JP2569972B2 - 発色性に優れた高保温性布帛及びその製造方法 - Google Patents

発色性に優れた高保温性布帛及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアミド・ポリエス
テル複合繊維製の高保温性布帛の改良に関するものであ
り、特に、その発色性を高め、濃色の軽量布帛製品用等
に有用な高保温性布帛に関するものである。
【0002】
【従来の技術】合成繊維、特にポリアミド、ポリエステ
ルなどの熱可塑性合成繊維は、その優れた強さ、イージ
ーケアー性などから天然繊維に匹敵する量の生産、消費
がなされている。
【0003】しかし、これら熱可塑性合成繊維、特にポ
リアミドフィラメント糸は、その表面や内部構造が均一
かつ単純であることから、単なる丸断面フィラメント糸
では冷たい感触や蝋状感等があり、冬季の衣料としての
暖かさや保温性が不十分という欠点がある。
【0004】そこで、紡績糸にしたり、糸断面を複雑化
したり、また、仮撚り加工などのテキスチャードヤーン
化したりすることにより上記欠点を改善する試みがなさ
れ、インナーウェア等に多くの製品が上市されてきてい
る。しかし、これら従来の手段では、ソフトな感触に欠
けること、十分な薄地化が困難であることなどにおいて
問題があった。
【0005】一方、繊維内部に中空層を持つ中空繊維
は、嵩高性、保温性、防汚性、吸水性、濾過性などの特
性を有するので、それら特徴を活かして、種々の用途に
使用されてきている。例えば、嵩高性と保温性を生かし
たポリエステル詰め綿;腰、張り、保温性を生かしたポ
リエステルステープルファイバー;吸水性を生かしたア
クリルステープルファイバー;防汚性を生かしたカーペ
ット用糸などに使われてきている。
【0006】ところが、ナイロン6やナイロン66のよ
うな通常の衣料用ポリアミド繊維の場合は、溶融紡糸に
より製造されるため中空率を高くすることが困難であ
り、しかも、ポリマ自体のモジュラスが低いことから後
加工工程において中空部が潰れ易いので、ポリアミド中
空繊維は、太繊度の防汚性カーペット用糸として使われ
ている程度にすぎなかった。
【0007】また、大きな中空部を有する細繊度中空繊
維をポリアミドで製造可能にする方法が特開昭56−1
12569号公報で提案され、ぬめりのない綿に似た風
合やシャリ味のある独自の風合を有する製品が得られる
ことが開示されている。しかし、この公報では、布帛製
品の風合改善のために、複合割合が20%とかなり薄い
ポリアミド鞘層を有する中空複合繊維を衣料用としては
比較的太目の糸条で使用することを例示しているだけで
あり、その中空複合繊維構造を軽量保温性素材として十
分に活かす技術は示されていない。
【0008】そこで、本発明者らは、上記方法を改良し
て、ポリアミド鞘部とポリエステル芯部との間に中空部
を形成してなる芯鞘型中空複合繊維から、保温性に優れ
た軽量布帛を開発し、先に提案した。
【0009】ところで、近年は、衣料のファッション化
が一段と進み、濃色で色の鮮やかな物の要求が強くなっ
てきている。例えば、インナーウェアの分野でも、濃色
製品の占める比率が年々上昇してきている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者らが
先に提案した芯鞘型中空複合繊維製の高保温性軽量布帛
は、保温性を発揮する中空部において光が乱反射を起こ
し易く、しかも、酸性染料で染色しているので芯部ポリ
エステルは染色されないままであり、発色性が悪いとい
う問題があり、濃色製品には不向きであった。
【0011】酸性染料の染料濃度を従来より高くするこ
とによっても濃色化することは一応可能ではあるが、通
常のポリアミド丸断面糸と同等の発色性を得ようとする
には、染料濃度を通常丸断面糸の染色の場合の2〜3倍
にまで上げる必要がある。しかし、この場合、発色性は
満足するものの、逆に、洗濯時の色落ちが激しくなり、
実用に供し得ないものとなる。
