JPH0814643B2 - 形態屈折率双変調型位相格子の作製方法 - Google Patents

形態屈折率双変調型位相格子の作製方法

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JPH0814643B2
JPH0814643B2 JP61251451A JP25145186A JPH0814643B2 JP H0814643 B2 JPH0814643 B2 JP H0814643B2 JP 61251451 A JP61251451 A JP 61251451A JP 25145186 A JP25145186 A JP 25145186A JP H0814643 B2 JPH0814643 B2 JP H0814643B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、位相制御によって光波を回折される位相
格子、特に形態変調型の位相格子と屈折率変調型の位相
格子の特徴を兼ね備えた形態屈折率双変調型の位相格子
の作製方法に関する。
[従来の技術] 一般に、波長λを有する光波が屈折率nを有する光媒
体内で距離Dを進行する際に発生する位相変化量Pは式 で表わされ、Dとnの双方に比例する。また、Dやnの
変動によって光媒体からの射出面上でPに周期的分布が
発生する場合には、Pの異なる光波成分が位相整合によ
り相互に強め合う方向へ光波は回折する。
従来の位相格子は、第3図に示すように透明平板2A上
に形成した周期的凹凸構造によってこれを透過する光波
の進行距離を周期的に変調する形態変調型の位相格子1A
と、第4図に示すように透明平板2B内に形成した周期的
屈折率変化層によってこれを透過する光波の屈折率を周
期的に変調する屈折率変調型の位相格子1Bに大別され
る。第3図に示される形態変調型の位相格子1Aは光分岐
器,分波用回折格子,フレネルレンズなどに多用される
が、0次回折光を抑制してこれ以外の回折光を増強する
には周期的凹凸構造の段差を大きくしなければならない
ので、ピッチを微細化して回折角を大きくする場合に高
度の精密加工技術を必要としている。一方、第4図に示
される屈折率変調型の位相格子1Bにおける0次回折光の
抑制と0次以外の回折光の増強は、周期的屈折率差また
は格子厚の増加によって達成されるが、屈折率差の増加
可能範囲は比較的狭いのが通例であるので、形態変調型
の位相格子1Aに比べて格子厚を著しく大きくしなければ
ならないことに技術的難点が存在していた。
そこで、本発明者は、第1図に示すように上記形態変
調型の位相格子1Aと屈折率変調型の位相格子1Bの双方の
変調に基づく光学的な相乗効果を積極的に活用した形態
屈折率双変調型の位相格子1を既に提案している。
光反応による段差と屈折率差の形成に直接関係する従
来技術は、次の2例のみに集約される。その第1の例
は、E.A.Chandross,C.A.Pryde,W.J.Tomlinson,and H.
P.Weber,Appl.Phys.Lett.,Vol.24,No.2(1974),pp.72
〜74であり、これはメタクリル酸グリシジルの誘導体と
メタクリル酸メチルから成る共重合体に、光反応性ドー
パントとしてアクリル酸エチル2−(1−ナフチル)を
16重量%加えて溶液堆積法によりパイレックス基板上で
製膜後、フォトマスクを介して波長300〜380nmの紫外線
を照射することによりドーパントを2量化させてから、
窒素雰囲気中で100〜105℃で約1時間加熱して未反応の
ドーパントを揮発させると、露光部では遮光部に比べて
膜厚が約15%増加すると共に屈折率が0.8〜1.0%高くな
ると報告されている。
第2の例は、W.J.Tomlinson,H.P.Weber,C.A.Pryde,an
d E.A.Chandross,Appl.Phys.Lett.,Vol.26,No.6(197
5),pp.303〜306であり、これは第1の例において光反
応性ドーパントとして2−ナフタレンチオールを13重量
