JPH08184103A - コンクリート壁面埋設用セラミックス・ファスナー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 接着剤の撹拌充填ができるコンクリート壁面
埋設用セラミックス・ファスナーを提供する。 【構成】 セラミックス材にて後部を大径軸部２に前部
を小径軸部４とした段部付きの二段構成となるセラミッ
クス・ファスナー本体１を形成し、セラミックス・ファ
スナー本体１の中央の長手方向全域にボルト挿入孔２を
配設し、ボルト挿入孔２の少なくとも前記大径軸部位置
から小径軸部の一部に亘る長路部分に雌ネジ部を刻設
し、且つ小径軸部の外周に複数枚の補強兼撹拌羽根部６
を、大径軸部段縁から小径軸部４の前端近傍の外周面に
達する長クサビ状傾斜リブ片６′として形成したので、
コンクリート壁面に穿った嵌合穴に挿入するセラミック
ス・ファスナー本体１を高速回転させたときに小径軸部
４端より充填する接着剤と硬化剤を補強兼撹拌羽根部６
で撹拌する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は共同溝等の既設のコン
クリート壁面などに配設する支持ボルト用埋設支持部材
となるコンクリート壁面埋設用セラミックス・ファスナ
ーに関するもである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、建築，土木構築等のコンクリー
ト構造物の壁面に突設する支持ボルトを受けるコンクリ
ート埋設タイプの支持部材としては、所謂インサートナ
ットと云われる所定の雌ネジを中心に設けた筒体器具が
知られている。この従来のインサートナットの態様は、
普通、コンクリート打設時に予めコンクリートの型枠に
インサートナット端を装着しておき、コンクリート構造
物が仕上がった後に、この壁面にインサートナット端が
臨むよう配設するものである。また、この場合インサー
トナットの材質は、湿気などに起因し錆，腐食等を招き
コンクリート面に亀裂を招かない湿気に強いセラミック
ス製インサートナットが使用されるようになって来てい
る。例えば、図５に示すようにインサートナット本体ａ
は基端部を投錨効果が増すテーパ部ｂと先端部（前部）
に支持ボルト案内用の筒部ｃを配設した一体又は分割の
構成とし、且つこのテーパ部ｂの中心に支持ボルト用雌
ネジｄを刻設したものである（特公平３−３５４５６号
公報参照）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の様にテ
ーパ状基端部と単なるスリーブ状筒部を組み合わせた構
成では、コンクリート打設時に使用する新規の埋設態様
しか適さず、古くなったインサートナットの交換（補
修）又は既設のコンクリート面に配置する埋設としては
最適できない。例えば、コンクリート面に埋設してなる
従来の鉄製インサートナットが腐食して抜け出し、この
抜けた穴に新規インサートナットを嵌め込むとか、既設
の共同溝の内壁面に、追加の電力・通信ケーブル等を敷
設するための受棚（建金物）を支持する支持ボルト用イ
ンサートナットの態様では、少なくともインサートナッ
ト本体の最大径となるテーパ部端が挿通し得る嵌合穴を
一旦穿ち、該インサートナットの表面に樹脂製接着剤と
硬化剤を混ぜたものを塗布し充填しながら挿入し、この
接着剤の硬化をまって固定とするものである。

【０００４】だが、単にインサートナット本体の外周と
嵌合穴との隙間に接着剤と硬化剤を充填しただけでは、
接着剤と硬化剤の結合に斑があり、且つ穴面に対する馴
染みも薄く、支持ボルトの引張力を受けるインサートナ
ットは長期使用で抜け出る虞がある。なお、仮に、イン
サートナット本体に回転を与えながら嵌合穴に挿入し接
着剤を充填したとしても、該インサートナット本体の外
周形状が単なる平滑な丸棒状の筒部とテーパ部構造で
は、塗布・充填する接着剤と硬化剤に対し滑ってしまい
掻き回されず均一な混合はできず、且つこの穴面側（ラ
ジアル方向）に強く押し付けるなすり込み動作はなく、
確実な接着作用は望めない。このことは、従来構造のイ
ンサートナットを即、既設のコンクリート壁面に埋設す
る所謂ファスナー態様とするには適さない。