【0012】また、酸性染料と分散染料とを併用して染
色する方法もあるが、通常の染色温度(98℃程度)で
は、芯部ポリエステルを染色することは困難であって、
発色性を改善することは難しい。また、分散染料が鞘部
ポリアミドにも付着し易く、この付着した分散染料は著
しく染色堅牢性に劣るので、やはり実用上満足できる製
品は得られ難い。
【0013】そこで、本発明は、ウールに匹敵する程の
高い保温性をもつ高保温性布帛でありながら、発色性に
も優れた布帛を提供することを主たる目的とする。即
ち、高保温性布帛の発色性を向上させ、ファッション性
に優れた高保温性製品用に好適な布帛を提供することを
目的とする。
【0014】また、適度の腰、張りとともにポリアミド
特有のソフトな感触や耐久性を有し、しかも寸法安定性
にも優れた高発色保温性布帛を提供することを別の目的
とする。
【0015】この目的を達成するため、請求項1の発明
は、ポリアミドからなる鞘部、スルホン化芳香族ジカル
ボン酸変性ポリエステルからなる芯部、及び、前記鞘部
と前記芯部との間に存在する中空部を有し、かつ、それ
らの複合割合が次式、 25≦x≦70、 10≦y≦65、 10≦z≦60 (但し、x,y,zは、それぞれ、前記した鞘部、芯部
及び中空部の割合(%)である) を同時に満足する芯
鞘型中空複合繊維から構成される布帛であって、前記鞘
部には酸性染料が染着し、前記芯部にはカチオン染料が
染着され、かつ、前記鞘部と前記芯部とが同系色に染色
されている発色性に優れた高保温性布帛からなる。
【0016】また、請求項2の発明は、ポリアミドから
なる鞘部とスルホン化芳香族ジカルボン酸変性ポリエス
テルからなる芯部との複合割合(wt%)が25/75
〜70/30である変性ポリエステル・ポリアミド芯鞘
型複合繊維を少なくとも主体とするフィラメント糸でも
って布帛を構成し、該布帛を加熱アルカリ水溶液で処理
した後に、同系色の酸性染料とカチオン染料とで染色す
ることにより、請求項1記載の高保温性布帛を製造する
方法からなる。
【0017】この中空複合繊維で鞘部を構成するポリア
ミドとしては、実質的にポリヘキサメチレンアジパミド
(ナイロン66)やポリε−カプラミド(ナイロン6)
からなるポリアミドが好適であるが、セバシン酸、イソ
フタル酸、パラキシレンジアミンなどを構成成分とする
ポリアミド、あるいはこれらの共重合ポリアミドなどを
用いてもよい。その重合度は一般衣料用に用いられる範
囲であればよい。一般的には硫酸相対粘度(ηr)(9
8%硫酸100ccに対しポリアミド1gを溶解して測定
した値)として2.4〜3.5程度が好ましい。
【0018】本発明で芯部に用いるスルホン化芳香族ジ
カルボン酸変性ポリエステル(以下、単に変性ポリエス
テルという)は、スルホン基を有する化合物がポリエス
テルの連鎖または末端の一部に含まれる変性されたポリ
エステルであり、例えば、特公昭34−10497号公
報に記載されている。具体的には、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれら
を主成分とする共重合ポリエステルなどに、スルホン化
芳香族ジカルボン酸あるいはその塩を共重合させてなる
変性されたポリエステルがある。
【0019】そのスルホン化芳香族ジカルボン酸の代表
的なものとしては、下記化学式で示される5−スルホキ
シイソフタル酸またはその塩が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】これらスルホン化芳香族ジカルボン酸はフ
リーの酸の状態あるいはアルキルエステルの状態でポリ
エステルの重合時に添加されて共重合され、変性ポリエ
ステルを生成する。そのスルホン化芳香族ジカルボン酸
の共重合量はテレフタル酸に対して0.5〜6モル%程
度であることが好ましい。この共重合量が低過ぎると変
性ポリエステルの所望の効果が得られ難いし、逆に多過
ぎれば変性ポリエステルの結晶構造が乱れて機械的特性
の大幅な低下など好ましくない現象を生じる。
