JPH082004Y2 - マスタシリンダ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、シールをボディ側に固定しリターンポート
をピストン側に設けて２系統の液圧を発生するマスタシ
リンダに関する。

［従来の技術］ 従来、シリンダボディ側にシールを固定し、ピストン
側にリターンポートを設けた構造のマスタシリンダとし
ては、例えば第２図のものが知られている。

第２図において、１はシリンダホディであり、シリン
ダボディ１の右側に開口したシリンダ穴２に、両側にカ
ップシール17,18を配置したセカンダリ用のガイドブッ
シュ３、プラスチック製のガイドスペーサ４、及び両側
にカップシール９とシール10を配置したプライマリ用の
ガイドブッシュ５を組込み、シリンダボディ１の開口部
内周に形成したネジ部６に対するケース７の螺合で抜け
止め固定している。

ガイドブッシュ５にはプライマリピストン８が摺動自
在に組み込まれると共に、内周と外周を連通する通し穴
11が設けられ、ガイドブッシュ５の外周面はケース７と
スペーサ４のとの間に形成された円筒状の隙間でなる液
通路12を介してタンク接続口13に連通される。またプラ
イマリピストン８の液室Ａ側は円筒部に形成され、この
円筒部にリターンポート14が設けられ、更にリターンス
プリング15が組み込まれている。

一方、セカンダリ側のガイドブッシュ３にはセカンダ
リピストン16が摺動自在に組み込まれると共に、内周と
外周を連通する通し穴19が設けられ、通し穴19はタンク
接続口20に連通している。更にセカンダリピストン16の
液室Ｂ側に形成された円筒部にはリターンポート21が設
けられ、またリターンスプリング22が組み込まれてい
る。

更に、セカンダリ側のガイドブッシュ３の液通路19を
プライマリ液室Ａ側からシールするため、ガイドブッシ
ュ３の右側に配置されたシール部材18は、内周カップ部
18aと外周カップ部18bを備えた特殊な形状としており、
更にガイドブッシュ３のセカンダリ液圧による後退でカ
ップ部18a,18bが潰れてシール機能が失われるのを防止
するため、ガイドブッシュ18の右端面の複数箇所に突起
3aを形成し、ガイドスペーサ４の端面との間に所定のシ
ール配置間隔が確保できるようにしている。

このような構造のマスタシリンダにあっては、ブレー
キ操作力を受けてプライマリピストン８が前進すると、
リターンポート14がカップシール９を越えた位置からプ
ライマリ液室Ａの加圧が開始され、同時にプライマリ液
室Ａの加圧を受けてセカンダリピストン16も前進し、リ
ターンポート21がカップシール17を過ぎた位置からセカ
ンダリ液室Ｂの加圧が同時に開始される。

一方、ブレーキ操作力を解除すると、リターンスプリ
ング22,15のスプリング力でセカンダリピストン16及び
プライマリピストン８が後退し、リターンポート21,14
がカップシール17,9を越えて戻るとリターンポート21,1
4及びガイドブッシュ3,5の通し穴11,19を介して液室B,A
がタンク側に連通して圧力をタンク側に開放する。

［考案が解決しようとする課題］ しかしながら、このような従来のマスタシリンダにお
けるセカンダリ側ガイドブッシュのシール構造にあって
は、プライマリ液圧をうけるシール部材18は内周カップ
18a,外周カップ部18bを備えると共にガイドブッシュ３
の突起3aを通すために下部に示すように突起3aを囲むよ
うに分かれた極めて特殊な形状をしており、シール部材
18の加工成型が大変でコストアップとなり、組付け時に
も位置合わせを必要とするために組立て作業も煩雑にな
る問題があった。

そこで、特殊なシール部材18の代わりにＯリングを使
用することも考えられるが、第３図に示すようにガイド
ブッシュ３の内周と外周の２か所に分けてＯリング23,2
4を組込む必要があり、少なくとも２ケのＯリングを必
要とし、リング溝の加工および組付けもその分だけ煩雑
になる問題があった。

本考案は、このような従来の問題点に鑑みてなされた
もので、セカンダリ側ガイドブッシュのプライマリ液室
に対する内周と外周のシールを単一のＯリングでできる
ようにしたマスタシリンダを提供することを目的とす
る。