%加えると、紫外線照射によってこのドーパントは共重
合体と結合し、露光部では遮光部に比べて膜厚が約10%
増加すると共に、屈折率が約1.3%高くなる現象を用い
て、光伝播損失0.3dB/cmのリッジ型導波路と結合強度15
dB/cmの光結合器を作製したと報告されている。
しかし、これらの報告は、主題,高分子素材,光反応
性添加剤,製膜方法,光反応様式,膜厚と屈折率の変化
量の上限および応用例などはいずれも全面的にこの発明
のものとは異なっている。また、ポリメタクリル酸メチ
ルの膜に電子線を照射すると膜厚が減少すると同時に屈
折率が増加する現象を利用して、回折格子を作製したと
いう報告もあるが(H.Kotani,M.Kawabe and S.Namba,
Japanese J.Appl.Phys.,Vol.18,No.2(1979),pp.279
〜283)、本質的にこの発明とは無関係である。
[発明が解決しようとする問題点] この発明は、形態変調型位相格子および屈折率変調型
位相格子のいずれよりも、0次の回折光を抑制し0次以
外の回折光を増強し易い形態屈折率双変調型の位相格子
を作製する方法を提供する。
[発明の構成] 以下、図面に基づいてこの発明の構成を説明する。第
1図において、この発明の形態屈折率双変調型の位相格
子1は、透明平板2上にa,bからなる二元格子要素系を
有し、光波の入射面側は一様な平面3となっている。そ
して、この入斜面3と格子要素a,bの射出面4a,4bとは各
々平行であると共に、格子要素a,b間の界面5が入射面
2に垂直になっており、格子要素aは屈折率na,格子要
素bは屈折率nbの材料から構成されている。
ここで、格子の厚さをda,格子要素aおよびbの幅を
それぞれla,lb,ピッチ(単位格子の幅)をl=la+lb,
格子要素aおよびbの断面分率をそれぞれα=la/l=
αおよびα=lb/l=1−α,射出面の外側すなわち空
気の屈折率をn0,射出光の回折角を またはcosθの逆数を と表記する。
このように平板状の位相格子または矩形波状の断面構
造を有する位相格子の入射面3に対して、垂直に入射す
る光波の0次の回折効率ηとm(mは0以外の整数)
次の回折効率ηは、全入射光波の振幅強度を基準とし
てそれぞれ次式のように示される。
η=1−4α(1−α)sin2δ ……(1) 上記式(1)および(2)において、格子要素aおよ
びbの屈折率をnaおよびnb,段差をd,またδ=δとお
くと、 である。
第3図に示す形態変調型の位相格子1Aでは、上記第1
図に示す形態屈折率双変調型の位相格子1において、格
子要素の屈折率na=nbと変更すると共に、δ=δとお
くと、 となる。
また、第4図に示す屈折率変調型の位相格子1Bでは、
第1図に示す形態屈折率双変調型の位相格子1におい
て、格子要素の段差をd=0と変更すると共に、δ=δ
とおくと、 である。
現実的な制約条件として、 0<μn0<nb<naおよび0dda の関係が成立する場合には、 であるので、 δr<δ の関係が得られる。
したがって、 の範囲では、形態屈折率双変調型位相格子1の0次の回
折効率とm次の回折効率をそれぞれ▲η* 0▼および▲η
* m▼,同様に形態変調型の位相格子1Aおよび屈折率変調
型の位相格子1Bの0次の回折効率とm次の回折効率をそ
れぞれ▲ηs 0▼,▲ηs m▼および▲ηr 0▼,▲ηr m▼と
おくと、 ▲η* 0▼<▲ηs 0▼,▲ηr 0▼および▲η* m▼>▲ηs m
▼,▲ηr m▼の関係が成立する。
これは、位相格子の0次の回折光を抑制してこれ以外
の回折光を増強する際に、対応する格子定数が共通なら
ば、形態変調型の位相格子1Aと屈折率変調型位相格子1B
のいずれよりも形態屈折率双変調型の位相格子1が有利
であることを意味している。
したがって、屈折率naを有する素材から成り、段差d
を有する第3図に示されるような形態変調型の位相格子
1Aによって得られるm次の回折効率の値は、格子要素a