【0022】これらポリアミドや変性ポリエステルに
は、酸化チタンなどの艶消剤、紫外線吸収剤、酸化防止
剤などの通常の繊維用添加剤を加えて用いてもよい。た
だし、芯部の変性ポリエステルに酸化チタンが含まれて
いると、苛性アルカリ水溶液処理時に酸化チタン粒子が
中空部の内壁に付着し、光沢、発泡の斑を生じる傾向に
あるから、芯部の変性ポリエステルには酸化チタンを実
質的に含ませないことが好ましい。
【0023】鞘部、芯部及び中空部の繊維横断面におけ
る複合割合は、発色性、保温性、軽量性、及び布帛の張
り、腰といった機能や風合を決める上で重要であり、そ
れぞれ、25〜70%、10〜65%、10〜60%と
することが必要である(図2)。
【0024】本発明では、同系色の酸性染料とカチオン
染料とで染色することにより、鞘部のポリアミドに酸性
染料を染着させ、かつ、芯部の変性ポリエステルにカチ
オン染料を染着させることによって発色性を改善するも
のであるから、芯部の変性ポリエステルをカチオン染料
で染色することによる発色性向上効果を得るために、芯
部の割合は10%以上にすることが重要である。また、
芯部にポリエステル成分を配したことによる効果(寸法
安定性、腰、張り、防皺性など)を十分に発揮するため
にも、芯部の割合を10%以上とすることが必要であ
る。
【0025】布帛使用時の鞘部破れを防止し、鞘部ポリ
アミド本来の好ましい特性(強度や染色性など)を十分
に発現させるためには、鞘部の割合を25%以上とする
必要がある。
【0026】得られる布帛の保温性を高めるためには、
中空部の割合を10%以上とすることが必要である。
【0027】中空部の大きさを確保するためには、鞘部
及び/又は芯部をあまり大きくすることは困難であり、
実際上とり得る上限値は、鞘部の割合で70%、芯部の
割合で65%である。また、鞘部が厚過ぎると、芯部変
性ポリエステルを部分的に溶出、除去させる工程におい
て、鞘部内を薬液が浸透し、分解物を除去するに長時間
を要することになるので、この点からも鞘部の割合は7
0%以下に抑えることが必要である。
【0028】中空部の割合が大きいほど保温性は優れる
が、あまり大き過ぎると布帛の取扱いや使用の際に中空
部の潰れや破壊が生じ易いし、また、中空部での光の乱
反射による発色性低下が大きくなるし、さらに、鞘部ポ
リアミドや芯部変性ポリエステルを十分な大きさとする
ことが困難となるので、実際上とり得る中空部割合の上
限は60%である。
【0029】この複合割合は、繊維全体の断面積を基準
とした各部の断面積の割合であり、布帛から取出した繊
維の繊維横断面顕微鏡写真をとって、鞘部、中空部、芯
部の断面積を測定し、それら断面積の値から求めること
ができる。
【0030】また、複合繊維内の各部の形状と位置関係
は、芯部と鞘部との間が実質的に空気層で隔てられ、独
立に存在するものであればどのようであってもよい。例
えば、図1(1) のような同心円状3層芯鞘複合形態が代
表的であって生産上好ましいが、他の複合形態、例えば
鞘層の外周面や内周面の形状が三角、四角、星型のよう
な非円形であってもよいし、芯層の外周面形状が同様な
非円形であってもよいし(図1(2) 〜(4))、また、芯層
と鞘層とが相対的に偏心していてもよい(図1(5))。
【0031】請求項1で布帛を構成する中空複合繊維
は、請求項2の方法で製造することができる。
【0032】芯部の変性ポリエステルと鞘部のポリアミ
ドとを別々に溶融した後、紡糸パック部に導き通常の複
合方法で芯鞘構造の複合流を形成し、紡糸ノズルから紡
出する。紡出したフィラメント糸は、冷却固化、給油し
た後、必要に応じて交絡処理され、所定の速度で引取ら
れる。この引取りの後、一旦パッケージに巻上げた後に
ドローツイスターで延伸してもよいし、また、巻取るこ
となく引続いて延伸した後に巻取ってもよい。さらにま
た、引取りの速度を3500m/分以上の高速として実
質的に延伸することなく一挙に目標の繊維性能を有する
製品糸としてもよい。
