JPH09165697A - 緑青銅板風着色Ti材またはTi合金材およびその製造方法 - Google Patents

緑青銅板風着色Ti材またはTi合金材およびその製造方法

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JPH09165697A
JPH09165697A JP13884596A JP13884596A JPH09165697A JP H09165697 A JPH09165697 A JP H09165697A JP 13884596 A JP13884596 A JP 13884596A JP 13884596 A JP13884596 A JP 13884596A JP H09165697 A JPH09165697 A JP H09165697A
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treatment
oxide film
degrees
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colored
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JP13884596A
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Takashi Yashiki
貴司 屋敷
Yoshitaka Yamamoto
喜孝 山本
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 緑青銅板に極めて似た色調を有し、寺社や仏
閣の屋根材等として有用な緑青銅板風着色Ti材または
Ti合金材、およびその様な着色Ti材またはTi合金
材を製造するための有用な方法を提供する。 【解決手段】 TiまたはTi合金からなる基材表面
に、酸洗、サンドブラスト処理、ショットブラスト処
理、ホーニング処理またはダルロールを用いた圧延処理
等の粗面化処理を施し、入射角:45度、受光角:45
度で測定したときの表面における光沢度を50%以下に
した後、陽極酸化処理を施してTi酸化物皮膜を形成
し、その表面を緑青銅板風に着色する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、寺社や仏閣の屋根
材等として従来から用いられてきた緑青銅板に似せた着
色Ti材またはTi合金材およびその製造方法に関する
ものであり、殊に緑青銅板が有する欠点である酸性雨に
よる腐食や変色等の無い緑青銅板風着色Ti材またはT
i合金材、およびその様な着色Ti材またはTi合金材
を製造するための有用な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、寺社や仏閣の屋根材等として
は、銅板が好まれて用いられてきた。この理由は、長い
年月をかけると、大気中の酸素、水蒸気、炭酸ガスおよ
び塩分等が銅と反応して銅板の表面に緑青が形成され、
緑青が有する独特の落ち着いた雰囲気を醸し出すからで
ある。また比較的清浄な大気中では、緑青が防食作用を
発揮して、数百年の耐久性を示すこともその理由の一つ
として挙げられる。
【0003】しかしながら、近年では大気汚染が進み、
これによる亜硫酸ガス、硫化水素および酸性雨のため
に、銅板表面に緑青むらや腐食が発生するという問題が
顕在化しつつある。
【0004】一方、ビル等の建築物の外装材として、近
年Ti材またはTi合金材(以下、Ti材で代表するこ
とがある)が注目されつつある。これは、前記した亜硫
酸ガス、硫化水素および酸性雨環境、更には塩水飛来環
境においても腐食されないという、Ti材が有している
優れた耐食性が認められたからである。こうしたTi材
が有する優れた耐食性は、その表面に存在するTi酸化
物皮膜が上記各環境下で優れた耐食性を発揮することに
よるものである。
【0005】またTi材は、陽極酸化法等でその表面に
Ti酸化物皮膜を形成することによって、白、黒、グレ
ーおよび赤以外の有彩色、例えば黄金色,茶色,青色,
黄色,紫色,緑色,黄緑色,桃色等に着色することが可
能である。こうした着色は、前記Ti酸化物皮膜による
光の干渉作用を利用したものであり、色調は陽極酸化処
理時の電解電圧(以下、「陽極酸化電圧」と呼ぶ)を調
