JPH08172223A - 鉄ケイ化物熱電変換材料およびその製造方法 - Google Patents

鉄ケイ化物熱電変換材料およびその製造方法

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JPH08172223A
JPH08172223A JP7240235A JP24023595A JPH08172223A JP H08172223 A JPH08172223 A JP H08172223A JP 7240235 A JP7240235 A JP 7240235A JP 24023595 A JP24023595 A JP 24023595A JP H08172223 A JPH08172223 A JP H08172223A
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Japan
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sintering
thermoelectric conversion
fesi
powder
conversion material
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JP7240235A
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Inventor
Yoshio Akimune
宗 淑 雄 秋
Naoto Hirosaki
崎 尚 登 広
Fumio Munakata
像 文 男 宗
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 熱電変換材料として利用可能な熱電変換特性
を有しているうえで、より一層優れた破壊靭性値,強
度,耐熱衝撃性を持ち、さらにはより一層向上したゼー
ベック係数,電力因子をあわせ持った熱電変換材料を提
供する。 【解決手段】 Fe1−xCoSi系半導体(x=
0.03〜0.07)とSiO(y=2.0未満)か
ら主としてなる鉄ケイ化物熱電変換材料1であって、S
iO2を0.5〜5.0体積%含むFe1−xCo
Si系半導体よりなる複合相3を12〜20体積%
と、SiOを含まないFe1−xCoSi系半導
体よりなる相4を80〜88体積%から主としてなる鉄
ケイ化物熱電変換材料1、およびこの鉄ケイ化物熱電変
換材料1を製造するに際し、出発原料としてFeSi
を用い、FeSi中に化学組成よりも2.0〜8.0
mol%の過剰なSi元素を含む粉末を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械強度および耐
久性(特に、耐熱衝撃性)に優れたFeSi系鉄ケイ
化物熱電変換材料を製造するのに好適なFeSi系鉄
ケイ化物熱電変換材料の製造方法に関し、さらには、熱
電変換材料に必要なゼーベック係数と電力因子をより一
層向上させた鉄ケイ化物熱電変換材料を得るのに好適な
技術分野に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、鉄ケイ化物熱電変換材料それ
自体あるいはその製造方法については種々の報告がなさ
れている。
【0003】従来の熱電変換素子の材料としては、
(1)特開昭48−60018号公報,特公昭52−4
7677号公報に記載されているように、耐食性,耐熱
性に優れた高温用p型熱電変換素子を得るために、Fe
SiのFeが電子構造の連続的に変化する遷移金属、
例えばMnやCoで置換された化合物としたもの、
(2)特開昭60−43882号公報,特公平2−13
80号公報,特公平2−8467号公報,特開平7−9
7206号公報に記載されているように、大きな出力が
得られるp型鉄ケイ化物の熱発電材料とするために、F
eSiに所定量のMnとAlを添加した材料としたも
の、(3)特開昭59−56781号公報,特公平2−
1381号公報に記載されているように、熱衝撃に対し
て優れた特性を持たせるため、FeSiにBを0.3
〜4.6原子%添加するか、またはBの添加に加えてさ
らにMn,Co,Al,Sbの一種以上を添加した材料
としたもの、(4)特開昭59−145582号公報,
特公平2−8466号公報に記載されているように、鉄
とけい素からなる化合物中のSiの一部を酸素原子で置
換して、p型導電性を付与するか、または、Feの一部
を酸素原子で置換してn型導電性を付与して変換効率の
高い熱電変換素子としたもの、などが報告されている。
【0004】また、製造方法としては、(5)特開昭5
7−63870号公報,特公昭63−31954号公報
に記載されているように、Mn粉末を含むFeSi
末とCo粉末を含むFeSi粉末とを冷間プレス成形
したのち焼結して焼成接合体を製造し、これを710〜
820℃の温度域で熱処理する方法、(6)特開昭50
−153977号公報,特開昭50−158380号公
報,特公昭54−41316号公報,特公昭54−41
317号公報に記載されているように、スリップ鋳造法
によって鉄ケイ化物熱電素子を製造する方法、などが報
告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のFeSi系鉄ケイ化物熱電変換材料および
その製造方法においては、鉄ケイ化物の熱電変換特性を
向上させた材料は得られるものの、焼結させる際に鉄ケ
イ化物の微構造の組織制御を行っていないため、材料組
織に依存する諸特性、例えば、破壊靭性値,強度,耐熱
衝撃性等が低く、バルク体としての強度が維持できない
ことがあるため、熱電変換素子として利用するときに破
壊してしまうことがあり、耐久性が劣るという問題点が
あった。そこで、より一層優れた破壊靭性値,強度,耐
熱衝撃性を持ち、さらにはより一層向上したゼーベック
係数,電力因子をあわせ持った熱電変換材料として利用
可能な鉄ケイ化物焼結体を得ることが課題となってい
た。
【0006】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題を解決
するためになされたものであって、熱電変換材料として
利用可能な熱電変換特性を有しているうえに、より一層
優れた破壊靭性値,強度,耐熱衝撃性を持ち、さらには
より一層向上したゼーベック係数,電力因子をあわせ持
った熱電変換材料を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような従
来技術の課題に着目し、このような課題を解決すること
を目的としてなされたものであって、FeSi系粉末
を焼結してFeSi系鉄ケイ化物熱電変換材料を製造
する際に、FeSiの微構造組織を制御することによ
り、機械強度および耐久性に優れたFeSi系鉄ケイ
化物熱電変換材料を得るための製造方法を見出したもの
である。
【0008】すなわち、本発明に係わるFeSi系鉄
ケイ化物熱電変換材料の製造方法は、請求項1に記載し
ているように、FeSi系粉末を用いてFeSi
鉄ケイ化物熱電変換材料を製造するにあたりFeSi
系粉末を焼結するに際し、FeSiの融点よりも12
0〜60℃低い温度域で焼結する構成としたことを特徴
としている。
【0009】そして、本発明に係わるFeSi系鉄ケ
イ化物熱電変換材料の製造方法の実施態様においては、
請求項2に記載しているように、焼結するに際し、10
−3Torr以下の真空ないしはAr雰囲気下で150
kgf/cm以上の圧力で加圧しながら焼結するよう
になすことが必要に応じて望ましい。
【0010】また、同じく本発明に係わるFeSi
鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法の実施態様において
は、請求項3に記載しているように、粉末平均粒子径が
5〜10μmのFeSi粉末を用いるようになすこと
も必要に応じて望ましい。
【0011】さらに、同じく本発明に係わるFeSi
系鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法の実施態様におい
ては、請求項4に記載しているように、焼結後における
FeSiの微構造粒子の結晶平均粒子径が5〜10μ
mであるものとすることも必要に応じて望ましい。
【0012】さらにまた、本発明に係わる鉄ケイ化物熱
電変換材料は、請求項5に記載しているように、Fe
1−xCoSi系半導体(x=0.03〜0.0
7)相とSiO(y=2.0未満)相から主としてな
る鉄ケイ化物熱電変換材料であって、SiOを0.5
〜5.0体積%含むFe1−xCoSi系半導体よ
りなる複合相を12〜20体積%と、SiOを含まな
いFe1−xCoSi系半導体よりなる相を80〜
88体積%から主としてなる構成としたことを特徴とし
ている。
【0013】また、本発明に係わる鉄ケイ化物熱電変換
材料の製造方法においては、請求項5に記載の鉄ケイ化
物熱電変換材料を製造するにあたり、請求項6に記載し
ているように、出発原料としてFeSiを用い、Fe
Si中に化学組成よりも2.0〜8.0mol%の過
剰なSi元素を含む粉末を用いるようになすことができ
る。
【0014】また、本発明に係わる請求項5に記載の鉄
ケイ化物熱電変換材料の製造方法の実施態様において
は、請求項7に記載しているように、粉末から焼結して
製造するに際し、Fe1−xCoSiの融点よりも
120〜60℃低い温度域で焼結するようになすことが
できる。
【0015】同じく、本発明に係わる鉄ケイ化物熱電変
換材料の製造方法の実施態様においては、請求項8に記
載しているように、粉末から焼結して製造するに際し、
10−3Torr以下の真空下で150kgf/cm
以上の圧力で加圧しながら焼結するようにしたり、請求
項9に記載しているように、粉末から焼結して製造する
に際し、Ar雰囲気下で150kgf/cm以上の圧
力で加圧しながら焼結するようにしたりすることがで
き、さらには、請求項10に記載しているように、焼結
に続いて、10−3Torr以下の真空下で焼結温度よ
りも0〜70℃高い温度域で6〜12時間焼鈍するよう
になすことができる。
【0016】本発明に係わる請求項5に記載の鉄ケイ化
物熱電変換材料の焼鈍後の微構造を例示すると、図4に
示す如きものとなる。
【0017】すなわち、図4に焼鈍後の微構造を示す鉄
ケイ化物熱電変換材料1は、SiO(y=2.0未
満)2を0.5〜5.0体積%含むFe1−xCo
系半導体(x=0.03〜0.07)よりなる複合
相3を12〜20体積%と、SiOを含まないFe
1−xCoSi系半導体(x=0.03〜0.0
7)よりなる相4を80〜88体積%から主としてなる
ものである。
【0018】そして、このような請求項5に記載の鉄ケ
イ化物熱電変換材料を製造するにあたり、粉末から焼結
する際の焼成パターンは、図5に例示するように、Fe
1− CoSiの融点(1220℃)よりも120
〜60℃低い塑性流動を起こす温度域とし、かつまた雰
囲気を10−3Torr以下の真空下ないしはAr雰囲
気下とし、加圧力を150kgf/cm以上の圧力と
して加圧しながら例えば0.5Hrs.焼結する。
【0019】そして、焼結に続く焼鈍は、前記焼結した
材料を10−3Torr以下の真空下で焼結温度(11
00〜1160℃)よりも0〜70℃高い温度域で6〜
12Hrs.熱処理する。
【0020】
【発明の作用】FeSiは半導体特性を利用した熱電
変換材料として利用されており、熱電変換材料の特性
上、不純物の含有は好ましくない。そこで、一般に用い
られる焼結助剤を利用せずに、焼結させる必要がある。
本発明はこのような素材の焼結技術に関するものであっ
て、本発明に係わるFeSi系熱電変換材料の製造方
法は、請求項1に記載しているように、FeSi系粉
末を用いてFeSi系熱電変換材料を製造するにあた
りFeSi系粉末を焼結するに際し、FeSiの融
点よりも120〜60℃低い温度域で焼結するようにし
たものである。
【0021】FeSiの焼結に関しては、本発明の製
造方法でFeSi結晶の微構造を構築した場合、原料
として用いるFeSi粉末は粒子固相で焼結するもの
の、微小粒子が粗大粒子に取り込まれることなく、原料
粉末の粒度を保持したまま焼結することが可能である。
そのために、原料粒子の粒度分布をそのまま維持した微
構造を示し、一つ一つの結晶粒子が加圧力により移動
し、ポアを埋めつつ緻密化する現象、すなわち塑性流動
することにより緻密化が促進されている。
【0022】上記の微構造を得るためには、FeSi
の融点よりも120〜60℃低い温度域で塑性流動を起
こさせつつ緻密化を図る必要がある。そして、FeSi
の融点に対して60℃よりも差が小さくなると、融点
に近くなるため焼結が困難となり、また、FeSi
融点に対して120℃よりも差が大きくなると、粒子の
軟化が得られず焼結時の応力が残留してしまう結果、焼
結体を室温に冷却したときにクラックが入り破壊してし
まうこととなる。したがって、FeSi系粉末を焼結
するに際し、FeSiの融点よりも120〜60℃低
い温度域で焼結することとした。
【0023】また、FeSiは酸化雰囲気中では酸化
物となるため、不活性雰囲気、特に、請求項2に記載し
ているように、10−3Torr以下の高真空ないしは
Arで置換した雰囲気中で焼結を行うことが望ましい。
そして、この焼結時においては、同じく請求項2に記載
しているように、150kgf/cmの圧力で加圧し
ながら焼結を行うことが望ましく、150kgf/cm
よりも低い加圧力では比重が小さくなり、熱電変換材
料として所定の特性が得られないこともありうるので、
焼結時の加圧力は150kgf/cm以上であるよう
にするのがよい。
【0024】本発明で製造されるFeSi系熱電変換
材料において、FeSiの結晶粒子の大きさは、機械
強度,靭性値および耐熱衝撃性に大きく影響し、焼結後
の平均の結晶粒子径は5〜10μmが最も良好な特性を
示す。焼結に際しては、焼結時の加圧力が粒子の塑性流
動を起こして緻密化させるため、一般の焼結に寄与する
微細粒子が少なくて済み、原料として用いる粉末は過度
に粉砕を行う必要がない。
【0025】そして、原料として用いる粉末の平均粒子
径が10μmより大きいと塑性流動を妨げて結晶中に空
孔が残留し、また、5μmより小さいと焼結時に収縮率
が大となるため好ましくない。したがって本発明の方法
によると、原料粒度を保ったまま加圧焼結しているた
め、請求項4に記載しているように、焼結後におけるF
eSiの結晶平均粒子径が5〜10μmであるように
するためには、請求項3に記載しているように、FeS
原料粉末における粉末平均粒子径は5〜10μmと
するのがよい。
【0026】本発明の請求項5に記載の鉄ケイ化物熱電
変換材料は、Fe1−xCoSi系半導体(x=
0.03〜0.07)相とSiO(y=2.0未満)
相から主としてなる鉄ケイ化物熱電変換材料であって、
SiOを0.5〜5.0体積%含むFe1−xCo
Si系半導体よりなる複合相を12〜20体積%と、
SiOを含まないFe1−xCoSi系半導体よ
りなる相を80〜88体積%から主としてなるものであ
り、このようなFe1−xCoSi系熱電変換材料
の製造条件に関し、粉末から焼結するに際しては、請求
項6に記載しているように、出発原料としてFeSi
を用い、FeSi中に化学組成よりも2.0〜8.0
mol%の過剰なSi元素を含む粉末を用い、請求項7
に記載しているように、Fe1−xCoSiの融点
よりも120〜60℃低い塑性流動を起こす温度域と限
定し、請求項8に記載しているように、雰囲気を10
−3Torr以下の真空下、もしくは請求項9に記載し
ているように、Ar雰囲気とし、請求項8,9に記載し
ているように、加圧力を150kgf/cm以上の圧
力として加圧しながら焼結する方法を用いることがより
好ましい。そして、焼結に続く焼なましは、請求項10
に記載しているように、前記焼結した材料を10−3
orr以下の真空下で焼結温度より0〜70℃高い温度
域で6〜12時間焼鈍する方法とすることが好ましい。
【0027】ここで、FeSi系半導体の原料におい
て、FeSiでは、粉末から焼結する際に平均粒径5
μmから10μmのFeSi粉末を用い、出発原料の
FeSi中に化学組成に対してSiが2.0〜8.0
mol%過剰に配合されている原料を用いるのがより好
ましく、焼結後の組織を平均の結晶粒径が5〜10μm
となるようにした熱電変換材料の微構造とすることが望
ましい。そして、添加するCoSiについても、粉末
から焼結する際に、平均粒径が5〜10μmのFeSi
粉末を用いることがより好ましい。
【0028】本発明を構成するFe1−xCoSi
系半導体はx=0.03〜0.07でものであるが、こ
の場合、xが0.03未満では電気伝導度の向上のため
と、負のゼーベック係数を持たせるために好ましくない
ので、0.03以上が必要な量である。しかし、xが
0.07超過ではCo原子間の距離が小さくなり電気伝
導度が低下するので好ましくない。
【0029】このFe1−xCoSiは、半導体特
性を利用した熱電変換材料として利用するためには、こ
の材料系が不純物を極端に嫌うものであるため、一般に
用いられる焼結助剤を用いることなく焼結および熱処理
させる必要がある。本発明はこのような素材の焼結およ
び熱処理技術に関するものである。
【0030】そして、原料のFeSiでは化学組成に
対してSiが2.0〜8.0mol%過剰に配合されて
いる原料を用いる。この場合、原料中のSiが2.0m
ol%未満では析出するSiO相がドメインを形成で
きず、8.0mol%超過ではβ型FeSiが最初か
ら析出してしまい、結晶中にSiO相を析出させるこ
とができなくなるので好ましくない。
【0031】もう一方のCoSiは、熱電変換材料の
半導体特性にP型かN型かの特性を与えかつ特性値を向
上させるために加える元素であるが、FeSiに所定
の分量を配合し固相焼結する。粒度についてはFeSi
と同様である。
【0032】Fe1−xCoSiの焼結に関して
は、上記方法で微構造を構築した場合、原料中のFeS
の粒子をそのまま固相で焼結するものの、微小粒子
が粗大粒子に取り込まれることなく、原料粉末の粒度を
保持したまま焼結することが可能である。そのため、原
料粒子の粒度分布をそのまま維持した微構造を示し、一
つ一つの粒子が塑性流動を起こして緻密化が促進される
ものである。
【0033】上記微構造によると、Fe1−xCo
の融点よりも120℃から60℃低い温度域で塑性
流動を起こさせつつ緻密化を図る。そして、60℃未満
では融点に近くなって焼結が困難となり、120℃超過
では粒子の軟化が得られず、焼結時の応力が残留してし
まうため、室温に冷却したときにクラックが残留して破
壊してしまうので好ましくない。また、この時に必要な
加圧力は150kgf/cm以上である。そして、F
eSi系は酸化雰囲気では酸化物となるため、不活性
雰囲気、特に、10−3Torr以下の高真空ないしは
Arで置換した雰囲気での焼結が必要である。
【0034】微構造粒子の大きさは、機械強度、靭性値
および熱衝撃性を付与する大きさで決まり、平均の結晶
粒径が5μmから10μmが適切である。加圧力で塑性
流動を起こし、緻密化させるため、一般の焼結に寄与す
る微細粒子が少なくて済み過度に粉砕を行う必要がな
い。ここで、平均粒子径が10μmより大きいと塑性流
動を妨げて空孔が残留するため、結晶粒度の上限とする
のがよい。原料粒度については、そのまま加圧焼結する
ために、結晶粒子と同じ大きさとするのがよい。
【0035】熱処理は、通常のセラミックスでは焼結温
度よりも低い温度で行うのであるが、熱電特性を出すた
めの析出相制御では、焼結温度から0〜70℃高い温度
域で行うのが適切である。この場合、粒界相がないた
め、焼結温度以上の高い温度の処理に対しても結晶成長
が起こらないため、この方法を用いることが可能であ
る。この熱処理は10−3Torr以下の真空下で焼結
温度より0℃から70℃高い温度範囲で6時間から12
時間焼なますことで、SiOを析出させることが可能
となった。この相は熱電変換材料の機械特性には特に大
きな悪影響をおよぼさないが、ゼーベック係数(S)や
電力因子(S×σ)等の電気特性には著しい効果を発
揮するものであり、Fe1−xCoSi相中に島状
に分布する構成(図4参照)が遊離Si量からも妥当で
ある。
【0036】
【実施例】本発明では、鉄ケイ化物熱電変換材料の製造
条件として、FeSi系粉末を用いて焼結する際の温
度はFeSiまたはFe1−xCoSi(x=
0.03〜0.07)の融点より120〜60℃低い塑
性流動を起こす温度域に限定し、より望ましくは、雰囲
気を10−3Torr以下の真空下ないしはAr雰囲気
下とし、加圧力を150kgf/cm以上の圧力とし
た焼結方法を用いる製造方法である。
【0037】本発明において、より望ましくは、FeS
系またはFe1−xCoSi系半導体の原料は
粉末から焼結する際に粉末平均粒子径が5〜10μmの
FeSi粉末を用いる(添加するCoSiについて
も粉末から焼結する際に粉末平均粒子径5〜10μmの
FeSi粉末を用いる)ようにし、焼結後における結
晶平均粒子径が5〜10μmとなるようにすることが望
ましい。なお、FeSi原料粉末を用意するに際して
は、原料として用いるFeSi粉末粒子径の累積分布
をとり、50%の粒子径を粉末平均粒子径とした。
【0038】実施例1 原料として、フルウチ科学(株)製FeSiを用い、
このFeSiに対し、アルコール中で遊星ボールミル
を用いて、30〜60分間分粉砕し、乾燥後レーザによ
り粒度分布を測定して焼結用FeSi系原料粉末とし
た。図1に、本実施例で用いたFeSi系原料粉末の
粒度分布を示す。図1に示すように、粒子の累積分布を
縦軸にとり、50%の粒子径を粉末平均粒子径とした。
なお、本実施例で用いたFeSi原料粉末粒子は、最
大粒子径が22μm、最小粒子径が1.5μmであり、
粉末平均粒子径は7.5μmであった。
【0039】焼結はホットプレス装置を用いて、図2に
示す焼結プロセスにより行った。図2中Aのパターンに
示すように、昇温は20℃/分で行い、1時間後に設定
温度の1100℃に達した時点で30分間保持して焼結
を行った。また、圧力は温度が500℃に達した時点
で、図2中Bのパターンに示すように150kgf/c
に加圧し、設定温度の1100℃で焼結が終了する
まで加圧力を維持した。さらに、焼結雰囲気は、真空雰
囲気8×10−4Torrに設定したが、温度が100
0℃付近に達するまでの約0.75時間は、加熱の間に
原料中の水,アルコール,窒素および吸着物等が発生し
てくるため、1×10−2Torrとなった。
【0040】以上の条件にて焼結を行い、実施例1のF
eSi系熱電変換材料を製造した。また、図3には本
実施例により得られた焼結体の微構造を示す。
【0041】実施例2〜4 焼結温度をそれぞれ1120℃,1140℃および11
60℃とした以外は、実施例1と同様にして、それぞれ
実施例2,3および4のFeSi系熱電変換材料を製
造した。
【0042】比較例1〜3 焼結温度をそれぞれ1000℃,1080℃および11
80℃とした以外は、実施例1と同様にして、それぞれ
比較例1,2および3のFeSi系熱電変換材料を製
造した。
【0043】実施例5 Ar雰囲気で、焼結温度を1140℃とした以外は、実
施例1と同様にして、実施例5のFeSi系熱電変換
材料を製造した。
【0044】実施例6,7 焼結温度を1140℃とし、真空雰囲気をそれぞれ1×
10−3Torrおよび1×10−4Torrとした以
外は、実施例1と同様にして、実施例6および7のFe
Si系熱電変換材料を製造した。
【0045】比較例4,5 焼結温度を1140℃とし、真空雰囲気をそれぞれ1×
10−1Torrおよび1×10−2Torrとした以
外は、実施例1と同様にして、比較例4および5のFe
Si系熱電変換材料を製造した。
【0046】実施例8,9 焼結温度を1140℃、真空雰囲気を8×10−4To
rrとし、加圧力をそれぞれ200kgf/cmおよ
び300kgf/cmとした以外は、実施例1と同様
にして、実施例8および9のFeSi系熱電変換材料
を製造した。
【0047】比較例6,7 焼結温度を1140℃、真空雰囲気を8×10−4To
rrとし、加圧力をそれぞれ100kgf/cmおよ
び140kgf/cmとした以外は、実施例1と同様
にして、比較例6および7のFeSi系熱電変換材料
を製造した。
【0048】実施例10,11 焼結温度を1140℃、真空雰囲気を8×10−4To
rr、加圧力を150kgf/cmとして、FeSi
系半導体の原料を粉末から焼結する際に、FeSi
粉末の粉末平均粒子径をそれぞれ5μmおよび10μm
とした以外は、実施例1と同様にして、実施例10およ
び11のFeSi系熱電変換材料を製造した。
【0049】比較例8,9 焼結温度を1140℃、真空雰囲気を8×10−4To
rr、加圧力を150kgf/cmとして、FeSi
系半導体の原料を粉末から焼結する際に、FeSi
粉末の粉末平均粒子径をそれぞれ3μmおよび15μm
とした以外は、実施例1と同様にして、比較例8および
9のFeSi系熱電変換材料を製造した。
【0050】評価方法 実施例1〜11および比較例1〜9で得られたFeSi
系熱電変換材料について、下記の方法により評価を行
い、総合評価判断を行った。
【0051】(1)結晶平均粒子径 光学顕微鏡による組織観察から微構造結晶粒子の平均粒
子径を求めた。
【0052】(2)曲げ強度 JIS R1601の3点曲げ試験により曲げ強度を測
定した。
【0053】(3)破壊靭性値 JIS R1607のビッカース圧子により破壊靭性値
を測定した。
【0054】(4)熱衝撃温度 加熱後水中へ投入し、クラックの発生する温度と水の温
度との差を求めて耐熱衝撃性を測定した。
【0055】(5)比重 アルキメデス法により測定した。
【0056】(6)総合評価 ○:問題なく利用可能 △:一部に問題あり ×:問題あり利用不可
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】上記の焼結温度を変化させた実施例1〜4
ならびに比較例1〜3のFeSi系熱電変換材料の製
造条件および評価結果について表1に示す。
【0062】表1の結果から、焼結温度を変化させた場
合、FeSiの融点である1220℃に対して60℃
から120℃低い温度で焼結を行うことが焼結体の特性
値から必要な条件であることが明らかである。そして、
120℃を超えて融点より下の温度(すなわち、110
0℃未満の温度)で焼結した場合は、粒子の結合が十分
ではないうえ、ホットプレス時の粒子の流動も十分でな
いため緻密な焼結体が得られないことが認められる。そ
のため、機械的強度は著しく劣っている。また、融点に
対して60℃未満の温度(すなわち、1160℃超過の
温度)で焼結した場合は、溶融状態に近く流動はよいも
のの、粒子の結合が不十分であり、緻密であるものの機
械強度が上がらないという欠点が生じる。
【0063】表2に焼結時の雰囲気を制御した実施例5
〜7ならびに比較例4および5のFeSi系熱電変換
材料の製造条件および評価結果について示す。
【0064】表2より明らかなように、真空度は10
−2Torr未満の真空度か不活性ガス雰囲気が必要で
あり、低真空では一部酸化が生じて粒子の結合が十分で
ないという結果が得られた。
【0065】表3に原料粉末を異なった加圧力のもとで
焼結させた実施例8および9ならびに比較例6および7
のFeSi系熱電変換材料の製造条件および評価結果
について示す。
【0066】この表3に示す結果から、必要な機械特性
値を得るには、150kgf/cm以上の加圧力が必
要なことがわかる。
【0067】表4に出発原料粉末の粒度を変えて焼結さ
せた実施例10および11ならびに比較例8および9の
FeSi系熱電変換材料の製造条件および評価結果に
ついて示す。
【0068】表4に示す結果から、必要な機械強度を得
るには、出発原料で5〜10μmの粒子を用いる必要が
あり、その結果、焼結体粒度が5〜10μmの必要な機
械強度を有した焼結体が得られることがわかった。
【0069】実施例12,13,14,比較例10,1
原料として、フルウチ科学(株)製99.5mol%の
FeSiと0.05mol%のCoSiをアルコー
ル中で遊星ボールミルを用いて30〜60分間粉砕し、
乾燥後粒度分布を測定して焼結用粉末とした。
【0070】焼結は、ホットプレス装置を用い、表5に
示す条件で温度1140℃×30分間の加圧焼結を行っ
た。このとき、昇温速度は20℃/分であり、主に8×
10−4Torrの真空下で150kgf/cmの圧
力を加えながら行った。
【0071】そして、ここでは、表5に示すように、過
剰Si量を変化させたときにおける鉄ケイ化物焼結体熱
電変換材料の機械強度と電気的性質を測定した。この結
果を同じく表5に示す。
【0072】なお、この場合、粉末粒度はレーザによる
乾式分析で測定し、結晶粒度は光学顕微鏡による組織観
察からの平均粒度で測定し、SiO相を含みおよびS
iO相を含まないFe1−xCoSi相はEPM
A(電子線プローブマイクロアナライザー)による各元
素の面分析により測定し、曲げ強度はJIS R 16
01制定の3点曲げ試験により測定し、破壊靭性値はJ
IS R 1607制定のビッカース圧子により測定
し、ゼーベック係数(S)は試料に温度差を加えて試料
中間での発電電圧(すなわち、熱起電力(E)/温度差
(δT))から測定し、導電率(σ)は800Kにおい
て直流4端子法で測定し、電力因子は800Kにおける
[(ゼーベック係数(S))×導電率(σ)]で測定
した。
【0073】そして、総合評価欄においては、密度が
4.5g/cm以上、曲げ強度が130MPa以上、
破壊靭性値が1.4MPa√m以上、ゼーベック係数が
−160μV/K以下、電力因子が3.0×10−4
−1以上を良好であるとして総合評価した。
【0074】
【表5】
【0075】この実施例および比較例において、表5に
示すように、焼鈍温度は焼結温度+40℃で実施し、添
加Co量は5mol%と一定にして、過剰Si量を変化
させた。
【0076】表5に示すように、析出SiO量は過剰
Si量に依存し、比較例10のように少ないとFeSi
相が析出し、比較例11のように多いと遊離Siが存在
して、ともに、ゼーベック係数および電力因子が不良で
あった。また、機械特性もSiO量が少ないときには
同様の傾向であった。
【0077】そして、実施例12〜14に示すように、
SiOを0.5〜5.0体積%含むFe1−xCo
Si系半導体(x=0.03〜0.07)よりなる複
合相を12〜20体積%とSiOを含まないFe
1−xCoSi系半導体(x=0.03〜0.0
7)よりなる相を80〜88体積%からなるものとした
範囲で、機械強度および電気的性質が良好なものとなっ
ていた。
【0078】実施例15,16,17,比較例12,1
原料として、フルウチ科学(株)製99.5mol%の
FeSiと0.05mol%のCoSiをアルコー
ル中で遊星ボールミルを用いて30〜60分間粉砕し、
乾燥後粒度分布を測定して焼結用粉末とした。
【0079】焼結は、ホットプレス装置を用い、表6に
示す条件で温度1140℃×30分間の加圧焼結を行っ
た。このとき、昇温速度は20℃/分であり、主に8×
10−4Torrの真空下で150kgf/cmの圧
力を加えながら行った。
【0080】そして、ここでは、表6に示すように、添
加Co量を変化させたときにおける鉄ケイ化物焼結体熱
電変換材料の機械強度と電気的性質を実施例12〜14
と同様にして測定した。この結果を同じく表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】この実施例および比較例において、表6に
示すように、焼鈍温度は焼結温度+40℃で実施し、過
剰Si量は5mol%と一定にして、添加Co量を変化
させた。
【0083】表6に示すように、添加Co量は半導体特
性に影響があることから比較例12のように3mol%
よりも少ないとゼーベック係数が良くないと共に電力因
子が低く、比較例13のように7mol%よりも多い場
合にもゼーベック係数が良くないと共に電力因子に影響
があることが認められた。また、機械特性はさほど影響
を受けないことが認められた。
【0084】実施例18,19,20,21,比較例1
4,15,16 原料として、フルウチ科学(株)製99.5mol%の
FeSiと0.05mol%のCoSiをアルコー
ル中で遊星ボールミルを用いて30〜60分間粉砕し、
乾燥後粒度分布を測定して焼結用粉末とした。
【0085】焼結は、ホットプレス装置を用い、表7に
示す条件で焼結温度を変えてそれぞれ30分間の加圧焼
結を行った。このとき、昇温速度は20℃/分であり、
主に8×10−4Torrの真空下で150kgf/c
の圧力を加えながら行った。
【0086】そして、ここでは、表7に示すように、焼
結温度と焼鈍温度を変化させたときにおける鉄ケイ化物
焼結体熱電変換材料の機械強度と電気的性質を実施例1
2〜14と同様にして測定した。この結果を同じく表7
に示す。
【0087】
【表7】
【0088】この実施例および比較例において、表7に
示すように、焼結温度を変化させると共に、焼鈍温度は
焼結温度+40℃で実施し、添加Co量および過剰Si
量はそれぞれ5mol%と一定にして実施した。
【0089】表7に示すように、析出SiO量は焼結
温度と焼鈍温度により変化し、ゼーベック係数と電力因
子の差となっていることが認められた。そして、ここで
は、SiO量が0.5体積%から5.0体積%析出し
た実施例18〜21においてゼーベック係数および電力
因子が良好であった。また、機械強度についても同様の
傾向で実施例18〜21が良好であった。
【0090】実施例22,23,24,比較例17,1
8,19 原料として、フルウチ科学(株)製99.5mol%の
FeSiと0.05mol%のCoSiをアルコー
ル中で遊星ボールミルを用いて30〜60分間粉砕し、
乾燥後粒度分布を測定して焼結用粉末とした。
【0091】焼結は、ホットプレス装置を用い、表8に
示す条件で温度1140℃×30分間の加圧焼結を行っ
た。このとき、昇温速度は20℃/分であり、主に8×
10−4Torrの真空下で行った。
【0092】そして、ここでは、表8に示すように、焼
結温度を一定とし焼鈍温度を変化させたときにおける鉄
ケイ化物焼結体熱電変換材料の機械強度と電気的性質を
実施例12〜14と同様にして測定した。この結果を同
じく表8に示す。
【0093】
【表8】
【0094】この実施例および比較例において、表8に
示すように、焼鈍温度は一定の焼結温度−40°〜+8
0℃で変化させて実施し、添加Co量および過剰Si量
は5mol%と一定にして実施した。
【0095】表8に示すように、析出SiO量は焼鈍
温度により変化し、ゼーベック係数と電力因子の差とな
っていることが認められた。そして、ここでは、SiO
量を0.5体積%から5.0体積%析出させるための
焼鈍温度とすること、すなわち、焼結温度と同じかそれ
より+70℃までの温度範囲とすることが有効であるこ
とが認められ、この焼鈍温度範囲を満足する実施例22
〜24においてゼーベック係数および電力因子が共に良
好であった。また、機械強度は焼結温度に依存しほとん
ど同じであった。
【0096】実施例25,26,27,比較例20,2
原料として、フルウチ科学(株)製99.5mol%の
FeSiと0.05mol%のCoSiをアルコー
ル中で遊星ボールミルを用いて30〜60分間粉砕し、
乾燥後粒度分布を測定して焼結用粉末とした。
【0097】焼結は、ホットプレス装置を用い、表9に
示す条件で温度1140℃×30分間の加圧焼結を行っ
た。このとき、昇温速度は20℃/分であり、主に8×
10−4Torrの真空下で加圧力を変えて行った。
【0098】このように、ここでは、表9に示すよう
に、焼結時の加圧力を変化させたときにおける鉄ケイ化
物焼結体熱電変換材料の機械強度と電気的性質を実施例
12〜14と同様にして測定した。この結果を同じく表
9に示す。
【0099】
【表9】
【0100】この実施例および比較例において、表9に
示すように、焼鈍温度は焼結温度+40℃で実施し、添
加Co量および過剰Si量は5mol%と一定にして実
施した。
【0101】表9に示すように、析出SiO量は加圧
力によってはあまり変化がなく、加圧力が150kgf
/cm以上であるときにゼーベック係数および電力因
子共良好であったが、荷重がかなり低い比較例20では
密度が低く性能も低下していた。そして、機械強度は焼
結時の荷重に依存し、低荷重では機械強度があまり良く
なかった。
【0102】実施例28,29,30,比較例22,2
原料として、フルウチ科学(株)製99.5mol%の
FeSiと0.05mol%のCoSiをアルコー
ル中で遊星ボールミルを用いて30〜60分間粉砕し、
乾燥後粒度分布を測定して焼結用粉末とした。
【0103】焼結は、ホットプレス装置を用い、表10
に示す条件で温度1140℃×30分間の加圧焼結を行
った。このとき、昇温速度は20℃/分であり、焼結雰
囲気を変えて実施した。
【0104】このように、ここでは、表10に示すよう
に、焼結雰囲気を変化させたときにおける鉄ケイ化物焼
結体熱電変換材料の機械強度と電気的性質を実施例12
〜14と同様にして測定した。この結果を同じく表10
に示す。
【0105】
【表10】
【0106】この実施例および比較例において、表10
に示すように、焼鈍温度は焼結温度+40℃で実施し、
添加Co量および過剰Si量はいずれも5mol%と一
定にして実施した。
【0107】表10に示すように、析出SiO量は焼
結雰囲気によってはあまり変化がなく、ゼーベック係数
および電力因子は共に良好であった。また、機械強度は
焼結雰囲気に依存し、真空度が低い比較例22,23で
は機械強度が不良であった。これは、真空度が低いと雰
囲気中の酸素が粒界にとり込まれるため粒子の結合が切
れることによるものと考えられる。
【0108】
【発明の効果】本発明に係わるFeSi系熱電変換材
料の製造方法によれば、請求項1に記載しているよう
に、FeSi系粉末を用いてFeSi系熱電変換材
料を製造するにあたりFeSi系粉末を焼結するに際
し、FeSiの融点よりも120〜60℃低い温度域
で焼結するようにしたから、熱電変換材料として利用可
能な熱電変換特性を有しているうえに、より一層優れた
破壊靭性値,強度,耐熱衝撃性の優れたFeSi系熱
電変換材料を得ることができるという著しく優れた効果
がもたらされると共に、粒子を密着させて焼結を行うた
め、電気伝導度に優れた結果として発電能力も優れたF
eSi系熱電変換材料とすることができるという著大
なる効果がもたらされる。
【0109】そして、請求項2に記載しているように、
焼結するに際し、10−3Torr以下の真空ないしは
Ar雰囲気下で150kgf/cm以上の圧力で加圧
しながら焼結することによって、FeSiは酸化され
ることなく粒子が密着した状態で焼結することとなっ
て、熱電変換特性に優れそしてまた機械強度,耐熱衝撃
性に優れたFeSi系熱電変換材料を提供することが
可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0110】さらに、請求項3に記載しているように、
粉末平均粒子径が5〜10μmのFeSi粉末を用い
るようにし、請求項4に記載しているように、焼結後に
おけるFeSiの微構造粒子の結晶平均粒子径が5〜
10μmであるようにすることによって、機械強度,靭
性値,耐熱衝撃性をより一層良好なものとすることが可
能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0111】また、請求項5に記載しているように、本
発明に係わる鉄ケイ化物熱電変換材料は、Fe1−x
Si系半導体(x=0.03〜0.07)とSi
(y=2.0未満)から主としてなる鉄ケイ化物熱
電変換材料であって、SiOを0.5〜5.0体積%
含むFe1−xCoSi系半導体よりなる複合相を
12〜20体積%と、SiOを含まないFe1−x
Si系半導体よりなる相を80〜88体積%から
主としてなるものとしたから、より一層優れた破壊靭性
値,強度,耐熱衝撃性を持ち、さらにより一層向上した
ゼーベック係数,電力因子をあわせ持った特性の優れた
熱電変換材料を提供することが可能であり、本発明に係
わる熱電変換材料を例えば自動車の排気熱発電機に用い
た場合には10モード走行で100Wの発電が可能であ
り、自動車の電装機器を稼働させるのに十分な発電量を
得ることが可能であるという著しく優れた効果がもたら
される。
【0112】そして、請求項6に記載しているように、
出発原料としてFeSiを用い、FeSi中に化学
組成よりも2.0〜8.0mol%の過剰なSi元素を
含む粉末を用いるようになすことによって、ドメインを
形成する適量のSiOを析出させることが可能となっ
て熱電変換材料のゼーベック係数および電力因子をより
一層向上させることが可能であるという著しく優れた効
果がもたらされる。
【0113】さらに、請求項7に記載しているように、
粉末から焼結して製造するに際し、Fe1−xCo
の融点よりも120〜60℃低い温度域で焼結する
ようになすことによって、焼結時に塑性流動を起こさせ
つつ緻密化を実現することが可能となり、優れた機械特
性をもつ鉄ケイ化物熱電変換材料を得ることが可能であ
るという著大なる効果がもたらされる。
【0114】そして、請求項8に記載しているように、
粉末から焼結して製造するに際し、10−3Torr以
下の真空下で150kgf/cm以上の圧力で加圧し
ながら焼結するようにしたり、請求項9に記載している
ように、粉末から焼結して製造するに際し、Ar雰囲気
下で150kgf/cm以上の圧力で加圧しながら焼
結するようになすことによってFe1−xCoSi
は酸化されることなく粒子が密着した状態で焼結するこ
ととなって、熱電変換特性に優れそしてまた機械強度に
優れた鉄ケイ化物熱電変換材料を得ることが可能である
という著しく優れた効果がもたらされる。
【0115】さらに、請求項10に記載しているよう
に、焼結に続いて、10−3Torr以下の真空下で焼
結温度よりも0〜70℃高い温度域で6〜12時間焼鈍
するようになすことによって、適量のSiOを析出さ
せることが可能となり、熱電変換材料のゼーベック係数
および電力因子等の電気特性をさらに向上させることが
可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で用いたFeSi原料粉末
の粒度分布を示す説明図である。
【図2】本発明の実施例1で採用した焼結プロセスを示
す説明図である。
【図3】本発明の実施例1で得られた焼結体の微構造を
示す電子顕微鏡写真の模写図である。
【図4】SiO(y=2.0未満)を0.5〜5.0
体積%含むFe1−xCoSi系半導体(x=0.
03〜0.07)よりなる複合相を12〜20体積%
と、SiOを含まないFe1−xCoSi系半導
体(x=0.03〜0.07)よりなる相を80〜88
体積%から主としてなる鉄ケイ化物熱電変換材料の焼鈍
後の微構造を示す説明図である。
【図5】図4に示した鉄ケイ化物熱電変換材料の製造工
程における焼結および焼鈍パターンを例示するグラフで
ある。
【符号の説明】
1 鉄ケイ化物熱電変換材料 2 SiO 3 SiOを含むFe1−xCoSi系半導体よ
りなる複合相 4 SiOを含まないFe1−xCoSi系半導
体よりなる相
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年9月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】本発明の実施例1で得られた焼結体の微構造を
示す電子顕微鏡写真である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 FeSi系粉末を用いてFeSi
    鉄ケイ化物熱電変換材料を製造するにあたりFeSi
    系粉末を焼結するに際し、FeSiの融点よりも12
    0〜60℃低い温度域で焼結することを特徴とするFe
    Si系鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 焼結するに際し、10−3Torr以下
    の真空ないしはAr雰囲気下で150kgf/cm
    上の圧力で加圧しながら焼結することを特徴とする請求
    項1に記載のFeSi系鉄ケイ化物熱電変換材料の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 粉末平均粒子径が5〜10μmのFeS
    粉末を用いることを特徴とする請求項1または2に
    記載のFeSi系鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 焼結後におけるFeSiの微構造粒子
    の結晶平均粒子径が5〜10μmであることを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかに記載のFeSi系鉄
    ケイ化物熱電変換材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 Fe1−xCoSi系半導体(x=
    0.03〜0.07)とSiO(y=2.0未満)か
    ら主としてなる鉄ケイ化物熱電変換材料であって、Si
    を0.5〜5.0体積%含むFe1−xCoSi
    系半導体よりなる複合相を12〜20体積%と、Si
    を含まないFe1−xCoSi系半導体よりな
    る相を80〜88体積%から主としてなることを特徴と
    する鉄ケイ化物熱電変換材料。
  6. 【請求項6】 出発原料としてFeSiを用い、Fe
    Si中に化学組成よりも2.0〜8.0mol%の過
    剰なSi元素を含む粉末を用いることを特徴とする請求
    項5に記載の鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 粉末から焼結して製造するに際し、Fe
    1−xCoSiの融点よりも120〜60℃低い温
    度域で焼結することを特徴とする請求項5または6に記
    載の鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 粉末から焼結して製造するに際し、10
    −3Torr以下の真空下で150kgf/cm以上
    の圧力で加圧しながら焼結することを特徴とする請求項
    5ないし7のいずれかに記載の鉄ケイ化物熱電変換材料
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 粉末から焼結して製造するに際し、Ar
    雰囲気下で150kgf/cm以上の圧力で加圧しな
    がら焼結することを特徴とする請求項5ないし7のいず
    れかに記載の鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 焼結に続いて、10−3Torr以下
    の真空下で焼結温度よりも0〜70℃高い温度域で6〜
    12時間焼鈍することを特徴とする請求項5ないし9の
    いずれかに記載の鉄ケイ化物熱電変換材料の製造方法。
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