およびbの屈折率がそれぞれnaおよびnbの素材(nb
na)から成る形態屈折率双変調型の位相格子1ではdよ
り小さい段差によって達成することができる。その結
果、特にピッチの狭い位相格子の作製に際して格子要素
間に屈折率差を容易に付与することができるならば、段
差形成のための精密加工条件は著しく緩和されることに
なる。
本発明においては用いられる光反応性の炭素炭素間二
重結合を有するアクリル酸系重合体とは後述する(3)
式で示されるようにアルデヒドまたはケトン(以下化合
物(B)という)との反応が進行するような分子内に炭
素炭素間二重結合が存在する重合体であればよい。上記
重合体のうち好ましい例は下記一般式Iの構造単位を含
む重合体又は共重合体[以下単にポリマー(A)とい
う]である。
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基
であり、R2は非共役型二重結合を1個又は2個以上有す
る置換基好ましくは鎖状又は環状テルペン残基であ
る。) 該構造単位は通常2モル%以上であり、好ましくは5
モル%以上である。エステル基に結合した互いに非共役
の二重結合はその三重項エネルギーが75〜85Kcal/モル
の範囲にあり、光励起により化合物(B)との反応性が
極めて高い。互いに共役した二重結合は三重項エネルギ
ーが化合物(B)の三重項エネルギー(64〜74Kcal/モ
ルの範囲にある)よりも低いため光反応よりも光励起エ
ネルギーの移動が優先して起こり、光反応が生起しな
い。
非共役二重結合を1個有する置換基R2を例示すると次
のものが挙げられる。
アリル基の様な炭素数が3つの基;2−ブテニル基、3
−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基のような
炭素数が4つの基;2−ヘプテニル基、3−ヘプテニル
基、4−ヘプテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、
3−メチル−2−ブテニル基、2−エチル−2−プロペ
ニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1,2−ジメチル
−2−プロペニル基等の炭素数が5つの基;2−ヘキセニ
ル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキ
セニル基、1,1−ジメチル−2−ブテニル基、1,2−ジメ
チル−2−ブテニル基、1,3−ジメチル−2−ブテニル
基、2,3−ジメチル−2−ブテニル基、3−メチル−2
−ヘプテニル基、2−メチル−2−ヘプテニル基等の炭
素数が6つの基;あるいは、2−メチル−2−シクロヘ
キセニル基、3−メチル−2−シクロヘキセニル基等の
シクロアルケニル基が挙げられる。
また非共役な二重結合を2個有する置換基R2としては
次のものが挙げられる。
ゲラニル基、isoゲラニル基、1−メチルゲラニル
基、6−メチルゲラニル基、6−エチルゲラニル基、ネ
リル基、ラバンジュリル基。
また非共役な二重結合を3個以上有する置換基R2とし
ては次のものが挙げられる。
ゲラニルゲラニル基、ファルネシル基、β−シクロゲ
ラニルゲラニル基。
上記ポリマー(A)は一般式(I)の構造を有せばそ
の製法は特に問わない。即ち、アクリル酸を含む重合体
を用い、分子内に二重結合を有するアルコール、例えば
2−ブテノール等のアルコールと反応させること(高分
子エステル化反応)により得ることができる。しかる
に、一般式(I)に対応するアクリル酸誘導体の単独重
合又は他のコモノマーとの共重合によって入手したポリ
マーは特に好適に用いられる。
二重結合を1個有するアクリル酸誘導体としては、ア
リルメタクリレート、アリルアクリレート、2−(また
は3)−ブテニルメタクリレート、2(または3)−ブ
テニルアクリレート、2−メチル−2−プロペニルメタ
クリレート、2−メチル−2−プロペニルアクリレー
ト、2(または3または4)−ペプテニルメタクリレー
