JPH08197853A - 感熱記録媒体及び記録方法 - Google Patents

感熱記録媒体及び記録方法

Info

Publication number
JPH08197853A
JPH08197853A JP7037001A JP3700195A JPH08197853A JP H08197853 A JPH08197853 A JP H08197853A JP 7037001 A JP7037001 A JP 7037001A JP 3700195 A JP3700195 A JP 3700195A JP H08197853 A JPH08197853 A JP H08197853A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
color
recording medium
compound
agent
amorphous
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP7037001A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3176018B2 (ja
Inventor
Katsuyuki Naito
勝之 内藤
Masami Sugiuchi
政美 杉内
Akira Takayama
暁 高山
Hirohisa Miyamoto
浩久 宮本
Hideyuki Nishizawa
秀之 西沢
Sawako Fujioka
佐和子 藤岡
Akiko Watanabe
明子 渡邊
Tatsuo Nomaki
辰夫 野牧
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP03700195A priority Critical patent/JP3176018B2/ja
Publication of JPH08197853A publication Critical patent/JPH08197853A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3176018B2 publication Critical patent/JP3176018B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Sensitive Colour Forming Recording (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 発色・消色状態のコントラスト比が高く、さ
らには背景表示も利用し得るリライタブル記録媒体を提
供する。 【構成】 呈色性化合物と、顕色剤と、2値の熱エネル
ギーの供給により可逆的に状態の変化を繰り返し得る可
逆材とを含有し、互いに大きさの異なる2値の熱エネル
ギーを供給し、結晶化温度Tc以上融点Tm未満の温
度、及び融点Tm以上の温度に加熱して、情報の記録・
消去を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可逆的な感熱記録媒体及
びこの記録媒体に対する記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、オフィスオートメーション化が進
むにつれて、各種の情報量が著しく増大しており、この
情報量の増大に伴い情報を出力する機会も増加してい
る。一般に情報の出力としては、プリンターによる紙へ
のハードコピー表示やディスプレイ表示がある。しかし
ながらハードコピー表示は、情報の出力が増加すると記
録媒体としての紙を大量に使用することになるので、資
源保護の観点から将来問題となる。一方ディスプレイ表
示は、表示部に大規模な回路基板が必要であるために、
携帯性及びコストの観点から問題がある。従って、これ
らの問題のない、表示画像を可逆的に記録・消去可能な
リライタブル記録媒体が第3の記録媒体として期待され
ている。
【0003】従来このようなリライタブル記録媒体用の
記録材料としては、ロイコ染料等の呈色性化合物と各種
酸等の顕色剤を含有し、これらの相互作用に応じて発色
・消色が生じる組成物が広く検討されている。例えば特
開平4−50290号には、熱エネルギーの供給で化学
的に発色・消色を繰り返すことが可能な記録材料とし
て、ロイコ染料と顕色剤としての酸及び消色剤としての
長鎖アミンからなる組成物が提案されている。またロイ
コ染料と長鎖ホスホン酸を混合した組成系において、熱
エネルギーによる制御で結晶形を変化させれば可逆的に
発色・消色が生じることが、第42回高分子討論会予稿
集、1993年、2736頁、特開平4−247985
号、特開平4−308790号、特開平4−34428
7号に報告されている。さらにJapan Hardc
opy ’93 p.413〜416には、非晶質性の
高いロイコ染料と結晶性の高い長鎖4−ヒドロキシアニ
リド化合物からなる組成系について、熱エネルギーによ
る制御で組成系全体の結晶質−非晶質転移に基づく可逆
的な発色・消色が生じることを利用した記録材料が示さ
れている。
【0004】しかしながら、これらの記録材料は一般に
消色状態における無色性が十分ではないため、発色・消
色状態のコントラスト比はさほど高いものではなく、特
に無色透明を得ることが困難で背景の表示を利用しにく
いという傾向があった。また、上述したような長鎖4−
ヒドロキシアニリド化合物を顕色剤として配合した組成
系では、コントラスト比は比較的良好であるものの、組
成系の結晶質−非晶質転移の際の結晶の融解に大きな熱
エネルギーを要し、省エネルギ−化を図るうえでは不利
となる。さらに、結晶質−非晶質転移に伴って着色状態
が変化する材料としては、他にMol.Cryst.L
iqiud Cryst.1993,235,p.14
7に開示されたNi錯体もあるが、この材料は結晶質で
緑色、非晶質で赤色を呈し結晶質、非晶質のいずれにお
いても無色または白色でないため、コントラスト比の優
れた表示を実現することは困難である。
【0005】このように、従来より呈色性化合物及び顕
色剤を含有する組成系をリライタブル表示可能な記録媒
体用の記録材料として用いることが試みられているが、
発色・消色状態のコントラスト比や省エネルギーの点等
で問題があり、いまだ実用化には至っていない。
【0006】また、サーマルプリンターヘッド(略して
TPH)で記録・消去可能なリライタブル記録媒体とし
て、有機低分子・高分子樹脂マトリクス系(例えば、特
開昭55−154198号、特開昭57−82086
号)が知られており、一部のプリペイドカードに使用さ
れつつある。しかし、この有機低分子・高分子樹脂マト
リクス系には、TPHを用いて短時間に記録・消去がで
きる環境温度の範囲が狭く、また繰り返し回数が150
〜500回程度と比較的少ないという問題点がある。こ
の結果、このリライタブル記録媒体の適用分野は著しく
限定され、例えば使用環境温度が広い駅務用IOカード
などへの適用は困難である。さらに、この系は、白濁状
態と透明状態が可逆的に変化する系であるため、視認性
が不十分であるという問題点も有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、発色
・消色状態のコントラスト比が高くさらには背景表示も
利用し得るリライタブル記録媒体を提供することであ
る。本発明の他の目的は、記録・消去に当って省エネル
ギーを図ることのできるリライタブル記録媒体を提供す
ることである。本発明の他の目的は、記録・消去の速度
が早いリライタブル記録媒体を提供することである。本
発明のさらに他の目的は、このような記録媒体への情報
の記録・消去方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段と作用】本発明の感熱記録
媒体は、呈色性化合物と、ガラス転移温度が25℃以上
の顕色剤とを含有し、可逆的な結晶質−非晶質転移に基
づいて情報の記録・消去が行なわれるものである。
【0009】本発明の感熱記録媒体は、呈色性化合物
と、顕色剤と、マトリックス剤とを含有し、可逆的な結
晶質−非晶質転移に基づいて情報の記録・消去が行なわ
れるものである。
【0010】本発明の感熱記録媒体は、呈色性化合物
と、顕色剤と、可逆材とを含有するものである。
【0011】本発明の感熱記録媒体は、呈色性化合物
と、顕色剤と、可逆材と、相分離制御剤を含有するもの
である。
【0012】本発明の感熱記録媒体への記録方法は、互
いに大きさの異なる2値の熱エネルギーを供給し、上記
の各記録媒体を結晶化温度Tc以上融点Tm未満の温度
及び融点Tm以上の温度に加熱して、情報の記録・消去
が行なわれるものである。
【0013】本発明の感熱記録媒体への記録方法は、上
記の各記録媒体を融点Tm以上の温度に加熱した後、互
いに冷却速度の異なる2種の熱履歴を与え、情報の記録
・消去が行なわれるものである。
【0014】まず、本発明の記録媒体を構成する基本的
な成分の作用及び記録媒体の動作原理について概略的に
説明する。
【0015】一般的な意味では、呈色性化合物とは表示
画像を形成する色素の前駆体化合物をいい、顕色剤とは
呈色性化合物との相互作用(主に電子の授受)により呈
色性化合物の着色状態を変化させる化合物をいう。すな
わち一般的には、呈色性化合物と顕色剤との組み合わせ
は、相互作用が増大すると発色状態、相互作用が減少す
ると消色状態となるような2種の化合物の組み合わせを
いう。本発明における呈色性化合物及び顕色剤という用
語は、上記のような狭い意味も当然含むが、より広い意
味に解釈されるべきであり、相互作用が増大すると消色
状態となり、相互作用が減少すると発色状態となる2種
の化合物の組み合わせ(狭義には色素と消色剤との組み
合わせ)をも含むものとする。ただし以下においては、
説明を簡単にするために、狭義での呈色性化合物と顕色
剤との組み合わせを中心として議論し、後者の狭義での
色素と消色剤との組み合わせに関しては適宜補足的に議
論する。
【0016】本発明においてマトリックス剤とは、呈色
性化合物及び顕色剤の濃度を希釈する作用を少なくとも
有しており、この作用を有していれば低分子化合物でも
高分子化合物でもよい。また、本発明で対象としている
組成系は結晶学的または熱力学的に異なる2つの状態間
での可逆的な変化を起こすが、マトリックス剤はこれら
の可逆的な変化に影響を及ぼす性質を有していてもよ
い。すなわち、本発明におけるマトリックス剤は、呈色
性化合物及び顕色剤のみからなる場合には上述したよう
な可逆的な変化を起こし難い組成系に対し、呈色性化合
物、顕色剤及びマトリックス剤を配合した組成系で上記
の可逆的な変化が容易に起こり得る性質を付与する化合
物であっても構わない。なお、本発明においては、後者
の作用を有するマトリックス剤を特に可逆材という。さ
らに可逆材としてのマトリックス剤は、呈色性化合物又
は/及び顕色剤と相互作用する性質を有していてもよ
い。例えばある種の相互作用に起因して、可逆材の呈色
性化合物及び顕色剤のうち一方に対する溶解度と他方に
対する溶解度とで有意な差が生じ、結果的に発色・消色
の原因となる呈色性化合物と顕色剤との相互作用に影響
を及ぼすこともあり得る。
【0017】次に、上述した結晶学的または熱力学的に
異なる2つの状態間での可逆的な変化について説明す
る。本発明の対象となる組成系は、結晶質状態と非晶質
状態との間での可逆的な変化(結晶質−非晶質転移)を
起こすか、または2つの相分離状態間もしくは相分離状
態と非相分離状態との間での可逆的な変化を起こす。
【0018】上記の結晶質−非晶質転移に関しては、結
晶質状態が平衡状態、非晶質状態が準安定な非平衡状態
であるが、本発明の組成系では非晶質状態でも室温で十
分長寿命である。結晶質状態と非晶質状態との間には若
干のポテンシャル障壁が存在する。一方、相分離状態と
非相分離状態に関しては、相分離状態が安定な平衡状
態、非相分離状態が相対的には不安定な非平衡状態であ
るが、本発明の組成系では非相分離状態でも室温で十分
長寿命である。非相分離状態と相分離状態との間にはポ
テンシャル障壁は存在しない。また、後者の可逆的な変
化は、結晶質−非晶質間、結晶質−結晶質間、非晶質−
非晶質間のいずれの変化でもよい。後者の可逆的な変化
のうち、ある相分離状態から他の相分離状態へ、または
非相分離状態から相分離状態へと変化する過程は、スピ
ノーダル分解またはマイクロ相分離として知られている
現象である。これらのうちいずれの可逆的な変化が生じ
るかは、組成系を構成する化合物の組み合わせのみによ
って決定されるわけではなく、例えば化合物の組み合わ
せが同じでも配合比が異なれば、結晶質−非晶質転移が
起こる場合もあるし、相分離状態−非相分離状態間の可
逆的変化が起こる場合もあり得る。
【0019】次に、図1を参照して、本発明の組成系に
おける結晶質−非晶質転移について説明する。本発明の
対象となっている組成系は、室温下で準安定で長寿命な
非晶質を形成する。非晶質状態の組成系を、結晶化温度
Tc以上融点Tm未満の温度に加熱した後、冷却して結
晶化すると、生成した結晶は室温で安定に維持される。
結晶質状態の組成系を融点Tm以上に加熱した後、融液
をガラス転移温度Tg以下の室温まで急冷又は放冷する
と、組成系は非晶質状態に戻る。したがって、図1に示
されるような熱特性を有する組成系に対しては、結晶化
温度Tc以上融点Tm未満及び融点Tm以上の温度にま
で組成系を加熱することが可能な互いに大きさの異なる
2値の熱エネルギーを供給することにより、可逆的に結
晶質−非晶質転移を繰り返すことが可能である。また、
融点Tm以上に加熱した後の冷却速度が異なる2種の熱
履歴により、組成系の可逆的な結晶質−非晶質転移を繰
り返させてもよい。具体的には、加熱後に融液を室温ま
で徐冷した際に組成系は結晶質状態、室温まで急冷した
際に組成系は非晶質状態となり得る。
【0020】本発明の1つの態様は、呈色性化合物と、
ガラス転移温度が25℃以上の顕色剤とを含有し、可逆
的な結晶質−非晶質転移に基づいて情報の記録・消去が
行なわれる感熱記録媒体である。この呈色性化合物及び
顕色剤の2成分系における結晶質−非晶質転移について
説明する。通常、結晶質状態では呈色性化合物と顕色剤
とがそれぞれ相分離して両者の相互作用が減少する。一
方、非晶質状態では呈色性化合物と顕色剤とが混合して
両者の相互作用が増加する。したがって、狭義の呈色性
化合物と顕色剤との組み合わせでは、結晶質において消
色状態で無色又は光散乱に起因する白色を示し、非晶質
において発色して着色透明となる。
【0021】本発明の他の態様は、呈色性化合物と、顕
色剤と、マトリックス剤(可逆材)とを含有し、可逆的
な結晶質−非晶質転移に基づいて情報の記録・消去が行
なわれる感熱記録媒体である。すなわち、呈色性化合物
及び顕色剤の濃度を低下させるマトリックス剤を配合す
ることで、非晶質状態での発色を一段と希釈して、結果
として発色・消色状態のコントラスト比を高めるという
ものである。ここで、特に呈色性化合物、顕色剤及び可
逆材の3成分系における結晶質−非晶質転移について説
明する。上述したように、可逆材は本発明の対象となる
組成系における可逆的な結晶質−非晶質転移に影響を及
ぼす。通常、結晶質状態では結晶化した可逆材の粒界に
呈色性化合物及び顕色剤が偏析して両者の相互作用が増
加する。一方、非晶質状態では可逆材中に呈色性化合物
と顕色剤とが均一に混合して存在し、両者の相互作用が
減少する。特に、非晶質状態において、可逆材が呈色性
化合物及び顕色剤のいずれか一方との相互作用が大きい
(例えば呈色性化合物及び顕色剤のいずれか一方の溶解
度が相対的に高い)場合には、呈色性化合物と顕色剤と
の相互作用が著しく減少する。したがって、結晶質にお
いて着色状態となり、非晶質において消色状態となる。
なお、呈色性化合物及び顕色剤のいずれか一方が可逆材
とともに混晶を形成して、呈色性化合物及び顕色剤の他
方とほぼ完全に分離され、両者の相互作用が著しく減少
する結果、消色状態になることもある。以上のように、
呈色性化合物及び顕色剤の2成分系と、呈色性化合物、
顕色剤及び可逆材の3成分系とでは、記録・消去のモー
ドが逆になることが多い。
【0022】本発明の記録媒体においては、記録・消去
に際して結晶質−非晶質転移を繰り返すのが組成系全体
であっても一部であってもよい。さらに組成系中の複数
の成分が結晶質を形成する場合、各成分毎に個々に結晶
質が形成されてもよいし、複数の成分が一体的に結晶質
を形成しても構わない。また本発明においては、相互作
用が増大すると消色状態となり、相互作用が減少すると
発色状態となる呈色性化合物と顕色剤(狭義での色素と
消色剤)を組み合わせて用いてもよい。
【0023】なお組成系が結晶質であるか非晶質である
かは、X線回折あるいは電子線回折や光透過測定等の一
般的な方法を必要に応じ適宜併用して分析すればよい。
例えばX線回折や電子線回折においては、結晶質であれ
ばシャープなピークやスポット等が観測されるが、非晶
質だとシャープなピークやスポットは観測されなくな
る。一方、光透過測定では系の光散乱を評価することが
可能で、多結晶質であれば短波長の光がより強く散乱さ
れることに起因して光透過率は短波長になるほど低下す
る。したがって、光透過率の波長依存性をみれば吸収に
よる光透過減少と区別することができ、また結晶の粒径
も推定できる。さらに、本発明の記録媒体の記録・消去
に際して結晶質−非晶質転移を繰り返すのが組成系全体
であるか一部であるかについても、上述したような測定
で検出することが可能である。また、X線回折や電子線
回折のピークやスポットのパターンは組成系中のそれぞ
れの成分に固有のものであるから、得られたパターンを
解析することにより組成系中で結晶質−非晶質転移を繰
り返す成分を特定することもできる。
【0024】次に、相分離状態−非相分離状態間の可逆
的な変化について説明する。まず、呈色性化合物、顕色
剤、可逆材からなる3成分系における典型的な発消色メ
カニズムの一例を図2に示す。この図では、呈色性化合
物をA、顕色剤をB、可逆材をCと表している。またこ
の図は、可逆材Cと顕色剤Bとの相互作用が大きい(具
体的には溶融時において顕色剤Bの可逆材Cに対する溶
解度が高い)場合を示している。また、「:」は相互作
用を示し、「*」は流動状態であることを示している。
【0025】室温(Trt)においては、呈色性化合物A
及び顕色剤Bの相と可逆材Cの相が相分離した発色状態
が、溶解度から見て平衡状態に近い。この状態から融点
(Tm)以上に加熱すると、顕色剤Bは呈色性化合物A
との相互作用を失う一方で流動状態の可逆材Cと相互作
用した状態となり、結果として系は色を失う。次いで、
この溶融状態から、急冷することによって系を強制的に
固定すると、顕色剤Bと相互作用していた可逆材Cは、
平衡溶解度を越えた量の顕色剤Bを取り込んで非晶質化
し、系は室温で無色化する。この非平衡状態の非晶質
は、ガラス転移温度(Tg)以下の温度では極めて長寿
命であり、室温がTg以下であるならば容易に平衡状態
に移ることはない。
【0026】次いで、非平衡状態の非晶質を加熱してガ
ラス転移温度を越えると、系における顕色剤Bの拡散速
度が急激に高まるため、本来の平衡状態へ戻る方向に顕
色剤Bと可逆材Cとの相分離運動が加速される。相分離
による発色が所定の時間内で十分に達成できる温度(T
c')では、顕色剤Bと相分離した可逆材Cは急速に結晶
化するため、発色温度の下限値は結晶化温度(Tc)と
考えても良い。結晶化温度以上(融点以下)で所定時間
を経過した組成系は、より平衡状態に近いより安定な相
分離状態となり、系は発色状態となる。従って、結晶化
温度Tc以上融点Tm未満及び融点Tm以上の温度にま
で可逆材を加熱することが可能な、互いに大きさの異な
る2値の熱エネルギーを適宜供給すれば、平衡−非平衡
の相変化を可逆的に繰り返すことができるため、それに
従って発色・消色状態を繰り返すことができる。なお、
厳密には、発色状態は顕色材の平衡溶解度や状態に依存
するため、系の発色濃度は加熱温度と加熱時間の影響を
受けることを考慮する必要がある。
【0027】しかし、一般的には発色(記録)速度と発
色・消色状態の安定性とは相反する性質であり、呈色性
化合物、顕色剤及び可逆材の3成分系で上記の2つの特
性を同時に向上させることは困難であることが多い。そ
こで、この問題を改善するために、本発明においてはさ
らに別の態様として呈色性化合物、顕色剤及び可逆材に
相分離制御剤を配合した4成分系の記録媒体を開発し
た。
【0028】本発明において用いられる相分離制御剤と
は、上記の非相分離状態から相分離状態への変化の過程
で、その融点近傍において相分離を促進する作用を有す
る化合物をいう。この相分離制御剤の融点は、呈色性化
合物、顕色剤及び可逆材の3成分系の融点よりも低い。
図3に、呈色性化合物、顕色剤、可逆材及び相分離制御
剤の4成分系の典型的な発消色メカニズムの一例を示
す。この図では相分離制御剤をDと表す。
【0029】室温(Trt)においては、呈色性化合物A
及び顕色剤Bの相と可逆材Cの相と相分離制御剤Dの相
が相分離した発色状態が、溶解度から見て平衡状態に近
い。この状態から、組成系の融点(Tm)以上に加熱す
ると、顕色剤Bは呈色性化合物Aとの相互作用を失う一
方で、流動状態の可逆材Cと相互作用した状態となり、
結果として系は色を失う。次いで、4成分系を溶融状態
から冷却すると、可逆材Cと相分離制御剤Dの相溶体が