［課題を解決するための手段］ まず本考案は、シリンダボディ内のシリンダ穴にプラ
イマリ側及びセカンダリ側にシール部材を両側に配置し
たガイドブッシュを固定配置し、該ガイドブッシュ及び
シール部材の中にリターンポートを備えたプライマリピ
ストン及びセカンダリピストンを摺動自在に設けた構造
のマスタシリンダを対象とする。

このような構造のマスタシリンダについて本考案にあ
っては、セカンダリ側のガイドブッシュの外周をプライ
マリ側に向けて大径から小径とした段付円筒形状にする
と共に、ガイドブッシュ組込み部分となるシリンダ穴を
プライマリ側に向けて大径のブッシュ装着穴と小径のＯ
リング装着穴でなる段付穴形状とし、Ｏリング装着穴に
Ｏリングを装着した状態で前記ガイドブッシュを組込
み、下位Ｏリングによりガイドブッシュのプライマリ液
室側の内周と外周とを同時にシールするようにしたもの
である。

［作用］ このような構成を備えた本考案のマスタシリンダにあ
っては、セカンダリ側のガイドブッシュに１ケのＯリン
グを組込むだけで、ガイドブッシュの内周と外周を連通
した液通路、即ちタンク側とプライマリ液室との間のブ
ッシュ内周及び外周を同時にシールすることができ、ま
たガイドブッシュは段付筒形状、シリンダ穴は段付穴形
状という単純な加工形状で済み、組立が容易で部品点数
及び部品コストの低減を図ることができる。

［実施例］ 第１図は本考案の一実施例を示した実施例断面図であ
る。

第１図において、１はシリンダボディであり、軸方向
にシリンダ穴26を貫通している。シリンダ穴26の右側に
はブッシュ装着穴28が形成され、ブッシュ装着穴28の中
にシール押え30、カップシール32、ガイドブッシュ34及
びＯリング36を順次組込み、キャップ部材38の装着で抜
け止めしている。カップシール32、ガイドブッシュ34及
びＯリング36の中にはプライマリピストン40が摺動自在
に組込まれ、プライマリピストン40のプライマリ液室Ａ
側の円筒部にはリターンポート42が形成され、図示の初
期位置でリターンポート42はカップシール32の直後に位
置している。ガイドブッシュ34には内周と外周を連通す
る液通路44が設けられ、液通路44がシリンダ端面の端面
溝46からシリンダボディ１の軸方向に形成した液通路48
を通ってタンク接続口50に連通している。

またプライマリピストン40の先端と後の説明で明らか
にするセカンダリピストンとの背端との間にはロッド52
の両側に配置したリテーナによってリターンスプリング
54が装着されている。

次に、シリンダ穴26の左側となるセカンダリ側を説明
する。シリンダ穴26の左側開口部からはネジ穴56、ブッ
シュ装着穴58、Ｏリング装着穴60、更にピストンガイド
穴62が順次径を小さくするように段付形成されている。

Ｏリング装着穴60にはＯリング64が装着され、Ｏリン
グ64に続いてブッシュ装着穴58にガイドブッシュ66が装
着され、更にカップシール68が組込まれ、最終的にネジ
穴56に対しプラグ70が装着され、プラグ70が同時にリタ
ーンスプリング72を抜け止めする。

Ｏリング64、ガイドブッシュ66、カップシール68の内
側にはセカンダリピストン74が摺動自在に組込まれ、セ
カンダリピストン74はセカンダリ液室Ｂ側の円筒部にリ
ターンポート76を備え、リターンポート76は図示の初期
位置でカップシール68の直後に位置している。

ガイドブッシュ66は内周と外周を連通する液通路78を
有し、液通路78は上部のタンク接続口80に連通してい
る。

ガイドブッシュ66はガイドブッシュ装着穴58とＯリン
グ装着穴60からなり、シリンダ穴26にプライマリ側に向
けて形成された段付穴部88に対応して、プライマリ液室
Ａ側に向うにつれて大径と小径でなる段付部86を有し、
ブッシュ装着穴58とＯリング装着穴60との間の段部に当
接することでプライマリ側への動きが規制され、この結
果、ガイドブッシュ66の右端面とシリンダ穴26における
Ｏリング装着穴60とピストンスライド穴62の段部との間
にＯリング収納スペースを形成しており、この部分に組
込まれたＯリング64はガイドブッシュ66により潰される
ことなく内周におけるセカンダリピストン74との間のシ
ール及び外周におけるシリンダ穴26、即ちＯリング装着
穴64とのスキ間をシールするようになる。