ト、2(または3または4)−アクリレート、2(また
は3)−メチル−プレニルメタクリレート、2(または
3)−ブテニルメタクリレート、2(または3)−メチ
ル−プレニルメタクリレート、2(または3)−ブテニ
ルアクリレート、2−エチル−2−プロペニルメタクリ
レート、2−エチル−プロペニルアクリレート、1,2−
ジメチル−2−プロペニルメタクリレート、1,2ジメチ
ル−2−プロペニルアクリレート、2(または3または
4または5)−ヘキセニルメタクリレート、2(または
3または4または5)−ヘキセニルアクリレート、1,1
(または1,2または1,3または2,3)−ジメチル−2−ブ
テニルメタクリレート、1,1−(または1,2または1,3ま
たは2,3)−ジメチル−2−ブテニルアクリレート、2
(または3)−メチル−2−ヘプテニルメタクリレー
ト、2(または3)−メチル−2−ヘプテニルアクリレ
ート等のアルコール残基が鎖状になっているアクリル酸
誘導体;2(または3)−メチル−2−シクロヘキセニル
メタクリレート、2(または3)−メチル−2−シクロ
ヘキセニルアクリレート等のアルコール残基が環状にな
っているアクリル酸誘導体が挙げられる。これらの中
で、アリルメタクリレート、2−メチル−2−プロペニ
ルメタクリレート、2−ブテニルメタクリレート、2−
ヘキセニルメタクリレート、3−ヘキセニルメタクリレ
ートが、アルコール残基のアルコールの入手のしやす
さ、エステルの合成のしやすさのために好ましい。
二重結合を2個以上有するアクリル酸誘導体として
は、ゲラニルメタクリレート、ゲラニルアクリレート、
ネリルメタクリレート、ネリルアクリレート、イソゲラ
ニルメタクリレート、イソゲラニルアクリレート、ラバ
ンジュリルメタクリレート、ラバンジュリルアクリレー
ト、6−メチルゲラニルメタクリレート、6−メチルゲ
ラニルアクリレート、1−メチルゲラニルメタクリレー
ト、1−メチルゲラニルアクリレート、6−エチルゲラ
ニルメタクリレート、6−エチルゲラニルアクリレー
ト、ペリリルメタクリレート、ペリリルアクリレート等
の非共役な二重結合を2個有する鎖状若しくは環状テル
ペン系アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエ
ステル、ファルネシルメタクリレート、ファルネシルア
クリレート、ゲラニルゲラニルメタクリレート、ゲラニ
ルゲラニルアクリレート、β−シクロゲラニルゲラニル
メタクリレート、β−シクロゲラニルゲラニルアクリレ
ート等の非共役重合体を3個以上有する鎖状若しくは環
状テルペン系アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸
とのエステルが好適な例として挙げられる。
共重合に付されるコモノマーとしては上述のアクリル
酸エステル誘導体と共重合するモノマーであればよく、
例えば、メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチ
ル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル
等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸:アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピ
ル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等の
アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アミド、ア
クリル酸アミド、スチレン:α−メチルスチレン等の置
換スチレンが例示される。これらのコモノマーはフッ素
で置換されていてもよい。
しかし、芳香族のようにπ電子系の環状化合物は分子
容が大きいと同時に多数のπ電子を持っており、体積と
屈折率の双方を増加させる機能を備えているので、芳香