融点以下においても流動性を保つ過冷却液体となり、顕
色剤Bと流動状態の可逆材Cとは相互作用したままガラ
ス転移温度Tg以下の低温で凝固し、可逆材Cは平衡溶
解度を越えた量の顕色剤Bを取り込んで非晶質化して無
色の非平衡状態になる。従って、4成分系では急冷でも
徐冷でも無色の非平衡状態を得ることができる。4成分
系の非平衡状態の非晶質も、ガラス転移温度(Tg)以
下の温度では極めて長寿命であり、室温がTg以下であ
るならば容易に平衡状態に移ることはない。
【0030】次いで、4成分系の非平衡状態の非晶質を
加熱してガラス転移温度を越えると、顕色剤Bの拡散速
度が急激に高まるため、本来の平衡状態へ戻る方向に顕
色剤Bと可逆材Cとの相分離運動が加速される。更に、
相分離制御剤Dの融点(TmD)を越えると、液化した相
分離制御剤Dが顕色剤Bと一部の可逆材Cを溶解し、顕
色剤Bの拡散速度が飛躍的に高まり顕色剤Bと可逆材C
との相分離は飛躍的に加速される。この状態から再び系
の温度を相分離制御剤Dの凝固点(TsD)以下に下げる
と、顕色剤Bの相分離制御剤Dに対する溶解度は急激に
低下し、瞬時に顕色剤Bと相分離制御剤Dは相分離す
る。相分離した顕色剤Bは呈色性化合物Aと相互作用し
て、系はより平衡状態に近いより安定な発色状態とな
る。このような相分離制御剤Dを含有する組成系の発色
速度は、ガラス転移温度の前後で2〜4桁、融点の前後
で更に3〜4桁変化する。従って、4成分系では系の融
点(Tm)と相分離制御剤の融点(TmD)まで加熱する
ことが可能な、互いに大きさの異なる2値の熱エネルギ
ーを適宜供給すれば、急冷・徐冷の熱履歴による影響を
著しく低減しながら極めて高速に平衡−非平衡の相変化
を可逆的に繰り返すことができ、発色・消色状態を繰り
返せる。
【0031】以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】まず、本発明における、呈色性化合物及び
ガラス転移温度が25℃以上の顕色剤の2成分系からな
る記録媒体について説明する。
【0033】本発明において用いられる呈色性化合物と
しては、ロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、
ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、ア
リールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インド
リン類、スピロピラン類、フルオラン類、シアニン色素
類、クリスタルバイオレット等の電子供与性有機物や、
フェノールフタレイン類等の電子受容性有機物が挙げら
れる。
【0034】より具体的には、電子供与性有機物とし
て、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリ
ーンラクトン、クリスタルバイオレットカルビノール、
マラカイトグリーンカルビノール、N−(2、3−ジク
ロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオー
ラミン、ローダミンBラクタム、N−アセチルオーラミ
ン、N−フェニルオーラミン、2ー(フェニルイミノエ
タンジリデン)−3,3−ジメチルインドリン、N−
3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、
8’−メトキシ−N−3,3−トリメチルインドリノベ
ンゾスピロピラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−
7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メト
キシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ベンジルオ
キシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノ
フルオラン、3,6−ジ−p−トルイジノ−4,5−ジ
メチルフルオラン−フェニルヒドラジド−γ−ラクタ
ム、3−アミノ−5−メチルフルオラン等が例示され
る。また、電子受容性有機物として、フェノールフタレ
イン、テトラブロモフェノールフタレイン、フェノノー
ルフタレインエチルエステル、テトラブロモフェノール
フタレインエチルエステル等が例示される。これらは1
種または2種以上を混合して用いることができ、本発明
では呈色性化合物を適宜選択すれば多様な色の発色状態
が得られることから、カラー対応が可能である。なお上
述したような化合物のうち、シアニン色素類やクリスタ
ルバイオレットについては、顕色剤との相互作用が増大
すると消色状態となり、相互作用が減少すると発色状態
となる場合がある。
【0035】本発明における顕色剤としては、呈色性化
合物が電子供与性有機物である場合、フェノール類、フ
ェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、スルホン酸、
スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸
エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、
亜リン酸金属塩類等の酸性化合物、一方呈色性化合物が
電子受容性有機物である場合、アミン類等の塩基性化合
物が挙げられる。これらは、1種または2種以上混合し
て用いることができる。
【0036】本発明において、呈色性化合物と25℃以
上のガラス転移温度を有する顕色剤とを含有する記録媒
体に関して、顕色剤のガラス転移温度を25℃以上と規
定したのは、以下に示すように、記録・消去に当って供
給することが必要な熱エネルギー量が低減され、省エネ
ルギーを図ることが可能となるためである。
【0037】一般に、室温以上で明確なガラス転移温度
Tgを有し、非晶質を形成しやすい成分は、そのガラス
転移温度Tgと融点Tmの間にTg=a・Tm(aは
0.65〜0.8)(Tg、Tmは共に絶対温度)とい
う経験則が成立し、ガラス転移温度Tgが高くなると融
点Tmも上昇する。この場合、顕色剤のガラス転移温度
Tgが25℃以上であれば融点Tmは100〜200℃
程度となることが予想される。本発明では記録材料を融
点Tm以上の温度に加熱して記録または消去を行なうた
め、融点Tmが高いと記録材料が融解されるまでに供さ
れる熱エネルギーも増大することが予想される。しかし
ながら本発明者らが上述したような組成系に対し、顕色
剤のガラス転移温度Tgと記録・消去に当って必要とな
る熱エネルギー量との関係について研究を進めた結果、
ガラス転移温度Tgが25℃以上と高い顕色剤を用いる
と、従来のようにガラス転移温度Tgが室温以下で結晶
性が高い顕色剤を配合した場合よりもむしろ、記録材料
を融解するまでに供給すべき熱エネルギー量が低減され
るという驚くべき知見を得た。
【0038】すなわち本発明者らは、上述したような非
晶質を形成しやすい成分の非晶質性の程度を示すパラメ
ータとして最大結晶成長速度MCVに着目し、この最大
結晶成長速度MCVと重量当りの結晶の融解エンタルピ
変化ΔH、融点Tm及び分子量Mwの間には、次式
(1)の関係が成り立つことを見出した(特願平5−4
0226号)。なお式中、k0 は定数、hc は物質群定
数である。
【0039】 ln(MCV)=k0 −hc Mw/(TmΔH) (1) 25℃以上の明確なガラス転移温度Tgを有する非晶質
を形成しやすい顕色剤では、最大結晶成長速度MCVは
さほど大きくない。上式(1)によれば、最大結晶成長
速度MCVがさほど大きくないことはTmΔHが小さい
ことと等価である。一方、ガラス転移温度Tgが25℃
以上と高い成分では、上述したように融点Tmも100
〜200℃程度と比較的高温である。このようにTmΔ
Hが小さくTmが大きいということは、結晶の融解エン
タルピ変化ΔHがかなり小さいことに相当する。換言す
れば、明確なガラス転移温度Tgを有する非晶質を形成
しやすい成分は、ガラス転移温度Tgが高いほど結晶の
融解エンタルピ変化ΔHは小さく、結晶の融解に当って
必要な熱エネルギー量は少量となることが判る。逆に、
ガラス転移を示さず低温においても結晶化が生じるよう
な結晶性の高い成分の場合、最大結晶成長速度MCVが
大きく、結晶の融解エンタルピ変化ΔHも大きい。
【0040】一方、上述したような非晶質を形成し得る
成分においては、ガラス転移温度Tgが高いとその融点
Tmも高くなる傾向があることから、ガラス転移温度T
gが高いほどその融解に当って高温まで温度を上昇させ
る必要が生じる。然るに、明確なガラス転移温度Tgを
有する非晶質を形成しやすい成分は一般に比熱が小さ
く、融点Tmに温度を上昇させる際に供される熱エネル
ギー量は融点Tmと室温(25℃)との温度差と比熱の
積に比例するから、顕色剤のガラス転移温度Tgが高く
ても、記録・消去に当って記録材料が融点Tmに達する
までに供給される熱エネルギー量はさほど増大すること
はなく、ほとんど問題とはならない。従って25℃以上
のガラス転移温度Tgを有する顕色剤を用いた記録媒体
では、その結晶の融解エンタルピ変化ΔHが小さくなる
ことの寄与が大きく、結果的に記録材料を融解するまで
に供給すべき熱エネルギー量が低減されて省エネルギー
を図ることができる。
【0041】なお、上記のように顕色剤についてのみガ
ラス転移温度Tgが25℃以上であると規定した理由
は、一般的に呈色性化合物及び顕色剤を含有する組成系
では顕色剤の配合量が多く設定されるため、呈色性化合
物よりも顕色剤が上述したような条件を満足すること
が、記録材料を融解するまでに供給すべき熱エネルギー
量の低減のうえで有効となるからである。さらに、本発
明の記録媒体において、熱安定性の観点からは、組成系
全体のガラス転移温度が高いことが好ましく、組成系全
体のガラス転移温度を上昇させるためには、より好まし
い顕色剤のガラス転移温度Tgは50℃以上である。た
だしガラス転移温度Tgが余りにも高いと、結晶化温度
Tc以上融点Tm未満の温度での加熱による系の結晶化
に当り大きな熱エネルギーが必要となり、かつ系を非晶
質に戻す際の温度も非常に高く実用的でなくなるため、
ガラス転移温度Tgは150℃以下であることが好まし
い。
【0042】呈色性化合物と顕色剤との2成分系におい
て好ましい配合比は、呈色性化合物1重量部に対し顕色
剤が0.1〜100重量部、さらには1〜10重量部で
ある。この理由は、顕色剤が0.1重量部未満だと、記
録または消去時に呈色性化合物と顕色剤との相互作用を
充分に増大させることが困難である一方、逆に顕色剤が
100重量部を越えると、発色状態での発色濃度が低下
する傾向があるためである。
【0043】次に、本発明における、呈色性化合物、顕
色剤及び可逆材の3成分系からなる記録媒体について説
明する。
【0044】本発明において用いられる可逆材は、無色
性の良好な非晶質を容易に形成し得ることが望まれ、特
に非晶質で無色透明であるほど得られる記録媒体ではコ
ントラスト比の極めて優れた表示が実現される。また、
適当な可逆材を選択すれば、無色透明な非晶質、着色不
透明な結晶質を適宜形成することも可能であり、ひいて
は背景表示の利用が容易である。このような望ましい可
逆材における光透過率の温度依存性の一例を図4に示
す。図4に示すように、可逆材は非晶質状態では透過率
が高く、結晶質状態では透過率が低い。いま、非晶質状
態から結晶化温度Tc以上融点Tm未満の温度に加熱し
て結晶化すれば、ガラス転移温度Tg以下の室温でも結
晶質が保持される。このとき光透過率は破線Iのように
変化する。また結晶質状態から融点Tm以上に加熱し、
融解液をガラス転移温度Tg以下の室温まで急冷または
放冷すれば、非晶質に戻る。このとき光透過率は実線I
Iのように変化する。なお、可逆材と呈色性化合物との
組み合わせ、または可逆材と顕色剤との組み合わせで図
4のような特性を示す場合もある。
【0045】このような可逆材としては、上式(1)か
らも明らかな通り、分子量が大きい一方で重量当りの結
晶の融解エンタルピ変化ΔHの小さな成分が、最大結晶
成長速度MCVが小さいことから好ましい。なおここ
で、可逆材の結晶の融解エンタルピ変化ΔHが小さい
と、上述したようにその結晶の融解に要する熱エネルギ
ー量が少量となるので、省エネルギーの点でも好まし
い。このような観点から、具体的にはステロイド骨格等
球状に近く嵩高い分子骨格を有する化合物が可逆材とし
て好ましく用いられ得る。より具体的には、例えばコレ
ステロール、ステグマステロール、プレグネノロン、メ
チルアンドロステンジオール、エストラジオールベンゾ
エート、エピアンドロステン、ステノロン、β−シトス
テロール、プレグネノロンアセテート、β−コレスタロ
ールなどが挙げられる。またこれらは、上述したような
呈色性化合物及び顕色剤の2成分系からなる記録媒体に
おける顕色剤としても用いられ得る。
【0046】一方、分子量が100未満の低分子化合物
や分子量が100以上であっても直鎖状長鎖アルキル誘
導体や平面状芳香族化合物は、結晶の融解エンタルピ変
化ΔHが大きく非晶質が形成され難い。ただし、分子間
で複数の水素結合を形成し得る多価水素結合性の化合物
は、分子量が小さいかあるいは結晶の融解エンタルピ変
化ΔHがある程度大きくても、上式(1)中のhc が増
大することになるため非晶質が形成されやすい。具体的
には、分子間で水素結合を形成し得る水酸基、1級及び
2級アミノ基、1級及び2級アミド結合、ウレタン結合
基、尿素結合、ヒドラゾン結合、ヒドラジン基、カルボ
キシル基等の水素結合性基を分子内に複数個有する化合
物が例示されるが、分子内に複数個の水素結合性基を有
していても、分子内で水素結合を形成する化合物はこれ
には該当しない。
【0047】可逆材はそれ自体が図4に示すような2値
の熱エネルギーの供給あるいは2種の熱履歴により可逆
的に結晶質−非晶質転移を繰り返し得る成分であること
が好ましい。このためには、可逆材の分子構造の最適化
が重要であるが、2種以上の可逆材の併用や、可逆材と
組み合わせて用いられる呈色性化合物及び顕色剤の選択
によって、組成系としての最大結晶成長速度MCVと最
大結晶成長温度Tc,max を適宜調整することも有効であ
る。また、複数種の可逆材を併用し、2値の熱エネルギ
ーの供給又は2種の熱履歴により可逆的に2つの相分離
状態間又は相分離状態−非相分離状態間の変化を繰り返
し得るようにしてもよい。
【0048】さらに、可逆材としては顕色剤との間に相
互作用を生じる成分が好ましい。この理由は、可逆材中
に呈色性化合物及び顕色剤が均一に存在する消色状態の
非晶質において、可逆材と顕色剤との間に相互作用が生
じると、消色状態での呈色性化合物と顕色剤との相互作
用を一段と減少させることができ、結果的にコントラス
ト比の極めて優れた表示を実現することが可能となるか
らである。ここで、上述したように顕色剤との間に相互
作用を生じる成分としては、顕色剤との間に水素結合等
イオン的な力が働き得るものであればよく、具体的に
は、アルコール類、チオール類、カルボン酸類、カルボ
ン酸エステル類、リン酸エステル類、スルホン酸エステ
ル類、エーテル類、スルフィド類、ジスルフィド類、ス
ルホキシド類、スルホン類、炭酸エステル類等が挙げら
れる。これらは1種または2種以上を混合して用いるこ
とが可能である。
【0049】本発明における、呈色性化合物、顕色剤及
び可逆材の3成分系からなる記録媒体において好ましい
配合比は以下の通りである。呈色性化合物と顕色剤との
配合比は呈色性化合物1重量部に対し顕色剤を0.1〜
10重量部、さらには1〜2重量部とすることが好まし
い。この理由は、顕色剤が0.1重量部未満だと、記録
または消去時に呈色性化合物と顕色剤との相互作用を充
分に増大させることが困難であり、逆に顕色剤が10重
量部を越えると、記録または消去時に呈色性化合物と顕
色剤との相互作用を充分に減少させることが困難で、い
ずれの場合もコントラスト比の優れた表示が実現できな
いおそれがあるからである。また、可逆材の配合比は呈
色性化合物1重量部に対し1〜200重量部、さらには
10〜100重量部に設定されることが好ましい。何と
なれば、可逆材が1重量部未満では可逆材を配合したこ
とで発現される組成系の結晶−非晶質転移、または2つ
の相分離状態間もしくは相分離状態−非相分離状態間の
変化を利用できず、可逆材が200重量部を越えると発
色状態での発色濃度が低下する傾向があるためである。
【0050】さらに、本発明における呈色性化合物、顕
色剤、可逆材及び相分離制御剤の4成分系からなる記録
媒体について説明する。
【0051】本発明において用いられる相分離制御剤と
しては、炭素数が8以上の長直鎖部と例えばOH,C
O,COOH等の極性基を有する結晶性の強い低分子有
機材料が好適である。具体的には、長直鎖アルキル基を
有する直鎖高級アルコール、直鎖高級多価アルコール、
直鎖高級脂肪酸、直鎖高級多価脂肪酸、それらのエステ
ルとエーテル結合体、直鎖高級脂肪酸アミド、直鎖高級
多価脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0052】より具体的には、ステアリルアルコール、
1−エイコサノール、1−ドコサノール、1−テトラコ
サノール、1−ヘキサコサノール、1−オクタコサノー
ルなどを代表とする直鎖高級1価アルコール、1,8−
オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,1
2−ドデカンジオール、1,12−オクタデカンジオー
ル、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカン
ジオール、1,2−ヘキサデカンジオールなどを代表と
する直鎖高級多価アルコール、パルミチン酸、ステアリ
ン酸、1−オクタデカン酸、ベヘン酸、1−ドコサン
酸、1−テトラコサン酸、1−ヘキサコサン酸、1−オ
クタコサン酸などを代表とする直鎖高級脂肪酸、セバシ
ン酸、ドデカン2酸、1,12−ドデカンジカルボキシ
ル酸などを代表とする直鎖高級多価脂肪酸、14−ヘプ
タコサノン、ステアロンなどを代表とする直鎖高級ケト
ン、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸nプロパ
ノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラ
ウリン酸ブタノールアミド、ラウリン酸ヘキサノールア
ミド、ラウリン酸オクタノールアミド、パルミチン酸エ
タノールアミド、パルミチン酸nプロパノールアミド、
パルミチン酸イソプロパノールアミド、パルミチン酸ブ
タノールアミド、パルミチン酸ヘキサノールアミド、パ
ルミチン酸オクタノールアミド、ステアリン酸エタノー
ルアミド、ステアリン酸nプロパノールアミド、ステア
リン酸イソプロパノールアミド、ステアリン酸ブタノー
ルアミド、ステアリン酸ヘキサノールアミド、ステアリ
ン酸オクタノールアミド、ベヘン酸エタノールアミド、
ベヘン酸nプロパノールアミド、ベヘン酸イソプロパノ
ールアミド、ベヘン酸ブタノールアミド、ベヘン酸ヘキ
サノールアミド、ベヘン酸オクタノールアミドなどを代
表とする直鎖高級脂肪酸アルコールアミド、エチレング
リコールラウリン酸ジエステル、プロピレングリコール
ラウリン酸ジエステル、ブチレングリコールラウリン酸
ジエステル、カテコールラウリン酸ジエステル、シクロ
ヘキサンジオールラウリン酸ジエステル、エチレングリ
コールパルミチン酸ジエステル、プロピレングリコール
パルミチン酸ジエステル、ブチレングリコールパルミチ
ン酸ジエステル、カテコールパルミチン酸ジエステル、
シクロヘキサンジオールパルミチン酸ジエステル、エチ
レングリコールステアリン酸ジエステル、プロピレング
リコールステアリン酸ジエステル、ブチレングリコール
ステアリン酸ジエステル、カテコールステアリン酸ジエ
ステル、シクロヘキサンジオールステアリン酸ジエステ
ル、エチレングリコールベヘン酸ジエステル、プロピレ
ングリコールベヘン酸ジエステル、ブチレングリコール
ベヘン酸ジエステル、カテコールベヘン酸ジエステル、
シクロヘキサンジオールベヘン酸ジエステルなどを代表
とする直鎖高級脂肪酸ジオールジエステルなどが挙げら
れる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いるこ
とができる。混合物の一例として、エステル系ワック
ス、アルコール系ワックス、ウレタン系ワックスに、相
分離制御剤として使用できる材料がある。
【0053】呈色性化合物、顕色剤、可逆材及び相分離
制御剤の4成分系において好ましい配合比に関しては、
顕色剤の呈色性化合物に対する配合比及び可逆材の呈色
性化合物に対する配合比は上述した3成分系と同様であ
る。また、相分離制御剤の配合比は呈色性化合物1重量
部に対し0.1〜100重量部、さらには1〜50重量
部とすることが好ましい。何となれば、相分離制御剤が
0.1重量部未満では発色速度に大きな改善が見られ
ず、100重量部を越えると組成系のガラス転移温度が
低くなりすぎて使用温度下での保存安定性に問題が発生
するからである。
【0054】さらに本発明の記録媒体においては、呈色
性化合物、顕色剤、可逆材及び相分離制御剤以外の成分
として、長鎖化合物等を必要に応じ適宜配合してもよ