【０００５】本発明は上記実情に鑑み、セラミックス・
ファスナー本体の小径軸部の外周に接着剤用攪拌羽根を
設け且つ大径軸部と小径軸部間を段部構造とすることで
投錨効果を増し、上記課題を解決するコンクリート壁面
埋設用セラミックス・ファスナーを提供することを目的
としたものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、セラミックス
材にて後部を大径軸部に前部を小径軸部とした二段構成
となる一体のセラミックス・ファスナー本体を形成し、
該セラミックス・ファスナー本体の中央の長手方向全域
にボルト挿入孔を配設すると共に、該ボルト挿入孔の少
なくとも前記大径軸部位置から小径軸部の一部に亘る部
分に雌ネジ部を刻設し、且つ前記小径軸部の外周に複数
枚の補強兼撹拌羽根部を、大径軸部段縁から小径軸部の
前端近傍の外周面に達する長クサビ状傾斜リブ片として
形成してなるものである。

【０００７】また、セラミックス材にて後部を大径軸部
に前部を小径軸部とした二段構成となる一体のセラミッ
クス・ファスナー本体を形成し、該セラミックス・ファ
スナー本体の中央の長手方向全域にボルト挿入孔を配設
すると共に、該ボルト挿入孔の少なくとも前記大径軸部
位置から小径軸部の一部に亘る部分に雌ネジ部を刻設
し、且つ前記小径軸部の外周に複数枚の補強兼撹拌羽根
部を、大径軸部段縁から小径軸部の前端近傍の外周面に
達する長クサビ状傾斜リブ片として形成し、また前記小
径軸部の前端面に割れ防止用パッキンを貼着してなる。

【０００８】更に、複数枚の補強兼撹拌羽根部は、小径
軸部の外周面にあって放射方向に突設している。

【０００９】

【作用】上記のように、セラミックス製のファスナー本
体を、後部（基部）を大径軸部に前部を小径軸部とした
段付き構成とし、且つ前記小径軸部の外周囲には複数枚
の補強兼撹拌羽根部を突設してなるため、既製のインサ
ートナットの取替え、又は追加装着の如きに既設のコン
クリート壁面に穿つた新規の嵌合穴（受穴）にセラミッ
クス・ファスナーの埋設に当たり、このファスナー本体
を高速回転しながら樹脂製接着剤と硬化剤を穴間隙に充
填すれば、接着剤と硬化剤はファスナー本体に突設の補
強兼撹拌羽根部で強制的に撹拌されて混ざると共に、穴
面に対し強く押し付けられ、馴染みのよい密な充填がな
される。しかも、ファスナー本体自体は大径軸部と小径
軸部とで中間に段部を持つため、該段部で支持ボルトの
引っ張り加重を受け投錨効果（錨着力）を増し引抜耐力
を大とし、且つ補強兼撹拌羽根部で回動ずれも招かず、
堅牢な埋設固定となる。また、セラミックス・ファスナ
ーは、コンクリート打設時に予め埋設する従来のインサ
ートナットのように、コンクリート構造物の構築時の型
枠に配置した使用では、ファスナー本体の小径軸部端に
付けた割れ防止用パッキンでコンクリートミルクがボル
ト挿入孔に流入することもなく（勿論、埋設に当たって
はファスナー本体の大径軸部端にシールを配し後部から
の流入を塞ぐ）、支持ボルトの螺挿に支障を来さない。

【００１０】

【実施例】以下、本発明を実施例の図面に基づいて説明
すれば、次の通りである。

【００１１】図は補強兼撹拌羽根部を４個配設してなる
セラミックス・ファスナーの実施例を示し、１はアルミ
ナ素材となるセラミックス材にて中央にボルト挿入孔２
を貫通し後部（奥部）を大径軸部３に前部を小径軸部４
とし中間に段部１ａを形成した二段構成で一体のセラミ
ックス・ファスナー本体で、該セラミックス・ファスナ
ー本体１のボルト挿入孔２中、前記大径軸部位置２ａか
ら小径軸部４の一部２ｂに亘る長路部分に雌ネジ部５を
刻設し、且つ小径軸部４の外周面の四方（放射方向）に
は所定幅をもつ補強兼撹拌羽根部６を、基端を大径軸部
段縁３ａから小径軸部４の前端縁４ａから所定間隔ｓ
（例えば５ｍｍ）を隔てた近傍位置４ｂの外周面に達す
る長クサビ状傾斜リブ片６′として形成し、これら全体
構成でセラミックス・ファスナー７となる。８は小径軸
部４の前端面に貼着した硬質ゴム等よりなるリング状の
割れ防止用パッキンである。９はボルト挿入孔２の末端
を塞ぐシールである。

【００１２】いまこの作用を説明すると、先ずセラミッ
クス・ファスナー７の使用に際し、例えば既設の共同溝
の壁面となるコンクリート壁面に、棚等のフレームを固
定するためのファスナー態様、又は従来使用していたイ
ンサートナットの取替えの場合、このコンクリート壁面
（コンクリート構造物）Ａにセラミックス・ファスナー
７より少し大きめな受穴となる埋設穴１２を適宜の穴開
け工具を持って一定深さまで開ける。