族ケトンの光付加反応によって露光部の膜厚と屈折率を
増加させる場合には、メタクリル酸エステルはπ電子系
の環構造を有していないことが望ましい。
前述のアルコール残基中に炭素−炭素二重結合を残存
させるようなポリマーの合成は、アクリル酸誘導体モノ
マーのアルコール残基の炭素−炭素二重結合にシス、も
しくはトランスに2つあるいは3つ以上のアルキル基が
置換している場合は一般にラジカル重合またはアニオン
重合で合成でき、炭素−炭素二重結合がビニル基、又は
ビニリデン基を構成する場合にはアニオン重合によって
容易に合成しうる。重合の際に、上記炭素−炭素二重結
合が副反応により若干変化する場合もありうるがポリマ
ー(A)においては二重結合は実質的に共重合に関与し
ていないのがよい。ポリマー(A)の分子量には特にに
制限はないが、一般に数平均分子量で1000〜100万の範
囲にある。ポリマー(A)中の構造単位(I)はモノマ
ー単位で5モル%以上において、化合物(B)との反応
により顕著な性質変化が観測される。
次に化合物(B)は段差と屈折率を増加させる機能を
備えており、カルボニル基を1個有する化合物と、カル
ボニル基を2個以上有する化合物に大別される。該化合
物(B)としては非置換または置換型のベンズアルデヒ
ド、ベンゾフェノンまたはそれらの誘導体が例示され、
一般式で表現すると次のIIまたはIII式で示される。
(但し式(II)または(III)においてX1〜X6は水素原
子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコ
キシ基、アリルオキシ基、またはハロゲン原子を表し、
X7〜X10は水素原子またはハロゲン原子を表わす。また
nは0または整数を示す) 上式において好ましい化合物はX1〜X10は水素であ
り、式IIIにおいてnが1または2の化合物である。
化合物(B)の好適な例としては、ベンゾフェノン:3
−または4−メチルベンゾフェノン、3または4−メト
キシベンゾフェノン、3,3′−または4,4′−ジメチルベ
ンゾフェノン、3,3′または4,4′−ジメトキシベンゾフ
ェノン、2,3または4−クロルベンゾフェノン、3,4,5−
トリメチルベンゾフェノン、3,4,5−トリメトキシベン
ゾフェノン等の置換ベンゾフエノン類、3−ベンゾイル
ベンゾフェノン:3−(3または4−メチルベンゾイル)
−3′または4′メチルベンゾフェノン、3−(3また
は4−メトキシベンゾイル)−3′または4′メチルベ
ンゾフェノン、3,3′−ジベンゾイルベンゾフェノン等
の置換3−ベンゾイルベンゾフェノン類、ベンズアルデ
ヒド:3または4−メチルベンズアルデヒド、3または4
−メトキシベンゾアルデヒド、3,4ジメチルベンゾアル
デヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド等の置換ベ
ンズアルデヒド類が挙げられる。これらの化合物(B)
はカルボニル基に対してオルソ位にメチル基、エチル
基、イソプロピル基等の置換基を有さないので、光照射
による分子内水素引き抜き等の副反応が少ない利点を有
する。本発明ではベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、
3−ベンゾイルベンゾフェノン、3,3′−ジベンゾイル
ベンゾフェノンが感光性、合成の容易さ等から特に好ま
しく、また3−ベンゾイルベンゾフェノン、3,3′−ジ
ベンゾイルベンゾフェノンが、感光性、屈折率差および
レリーフ構造の生成等から特に好ましい化合物(B)で
ある。
光反応性の炭素炭素間二重結合を有する共重合体と、
これらの芳香族ケトンを共存させた状態で、波長が300
〜400nmの紫外線を照射すると、例えば、式(3)に示
すような反応様式で両者はオキセタン環を生成し結合す
る。
ここで、R1とR2は適当な置換基、またはRpは共重合体
を示す。この光反応を選択的に進行させるための条件と
して、芳香族ケトンの3重項エネルギーが共重合体上に
