し
てなる高誘電率積層板が提案されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の積層
板やプリント配線板用銅張積層板用のフェノール樹脂、
エポキシ樹脂等の一般の熱硬化性樹脂に高誘電率の充填
剤を添加しただけでは誘電正接が低くはならない。ま
た、低誘電率樹脂のフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテ
ル樹脂等の樹脂に高誘電率の充填剤を添加した場合は誘
電正接は低くはなるが、高誘電率を得るために充填剤の
添加量が増加してしまい、積層板のドリル加工性、切削
加工性の低下及び寸法変化が大きくなる等の問題が生じ
る。そこで、本発明はこれらの欠点を改良した高誘電率
・低誘電正接の積層板を提案するものである。
【0004】
【課題を解決しようとする手段】本発明は従来になり高
誘電率の積層板を得んとして研究した結果、積層板中に
誘電率の高い無機粉末を分散含有せしめることにより誘
電率の高い積層板が得られることの知見を利用し、更に
この知見に基づき種々研究を進めて本発明を完成するに
至ったものである。その目的とするところは誘電率が高
く、誘電正接が低い絶縁層を有し通常のガラス布エポキ
シ銅張積層板等と全く同様な工程でプリント配線板へ加
工が可能な積層板を提供することにある。
【0005】本発明はエポキシ樹脂、フェノール類付加
共役ジエン系重合体、及び、硬化促進剤を配合してなる
熱硬化性樹脂100重量部に対し誘電率が10以上の無
機粉末を80〜250重量部添加し、ガラス布もしくは
ガラス不織布に含浸乾燥して得たプリプレグを積層成形
してなる事を特徴とする高誘電率積層板に関するもので
ある。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、その
種類は特に限定されない。
【0006】例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹
脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノール
S型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、フェ
ノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラッ
ク型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エ
ポキシ樹脂、ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ
樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、
グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン
型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシ
アヌレート型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラ
ック型エポキシ樹脂、その他二官能フェノール類のジグ
リシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシ
ジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添
加物などがある。
【0007】これらは、何種類かを併用しても良い。2
5℃における粘度が100Pa・s以下のエポキシ樹脂
としては、分子内に2個以上のエポキシ基を持つ化合物
であればその種類をとわないが、反応性や基材への含浸
性が良好なビスフェノールA型エポキシ樹脂が好まし
い。25℃における粘度が100Pa・s以下のエポキ
シ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を持つ
化合物であればその種類をとわないが、反応性や基材へ
の含浸性が良好なビスフェノールA型エポキシ樹脂が好
ましい。
【0007】25℃における粘度が100Pa・s以下
のエポキシ樹脂の配合量としては、他のエポキシ樹脂1
00重量部に対して0.1重量部以上が好ましい。0.