【0033】得られた製品糸は、通常の方法で製編織し
て布帛とした後に、加熱アルカリ水溶液処理し芯部の部
分的溶出処理を行い中空化し、その後に、染色処理する
ことが好ましい。
【0034】芯部の変性ポリエステルを部分的に溶出除
去するための加熱アルカリ水溶液処理には、薬剤とし
て、苛性アルカリ、例えば、苛性ソーダ、苛性カリなど
を用いればよい。その処理条件は、鞘部の厚さ、ポリア
ミドや変性ポリエステルの種類、繊維の配向結晶化の程
度、及び得ようとする中空率などによって変るが、一般
的には苛性アルカリの濃度は10〜100g/l、温度
は80〜120℃の条件を用いればよい。
【0035】染色方法は、同系色の酸性染料とカチオン
染料とを一浴法で、コンプレックスを防ぐために沈殿防
止剤を入れ、95〜105℃程度の温度、30〜60分
程度の時間で行えばよい。
【0036】酸性染料としては、ポリアミド染着のため
の通常用いられている染料を用いればよく、また、カチ
オン染料としては、スルホン化芳香族ジカルボン酸変性
ポリエステル等の染色に通常用いられている染料を用い
ればよい。
【0037】このように、同系色の酸性染料とカチオン
染料とを併用して染色することにより、ポリアミド鞘部
は酸性染料で染色され、かつ、変性ポリエステル芯部は
カチオン染料でそれぞれ同系色に染色された染色布帛が
得られる。
【0038】本発明に係る高保温性布帛の布帛構成は、
トリコット編地、丸編地、織物など、通常、衣料用に用
いられるものであればよい。
【0039】
【作用】鞘部のポリアミドは、酸性染料で染色される
が、カチオン染料では実質的に染色されず、逆に、芯部
の変性ポリエステルは、カチオン染料で染色されるが、
酸性染料では実質的に染色されない。従って、染色され
た布帛において、鞘部のポリアミドには実質的に酸性染
料のみが染着し、また、芯部の変性ポリエステルには実
質的にカチオン染料のみが染着された状態となる。
【0040】このように、鞘部と芯部とを染色するそれ
ぞれの染料は他のポリマ成分を汚染しないので、染色堅
牢性を悪化させることなく鞘部及び芯部ともに同系色に
染色させることができ、従って、製品布帛における発色
性が改善され濃色化可能となるのである。
【0041】また、本発明において、中空部は布帛に高
い保温性を与えるために重要である。中空部を芯部と鞘
部との間に存在させることは、中空の破壊や潰れが生じ
にくく安定した中空を得るために有効であり、しかも、
比較的広範囲の中空割合をとることが可能となり、中空
部の設計が容易となる。さらに、細繊度糸でも高い中空
率を安定して得ることが可能であるので、薄くて軽くし
かも高保温性の布帛とすることもできる。
【0042】ポリアミドからなる鞘部には、酸性染料が
付着し、鞘部の発色性を保つ。また、この鞘部は、繊維
内に存在する中空部を外気から遮断する機能を有すると
ともに、繊維の強さ、伸び、表面の感触、染色性などの
布帛が必要とする本来の機能を発揮する。同時に中空化
工程に使用する薬剤による悪影響を受けることなくその
薬剤を透過させ、かつ芯部のポリエステルの分解物を外
部に透過、除去させる機能をも果たす。
【0043】さらに、変性ポリエステルからなる芯部
は、カチオン染料での染色による発色性向上の他に、布
帛に寸法安定性、腰、張り、防皺性などの機能を付与す
るための機能をも果たす。
【0044】このように鞘部、中空部、及び鞘部を特定
割合でしかも芯鞘型に配することにより、高保温性布帛
とすることができ、しかも、繊維表面にポリアミドが配
されていることにより、耐久性、表面感触などに優れた
製品とすることができる。
【0045】
【実施例】以下の実施例において得られた布帛の各特性
は次の方法で測定した。
【0046】目付け: 25cm×25cmの布帛試験片を
採取し、平衡水分率以下となるまで十分に乾燥した後、
20℃、65%RHの室内に24時間放置し、水分平衡と
した後に、その試験片の重量を測定する。得られた試験
片の重量を1m2 あたりに換算し、布帛試験片2枚につ