炭素炭素間二重結合の3重項エネルギーより低いことを
要し、逆の場合には光励起エネルギーは芳香族ケトンか
ら炭素炭素間二重結合へ優先的に移動して失われる。こ
のような観点から共役型の炭素炭素間二重結合は不適格
であると共に、3重項エネルギーが65Kcal/モル以上77K
cal/モル以下の範囲にある芳香族ケトンが有用である。
また、減圧加熱法による現像条件を緩和するには、昇華
し易い芳香族ケトンを使用することが望ましい。
露光部と遮光部の段差と屈折率差は、素材の種類や濃
度に依存するばかりでなく、紫外線照射前の膜厚、光源
の出力、紫外線の照射時間、温度などによっても変動す
る。このような段差と屈折率差の制御要因の特性を予め
把握しておくことによって、所望の段差と屈折率差を有
する形態屈折率双変調型位相格子は容易に作製される。
次に本発明の回折格子を作成する方法について述べ
る。
ポリマー(A)と化合物(B)とを溶解する溶媒に両
者を溶解し、キャスティング法、バーコート法、スピン
コート法等の一般的な方法で塗膜が形成される。該塗膜
は必要に応じて減圧下或いは加熱することにより溶剤を
除去し本発明の組成物の膜となる。該膜はフィルムであ
っても基板上に形成された薄膜であってもよい。膜形成
法は所望の膜の厚さ、または膜の形態によって、種々の
方法が選ばれる。一般に厚い場合にはキャスティング
法、薄い場合にはバーコート法、またはスピンコート法
が選ばれるがこれら以外の方法でもかまわない。ポリマ
ー(A)と化合物(B)の割合は、特には限定されない
が一般に重量比で10:1から1:10の範囲内で任意に選択さ
れる。ポリマー(A)中の非共役二重結合を有するアル
コール残基に対して化合物(B)はモル比で10:1〜1:20
の範囲内で任意に選択され、好ましくは5:1〜1:10の範
囲内である。
露光は300〜420nmの紫外線により周期的パターン状に
照射することにより行なわれる。たとえば高圧水銀ラン
プ、超高圧水銀ランプ、N2ガスレーザー、He−Cdガスレ
ーザー等が適宜用いられる。また露光方法はフォトマス
クを用いる方法、二光束干渉露光法、レーザービームを
直接照射する方法等があり、適宜用いられる。
本発明は上述の膜を露光後、化合物(B)を任意の方
法で除去することにより得られる。例えば減圧または常
圧下で0℃〜120℃で処理することにより、非露光部の
化合物(B)及び未反応の化合物(B)を除去すること
により所望の形状の屈折率差とレリーフ構造を合わせも
つ光学的に透明な鮮明な回折格子を作製できる。本発明
の作成方法によれば露光部の屈折率が非露光部の屈折率
よりも大きく、しかも露光部が非露光部よりも厚みの厚
い凸な構造となるという特長をもっている。従って、本
発明の方法によれば、形態と屈折率差の双変調型位相格
子が容易に得られるという特長を有する。
本発明者らは屈折率差とレリーフ構造をコントロール
する方法を検討した結果、本発明の組成物ではそれらは
(1)本発明の組成物中のポリマー(A)の割合と、そ
の(A)中の一般式(I)で示される構造単位の割合及
び化合物(B)の割合、(2)露光時間、(3)または
それらの組合わせによって任意にコントロールすること
が可能であることを見出した。
一般的に組成物中の化合物(B)としてフェニル環の
数の多い化合物を用いたときや、ポリマー(A)中の非
共役二重結合が多いものを用いたときに屈折率差は大き
くなる。また、レリーフ構造の深さは化合物(B)のポ
リマー(A)に対する割合が多くなると大きくなる。さ
らに反応時間は長ければより多く反応するので屈折率
差、レリーフ構造の深さともに大きくなる。しかしなが
ら、これらの条件は、組成物中のポリマー(A)や化合
物(B)の組成や、組成物の膜厚等から適宜選ばなけれ
ばならないことはいうまでもない。
第1図に示す形態屈折率双変調型位相格子は最も単純
な構成を有しており、この入射面に垂直に入射したレー
ザ光の射出パターンは、格子面に平行に配置したスクリ
ーン上において、0次回折光のスポットを中心として1