1重量部未満ではワニスの粘度が低下せず、基材への含
浸性が向上しない。フェノール類付加共役ジエン系重合
体としては、フェノール類の付加量は生成付加重合体1
00gに対し、フェノール性水酸基が0.1〜1.0m
ol量になるように調整するのが望ましく、特に0.2
5mol以下が好ましい。フェノール類の付加量がこの
範囲より大きいと誘電特性が低下し、この範囲より小さ
いと耐熱性が低下する。
【0008】ここで用いるフェノール類としては、フェ
ノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾ
ール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチル
フェノール、tert−ブチルフェノール、アミルフェ
ノール、ヘキシルフェノール等の単官能フェノール類や
ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ビスフェ
ノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等の二官能
フェノール類とその異性体及びハロゲン化物、ピロガロ
ール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログリシン、フェ
ノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノ
ールAノボラック等の多官能フェノール類等があり、こ
れらを単独又は2種類以上併用する。
【0009】また、このようなフェノール類付加共役ジ
エン系重合体としては限定はないが、誘電特性、耐熱性
の面からフェノール類付加ブタジエン共重合体が望まし
い。硬化促進剤としてはイミダゾール化合物、有機リン
化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が用い
られるが、第2級アミノ基をアクリロニトリル、イソシ
アネート、メラミン、アクリレート等でマスクしたイミ
ダゾール化合物を用いるとプリプレグの保存安定性がよ
く好ましい。
【0010】ここで用いられるイミダゾール化合物とし
ては、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾ
ール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミ
ダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2
−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミ
ダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−メチル−4−
メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−
ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリ
ン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチル
イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾー
ル、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダ
ゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル
−4−メチルイミダゾリン等があり、マスク化剤として
はアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、ト
ルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビスフ
ェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等があ
る。
【0011】これらの硬化促進剤は何種類かを併用して
も良く、配合量は好ましくは、エポキシ樹脂100重量
部に対して0.01〜5重量部である。0.01重量部
より少ないと効果は小さく、5重量部より多いとワニス
及びプリプレグの保存安定性が低下する。本発明の熱硬
化性樹脂は溶剤に溶解してワニスとし、基材に塗布、含
浸する。溶剤としては、アルコール系、エーテル系、ケ
トン系、アミド系、芳香族炭化水素系、エステル系、ニ
トリル系等がある。
【0012】また、本発明において用いられる無機粉末
は誘電率が10以上望ましくは30以上、誘電正接が
0.005以下のものであり、特に限定はないが、この
ようなものとしては例えば二酸化チタン系セラミック、
チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸鉛系セラミッ
ク、チタン酸ストロンチウム系セラミック、チタン酸カ
ルシウム系セラミック、チタン酸ビスマス系セラミッ
ク、チタン酸マグネシウム系セラミック、ジルコン酸鉛
系セラミックなどが挙げることができる。これらは、単
独または2種類以上を混合して用いてもよい。なお、前
記二酸化チタン系セラミックとは、組成的には、二酸化
チタンのみを含む系、または二酸化チタンに他の少量の
添加物を含む系で、主成分である二酸化チタンの結晶構
造が保持されているものである。
【0013】他の系のセラミックもこれと同様である。
二酸化チタンはTiO2で示される物質で種々の結晶構
造を有するものがあるが、誘電体セラミックとして使用
されるのは、その中のルチル構造のものである。無機粉
末の粒子径としては、約50μm以下のものを用いるこ
とができるが、好ましくは0.1〜20μm、さらに好
ましくは0.5〜7μmの範囲のものである。これは無
機粉末の粒子径が大きいと樹脂への均一分散、混合が困
難になりまた積層板の特性に不都合をもたらす。逆に小
さすぎると取扱が悪くなるなどのおそれがある。
【0014】無機粉末の樹脂への添加量としては、誘電
率を高める上では多いほど良いが通常は80〜250重
量部、好ましくは100〜200重量部である。これは
無機粉末の添加量が増加するに従い樹脂への均一分散、
混合が困難になりまた積層後の機械的強度の低下が見ら
れ逆に添加量が少ないと誘電率が充分に高くならないた
めである。次に積層板の作製方法について述べる。無機
粉末を80〜250重量部ワニス中に均一分散・混合
し、ガラス布もしくはガラス不織布に含浸乾燥させプリ
プレグを作製する。積層板はプリプレグを必要枚数重ね
合わせ積層成形することにより得られる。
【0015】
【作用】従来の高誘電率積層板は誘電正接が大きい樹脂
を用いるため積層板の誘電正接が大きくなり、信号の伝
送損失が大きくなってしまう。また誘電率が小さい樹脂
を用いた場合積層板の誘電率の目標を達成するためには
無機粉末の添加量が増加し、成形歪みが大きくなり、寸
法変化が大きくなったり、積層板の切削加工性等が低下
してしまっていた。そこで、本発明が提案したように樹
脂を限定することにより、無機粉末の添加量を抑え、成
形歪みを減少させた高誘電率・低誘電正接積層板が得ら
れた。
【0016】
【実施例】
実施例1 臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(臭素含有量5
0%、エポキシ当量400)100重量部とフェノール
類付加ポリブタジエン(ポリブタジエン100gに対す
るフェノール付加量0.25mol、水酸基当量41
0)88重量部とメチルエチルケトンで溶解し、硬化促
進剤としてイソシアネートマスクイミダゾールを0.5
重量部配合してなるワニス(固形分100重量部)に対
しチタン酸ストロンチウム粉末(富士チタン工業製)を
165重量部加え均一に分散するように混合し厚さ0.
