JPH0819607B2 - 保温性に優れた軽量薄地布帛、その製造方法、及び、インナーウェア製品 - Google Patents

保温性に優れた軽量薄地布帛、その製造方法、及び、インナーウェア製品

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JPH0819607B2
JPH0819607B2 JP1263373A JP26337389A JPH0819607B2 JP H0819607 B2 JPH0819607 B2 JP H0819607B2 JP 1263373 A JP1263373 A JP 1263373A JP 26337389 A JP26337389 A JP 26337389A JP H0819607 B2 JPH0819607 B2 JP H0819607B2
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政人 桑原
哲也 加藤
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、保温性に優れしかも薄くて軽い布帛に関す
るものである。特に、インナーウェアとして有用な保温
性軽量薄地布帛に関するものである。
[従来の技術] 合成繊維、特にポリアミド、ポリエステル等の熱可塑
性合成繊維は、その優れた強さ、イージーケアー性など
から天然繊維に匹敵する量の生産、消費がなされてい
る。
しかし、これら熱可塑性合成繊維、特にポリアミドフ
ィラメント糸はその表面と内部構造が均一かつ単純であ
ることから、単なる丸断面フィラメント糸では冷たい触
感や蝋状感等があり、冬季の衣料としての暖かさや保温
性が不十分という欠点がある。
そこで、紡績糸、糸断面の複雑化、仮撚り加工などの
テキスチャードヤーン化することにより上記欠点を改善
する試みがなされ、多くの製品が上市されてきている。
しかし、これら従来の手段では、ソフトな感触に欠ける
こと、十分な薄地化が困難であること等において問題が
あった。
また、ポリアミド・ポリエステル分割型複合繊維を緯
糸のみに用いて薄地織物を構成し、柔軟さと腰、張りと
のバランスをとることが、特開昭63−6130号公報で提案
されているが、この手段では、ポリアミド極細繊維とポ
リエステル極細繊維とが混在するため高密度布帛となる
ので、布帛中に取込まれる空気量が少なく、十分な保温
性が得られ難いという問題がある。しかも、酸性染料と
分散染料とを併用して染色されるため、染着差によるイ
ラツキが生じ易いし、また、ポリアミドに染着した分散
染料が染色堅牢性に劣り、得られる製品の染色堅牢度が
実用上満足できないという問題もある。
一方、繊維内部に中空層を持つ中空繊維は、嵩高性、
保温性、防汚性、吸水性、濾過性などの特性を有するの
で、それら特徴を活かして、種々の用途に使用されてき
ている。例えば、崇高性と保温性を生かしたポリエステ
ル詰め綿;腰、張り、保温性を生かしたポリエステルス
テープルファイバー;吸水性を生かしたアクリルステー
プルファイバー;防汚性を生かしたカーペット用糸、等
に使われてきている。
ところが、ナイロン6やナイロン66のような通常のポ
リアミド繊維の場合は、溶融紡糸により製造されるため
中空率を高くすることが困難であり、しかも、ポリマ自
体のモジュラスが低いことから後加工工程において中空
部が潰れ易いので、ポリアミド中空繊維は、太繊度の防
汚性カーペット用糸として使われている程度にすぎなか
った。
また、大きな中空部を有する細繊度中空繊維をポリア
ミドで製造可能にする方法が特開昭56−112569号公報で
提案され、ぬめりのない綿に似た風合やシャリ味のある
独特の風合を有する製品が得られることが開示されてい
る。しかし、この公報は、布帛製品の風合改善のため
に、複合割合が20%とかなり薄いポリアミド鞘層を有す
る中空複合繊維を衣料用としては比較的太目の糸条で使
用することを例示しているだけであるから、その中空複
合繊維構造を保温性素材として十分に活かすことができ
ないでいた。
[発明が解決しようとする課題] そこで、本発明は、ウールに匹敵する程の高い保温性