い。また、例えば呈色性化合物を適宜選択したうえで呈
色性化合物以外に着色染料等を配合することで、あらゆ
る所望の着色状態を得ることが可能となる。
【0055】本発明では、上述したような各成分を含有
する組成系の可逆的な結晶質−非晶質転移などに基づき
情報の記録・消去が行なわれるため、この組成系の非晶
質が不安定であると室温放置やわずかな加熱で全体に結
晶化が進み記録された情報が消去されてしまう。ここで
非晶質の結晶化が進む結晶化温度Tcは、加熱速度によ
っても変化するが一般にはガラス転移温度Tgと融点T
mの間の温度範囲に存在する。従って、本発明で組成系
の全体または一部が非晶質を形成したときのガラス転移
温度Tgは、25℃以上さらには50℃以上であること
が好ましい。ただし、これを逆に利用して例えば組成系
のガラス転移温度Tgを室温に近く調整すれば、記録さ
れた情報が所望の期間だけ保存された後は自然消去され
る記録媒体を実現することも可能となる。さらに、特殊
な用途の記録材料に用いることを前提として、組成系の
ガラス転移温度Tgが室温より低く設定される場合もあ
る。例えば組成系のガラス転移温度Tgを室温より低く
調整したうえで、冷蔵が必要な物質を収納する冷蔵庫に
おける故障や運搬時等に発生した一時的な温度の上昇
を、組成系の結晶化に伴う着色状態の変化として記録さ
せることも可能である。一方本発明においては、組成系
のガラス転移温度Tgが余りにも高いと、結晶化温度T
c以上融点Tm未満の温度での加熱による結晶化に当り
大きな熱エネルギーが必要となるため、組成系のガラス
転移温度Tgは150℃以下であることが好ましい。
【0056】また、混合物のガラス転移温度Tgは一般
に配合された各成分のガラス転移温度Tgの重量平均的
な値を示すことが知られており、本発明において組成系
のガラス転移温度Tgを所望の値に設定するには、組成
系中の各成分のそれぞれのガラス転移温度Tgを制御す
ることが有効である。従って、本発明の記録媒体では組
成系中に配合される呈色性化合物、顕色剤及び可逆材と
して、それぞれ個々にガラス転移温度Tgが25℃以上
さらには50℃以上の非晶質を形成し得る成分が用いら
れることが好ましい。この点を考慮しても、可逆材とし
ては、上述したような分子量が大きくかつ重量当りの融
解エンタルピΔHの小さい、例えば球状に近く嵩高い分
子骨格を有する化合物や、分子間で複数の水素結合を形
成し得る多価水素結合性の化合物がやはり好適である。
なお、本発明の記録媒体における組成系や各成分のガラ
ス転移温度Tgは、例えば示差走査型熱量分析装置(D
SC)を使用すれば、非晶質を形成する組成系の全体あ
るいは一部についての測定や、組成系中の各成分につい
て各成分毎の個々の測定が可能となる。
【0057】一方、明確なガラス転移温度Tgを有する
非晶質を形成しやすい成分では、上述した通りガラス転
移温度Tgと融点Tmの間にTg=a・Tmが成立する
ことから、本発明において組成系や組成系中の成分のガ
ラス転移温度Tgを高く設定すると、結果的に組成系の
融点Tmも高くなる。従って、省エネルギーや非晶質の
熱安定性の向上を図ることができる反面、結晶質を融解
した後ガラス転移温度Tg以下まで急冷または放冷して
非晶質に戻す際に非常に高温まで加熱する必要が生じ、
耐熱性の優れた基板が求められる等の実用性の低下を招
く傾向がある。これに対し本発明では、複数の結晶形を
形成する組成系を記録材料として用いることで、実用性
の低下を回避することが可能である。ここで、組成系が
複数の結晶形を形成する場合に、組成系の熱特性を例え
ば示差走査型熱量分析装置を使用して測定した結果を図
5に示す。
【0058】図示される通り複数の結晶形を形成する組
成系は、熱特性図上で2つ以上の結晶化温度Tc(Tc,
1 、Tc,2 )と融点Tm(Tm,1 、Tm,2 )を有してお
り、しかも上記Tg=a・Tmの関係式は図中の高温側
のTm(Tm,2 )について成立する。すなわち、このよ
うな組成系は、Tg=a・Tmの関係を満足する通常の
融点Tm(Tm,2 )より低温側にも融点Tm(Tm,1 )
を有するので、加熱時の温度を高温結晶の融点Tm(T
m,2 )以上に上昇させなくても、低温結晶の融点Tm
(Tm,1 )以上で結晶質が融解する。従って、系のガラ
ス転移温度Tgを高く設定したうえでこれを本発明の記
録媒体の記録材料に適用すれば、省エネルギーや非晶質
の熱安定性の向上を図りつつ、結晶質を融解して非晶質
に戻す際の加熱温度を低温化することが可能となる。な
お本発明において、具体的に複数の結晶形を形成する組
成系を調製するには、例えば組成系中配合量の多いマト
リックス剤や顕色剤について、複数の結晶形を形成し得
る成分を用いればよい。
【0059】本発明の記録媒体は、例えば上述したよう
な各成分からなる組成物を無溶媒で融解して混合した
後、急冷または放冷して非晶質化することにより得られ
る。このとき、融解液を鋳型内で成形すれば所望の形状
で得ることが可能であり、融解液を薄く引き延ばせば薄
膜化することもできる。また、組成物を適当な溶媒に溶
解させキャストしても薄膜化は可能であり、このように
薄膜化する場合薄膜の膜厚は0.5μm以上50μm以
下であることが好ましい。何となれば、薄膜の膜厚が薄
すぎると、得られる記録媒体において発色状態での発色
濃度が不充分となるおそれがあり、逆に薄膜の膜厚が厚
すぎると、記録・消去時に大きな熱エネルギーが必要と
なって高速での記録・消去を行なうことが困難となって
しまう。
【0060】本発明においては、記録媒体の強度向上の
観点から上述したような組成物を適当な媒質中に担持さ
せてもよい。具体的には、組成物のマイクロカプセル
化、バインダーポリマーへの分散化、無機ガラスへの分
散化、多孔質媒体への分散化、層状物質へのインターカ
レーション化等が挙げられる。
【0061】これらのうち、上述したような組成物をバ
インダーポリマーに分散させる場合は、バインダーポリ
マーが相分離あるいは再結晶の繰り返しによる欠陥発生
を抑制すると同時に、呈色性化合物及び顕色剤の濃度を
低下させて消色状態での発色を一段と希釈する、本発明
におけるマトリックス剤としても機能する。ここで、上
述したような組成物をバインダーポリマーに保持させる
には、高分子化合物に低分子成分を浸透させる方法、高
分子化合物に低分子成分を分散して塗布する方法があ
る。前者の浸透による製造方法としては、呈色性化合
物、顕色材および可逆材から成る組成物を無溶剤で融解
させ、シート状の高分子化合物に含浸させる方法、呈色
性化合物、顕色材および必要に応じ可逆材を溶剤に溶解
させた溶液を、少なくとも一部に呈色性化合物および顕
色材さらには可逆材から成る組成物を保持できる空間を
有するシート状の高分子化合物に浸透させる方法などが
例として挙げられる。さらに、高分子化合物の材料とし
ては前述の2成分または3成分からなる組成物あるいは
この組成物を含む溶液に対してぬれる表面特性を有する
ものであることが、膜厚を均一にすることから望まし
い。一方後者の塗布による製造方法にも、いくつかの選
択肢がある。具体的には、高分子化合物、呈色性化合
物、顕色材および必要に応じ可逆材を含有した溶液から
各種分散法により分散成分を高分子化合物中に分散させ
る方法あるいは高分子化合物、呈色性化合物および顕色
材さらには可逆材からなる組成物を無溶剤で加熱し、各
種分散法により分散成分を高分子化合物中に分散させる
方法などが例として挙げられる。
【0062】分散法としては、ミキサー法、サンドミル
法、ボールミル法、インペラーミル法、コロイドミル
法、3本ロールミル法、ニーダー法、2本ロール法、バ
ンバリーミキサー法、ホモゲナイザー法、ナノマイザー
法などが例として挙げられ、分散溶液の粘度、記録媒体
の用途、形態等に応じて適宜選択することができる。
【0063】塗布法としては、スピン塗布法、引上げ塗
布法、エアドクター塗布法、ブレード塗布法、ロッド塗
布法、ナイフ塗布法、スクイズ塗布法、含浸塗布法、リ
バースロール塗布法、トランスファーロール塗布法、グ
ラビア塗布法、キスロール塗布法、キャスト塗布法、ス
プレー塗布法、カーテン塗布法、カレンダー塗布法、押
し出し塗布法、静電塗布法、スクリーン印刷法などが例
として挙げられ、記録媒体の用途、形態等に応じて適宜
選択することができる。
【0064】上述したような高分子化合物は、ポリエチ
レン類、塩素化ポリエチレン類、エチレン・酢酸ビニル
共重合体、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸共重
合体などのエチレン共重合体類、ポリブタジエン類、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、
ポリプロピレン類、ポリイソブチレン類、ポリ塩化ビニ
ル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリ酢酸ビニル類、ポリ
ビニルアルコール類、ポリビニルアセタール類、ポリビ
ニルブチラール類、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩
化エチレン樹脂、フッ化エチレン・プロピレン樹脂、フ
ッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、四フッ化エチ
レン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、四フ
ッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共
重合体、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合
体、四フッ化エチレン・エチレン共重合体などの四フッ
化エチレン共重合体、含フッ素ポリベンゾオキサゾール
などのフッ素樹脂類、アクリル樹脂類、メタクリル樹脂
類、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル・ブタジ
エン・スチレン共重合体などのアクリロニトリル共重合
体類、ポリスチレン、ハロゲン化ポリスチレン、スチレ
ン・メタクリル酸共重合体、スチレン・アクリロニトリ
ル共重合体などのスチレン共重合体類、アセタール樹脂
類、ナイロン66などのポリアミド類、ポリカーボネー
ト類、ポリエステルカーボネート類、セルロース系樹脂
類、フェノール樹脂類、ユリア樹脂類、エポキシ樹脂
類、不飽和ポリエステル樹脂類、アルキド樹脂類、メラ
ミン樹脂類、ポリウレタン類、ジアリールフタレート樹
脂類、ポリフェニレンオキサイド類、ポリフェニレンス
ルフィド類、ポリスルフォン類、ポリフェニルサルフォ
ン、シリコーン樹脂類、ポリイミド類、ビスマレイミド
トリアジン樹脂類、ポリイミドアミド類、ポリエーテル
スルフォン類、ポリメチルペンテン類、ポリエーテルエ
ーテルケトン類、ポリエーテルイミド類、ポリビニルカ
ルバゾール類、ノルボルネン系非晶質ポリオレフィンな
どが例として挙げられる。またセルロース類および中性
紙類は、比較的多種の呈色性化合物および顕色剤さらに
は可逆材からなる組成物の浸透が容易である点、高い発
色濃度、低い消色濃度が得られる点などから好ましい材
料である。
【0065】ここで、記録媒体の発色濃度の低下を抑制
するためには、高分子化合物が以下のような特性を有し
ていることが好ましい。すなわち、高分子化合物100
gに対する呈色性化合物、顕色材または可逆材の溶解度
が10g以下であることが好ましい。また、高分子化合
物の、炭素、水素あるいはハロゲン元素のみから構成さ
れる繰り返し単位が75wt%を越えることが好まし
い。具体的には、下記一般式で示される高分子化合物に
おいて(A)m の重量をa、(B)n の重量をbとした
とき、a/(a+b)>0.75を満たすことが好まし
い。
【0066】−(A)m −(B)n − (ただし、Aはポリオレフィンあるいはポリスチレン、
またはポリオレフィンあるいはポリスチレンをハロゲン
元素で置換したもの、Bは少なくとも炭素、水素および
ハロゲン元素以外の元素を含有する繰り返し単位、すな
わち2価あるいは3価の元素を含む極性基を有する繰り
返し単位である。さらにmは1以上、nは0以上の整数
である。) 高分子化合物に、呈色性化合物、顕色剤、あるいは可逆
材が溶解するか否かを判断する方法を、呈色性化合物を
例にとり以下に示す。呈色性化合物の融点で軟化する高
分子化合物に対しては、加熱により軟化した高分子化合
物に、呈色性化合物を加え、よく混合した後、室温まで
冷却した組成物を、顕微鏡、X線回折や電子線回折など
の一般的な方法で、呈色性化合物の結晶化を観察するこ
とにより、結晶の有無で呈色性化合物が高分子化合物に
溶解するか否かを判断できる。すなわち前述したように
して高分子化合物100gに対し、例えば呈色性化合物
1gを加え、よく混合した後、室温まで冷却した組成物
に結晶が観測されれば、高分子化合物100gに対する
呈色性化合物の溶解度は1g以下であるといえる。な
お、呈色性化合物の融点で軟化しない高分子化合物に対
しては、呈色性化合物と高分子化合物を溶解させた溶液
を各種塗布法により塗布し、乾燥させた後、呈色性化合
物の融点まで加熱し、呈色性化合物を融解後、室温まで
冷却した組成物について、上記と同様な方法で呈色性化
合物の結晶化を観察することにより、呈色性化合物の融
点で軟化する高分子化合物と同様にして呈色性化合物が
高分子化合物に溶解するか否かを判断できる。
【0067】また、高分子化合物のa/(a+b)値の
測定法としては、例えば高分子化合物の粘弾性やIRを
測定することにより、その高分子化合物を構成する材料
を特定し、さらにこの高分子化合物を元素分析すること
により構成する材料の配合比を求めることができる。そ
して、この構成する材料の重量及び配合比からa/(a
+b)の値を算出することができる。
【0068】以上のような高分子化合物の特性は、特に
高分子化合物中に分散させる呈色性化合物及び顕色剤の
含有量が少ない場合に、発色濃度の低下を抑制するのに
有効である。
【0069】一方、高分子化合物中に分散させた呈色性
化合物及び顕色剤さらには可逆材の結晶質−非晶質転移
の転移速度を上げるためには、転移を生じる組成系と高
分子化合物とがある程度相互作用することが好ましい。
この場合、高分子化合物としては、極性基を有するもの
が好ましい。また、極性基を持たないものでも高分子化
合物の混合比を高くすると、ファンデルワールス力によ
る相互作用を生じさせることができる。
【0070】このような目的で用いられる高分子化合物
としては、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリ
エチレンイソフタレート、ポリメチルペンテン、スチレ
ン−メタクリル酸メチルランダム共重合体、スチレン−
メタクリル酸メチルブロック共重合体、ポリメタクリル
酸メチル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエステル
イミド、ポリアミド、ポリイミドなどが挙げられる。
【0071】また、上述したマイクロカプセル化技術と
しては、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化
被覆法、水溶液系からの相分離法、有機溶液系からの相
分離法、融解分散冷却法、気中懸濁法、スプレードライ
ング法等があり、記録媒体の用途、形態等に応じて適宜
選択することができる。なお本発明では、得られたマイ
クロカプセルを上記バインダーポリマーや無機ガラスに
分散させてもよい。これにより、組成物自体は分散性が
充分でない媒質に対しても、良好に分散した形態を得る
ことができる。さらに、本発明で用いられ得る上記多孔
質媒体としては各種ポリマーや無機化合物、上記層状物
質としては雲母族、粘土鉱物、滑石、緑石族等が例示さ
れる。無機ガラスとしてはいわゆるゾル−ゲル法で作製
できるものが好ましく、その際ゲル化温度があまり高く
ないことが望まれる。
【0072】以上のように本発明の記録媒体は、バルク
としての形態以外に基材上に記録層が薄膜として形成さ
れる形態、繊維と複合化された形態等でもよく、その形
態について特に限定されない。なおここでの基材として
は、プラスチック板、金属板、半導体基板、ガラス板、
木板、紙、OHPシート等を用いることができる。ま
た、上述したようにマイクロカプセルを調製し塗料やイ
ンクとして基材上に塗布する形態によれば、マイクロカ
プセル毎に異種の呈色性化合物を用いることでカラー対
応が容易で、しかも例えば異種の呈色性化合物を含有
し、かつ結晶化温度Tcや融点Tmが互いに異なるマイ
クロカプセルを所望の配合比で混合して用いれば、供給
する熱エネルギーの大きさで着色状態を制御することが
できるので、例えばシアン、マゼンタ、イエロー各色の
呈色性化合物によるフルカラー対応も可能である。
【0073】なお本発明の記録媒体においては、必要に
応じワックス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性
樹脂等からなる厚さ0.1〜100μm程度の保護層を
設けることも可能である。保護層の形成法としては、上
述した保護層成分を含有した溶液、あるいは溶剤に上述
した保護層成分を溶解あるいは分散させた溶液を記録媒
体層の上に塗布、乾燥させることにより作製できる。ま
た、耐熱性フィルムあるいは接着剤を塗布した耐熱性フ
ィルムをドライラミネート法により、記録媒体層に接着
させることによっても作製できる。
【0074】耐熱性フィルムとしては、呈色性化合物お
よび顕色材さらには可逆材の融点以上の熱変形温度を有
するものであれば何でもよく、格別制限されるものでは
ない。このようなシート状の高分子化合物としては、ポ
リエーテルエーテルケトン類、ポリカーボネート類、ポ
リアリレート類、ポリスルフォン類、四フッ化エチレン
樹脂類および四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキ
シエチレン共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロ
アルキルビニルエーテル共重合体、四フッ化エチレン・
六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン・エチ
レン共重合体などの四フッ化エチレン共重合体、三フッ
化塩化エチレン樹脂類、フッ化ビニリデン樹脂類、含フ
ッ素ポリベンゾオキサゾール類、ポリプロピレン類、ポ
リビニルアルコール類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、
ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリ
スチレン類、ナイロン66などのポリアミド類、ポリイ
ミド類、ポリイミドアミド類、ポリエーテルスルフォン
類、ポリメチルペンテン類、ポリエーテルイミド類、ポ
リウレタン類、ポリブタジエン類などが例として挙げら
れ、熱エネルギー印加方法、記録媒体の用途、形態等に
応じて適宜選択することができる。
【0075】耐熱性フィルムは、必要に応じて接着剤を
介在させたうえで本発明の可逆性感熱記録媒体に接着す
れば良く、接着剤としては、一般にドライラミネート法
に用いられる材料が適用できる。具体的には、アクリル
樹脂類、フェノキシ樹脂類、アイオノマー樹脂類、エチ
レン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸・無
水マレイン酸共重合体などのエチレン共重合体類、、ポ
リビニルエーテル類、ポリビニルホルマール類、ポリビ
ニルブチラール類、ポリエステル類、ポリスチレン類お
よびスチレン−アクリル酸共重合体などのスチレン共重
合体、酢酸ビニル樹脂類、ポリエステル類、ポリウレタ
ン類、キシレン樹脂類、エポキシ樹脂類、フェノール樹
脂類、尿素樹脂類が例として挙げられる。
【0076】さらに本発明の記録媒体は、記録媒体層と
基材との接着性向上、熱印加時の組成物の基材への浸透
防止、断熱性向上、耐溶剤性向上などの目的で、必要に
応じて、記録媒体層と基材の間に下引き層を設けること
ができる。
【0077】本発明の記録媒体において、記録・消去を
行なうためには、上述した通り互いに大きさの異なる2
値の熱エネルギーを供給するか、互いに冷却速度の異な
る2種の熱履歴を付与すればよく、具体的に記録時の熱
エネルギーの供給に当ってはサーマルヘッドやレーザー
光等を好ましく使用できる。このうちサーマルヘッド
は、分解能はさほど大きくないものの結晶質、非晶質に
限らず大面積の加熱が可能である点で好ましく、またス
ポット径を小径化し得るレーザー光は、高密度記録化へ
の対応が容易である点で好ましい。ただし、レーザー光
を使用して本発明の記録媒体に熱エネルギーを供給する
場合は、通常透光性の良好な非晶質に対してもレーザー
光を効率よく吸収させるために、レーザー光の波長に吸
収帯を有する光吸収層を設けるか、あるいはレーザー光
の波長に吸収帯を有する化合物を組成系中に配合するこ
とが望まれる。一方消去時は、記録媒体全体を一度に加
熱できるホットスタンパー法や熱ロール法等で熱エネル
ギーを供給することが好ましく、加熱された記録媒体を
冷却する際には、放冷してもよいが冷スタンパー法や冷
ロール法あるいは冷気流による空冷法等で急冷すること
が好ましい。さらに本発明の記録媒体では、互いにエネ