1mm重量104g/m2 のガラス布(日東紡績社製W
E116E)に成形厚さが0.15mmになるように塗
布、乾燥したプリプレグを作製した。このプリプレグを
4枚重ね温度170℃、圧力3MPa120分加熱、加
圧して積層板を得た。
【0017】実施例2 フェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185)1
0重量部及び臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(臭素含有量50%、エポキシ当量400)90重量部
とフェノール類付加ポリブタジエン(ポリブタジエン1
00gに対するフェノール付加量0.3mol、水酸基
当量315)88重量部とメチルエチルケトンで溶解
し、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−
4−メチルイミダゾールを0.3重量部配合してなるワ
ニス(固形分100重量部)に対しチタン酸ストロンチ
ウム粉末(富士チタン工業製)を170重量部加え均一
に分散するように混合し厚さ0.1mm、重量104g
/m2 のガラス布(日東紡績社製WE116E)に成形
厚さが0.15mmになるように塗布、乾燥したプリプ
レグを作製した。このプリプレグを4枚重ね温度170
℃、圧力3MPa120分加熱、加圧して積層板を得
た。
【0018】比較例1 エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製エピコート100
1)に対しジシアンジアミドを0.8当量加えた樹脂ワ
ニス(固形分100重量部)に対しチタン酸ストロンチ
ウム粉末(富士チタン工業製)を130重量部加え均一
に分散するように混合し厚さ0.1mm重量104g/
2 のガラス布(日東紡績社製WE116E)に成形厚
さが0.15mmになるように塗布、乾燥したプリプレ
グを作製した。このプリプレグを4枚重ね温度170
℃、圧力3MPa120分加熱、加圧して積層板を得
た。
【0019】比較例2 ポリフェニレンエーテル樹脂(固形分100重量部)に
対しチタン酸ストロンチウム粉末(富士チタン工業製)
を270重量部加え均一に分散するように混合し厚さ
0.1mm重量104g/m2 のガラス布(日東紡績社
製WE116E)に成形厚さが0.15mmになるよう
に塗布、乾燥したプリプレグを作製した。このプリプレ
グを4枚重ね温度170℃、圧力3MPa120分加
熱、加圧して積層板を得た。
【0020】比較例3 エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製エピコート100
1)に対しジシアンジアミドを0.8当量加え混合し、
厚さ0.1mm重量104g/m2 のガラス布に成形後
の厚さが0.15mmになるように塗布、乾燥したプリ
プレグを作製した。次にこのプリプレグを4枚重ね17
0℃3MPa120分加熱、加圧して積層板を得た。
【0021】得られた積層板について、誘電率、誘電正
接、切削加工性及び170℃の恒温槽に0.5時間保持
(E−0.5/170)前後における寸法変化率を調べ
た。その結果を表1に示す。表1から、本発明の積層板
は、誘電正接が小さく、切削加工性及び寸法安定性共に
良好であるが、比較例1の積層板は誘電正接が大きく、
比較例2の積層板は切削加工性が悪く、また、寸法変化
も大きくなっていることがわかる。
【0022】
【表1】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 項目 実施例1 実施例2 比較例1 比較例2 比較例3 ────────────────────────────────── 板厚(mm) 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 誘電率 10 10 10 10 4.7 誘電正接 0.006 0.007 0.015 0.005 0.018 切削加工性 ○ ○ ○ × ○ 寸法変化率(%) 0.018 0.019 0.018 0.045 0.015 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0023】
【発明の効果】本発明で得られる高誘電率積層板は従来
の高誘電率積層板に比べ、誘電正接が小さく、切削加工
性が良好であり、寸法安定性が小さい特徴がある。ま
た、本発明による積層板は通常の積層板の製造設備で生
産が可能でありさらに通常の積層板と同様に穴明け、め
っき、半田処理等の後加工が可能であることから工業的
な誘電率の高いプリント配線板の製造に好適である。
【手続補正書】
【提出日】平成7年2月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 高誘電率積層板
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は誘電率の高い特徴を有す
る積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年電子技術の多様な発展にともない、