と羽根のような薄さ、軽さとをあわせもつファッション
性に優れた高保温性軽量薄地布帛の提供を主たる目的と
する。即ち、前記公報で提案されたポリアミド系中空複
合繊維構造を保温性素材として十分に活かすことができ
る新規な布帛製品を提供することを主たる目的とする。
また、適度の腰、張りとともにポリアミド特有のソフ
トな感触、良好な染色性や耐久性を有し、しかも、寸法
安定性にも優れた高保温性軽量薄地布帛を提供すること
を別の目的とする。
[課題を解決するための手段] この目的を達成するため、請求項1の本発明は、布帛
の目付け(W g/m2)及び厚さ(A mm)が、 40≦W≦100、0.25≦A≦0.35 を同時に満足する軽量薄地布帛において、該布帛が、ポ
リアミドからなり、亀裂や欠損を有さない鞘部、ポリエ
ステルからなる芯部、及び前記鞘部と芯部との間に存在
する中空部とを有する芯鞘型中空複合繊維から構成さ
れ、該芯鞘型中空複合繊維の繊維横断面における前記鞘
部、前記芯部および前記中空部の割合(それぞれx%、
y%,z%)が、 25≦x≦70、10≦y≦65、10≦z≦60 を同時に満足し、かつ、布帛のCLO値(C)が、C≦0.6
5 を満足する保温性に優れた軽量薄地布帛からなり、請求
項2の本発明は、請求項1記載の保温性に優れた軽量薄
地布帛から構成されたインナーウェア製品からなり、ま
た、請求項3の本発明は、ポリアミドからなる鞘部とポ
リエステルからなる芯部との複合割合(wt%)が25/75
〜70/30であるポリエステル・ポリアミド芯鞘型複合繊
維を少なくとも主体とするフィラメント糸でもって布帛
を構成した後、前記鞘部に亀裂や欠損を生じさせない状
態で、加熱アルカリ水溶液で処理することにより、請求
項1記載の軽量薄地布帛を製造する方法からなる。
請求項1の軽量薄地布帛(以下、軽量布帛と略す)
は、ポリアミドからなり、亀裂や欠損を有さない鞘部、
ポリエステルからなる芯部、およびその両者の中間部に
断熱層として存在する中空部からなる芯鞘型3層構造の
中空複合繊維から構成されるものであり、前記した布帛
特性や布帛本来の繊維性能を満足するためには、その鞘
部と芯部と中空部との割合(それぞれx%、y%,z%)
は、 25≦x≦70、10≦y≦65、 10≦z≦60を同時に満足することが必要である(第3
図)。この複合割合は、布帛から取出した繊維の繊維横
断面顕微鏡写真をとることにより測定することができ
る。
この中空複合繊維で鞘部を構成するポリアミドとして
は、実質的にポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン
66)やポリε−カプラミド(ナイロン6)からなるポリ
アミドが好適であるが、セバシン酸、イソフタル酸、パ
ラキシレンジアミン等を構成成分とするポリアミド、あ
るいはこれらの共重合ポリアミド等を用いてもよい。そ
の重合度は一般衣料用に用いられる範囲であればよい。
一般的には硫酸相対粘度(ηr:98%硫酸100ccに対しポ
リアミド1gを溶解して測定した値)として2.4〜3.5程度
が好ましい。
また、芯部を構成するポリエステルは、鞘部から浸透
してきた加熱アルカリ水溶液によってその外側部分を溶
解除去させても、その強さや伸びなどの繊維性能が実質
的に損なわれず、かつ、ポリアミドとの溶融複合紡糸が
可能であれば、そのポリマ組成は特定されないが、例え
ば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフ
タレートが好適である。また、これらにイソフタル酸、
脂肪族2塩基酸、スルホン化芳香族カルボン酸等を少量
共重合させたポリエステルであってもよい。その重合度
は、一般衣料用に用いられる範囲であればよい。一般的
には極限粘度(IV:ポリエステルをオルトクロロフェノ
ールに溶解して測定した値)が0.55〜0.75程度の範囲が
好ましい。
なお、これらのポリアミド、ポリエステルには酸化チ
タン等の艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の通常
の繊維用添加剤を加えて用いてもよい。しかし、芯ポリ
エステルに酸化チタンが含まれていると、苛性アルカリ