ルギー、スポット径等の異なる複数のレーザー光を使用
することで、オーバーライト記録を行なうことも可能で
ある。
【0078】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0079】実施例1 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオ
ール50重量部をそれぞれ配合した後、加熱融解して均
一な組成物とした。なお、示差操作型熱量分析を行なっ
たところ、クリスタルバイオレットラクトン及びメチル
アンドロステンジオールはガラス転移温度Tgがそれぞ
れ64℃、71℃であり、室温で安定な非晶質を形成し
た。一方、没食子酸プロピルは結晶性が高く安定な非晶
質は形成されなかった。また組成系全体としては、ガラ
ス転移温度Tgが70℃であり、室温で安定な非晶質を
形成することが確認された。
【0080】この後、上記組成物を厚さ1.5mmのガ
ラス基板上で少量融解し、ギャップ剤として直径約10
ミクロンのシリカ粒子を微量付着させた厚さ1mmガラ
ス板を載置し融解液を全面に広げて挟み込み、室温で放
冷した。次いでガラス板をはがし取ったところ、ガラス
基板上に膜厚約10μmの透明な非晶質薄膜が形成され
ていた。続いて、この非晶質薄膜上に光硬化性エポキシ
樹脂を塗布後、光硬化させて膜厚1μmの保護膜を形成
した。さらに、保護膜形成時に部分的に結晶化した非晶
質薄膜を非晶質に戻すため、熱ロールで全面を押圧した
後室温で放冷して、本発明の記録媒体を得た。
【0081】得られた記録媒体の縦断面図を図6に示
す。図示されるようにここでの記録媒体は、基材として
のガラス基板11上に記録層12が薄膜として形成され
た形態を有している。なお図中13は保護膜、14はシ
リカ粒子からなるギャップ剤である。
【0082】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。なおこのとき印字部及び背景部におい
て、波長610nmの光に対するピーク吸光度はそれぞ
れ1.7,0.04でコントラスト比は43であり、第
42回高分子討論会予稿集、1993年、2736頁に
示された組成系のコントラスト比の報告値が10程度で
あるのに対し、コントラスト比の非常に優れた表示が得
られた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温
で放置したところ、印字部が透明な非晶質に戻り消去が
行なわれたことが確認された。さらに、同様の記録・消
去を100サイクル行なっても劣化は生じず、印字状態
は30℃で1年間放置した後も変化は認められなかっ
た。
【0083】一方この記録媒体について、上記熱ロール
より低温の熱ロールで全面を押圧した後室温で放冷し
て、非晶質薄膜全体を結晶化せしめ青色に着色させた。
次に上記サーマルヘッド(6dot/mm、380Ω)
を使用し、印加電圧15V、パルス幅2msecで記録
媒体への加熱印字を実施した結果、印字部が非晶質化し
て無色透明になりネガタイプの記録が行なわれた。なお
このとき、印字部及び背景部のコントラスト比、記録・
消去の繰り返し安定性、印字状態の保存安定性は、上述
したようなポジタイプの記録を行なった場合と同等であ
った。
【0084】実施例2 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオ
ール50重量部をエタノールに溶解した後、得られたエ
タノール溶液を厚さ1.5mmのガラス基板上に塗布、
乾燥させ、膜厚約15μmの一部不透明な薄膜を形成し
た。続いて、この薄膜上に光硬化性エポキシ樹脂を塗布
後、光硬化させて膜厚1μmの保護膜を形成した。さら
に、部分的に結晶化した上記薄膜全体を非晶質化するた
め、熱ロールで全面を押圧した後室温で放冷して、本発
明の記録媒体を得た。
【0085】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧11V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。なおこのとき印字部及び背景部におい
て、波長610nmの光に対するピーク吸光度はそれぞ
れ1.9,0.05でコントラスト比は38であった。
続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温で放置し
たところ、印字部が透明な非晶質に戻り消去が行なわれ
たことが確認された。さらに、同様の記録・消去を10
0サイクル行なっても劣化は生じず、印字状態は30℃
で1年間放置した後も変化は認められなかった。
【0086】一方この記録媒体について、上記熱ロール
より低温の熱ロールで全面を押圧した後室温で放冷し
て、非晶質薄膜全体を結晶化せしめ青色に着色させた。
次に上記サーマルヘッド(6dot/mm、380Ω)
を使用し、印加電圧15V、パルス幅2msecで記録
媒体への加熱印字を実施した結果、印字部が非晶質化し
て無色透明になりネガタイプの記録が行なわれた。なお
このとき、印字部及び背景部のコントラスト比、記録・
消去の繰り返し安定性、印字状態の保存安定性は、上述
したようなポジタイプの記録を行なった場合と同等であ
った。
【0087】実施例3 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンの
代わりに日本曹達(株)製フルオラン系ロイコ化合物P
SD−Vを用いた以外は、実施例1と全く同様にして本
発明の記録媒体を得た。次に東芝製サーマルヘッド(6
dot/mm、380Ω)を使用し、印加電圧10V、
パルス幅1msecで得られた記録媒体への加熱印字を
実施した結果、印字部が結晶化して朱色に着色しポジタ
イプの記録が行なわれた。続いて、やはりこのサーマル
ヘッドを使用し、印加電圧15V、パルス幅2msec
で記録媒体全面を順次加熱したところ、印字部が透明な
非晶質に戻り消去が行なわれたことが確認された。さら
に、同様の記録・消去を100サイクル行なっても劣化
は生じず、印字状態は30℃で1年間放置した後も変化
は認められなかった。
【0088】実施例4 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンの
代わりに日本曹達(株)製フルオラン系ロイコ化合物P
SD−290を用いた以外は、実施例1と全く同様にし
て本発明の記録媒体を得た。次に東芝製サーマルヘッド
(6dot/mm、380Ω)を使用し、印加電圧10
V、パルス幅1msecで得られた記録媒体への加熱印
字を実施した結果、印字部が結晶化して黒色に着色しポ
ジタイプの記録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録
媒体全面を押圧し室温で放置したところ、印字部が透明
な非晶質に戻り消去が行なわれたことが確認された。さ
らに、同様の記録・消去を100サイクル行なっても劣
化は生じず、印字状態は30℃で1年間放置した後も変
化は認められなかった。
【0089】実施例5 マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオール5
0重量部の代わりにコレステロール50重量部及び5β
−コラン酸10重量部を用いた以外は、実施例1と全く
同様にして本発明の記録媒体を得た。なお示差操作型熱
量分析の結果、ここでの組成系は組成系全体として、ガ
ラス転移温度Tg27℃の安定な非晶質を形成すること
が確認されている。
【0090】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧
し室温で放置したところ、印字部が透明な非晶質に戻り
消去が行なわれたことが確認された。なお、印字状態は
30℃で1日放置すると全面が結晶化して青色となり、
情報が短期間で自然消去されることがわかった。
【0091】実施例6 マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオール5
0重量部の代わりにプレグネノロン10重量部を用いた
以外は、実施例2と全く同様にして本発明の記録媒体を
得た。なお、ここでの組成系について予め示差操作型熱
量分析を行なったところ、プレグネノロンはガラス転移
温度Tgが58℃の安定な非晶質を形成し、組成系全体
としてはガラス転移温度Tg36℃の安定な非晶質を形
成することが確認された。
【0092】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。続いて、やはりこのサーマルヘッドを使
用し、印加電圧15V、パルス幅2msecで記録媒体
全面を順次加熱したところ、印字部が透明な非晶質に戻
り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0093】実施例7 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンの
代わりに日本曹達(株)製フルオラン系ロイコ化合物P
SD−Vを用いた以外は、実施例2と全く同様にして本
発明の記録媒体を得た。次に東芝製サーマルヘッド(6
dot/mm、380Ω)を使用し、印加電圧11V、
パルス幅1msecで得られた記録媒体への加熱印字を
実施した結果、印字部が結晶化して朱色に着色しポジタ
イプの記録が行なわれた。続いて、やはりこのサーマル
ヘッドを使用し、印加電圧15V、パルス幅2msec
で記録媒体全面を順次加熱したところ、印字部が透明な
非晶質に戻り消去が行なわれたことが確認された。さら
に、同様の記録・消去を100サイクル行なっても劣化
は生じず、印字状態は30℃で1年間放置した後も変化
は認められなかった。
【0094】実施例8 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンの
代わりに山本化成(株)製フルオラン系ロイコ化合物イ
ンドリルレッドを用いた以外は、実施例5と全く同様に
して本発明の記録媒体を得た。次に東芝製サーマルヘッ
ド(6dot/mm、380Ω)を使用し、印加電圧1
0V、パルス幅1msecで得られた記録媒体への加熱
印字を実施した結果、印字部が結晶化して赤色に着色し
ポジタイプの記録が行なわれた。続いて、熱ロールで記
録媒体全面を押圧し室温で放置したところ、印字部が透
明な非晶質に戻り消去が行なわれたことが確認された。
なお、印字状態は30℃で1日放置すると全面が結晶化
して赤色となり、情報が短期間で自然消去されることが
わかった。
【0095】実施例9 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンの
代わりに日本曹達(株)製フルオラン系ロイコ化合物P
SD−3Gを用いた以外は、実施例2と全く同様にして
本発明の記録媒体を得た。次に熱スタンプ法で、得られ
た記録媒体への加熱印字を実施した結果、印字部が結晶
化して緑色に着色しポジタイプの記録が行なわれた。続
いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温で放置した
ところ、印字部が透明な非晶質に戻り消去が行なわれた
ことが確認された。さらに、同様の記録・消去を100
サイクル行なっても劣化は生じず、印字状態は30℃で
1年間放置した後も変化は認められなかった。
【0096】実施例10 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸エチル1.0重量
部、マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオー
ル50重量部をそれぞれ配合した後、加熱融解して均一
な組成物とした。この組成物を、光学研磨され、光吸収
層としてCrが100nm真空蒸着された厚さ1.2m
mのガラス基板上で少量融解し、さらにガラス板を載置
し融解液を全面に広げて挟み込んだ。次いで、ガラス基
板を水で冷却されたアルミニウム板に押しつけて融解液
を冷却し、記録層となる膜厚約10μmの非晶質薄膜を
形成してガラス基板、光吸収層、記録層及びガラス板か
らなる本発明の記録媒体を得た。
【0097】次に、得られた記録媒体を900RPMで
回転しながら、直径1μmに集光した波長830nmの
半導体レーザー光を記録媒体面での強度が1mWとなる
ように照射して記録層への書き込みを実施した。偏光顕
微鏡で観察すると、レーザー光を照射した書き込み部が
明瞭なコントラストで結晶化していることが確認でき、
幅約1μmのライン状の記録が行なわれたことがわかっ
た。続いて、直径2μmに集光した波長830nmの半
導体レーザー光を記録媒体面での強度が8mWとなるよ
うに照射した。偏光顕微鏡で観察すると、強度8mWの
レーザー光が照射された領域は上記書き込み部も非晶質
となっており、消去が行なわれたことが確認された。な
お、書き込み状態は30℃で1年間放置した後も変化は
認められなかった。
【0098】実施例11 マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオールの
代わりにエストラジオールベンゾエートを用いた以外
は、実施例2と全く同様にして本発明の記録媒体を得
た。なお、示差操作型熱量分析を行なったところ、エス
トラジオールベンゾエートはガラス転移温度Tgが52
℃の安定な非晶質を形成し、組成系全体としてはガラス
転移温度Tg51℃の安定な非晶質を形成することが確
認された。さらにこの組成系は複数の結晶形を形成し、
かつ低温結晶の融点は約140℃、高温結晶の融点は約
180℃で、低温結晶を融解した後室温で放冷すれば無
色透明な非晶質が形成されることもわかった。
【0099】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧
し室温で放置したところ、印字部が透明な非晶質に戻り
消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の記
録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、印
字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められな
かった。
【0100】一方この記録媒体について、上記熱ロール
より低温の熱ロールで全面を押圧した後室温で放冷し
て、非晶質薄膜全体を結晶化せしめ青色に着色させた。
次に上記サーマルヘッド(6dot/mm、380Ω)
を使用し、印加電圧13V、パルス幅2msecで記録
媒体への加熱印字を実施した結果、印字部が非晶質化し
て無色透明になりネガタイプの記録が行なわれた。なお
このとき、印字部及び背景部のコントラスト比、記録・
消去の繰り返し安定性、印字状態の保存安定性は、上述
したようなポジタイプの記録を行なった場合と同等であ
った。
【0101】実施例12 マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオール5
0重量部の代わりにコレステロール10重量部を用いた
以外は、実施例1と全く同様にして本発明の記録媒体を
得た。なお示差操作型熱量分析の結果、ここでの組成系
は組成系全体として、ガラス転移温度Tg27℃の安定
な非晶質を形成することが確認されている。
【0102】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧
し室温で放置したところ、印字部が透明な非晶質に戻り
消去が行なわれたことが確認された。なお、印字状態は
30℃で1日放置すると全面が結晶化して青色となり、
情報が短期間で自然消去されることがわかった。
【0103】実施例13 顕色剤として没食子酸プロピルの代わりにα,α,α’
−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4
−イソプロピルベンゼンを用いた以外は、実施例1と全
く同様にして本発明の記録媒体を得た。なお示差操作型
熱量分析の結果、ここでの組成系中のα,α,α’−ト
リス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イ
ソプロピルベンゼンは、ガラス転移温度Tgが88℃の
安定な非晶質を形成することが確認されている。
【0104】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧
し室温で放置したところ、印字部が透明な非晶質に戻り
消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の記
録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、印
字状態は35℃で1年間放置した後も変化は認められな
かった。
【0105】実施例14 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤としてα,α,α’−トリス(4
−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピ
ルベンゼン1.0重量部、マトリックス剤としてコレス
テロール10重量部をエタノールに溶解した後、得られ
たエタノール溶液を厚さ100μmのポリスチレンフィ
ルム上に塗布、乾燥させ、膜厚約2μmの非晶質薄膜を
形成した。続いて、この非晶質薄膜上に厚さ40μmの
ポリスチレンフィルムを加熱圧着して被覆し、本発明の
記録媒体を得た。
【0106】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。なおこのとき印字部及び背景部におい
て、波長610nmの光に対するピーク吸光度はそれぞ
れ1.4,0.02でコントラスト比は70であった。
続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温で放置し
たところ、印字部が透明な非晶質に戻り消去が行なわれ
たことが確認された。さらに、同様の記録・消去を10
0サイクル行なっても劣化は生じず、印字状態は30℃
で1年間放置した後も変化は認められなかった。
【0107】実施例15 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤としてビスフェノールAリチウム
塩1.0重量部、マトリックス剤として1,3−ビス
(4’−t−ブチル−ビフェニル−4−オキシカルボニ
ル)−ベンゼン70重量部をそれぞれ配合した後、加熱
融解して均一な組成物とした。次いで、この組成物30
gにヘキサメチレンビスクロロホルメート0.5gを混
合して加熱融解し、混合物を5wt%ゼラチン水溶液2
00gに滴下して微小滴になるよう撹拌し続けた。予め
調製してあったヘキサメチレンジアミン3gを50gの
水に溶解した溶液を、撹拌している溶液中に徐々に滴下
しながら、約40℃で5時間撹拌を続けた。ここで、上
記組成物の微小滴と水との界面で、ヘキサメチレンビス
クロロホルメートがヘキサメチレンジアミンと反応し
て、水および組成物に不溶の固体状ポリウレタンが合成
され、これが上記組成物を被覆する。この結果、呈色性
化合物、顕色剤及びマトリックス剤を含有するマイクロ
カプセルが水懸濁液中に生成する。この後、マイクロカ
プセルの水懸濁液をコピー用紙に塗布して乾燥させ、さ
らに熱ロールで全面を押圧して室温で放冷する。こうし
て、紙面上に、非晶質の組成物を含有するマイクロカプ
セルからなる記録層が形成された、本発明の記録媒体を
得た。図7は、得られた記録媒体の縦断面図であり、図
中21は基材としてのコピー用紙、22は記録層となる
マイクロカプセルである。ただしここでは、マイクロカ
プセルを瀘過、遠心分離、乾燥等の方法で水懸濁液から
抽出した後に使用してもよい。
【0108】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部でマイクロカプセル中の組成物が結晶化して
青色に着色しポジタイプの記録が行なわれた。続いて、
熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温で放置したとこ
ろ、印字部が非晶質に戻って消色し、消去が行なわれた
ことが確認された。なお、印字状態は30℃で1年間放
置した後も変化は認められなかった。
【0109】実施例16 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸エチル1.0重量
部、マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオー
ル50重量部をそれぞれ配合した後、加熱融解して均一
な組成物とした。次いで、この組成物4重量部と熱硬化
性エポキシ樹脂100重量部を混練し、混練物を1cm
×1cm×1cmの立方形状に成形して熱硬化させ、本
発明の記録媒体を得た。次に、得られた記録媒体を20
0℃まで加熱した後空気流で冷却したところ、立方形状
のバルク全体が非晶質となって淡青色の着色状態とな
り、ポジタイプの記録が行なわれた。続いて、記録媒体
を100℃に加熱して室温まで冷却すると、バルクが結
晶化して着色状態が濃青色に変化し、消去が行なわれた
ことが確認された。さらに、同様の記録・消去を100
サイクル行なっても劣化は認められなかった。
【0110】実施例17 呈色性化合物としてC.I.ベーシックブルー3 1.