電子装置に用いる絶縁材料にも多様な性能が要求される
ようになってきている。特にプリント配線板は極めて広
範囲の用途に使用され基板に対する要求特性も益々多岐
にわたっている。このような状況のもと誘電特性に関す
る要求も数多い。これまでプリント配線板における高速
伝搬、高特性インピーダンス、配線板の薄型化、クロス
トークの減少などを目的として低誘電率配線板の開発を
行ってきたが、一方高周波、マイクロウェ−ブ回路その
他配線板における遅延回路の形成、低インピーダンス回
路における配線板の特性インピーダンスの整合、配線パ
ターンの細密化、基板自身にコンデンサー効果を持たせ
た素子の複合回路化等の要求から高誘電率積層板が必要
とされている。そこで、従来の積層板やプリント配線板
用銅張積層板用のフェノール樹脂、エポキシ樹脂等や低
誘電率樹脂のフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂
等に高誘電率の無機粉末を添加し、ガラス布もしくはガ
ラス不織布に含浸乾燥して得たプリプレグを積層成形し
てなる高誘電率積層板が提案されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の積層
板やプリント配線板用銅張積層板用のフェノール樹脂、
エポキシ樹脂等の一般の熱硬化性樹脂に高誘電率の充填
剤を添加しただけでは誘電正接が低くはならない。ま
た、低誘電率樹脂のフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテ
ル樹脂等の樹脂に高誘電率の充填剤を添加した場合は誘
電正接は低くはなるが、高誘電率を得るために充填剤の
添加量が増加してしまい、積層板のドリル加工性、切削
加工性の低下及び寸法変化が大きくなる等の問題が生じ
る。そこで、本発明はこれらの欠点を改良した高誘電率
・低誘電正接の積層板を提案するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は従来にない高誘
電率の積層板を得んとして研究した結果、積層板中に誘
電率の高い無機粉末を分散含有せしめることにより誘電
率の高い積層板が得られることの知見を利用し、更にこ
の知見に基づき種々研究を進めて本発明を完成するに至
ったものである。その目的とするところは誘電率が高
く、誘電正接が低い絶縁層を有し通常のガラス布エポキ
シ銅張積層板等と全く同様な工程でプリント配線板へ加
工が可能な積層板を提供することにある。
【0005】本発明はエポキシ樹脂、フェノール類付加
共役ジエン系重合体、及び、硬化促進剤を配合してなる
熱硬化性樹脂100重量部に対し誘電率が10以上の無
機粉末を80〜250重量部添加し、ガラス布もしくは
ガラス不織布に含浸乾燥して得たプリプレグを積層成形
してなる事を特徴とする高誘電率積層板に関するもので
ある。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、その
種類は特に限定されない。
【0006】例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹
脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノール
S型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、フェ
ノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラッ
ク型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エ
ポキシ樹脂、ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ
樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、
グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン
型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシ
アヌレート型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラ
ック型エポキシ樹脂、その他二官能フェノール類のジグ
リシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシ
ジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添
加物などがある。
【0007】これらは、何種類かを併用しても良い。2
5℃における粘度が100Pa・s以下のエポキシ樹脂
としては、分子内に2個以上のエポキシ基を持つ化合物
であればその種類をとわないが、反応性や基材への含浸
性が良好なビスフェノールA型エポキシ樹脂が好まし
い。
【0008】25℃における粘度が100Pa・s以下
のエポキシ樹脂の配合量としては、他のエポキシ樹脂1
00重量部に対して0.1重量部以上が好ましい。0.