いての平均値でもって表す。
【0047】厚さ: ダイヤルゲージ型の厚み測定器
(大栄科学(株)製)の試料台の上に試験布帛を静置
し、その上に1cm2 のプレッサフートを用いて7g/cm
2 の荷重をかけ、10秒後の厚さを5箇所以上で測定
し、その平均値でもって表す。
【0048】CLO値(C) : 布帛の保温性を表す尺度
であり、環境温度13℃で安静状態にある人体をシミュ
レートした次の方法で測定した。
【0049】20℃、65%RHの環境中で十分に調湿さ
せた試験布帛を、40±0.1℃に設定されたSm2
熱板上に静置し、1分経過後の安定した状態で、熱板か
ら試験布帛を通して環境中に放散する熱損失量を、熱板
面積(Sm2 )と消費電力(EW)とから求める。この
時、熱板からの対流による放熱を防止するため、熱板周
辺は上部に開閉口のある樹脂製ケースで覆って無風状態
とした。
【0050】布帛を載せない熱板からの放熱量は環境と
の温度差に比例するから、人体の平均皮膚温度33℃か
らして、温度差20℃での上記実験は、環境温度13℃
で安静状態の人体における保温性をシミュレートしたも
のである。
【0051】上記実験で得られた熱損失量の値は、次式
により、CLO値(C)に換算される。
【0052】 C=(1/0.155)×(20×S/E) このCLO値は布帛の保温性を示す指標として一般に用
いられているものであり、値が大きい程保温性が優れる
ことを表す。そして、21℃、50%RH以下、気流5cm
/秒の室内で安静状態にある人体の平均皮膚温度(33
℃)を維持できる布帛の保温性(熱抵抗)がCLO値
1.0で表される。
【0053】発色性: 多光源分光測色計(スガ試験機
(株)製)を用いC光源65度の条件で測定し、L値で
もって比較した。発色性が悪い場合は白っぽくなり高い
L値を示す。
【0054】洗濯堅牢度: JIS L0844の方法
により測定した。ただし、色落ちは、汚染用グレースケ
ールの各色票間に認められる色の開きと比較し、色落ち
の程度を等級区分することによって測定した。
【0055】鞘部の染料染着量: 染色された複合繊維
あるいはその布帛などの染色試料を、一定量(200m
g)秤量し、30℃のギ酸88%溶液30ml中に3分間
浸漬し、鞘部ポリアミドをその中に染着された染料とと
もに溶解し、比色計(日立(株)製のU−3400 "Sp
ectro Photometer")により最大吸収波長での吸光度を測
定する。また、染色前の試料を一定量(200mg)秤量
し、30℃のギ酸88%溶液30ml中に所定量(0.2
5mg、0.5mg、または1.0mg)の染料とともに溶解
させ、比色計により吸光度を求め、この染料の場合の吸
光度と染着量との関係を検量線として作図する。この検
量線から、上述の実染着での鞘部ポリアミドの吸光度の
値から、染着量の値を求める。
【0056】芯部の染料染着量: 染色された複合繊維
あるいはその布帛などの染色試料から鞘部ポリアミドを
溶解除去した後、水洗することにより芯部変性ポリエス
テルの染色繊維分を得る。この芯部染色繊維分の一定量
(100mg)を秤量し、フェノール/四塩化エタン混合
溶液(重量比3:2)30ml中に入れ60℃程度で完全
に溶解させた後、前記と同じ比色計により最大吸収波長
での吸光度を測定する。また、染色前の試料から同様に
取出した未染色変性ポリエステル繊維分を用いて、前述
と同様に、吸光度と染着量との関係を示す検量線を求め
る。この検量線から、上述の実染着における芯部染色繊
維分の染着量の値を求める。
【0057】布帛の張り、腰: 触感による相対評価に
より、○:良好、△:やや劣る、にランク付けした。
【0058】[実施例1]エチレングリコール及びテレ
フタル酸からなるポリエチレンテレフタレート原料に、
常法どおり触媒と、5−スルホキシイソフタル酸をテレ
フタル酸に対して1.5モル%添加して重合し、オルト
クロロフェノール極限粘度(IV)が0.64の変性ポ
リエチレンテレフタレート(以下、変性PETと略す)
