JPH08209390A - 天然緑青易発錆性材料、およびその製造方法 - Google Patents

天然緑青易発錆性材料、およびその製造方法

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JPH08209390A
JPH08209390A JP29569995A JP29569995A JPH08209390A JP H08209390 A JPH08209390 A JP H08209390A JP 29569995 A JP29569995 A JP 29569995A JP 29569995 A JP29569995 A JP 29569995A JP H08209390 A JPH08209390 A JP H08209390A
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patina
cucl
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aqueous solution
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JP29569995A
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Toshio Tani
俊夫 谷
Hideo Suda
英男 須田
Minoru Igarashi
稔 五十嵐
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Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 屋外暴露すると、極めて短期間のうちに天然
緑青を発錆する天然緑青易発錆性材料とその製造方法を
提供する。 【解決手段】 少なくとも表面がCuまたは、Cu合金
から成る基材1と、その基材の表面に形成されたCuC
l,CuBr,CuIの群から選ばれる少なくとも1種
の化合物の層2とから成り、この材料は、前記基材の表
面に、Cl- ,Br- およびI- の群から選ばれる少な
くとも1種のハロゲンイオンを含む水溶液中でアノード
酸化処理することによって製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然緑青が発錆し
やすい材料とその製造方法に関し、更に詳しくは、屋外
暴露下において、均一でかつ耐食性に優れている天然緑
青が短期間で発錆し、屋根などの建築用資材として有用
な材料と、それを、容易かつ低コストで製造する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】銅は、耐久性や防火性に優れ、軽量でし
かも加工しやすく、施工後のメンテナンスも不要である
ということなどから、古来から屋根をはじめとする建築
用資材として使用されている。そして今日では、銅はそ
の価格が低価格でかつ安定しているということもあっ
て、公共建築物、神社、仏閣から個人住宅にいたるまで
使用分野は広い。
【0003】この銅が建築用資材として賞用される理由
は、銅そのものの上記したような優れた特性に加え、長
期間大気中に放置しておくと、その表面に緑青皮膜が自
然に発錆し、それが保護皮膜となって資材の耐食性を高
めるとともに、この緑青皮膜は風格のある美麗な外観を
呈するからである。この天然緑青は、そのほとんどが塩
基性硫酸銅(CuSO4 ・3Cu(OH)2)から成り、
特殊な場合に、塩基性塩化銅と塩基性炭酸銅などが見出
されている。
【0004】しかしながら、上記した天然緑青が鑑賞に
耐え得る厚みにまで成長するためには、通常、10数年
から20年近い年月が必要である。そのため、銅表面に
緑青を人工的に発錆させるために、各種の方法が提案さ
れている。例えば、特公昭55ー12117号公報に
は、銅板を、HCO3 - やCO3 2-と、NaOHやKO
Hを含む電解液の中でアノード酸化して表面に人工緑青
を発錆させる方法が開示されている。
【0005】また、特公昭56ー9270号公報には、
銅板を、塩酸,酢酸銅,塩基性炭酸銅,硝酸銅,塩化ア
ンモニウム,または塩化ナトリウムを含む化成処理液に
接触させてその表面に人工緑青を発錆させる方法が開示
されている。特公昭56ー30396号公報には、銅粉
を含有する樹脂塗料を銅表面に塗布したのち、塩酸,酢
酸銅,炭酸銅,亜砒酸,塩化アンモニウム,硝酸銅,ま
たは水を含む処理液を用いて化成処理を行う方法が開示
されている。
【0006】更に、特開昭55ー139467号公報で
は、緑青の1種である塩基性炭酸銅の粉末が混合されて
いる塗料を基材表面に塗布して緑青色彩を発現させる方
法が提案され、また特公昭62ー19910号公報で
は、水溶性または水分散性の樹脂と、銅イオンとの間で
錯塩を形成する化合物を含有する水溶液または水懸濁液
を銅表面に塗布する方法が提案されている。
【0007】しかしながら、上記した方法の場合、生成
する人工緑青のほとんどが、塩基性炭酸銅(アノード酸
化の場合)や塩基性塩化銅(化成処理の場合)であり、
天然緑青の主成分である塩基性硫酸銅を工業的な規模で
生成させる方法であるとはいいがたい。そして、上記し
た方法で生成した人工緑青は、その組成が天然緑青と大
幅に異なるため、時間が経過するにつれて変色や褪色を
起こして緑青としての観賞美を喪失していくとともに、
基材からの剥離も起こってくる。そのうえ、人工緑青を
発錆させた銅板は高価でもある。
【0008】このようなことから、例えば屋根材の場合
には、高価な人工緑青銅板を用いるよりも、銅板をその
まま用いて、そこに天然緑青が自然に発錆してくるのを
待つということが依然として行われている。しかしなが
ら、最近の汚染された大気環境の下では酸性雨も降るこ
とがある。そのため、天然緑青の発錆に要する期間は従
来よりも一層長くなるということがいわれている。そし
て、個人住宅などの場合は、長期間経過後に屋根に観賞
に耐え得る天然緑青が発錆したとしても、その時点で
は、住宅それ自体が老朽化して建替えなければならない
という問題が生じてくる。このようなことから、屋根を
施工したのちに早期の段階で天然緑青が発錆してくる材
料の開発が強く求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の材料
における上記した問題を解決し、屋外暴露すると、短期
間で塩基性硫酸銅を主成分とする天然緑青が発錆してそ
の均一な皮膜が形成される材料と、表面に人工緑青の層
が形成されていて最初から緑青色調を呈しているが、そ
れを屋外暴露すると、前記人工緑青が経時的に天然緑青
に転化していく材料の提供を目的とする。また、本発明
は、上記した材料を簡単に、従って安価に製造する方法
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、少なくとも表面がCuまた
はCu合金から成る基材の前記表面に、CuCl,Cu
Br,CuIの群から選ばれる少なくとも1種の化合物
の層が、0.1N KCl水溶液中でカソード還元したと
きの還元電気量から求めた理論厚みとして0.1μm以上
の厚みで形成されていることを特徴とする天然緑青易発
錆性材料(以下、この材料を材料Aという)、少なくと
も表面がCuまたはCu合金から成る基材の前記表面に
CuとClとから成る非晶質化合物、CuとBrとから
成る非晶質化合物、およびCuとIとから成る非晶質化
合物の群から選ばれる少なくとも1種の非晶質化合物な
らびにCu2 Oを含む層が形成されていることを特徴と
する天然緑青易発錆性材料(以下、この材料を材料B1
という)、少なくとも表面がCuまたはCu合金から成
る基材の前記表面にCuとClとから成る非晶質化合
物、Cu2 O、および塩基性塩化銅を含む層が形成され
ていることを特徴とする天然緑青易発錆性材料(以下、
この材料を材料B2 という)、少なくとも表面がCuま
たはCu合金から成る基材の前記表面に、CuCl,C
uBr、およびCuIの群から選ばれる少なくとも1種
の化合物の層が、0.1N KCl水溶液中でカソード還
元したときの還元電気量から求めた理論厚みとして0.1
μm以上の厚みで形成され、更に前記化合物の層の上に
人工緑青の層が形成されていることを特徴とする天然緑
青易発錆性材料(以下、この材料を材料C1 という)、
ならびに、少なくとも表面がCuまたはCu合金から成
る基材の前記表面に、CuCl,CuBr,およびCu
Iの群から選ばれる少なくとも1種の化合物と人工緑青
との混合物から成る厚み5μm以上の層が形成されてい
ることを特徴とする天然緑青易発錆性材料(以下、この
材料を材料C2 という)が提供される。
【0011】また、本発明においては、 少なくとも表
面がCuまたはCu合金から成る基材の前記表面に、C
- ,Br- およびI- の群から選ばれる少なくとも1
種のハロゲンイオンを含有し、かつ液温が20℃以下で
ある水溶液の中でアノード酸化を行って、前記基材の表
面に、CuCl,CuBr,CuIの群から選ばれる少
なくとも1種の化合物の層を形成することを特徴とする
天然緑青易発錆性材料の製造方法(以下、製造方法Aと
いう)、Cl- ,Br- およびI- の群から選ばれる少
なくとも1種のハロゲンイオンを含有し、かつ液温が2
0℃以下である水溶液の中で、少なくとも表面がCuま
たCu合金から成る基材の前記表面をアノード酸化し
て、前記表面に、CuCl,CuBr,およびCuIの
群から選ばれる少なくとも1種の化合物の層を、その層
の厚みが0.1NKCl水溶液中でカソード還元したとき
の還元電気量から求めた理論厚みとして0.1μm以上と
なるように形成し、ついで、前記化合物の層に加水分解
処理を行うことを特徴とする天然緑青易発錆性材料(以
下、製造方法B1 という)、Cl- を含有し、かつ液温
が20℃以下である水溶液の中で、少なくとも表面がC
uまたCu合金から成る基材の前記表面をアノード酸化
して、前記表面に、CuClの層を、その層の厚みが0.
1NKCl水溶液中でカソード還元したときの還元電気
量から求めた理論厚みとして0.1μm以上となるように
形成し、ついで、前記CuClの層に加水分解処理を施
し、更に、前記加水分解処理後の層に酸化処理を施すこ
とを特徴とする天然緑青易発錆性材料の製造方法(以
下、製造方法B2 という)、少なくとも表面がCuまた
はCu合金から成る基材の前記表面に、厚み5μm以上
の人工緑青の層を形成し、ついで、Cl- ,Br- およ
びI- の群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンイオ
ンを含有し、かつ液温が20℃以下である水溶液の中
で、前記基材に対してアノード酸化を行い、前記人工緑
青の層と前記基材の表面との界面に、CuCl,CuB
r、およびCuIの群から選ばれる少なくとも1種の化
合物の層を、その厚みが0.1μmNKCl水溶液中でカ
ソード還元したときの還元電気量から求めた理論厚みと
して0.1μm以上となるように形成することを特徴とす
る天然緑青易発錆性材料の製造方法(以下、製造方法C
1という)、ならびに、Cl- ,Br- およびI- の群
から選ばれる少なくとも1種のハロゲンイオンを含有
し、かつ液温が20℃以下である水溶液の中で、少なく
とも表面がCuまたはCu合金から成る基材の前記表面
に第1のアノード酸化を行って、前記表面に、CuC
l,CuBrおよびCuIの群から選ばれる少なくとも
1種の化合物の層を形成し、ついで、HCO3 - を含有
する水溶液またはCO3 2- とHCO3 -とを含有する水溶
液の中で、前記基材に対して第2のアノード酸化を行っ
て、人工緑青と前記化合物との混合物から成る厚み5μ
m以上の層を形成することを特徴とする天然緑青易発錆
性材料の製造方法(以下、製造方法C2 という)が提供
される。
【0012】
【発明の実施の形態】まず、表面がCuまたはCu合金
から成る材料を大気中に暴露すると、その表面は徐々に
酸化して光沢が次第に失われたのち、表面には、酸化第
1銅(Cu2O)や酸化第2銅(CuO)の皮膜が形成
され、外観は黒色,赤燈色,褐色などに変化していく。
そして、更に長期間大気中に暴露し続けると、部分的に
極くわずかずつ塩基性銅塩から成る天然緑青に転化して
いく。
【0013】ところで、発明者らの研究によれば、天然
緑青の発錆機構は以下のとおりである。すなわち、天然
緑青を構成する塩基性銅塩は、金属銅から直接生成する
ものではなく、金属銅の表面は、必ず1度,1価のCu
+ に酸化する。その結果、表面では、Cu2 Oの皮膜が
生成したのちに、更にその酸化反応が進行して天然緑青
として発錆していくのである。
【0014】したがって、天然緑青の皮膜を短期間で形
成するためには、0価の金属銅の表面が、可及的速やか
に、Cu2 Oに転化するような反応を促進することが必
要になる。なお、上記した0価の金属銅からCu2 Oへ
転化していく反応は、当然のことながら、降雨量,温湿
度,大気中の成分組成,各種粉塵の量,鳥類の糞などに
よっても左右され、更には、大気中の酸素や水分の外
に、微量ではあれ存在する塩素(Cl)成分や硫黄
(S)成分などによっても左右される。
【0015】いずれにしても、本発明者らの研究によれ
ば、天然緑青の生成媒体の主要なものは、1価のC
+ 、すなわちCu2 Oであることが判明した。このよ
うなことから、基材の表面に天然緑青を短期間で発錆さ
せるためには、基材表面に予めCu2 O皮膜を形成して
おくことが有効になる。従来、Cu2 O皮膜を形成する
ためには、塩化物,亜塩素酸塩,それに過マンガン酸
塩,ペルオキソ二硫酸のような酸化剤とpH調整剤など
を含む溶液を用いて銅表面に化成処理を施すという方法
が一般に採用されている。
【0016】しかしながら、上記したような化成処理法
で形成したCu2 O皮膜は、非常に薄くしかも基材との
密着性が悪いので、屋外暴露したときに例えば降雨など
によって流失しやすく、また、暴露環境によっては酸化
反応が更に進行してCuO皮膜が生成することもあり、
目的とするCu2 O皮膜の成長が阻害されることがあ
る。しかも、化成処理法によるCu2 O皮膜の成膜速度
は非常に遅く、所望する厚みのCu2 O皮膜の形成には
長時間を必要とし、その生産性は非常に低い。
【0017】また、Cu2 O皮膜の形成法としては、基
材表面を大気中で熱処理する方法も知られている。しか
しながら、この方法で形成された酸化皮膜は、非常に緻
密でしかも強固であり、厚みによっては本来の耐食性に
富むCu2 Oになってしまい、更に、その場合でも、外
側の部分は酸化されてCuOになってしまうため、この
酸化皮膜全体が天然緑青に転化するためには長大な年月
を要することになる。
【0018】このように、従来の方法に基づいて基材の
表面に直接Cu2 O皮膜を形成しても、その皮膜は短期
間で天然緑青になりづらく、屋根材などとして実使用す
るためには満足すべき材料とはいいがたい。本発明が提
供する材料Aは、図1で示したように、少なくとも表面
がCuまたはCu合金から成る基材1の前記表面にCu
Cl,CuBr,CuIの1種または2種以上の化合物
から成る層2が形成されている。
【0019】基材1としては、全体がCuまたはCu合
金で構成されているものであってもよく、また芯材はス
ティール,ステンレス鋼,アルミニウム,樹脂のような
材料から成り、その表面をめっき,蒸着,クラッドなど
の方法によってCuまたはCu合金で被覆されている材
料であってもよい。このときの被覆の厚みは、製造目的
の材料が使用される環境や要求される耐候性などの因子
を考慮して適宜に設定すればよい。なお、Cu合金とし
ては、例えば、Cu−Sn系,Cu−Zn系のようなも
のをあげることができる。
【0020】前記した化合物の層2は、後述する製造方
法Aで形成されることにより、基材表面のCuを直接的
に1価のCu+ へと酸化している。そして、これらの層
2はいずれも、後述する方法で形成した直後にあっては
塩化物組成になっているが、大気中の酸素,湿気,水分
などに接触すると、酸化反応や加水分解反応を起こして
Cu2 OやCuCl2 ・3Cu(OH)2(塩基性塩化
銅)に転化し、そのときに生成するCu2 Oが天然緑青
の成長を促進することになる。
【0021】そして、この化合物の層のCl成分が、暴
露環境中に存在するS成分などを基材表面に優先的かつ
迅速に吸着する働きもあって、天然緑青(CuSO4
3Cu(OH)2)が短期間で発錆するものと考えられ
る。なお、CuCl,CuBr,CuIはいずれも同じ
挙動を示すので、以後は、CuClをこれら化合物の代
表にして説明する。
【0022】上記した各反応時の反応速度は、大気中の
温湿度や成分組成とその濃度によって変化する。通常の
屋内雰囲気や空調完備の室内などは低酸化性雰囲気であ
るため、CuCl層2を形成した表面外観は、1日単位
程度で比較的ゆっくりと変化する。しかしながら、酸化
性の強い雰囲気、例えば屋外環境に暴露すると、屋外暴
露した直後からCuCl層2の表面は急速に緑色から濃
緑色に変化していく。その後、1日程度の時間が経過す
ると、その色調は深まり均一な外観を呈するようにな
る。そして、その発色層の表面に対し、X線回折分析を
行うと、発色層は塩基性塩化銅になっている。
【0023】更に、1ヶ月程度の時間が経過すると、上
記した発色層では、最終目標とする塩基性硫酸銅の天然
緑青の色調が鮮明に視認できるようになる。このよう
に、材料Aでは、基材表面に塩基性塩化銅が、分単位か
ら時間単位、または1日程度という極めて短い時間単位
で生成し、更に1ヶ月程度の時間が経過すると塩基性硫
酸銅(天然緑青)が生成する。このような発錆現象は、
従来、少なくとも10年程度の時間を必要としていた。
【0024】材料Aにおいて、天然緑青が上記したよう
に驚異的な速度で発錆する現象は、概ね、次式で示すよ
うな反応が複合的に進行するからであると推定される。 1.加水分解反応によるCu2 O(酸化第1銅)の生
成: 2CuCl+H2 O→Cu2 O+2HCl …(1) 2.不均化反応によるCuCl2 (塩化第2銅)の生
成: 2CuCl→CuCl2 +Cu …(2) 3.酸化反応によるCuCl2 (塩化第2銅),Cu
(OH)2(水酸化銅),CuO(酸化銅)の生成: 4CuCl+2H2 O+O2 →2CuCl2 +2Cu(OH)2 …(3) 2Cu+2H2 O+O2 →2Cu(OH)2 …(4) 2Cu2 O+4H2 O+O2 →4Cu(OH)2 …(5) 2Cu+O2 →2CuO …(6) CuO+H2 O→Cu(OH)2 …(7) 4.CuCl2 ・3Cu(OH)2(塩基性塩化銅)の生
成: CuCl2 +3Cu(OH)2→CuCl2 ・3Cu(OH)2 …(8) 5.屋外環境に微量ではあれ存在するS成分との反応に
よる塩基性硫酸銅(CuSO4 ・3Cu(OH)2)の生
成: 4Cu2 O+2SO2 +3O2 +6H2 O →2〔CuSO4 ・3Cu(OH)2〕 …(9) なお、上層部分から徐々に塩基性酸化銅に転化していく
層2は、屋外暴露後、日を置かないうちに降雨に見舞わ
れると、上層部分を形成しつつある塩基性塩化銅の一部
が流失してしまうことがある。このような現象は、塩基
性塩化銅に転化しつつある層2の下部では、徐々にCu
2 Oが生成しつつあり、そして化学的に不安定なCuC
lがいまだ残存している状態にあるため、この不安定な
CuClが雨水によって加水分解反応を起こし、そのC
2 Oへの転化が一気に進行するからであると考えられ
る。
【0025】層2の流失を防止するためには、形成する
層2の厚みを、次のようにして計算される値で0.1μm
以上にすればよい。すなわち、まず基材1の表面に形成
されている層2に対し、0.1NのKCl水溶液中で、電
流密度i(mA/cm2)の条件でカソード還元を行って当該
の層2を全て還元させたときの還元時間t(sec)を計測
し、その還元電気量C(=i×t=mC/cm2)を知る。
【0026】そして、この還元電気量から、層2の厚み
(T)を、次式: T(μm)=10・M・C/n・ρ・F …(10) に基づいて計算する。ここで、Mは層2を構成する化合
物の分子量で、CuCl層の場合には98.999g/mo
l の値,CuBr層の場合には143.450g/mol の
値,CuIの場合には190.450g/mol の値が用い
られる。
【0027】また、ρは比重で、CuCl層の場合は4.
14g/cm3 ,CuBr層の場合は4.72g/cm3,C
uI層の場合は5.63g/cm3 の値が代入される。nは
Cu+ の荷電数でいずれの層の場合もn=1であり、F
はファラデー定数である。なお、層2が、CuCl,C
uBr,CuIが混合している層である場合には、上記
したM値とρ値は、各化合物の混合比率に対応する加重
平均値に換算して代入される。
【0028】なお、本発明においては、以後、上記した
式(10)で計算される厚みTのことを理論厚みという。し
かし、後述する製造方法AでCuCl層2を形成する場
合、CuCl層2の理論厚みが厚くなってくると、Cu
Cl層2は粉状になって基材表面から剥離するようにな
る。そのため、この理論厚み(T)は2〜3μmが上限
値となる。
【0029】なお、前記したように塩基性塩化銅の一部
が流失してしまった場合であっても、更に屋外暴露を3
〜4ヶ月継続すると、最終目標である天然緑青が確実に
発錆してくる。この材料Aは、次のような製造方法Aに
よって製造することができる。すなわち、前記した基材
1を後述する水溶液に浸漬し、基材1をアノードにし、
水溶液内にステンレス鋼,白金,カーボンのような不溶
性電極をセットしてカソードにし、前記基材の表面、す
なわち、CuまたはCu合金をアノード酸化する。
【0030】基材表面にCuCl層を形成する場合、用
いる水溶液には例えばNaCl,KCl,HCl,NH
4 Clなどを水に溶解して所定濃度のCl- を含ませ、
またCuBr層を形成する場合には、例えばNaBr,
KBr,NH4 Brなどを水に溶解して所定濃度のBr
- を含ませ、更にCuI層を形成する場合には、例えば
NaI,KI,NH4 Iなどを水に溶解して所定濃度の
- を含ませる。そして、CuCl,CuBr,CuI
が所定の割合で混在する層を形成する場合には、上記し
たイオン源が所定の割合となるように各溶質を水に溶解
すればよい。
【0031】この水溶液には、同時に、例えばNaOH
やNaCO3 のようなpH調整剤を溶解することによ
り、pH値を4以上に設定して使用することが好まし
い。pH値が4未満の状態でアノード酸化を行うと、形
成されたCuCl層の再溶解を充分に阻止できないから
である。とくに好ましいpH値は7以上である。また、
水溶液は液温を20℃以下に保持して使用することが必
要である。
【0032】液温が20℃よりも高い状態でアノード酸
化を行うと、CuClよりも酸化銅の生成割合、とくに
Cu2 Oの生成割合が多くなり、それにつれて表面ムラ
も激しくなってくるからである。すなわち、酸化銅の割
合が多くなると、その表面に塩基性塩化銅も生成しづら
くなり、そのため、短期間で天然緑青に転化する表面に
なりにくいからである。
【0033】液温が低いほど、基材表面にはCuCl層
が均一に形成される。しかし、過度に低温にすること
は、冷却コストの上昇を招くので、通常、0〜15℃の
液温にすることが好ましい。アノード酸化を行うときの
アノード電流密度は0.1〜1.5A/dm2 に設定すること
が好ましい。
【0034】電流密度が0.1A/dm2 より低い状態でア
ノード酸化を行うと、CuCl層の成膜速度は非常に遅
くなり、そのため、理論厚み(T)を0.1μm以上にす
るために長時間を要し、実用的ではなくなるからであ
る。また、1.5A/dm2 よりも高くすると、基材表面に
は、塩基性塩化銅から成る不働態皮膜が形成されやすく
なるからである。
【0035】アノード酸化を行うに先立ち、基材表面を
粗面化しておくことが好ましい。CuCl層が形成され
た材料を屋外暴露したときに、式(1) 〜式(9) で示した
天然緑青の発錆反応を促進する大気中成分や水分などが
基材表面に残留しやすくなり、そのことによって、天然
緑青の発錆が更に促進されるからである。このときの粗
面化の程度は、JIS B 0601で規定する10点
平均粗さ(Rz)で、5μm以上にすることが好まし
い。
【0036】例えば、塩基性硫酸銅は、最初、基材表面
に点状に生成し、ついで徐々に拡大して皮膜に成長して
いくが、その場合、最初の点状の塩基性硫酸銅は基材表
面の凸部に生成するという挙動を示す傾向がある。した
がって、基材表面の凹凸が微細であればあるほど、塩基
性硫酸銅皮膜の成長速度は早くなり、短期間で天然緑青
の発錆が進行できるからである。
【0037】基材表面を粗面化するための方法としては
各種の方法を適用することができるが、本発明にとって
は、とくにサンドブラスト法と交流電解法を適用するこ
とが好ましい。基材表面の凹凸を微細に形成することが
でき、天然緑青の発錆を促進させる前記した成分を基材
表面に効率よく残留させることができるからである。サ
ンドブラスト法は、目的材料の表面に研削用粒子を吹き
つけて表面に凹凸を付与する機械的方法であり、粗面化
操作が簡便であるという利点を備えている。
【0038】研削用粒子としては、従来から多用されて
いる砂(ケイ砂)の外に、ガーネット,溶融アルミナや
炭化ケイ素,鉄や鋼製のスチールショットやワイヤーシ
ョットなどの研削性に優れているものを用いることがで
きる。とくに、溶融アルミナをはじめとするケイ砂以外
の研削用粒子は、粗面化の効率を高めることができるの
で好適である。
【0039】ブラスト装置としては各種タイプのものを
使用することができる。本発明においては、圧縮空気を
用いる噴射型,遠心力などを利用する投射型などいずれ
のタイプのものも使用可能である。とくに、吸引式また
は直圧式の噴射型ブラスト装置は効率よく粗面化を実現
できるので好適である。交流電解法は、電解液中で基材
表面を交流電解する電気化学的方法であって、平滑な表
面に微細な凹凸を簡単に付与することができる。しか
も、この方法では、銅めっき法で粗面化する場合と異な
り、銅イオンを供給することが全く不要であるため、操
作は簡便である。
【0040】この方法では、粗面化対象の基材を2つの
電極として電解液の中にセットし、これら電極を周期的
にアノード,カソードとして反転作動させる。基材がア
ノードとして作動するときは、基材表面から銅がイオン
化して電解液に溶出することにより当該基材の表面はエ
ッチングされ、逆にカソードとして作動するときは、溶
解している銅イオンが基材表面に電着する。すなわち、
基材表面に対するエッチングと電着とが交互に生起する
ので、粗面化の効率は非常に高くなる。
【0041】このときに用いる電解液としては、基材表
面のCuがイオン化して溶出できる電解液であれば何で
あってもよく、例えば、H2 SO4 のような通常の酸、
KCNのようなアルカリ水溶液,アンモニウム塩やNH
4 + を含むCuのキレート剤が溶解している水溶液など
をあげることができる。とくに、NaCl,NH4
l,HClなどCl- を含む水溶液は好適である。
【0042】この交流電解法は、電解液のpH値や溶質
の濃度などの制約を受けることなく効率のよい粗面化を
実現することができ、また、NH3 (アンモニア水),
水,NaOHなどが添加されたアルカリ性領域の電解液
を用いても実施することができる。しかし、電解液が中
性領域にある場合は、電解電圧の上昇を招き電力コスト
が嵩むようになってしまう。
【0043】なお、この交流電解法は、前記したよう
に、2個の基材を2個の電極としてセットして行っても
よいが、1個は粗面化対象の基材とし、他の1個は例え
ばSUS,白金,酸化物電極,カーボン電極のような不
溶性電極を用いて行ってもよい。後者の方法の場合は、
Cuイオンの溶解が少なくなる。また、2個の不溶性電
極、例えばカーボン電極の間に粗面化対象の基材をセッ
トし、間接給電によって粗面化することも可能である。
【0044】次に、本発明の材料B1 について説明す
る。この材料Bは、図2で示したように、基材1の表面
に後述する層2aが形成されていることを除いては、前
記した材料Aと同じ層構造になっている。この材料B1
は、前記した製造方法Aによって形成したCuCl,C
uBr,CuIなどから成る化合物の層2(図1)に対
し、加水分解処理を施すことによって製造される(製造
方法B1 )。
【0045】このときに適用する加水分解処理として
は、図1で示した材料Aの層2に対して、例えば、上水
やイオン交換水を噴霧したり、また、材料Aを水中に浸
漬したり、更には、相対湿度が90%以上の雰囲気に材
料Aを暴露したりすればよい。このとき、水温を60℃
程度にまで加温して用いると、層2の加水分解反応が促
進されるので好適である。処理時間は格別限定されるも
のではないが、層2の加水分解反応を充分に進めるため
には、層2の保水または保湿状態や結露状態が1分間以
上確保されているような時間であることが好ましい。
【0046】CuCl層に加水分解処理を充分に施した
のち、その層に対してX線回折分析を行うと、Cu2
の回折ピークを得ることができる。しかし、CuClや
CuCl2 の回折ピークは得られない。また、EPMA
(Electron Probe X-ray Micro Analyger)分析を行う
と、CuとClを検出することができる。このようなこ
とから、CuCl層を形成したのち、ただちに加水分解
処理を行うと、式(1) で示したように、CuClはCu
2 OとHClに分解するが、HClを構成するCl成分
は加水分解処理後の層(図2の層2a)から流出するこ
となく、大半はCu成分との間で非晶質化合物を形成し
て残存していると考えられる。
【0047】そして、層2aの中には、式(1) の反応で
生成したCu2 Oも含有されているので、結局、層2a
には、前記した非晶質化合物とCu2 Oとが混在した状
態で含有されている。この層2aの場合、非晶質状態で
存在するCl成分が、屋外環境に微量ではあれ存在する
SO2 ,SO3 2- ,SO4 2- などを優先的に捕捉する能
力を備えているので、この材料B1 は、材料Aに比べ
て、基材表面に塩基性硫酸銅(天然緑青)を一層短時間
のうちに発錆させることができるので有用である。
【0048】また、この材料B1 の場合、加水分解処理
が不充分でいまだ層2aにCuClが残存しているよう
なときであっても、充分に実使用に耐える。例えば、屋
根材として実使用した場合、施工後の降雨などによっ
て、残存するCuClの加水分解反応が進行して、比較
的短期間のうちに、最終的には、施工前の加水分解反応
を充分に行った場合と同等な状態になるからである。
【0049】次に、本発明の材料B2 について説明す
る。この材料B2 は、図3で示したように、基材1の表
面に後述する層2bが形成されている。この層2bを形
成するに当たっては、まず、前記した製造方法B1 によ
り、層2aをCuとClから成る非晶質化合物およびC
2 Oを含む特定の層として形成して材料B1 を製造
し、ついで、この特定の層に対し酸化処理が施される
(製造方法B2)。
【0050】このときに適用する酸化処理としては、単
純に材料B1 を屋外暴露してもよいが、例えば相対湿度
が90%で温度40℃以上の大気雰囲気や、紫外線,オ
ゾンなどの強酸化性ガスを含有する雰囲気に暴露するこ
とをあげることができる。このときの処理時間は、暴露
雰囲気の酸化性の強弱によっても異なるが、概ね、1〜
5分間程度であればよい。処理時間は格別限定されるも
のではないが、あまり長くなると、非晶質状態のCl成
分の含有量が少なくなり、そのため、前記したSO2
SO3 2- ,SO4 2- などの捕捉作用が弱まり、天然緑青
を短期間で発錆する能力は低下する。
【0051】CuとClの非晶質化合物とCu2 Oが混
在している層2aに対して酸化処理を施したのち、その
層に対しX線回折分析を行うと、Cu2Oの外に、Cu
Cl2 ・3Cu(OH)2の結晶を示す回折ピークが認め
られる。しかし、CuClの回折ピークは認められな
い。また、EPMA分析を行うと、CuとClを検出す
ることができる。
【0052】このようなことから、酸化処理後の層2b
は、CuとClの非晶質化合物と、Cu2 Oと、緑青の
1つである塩基性塩化銅とが同時に含まれている。そし
て、この材料B2 を屋外暴露すると、式(2) 〜式(9) で
示したような反応が複合して生起することにより、3〜
4ヶ月経過後には、その表面に、最終目標とする塩基性
硫酸銅(天然緑青)が発錆する。
【0053】次に、本発明の材料C1 について説明す
る。この材料C1 は、図4で示したように、基材1の表
面に、層2が形成され、更にその層2の上に人工緑青の
層3が形成された構造になっている。ここで、層2は、
材料Aの場合と同じように、CuCl,CuBr,Cu
Iの群から選ばれる少なくとも1種の化合物で形成され
ている。その理論厚み(T)は、材料Aの場合と同じ理
由により、0.1μm以上になっている。
【0054】そして、人工緑青の層3は、材料の耐候性
を確保するために、その厚みは5μm以上に設定するこ
とが必要である。この材料C1 は次のようにして製造す
ることができる(製造方法C1)。すなわち、まず最初
に、基材1の表面に人工緑青の層3を厚み5μm以上の
厚みで形成する。
【0055】人工緑青の層3を形成する方法としては、
緑青粉末を混合した樹脂塗料で基材表面を被覆するとい
う方法を除けば、従来から人工緑青の形成のために用い
られていた方法であればどのような方法であっても適用
することができる。前記した塗料塗布の方法は、基材表
面を液密に被覆してしまい、基材表面に対する後述する
アノード酸化ができなくなってしまうからである。
【0056】なお、人工緑青の層3を形成するに先立
ち、製造方法Aで説明したように、基材表面を粗面化し
ておくと、基材表面と後述する層2と人工緑青の層3と
の相互密着性が良好になるので好適である。ついで、製
造方法Aと同様の条件で基材全体に対してアノード酸化
処理を行う。
【0057】このとき、アノード酸化をアノード(基
材)とカソード間の極間電圧が25V以上に上昇するま
で行うと、基材表面と層2と人工緑青の層3との相互密
着性を高めることができるので好適である。その理由は
以下のとおりである。すなわち、アノード酸化を開始す
る時点では、基材表面には既に絶縁性の人工緑青の層3
が形成されているので、当初からアノード(基材)とカ
ソード間の極間電圧は比較的高い値になっており、アノ
ード酸化を進めるにつれてアノード(基材)には化合物
の層の形成が進むとともに、極間電圧は次第に上昇して
いく。そして、アノード(基材)側は高電場状態にな
り、その結果、形成されつつある化合物の層や人工緑青
の層を当該アノード(基材)の方に押しつける圧迫力が
作用するようになるからである。しかし、極間電圧を高
くしすぎても前記した相互密着性は飽和状態になり、徒
に電力コストを高めることになってしまうので、極間電
圧が25〜50Vの範囲でアノード酸化を行うことがと
くに好ましい。
【0058】このようにして、人工緑青の層3の下に位
置する基材表面には、CuCl,CuBr,CuIなど
から成る化合物の層2が理論厚み0.1μm以上の厚みで
形成される。すなわち、基材表面と人工緑青の層3の界
面には前記した層2が介在する材料C1 が得られる。こ
の材料C1 は、最外層が人工緑青の層3で構成されてい
るので、製造直後の段階から美麗な緑青色調を発現して
いる。そして、屋外暴露されると、時間経過とともに、
下地層である化合物の層2の加水分解反応が進むと同時
に、層2が大気中のS成分やCl成分などを優先的に捕
捉し、式(1) 〜式(9) で示した反応により、天然緑青へ
転化していく。
【0059】次に、本発明の材料C2 について説明す
る。この材料C2 は、図5で示したように、基材1の表
面に後述する層3aが形成されている。この層3aは、
CuCl,CuBr,CuIの群から選ばれる少なくと
も1種の化合物と、材料C1 で説明した人工緑青とが混
合して成る混合層である。そして、この層3aは、材料
の耐候性を確保するために、その厚みは5μm以上に設
定されている。
【0060】この材料C2 は次のようにして製造するこ
とができる(製造方法C2)。すなわち、まず最初に、製
造方法Aと同様にして基材表面をアノード酸化(第1の
アノード酸化)して前記した化合物の層を形成する。つ
いで、得られた基材に対し、後述する水溶液の中で第2
のアノード酸化を行う。このときの水溶液としては、N
aHCO3 やNH4 HCO3 などを溶解し、HCO3 -
が含まれている水溶液;または、Na2 CO3 、(NH
4)2 CO3 とNaHCO3 などを同時に溶解し、CO3
2- とHCO3 - とが同時に含まれている水溶液が使用さ
れる。
【0061】この第2のアノード酸化により、CuCO
3 ・3Cu(OH)2で示される塩基性炭酸銅系の人工緑
青が生成する。このとき、生成する人工緑青は、基材表
面に既に形成されている前記化合物の層の理論厚み
(T)が高々2〜3μm程度と非常に薄いので、この化
合物の層を取り込んだ状態で成膜されていく。そして、
その人工緑青の層の厚みが5μm以上となるまで第2の
アノード酸化が行われる。
【0062】この第2のアノード酸化は、アノード(基
材)とカソード間の極間電圧が25V以上に上昇するま
で行われることが好ましい。その理由は、製造方法C1
で説明したとおりである。この材料C2 の場合も、前記
した材料C1 と同じように、表層面は人工緑青になって
いるので、製造直後の段階から美麗な緑青色調を呈して
おり、屋外暴露されると、時間経過とともに、全体の層
が短期間で天然緑青に転化していく。
【0063】
【実施例】
実施例1 下記のように、製造方法Aによって材料Aを製造した。
JIS C 1100で規定する質別1/2Hのタフピ
ッチ銅板を用意した。このタフピッチ銅板は冷間圧延あ
がりのままのものであり、縦65mm,横150mm,厚み
0.4mmの寸法形状(片面の表面積は約1dm2)を有し、表
面粗さはRz値で約2μmのものである。
【0064】このタフピッチ銅板に対し、表1で示した
水溶液の中で表示した条件のアノード酸化を行った。カ
ソードとしてはSUS−304を用いた。このとき、一
部のタフピッチ銅板には、下記のサンドブラスト法と交
流電解法を適用して粗面化処理を施した。 サンドブラスト法:JIS R 6001の規定に準拠
する粒度の溶融アルミナ製の研削材(商品名:フジラン
ダム、不二製作所(株)製)を用い、噴射型サンドブラ
スト装置(商品名:ニューマブラスターSGK,不二製
作所(株)製)で実施。このとき、研削材として粒度#
220,#150のものを用い、吹付け圧力を1kg/cm
2 ,3kg/cm2 に変え、処理時間を5〜15秒の範囲で
変化させて、粗面化の程度を変化させた。
【0065】交流電解法:濃度が2.5 mol/dm3 の塩酸
水溶液を電解液(液温は室温)とし、カソード電極とし
てSUS−304を用い、周波数50Hz,電流密度(実
効値)80A/dm2 の条件で実施。スライド変圧器は
(株)東芝製のものを使用。このとき、処理時間を変化
させ粗面化の程度を変化させた。
【0066】
【表1】
【0067】アノード酸化を行った各試料につき、銅板
表面に形成されているCuCl層の理論厚み(T)を計
算した。また、アノード酸化終了直後の銅板表面を目視
観察して、外観評価を行った。評価基準としては、極め
て均一で綺麗な表面である場合を◎,均一で良好な場合
を○,不働態皮膜またはムラなどが認められる場合を△
とした。
【0068】更に、各試料を屋外に暴露してJIS K
5400の規定に準拠する屋外暴露試験を行い、表面
の変色状況を目視観察した。また、屋外暴露の過程で、
試料表面を定期的(1ヶ月周期)にX線回折装置(リガ
ク(株)製)で分析し、天然緑青(塩基性硫酸銅)の発
錆の有無を観察した。天然緑青が発錆した時点を天然緑
青発錆確認年月数とした。
【0069】また、屋外暴露を継続し、試料表面が全面
に亘って均一に緑青色に変化するまでの年数を調べた。
それを緑青均一発錆年数とした。以上の結果を一括して
表2に示した。
【0070】
【表2】
【0071】表1と表2から明らかなように、試料1〜
19は、いずれも、銅板それ自身(試料21)に比べて
天然緑青の発錆する期間が大幅に短縮している。そし
て、試料20は、屋外暴露の直後から変色しはじめる
が、天然緑青の発錆が確認されるまでに5年の年月を要
し、また均一な緑青で覆われるまでには14年という長
大な時間を必要としている。これは、アノード酸化によ
って形成されたCuCl層の理論厚みが0.07μmであ
り、0.1μm未満であったからである。なお、CuCl
層の理論厚みを0.1μmにすると、試料6,13から明
らかなように、天然緑青が発錆する期間は試料21(銅
板単独)のときの半分以下に短縮させることができる。
【0072】アノード酸化時の液温が15℃を超える場
合(試料11〜13)には、緑青の均一発錆年数の長期
化が急速に進んでいる。とくに試料13の場合のように
液温を25℃にすると、形成されるCuCl層の厚みが
急激に薄くなり、またCu2Oが生成して外観ムラを生
じ、しかも緑青の均一発錆年数も9年と長期化してい
る。また、液温をマイナス温度にしても(試料9の場
合)、0℃にしても(試料10の場合)、天然緑青の発
錆能に大差は生じていない。したがって、冷却コストの
ことを考慮すると、アノード酸化時の液温は0〜20
℃、とくに0〜15℃に設定することが好ましい。
【0073】試料2〜4の場合のように、アノード電流
密度が高くなるにつれて、天然緑青の均一発錆年数は長
期化する。とくに、2.5A/dm2 を超える場合(試料
4)には、表面の一部に不働態皮膜が形成され、天然緑
青の発錆開始がかなり遅れている。したがって、不働態
皮膜の形成を確実に防ぐためには、アノード酸化時の電
流密度を1.5A/dm2 以下に設定することが好ましい。
【0074】また、水溶液のpH値が低くなると(試料
6の場合)、形成されたCuCl層の再溶解が起こって
その厚みが0.1μmと薄くなっており、そのため、天然
緑青の均一発錆年数は長期化している。このCuCl層
の理論厚みを0.1μm以上にするためには、水溶液のp
H値を4以上、とくに7以上にすることが好ましいこと
が判る。したがって、アノード酸化時の水溶液として
は、上記したpH値を維持しやすい組成のものを用いる
ことが好ましい。
【0075】Rz値が5μm以上のもの(試料15,1
6,18,19)は天然緑青の発錆確認年数と均一発錆
年数のいずれもが他のものに比べて相対的に短期化して
いる。そして、Rzを10μm程度にすると、適用した
粗面化方法による差異が現れてくる。すなわち、交流電
解法で粗面化した場合(試料19)には、屋外暴露後1
年で均一な天然緑青が発錆し、これはサンドブラスト法
を適用した場合(試料16)に比べても短期化してい
る。これは、交流電解法によって形成される凹凸が極め
て微細であるからである。
【0076】なお、実施例1で用いた銅板をCl- 系酸
化剤を含む化成処理液に浸漬して化成処理したのち、そ
の表面をX線回折分析したところ、主に、Cu2 Oが生
成していて実施例のように、CuCl層の均一な生成は
認められなかった。 実施例2 実施例1で用いたタフピッチ銅板に対し、表3で示した
仕様で、その表面にCuBr層,CuI層を形成した。
得られた試料に対し実施例1の場合と同様に屋外暴露試
験を行い、表面変化を調べた。その結果を表3に示し
た。
【0077】
【表3】
【0078】表3から明らかなように、試料22〜25
はいずれも、銅板単独(前記した試料21)の場合に比
べて天然緑青の発錆に要する期間が大幅に短縮してい
る。しかし、CuCl層を形成した場合(例えば試料
2,9)に比べると若干長期化している。 実施例3 製造方法B1 によって材料B1 を製造した。
【0079】すなわち、まず寸法形状は実施例1で用い
たタフピッチ銅板と同じであり、JIS C 1201
で規定する質別1/2Hのリン脱酸銅板を用意し、その
表面に対し、表4で示した仕様に基づいて、表示した理
論厚みのCuCl層が形成されるようなアノード電解を
行い、一旦、材料Aを製造した。
【0080】
【表4】
【0081】これらの試料の表面に、50℃に加温した
イオン交換水を噴霧して保水状態を5分間保持すること
により、CuCl層に対する加水分解処理を行って製造
方法B1 を終了した。得られた各試料につき、製造直後
の表層部に対してX線回折分析を行って生成物を同定
し、またEDX分析装置(Energy Dispersive X-ray sp
ectrometer)にかけて層中の成分を検出した。なお、ア
ノード酸化終了後の時点(加水分解処理前の時点)で
は、実施例1の場合と同じ評価基準で外観評価を行っ
た。
【0082】更に、各試料に対しては、実施例1の場合
と同じ屋外暴露試験を行い、天然緑青発錆確認年月数と
緑青均一発錆年数を測定した。以上の結果を表5に示し
た。
【0083】
【表5】
【0084】表4と表5から明らかなように、製造方法
1 によって得られる材料B1 も、材料Aと同じよう
に、短期間で天然緑青を発錆する材料になっている。そ
して、加水分解が完全に進んでいない場合(試料45の
場合)、すなわちCuClが残存している場合であって
も、1年の屋外暴露後にはその表面に天然緑青が均一に
発錆しており、CuClの残存は何ら支障を来すもので
はないことが判る。
【0085】また、表層部の分析結果から明らかなよう
に、アノード酸化して形成したCuCl層に加水分解処
理を施すと、その層は、CuとCの非晶質化合物,Cu
2 Oを含む層になることが判る。 実施例4 実施例3で用いたリン脱酸銅板に対し、表6で示した仕
様でその表面にCuBr層,CuI層を形成し、ついで
その層に、実施例3の場合と同様の加水分解処理を行っ
た。得られた試料につき、実施例3の場合と同じように
して、表層部の分析と屋外暴露試験を行った。
【0086】その結果を一括して表6に示した。
【0087】
【表6】
【0088】表6から明らかなように、銅板の表面をア
ノード酸化してCuBr層,CuI層を形成したのちそ
の層に加水分解処理を行った場合であっても、その材料
は短期間で天然緑青を発錆している。しかし、発錆に要
する期間はCuCl層の場合に比べると若干長期化して
いる。
【0089】実施例5 次のようにして、製造方法B2 を行って材料B2 を製造
した。すなわち、表4と表5で示した各試料のうち、試
料26,試料31,試料41,試料44,試料45およ
び試料46を、更に相対湿度80%,温度60℃の大気
雰囲気中に暴露して加水分解処理後の層に酸化処理を施
した。
【0090】処理直後の各試料の表層部を実施例4と同
じようにして分析し、また実施例3の場合と同じような
屋外暴露試験を行った。その結果を表7に示した。
【0091】
【表7】
【0092】表7から明らかなように、CuCl層を加
水分解した層に更に酸化処理を行うと、その層には塩基
性塩化銅が生成し、全体としては、CuとClから成る
非晶質化合物とCu2 Oと塩基性塩化銅で構成されてい
る。そして、表7の結果を表5と比較して明らかなよう
に、材料B1 の表面に更に酸化処理を施して材料B2
した場合であっても、天然緑青が発生する期間は短くな
っている。
【0093】実施例6 次のようにして、製造方法C1 により材料C1 を製造し
た。まず、実施例3で用いたリン脱酸銅板に、CuSO
4・5H2 O:10g/dm3,NH4 Cl:20g/dm
3 ,NaCl:30g/dm3 ,酒石酸:10g/dm3
ら成る組成の化成処理液を反復してスプレ塗布し、銅板
の表面に表8で示した厚みの人工緑青の層を形成した。
【0094】また、一部の銅板に対しては、炭酸水素ア
ンモニウム:0.3 mol/dm3 ,カルバミン酸アンモニウ
ム:0.3 mol/dm3 ,モリブデン酸アンモニウム:0.0
05mol/dm3 から成り、pH8の電解液(液温25
℃)を用い、アノード電流密度20A/dm2 でアノード
酸化を極間電圧が45Vになるまで行って、銅板の表面
に表示した厚みの人工緑青の層を形成した。
【0095】ついで、各銅板に対し、表8と表9に示し
た組成の水溶液中で表示の条件で表示の理論厚みのCu
Cl層が形成されるようなアノード酸化処理を行った。
このとき、銅板とカソード(SUS−304)間の極間
電圧を測定し続け、表示した極間電圧を示した時点でア
ノード酸化を終了した。得られた各試料につき、その断
面を電子顕微鏡で観察することにより形成された全体の
層の厚みを測定すると同時に、層構造を観察した。
【0096】各試料の製造条件と仕様を一括して表8と
表9に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】各試料の表面を目視観察して外観評価を行
った。評価基準としては、極めて均一で綺麗な場合を
◎,均一で良好な場合を○,ムラが生じている場合を
△,層の剥離が認められる場合を×とした。また、各試
料の一部を縦30mm,横30mmの寸法に切り出して試片
とし、その試片に対し、JIS G 3312で規定す
る方法に準拠して180°折り曲げる密着性試験を行
い、層の剥離状態を観察してその密着性を評価した。
【0100】層が健全である場合を○,層にクラックが
認められるが剥離は起こしていない場合を5,点状にわ
ずかに剥離を起こしている場合を4,若干剥離する場合
を3,試片の1/2程度まで剥離する場合を2,試片の
2/3程度まで剥離する場合を1,全面剥離した場合を
×とした。更に各試料に対して実施例3の場合と同じ屋
外暴露試験を行い、天然緑青発錆確認年月数と緑青均一
発錆年数を調べた。以上の結果を表10に示した。
【0101】
【表10】
【0102】表8、表9から明らかなように、製造方法
1 で製造した材料C1 は、いずれも、銅板の表面にC
uCl層が形成され、そのCuCl層の上に人工緑青の
層が位置する層構造になっている。そのため、この材料
1 は、製造直後から表面は美麗な緑青の色調になって
いる。そして、表10から明らかなように、試料78で
は人工緑青の層が剥離してしまい、天然緑青の発錆は認
められない。しかし、試料57〜75の材料C1 は、天
然緑青が均一に発錆し、しかも、実施例1の表2におけ
る試料21(銅板単独)に比べれば天然緑青の発錆に要
する期間は短くなっている。
【0103】また、試料76の場合は、天然緑青が発錆
するまでの期間は7年と他のものに比べて長期になって
いるが、これは、アノード酸化時に形成したCuCl層
の理論厚みが0.07μmと薄いため、大気中のS成分の
捕捉作用が弱かったためである。しかし、CuCl層の
理論厚みを0.1μmにすれば、試料65で明らかなよう
に、天然緑青が発錆しはじめる期間は約半減する。
【0104】また、試料77の場合は、最終的には天然
緑青が均一に発錆しているが、人工緑青の層の厚みが5
μm未満であるため、屋外暴露後、短期間で人工緑青の
層が剥離し、それ以降、天然緑青の均一発錆まで汚い表
面状態になっている。 実施例7 実施例6で用いた銅板に対し、実施例6の化成処理によ
る仕様の人工緑青の層を形成し、更に表示した条件のア
ノード酸化を行ってCuBr層,CuI層を形成した。
そして、得られた試料につき、実施例6と同様の評価を
行った。その結果を一括して表11に示した。
【0105】
【表11】
【0106】表11から明らかなように、CuBr層,
CuI層を形成した場合であっても、天然緑青が6〜8
年の年月で均一に発錆している。しかし、CuCl層を
形成したものに比べると、天然緑青が均一に発錆するま
での期間は長くなっている。 実施例8 つぎのようにして、製造方法C2 で材料C2 を製造し
た。
【0107】まず、実施例6で用いた銅板の表面に対
し、実施例1の試料2と同じ条件で第1のアノード酸化
を行って、理論厚みが1.0μmのCuCl層を形成し
た。ついで、この銅板を、炭酸水素アンモニウム:0.3
mol/dm3 ,カルバミン酸アンモニウム:0.3mol/dm
3 ,モリブデン酸アンモニウム:0.005mol/dm3から
成りpH8の水溶液(液温25℃)に浸漬し、アノード
電流密度20A/dm 2 で、極間電圧が45Vになるまで
第2のアノード酸化を行い、表11で示した厚みの人工
緑青の層を形成した。
【0108】得られた各試料につき、実施例6の場合と
同様の評価を行った。その結果を表12に示した。
【0109】
【表12】 表12から明らかなように、材料C2 も短期間で天然緑
青が均一に発錆している。しかし、試料85でわかるよ
うに、全体の層の厚みが5μmより薄くなると層剥離が
起こり、天然緑青は定着しなくなってしまう。
【0110】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
材料は、屋外暴露されると製造直後からただちに変色し
はじめ、極めて短期間のうちに表面が天然緑青の色調に
転化していく。これは、CuまたはCu合金から成る表
面にアノード酸化を行うことにより、CuCl,CuB
r、またはCuIを形成して、天然緑青の発錆媒体であ
るCu2 Oが迅速に形成されるようにしたからである。
また、請求項4と請求項5の材料は、いずれも、人工緑
青と組み合わせたものになっているので、製造直後から
緑青の色調を示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の材料Aを示す断面図である。
【図2】本発明の材料B1 を示す断面図である。
【図3】本発明の材料B2 を示す断面図である。
【図4】本発明の材料C1 を示す断面図である。
【図5】本発明の材料C2 を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材 2 化合物(CuCl,CuBr,CuI)の層 2a CuとCl(CuとBr、CuとI)とから成る
非晶質化合物とCu2Oを含む層 3 人工緑青の層 3a 人工緑青とCuCl(CuBr,CuI)の混合

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、CuCl,CuBr,CuI
    の群から選ばれる少なくとも1種の化合物の層が、0.1
    N KCl水溶液中でカソード還元したときの還元電気
    量から求めた理論厚みとして0.1μm以上の厚みで形成
    されていることを特徴とする天然緑青易発錆性材料。
  2. 【請求項2】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、CuとClとから成る非晶質
    化合物、CuとBrとから成る非晶質化合物、およびC
    uとIとから成る非晶質化合物の群から選ばれる少なく
    とも1種の非晶質化合物ならびにCu2 Oを含む層が形
    成されていることを特徴とする天然緑青易発錆性材料。
  3. 【請求項3】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、CuとClとから成る非晶質
    化合物、Cu2 O、および塩基性塩化銅を含む層が形成
    されていることを特徴とする天然緑青易発錆性材料。
  4. 【請求項4】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、CuCl,CuBr、および
    CuIの群から選ばれる少なくとも1種の化合物の層
    が、0.1N KCl水溶液中でカソード還元したときの
    還元電気量から求めた理論厚みとして0.1μm以上の厚
    みで形成され、更に前記化合物の層の上に人工緑青の層
    が形成されていることを特徴とする天然緑青易発錆性材
    料。
  5. 【請求項5】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、CuCl,CuBr,および
    CuIの群から選ばれる少なくとも1種の化合物と人工
    緑青との混合物から成る厚み5μm以上の層が形成され
    ていることを特徴とする天然緑青易発錆性材料。
  6. 【請求項6】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、Cl- ,Br- およびI-
    群から選ばれる少なくとも1種のハロゲンイオンを含有
    し、かつ液温が20℃以下である水溶液の中でアノード
    酸化を行って、前記基材の表面に、CuCl,CuB
    r,CuIの群から選ばれる少なくとも1種の化合物の
    層を形成することを特徴とする天然緑青易発錆性材料の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 Cl- ,Br- およびI- の群から選ば
    れる少なくとも1種のハロゲンイオンを含有し、かつ液
    温が20℃以下である水溶液の中で、少なくとも表面が
    CuまたCu合金から成る基材の前記表面をアノード酸
    化して、前記表面に、CuCl,CuBr,およびCu
    Iの群から選ばれる少なくとも1種の化合物の層を、そ
    の層の厚みが0.1NKCl水溶液中でカソード還元した
    ときの還元電気量から求めた理論厚みとして0.1μm以
    上となるように形成し、ついで、前記化合物の層に加水
    分解処理を行うことを特徴とする天然緑青易発錆性材料
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 Cl- を含有し、かつ液温が20℃以下
    である水溶液の中で、少なくとも表面がCuまたCu合
    金から成る基材の前記表面をアノード酸化して、前記表
    面に、CuClの層を、その層の厚みが0.1NKCl水
    溶液中でカソード還元したときの還元電気量から求めた
    理論厚みとして0.1μm以上となるように形成し、つい
    で、前記CuClの層に加水分解処理を施し、更に、前
    記加水分解処理後の層に酸化処理を施すことを特徴とす
    る天然緑青易発錆性材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 少なくとも表面がCuまたはCu合金か
    ら成る基材の前記表面に、厚み5μm以上の人工緑青の
    層を形成し、ついで、Cl- ,Br- およびI-の群か
    ら選ばれる少なくとも1種のハロゲンイオンを含有し、
    かつ液温が20℃以下である水溶液の中で、前記基材に
    対してアノード酸化を行い、前記人工緑青の層と前記基
    材の表面との界面に、CuCl,CuBr、およびCu
    Iの群から選ばれる少なくとも1種の化合物の層を、そ
    の厚みが0.1μmNKCl水溶液中でカソード還元した
    ときの還元電気量から求めた理論厚みとして0.1μm以
    上となるように形成することを特徴とする天然緑青易発
    錆性材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 Cl- ,Br- およびI- の群から選
    ばれる少なくとも1種のハロゲンイオンを含有し、かつ
    液温が20℃以下である水溶液の中で、少なくとも表面
    がCuまたはCu合金から成る基材の前記表面に第1の
    アノード酸化を行って、前記表面に、CuCl,CuB
    rおよびCuIの群から選ばれる少なくとも1種の化合
    物の層を形成し、ついで、HCO3 - を含有する水溶液
    またはCO3 2- とHCO3 - とを含有する水溶液の中
    で、前記基材に対して第2のアノード酸化を行って、人
    工緑青と前記化合物との混合物から成る厚み5μm以上
    の層を形成することを特徴とする天然緑青易発錆性材料
    の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記アノード酸化をアノード電流密度
    0.1〜1.5A/dm2 で行う請求項7、8、9または1
    0の天然緑青易発錆性材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記水溶液のpH値は4以上である請
    求項7、8、9または10の天然緑青易発錆性材料の製
    造方法。
  13. 【請求項13】 前記アノード酸化を、アノードとカソ
    ードの間の極間電圧が25V以上になるまで行う請求項
    9の天然緑青易発錆性材料の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記第1のアノード酸化をアノード電
    流密度0.1〜1.5A/dm2 で行う請求項10の天然緑
    青易発錆性材料の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記第2のアノード酸化を、アノード
    とカソードの間の極間電圧が25V以上になるまで行う
    請求項10の天然緑青易発錆性材料の製造方法。
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JP2010229555A (ja) * 2010-07-12 2010-10-14 Kme Italy Spa 銅材料の表面上に無機被覆層を形成するための電気化学的方法

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