1重量部未満ではワニスの粘度が低下せず、基材への含
浸性が向上しない。フェノール類付加共役ジエン系重合
体としては、フェノール類の付加量は生成付加重合体1
00gに対し、フェノール性水酸基が0.1〜1.0m
ol量になるように調整するのが望ましく、特に0.2
5mol以下が好ましい。フェノール類の付加量がこの
範囲より大きいと誘電特性が低下し、この範囲より小さ
いと耐熱性が低下する。
【0009】ここで用いるフェノール類としては、フェ
ノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾ
ール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチル
フェノール、tert−ブチルフェノール、アミルフェ
ノール、ヘキシルフェノール等の単官能フェノール類や
ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ビスフェ
ノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等の二官能
フェノール類とその異性体及びハロゲン化物、ピロガロ
ール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログリシン、フェ
ノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノ
ールAノボラック等の多官能フェノール類等があり、こ
れらを単独又は2種類以上併用する。
【0010】また、このようなフェノール類付加共役ジ
エン系重合体としては限定はないが、誘電特性、耐熱性
の面からフェノール類付加ブタジエン共重合体が望まし
い。硬化促進剤としてはイミダゾール化合物、有機リン
化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が用い
られるが、第2級アミノ基をアクリロニトリル、イソシ
アネート、メラミン、アクリレート等でマスクしたイミ
ダゾール化合物を用いるとプリプレグの保存安定性がよ
く好ましい。
【0011】ここで用いられるイミダゾール化合物とし
ては、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾ
ール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミ
ダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2
−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミ
ダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−メチル−4−
メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−
ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリ
ン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチル
イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾー
ル、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダ
ゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル
−4−メチルイミダゾリン等があり、マスク化剤として
はアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、ト
ルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビスフ
ェニルイソシアネート、メラミンアクリレート等があ
る。
【0012】これらの硬化促進剤は何種類かを併用して
も良く、配合量は好ましくは、エポキシ樹脂100重量
部に対して0.01〜5重量部である。0.01重量部
より少ないと効果は小さく、5重量部より多いとワニス
及びプリプレグの保存安定性が低下する。本発明の熱硬
化性樹脂は溶剤に溶解してワニスとし、基材に塗布、含
浸する。溶剤としては、アルコール系、エーテル系、ケ
トン系、アミド系、芳香族炭化水素系、エステル系、ニ
トリル系等がある。
【0013】また、本発明において用いられる無機粉末
は誘電率が10以上望ましくは30以上、誘電正接が
0.005以下のものであり、特に限定はないが、この
ようなものとしては例えば二酸化チタン系セラミック、
チタン酸バリウム系セラミック、チタン酸鉛系セラミッ
ク、チタン酸ストロンチウム系セラミック、チタン酸カ
ルシウム系セラミック、チタン酸ビスマス系セラミッ
ク、チタン酸マグネシウム系セラミック、ジルコン酸鉛