を得た。
【0059】この変性PETと実質的に酸化チタンを含
まないナイロン6(硫酸相対粘度が2.62)とを、エ
クストルーダ型複合紡糸機に供し、それぞれ別々に溶融
した後、表1に示す複合割合で計量し、複合紡糸パック
部で変性PETが芯、ナイロン6が鞘となるように複合
流を形成して吐出し、1500m/分の速度で引取り、
引続いて延伸し、加熱ローラ(160℃)で熱セット
し、4000m/分で巻上げ、40デニール12フィラ
メントの延伸糸を得た。
【0060】得られた延伸糸(芯鞘複合繊維)を用いて
常法により経編32ゲージのハーフ組織の編地を得た。
【0061】得られた編地を常法によりリラックス処理
及び中間セット処理した後、濃度60g/lの沸騰状態
苛性ソーダ水溶液中に浸漬処理し、その浸漬時間の調節
により芯部変性PET成分の減量率を所定値にした。続
いて、乾燥してプレセットを行い、酸性染料:"Nylomin
Blue A-G"(ICI社製)と、カチオン染料:"kayacry
l Blue 3RL-ED"(日本化薬(株)製)とを併用し、沈殿
防止剤を入れ、一浴法で98℃で40分間染色した後、
160℃で仕上げセットして、中空複合繊維からなる染
色布帛を製造した。
【0062】この染色における染料濃度は、通常のナイ
ロン6フィラメント製布帛を染料濃度2.0%owfで
染色した場合(後述のNo. 8)と同一水準の発色性が得
られるよう、表1に示す値とした。
【0063】得られた布帛の特性を測定し、その結果を
表1のNo. 1〜5に示した。
【0064】表1の結果からわかるように、本発明の布
帛は、芯部に特定の変性ポリエステルを配したので、鞘
部ポリアミトを汚染することなくカチオン染料で染色で
き、従って、発色性を十分に改善することができた。
【0065】また、No. 4の布帛について構成する繊維
の1000倍顕微鏡写真を撮影したところ、芯部と鞘部
との間にきれいな中空部が存在することが認められた。
【0066】得られた染色布帛を用いて女性用スリップ
を製造したところ、ボデーラインに沿ってよくドレープ
し、市販のポリアミド繊維製品と同等の濃色で鮮明に発
色していて、しかも、薄くて軽く保温性の高い製品が得
られた。
【0067】また、布帛を構成する中空複合繊維の複合
割合を特定値としたので、高保温性でありながら軽量の
布帛製品とすることができ、しかも、衣料用布帛して必
要な諸特性(張り、腰)をも満足させることができた。
【0068】[比較例1]また、比較として、前記変性
PETの代わりに、酸化チタンを実質的に含有しないポ
リエチレンテレフタレート(極限粘度IV=0.63)
(未変性PETと略す)を用いた以外は、上記と同様に
溶融紡糸し、3500m/分の速度で引取った後、連続
して160℃に加熱した延伸ローラにより5000m/
分で延伸しつつ熱セットし、40デニール、12フィラ
メントの延伸糸として巻取った。
【0069】前記と同様に編地を得た後、沸騰状態苛性
ソーダ水溶液中で芯部のポリエステル成分を減量した。
続いて、酸性染料のみを用い、その濃度を通常ナイロン
6フィラメント布帛の場合の3倍にした以外は、前記同
様に染色し、180℃で仕上げセットして中空複合繊維
からなる染色布帛を得た(No. 6)。
【0070】また、変性PETを用いた芯鞘複合繊維に
て編成した布帛を減量処理することなく、前記したとお
りの酸性染料とカチオン染料との併用染色を行い、仕上
げセットして中空部のない複合繊維製の染色布帛を得た
(No. 7)。
【0071】さらにまた、通常の方法で紡糸延伸して得
られた40デニール、12フィラメントのナイロン6フ
ィラメント糸を用いて、上記同様にハーフ組織の編地を
得た(No. 8)。
【0072】なお、これらNo. 6〜8で得られた染色布
帛は、前記実施例の場合と同等水準の発色性が得られる
ように、染料濃度を表1のとおり調整して行った。
【0073】表1の結果からわかるように、芯部に未変
性の通常PETを配した場合、実施例と同等の発色性を