0重量部、顕色剤としてベンゼンスルホン酸4.0重量
部、マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオー
ル50重量部をそれぞれ配合した後、加熱融解して均一
な組成物とした。なおここで用いられた呈色性化合物及
び顕色剤は、その相互作用が増大すると消色状態となり
相互作用が減少すると発色状態となる成分である。この
組成物を厚さ1.5mmのガラス基板上で少量融解し、
ギャップ剤として直径約10ミクロンのシリカ粒子を微
量付着させた厚さ1mmガラス板を載置し融解液を全面
に広げて挟み込み、室温で放冷した。次いでガラス板を
はがし取ったところ、ガラス基板上に膜厚約10μmの
青色の非晶質薄膜が形成されていた。続いて、この非晶
質薄膜上に光硬化性エポキシ樹脂を塗布後、光硬化させ
て膜厚1μmの保護膜を形成した。さらに、熱ロールで
全面を押圧した後室温で放冷して非晶質薄膜を白色の結
晶質に結晶化せしめ、本発明の記録媒体を得た。
【0111】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧15V、パルス幅2
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が非晶質化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押
圧し室温で放置したところ、印字部が白色の結晶質に戻
り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0112】実施例18 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として4−ヒドロキシ安息香酸コ
レスタン−3−イル4.0重量部をそれぞれ配合した
後、加熱融解して均一な組成物とした。なお示差操作型
熱量分析の結果、ここで得られた組成系中の4−ヒドロ
キシ安息香酸コレスタン−3−イルは、ガラス転移温度
Tgが35℃の安定な非晶質を形成することが確認され
ている。
【0113】この後、上記組成物を厚さ1.5mmのガ
ラス基板上で少量融解し、ギャップ剤として直径約10
ミクロンのシリカ粒子を微量付着させた厚さ1mmガラ
ス板を載置し融解液を全面に広げて挟み込み、室温で放
冷した。次いでガラス板をはがし取ったところ、ガラス
基板上に膜厚約10μmの青色の非晶質薄膜が形成され
ていた。続いて、この非晶質薄膜上に光硬化性エポキシ
樹脂を塗布後、光硬化させて膜厚1μmの保護膜を形成
した。さらに、熱ロールで全面を押圧した後室温で放冷
して非晶質薄膜を白色の結晶質に結晶化せしめ、本発明
の記録媒体を得た。
【0114】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧15V、パルス幅2
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が非晶質化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押
圧し室温で放置したところ、印字部が白色の結晶質に戻
り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0115】実施例19 顕色剤として4−ヒドロキシ安息香酸コレスタン−3−
イルの代わりにエストラジオール14重量部を用いるこ
とを除いては実施例18と同様にして本発明の記録媒体
を得た。なお示差操作型熱量分析の結果、ここでの組成
系中のエストラジオールは、ガラス転移温度Tgが76
℃の安定な非晶質を形成することが確認されている。
【0116】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧15V、パルス幅2
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が非晶質化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押
圧し室温で放置したところ、印字部が白色の結晶質に戻
り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0117】実施例20 呈色性化合物としてフェノールフタレイン1.0重量
部、顕色剤としてステアリルアミン1.0重量部、マト
リックス剤としてメチルアンドロステンジオール20重
量部をエタノールに溶解した後、得られたエタノール溶
液を厚さ1.5mmのガラス基板上に塗布、乾燥させ、
膜厚約15μmの一部不透明な薄膜を形成した。続い
て、この薄膜上に光硬化性エポキシ樹脂を塗布後、光硬
化させて膜厚1μmの保護膜を形成した。さらに、部分
的に結晶化した上記薄膜全体を非晶質化するため、熱ロ
ールで全面を押圧した後室温で放冷して、本発明の記録
媒体を得た。
【0118】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化してピンク色に着色しポジタイプの
記録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を
押圧し室温で放置したところ、印字部が透明な非晶質に
戻り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様
の記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じ
ず、印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認め
られなかった。
【0119】一方この記録媒体について、上記熱ロール
より低温の熱ロールで全面を押圧した後室温で放冷し
て、非晶質薄膜全体を結晶化せしめピンク色に着色させ
た。次に上記サーマルヘッド(6dot/mm、380
Ω)を使用し、印加電圧15V、パルス幅2msecで
記録媒体への加熱印字を実施した結果、印字部が非晶質
化して無色透明になりネガタイプの記録が行なわれた。
なおこのとき、記録・消去の繰り返し安定性、印字状態
の保存安定性は、上述したようなポジタイプの記録を行
なった場合と同等であった。
【0120】実施例21 呈色性化合物として日本曹達(株)製PSD−HR1.
0重量部、顕色剤としてα,α,α’−トリス(4−ヒ
ドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベ
ンゼン1.0重量部、マトリックス剤としてプレグネノ
ロン20重量部を溶融混合した後、急冷した。非晶質固
形物をボールミルを用いて細かく粉砕した。これをアラ
ビアゴム8%水溶液中に撹拌分散させた。40℃でゼラ
チン水溶液を混合して1時間撹拌した。水を加え希釈後
撹拌した。10%酢酸水溶液を添加してpHを3.9に
調整した。37%ホルマリンを加え、後pHを7.0の
調整した。5℃に冷却後、室温で3日間放置した。遠心
分離機でマイクロカプセル部を分離し、赤色用マイクロ
カプセルAを作製した。
【0121】次に、呈色性化合物として山本化成(株)
製Y−1、1.0重量部、顕色剤としてα,α,α’−
トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−
イソプロピルベンゼン、1.0重量部、マトリックス剤
としてコレステロール20重量部を用いることを除いて
は上記方法と同様にして黄色用マイクロカプセルBを作
製した。
【0122】この後、2種類のマイクロカプセルを混合
した水懸濁液をコピー用紙に塗布して乾燥させ、さらに
熱ロールで全面を押圧して室温で放冷し、紙面上に非晶
質の記録層が形成されてなる本発明の記録媒体を得た。
【0123】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧9V、パルス幅1m
secで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が黄色に着色し記録が行なわれた。続いて、
熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温で放置したとこ
ろ、印字部が非晶質に戻って消色し、消去が行なわれた
ことが確認された。
【0124】次に上記東芝製サーマルヘッドを使用し、
印加電圧11V、パルス幅1msecで得られた記録媒
体への加熱印字を実施した結果、印字部がオレンジ色に
着色し記録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体
全面を押圧し室温で放置したところ、印字部が非晶質に
戻って消色し消去が行なわれたことが確認された。
【0125】次に上記東芝製サーマルヘッドを使用し、
印加電圧13V、パルス幅1msecで得られた記録媒
体への加熱印字を実施した結果、印字部が赤色に着色し
記録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を
押圧し室温で放置したところ、印字部が非晶質に戻って
消色し、消去が行なわれたことが確認された。
【0126】以上のように熱エネルギの加え方を変える
ことにより3色の表示記録が可能であった。なお同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0127】実施例22 呈色性化合物としてシアニン1.0重量部、顕色剤とし
てリン酸ジフェニル1.0重量部、マトリックス剤とし
てメチルアンドロステンジオール50重量部をそれぞれ
配合した後、加熱融解して均一な組成物とした。なおこ
こで用いられた呈色性化合物及び顕色剤は、その相互作
用が増大すると消色状態となり相互作用が減少すると発
色状態となる成分である。この組成物を厚さ1.5mm
のガラス基板上で少量融解し、ギャップ剤として直径約
10ミクロンのシリカ粒子を微量付着させた厚さ1mm
ガラス板を載置し融解液を全面に広げて挟み込み、室温
で放冷した。次いでガラス板をはがし取ったところ、ガ
ラス基板上に膜厚約10μmの青色の非晶質薄膜が形成
されていた。続いて、この非晶質薄膜上に光硬化性エポ
キシ樹脂を塗布後、光硬化させて膜厚1μmの保護膜を
形成した。さらに、熱ロールで全面を押圧した後室温で
放冷して非晶質薄膜を白色の結晶質に結晶化せしめ、本
発明の記録媒体を得た。
【0128】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧15V、パルス幅2
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が非晶質化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押
圧し室温で放置したところ、印字部が白色の結晶質に戻
り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0129】実施例23 呈色性化合物としてシアニン1.0重量部、顕色剤とし
てガラス転移温度Tgが25℃以上の非晶質を形成し得
るリン酸コレステリル5.0重量部をそれぞれ配合した
後、加熱融解して均一な組成物とした。なおここで用い
られた呈色性化合物及び顕色剤は、その相互作用が増大
すると消色状態となり相互作用が減少すると発色状態と
なる成分である。この組成物を厚さ1.5mmのガラス
基板上で少量融解し、ギャップ剤として直径約10ミク
ロンのシリカ粒子を微量付着させた厚さ1mmガラス板
を載置し融解液を全面に広げて挟み込み、室温で放冷し
た。次いでガラス板をはがし取ったところ、ガラス基板
上に膜厚約10μmの透明な非晶質薄膜が形成されてい
た。続いて、この非晶質薄膜上に光硬化性エポキシ樹脂
を塗布後、光硬化させて膜厚1μmの保護膜を形成し
た。さらに、保護膜形成時に部分的に結晶化した非晶質
薄膜を非晶質に戻すため、熱ロールで全面を押圧した後
室温で放冷して、本発明の記録媒体を得た。
【0130】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶質化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれた。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押
圧し室温で放置したところ、印字部が透明な非晶質に戻
り消去が行なわれたことが確認された。さらに、同様の
記録・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、
印字状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められ
なかった。
【0131】実施例24 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸エチル1.0重量
部、マトリックス剤としてメチルアンドロステンジオー
ル50重量部、近赤外線吸収色素として三井東圧製SI
R−159をそれぞれ配合した後、加熱融解して均一な
組成物とした。この組成物を、光学研磨された厚さ1.