尚、シリンダボディ１の上部に形成したタンク接続口
50,80に対してはニップル82が装着され、ニップル82に
対しては分離配置された不図示のレザーバタンクより１
本のホース接続によりブレーキ液が供給されており、ニ
ップル82内に設けた仕切壁84によってプライマリ側とセ
カンダリ側の片室液量を確保できるようにしている。勿
論、ニップル82の代わりに同じタンク接続構造を備えた
レザーバタンクを直接装着してもよい。

次に、上記の実施例の作用を説明する。

セカンダリ側のガイドブッシュ66は、セカンダリ液室
Ｂ側にカップシール68を配置し、ブレーキ操作時のセカ
ンダリピストン74の移動で上昇したセカンダリ液室Ｂか
らの液圧のガイドブッシュ66側への漏れ出しをシールし
ている。

一方、ガイドブッシュ66の右側に組込んだＯリング64
は、プライマリ液室Ａからの液圧を受け、ガイドブッシ
ュ66に対し内周と外周の両方を単一のＯリング64により
シールしている。

このためガイドブッシュ66に対するプライマリ側液室
Ａからの液圧の内周と外周のシールを単一のＯリング64
で行なうことができ、またガイドブッシュ66及びシリン
ダ穴26側の形状も段付円筒又は段付穴という単純な加工
形状で済み、従来の特殊なカップシールやＯリングを２
個使用した場合に比べ、加工工数及び組立工数が低減で
き、更に部品点数及び部品コストも低減することができ
る。

更に第１図の実施例にあっては、プライマリ側につい
ても、キャップ部材38を装着した以外はセカンダリ側と
全く同じシール構造であり、プライマリ側とセカンダリ
側との部品の共通化により更に加工組立及び部品コスト
を低減できる。

［考案の効果］ 以上説明してきたように本考案によれば、セカンダリ
側のガイドブッシュに１個のＯリングを組込むことでガ
イドブッシュの内周と外周を同時にシールすることがで
きる。

また、ガイドブッシュは段付円筒形状、シリンダ穴は
段付穴形状という単純な形状で済み、加工組立が容易で
部品点数及び部品コストの低減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示した実施例断面図； 第２図は従来技術の説明図； 第３図は他の従来技術の説明図である。 1:シリンダボディ 26:シリンダ穴 28,58:ブッシュ装着穴 30:シール押え 32,68:カップシール 34,66:ガイドブッシュ 36,64:Oリング 38:キャップ部材 40:プライマリピストン 42,76:リターンポート 44,78:液通路 46:端面溝 48:液通路 50,80:タンク接続口 52:ロッド 54,72:リターンスプリング 56:ネジ穴 60:Oリング装着穴 62:ピストンガイド穴 70:プラグ 74:セカンダリピストン 82:ニップル 84:仕切壁 86:段付部 88:段付穴部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダボディ１内のシリンダ穴26にプラ
   イマリ側及びセカンダリ側のカップシール32,68をそれ
   ぞれガイドブッシュ34,66により固定配置し、該ガイド
   ブッシュ34,66にリターンポート42,76を備えたプライマ
   リピストン40及びセカンダリピストン74を摺動自在に設
   けたマスタシリンダに於いて、 セカンダリ側の前記ガイドブッシュ66の外周にプライマ
   リ側に向けて大径から小径とした段付部86を形成すると
   共に、該ガイドブッシュ66の組込み部分となるシリンダ
   穴26にプライマリ側に向けて大径のブッシュ装着穴58と
   小径のＯリング装着穴60でなり前記段付部86が係合する
   段付穴部88を形成し、前記Ｏリング装着穴60にＯリング
   64を装着したことを特徴とするマスタシリンダ。