系セラミックなどを挙げることができる。これらは、単
独または2種類以上を混合して用いてもよい。なお、前
記二酸化チタン系セラミックとは、組成的には、二酸化
チタンのみを含む系、または二酸化チタンに他の少量の
添加物を含む系で、主成分である二酸化チタンの結晶構
造が保持されているものである。
【0014】他の系のセラミックもこれと同様である。
二酸化チタンはTiO2 で示される物質で種々の結晶構
造を有するものがあるが、誘電体セラミックとして使用
されるのは、その中のルチル構造のものである。無機粉
末の粒子径としては、約50μm以下のものを用いるこ
とができるが、好ましくは0.1〜20μm、さらに好
ましくは0.5〜7μmの範囲のものである。これは無
機粉末の粒子径が大きいと樹脂への均一分散、混合が困
難になりまた積層板の特性に不都合をもたらす。逆に小
さすぎると取扱が悪くなるなどのおそれがある。
【0015】無機粉末の樹脂への添加量としては、誘電
率を高める上では多いほど良いが通常は80〜250重
量部、好ましくは100〜200重量部である。これは
無機粉末の添加量が増加するに従い樹脂への均一分散、
混合が困難になりまた積層後の機械的強度の低下が見ら
れ逆に添加量が少ないと誘電率が充分に高くならないた
めである。次に積層板の作製方法について述べる。無機
粉末を80〜250重量部ワニス中に均一分散・混合
し、ガラス布もしくはガラス不織布に含浸乾燥させプリ
プレグを作製する。積層板はプリプレグを必要枚数重ね
合わせ積層成形することにより得られる。
【0016】
【作用】従来の高誘電率積層板は誘電正接が大きい樹脂
を用いるため積層板の誘電正接が大きくなり、信号の伝
送損失が大きくなってしまう。また誘電率が小さい樹脂
を用いた場合積層板の誘電率の目標を達成するためには
無機粉末の添加量が増加し、成形歪みが大きくなり、寸
法変化が大きくなったり、積層板の切削加工性等が低下
してしまっていた。そこで、本発明が提案したように樹
脂を限定することにより、無機粉末の添加量を抑え、成
形歪みを減少させた高誘電率・低誘電正接積層板が得ら
れた。
【0017】
【実施例】 実施例1 臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(臭素含有量5
0%、エポキシ当量400)100重量部とフェノール
類付加ポリブタジエン(ポリブタジエン100gに対す
るフェノール付加量0.25mol、水酸基当量41
0)88重量部とメチルエチルケトンで溶解し、硬化促
進剤としてイソシアネートマスクイミダゾールを0.5
重量部配合してなるワニス(固形分100重量部)に対
しチタン酸ストロンチウム粉末(富士チタン工業製)を
165重量部加え均一に分散するように混合し厚さ0.
1mm重量104g/m2 のガラス布(日東紡績社製W
E116E)に成形厚さが0.15mmになるように塗
布、乾燥したプリプレグを作製した。このプリプレグを
4枚重ね温度170℃、圧力3MPa120分加熱、加
圧して積層板を得た。
【0018】実施例2 フェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185)1
0重量部及び臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(臭素含有量50%、エポキシ当量400)90重量部
とフェノール類付加ポリブタジエン(ポリブタジエン1
00gに対するフェノール付加量0.3mol、水酸基
当量315)88重量部とをメチルエチルケトンで溶解
し、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−エチル−
4−メチルイミダゾールを0.3重量部配合してなるワ
ニス(固形分100重量部)に対しチタン酸ストロンチ
ウム粉末(富士チタン工業製)を170重量部加え均一
に分散するように混合し厚さ0.1mm、重量104g
/m2 のガラス布(日東紡績社製WE116E)に成形
厚さが0.15mmになるように塗布、乾燥したプリプ
レグを作製した。このプリプレグを4枚重ね温度170
℃、圧力3MPa120分加熱、加圧して積層板を得
た。
【0019】比較例1 エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製エピコート100
1)に対しジシアンジアミドを0.8当量加えた樹脂ワ
ニス(固形分100重量部)に対しチタン酸ストロンチ
ウム粉末(富士チタン工業製)を130重量部加え均一
に分散するように混合し厚さ0.1mm重量104g/
2 のガラス布(日東紡績社製WE116E)に成形厚
さが0.15mmになるように塗布、乾燥したプリプレ
グを作製した。このプリプレグを4枚重ね温度170
℃、圧力3MPa120分加熱、加圧して積層板を得
た。
【0020】比較例2 ポリフェニレンエーテル樹脂(固形分100重量部)に
対しチタン酸ストロンチウム粉末(富士チタン工業製)
を270重量部加え均一に分散するように混合し厚さ