整してTi酸化物皮膜の厚さを変化させることによって
制御できる。しかもこの着色皮膜は、Ti酸化物皮膜で
あるので、未着色Ti材と同様に亜硫酸ガス、硫化水素
および酸性雨環境、更には塩水飛来環境においても優れ
た耐食性が期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記した
技術背景の下で、前記陽極酸化法によりTi材(または
Ti合金材)表面を緑青色に着色できれば、寺社や仏閣
の屋根材等として用いられている銅板に代わり得る材料
となり、且つ銅板における腐食や変色の問題が解決され
るのではないかと考えた。しかしながら、緑青色は単純
な色ではなく、有彩色にグレーが混ざった色調であり、
陽極酸化法だけでは希望する色調に発色することは困難
であった。
【0007】この発明は以上の様な事情に鑑みてなされ
たものであって、その目的は、緑青銅板に極めて似た色
調を有し、寺社や仏閣の屋根材等として有用な緑青銅板
風着色Ti材またはTi合金材、およびその様な着色T
i材またはTi合金材を製造するための有用な方法を提
供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明方法とは、TiまたはTi合金からなる基材表面に
粗面化処理を施し、入射角:45度、受光角:45度で
測定したときの表面における光沢度を50%以下にした
後、陽極酸化処理を施してTi酸化物皮膜を形成し、そ
の表面を緑青銅板風に着色する点に要旨を有するもので
ある。
【0009】上記方法において、陽極酸化処理により形
成されたTi酸化物皮膜の厚さは、800〜6000Å
であることが好ましく、この範囲内ではその色調が緑青
銅板に最も近いTi材またはTi合金材を得ることがで
きる。また上記粗面化処理としては、具体的には、酸
洗、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、ホー
ニング処理またはダルロールを用いた圧延処理等が挙げ
られ、いずれの処理を採用しても前記光沢度を50%以
下にすれば良い。更に、陽極酸化処理を施した後、15
0℃以上で30秒以上の熱処理を行なうことも有効であ
り、これによって陽極酸化皮膜の密着性を向上させるこ
とができる。
【0010】一方、上記目的を達成し得た本発明のTi
材またはTi合金材とは、TiまたはTi合金からなる
基材表面に形成されたTi酸化物皮膜の厚さが800〜
6000Åであると共に、入射角:45度、受光角:4
5度で測定したときの表面における光沢度が50%以下
である点に要旨を有するものであり、この様な着色Ti
材またはTi合金材では、その色調が緑青銅板に最も近
いものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、下記(1)〜
(3)の要件を満足させれば、Ti材の表面を緑青色に
発色できるものと考えた。 (1)Ti材表面に緑系の色調を付加する (2)この緑色にグレー系の色調を付加する (3)Ti材表面の金属光沢を取り除く
【0012】上記の要件のうち、(1)については陽極
酸化電圧を適切に調整して陽極酸化処理を施すことによ
って可能であるが、(2),(3)については不可能で
ある。また製造工程を複雑にしないためには、(2),
(3)の要件は一つの処理によって達成することが好ま
しい。そこで本発明者らは、こうした要件(2),
(3)を満足させる手段について、様々な角度から鋭意
研究を重ねた。
【0013】その結果、陽極酸化処理に先立ち、Tiま
たはTi合金からなる基材表面に、例えば酸洗、サンド
ブラスト処理、ショットブラスト処理、ホーニング処理
またはダルロールを用いた圧延処理等の粗面化処理を行
なえば、要件(2),(3)を一挙に満足させることが
できることを見出した。
【0014】またこうした粗面化処理を行なった後、燐
酸水溶液中において種々の電圧で陽極酸化処理を行な
い、陽極酸化電圧、Ti酸化物皮膜の厚さおよびその色
調の関係について調査した。その結果、酸洗、サンドブ
ラスト処理、ショットブラスト処理、ホーニング処理ま
たはダルロールを用いた圧延処理のいずれを行なった場
合でも、入射角:45度、受光角:45度で測定したと
きの表面における光沢度を50%以下にしておけば、そ
の後の陽極酸化処理で表面状況に応じた適切な電圧を印
加してTi酸化物皮膜を形成することで、その色調を緑