2mmのガラス基板上で少量融解し、さらにガラス板を
載置し融解液を全面に広げて挟み込んだ。次いで、ガラ
ス基板を水で冷却されたアルミニウム板に押しつけて融
解液を冷却し、記録層となる膜厚約10μmの非晶質薄
膜を形成してガラス基板、記録層及びガラス板からなる
本発明の記録媒体を得た。
【0132】次に、得られた記録媒体を900RPMで
回転しながら、直径1μmに集光した波長830nmの
半導体レーザー光を記録媒体面での強度が2mWとなる
ように照射して記録層への書き込みを実施した。偏光顕
微鏡で観察すると、レーザー光を照射した書き込み部が
明瞭なコントラストで結晶化していることが確認でき、
幅約1μmのライン状の記録が行なわれたことがわかっ
た。続いて、直径2μmに集光した波長830nmの半
導体レーザー光を記録媒体面での強度が5mWとなるよ
うに照射した。偏光顕微鏡で観察すると、強度5mWの
レーザー光が照射された領域は上記書き込み部も非晶質
となっており、消去が行なわれたことが確認された。な
お、書き込み状態は30℃で1年間放置した後も変化は
認められなかった。
【0133】実施例25 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、マトリックス剤として2−アミノ−3’−メトキ
シ−ジベンゾオキサジアゾール20重量部をエタノール
に溶解した後、得られたエタノール溶液を厚さ100μ
mのポリスチレンフィルム上に塗布、乾燥させ、膜厚約
2μmの薄膜を形成した。なお示差走査型熱量分析の結
果、ここでの組成系中の2−アミノ−3’−メトキシ−
ジベンゾオキサジアゾールは、ガラス転移温度Tgが3
℃の非晶質を形成することが確認されている。続いて、
この薄膜上に厚さ40μmのポリスチレンフィルムを加
熱圧着して被覆し、さらに上記薄膜を完全に非晶質化す
るため熱ロールで全面に押圧した後急冷して、本発明の
記録媒体を得た。
【0134】得られた記録媒体を−10℃の冷蔵庫中に
1か月放置したが、着色状態に変化は認められず透明な
ままであった。次に、この記録媒体を5分間、5℃の雰
囲気に晒した結果、全面が結晶化して着色状態が青色に
変化し、その後記録媒体を冷蔵庫中に戻しても青色の着
色状態は変化せず、一時的な雰囲気の温度上昇を情報と
して記録したことが確認された。続いて、記録媒体の全
面を熱ロールで押圧し急冷したところ、全面が透明な非
晶質に戻り消去が行なわれたことが確認された。
【0135】実施例26 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、可逆材としてコレステロール2.0重量部及びプ
レグネノロン10重量部、高分子化合物としてスチレン
・メタクリル酸共重合体(大日本インキ製、A91P)
3重量部を20%シクロヘキサノン−トルエンと共にボ
ールミルに入れ、均一に分散された組成物溶液を得た。
なお、スチレン・メタクリル酸共重合体100gに対す
る呈色性化合物、顕色剤、および可逆材の溶解度は、と
もに1g以下であった。
【0136】上記組成物溶液を、バーコート法により、
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗
布し乾燥して5μmの膜厚を有する記録層を得た。次い
で、0.1μmのポリスチレンを塗布した3.0μmの
ポリエーテルエーテルケトンフィルムをドライラミネー
ト法を用いて記録層に接着させて保護層を形成し、記録
媒体を得た。続いて、熱ロールで記録媒体全面を押圧
し、室温まで冷却したところ、無色透明な消色状態を得
ることができた。次に、サーマルヘッド(8dot/m
m、1000Ω)を使用し、印加電圧25V、パルス幅
150μsecで加熱印字を実施した結果、印字部が青
色に着色し記録が行なわれた。なおこのとき印字部及び
背景部において、波長610nmの光に対する透過率の
コントラスト比は40であった。さらに、青色に着色し
た部分を、サーマルヘッド(8dot/mm、1000
Ω)を使用し、印加電圧25V、パルス幅300μse
cで加熱消去を実施した結果、無色透明な消色状態に戻
ることが確認された。
【0137】さらに、同様の記録・消去を繰り返した結
果、コントラスト比が半減するまでに1000サイクル
以上必要であった。また、発色状態・消色状態は30℃
で1年間放置した後も変化は認められなかった。
【0138】実施例27 高分子化合物として、ポリスチレン(三菱化成社製 H
F77)を用いた以外は、実施例26と同様にして記録
媒体を得た。なお、ポリスチレン100gに対する呈色
性化合物、顕色剤、および可逆材の溶解度は、それぞれ
1g以下、1〜5g、5〜10gであった。上記記録媒
体を、実施例26と同様な方法で、TPHによる印字お
よび消去試験を実施した結果、発色状態および消色状態
共に得られることを確認した。このとき印字部及び背景
部において、波長610nmの光に対する透過率のコン
トラスト比は48であった。さらに、同様の記録・消去
を繰り返した結果、コントラスト比が半減するまでに1
000サイクル以上必要であった。また、発色状態・消
色状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められな
かった。
【0139】実施例28 可逆材として、コレステロール10重量部、およびメチ
ルアンドロステンジオール2重量部を用い、高分子化合
物として、ポリメチルペンテン(三井石油化学製、TP
X)を用い、分散溶剤としてシクロヘキサンを用い、保
護層用フィルムとしてポリフェニレンスルフィドフィル
ムを用いた以外は、実施例26と同様にして記録媒体を
得た。なおポリメチルペンテン100gに対する呈色性
化合物、顕色剤、および可逆材の溶解度は、共に5〜1
0gであった。上記記録媒体を、実施例26と同様な方
法で、TPHによる印字および消去試験を実施した結
果、発色状態および消色状態共に得られることを確認し
た。このとき印字部及び背景部において、波長610n
mの光に対する透過率のコントラスト比は53であっ
た。さらに、同様の記録・消去を1000サイクル行な
っても発色濃度、消色濃度はほとんど変化せず、また、
発色状態、消色状態は30℃で1年間放置した後も変化
は認められなかった。
【0140】実施例29 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンの
代わりに日曹化工(株)製フルオラン系ロイコ化合物P
SD−Vを用いた以外は、実施例28と全く同様にして
本発明の記録媒体を得た。なお、高分子化合物100g
に対する呈色性化合物の溶解度は5〜10gであった。
上記記録媒体を、実施例26と同様な方法で、TPHに
よる印字および消去試験を実施した結果、発色状態およ
び消色状態共に得られることを確認した。このとき印字
部及び背景部において、発色状態の最大吸収波長の光に
対する透過率のコントラスト比は40であった。さら
に、同様の記録・消去を1000サイクル行なっても発
色濃度、消色濃度はほとんど変化せず、また、発色状
態、消色状態は30℃で1年間放置した後も変化は認め
られなかった。
【0141】実施例30 高分子化合物として、ポリエステル(東洋紡製、バイロ
ン200)を用いた以外は、実施例26と同様にして記
録媒体を得た。なお、高分子化合物100gに対する呈
色性化合物、顕色剤、および可逆材の溶解度は、それぞ
れ90g、60g、50gであった。続いて、熱ロール
で記録媒体全面を押圧し、室温まで冷却したところ、無
色透明な消色状態を得ることができた。次に、サーマル
ヘッド(8dot/mm、1000Ω)を使用し、印加
電圧25V、パルス幅120μsecで加熱印字を実施
した結果、青色の発色濃度が非常に低い印字しか得られ
なかった。さらに、消色状態を呈している記録媒体を熱
板上に載せ、加熱温度を種々変えて発色試験を行った
が、発色濃度が非常に低い状態しか得られなかった。こ
のとき消色部及び発色部において、波長610nmの光
に対する透過率のコントラスト比は1.3であった。
【0142】実施例31 高分子化合物として、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバ
イドPKHH)を用いた以外は、実施例28と同様にし
て記録媒体を得た。なお、高分子化合物100gに対す
る呈色性化合物、顕色剤、および可逆材の溶解度は、そ
れぞれ60g、30g、20gであった。続いて、熱ロ
ールで記録媒体膜全面を押圧し、室温まで冷却したとこ
ろ、無色透明な消色状態を得ることができた。次に、サ
ーマルヘッド(8dot/mm、1000Ω)を使用
し、印加電圧25V、パルス幅120μsecで加熱印
字を実施した結果、青色の発色濃度が非常に低い印字し
か得られなかった。さらに、消色状態を呈している記録
媒体を熱板上に載せ、加熱温度を種々変えて発色試験を
行ったが、発色濃度が非常に低い状態しか得られなかっ
た。このとき消色部及び発色部において、波長610n
mの光に対する透過率のコントラスト比は1.2であっ
た。
【0143】実施例26〜29と実施例30、31を比
較すれば、高分子化合物100gに対して、呈色性化合
物、顕色剤あるいは可逆材の溶解度が10g以下の場合
にそのコントラスト比が大きいことが判る。
【0144】実施例32 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、可逆材としてメチルアンドロステンジオール50
重量部をそれぞれ配合した後、加熱し融解混合して均一
な組成物とした。この組成物を熱板上で加熱して中性紙
(大昭和製紙製SZ原紙、厚さ25μm)に含浸させ
た。このようにして得られた記録媒体を、熱板上で、呈
色性化合物、顕色剤および可逆材が溶融するまで加熱
し、その後室温まで急冷することにより、白色の消色状
態を得た。次いで、熱板上で60〜80℃に加熱するこ
とにより、青色の発色状態を得た。加熱後、室温まで放
冷しても発色状態には変化はなかった。続いて、この記
録媒体膜上に光硬化性エポキシ樹脂を両面に塗布後、光
硬化させて膜厚1μmの保護膜を形成した。続いて、熱
ロールで記録媒体全面を押圧し室温まで放置したとこ
ろ、白色の消色状態に戻り、消去が行なわれたことが確
認された。次に,サーマルヘッド(8dot/mm、1
000Ω)を使用し、印加電圧25V、パルス幅150
μsecで加熱印字を実施した結果、印字部が青色に着
色し記録が行なわれた。なおこのとき印字部及び背景部
において、波長610nmの光に対する反射率のコント
ラスト比は48であり、第42回高分子討論会予稿集、
1993年、2736頁に示された、ロイコ染料と長鎖
ホスホン酸の系のコントラスト比の報告値が10程度で
あるのに対し、コントラスト比の非常に優れた表示が得
られた。熱ロールで記録媒体全面を押圧し室温まで冷却
したところ、印字部が白色状態に戻り消去が行なわれた
ことが確認された。さらに、同様の記録・消去を繰り返
した結果、コントラスト比が半減するまでに1000サ
イクル以上必要であった。また、発色状態・消色状態は
30℃で1年間放置した後も変化は認められなかった。
【0145】実施例33 高分子化合物としてポリエチレン及び種々の組成のエチ
レン・酢酸ビニル共重合体を用い、高分子化合物中の酢
酸ビニル(VA)コンテントが記録媒体の発色特性に与
える影響を調べた結果を示す。
【0146】まず、呈色性化合物としてクリスタルバイ
オレットラクトン1.0重量部、顕色剤として没食子酸
プロピル1.0重量部、可逆材としてプレグネノロン1
0重量部を配合し、加熱、融解して均一な組成物とした
後、シクロヘキサノンに溶解し、スライドガラス上に滴
下して乾燥し、薄膜を形成した。この薄膜上にそれぞれ
の高分子化合物を圧着した後、加熱することで高分子化
合物中に上記3成分からなる組成物を拡散させた。得ら
れた試料をホットプレート上で120℃、30分加熱
し、発色濃度を定性的に評価した。なお、各高分子化合
物としてメルトフローレートの異なる複数の製品を用い
た。結果を表1に纏めて示す。表1の評価において、○
は「発色状態を保つ」、△は「色彩が低下する」、×は
「完全に消色する」を意味する。表1は、エチレン・酢
酸ビニル共重合体の酢酸ビニルコンテントが高いほど発
色濃度が低下する傾向を示している。
【0147】次に、呈色性化合物としてクリスタルバイ
オレットラクトン1.0重量部、顕色剤として没食子酸
プロピル1.0重量部の2成分を用い、上記と同様の試
験を行い、発色濃度を定性的に評価した。結果を表2に
纏めて示す。表2は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の
酢酸ビニルコンテントが多いほど発色濃度が低下する傾
向が表1の場合より顕著であることを示している。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】次に、種々の組成比でクリスタルバイオレ
ットラクトン、没食子酸プロピル及びエチレン・酢酸ビ
ニル共重合体(酢酸ビニルコンテント:14%又は28
%)を溶剤に溶解し、ガラス基板上に塗布することによ
り薄膜を形成し、加熱により記録したときの反射濃度を
マクベス反射濃度計で測定した。この結果を図8に示
す。図8の横軸は、発色材(呈色性化合物及び顕色剤)
の全固形分に対する重量比、縦軸は反射濃度を表す。図
8に示されるように、発色材含有率が同一ならば酢酸ビ
ニルコンテントが少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体
を用いた方が反射濃度が高くなる。このことからエチレ
ン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルは、発色に
寄与しない発色材を増加させることが判る。
【0151】図9に、発色材の全固形分に対する重量比
を固定し、共重合体中の酢酸ビニルコンテントと反射濃
度との関係を調べた結果を示す。この実験では、呈色性
化合物としてクリスタルバイオレットラクトン1.0重
量部,顕色剤として没食子酸プロピル1.0重量部,及
びエチレン酢酸ビニル共重合体38重量部の組成系を用
いた。図9に示したように、酢酸ビニルコンテントの増
加により反射濃度が低下する。
【0152】また、可逆材を含有する組成系でも同様な
実験を行った。この実験では、呈色性化合物としてクリ
スタルバイオレットラクトン1.0重量部,顕色剤とし
て没食子酸プロピル1.0重量部,可逆材としてプレグ
ネノロン10重量部、及びエチレン酢酸ビニル共重合体
38重量部の系で上記と同様の測定を行なった結果を図
10に示す。なお、この図には図9(可逆材を加えてい
ない系)の結果も併記する。
【0153】これらの結果から、呈色性化合物・クリス
タルバイオレットラクトン,顕色剤・没食子酸プロピ
ル,可逆材・プレグネノロン,樹脂・エチレン酢酸ビニ
ル共重合体の系では、充分な発色濃度を得るためには、
樹脂に対して呈色性化合物,顕色剤,可逆材の比率を相
対的に増やす必要があることがわかる。酢酸ビニルコン
テントが小さい樹脂を用いた場合、例えばクリスタルバ
イオレットラクトン4.0重量部,没食子酸プロピル
4.0重量部,プレグネノロン40重量部,エチレン酢
酸ビニル共重合体38重量部という組成系で、0.9以
上の実用的な反射濃度が得られることがわかった。図1
1に、この組成系について、樹脂中の酢酸ビニルコンテ
ントと反射濃度の関係を示す。図11では、酢酸ビニル
コンテントが20%を超えると、反射濃度が低下するこ
とが示されている。なお、樹脂に対する呈色性化合物及
び顕色剤の重量比率が多い組成系では、酢酸ビニルコン
テントがこれより高い範囲まで、高い反射濃度を維持で
きる。
【0154】実施例34 高分子化合物としてポリスチレン及び種々の組成のスチ
レン・メタクリル酸共重合体を用い、高分子化合物中の
メタクリル酸コンテントが記録媒体の発色特性に与える
影響を調べた結果を示す。
【0155】クリスタルバイオレットラクトン、没食子
酸プロピル及びポリスチレン又はスチレン・メタクリル
酸共重合体を溶剤に溶解し、ガラス基板上に塗布するこ
とにより薄膜を形成し、加熱により記録したときの反射
濃度をマクベス反射濃度計で測定した。図12に、共重
合体中のメタクリル酸コンテントと反射濃度との関係を
調べた結果を示す。この図では、発色材(呈色性化合物
及び顕色剤)の全固形分(発色材及びスチレン・メタク
リル酸共重合体)に対する重量比をパラメターとしてい
る。
【0156】図12に示したように、メタクリル酸コン
テントが大きくなる程、反射濃度は低くなる。その傾向
は樹脂としてエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いた実
施例33よりも顕著である。また、発色材の全固形分に
対する重量比が小さいほど、反射濃度が低下することが
判る。
【0157】これと同様な傾向は可逆材を含有する組成
系でも観察される。メタクリル酸コンテントが小さい樹
脂を用いた場合、例えばクリスタルバイオレットラクト
ン1重量部,没食子酸プロピル1重量部,プレグネノロ
ン10重量部,スチレン・メタクリル酸共重合体樹脂5
重量部という組成系で、0.9以上の実用的な反射濃度
が得られることがわかった。このように実用的な発色を
得るのに要する発色材の比率は、実施例33の場合より
も高濃度になる。図13に、この組成系について、メタ
クリル酸コンテントと発色濃度の関係を示す。図13で
は、メタクリル酸コンテントが15%を超えると、反射
濃度が低下することが示されている。なお、樹脂に対す
る呈色性化合物及び顕色剤の重量比率が多い組成系で
は、メタクリル酸コンテントがこれより高い範囲まで、
高い反射濃度を維持できる。
【0158】実施例35 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、マトリックス剤としてプレグネノロン10重量
部、高分子化合物としてポリエーテルサルホン20重量
部を均一に混合し加熱溶融して、厚さ1.5mmのガラ
ス基板上に均一に広げて放冷した。この結果、ガラス基
板上に膜厚約10μmの均一な非晶質薄膜が形成され
た。さらに、部分的に結晶化した非晶質薄膜を非晶質に
戻すため、熱ロールで全面を押圧した後、室温で放冷し
て透明な均一膜とし、本実施例の記録媒体を得た。
【0159】なお、示差操作型熱量分析の結果は以下の
通りであった。クリスタルバイオレットラクトンはガラ
ス転移温度Tgが73℃であり、室温で安定な非晶質を
形成した。没食子酸プロピルは結晶性が高く安定な非晶
質は形成されなかった。ポリエーテルスルホンはガラス
転移温度Tgが215℃であった。図14に呈色性化合
物、顕色剤及びマトリックス剤の3成分系について示差
走査熱量分析(DSC)の結果を示す。この図から、呈
色性化合物、顕色剤及びマトリックス剤の3成分系は、
ガラス転移温度Tgが44℃であり、室温で安定な非晶
質を形成し、結晶化温度が65−75℃、融点が184
℃であることがわかる。図15に本実施例の記録媒体に
ついてDSCの結果を示す。この図から、ポリエーテル
スルホン中に分散した呈色性化合物、顕色剤及びマトリ
ックス剤の3成分系は、ガラス転移温度Tgが29℃の
安定な非晶質を形成し、結晶化温度が130℃、融点が
175℃であることがわかる。このように上記3成分系
をポリエーテルスルホン中に分散させると、結晶化温度
が大幅に上昇することがわかった。
【0160】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧14V、パルス幅1
msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。また、パルス幅を0.5msecに変化
させても上記と全く同様にポジタイプの記録が行なわれ
た。一方、呈色性化合物、顕色剤及びマトリックス剤の
3成分系では、パルス幅を1msecより短くした場合
には実用レベルの記録ができない。このように、呈色性
化合物、顕色剤及びマトリックス剤の3成分をポリエー
テルスルホン中に分散させた記録媒体では、印字速度を
向上することができる。
【0161】このような印字速度の向上は、非晶質−結
晶質転移の速度の向上に基づくものである。ここで、非
晶質−結晶質転移の速度は、DSCチャートにおける転
移ピークの半値幅が小さいほど大きくことが知られてい
る。実際に、図15では図14と比較して転移ピークの
半値幅が約1/2であり、非晶質−結晶質転移の速度が
大きくなっていることがわかる。
【0162】次いで、熱ロールでこの記録媒体全面を押
圧し、室温で放置したところ、印字部が非晶質化して無
色透明になり消去がなされたことが確認された。さら
に、同様の記録・消去を100サイクル行なっても劣化
は生じず、印字状態は30℃で1年間放置した後も変化
は認められなかった。
【0163】実施例36 高分子化合物としてポリエーテルスルホンの代わりにス
チレン−メタクリル酸メチルランダム共重合体(以下、
S−MMAと略す)10重量部を用いた以外は実施例3
5と同様にして記録媒体を得た。
【0164】なお、DSCの結果、S−MMAはガラス
転移温度Tgが125℃であった。図16に本実施例の
記録媒体についてDSCの結果を示す。この図から、S
−MMA中に分散した呈色性化合物、顕色剤及びマトリ
ックス剤の3成分系は、ガラス転移温度Tgが60℃の
安定な非晶質を形成し、結晶化温度が96℃、融点が1
71℃であることがわかる。図16と図14とを比較し
てわかるように、呈色性化合物、顕色剤及びマトリック
ス剤の3成分系をS−MMA中に分散させると、結晶化
温度が約30℃上昇し、また転移ピークの半値幅が約1
/2になって非晶質−結晶質転移の速度が大きくなるこ
とがわかる。
【0165】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧10V、パルス幅
0.5msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施
した結果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプ
の記録が行なわれ、印字速度を向上することができた。
次いで、熱ロールでこの記録媒体全面を押圧し、室温で
放置したところ、印字部が非晶質化して無色透明になり
消去がなされたことが確認された。さらに、同様の記録
・消去を100サイクル行なっても劣化は生じず、印字
状態は30℃で1年間放置した後も変化は認められなか
った。
【0166】実施例37 高分子化合物としてポリエーテルスルホンの代わりにポ
リエチレンイソフタレート10重量部を用いた以外は実
施例35と同様にして記録媒体を得た。
【0167】なお、DSCの結果、ポリエチレンイソフ
タレートはガラス転移温度Tgが65℃であった。図1
7に本実施例の記録媒体についてDSCの結果を示す。
この図から、ポリエチレンイソフタレート中に分散した
呈色性化合物、顕色剤及びマトリックス剤の3成分系
は、ガラス転移温度Tgが43℃の安定な非晶質を形成
し、結晶化温度が84℃、融点が174℃であることが
わかる。図17と図14とを比較してわかるように、呈
色性化合物、顕色剤及びマトリックス剤の3成分系をポ
リエチレンイソフタレート中に分散させると、結晶化温
度が約15℃上昇し、また転移ピークの半値幅が約1/
2になって非晶質−結晶質転移の速度が大きくなること
がわかる。
【0168】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧9V、パルス幅0.
5msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した
結果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれ、印字速度を向上することができた。次い
で、熱ロールでこの記録媒体全面を押圧し、室温で放置
したところ、印字部が非晶質化して無色透明になり消去
がなされたことが確認された。さらに、同様の記録・消
去を100サイクル行なっても劣化は生じず、印字状態
は30℃で1年間放置した後も変化は認められなかっ
た。
【0169】実施例38 実施例35の組成物X、実施例36の組成物Y及び実施
例37の組成物Zを用いて、図18に示す記録媒体を作
製した。この記録媒体は、厚さ1.5mmのガラス基板
31上に、組成物Xからなる第1の記録層32、組成物
Yからなる第2の記録層33及び組成物Zからなる第3
の記録層34が順次形成されたものである。これらの記
録層はそれぞれの組成物を均一に混合し加熱溶融して、
下地上に均一に広げて放冷することにより形成され、膜
厚は約5μmである。
【0170】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧9V、パルス幅0.
5msecで得られた記録媒体への加熱印字を実施した
結果、印字部が結晶化して青色に着色しポジタイプの記
録が行なわれた。続けて、印加電圧10V、パルス幅
0.5msecで加熱印字を実施した結果、印字部が結
晶化して青色に着色しポジタイプの記録が行なわれた。
続けて、印加電圧14V、パルス幅0.5msecで加
熱印字を実施した結果、印字部が結晶化して青色に着色
しポジタイプの記録が行なわれた。印加電圧が9V、1
0V及び14Vのときに得られた各印字部において、波
長610nmの光に対するピーク吸光度はそれぞれ0.
9,2.2,3.0であった。このように印加電圧に応
じて3種の異なる吸光度を示す印字部が得られた。次い
で、熱ロールでこの記録媒体全面を押圧し、室温で放置
したところ、印字部が非晶質化して無色透明になり消去
がなされたことが確認された。
【0171】実施例39 実施例36の組成物Yの呈色性化合物クリスタルバイオ
レットラクトンの代わりに日本曹達(株)製PSD−H
R 1.0重量部を用いた組成物Y’、及び実施例37
の組成物Zの呈色性化合物クリスタルバイオレットラク
トンの代わりに山本化成(株)製Y−1 1.0重量部
を用いた組成物Z’を用意した。実施例35の組成物
X、組成物Y’及び組成物Z’を用い、実施例38と同
様にして図18に示す記録媒体を作製した。
【0172】次に東芝製サーマルヘッド(6dot/m
m、380Ω)を使用し、印加電圧9V、パルス幅1m
secで得られた記録媒体への加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して黄色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。また、印加電圧9V、パルス幅0.5m
secで加熱印字を実施した結果、印字部が結晶化して
オレンジ色に着色しポジタイプの記録が行なわれた。続
けて、印加電圧10V、パルス幅0.5msecで加熱
印字を実施した結果、印字部が結晶化して青色に着色し
ポジタイプの記録が行なわれた。続けて、印加電圧14
V、パルス幅0.5msecで加熱印字を実施した結
果、印字部が結晶化して黒色に着色しポジタイプの記録
が行なわれた。このように印加電圧(9V、10V及び
14V)に応じて、オレンジ色、青色、黒色と3種の異
なる色調を示す印字部が得られた。次いで、熱ロールで
この記録媒体全面を押圧し、室温で放置したところ、印
字部が非晶質化して無色透明になり消去がなされたこと
が確認された。
【0173】実施例40 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、可逆材としてプレグネノロン5重量部、相分離制
御剤として1−ドコサノールを5重量部、それぞれ配合
した後、加熱し融解混合して均一な組成物とした。この
組成物を熱板上で約5μm厚になるように量を調整して
カバーガラスに挾み込み、測定サンプルを作成した。
【0174】この組成は典型的な4成分の発色特性を示
す。図19を参照して本実施例における熱履歴と発色濃
度(OD)の関係を説明する。図19において、縦軸は
温度、横軸は波長610nmの光に対する反射濃度であ
る。
【0175】室温(Trt)においては、クリスタルバイ
オレットラクトン及び没食子酸プロピルの相と、プレグ
ネノロンの相と1−ドコサノールの相が相分離した発色
状態が溶解度から平衡状態に近い。この状態から組成系
の融点Tm(この組成では約150℃)以上に加熱する
と、没食子酸プロピルはクリスタルバイオレットラクト
ンとの相互作用を失う一方で、流動状態のプレグネノロ
ンと相互作用した状態となり、結果として、融点以上で
は系は色を失う。次いで、系を溶融状態から冷却する
と、プレグネノロンと1−ドコサノールの相溶体が融点
以下においても流動性を保つ過冷却液体となり、没食子
酸プロピルと流動状態のプレグネノロンとは相互作用し
たままガラス転移温度Tg以下の低温で凝固し、プレグ
ネノロンは平衡溶解度を越えた量の没食子酸プロピルを
取り込んで非晶質化して無色の非平衡状態になる。従っ
て、この4成分系では急冷でも徐冷でも無色の非平衡状
態を得ることができる。4成分系の非平衡状態の非晶質
も、ガラス転移温度Tg(この組成では約36℃)以下
の温度では長寿命であり、室温がTg以下であるならば
容易に平衡状態に移ることはない。
【0176】次いで、4成分系の非平衡状態の非晶質を
加熱してガラス転移温度を越えると、系における顕色剤
の拡散速度が急激に高まるため、本来の平衡状態へ戻る
方向に没食子酸プロピルとプレグネノロンとの相分離が
加速され、サンプルの反射濃度は温度の上昇と共に次第
に高くなる。しかし、温度が相分離制御剤の融点TmD
(1−ドコサノールでは約69℃)近傍になると、液化
した1−ドコサノールが没食子酸プロピルと一部のプレ
グネノロンを溶解する。このとき、相分離制御剤である
1−ドコサノールへの没食子酸プロピル及びプレグネノ
ロンの溶解度は比較的高いと考えられる。そして、没食
子酸プロピルとプレグネノロンとの相分離は飛躍的に加
速されると同時に、液化した1−ドコサノールによって
没食子酸プロピルとクリスタルバイオレットラクトンと
の相互作用は急激に低減し、系は白濁状態となりほぼ色
を失う。
【0177】この状態から再び系の温度を凝固点以下に
下げると、凝固時に没食子酸プロピルの1−ドコサノー
ルに対する溶解度は急激に低下し、瞬時に没食子酸プロ
ピルと1−ドコサノールとは相分離する。相分離した没
食子酸プロピルはクリスタルバイオレットラクトンと再
び相互作用して、系はより平衡状態に近いより安定な発
色状態となる。相分離制御剤を含有する組成系の発色速
度は、室温とガラス転移温度で2〜3桁、ガラス転移温
度と相分離制御剤の融点で更に3〜5桁変化する。従っ
て、4成分系では系の融点Tmと相分離制御剤の融点T
mDまで加熱することが可能な、互いに大きさの異なる2
値の熱エネルギーを適宜供給すれば、極めて高速で平衡
−非平衡の相変化を可逆的に繰り返すことができ、急冷
・徐冷の熱履歴に因らず発色・消色状態を繰り返せる。
【0178】1−ドコサノールと同様の発色特性を示す
相分離制御剤材料としては、ステアリルアルコール、1
−エイコサノール、1−テトラコサノール、1−ヘキサ
コサノール、1−オクタコサノールなど直鎖高級1価ア
ルコール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデ
カンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,
2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオー
ル、1,2−ヘキサデカンジオールなど直鎖高級多価ア
ルコール、ステアリン酸イソプロパノールアミド、ベヘ
ン酸イソプロパノールアミドなど直鎖高級脂肪酸アルコ
ールアミドなどが挙げられる。実験結果から、一般に長
直鎖アルコール基を有する低分子有機物を相分離制御剤
材料として使用すると、この実施例のような発色特性を
示すことが判った。それに対して、例えば1,6−ヘキ
サンジオールのような直鎖の短いアルコール類や、例え
ば1,4−シクロヘキサンジオール、trans−1,
2−シクロヘキサンジオール、シクロドデカノールのよ
うな長直鎖を持たない脂環族アルコールは発色特性が悪
く、相分離制御剤材料として不適当である。
【0179】次いで、本実施例の組成比で、相分離制御
剤として直鎖の長さの異なる高級多価アルコールを選定
し、相分離制御剤の直鎖の長さおよび融点と保存安定性
との関係を調べた結果を図20に示す。図20では、横
軸に時間を対数で示し、縦軸には発色率を示している。
図示したデータは相分離制御剤の高級アルコールとし
て、ステアリルアルコール(C1837OH,融点59
℃)、1−ドコサノール(C2245OH,融点69
℃)、1−テトラコサノール(C2449OH,融点74
℃)の3種を選んでいる。図20から判るように、無色
状態の保存安定性は、ステアリルアルコールと1−ドコ
サノールでは約9倍、1−テトラコサノールでは約20
倍異なる。この長直鎖アルコールの例のように、相分離
制御剤の直鎖の長さと融点は、保存安定性を決定する重
要因子になる。ただし、サンプルの保存安定性を大きく
変える組成因子として、相分離制御剤の直鎖の長さもし
くは融点の他に、顕色剤、可逆材のガラス転移温度があ
り、Tgが高いほど長寿命である。
【0180】実施例41 相分離制御剤としてベヘン酸を2.5重量部用いた以外
は、実施例40と同様にして、測定サンプルを作成し
た。図21を参照して本実施例における熱履歴と発色濃
度(OD)の関係を説明する。
【0181】室温(Trt)においては、クリスタルバイ
オレットラクトン及び没食子酸プロピルの相と、プレグ
ネノロンの相とベヘン酸の相が相分離した発色状態が溶
解度から平衡状態に近い。この状態から組成系の融点T
m(この組成では約160℃)以上に加熱すると、没食
子酸プロピルはクリスタルバイオレットラクトンとの相
互作用を失う一方で、流動状態のプレグネノロンと相互
作用した状態となり、結果として、融点以上では系は色
を失う。次いで、系を溶融状態から冷却すると、プレグ
ネノロンとベヘン酸の相溶体が融点以下においても流動
性を保つ過冷却液体となり、没食子酸プロピルと流動状
態のプレグネノロンとは相互作用したままガラス転移温
度Tg以下の低温で凝固し、プレグネノロンは平衡溶解
度を越えた量の没食子酸プロピルを取り込んで非晶質化
して無色の非平衡状態になる。この系の非晶質も、ガラ
ス転移温度Tg(この組成では約39℃)以下の温度で
は長寿命であり、室温がTg以下であるならば容易に平
衡状態に移ることはない。
【0182】次いで、非晶質を加熱してガラス転移温度
を越えると、系における顕色剤の拡散速度が急激に高ま
るため、本来の平衡状態へ戻る方向に没食子酸プロピル
とプレグネノロンとの相分離が加速され、サンプルの反
射濃度は温度の上昇と共に次第に高くなる。更に、温度
が相分離制御剤の融点TmD(ベヘン酸では約80℃)近
傍になると、液化したベヘン酸が没食子酸プロピルと一
部のプレグネノロンを溶解し、没食子酸プロピルとプレ
グネノロンとの相分離は飛躍的に加速されると同時に、
サンプルは急激に発色濃度を増加する。ここで、ベヘン
酸を用いた場合に発色濃度と温度履歴の状態が1−ドコ
サノールの場合と異なる原因は、ベヘン酸へのプレグネ
ノロンの溶解度が非常に小さく、ベヘン酸の融点TmDを
超えてもクリスタルバイオレットラクトンと没食子酸プ
ロピルとがある程度相互作用するためであると考えられ
る。
【0183】この状態から再び系の温度を凝固点以下に
下げると、凝固時に没食子酸プロピルのベヘン酸に対す
る溶解度は急激に低下し、瞬時に没食子酸プロピルとベ
ヘン酸とは相分離する。相分離した没食子酸プロピルは
クリスタルバイオレットラクトンと再び相互作用して、
系はより平衡状態に近い濃い発色状態となる。相分離制
御剤を含有する組成系の発色速度は、室温とガラス転移
温度で2〜3桁、ガラス転移温度と融点で更に2〜3桁
変化する。ここで、反応速度がベヘン酸と1−ドコサノ
ールで多少異なる原因は、各相分離制御剤への他の成分
の溶解度に差があることによると考えられる。この4成
分系でも系の融点Tmと相分離制御剤の融点TmDまで加
熱することが可能な、互いに大きさの異なる2値の熱エ
ネルギーを適宜供給すれば、極めて高速で平衡−非平衡
の相変化を可逆的に繰り返すことができ、急冷・徐冷の
熱履歴に因らず発色・消色状態を繰り返すことができ
る。
【0184】ベヘン酸と同様の発色特性を示す相分離制
御剤材料として、パルミチン酸、ステアリン酸、1−オ
クタデカン酸、ベヘン酸、1−ドコサン酸、1−テトラ
コサン酸、1−ヘキサコサン酸、1−オクタコサン酸な
ど直鎖高級脂肪酸、あるいはセバシン酸、ドデカン2
酸、1,12−ドデカンジカルボキシル酸など直鎖高級
多価脂肪酸、14−ヘプタコサノン、ステアロンなどを
代表とする直鎖高級ケトン、あるいはエチレングリコー
ルステアリン酸ジエステル、プロピレングリコールステ
アリン酸ジエステル、ブチレングリコールステアリン酸
ジエステル、カテコールステアリン酸ジエステル、シク
ロヘキサンジオールステアリン酸ジエステル、エチレン
グリコールベヘン酸ジエステル、プロピレングリコール
ベヘン酸ジエステル、ブチレングリコールベヘン酸ジエ
ステル、カテコールベヘン酸ジエステル、シクロヘキサ
ンジオールベヘン酸ジエステルなど直鎖高級脂肪酸ジオ
ールジエステルなど、エステル系ワックス、アルコール
系ワックス、ウレタン系ワックスなどが挙げられる。実
験結果から、一般に長直鎖カルボン酸、カルボキシル基
を有する低分子有機物を相分離制御剤材料として使用す
ると、この実施例のような発色特性を示すことが判っ
た。それに対して、例えばラウリン酸のような直鎖の短
い脂肪酸では、透明状態の固定が困難となるため、相分
離制御剤材料として不適当である。また、パラフィン系
ワックスも、発色・消色時のコントラストが他に比較し
て悪いため、相分離制御剤材料として適当とは言えな
い。更に付け加えるならば、長直鎖カルボン酸を有する
相分離制御剤を用いると、長直鎖アルコールを相分離制
御剤に用いた系に比較して消色状態に若干の濃度差があ
る。これはカルボン酸から一部プロトンが供給され、没
食子酸プロピルを一部発色させるためと考えられる。
【0185】実施例42 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として2,2’,4,4’−テト
ラヒドロキシベンゾフェノン1.0重量部、可逆材とし
てメチルアンドロステンジオール3.5重量部、相分離
制御剤として1−テトラコサノールを5重量部、それぞ
れ配合した後、加熱し融解混合して均一な組成物とし
た。この組成物を熱板上で約5μm厚になるように量を
調整してカバーガラスに挾み込み、測定サンプルを作成
した。この組成のサンプルは発色・消色速度共に優れ、
発色・消色が0.3秒以下で可能であり、且つ保存安定
性も40℃保存安定性試験で24時間経過後の発色率が
10%以下と実用的な性能を有するものであった。
【0186】実施例43 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として2,3,4,4’−テトラ
ヒドロキシベンゾフェノン1.0重量部、可逆材として
プレグネノロン5重量部、相分離制御剤として1−ドコ
サノールを5重量部、それぞれ配合した後、加熱し融解
混合して均一な組成物とした。この組成物を熱板上で約
5μm厚になるように量を調整してカバーガラスに挾み
込み、測定サンプルを作成した。この組成のサンプルは
発色・消色速度共に優れ、発色・消色が0.3秒以下で
可能であり、且つ保存安定性も40℃保存安定性試験で
24時間経過後の発色率が10%以下と実用的な性能を
有するものであった。
【0187】実施例44 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として2,3,4,4’−テトラ
ヒドロキシベンゾフェノン1.0重量部、可逆材として
メチルアンドロステンジオール5重量部、相分離制御剤
として1−ドコサノールを5重量部、それぞれ配合した
後、加熱し融解混合して均一な組成物とした。この組成
物を熱板上で約5μm厚になるように量を調整してカバ
ーガラスに挾み込み、測定サンプルを作成した。この組
成のサンプルは発色・消色速度共に優れ、発色・消色が
0.3秒以下で可能であり、且つ保存安定性も40℃保
存安定性試験で100時間経過後の発色率が10%以下
と実用的な性能を有するものであった。
【0188】実施例45 呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン
1.0重量部、顕色剤として没食子酸プロピル1.0重
量部、可逆材としてメチルアンドロステンジオール3.