水溶液処理時に酸化チタン格子が中空部の内壁に付着
し、光沢、発泡の斑を生じる傾向にあるから、芯ポリエ
ステルには酸化チタンを実質的に含まないことが好まし
い。
鞘部、芯部および中空部の繊維横断面における形状と
位置関係は、第2図(1)〜(5)のように芯部と鞘部
との間が実質的に空気層で隔てられ、独立に存在し、か
つ、鞘部が亀裂や欠損を有さないものであればどのよう
であってもよい。例えば、第2図(1)のような同心円
状3層芯鞘複合形態が代表的であって生産上好ましい
が、他の複合形態、例えば、鞘層の外周面や内周面の形
状が三角、四角、星型のような非円形であってもよい
し、芯層の外周面形状が同様な非円形であってもよいし
(第2図(2)〜(4))、また、芯層と鞘層とが相対
的に偏心してもよい(第2図(5))。
請求項1で布帛を構成する中空複合繊維は、請求項3
の方法のように、鞘部ポリアミドと芯部ポリエステルと
の複合割合が25/75〜70/30である芯鞘型複合繊維を製糸
した後、その芯部ポリエステルの外側部分を加熱アルカ
リ水溶液によって部分的に溶出除去するという方法で製
造することができる。
この芯部ポリエステルを部分的に溶出除去するための
加熱アルカリ水溶液処理には、薬剤として、苛性アルカ
リ、例えば、苛性ソーダ、苛性カリ等が用いられる。そ
の処理条件は、鞘部の厚さ、ポリアミドやポリエステル
の種類、繊維の配向結晶化の程度、および得ようとする
中空率等によって変るが、一般的には苛性アルカリの濃
度は10〜100g/、温度は80〜120℃の条件を用いればよ
い。
また、芯部ポリエステル、鞘部ポリアミドの芯鞘型複
合繊維は、次の方法で製糸することができる。
芯部ポリエステルと鞘部ポリアミドとを別々に溶融し
た後、紡糸パック部に導き通常の複合方法で芯鞘構造の
複合流を形成し、紡糸ノズルから紡出する。紡出したフ
ィラメント糸は、冷却固化、給油した後、必要に応じて
交絡処理され、所定の速度で引取られる。この引取りの
後、一旦パッケージに巻上げた後にドローツイスターで
延伸してもよいし、また、巻取ることなく引続いて延伸
した後に巻取ってもよい。さらにまた、引取りの速度を
4000m/分以上の高速として実質的に延伸することなく一
挙に目標の繊維性能を有する製品糸としてもよい。
得られた製品糸は、通常の方法で製編織して布帛とし
た後、芯部の部分的溶出処理を行うことにより請求項1
に係る軽量布帛を製造することが好ましいが、後工程に
おいて中空部を良好に保持できるのであれば、布帛とす
る前の工程で芯部の部分的溶出処理を行ってもよい。
本発明に係る軽量布帛は、40〜100g/m2という低い目
付けおよび0.25〜0.35mmという薄さを有するものであ
り、この目付け(W)および布帛厚み(A)は、次の方
法で測定される。
目付け:25cm×25cmの布帛試験片を採取し、平衡水分
率以下となるまで十分に乾燥した後、20℃、65%RHの室
内に24時間放置し、水分平衡とした後に、その試験片の
重量を測定する。得られた試験片の重量を1m2あたりに
換算し、布帛試験片2枚についての平均値でもって表
す。
厚み:ダイヤルゲージ型の厚み測定器(大栄科学
(株)製)の試料台の上に試験布帛を静置し、その上に
1cm2のプレッサフートを用いて7g/cm2の荷重をかけ、10
秒後の厚さを5箇所以上で測定し、その平均値でもって
表す。
このような低い目付けおよび薄さを有する布帛を得る
ためには、溶出除去後の中空部の割合を適正値(例え
ば、10%以上)にすることが重要であるし、さらに、構
成糸条の繊度を適正水準の細さにすることが有効であ
る。例えば、アルカリ処理前の複合繊維の糸条繊度は70
デニール以下、さらに65デニール以下とすればよい。な
お、ソフト風合の布帛製品を得るためには、その単糸繊
度を1〜10デニール程度とすることが好ましい。
この細繊度糸条による布帛構成は、トリコット編地、
丸編地、織物など、通常、インナーウェア等の衣料用に
用いられるものであればよい。
また、CLO値(C)は、布帛の保温性を表す尺度であ
り、環境温度13℃で安静状態にある人体をシミュレート
した次の方法で測定する。
20℃、65%RHの環境中で十分に調湿させた試験布帛
を、40±0.1℃に設定されたSm2の熱板上に静置し、1分
経過後の安定した状態で、熱板から試験布帛を通して環
境中に放散する熱損失量を、熱板面積(S m2)と消費電
力(E w)とから求める。この時、熱板からの対流によ
る放熱を防止するため、熱板周辺は上部に開閉口のある
樹脂製ケースで覆って無風状態とした。
布帛を載せない熱板からの放熱量は環境との温度差に
比例するから、人体の平均皮膚温度33℃からして、温度
差20℃での上記実験は、環境温度13℃で安静状態の人体
における保温性をシミュレートしたものである。
上記実験で得られた熱損失量の値は、次式により、CL
O値(C)に換算される。
C=(1/0.155)×(20×S/E) [作用] ポリアミドからなる鞘部は、繊維内に存在する中空部
を外気から遮断する機能を有するとともに、繊維の強
さ、伸び、表面の感触、染色性等の布帛が必要とする本
来の機能を発揮する。同時に中空化工程に使用する薬剤
による悪影響を受けることなくその薬剤を透過させ、か
つ、芯部のポリエステルの分解物を外部に透過、除去さ
せる機能をも果たす。
ポリエステルからなる芯部は、布帛に、寸法安定性、
腰、張り、防皺性等の機能を付与するために必要であ
る。
また、中空部は布帛に高い保温性を与えるために重要
である。中空部を芯部と鞘部との間に存在させること
は、中空の破壊や潰れが生じにくい安定した中空を得る
ために有効であり、しかも、比較的広範囲の中空割合を
とることが可能となり、中空部の設計が容易となる。さ
らに、細繊度糸でも高い中空率を安定して得ることが可
能であるので、中空糸でもって薄地布帛を製造すること
が可能となり、請求項1で特定した布帛特性で表される
薄くて軽くしかも高保温性の布帛が得られるのである。
即ち、本発明により得られる高保温性の軽量布帛は、
40〜100g/m2という低い目付けおよび0.25〜0.35mmとい
う薄さを有するものでありながら、CLO値が0.65以上と
いう高い保温性を有する。
このCLO値は布帛の保温性を示す指標として一般に用
いられているものであり、値が大きい程保温性が優れる
ことを表す。そして、21℃、50%RH以下、気流5cm/秒の
室内で安静状態にある人体の平均皮膚温度(33℃)を維
持できる布帛の保温性(熱抵抗)がCLO値1.0で表され
る。
本発明に係る布帛は、主として、薄くて軽くファッシ
ョン性の高い衣料用布帛としての使用を目的とするため
に、上記特定の低い目付け値および、上記特定の薄さを
有することが必要である。
この程度の目付けおよび薄さを有する布帛は、ポリア
ミド繊維製インナーウェアに用いられているが、従来の
ポリアミド繊維製インナーウェアの布帛は、保温性がCL
O値で0.56〜0.60程度とかなり劣り、保温性は犠牲にせ
ざるを得なかった。また、布帛の目付けや厚みを大きく
すれば、CLO値を高めることも可能ではあるが、これで
はファッション性を満足させることはできない。このよ
うに、本発明で特定した軽量布帛でありながら高い保温
性を有するという布帛は、従来では製造できないと考え
られていたものである。
そして、この高保温性の軽量布帛を得るためには、中
空複合繊維の鞘部と芯部と中空部との割合を、それぞ
れ、25〜70%、10〜65%、10〜60%とすることが必要で
ある。
布帛使用時の鞘部破れを防止し、鞘部ポリアミド本来
の好ましい特性(強度や染色性等)を十分に発現させる
ためには、鞘部の割合を25%以上とすることを要する。
また、芯部ポリエステルによる効果(布帛の寸法安定
性、腰、張り、防皺性等)を十分に発揮するためには、
芯部の割合を10%以上とすることを要する。
得られる布帛の保温性をCLO値0.65以上とするために
は、鞘部に亀裂や欠損を生じさせず、かつ、中空部の割
合を10%以上とすればよい。この程度の中空割合を得る
ためには、鞘部および/または芯部をあまり大きくする
ことは困難であり、実際上とり得る上限値は、鞘部の割
合で70%程度、芯部の割合で65%程度と言える。また、
鞘部が厚過ぎると、芯部ポリエステルを部分的に溶出、
除去させる工程において鞘部を薬液が浸透し、分解物を
除去するに長時間を要することになるので、この点から
も鞘部の割合は70%以下程度に抑えることを要する。
中空部の割合が大きいほど保温性は優れるが、あまり
大き過ぎると布帛の取扱いや使用の際の中空部の潰れや
破壊が生じ易くなるし、また、鞘部ポリアミドや芯部ポ
リエステルを十分な大きさとすることが困難であるの
で、実際上とり得る上限は60%程度である。
[実施例] ・ 実施例1 酸化チタン微粉末を0.3%含有するポリε−カプラミ
ド(硫酸相対粘度ηr=2.6)と、酸化チタンを実質的
に含有しないポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV
=0.63)とをエクストルーダ型紡糸機で別々に溶融し、
それぞれ第1表に示す複合割合で計量して、鞘部がポリ
ε−カプラミド、芯部がポリエチレンテレフタレートと
なるように配した複合紡糸口金により同心円状芯鞘型に
接合し、吐出した後、3500m/分の速度で引取った後、連
続して160℃に加熱した延伸ローラにより5000m/分で延
伸しつつ熱セットし、40デニール、12フィラメントの延
伸糸として巻取った。
得られた延伸糸(芯鞘複合繊維)を用いて常法により
経編32ゲージのハーフ組織の編地を得た。
得られた編地を常法によりリラックス処理および中間
セット処理した後、濃度60g/の沸騰状態苛性ソーダ水
溶液中に浸漬処理し、その浸漬時間の調節により芯ポリ
エステル成分の減量率を所定値にした。続いて、酸性染
料(“Nylomine Blue A−G")、1%owf、98℃で染色し
た後、180℃で仕上げセットして、中空複合繊維からな
る染色布帛を製造した。
得られた布帛の特性を測定し、その結果を第1表に示
した。また、No.2の布帛について構成する繊維の500倍
顕微鏡写真を撮影したところ。第1図に示すように、芯
部と鞘部との間にきれいな中空部が存在し、鞘部には亀
裂も欠損も生じていないことが認められた。
中空複合繊維の鞘破れ発生:試験布帛を構成する繊維
断面を撮影した顕微鏡写真により、比較評価した。
布帛の張り、腰:触感による相対評価によった。
また、市販のポリアミド繊維と同等の優れた染色特性
を示した。次に、この染色布帛で女性用スリップを製造
したところ。ボデーラインに沿ってよくドレープし、か
つ薄くて軽いにもかかわらず高い保温性を示した。
第1表の結果からわかるように、布帛を構成する中空
複合繊維の複合割合および中空率を適正水準にすること
が、高保温性の軽量布帛を製造するために、さらに、そ
の布帛に衣料用布帛して必要な諸特性(張り、腰、引裂
き強度等)を付与するために有効であった。
また、比較として、通常の方法で紡糸延伸して得られ
た、ポリε−カプラミドからなる40デニール、12フィラ
メントのポリアミドフィラメント糸を用いて、上記同様
に得たハーフ組織の編地の結果も第1表に併せて示し
た。このポリアミド単独繊維からなるトリコット布帛
は、CLO値が低く保温性が劣るものであった。
さらに、No.4(本発明)およびNo.10(比較例)の布
帛で長袖U首シャツを縫製し、人工気象室で女性パネラ
ー8名による着用テストを行った。着用テストの際の着
衣は、内層に前記長袖U首シャツ、外層にポリエステル
100%長袖ブラウスを着用した状態であり、15℃、65%R
Hの室内環境で30分間安静状態を保つ条件とした。そし
て、人体胸部に取付けた温度センサーにより、皮膚の温
度変化を調べ、その結果を第4図に示した。また、パネ
ラー自身の着用感は第2表のとおりであった。
第4図の結果からわかるように、本発明に係る布帛
(No.4)は、安静時の皮膚温度低下が、従来の布帛(N
o.10)に比べて小さく、保温性に優れた衣服であること
が実証された。
さらに、着用感についても、本発明の布帛は着用直後
および安静時ともに優れており、衣料用保温性布帛とし
て優れていた。これに対し、従来の布帛では着用直後お
よび安静時ともに保温性に劣ることが着用感としてはっ
きり表れ、不快感を感じるものであった。
・ 実施例2 鞘部と芯部との複合割合が30/70である芯鞘型複合繊
維を実施例1と同様に製糸する際の、ポリマ吐出量等を
変化させることにより、糸条繊度が種々異なる芯鞘型複
合繊維を製造した。そして、実施例1と同様に、32ゲー
ジのハーフ組織の編地とした後、苛性ソーダ水溶液での
減量処理を行い、中空複合繊維からなる布帛を製造し
た。得られた布帛を実施例1同様に評価した結果を第3
表に示した。
第3表の結果からわかるように、原糸段階における糸
条繊度を70デニール以下にすることが、高保温性の軽量
布帛を製造するために有効であった。
[発明の効果] 本発明に係る軽量布帛は、40〜100g/m2の目付けおよ
び0.25〜0.35mmの厚さを有し、羽根のように薄くて軽い
にもかかわらず、CLO値が0.65以上というウールに匹敵
する高い保温性を有するものである。さらに、表面がポ
リアミドで構成されているため、染色性、耐久性、表面
感触などに優れ、従来のポリアミド繊維製布帛と同様に
使用することができる。しかも、芯部にポリエステル層
が存在するために、寸法安定性、防皺性に優れ、適度の
張り、腰を有する。
これら特性を有することから、本発明に係る軽量布帛
は、インナーウェア製品用、特にランジェリー、ファン
デーション、ニューインナ、スポーツインナのような婦
人用インナーウェア製品用に有用であるが、高保温性や
軽量であることが要求される他の布帛製品類、例えば、
アウターウェア、スポーツウェアなどにも使用できる。
また、この軽量布帛は、原糸の複合割合を適正値と
し、しかも、布帛とした後に加熱アルカリ処理すること
により、工業的に容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る軽量布帛を構成する繊維の形状
を拡大して示す顕微鏡写真である。 第2図(1)〜(5)は、本発明に係る軽量布帛を構成
する中空複合繊維における複合形態を例示する繊維横断
面図である。 第3図は、本発明で特定した中空複合繊維の鞘部、芯部
および中空部の割合を示す図である。 第4図は、本発明に係る布帛あるいは従来の布帛を用い
た衣類を着用評価した際の皮膚温度の変化を示す図であ
る。 [符号の説明] 1:鞘部(ポリアミド層) 2:芯部(ポリエステル層) 3:中空部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 8/14 C D06M 11/38 (56)参考文献 特開 昭56−112569(JP,A) 特公 昭60−40539(JP,B2) 繊維学会誌(繊維と工業),Vol. 43,No.6(1987),P.14〜25

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】布帛の目付け(W g/m2)及び厚さ(A mm)
    が、 40≦W≦100、0.25≦A≦0.35 を同時に満足する軽量薄地布帛において、該布帛が、ポ
    リアミドからなり、亀裂や欠損を有さない鞘部、ポリエ
    ステルからなる芯部、及び前記鞘部と芯部との間に存在
    する中空部とを有する芯鞘型中空複合繊維から構成さ
    れ、該芯鞘型中空複合繊維の繊維横断面における前記鞘
    部、前記芯部および前記中空部の割合(それぞれx%、
    y%,z%)が、 25≦x≦70、10≦y≦65、10≦z≦60 を同時に満足し、かつ、布帛のCLO値(C)が、C≦0.6
    5 を満足することを特徴とする保温性に優れた軽量薄地布
    帛。
  2. 【請求項2】請求項1記載の保温性に優れた軽量薄地布
    帛から構成されたことを特徴とするインナーウェア製
    品。
  3. 【請求項3】ポリアミドからなる鞘部とポリエステルか
    らなる芯部との複合割合(wt%)が25/75〜70/30である
    ポリエステル・ポリアミド芯鞘型複合繊維を少なくとも
    主体とするフィラメント糸でもって布帛を構成した後、
    前記鞘部に亀裂や欠損を生じさせない状態で、加熱アル
    カリ水溶液で処理することにより、請求項1記載の軽量
    薄地布帛を製造することを特徴とする保温性に優れた軽
    量薄地布帛の製造方法。
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