青色に発色できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】尚緑青色に発色する場合のTi酸化皮膜の
厚さは、粗面化処理の方法および時間等によって違いが
生じるので(即ち処理方法や処理条件等によって表面形
態が微妙に異って付与されるグレーの色調が微妙に異な
る)、それを厳密に規定することは難しいが、本発明者
らが検討したところによると、Ti酸化皮膜の厚さが8
00〜6000Åの範囲において特に緑青色に近い色調
が得られた。
【0016】燐酸水溶液中において種々の電圧で陽極酸
化処理を行なったときの、陽極酸化電圧、Ti酸化物皮
膜の厚さおよびその色調の関係の一例を図1に示す。こ
の図1は、粗面化処理をダルロールによる圧延で行った
場合と、ホーニング処理で行った場合を示しており、い
ずれの場合も粗面化処理により光沢度を25%(入射
角:45度、受光角:45度)にした後、陽極酸化処理
を行なったものである。そしてTi酸化皮膜の厚が80
0〜6000Åの範囲において特に緑青色に近い色調が
得られたが、この範囲を外れた厚さの領域においても概
略緑青色と認識できる程度の色調が得られていた。
【0017】ところで、Ti表面に着色する方法として
は、陽極酸化法以外に大気酸化法や酸化性浴への浸漬法
等が知られているが、本発明ではこのうちの陽極酸化法
を採用するものである。この理由は、下記の通りであ
る。
【0018】陽極酸化法はTiを陽極にして、硝酸や燐
酸浴中で定電圧電解することによって酸化皮膜を生成さ
せる方法であり、色調の種類や華やかさ(高彩度)およ
び色調制御の容易性等の点から最も汎用されている方法
であり、これらの方法は常温で電解することが可能であ
るため熱による材質等の劣化が少なく、基板の種類に制
限がないという利点がある。これに対し、大気酸化法や
酸化性浴への浸漬法は酸化性雰囲気でTiの酸化皮膜を
生成させる方法であるが、この方法は熱による材質等の
劣化が懸念され、また色調の多様性、華やかさ、色調制
御の容易性や色調に均一性などの点で陽極酸化法に劣
る。
【0019】陽極酸化電圧と色調の関係は、使用する電
解液の種類によって異なるのが一般的である。しかしな
がら、陽極酸化処理による発色機構(即ち、Ti酸化物
皮膜を通過する光の干渉作用によって発色する)からす
ると、電解液の種類の如何に拘らず、Ti酸化物皮膜の
厚さが800〜6000Åであれば、特に緑青色に近い
色調に発色できるのである。
【0020】尚本発明に方法においては、サンドブラス
ト処理等の粗面化処理を行った後、陽極酸化処理に先立
って、脱脂や酸洗等の処理を行っても良く、むしろこれ
らの処理は陽極酸化処理の一部の工程と見なせるもので
ある。また陽極酸化処理を行った後に、150℃以上の
温度で30秒以上の熱処理を行なうことも有効であり、
これによって陽極酸化皮膜の密着性を向上させることが
できる。陽極酸化皮膜の密着性を向上させることは、T
i材を折り曲げて組み合わせ屋根を組む折り板工法に本
発明のTi材(またはTi合金材)を用いても、曲げに
よる変色が発生することなく、美観が損なわれないとい
う効果が得られる(曲げによる変色は、曲げ部での酸化
皮膜の剥離により生ずる)。
【0021】但し、こうした熱処理により酸化皮膜の厚
さが若干変化し、この為にTi材表面の色調が若干変化
することが懸念される。しかしながら、こうした色調の
変化は許容できる範囲のものであり、またその色調変化
を見込んで陽極酸化電圧と熱処理条件を前もって適切な
範囲に設定しておけば、熱処理による不都合を回避する
ことができる。
【0022】熱処理条件は、上記した150℃以上の温
度で30秒以上であって緑青色を保持できる条件下であ
れば適用できるが、作業性、効率、色調の制御性等を考
慮すると、200〜350℃の温度で10分〜2時間程
度という条件であることが好ましい。また上述した様
に、熱処理条件によって酸化皮膜の厚さが若干変化する
が、熱処理後の酸化皮膜厚さが800〜6000Åの範
囲内にあるものは、熱処理を施さないものと同様に特に
緑青銅板に近い色調となった。更に、酸化皮膜の厚さが
上記の範囲を若干外れたものであっても、粗面化処理に
よって、光沢度を50%以下にすると共に、適切な陽極
酸化処理条件と熱処理条件を選定することによって、緑
青色に十分識別できる色調になり得る。
【0023】上記の様な各種方法によって得られたTi
材またはTi合金材のうち、特にTi酸化物皮膜の厚さ
が800〜6000Åであると共に(熱処理を施すか否
かに拘らず)、入射角:45度、受光角:45度で測定
したときの光沢度が50%以下である様な着色Ti材ま
たはTi合金材が、その色調が緑青銅板に最も近いもの
となる。
【0024】本発明においては、Ti酸化物皮膜の厚さ
を規定しているが、この値はAES法(オージェ電子分
光法)によるTi酸化物皮膜の厚さ方向組成分析におい
て、酸素濃度が、最大濃度とベース濃度との中間の濃度
に減少するまでに要したスパッタ時間にスパッタ速度を
乗じて求めたものである(後記図2参照)。またこのと
きのスパッタ速度は、測定時のスパッタ条件でSiO2
をスパッタして求めたものである。図2に、酸化皮膜の
厚さ測定結果の一例を示す。またこのとき用いた具体的
な装置と測定条件を下記に示す。 (装置と測定条件) 機種 :PHI4300走査型オージェ電子分光装置(パーキンエルマー 社製) 一次電子:5kV−300nA ビーム径:<3μmφ 分析領域:同上 スパッタリング:3kV−25mA(Ar+ ) スパッタリング速度:146Å/分(SiO2 換算)
【0025】以下本発明の実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術範囲に含まれるものである。
【0026】
【実施例】
実施例1 請求項1に記載の発明を検証する為に、下記の実験を行
った。まずJIS1種Ti冷圧材を基材とし、この表面
を下記(a)〜(b)のいずれかの方法によって粗面化
処理し、光沢度(入射角:45度、受光角:45度)の
測定を行なった。尚光沢度の測定は、JIS Z 87
41の方法に準拠した。 (a)#100,#220のSiCビーズまたは#10
0,#220のジルコニアビーズによってホーニング処
理(このとき試材−ノズル間距離を種々変更し、粗面化
度合いを種々調整した) (b)ダルロール(ロールの表面粗度が大のもの)によ
る圧延 (c)(5重量%HNO3 +2重量%HF)の水溶液
(35℃)で酸洗
【0027】この後、脱脂→1次酸洗(5容量%HF,
35℃,40秒)→2次酸洗(0.4容量%HF+10
容量%H22 ,25℃,10秒)を行ない、引き続き
1.5%H3 PO4 水溶液中において、種々の電圧でT
i板を対極として陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理
を施した後、前記したAES法によってTi酸化物皮膜
の厚さを測定すると共に、光沢度(入射角:45度、受
光角:45度)の測定を行なった。そして緑青銅板との
色調差を、目視観察によって評価した。その評価基準
は、下記の通りである。その結果を、処理条件と共に下
記表1に示す。 (評価基準) ◎ :緑青銅板との色調差がほとんど無し ○ :◎のものよりは、若干色調差が存在するが、人間
の目で判断して十分に許容できるレベルである △ :○のものよりは、若干色調差が存在するが、人間
の目で判断して許容できるレベルである × :△のものよりは、若干色調差が存在し、人間の目
で判断して許容できないレベルである ××:色調が全く異なる
【0028】
【表1】
【0029】表1から次の様に考察できる。試料No.
1〜8のものは、粗面化処理後の光沢度が50%以下で
あるので、Ti酸化物の厚さが最適な厚さの800〜6
000Åを外れたものであっても(試料No.2,3,
6〜8)、緑青銅板として十分に識別できるレベルの色
調になった。これに対し、試料No.9〜12のもの
は、前記光沢度が50%を超えるものであるので、Ti
酸化皮膜の厚さが800〜6000Åの範囲内であって
も、緑青板との色調差は大きくなっている。
【0030】これらの結果から、Ti材からなる基材表
面に粗面化処理を施し、入射角:45度、受光角:45
度で測定したときの表面の光沢度を50%以下にしてお
けば、その後適切な電圧で陽極酸化処理を施すことによ
って、緑青銅板に比較的近い色調に発色できることが分
かる。
【0031】実施例2 請求項2,3または5に記載の発明を検証する為に、下
記の実験を行った。まずJIS1種Ti冷圧材を基材と
し、この表面を下記(a)〜(b)のいずれかの方法に
よって粗面化処理し、光沢度(入射角:45度、受光
角:45度)の測定を行なった。 (a)#100のアルミナ(Al23 )または#8
0,#220のガラスビーズによってホーニング処理
(ホーニング処理時の空気圧は、いずれも1.5kgf
/cm2 に調整した) (b)3種類のダルロール(ロールの表面粗度が大,
中,小の3種類)のいずれかによる圧延 (c)(5重量%HNO3 +1重量%HF)の水溶液
(40℃)で酸洗
【0032】この後、脱脂→1次酸洗(8容量%HF,
25℃,30秒)→2次酸洗(0.4容量%HF+10
容量%H22 ,25℃,10秒)を行ない、引き続き
1%H3 PO4 水溶液中において、種々の電圧でTi板
を対極として陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理を施
した後、前記したAES法によってTi酸化物皮膜の厚
さを測定すると共に、光沢度(入射角:45度、受光
角:45度)の測定を行なった。そして緑青銅板との色
調差を、実施例1と同様にして評価した。その結果を、
処理条件と共に下記表2および3に示す。尚表3には、
圧延のままホーニング処理等の粗面化処理を施さずに陽
極酸化処理を施したもの(試料No.33)や、圧延後
極短時間の酸洗をして粗面化処理が不十分な基材に陽極
酸化処理を施したもの(試料No.34,40)等につ
いても比較例として示した。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】表2、3から次の様に考察できる。試料N
o.1〜32のものは、本発明で規定する要件を満足す
る実施例であるが、特に試料No.1〜27のものは、
Ti酸化物の厚さが800〜6000Åであると共に、
入射角:45度、受光角:45度で測定したときの表面
における陽極酸化処理後の光沢度が50%以下(粗面化
処理後の光沢度も50%以下である)という要件のいず
れも満足するものであるので、緑青銅板に非常に近い色
調であった。また試料No.28〜32のものは、粗面
化処理後の光沢度は50%以下であるが、陽極酸化処理
後の光沢度が50%を超えるものであり、その分だけ前
記試料No.1〜27のものに比べて緑青銅板との色調
差は大きくなっているが、実用できるレベルの色調を呈
していた。
【0036】これに対し、試料No.33,34,40
のものは、圧延のままおよび圧延後に極く短時間の酸洗
を施して不十分な粗面化処理を施した後、陽極酸化処理
を施したものであるので(粗面化処理が不十分であるの
で)、Ti酸化物皮膜の厚さは本発明で規定する範囲内
であるものの、金属光沢が強く残っており(光沢度が高
い)、或はグレー系の色調の付与が不十分であるので、
緑青銅板との色調差が大きく、緑青銅板の代用としては
使用できないものであった。また試料No.35〜39
のものは、ホーニング処理またはダルロールによる圧延
等の粗面化処理を施しているものの、Ti酸化物皮膜の
厚さが本発明で規定する範囲から外れていたので、緑青
銅板との色調差があり、実用できないものであった。
【0037】実施例3 請求項4に記載の発明を検証する為に、下記の実験を行
った。まずJIS1種Ti冷圧材を基材とし、この表面
を下記(a)〜(b)のいずれかの方法によって粗面化
処理し、光沢度(入射角:45度、受光角:45度)の
測定を行なった。 (a)#220または#100のSiCビーズによって
ホーニング処理 (b)ダルロール(ロールの表面粗度が大)による圧延 (c)(10重量%HNO3 +4重量%HF)の水溶液
(40℃)で2分間の酸洗
【0038】この後、脱脂→1次酸洗(5容量%HF,
35℃,40秒)→2次酸洗(0.4容量%HF+10
容量%H22 ,25℃,10秒)を行ない、引き続き
2.5%H3 PO4 水溶液中において、種々の電圧でT
i板を対極として陽極酸化処理を施した。次いで、下記
表4に示す条件で熱処理を行ない、その後試料を折り曲
げ、曲げ部の変色の有無を肉眼で○、×の2段階で評価
した(○:変色無し、×:変色有り)。また熱処理後の
Ti酸化物皮膜の厚さを前記したAES法によって測定
すると共に、光沢度(入射角:45度、受光角:45
度)の測定を行なった。そして緑青銅板との色調差を、
実施例1と同様にして評価した。これらの結果を、処理
条件と共に下記表4に示す。尚得られた試料は、いずれ
も熱処理前には、緑青銅板の色調を有するものであっ
た。
【0039】
【表4】
【0040】表4から次の様に考察できる。試料No.