5重量部、相分離制御剤として1,12−ドデカンジカ
ルボキシル酸を2.5重量部、それぞれ配合した後、加
熱し融解混合して均一な組成物とした。この組成物を熱
板上で約5μm厚になるように量を調整してカバーガラ
スに挾み込み、測定サンプルを作成した。この組成のサ
ンプルは発色・消色速度共に優れ、発色・消色が0.5
秒以下で可能であり、且つ保存安定性も40℃保存安定
性試験で100時間経過後の発色率が10%以下と実用
的な性能を有するものであった。
【0189】実施例46 実施例42の組成物を熱板上で加熱して中性紙(大昭和
製紙製SZ原紙、厚さ25μm)に含浸させた。このよ
うにして得られた記録媒体膜を、熱板上で、呈色性化合
物、顕色剤および可逆材が溶融するまで加熱し、その後
室温まで冷却することにより、白色の消色状態を得た。
次いで、熱板上に90℃に加熱することにより、薄い青
色を得た。その後、室温まで放冷するとサンプルは濃い
発色状態になる。続いて、この記録媒体膜上に光硬化性
エポキシ樹脂を両面に塗布後、光硬化させて膜厚1μm
の保護膜を形成した。
【0190】サンプルはホットスタンプ法で、消色設定
温度180℃、発色設定温度100℃で約0.3秒で発
色・消色を繰り返すことができた。さらに、同様の記録
・消去を繰り返した結果、コントラスト比が半減するま
でに100サイクル以上必要であった。
【0191】実施例47 実施例40の組成物を、高分子化合物スチレン・メタク
リル酸共重合体(大日本インキ製、A37P)2重量部
を20%シクロヘキサノン−トルエン溶剤と共に、ボー
ルミルにより分散を行ない、均一に分散された組成物溶
液を得た。なお、スチレン・メタクリル酸共重合体10
0gに対する呈色性化合物、顕色剤、および可逆材の溶
解度は、共に10g以下であった。上記組成物溶液を、
バーコート法により、50μmのポリエチレンテレフタ
レートフィルム上に塗布を行ない、乾燥後、5μmの膜
厚を有する記録媒体膜を得た。次いで、表に0.1μm
のシリコーン系滑性層、裏に0.1μmのスチレン・メ
タクリル酸共重合体を塗布した保護層用フィルムである
3.5μmのエチレンテレフタレートフィルムを用意
し、保護フィルムの裏が分散体に接する方向でドライラ
ミネート法で記録媒体膜に接着させた。続いて、熱ロー
ルで記録媒体全面を押圧し、室温まで冷却したところ、
無色透明な消色状態を得ることができた。次に、サーマ
ルヘッド(8dot/mm、1000Ω/dot )を使用
し、印加電圧25V、パルス幅150μsecで加熱印
字を実施した結果、印字部が青色に着色し記録が行なわ
れた。さらに、青色に着色した部分を、サーマルヘッド
(8dot/mm、1000Ω)を使用し、印加電圧2
5V、パルス幅250μsecで加熱消去を実施した結
果、無色透明な消色状態に戻ることが確認された。なお
このとき印字部及び背景部において、波長610nmの
光に対する透過率のコントラスト比は40であった。
【0192】
【発明の効果】以上詳述した通り本発明によれば、発色
状態と消色状態とのコントラスト比が高く背景表示を利
用でき、あるいは省エネルギーを図るうえで好適で、か
つカラー対応も可能な感熱記録媒体およびその情報の記
録・消去方法が実現され、このような本発明の感熱記録
媒体はリライタブル感熱紙、リライタブルカード等リラ
イタブル記録媒体への応用が可能で、その工業的価値は
大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感熱記録媒体の熱特性を示す図。
【図2】本発明における呈色性化合物、顕色剤、及び可
逆材の3成分を含有する感熱記録媒体の状態の変化を示
す図。
【図3】本発明における呈色性化合物、顕色剤、可逆材
及び相分離制御剤の4成分を含有する感熱記録媒体の状
態の変化を示す図。
【図4】本発明の感熱記録媒体における可逆材の温度と
光透過率との関係を示す図。
【図5】本発明の感熱記録媒体を構成する組成系が複数
の結晶形を形成する場合の熱特性を示す図。
【図6】本発明の一実施例における感熱記録媒体を示す
縦断面図。
【図7】本発明の他の実施例における感熱記録媒体を示
す縦断面図。
【図8】呈色性化合物、顕色剤、及びエチレン酢酸ビニ
ル共重合体からなる感熱記録媒体における発色材含有率
と発色濃度との関係を示す図。
【図9】呈色性化合物、顕色剤及びエチレン酢酸ビニル
共重合体からなる感熱記録媒体における酢酸ビニルコン
テントと発色濃度との関係を示す図。
【図10】呈色性化合物、顕色剤、可逆材及びエチレン
酢酸ビニル共重合体からなる感熱記録媒体における酢酸
ビニルコンテントと発色濃度との関係を示す図。
【図11】呈色性化合物、顕色剤、可逆材及びエチレン
酢酸ビニル共重合体からなる感熱記録媒体における酢酸
ビニルコンテントと発色濃度との関係を示す図。
【図12】呈色性化合物、顕色剤及びスチレンメタクリ
ル酸共重合体からなる感熱記録媒体におけるメタクリル
酸コンテントと発色濃度との関係を示す図。
【図13】呈色性化合物、顕色剤及びスチレンメタクリ
ル酸共重合体からなる感熱記録媒体におけるメタクリル
酸コンテントと発色濃度との関係を示す図。
【図14】呈色性化合物、顕色剤及び可逆材の3成分系
からなる感熱記録媒体のDSC測定結果を示す図。
【図15】呈色性化合物、顕色剤及び可逆材の3成分系
をポリエーテルスルホンに分散させた感熱記録媒体のD
SC測定結果を示す図。
【図16】呈色性化合物、顕色剤及び可逆材の3成分系
をスチレン−MMA共重合体に分散させた感熱記録媒体
のDSC測定結果を示す図。
【図17】呈色性化合物、顕色剤及び可逆材の3成分系
をポリエチレンイソフタレートに分散させた感熱記録媒
体のDSC測定結果を示す図。
【図18】本発明の他の実施例における感熱記録媒体の
縦断面図。
【図19】本発明の実施例における記録媒体の温度と発
色濃度との関係を示す図。
【図20】各種相分離制御剤を用いた記録媒体につい
て、保存時間と発色率との関係を示す図。
【図21】本発明の実施例における記録媒体の温度と発
色濃度との関係を示す図。
【符号の説明】
11…ガラス基板、12…記録層、13…保護膜、14
…シリカ粒子、21…コピー用紙、22…マイクロカプ
セル、31…ガラス基板、32…第1の記録層、33…
第2の記録層、34…第3の記録層。
フロントページの続き (72)発明者 宮本 浩久 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 西沢 秀之 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 藤岡 佐和子 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 渡邊 明子 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 野牧 辰夫 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 呈色性化合物と、25℃以上のガラス転
    移温度を有する顕色剤とを含有し、可逆的な結晶質−非
    晶質転移に基づいて情報の記録・消去が行なわれること
    を特徴とする感熱記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記顕色剤が、複数の結晶形を形成し得
    ることを特徴とする請求項1記載の感熱記録媒体。
  3. 【請求項3】 呈色性化合物と、顕色剤と、呈色性化合
    物及び顕色剤の濃度を低下させるマトリックス剤とを含
    有し、可逆的な結晶質−非晶質転移に基づいて情報の記
    録・消去が行なわれることを特徴とする感熱記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記マトリックス剤が、2値の熱エネル
    ギーの供給又は2種の熱履歴により可逆的に結晶質−非
    晶質転移を繰り返し得ることを特徴とする請求項3記載
    の感熱記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記マトリックス剤及び呈色性化合物又
    は顕色剤が、2値のエネルギーの供給又は2種の熱履歴
    により可逆的に結晶質−非晶質転移を繰り返し得ること
    を特徴とする請求項3記載の感熱記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記マトリックス剤が、複数の結晶形を
    形成し得ることを特徴とする請求項3記載の感熱記録媒
    体。
  7. 【請求項7】 前記マトリックス剤が、25℃以上のガ
    ラス転移温度を有することを特徴とする請求項3記載の
    感熱記録媒体。
  8. 【請求項8】 呈色性化合物と、顕色剤と、2値の熱エ
    ネルギーの供給又は2種の熱履歴による組成系の一部又
    は全部の可逆的な結晶質−非晶質転移、又は2つの相分
    離状態間もしくは相分離状態−非相分離状態間の変化を
    発現させる可逆材とを含有することを特徴とする感熱記
    録媒体。
  9. 【請求項9】 前記可逆材が、2値の熱エネルギーの供
    給又は2種の熱履歴により可逆的に結晶質−非晶質転移
    を繰り返し得ることを特徴とする請求項8記載の感熱記
    録媒体。
  10. 【請求項10】 前記可逆材及び呈色性化合物又は顕色
    剤が、2値の熱エネルギーの供給又は2種の熱履歴によ
    り可逆的に結晶質−非晶質転移を繰り返し得ることを特
    徴とする請求項8記載の感熱記録媒体。
  11. 【請求項11】 前記可逆材が複数種からなり、2値の
    熱エネルギーの供給又は2種の熱履歴により可逆的に2
    つの相分離状態間又は相分離状態−非相分離状態間の変
    化を繰り返し得ることを特徴とする請求項8記載の感熱
    記録媒体。
  12. 【請求項12】 前記可逆材及び呈色性化合物又は顕色
    剤が、2値の熱エネルギーの供給又は2種の熱履歴によ
    り可逆的に2つの相分離状態間又は相分離状態−非相分
    離状態間の変化を繰り返し得ることを特徴とする請求項
    8記載の感熱記録媒体。
  13. 【請求項13】 呈色性化合物、顕色剤及び可逆材が高
    分子化合物に担持され、前記高分子化合物100gに対
    する前記呈色性化合物、顕色剤又は可逆材の溶解度が1
    0g以下であることを特徴とする請求項8記載の感熱記
    録媒体。
  14. 【請求項14】 呈色性化合物、顕色剤及び可逆材が高
    分子化合物に担持され、前記高分子化合物の、炭素、水
    素又はハロゲン元素のみから構成される繰り返し単位が
    75wt%を超えることを特徴とする請求項8記載の感
    熱記録媒体。
  15. 【請求項15】 呈色性化合物、顕色剤及び可逆材が高
    分子化合物に担持され、前記高分子化合物が、極性置換
    基を有することを特徴とする請求項8記載の感熱記録媒
    体。
  16. 【請求項16】 呈色性化合物と、顕色剤と、2値の熱
    エネルギーの供給又は2種の熱履歴による組成系の一部
    又は全部の可逆的な結晶質−非晶質転移、又は2つの相
    分離状態間もしくは相分離状態−非相分離状態間の変化
    を発現させる可逆材と、その融点近傍で呈色性化合物又
    は顕色剤と可逆材との相分離速度を変化させる相分離制
    御剤を含有することを特徴とする感熱記録媒体。
  17. 【請求項17】 前記相分離制御剤が、呈色性化合物、
    顕色剤及び可逆材の3成分系よりも低い融点を有するこ
    とを特徴とする請求項16記載の感熱記録媒体。
  18. 【請求項18】 前記相分離制御剤が、長鎖アルキル基
    と極性基とを有する低分子化合物であることを特徴とす
    る請求項16記載の感熱記録媒体。
  19. 【請求項19】 請求項1、3または8いずれか記載の
    記録媒体に、互いに大きさの異なる2値の熱エネルギー
    を供給することで、結晶化温度Tc以上融点Tm未満の
    温度、及び融点Tm以上の温度に加熱して、情報の記録
    ・消去を行なうことを特徴とする感熱記録媒体への記録
    方法。
  20. 【請求項20】 請求項1、3または8いずれか記載の
    記録媒体を融点Tm以上の温度に加熱後、互いに冷却速
    度の異なる2種の熱履歴を与え、情報の記録・消去を行
    なうことを特徴とする感熱記録媒体への記録方法。
  21. 【請求項21】 請求項16記載の記録媒体に、互いに
    大きさの異なる2値の熱エネルギーを供給することで、
    相分離制御剤の結晶化温度TmD以上組成系の融点Tm未
    満の温度、及び組成系の融点Tm以上の温度に加熱し
    て、情報の記録・消去を行なうことを特徴とする感熱記
    録媒体への記録方法。
  22. 【請求項22】 請求項16記載の記録媒体を組成系の
    融点Tm以上の温度に加熱後、互いに冷却速度の異なる
    2種の熱履歴を与え、情報の記録・消去を行なうことを
    特徴とする感熱記録媒体への記録方法。
JP03700195A 1994-03-01 1995-02-24 感熱記録媒体及び記録方法 Expired - Fee Related JP3176018B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03700195A JP3176018B2 (ja) 1994-03-01 1995-02-24 感熱記録媒体及び記録方法

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3104694 1994-03-01
JP26639494 1994-10-31
JP6-266394 1994-10-31
JP6-31046 1994-11-22
JP6-287602 1994-11-22
JP28760294 1994-11-22
JP03700195A JP3176018B2 (ja) 1994-03-01 1995-02-24 感熱記録媒体及び記録方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08197853A true JPH08197853A (ja) 1996-08-06
JP3176018B2 JP3176018B2 (ja) 2001-06-11

Family

ID=27459368

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP03700195A Expired - Fee Related JP3176018B2 (ja) 1994-03-01 1995-02-24 感熱記録媒体及び記録方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3176018B2 (ja)

Cited By (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1055919A1 (en) * 1999-05-24 2000-11-29 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha A method for initializing control of a thermal indicating material, a thermal monitoring member and a thermal monitoring method
JP2002012787A (ja) * 2000-04-28 2002-01-15 Pilot Ink Co Ltd 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
US6382125B1 (en) 1998-10-22 2002-05-07 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha Temperature control material and temperature control method using the same
US6479293B1 (en) 1999-02-05 2002-11-12 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha Temperature indicating material and temperature monitoring member
US6830707B2 (en) 2000-06-06 2004-12-14 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha Temperature indicating material
US6995116B2 (en) 2002-08-19 2006-02-07 Sony Corporation Reversible multicolor recording medium, and recording method using the same
JP2006035683A (ja) * 2004-07-28 2006-02-09 Ricoh Co Ltd 可逆性感熱記録媒体の書き替え方法及びその方法を実施するための装置
JP2008213487A (ja) * 2003-02-28 2008-09-18 Zink Imaging Llc 画像化システム
JP2009019195A (ja) * 2007-06-12 2009-01-29 Pilot Ink Co Ltd 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
US7560415B2 (en) 2002-11-06 2009-07-14 Sony Corporation Reversible multicolor recording medium and recording method using it
JP2010106052A (ja) * 2008-10-28 2010-05-13 Pilot Ink Co Ltd 可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
JP2010275419A (ja) * 2009-05-28 2010-12-09 Pilot Ink Co Ltd 感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料及びそれを用いた感温変色性色彩記憶性液状組成物
WO2018211871A1 (ja) * 2017-05-19 2018-11-22 ソニー株式会社 立体構造物および立体構造物の製造方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7136557B2 (ja) 2017-12-21 2022-09-13 株式会社日立製作所 温度検知材料、及びそれを用いた温度逸脱時間の推定システム

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6382125B1 (en) 1998-10-22 2002-05-07 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha Temperature control material and temperature control method using the same
US6479293B1 (en) 1999-02-05 2002-11-12 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha Temperature indicating material and temperature monitoring member
EP1055919A1 (en) * 1999-05-24 2000-11-29 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha A method for initializing control of a thermal indicating material, a thermal monitoring member and a thermal monitoring method
JP2002012787A (ja) * 2000-04-28 2002-01-15 Pilot Ink Co Ltd 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
US6830707B2 (en) 2000-06-06 2004-12-14 Toshiba Tec Kabushiki Kaisha Temperature indicating material
US6995116B2 (en) 2002-08-19 2006-02-07 Sony Corporation Reversible multicolor recording medium, and recording method using the same
US7560415B2 (en) 2002-11-06 2009-07-14 Sony Corporation Reversible multicolor recording medium and recording method using it
JP2008213487A (ja) * 2003-02-28 2008-09-18 Zink Imaging Llc 画像化システム
JP2006035683A (ja) * 2004-07-28 2006-02-09 Ricoh Co Ltd 可逆性感熱記録媒体の書き替え方法及びその方法を実施するための装置
JP2009019195A (ja) * 2007-06-12 2009-01-29 Pilot Ink Co Ltd 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
JP2010106052A (ja) * 2008-10-28 2010-05-13 Pilot Ink Co Ltd 可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
JP2010275419A (ja) * 2009-05-28 2010-12-09 Pilot Ink Co Ltd 感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料及びそれを用いた感温変色性色彩記憶性液状組成物
WO2018211871A1 (ja) * 2017-05-19 2018-11-22 ソニー株式会社 立体構造物および立体構造物の製造方法
JPWO2018211871A1 (ja) * 2017-05-19 2020-03-19 ソニー株式会社 立体構造物および立体構造物の製造方法
US11518101B2 (en) 2017-05-19 2022-12-06 Sony Corporation Three-dimensional structure and method of manufacturing three-dimensional structure

Also Published As

Publication number Publication date
JP3176018B2 (ja) 2001-06-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5663115A (en) Thermal recording medium and recording method
JP2981558B2 (ja) 可逆的熱発色性組成物、それを用いた記録媒体および記録方法
JP3176018B2 (ja) 感熱記録媒体及び記録方法
US6010808A (en) Rewritable thermal recording medium and recording method
US5869420A (en) Rewritable thermal recording medium
US5849651A (en) Reversible thermal recording medium
JP3492851B2 (ja) 可逆性感熱記録媒体
JP2000085281A (ja) 可逆性感熱記録体付き情報記録カード
JP3441031B2 (ja) 可逆性感熱発色組成物及びそれを用いた可逆性感熱記録媒体
JPH0971055A (ja) 書換え型感熱記録媒体
JP4350560B2 (ja) 可逆性感熱記録材料
JP4813353B2 (ja) ヒドロキシフェニルヒドロキシアルキルアミド化合物、ならびにそれを用いた可逆性感熱組成物、可逆性感熱記録材料および発消色プロセス
JP4567252B2 (ja) 可逆性感熱発色組成物及びそれを用いた可逆性記録媒体
JP4263655B2 (ja) 可逆性感熱記録材料
JPH10250226A (ja) 書換え型感熱シート
JPH06340174A (ja) 可逆性感熱記録材料
JP4263654B2 (ja) 可逆性感熱記録材料
JPH10147067A (ja) 二色系感熱記録媒体
JPH10250238A (ja) 書換え型感熱シート
JP3625026B2 (ja) 可逆性感熱発色組成物およびそれを用いた可逆性感熱記録媒体
JP2001105731A (ja) 熱可逆性記録材料及びそれを用いた熱可逆性記録媒体
JPH06340173A (ja) 可逆性感熱記録材料
JPH0995061A (ja) 二色系感熱記録媒体
JPH11254822A (ja) 可逆性感熱記録体
JPH08164671A (ja) 可逆性感熱記録材料及びそれを用いた可逆性感熱記録媒体

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080406

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090406

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees