JPH08170686A - 液体封入式防振マウント - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 弾性仕切壁の耐久性を確保しつつ内外筒部材
の軸直角方向のばね反力の上昇を抑制する。 【構成】 内外筒金具１１，１２の各下端部間に介装さ
れた防振ゴム１３と、各上端部間に介装された弾性膜１
４と、該防振ゴム１３と弾性膜１４の対向内端面間に形
成されて、内部にエチレングリコール液Ｅを充填した液
室１５と、該液室１５を上下室１５ａ，１５ｂに２分割
する仕切体１６とを備えている。この仕切体１６は、仕
切り環１９の内側に固着された弾性仕切壁２０のシール
片２５を径方向に沿って湾曲状に折曲形成して、内外筒
金具１１，１２の相対的な軸直角方向の移動に伴って自
由に撓み変形させるようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車の車体とサスペ
ンションメンバーとの間などに介装される液体封入式防
振マウントに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種、従来の液体封入式防振マウント
としては、例えば特開平２−２７５１２９号公報等に記
載されているものが知られている。

【０００３】図３に基づいて概略を説明すれば、車体に
ボルト固定される内筒金具１と、該内筒金具１に同心的
に囲繞し、サスペンションメンバーにボルト固定される
外筒金具２とを備え、この内外筒金具１，２の一端部間
に筒状の防振ゴム３が、他端部間にゴム製の環状弾性膜
４が夫々加硫接着処理により両者１，２間に固着されて
いる。また、この弾性膜４と防振ゴム３との間には、内
外筒金具１，２を介して内部に液体Ｅが充填された液室
５が形成されていると共に、該液室５内の内外筒金具
１，２の間に液室５を軸方向から上室５ａと下室５ｂに
２分割する仕切体６が設けられている。この仕切体６
は、外筒金具２の内周面に固着された仕切り環７と、内
筒金具１の外周面に固着された圧入リング８と、仕切環
７と圧入リング８との間に設けられたゴム板９とから構
成されている。前記仕切環７は、金属材で形成されて、
外周に有する環状凹溝７ａと外筒金具２との間に上室５
ａと下室５ｂとを両端開口１０ａ，１０ｂを介して連通
するオリフィス１０が形成されている。更に、ゴム板９
は、環状を呈し、内外周縁が仕切り環７と圧力リング８
に加硫接着されている。

【０００４】そして、サスペンションメンバーに路面か
らの振動が伝達されると、外筒金具２を介して防振ゴム
３が振動して上室５ａと下室５ｂに大きな容積変化が生
じ、液体Ｅがオリフィス１０を通じて両室５ａ，５ｂ間
を置換流動し、斯かるオリフィス１０通過時に低周波数
振動領域での高い減衰特性が得られる。また、このとき
仕切体６のゴム板９は、外筒金具２の振動及び各液室５
ａ，５ｂ内の容積変化に伴い内外筒金具１，２の軸方向
及び軸直角方向へ撓み変形するようになっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の防振マウントにあっては、ゴム板９が環状板に形成
され、内外筒金具１，２に対して軸直角方向に沿って直
線状に配置されている。このため、外筒金具２と内筒金
具１が相対的に径方向つまり軸直角方向へ移動した場合
には、ゴム板９が径方向から圧縮されることにより、両
者１，２間の軸直角方向のばね力が大きくなる。この結
果、車両の走行安定性が悪化する惧れがある。

【０００６】そこで、ゴム板９を十分に薄くして軸直角
方向のばね反力を小さくすることも考えられるが、単純
に薄く形成すると耐久性が低下し、長期間使用後に該ゴ
ム板に亀裂が発生したり破損してしまう可能性がある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記従来の問
題点に鑑みて案出されたもので、請求項１記載の発明
は、内筒金具と、該内筒金具に同心的に囲繞した外筒金
具と、該内外筒金具の一端部間に介装された弾性部材
と、内外筒金具の他端部間に介装された弾性膜と、前記
弾性部材と弾性膜との間に隔成された液室内の内外筒金
具間に介装されて、前記液室を軸方向から２分割する一
部が弾性仕切壁で形成された仕切体とを備えた液体封入
式防振マウントにおいて、前記弾性仕切壁を、縦断面略
湾曲状に形成したことを特徴としている。

【０００８】請求項２の発明は、前記弾性仕切壁を、縦
断面略波形状に形成したことを特徴としている。

【０００９】

【作用】前記本発明の構成によれば、外筒金具に伝達さ
れた振動に伴い内外筒金具が相対的に軸直角方向へ移動
すると、弾性仕切壁は自身の湾曲形状あるいは波形状に
よって該軸直角方向へ自由に撓み変形する。このため、
弾性仕切壁の十分な肉厚を確保しつつばね反力を低下さ
せることができる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述
する。

【００１１】図２は、本発明に係る液体封入式防振マウ
ントを従来と同様に車体とサスペンションメンバーとの
間に適用した一実施例を示している。

【００１２】即ち、図中１１は内部に挿通される支持軸
（図示せず）を介してボルトで車体に連結された内筒金
具、１２は該内筒金具１１に同心的に囲繞配置され、外
周がサスペンションメンバーに固定された外筒金具であ
って、この内外筒金具１１，１２の各一端部の間には、
弾性部材たる筒状の防振ゴム１３が介装されていると共
に、各他端部の間には弾性膜１４が介装されている。ま
た、内外筒金具１１，１２の内部に位置する防振ゴム１
３と弾性膜１４の対向内端面間に、内部にエチレングリ
コール液Ｅが充填された液室１５が隔成されている。更
に、液室１５内の内外筒金具１１，１２の間には液室１
５を図中上下に２分割して上室１５ａと下室１５ｂに隔
成する仕切体１６が設けられている。

【００１３】前記内筒金具１１は、図２に示すように本
体の上端部１１ａの外周面が縮径状に切欠されて外周面
に段差部１１ｂが形成されている一方、下端部の外周面
に前記防振ゴム１３が加硫接着されている。この防振ゴ
ム１３は、下端側の内部に弾性反力を低下させるための
中空部１３ａが周方向の所定間隔位置に複数形成されて
いると共に、外周面には下端部１７ａがフランジ状に折
曲した薄肉な金属製の筒状部１７が固着されている。

【００１４】前記外筒金具１２は、図２に示すように上
端部に前記弾性膜１４が加硫接着されていると共に、フ
ランジ状の下部１２ａが前記筒状部１７の下端部１７ａ
にかしめ固定されている。また、前記弾性膜１４は、縦
断面略コ字形状に形成され、外筒金具１２に固定された
基部１４ａを有すると共に、円環状の内周面に前記内筒
金具１１の上端部１１ａ及び段差部１１ｂに嵌着固定さ
れる段差形状の薄肉な金属筒１８が加硫接着されてい
る。

【００１５】前記仕切体１６は、図１にも示すように外
筒金具１２の内周面に圧入固定される金属製の仕切り環
１９と、該仕切り環１９の内周側に固着されたゴム製の
弾性仕切壁２０とから構成されている。仕切り環１９
は、外筒金具１２の内周面に圧接する環状基部２１と、
該基部２１の下端部に一体に設けられた縦断面略コ字形
のオリフィス構成部２２とから構成されている。このオ
リフィス構成部２２は、外周面が基部２１とともに外筒
金具１２の内周面に密着状態に固定されると共に、外周
側内部中央に上下の開口２３ａ，２３ｂを介して上下室
１５ａ，１５ｂに連通する環状オリフィス２３が形成さ
れている。

【００１６】弾性仕切壁２０は、縦断面略し字形状に折
曲形成され、前記オリフィス構成部２２の内周面に固着
された基端部２４と、該基端部２４の上端縁から内方へ
湾曲状に折曲されたシール片２５とから構成されてい
る。基端部２４は、図示のように固着部位から垂直に立
ち上がった上端片２４ａが環状基部２１と同一の高さま
で延出して、オリフィス構成部２２には固着されずにフ
リーな状態になっている。また、シール片２５は、上端
片２４ａから自身の折曲部２５ｂを介して内方へ下り傾
斜状に形成され、内周縁２５ａが前記金属筒１８の内周
面に当接するようになっている。また、この内周縁２５
ａの内径Ｄ１は、基端部２４の内径Ｄ２よりも小さく設
定され、かつ金属筒１８の外径Ｄ３よりも小さく設定さ
れており、Ｄ１＜Ｄ３＜Ｄ２の関係に設定されている。
したがって内筒金具１１と外筒金具１２とを組み付ける
際に、金属筒１８に内筒金具１１の上端部１１ａ側を圧
入すると、金属筒１８が若干拡径して該金属筒１８の外
周面にシール片２５の内周縁２５ａが密着して上室１５
ａと下室１５ｂ間のシール機能を発揮する。

【００１７】したがって、この実施例によれば、車両走
行中にサスペンションメンバーに路面からの振動が伝達
されると、内外筒金具１１，１２間の防振ゴム１３によ
り高周波数領域の振動が効果的に減衰されると共に、該
防振ゴム１３の撓み変形により上下室１５ａ，１５ｂの
容積が変化して該上下室１５ａ，１５ｂ内のエチレング
リコール液Ｅがオリフィス２３を置換流動する際に低周
波数振動領域の高い減衰特性が得られる。

【００１８】しかも、外筒金具１２の振動に伴い両者１
１，１２が相対的に軸方向及び軸直角方向へ移動する
と、これに追随してシール片２５が自身の湾曲状折曲部
２５ｂを介して自由に撓み変形する。特に、軸直角方向
への移動に対しては、シール片２５が折曲部２５ｂから
折れ曲がって径方向へ自由に変形する。このため、シー
ル片２５によるばね反力が十分に小さくなり、この結
果、車両の走行安定性が図れる。

【００１９】更に、シール片２５のばね反力を前述のよ
うに十分小さくできることにより、薄肉に形状する必要
がないため、十分な耐久性も確保できる。

【００２０】また、仕切体１６は、仕切り環１９と弾性
仕切壁２０のみで構成することが可能になり、従来のよ
うな圧入リングが不要になるため、部品点数の削減が図
れ、製造作業能率の向上とコストの低廉化が図れる。

【００２１】本発明は、前記実施例の構成に限定される
ものではなく、例えば弾性仕切壁２０を径方向へ複数段
の波形状や蛇腹状に形成したり、あるいはループ状に湾
曲変形させることも可能である。

【００２２】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、弾性仕切壁を湾曲状あるいは波形状に形成する
ことにより内外筒金具の軸直角方向のばね反力を小さく
することができるため、車両の走行安定性等が図れる。

【００２３】しかも、前述のように、弾性仕切壁の特異
な形状によるばね反力の低減化が図れるため、該弾性仕
切壁を薄肉にする必要がなくなる。したがって、弾性仕
切壁の十分な耐久性が確保できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に供される仕切体を示す縦断面
図。

【図２】本実施例の全体構成を示す縦断面図。

【図３】従来の液体封入式防振マウントの縦断面図。

【符号の説明】

１１…内筒金具 １２…外筒金具 １３…防振ゴム（弾性部材） １４…弾性膜 １５…液室 １５ａ，１５ｂ…上下室 １６…仕切体 ２０…弾性仕切壁 ２３…オリフィス ２４…基端部 ２５…シール片

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内筒金具と、該内筒金具に同心的に囲繞
   した外筒金具と、該内外筒金具の一端部間に介装された
   弾性部材と、内外筒金具の他端部間に介装された弾性膜
   と、前記弾性部材と弾性膜との間に隔成された液室内の
   内外筒金具間に介装されて、前記液室を軸方向から２分
   割する一部が弾性仕切壁で形成された仕切体とを備えた
   液体封入式防振マウントにおいて、 前記弾性仕切壁を、縦断面略湾曲状に形成したことを特
   徴とする液体封入式防振マウント。
2. 【請求項２】 前記弾性仕切壁を、縦断面略波形状に形
   成したことを特徴とする請求項１記載の液体封入式防振
   マウント。