1〜6のものは、請求項1〜3で規定する要件を満足す
るTi材であり、且つ請求項4で規定する熱処理を施し
たものであり、曲げによる変色は生じなかった。また熱
処理条件を試料の状態(酸化皮膜厚さ等)に応じて調整
したので、熱処理後の色調も緑青色を呈していた。
【0041】一方、試料No.7〜9のものは、請求項
1〜3で規定する要件を満足するTi材であるが、請求
項4で規定する熱処理条件を満足しないものであり、熱
処理後の色調は緑青色を呈していたが、曲げによる変色
が生じていた。従って、この様なTi材は折り板工法で
組まれる屋根材等には使用できないものである。
【0042】上記実施例1〜3では、ホーニング処理の
研磨材として、所定の粒度を有するSiCビーズ、ジル
コニアビーズ、アルミナビーズまたはガラスビーズを示
したが、本発明でホーニング処理する際の研磨材の粒度
や種類については上記のものに限らず、表面の光沢が調
整できるものであれば良いのは勿論である。このこと
は、酸洗液組成や条件等についても同様である。また上
記実施例では、陽極酸化処理する際の電解液として、1
〜2.5%H3 PO4 水溶液を用いたが、これは本発明
に適用される電解液が、1〜2.5%H3 PO4 水溶液
だけであることを示すものではない。即ち、Ti材の色
調はその表面に形成されたTi酸化物皮膜の厚さや粗面
化処理後の表面性状等によって決定されるものであり、
電解液の化学成分組成等の条件に左右されるものではな
い。従って、本発明で使用する電解液は、緑青色になる
Ti酸化物皮膜厚さまで陽極酸化が可能な電解液はすべ
て適用できる。
【0043】尚上記実施例1〜3では、基材として純T
iのみを用いているが、これはTi合金であっても差し
支えはない。即ち、基材としてTi合金を用いても、形
成されるTi酸化物皮膜の主成分は、純Tiを用いた場
合と同様にTi酸化物であり、純Tiの場合と同様の酸
化物皮膜厚さで緑青色になる。
【0044】また上記実施例1〜3に示した工程では、
陽極酸化処理の前に脱脂や酸洗(1次,2次)等の処理
を行なっているが、これらは下記の理由によって行われ
るものであり、これらの処理は前述した様に、むしろ陽
極酸化処理の一部の工程を見なせるものである。従っ
て、この様な前処理を施すことは、本発明の技術的範囲
に含まれるものである。 (a)脱脂:油分を除去し、着色むらを防ぐ (b)1次酸洗:ショット屑を除去し、着色むらを防ぐ
(但し、ホーニング処理やダルロールで付与された表面
状態を大きく変えない程度に行なう) (c)2次酸洗:1次酸洗により生じたスマットを除去
し、着色むらを防ぐ(但し、ホーニング処理やダルロー
ルで付与された表面状態を大きく変えない程度に行な
う)
【0045】
【発明の効果】以上述べた如く本発明によれば、緑青銅
板に非常に近い色調を有する緑青銅板風Ti材またはT
i合金材が得られ、この様なTi材またはTi合金材
は、寺社や仏閣の屋根材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】陽極酸化電圧、Ti酸化物皮膜の厚さ、および
色調の関係の一例を示すグラフである。
【図2】酸化皮膜の厚さ測定結果の一例を示すグラフで
ある。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 TiまたはTi合金からなる基材表面に
    粗面化処理を施し、入射角:45度、受光角:45度で
    測定したときの表面における光沢度を50%以下にした
    後、陽極酸化処理を施してTi酸化物皮膜を形成し、そ
    の表面を緑青銅板風に着色することを特徴とする緑青銅
    板風着色Ti材またはTi合金材の製造方法。
  2. 【請求項2】 陽極酸化処理により形成されたTi酸化
    物皮膜の厚さが800〜6000Åである請求項1に記
    載の製造方法。
  3. 【請求項3】 粗面化処理が、酸洗、サンドブラスト処
    理、ショットブラスト処理、ホーニング処理またはダル
    ロールを用いた圧延処理のいずれかである請求項1また
    は2に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 陽極酸化処理を施した後、150℃以上
    で30秒以上の熱処理を行なう請求項1〜3のいずれか
    に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 TiまたはTi合金からなる基材表面に
    形成されたTi酸化物皮膜の厚さが800〜6000Å
    であると共に、入射角:45度、受光角:45度で測定
    したときの表面における光沢度が50%以下であること
    を特徴とする緑青銅板風着色Ti材またはTi合金材。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006077743A1 (ja) * 2004-12-28 2006-07-27 Moritex Corporation 装飾用素材とその製造方法
JP2006299389A (ja) * 2005-04-25 2006-11-02 Nippon Oil Corp 多孔質チタン−チタン酸化物複合体の製造方法
CN108166041A (zh) * 2017-12-28 2018-06-15 宁波俐辰新能源有限公司 一种抗盐雾腐蚀钛合金及其制造方法
CN110093650A (zh) * 2019-04-30 2019-08-06 西安建筑科技大学 一种高耐磨性高硬度钛合金复合套管的制备方法

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