得るためには染料濃度を3倍にする必要があり、染色堅
牢性が大幅に悪化した(No. 6)。
【0074】また、中空部のない複合繊維あるいはポリ
アミド単独繊維からなる布帛の場合は、CLO値が低く
保温性が劣るものであった(No. 7、8)。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【発明の効果】本発明に係る高保温性布帛は、鞘部と芯
部との間に中空部を持つにもかかわらず、芯部に変性ポ
リエステルを配し、かつ、芯部をカチオン染料にて染色
しているので、良好な発色性を示すことができ、しか
も、洗濯堅牢性にも優れているので、実用化可能な濃色
染色布帛とすることができる。
【0078】しかも、ウールに匹敵する高い保温性を有
するものであり、この高保温性は、軽くて薄い布帛とす
る場合に特に効果的に発揮される。さらに、表面がポリ
アミドで構成されているため、耐久性、表面感触などに
優れ、従来のポリアミド繊維製布帛と同様に使用するこ
とができる。しかも、芯部に変性ポリエステルが存在す
るために、寸法安定性、防皺性に優れ、適度の張り、腰
を有することができる。
【0079】これら特性を有することから、本発明に係
る発色性に優れた高保温性布帛は、インナーウェア製品
用、特にランジェリー、ファンデーション、ニューイン
ナー、スポーツインナーのような婦人用インナーウェア
製品用に有用であるが、高保温性であることが要求され
る他の布帛製品類、例えば、アウターウェア、スポーツ
ウェアなどにも使用できる。
【0080】また、この高保温性布帛は、原糸の複合割
合を適正値とし、しかも、布帛とした後に加熱アルカリ
処理し、酸性染料とカチオン染料とを併用して染色する
ことにより、工業的に容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高保温性布帛を構成する中空複合繊維
における複合形態を例示する繊維横断面図である。
【図2】本発明の高保温性布帛を構成する中空複合繊維
の鞘部、芯部及び中空部の割合を示す図である。
【符号の説明】
1:鞘部(ポリアミド層) 2:芯部(変性ポリエステル層) 3:中空部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−112569(JP,A) 特開 昭62−215082(JP,A) 特開 昭55−84485(JP,A) 特開 昭62−110916(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアミドからなる鞘部、スルホン化
    芳香族ジカルボン酸変性ポリエステルからなる芯部、及
    び、前記鞘部と前記芯部との間に存在する中空部を有
    し、かつ、それらの複合割合が次式、 25≦x≦70、 10≦y≦65、 10≦z≦60 (但し、x,y,zは、それぞれ、前記した鞘部、芯部
    及び中空部の割合(%)である) を同時に満足する芯
    鞘型中空複合繊維から構成される布帛であって、前記鞘
    部には酸性染料が染着し、前記芯部にはカチオン染料が
    染着され、かつ、前記鞘部と前記芯部とが同系色に染色
    されていることを特徴とする発色性に優れた高保温性布
    帛。
  2. 【請求項2】 ポリアミドからなる鞘部とスルホン化
    芳香族ジカルボン酸変性ポリエステルからなる芯部との
    複合割合(wt%)が25/75〜70/30である変
    性ポリエステル・ポリアミド芯鞘型複合繊維を少なくと
    も主体とするフィラメント糸でもって布帛を構成し、該
    布帛を加熱アルカリ水溶液で処理した後に、同系色の酸
    性染料とカチオン染料とで染色することにより、請求項
    1記載の布帛を製造することを特徴とする発色性に優れ
    た高保温性布帛の製造方法。
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