【００１３】この後、埋設穴１２にセラミックス・ファ
スナー７を大径軸部３を先端として奥まで挿入する。こ
の時、セラミックス・ファスナー７（大径軸部３と小径
軸部４）と埋設穴１２間に形成された間隙１４に樹脂製
接着剤１３を硬化剤（図示せず）と共に小径軸部４端よ
り充填する。この場合、セラミックス・ファスナー７は
予めドリル等の工具（図示せず）にて高速回転をさせる
ため、小径軸部４端より充填された接着剤１３は、複数
枚（図示にあって４本）の補強兼撹拌羽根部６にて高速
撹拌されるので、接着剤１３と硬化剤は斑なく確実に混
ぜられ、補強兼撹拌羽根部６自体は長クサビ状傾斜リブ
片６′となっているので奥部に向けて埋設穴１２との間
隙１４を順次狭める結果となり、撹拌される接着剤１３
は奥方に移動するに従い遠心力に伴う押圧で孔壁面１２
ａに強制的に押し付けられ、コンクリート穴面にも浸透
し馴染みのよい充填がなされる。なお、セラミックス・
ファスナー７の回転動作は、或る時間を経ると接着剤１
３が硬化剤の作用で固まりだし、重く（抵抗が大きく）
なったところで停止する。また、補強兼撹拌羽根部６は
小径軸部４端より所定間隔ｓを隔てた内側より傾斜の長
クサビ状傾斜リブ片６′としたため、埋設穴１２と小径
軸部４間には所定の間隙１４が保たれ接着剤１３と硬化
剤の注入に支障を来さず、且つ壁面端に補強兼撹拌羽根
部６が現れず、仕上がりもよい。

【００１４】この様に、接着剤１３の硬化後はセラミッ
クス・ファスナー７は埋設穴１２内に確実に固定され
る。構築使用に当たっては、コンクリート壁面Ａに臨む
セラミックス・ファスナー７の小径軸部４のボルト挿入
孔２に支持ボルト１０を、アングル（図示せず）等を介
在して差し込み、該支持ボルト１０のネジ部１１を雌ネ
ジ部５に螺挿し、アングルを締め付けて取付けとする。
この場合、アングルの板厚が使用部材により多少違って
きても、雌ネジ部５のネジ山は大径軸部位置２ａから小
径軸部４の一部２ｂに亘る長路にネジ刻設をしているた
め（必要にあっては、ボルト挿入孔２の全域に雌ネジ部
５を刻設してもよい）、アングルの板厚が変わってもそ
れに応じていちいち支持ボルト１０の長さを代えること
なく対応できる。

【００１５】この状態で、支持ボルト１０に引っ張り加
重（引抜力）が掛かっても、セラミックス・ファスナー
本体１は中間に大径軸部３と連設の小径軸部４とで段部
１ａを配設してなるため、コンクリート構造物Ａに対す
る締め付けによる受ける面積が、単に外形をテーパ形状
とした従来の軸部タイプより大きくなり、その分だけ投
錨効果を増し引抜耐力が大となる。しかも、この段部１
ａには集中応力が掛かっても大径軸部３側が広幅で且つ
段部１ａには複数本の補強兼撹拌羽根部６が立上がり補
強状態となるり、且つ段部角をアール形状１ｂとている
ため、割れを招かない。

【００１６】また、セラミックス・ファスナー７の態様
を、従来のインサートナット同様にコンクリート構造物
の構築時に予め埋設する場合、そのコンクリート型枠
（図示せず）に適宜の支持治具（図示せず）をもってセ
ラミックス・ファスナー本体１の大径軸部３を奥方とし
て配置し、型枠内に生コンクリートを打設すれば補強兼
撹拌羽根部６を含む外周囲全域にコンクリトが流れ込
み、所定の養生後にセラミックス・ファスナー７はコン
クリート構造物Ａに埋設状態となる。

【００１７】ここでも、コンクリート構造物Ａに端面に
臨むセラミックス・ファスナー本体１のボルト挿入孔２
に支持ボルト１０を挿入し、該支持ボルト１０の先端の
ネジ部１１を奥方の雌ネジ部５に螺合し装着する。この
支持ボルト１０に引っ張り加重が掛かっても、セラミッ
クス・ファスナー本体１は中間に段部１ａを配設してな
るため支持ボルト１０に引張力が掛かっても、この段部
１ａで受け投錨効果が増し定着する。しかも、この大径
軸部３に連設の小径軸部４の外周設けた補強兼撹拌羽根
部６（図示で４枚）を段部に向け肉厚とし強度的にも堅
固な構造としてなるので、所定の引っ張り圧力に耐え得
る。

【００１８】ちなみに、セラミックス・ファスナーの外
寸法を示せば、例えば大径軸部の長さ３０mm，同径３５
mm、小径軸部の長さ３５mm，同径２６mmである。

【００１９】

【発明の効果】上述の様に、本発明のコンクリート壁面
埋設用セラミックス・ファスナーは、ファスナー本体を
小径軸部と大径軸部とで段付き構造とし、且つ小径軸部
の外周に大径軸部段縁から傾けた長クサビ状の補強兼撹
拌羽根を突設し、且つファスナー本体に貫通したボルト
挿入孔にあって大径軸部から小径軸部の一部に亘る長路
部分に雌ネジ部を配設したため、ボルト挿入孔に螺挿し
た支持ボルトに掛かる剪断力にも耐える。勿論、ファス
ナーは圧縮力に強いセラミックス製のため十分所定の強
度を保ち得る。しかも、本発明の一番の特長は前部とな
る小径軸部に配設したクサビ状の補強兼撹拌羽根で、埋
設穴間に充填する接着剤と硬化剤を、ファスナー本体の
高速回転に伴い撹拌し確実に混ぜるため所定の硬化を
得、且つこの回転で強制的に埋設穴に拡散圧接がなさ
れ、埋設穴に対しセラミックス・ファスナーは密なる
（馴染みのよい）埋設となり、従来の丸軸タイプのもの
（インサートナット）では得られない確実な固定ができ
る。また、ファスナー本体は小径軸部と大径軸部の連設
中間の段部のため、投錨効果を増し、支持ボルトの引張
力に耐え引抜耐力を大とする。また、小径軸部の前端に
はパッキンを貼着してなるため、型枠使用時の馴染みも
よく生コンの流入も招かずネジ山を潰す虞れもない。勿
論、基本的にファスナー本体全体をセラミックル製とし
てなるため、腐食を招かず共同溝等の如く常時湿気を呼
ぶ地中箇所等の使用に最適である。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のコンクリート壁面埋設用セラミック
ス・ファスナーの実施例を示す斜視図である。

【図２】同中央断面図である。

【図３】平面図である。

【図４】コンクリートの埋設穴へ接着剤を充填した状態
の説明図である。

【図５】従来のセラミックス製インサートナットの側面
図である。

【符号の説明】

１ セラミックス・ファスナー本体 ２ ボルト挿入孔 ３ 大径軸部 ４ 小径軸部 ５ 雌ネジ部 ６ 補強兼撹拌羽根部 ６′ 長クサビ状傾斜リブ片 ８ 割れ防止用パッキン

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 セラミックス材にて後部を大径軸部に前
   部を小径軸部とした段部付き二段構成となる一体のセラ
   ミックス・ファスナー本体を形成し、該セラミックス・
   ファスナー本体の中央の長手方向全域にボルト挿入孔を
   配設すると共に、該ボルト挿入孔の少なくとも前記大径
   軸部位置から小径軸部の一部に亘る部分に雌ネジ部を刻
   設し、且つ前記小径軸部の外周に複数枚の補強兼撹拌羽
   根部を、大径軸部段縁から小径軸部の前端近傍の外周面
   に達する長クサビ状傾斜リブ片として形成してなること
   を特徴とするコンクリート壁面埋設用セラミックス・フ
   ァスナー。
2. 【請求項２】 セラミックス材にて後部を大径軸部に前
   部を小径軸部とした段部付き二段構成となる一体のセラ
   ミックス・ファスナー本体を形成し、該セラミックス・
   ファスナー本体の中央の長手方向全域にボルト挿入孔を
   配設すると共に、該ボルト挿入孔の少なくとも前記大径
   軸部位置から小径軸部の一部に亘る部分に雌ネジ部を刻
   設し、且つ前記小径軸部の外周に複数枚の補強兼撹拌羽
   根部を、大径軸部段縁から小径軸部の前端近傍の外周面
   に達する長クサビ状傾斜リブ片として形成し、また前記
   小径軸部の前端面に割れ防止用パッキンを貼着してなる
   ことを特徴とするコンクリート壁面埋設用セラミックス
   ・ファスナー。
3. 【請求項３】 複数枚の補強兼撹拌羽根部が、小径軸部
   の外周面にあって放射方向に突設している請求項１又は
   ２記載のコンクリート壁面埋設用セラミックス・ファス
   ナー。