0.1mm重量104g/m2 のガラス布(日東紡績社
製WE116E)に成形厚さが0.15mmになるよう
に塗布、乾燥したプリプレグを作製した。このプリプレ
グを4枚重ね温度170℃、圧力3MPa120分加
熱、加圧して積層板を得た。
【0021】比較例3 エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製エピコート100
1)に対しジシアンジアミドを0.8当量加え混合し、
厚さ0.1mm重量104g/m2 のガラス布に成形後
の厚さが0.15mmになるように塗布、乾燥したプリ
プレグを作製した。次にこのプリプレグを4枚重ね17
0℃3MPa120分加熱、加圧して積層板を得た。
【0022】得られた積層板について、誘電率、誘電正
接、切削加工性及び170℃の恒温槽に0.5時間保持
(E−0.5/170)前後における寸法変化率を調べ
た。その結果を表1に示す。表1から、本発明の積層板
は、誘電正接が小さく、切削加工性及び寸法安定性共に
良好であるが、比較例1の積層板は誘電正接が大きく、
比較例2の積層板は切削加工性が悪く、また、寸法変化
も大きくなっていることがわかる。
【0023】
【表1】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 項目 実施例1 実施例2 比較例1 比較例2 比較例3 ────────────────────────────────── 板厚(mm) 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 誘電率 10 10 10 10 4.7 誘電正接 0.006 0.007 0.015 0.005 0.018 切削加工性 ○ ○ ○ × ○ 寸法変化率(%) 0.018 0.019 0.018 0.045 0.015 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0024】
【発明の効果】本発明で得られる高誘電率積層板は従来
の高誘電率積層板に比べ、誘電正接が小さく、切削加工
性が良好であり、寸法安定性が小さい特徴がある。ま
た、本発明による積層板は通常の積層板の製造設備で生
産が可能でありさらに通常の積層板と同様に穴明け、め
っき、半田処理等の後加工が可能であることから工業的
な誘電率の高いプリント配線板の製造に好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 63/00 NJQ C08L 63/00 NJQ NKT NKT H05K 1/03 610 7511−4E H05K 1/03 610B 7511−4E 610L

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)エポキシ樹脂、(b)フェノール
    類付加共役ジエン系重合体、及び(c)硬化促進剤を配
    合してなる熱硬化性樹脂100重量部に対し誘電率が1
    0以上の無機粉末を80〜250重量部添加し、ガラス
    布もしくはガラス不織布に含浸乾燥して得たプリプレグ
    を積層成形してなる事を特徴とする高誘電率積層板。
  2. 【請求項2】 エポキシ樹脂が25℃における粘度が1
    00Pa・s以下のエポキシ樹脂を少なくとも0.1重
    量部以上含む単独又は2種類以上のエポキシ樹脂である
    請求項1記載の高誘電率積層板。
  3. 【請求項3】 フェノール類付加共役ジエン系重合体が
    フェノール類付加ブタジエン共重合体である請求項1又
    は2記載の高誘電率積層板。
  4. 【請求項4】 硬化促進剤が第2級のアミン基がマスク
    されたイミダゾール化合物である請求項1、2又は3記
    載の高誘電率積層板。
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Cited By (4)

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US6749928B2 (en) 2001-02-22 2004-06-15 Tdk Corporation Electronic parts and method producing the same
KR100500150B1 (ko) * 2000-05-31 2005-07-11 티디케이가부시기가이샤 전자부품
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JP2011071348A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Panasonic Electric Works Co Ltd インターポーザ用の金属張積層板とそれを用いた半導体パッケージ

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