直線上に配列した回折スポット群を示すが、本発明はこ
のような構成の形態屈折率双変調型の位相格子のみに限
定されない。例えば第2図に示すように、凸(高屈折
率)部6と凹(低屈折率)部7を市松模様状に構成した
形態屈折率双変調型位相格子8の入射面にレーザ光を垂
直に入射すると、スクリーン上では0次回折光のスポッ
トを中心として2次元的に配列した回折スポット群が観
測される。この位相格子は、例えば、0次回折光とこれ
に最も近い4本の回折光により、単一のレーザ光から5
本の等価なレーザ光を得る素子になる。
これら以外にも、形態屈折率双変調型位相格子では多
種多用な構成が可能である。従って、本発明は、特に光
の波長レベルで光波を処理する微小光学系の素子とし
て、回折角や回折効率の制御に基づく光波の分配や集光
に広く役立つ。
[発明の定量的評価] 式(1)および(2)により回折効率を定量的に評価
する。λ=0.780μm,la=10.0μm,lb=10.0μm,da=1.0
0μm,n0=1.00の条件で、na=1.51およびnb=1.50の場
合と、na=1.55およびnb=1.45の場合の回折効率を、そ
れぞれ第1表および第2表に示す。ここで、屈折率変調
型の位相格子の回折効率は、形態屈折率双変調型位相格
子においてもd=0のときの回折効率と一致する。これ
らの表から、0次回折光の抑制とこれ以外(表では簡略
化のためm=±1のみを示す。)の回折光の増強に関す
る形態屈折率双変調型位相格子の優位性が具体的に検証
される。
[実 施 例] 以下に実施例を挙げて、本発明による形態屈折率双変
調型位相格子の作製方法と光学特性を詳しく説明する。
実施例1 メチルメタクリレートと2−ブテニルメタクリレート
のモル比1:1の共重合体を合成した。この2−ブテニル
メタクリレート成分1モルに対して1モルのベンゾフェ
ノンを添加して調製した4重量%ベンゼン溶液を、厚さ
2mmのポリメチルメタクリレート基板上にスピンコート
して透明薄膜を形成した。格子要素の幅と間隔が共に10
μmの縞状パターンを有するフォトマスクを介して、出
力250Wの超高圧水銀灯でこの薄膜を20分間紫外線照射す
ることにより、2−ブテニルメタクリレート成分にベン
ゾフェノンを結合させた。この試料を0.2mmHg,100℃の
条件で1時間減圧加熱して未反応のベンゾフェノンを昇
華させることにより、形態屈折率双変調型位相格子を作
製した。2光束干渉顕微鏡を用いて露光部と遮光部の膜
厚を測定した結果、それぞれ0.803μmおよび0.711μm
であり、段差は0.092μmであった。波長6328ÅのHe−N
eレーザを用いて、プリズム結合法により露光部と遮光
部の屈折率を測定した結果、それぞれ1.522および1.510
であった。このレーザと光パワメータを用いて、1次回
折光と0次回折光の強度比(▲η* 1▼/▲η* 0▼)を測
定した結果、0.034であり、理論値0.034とよく一致し
た。
実施例2 実施例1において、ベンゾフェノンの代わりに3−ベ
ンゾイルベンゾフェノンを2−ブテニルメタクリレート
成分1モルに対して0.7モル添加して、同様の実験を実
施した結果、露光部と遮光部の膜厚はそれぞれ1.015μ
mおよび0.761μm,段差は0.254μm,露光部と遮光部の屈
折率はそれぞれ1.544および1.510であった。1次回折光
と0次回折光の強度比は0.454であり、理論値0.456とよ
く一致した。
実施例3 メチルメタクリレートとゲラニルメタクリレートのモ
ル比1:1の共重合体を合成し、このゲララニルメタクリ
レート成分1モルに対して1.4モルのベンゾフェノンを
加えて、実施例1と同様の実験を実施した結果、露光部
と遮光部の膜厚はそれぞれ0.798μmおよび0.670μm,段
差は0.128μm,露光部と遮光部の屈折率はそれぞれ1.530
および1.513であった。1次回折光と0次回折光の強度
比は0.069であり、理論値0.070とよく一致した。
実施例4 実施例3において、ベンゾフェノンの代わりに3−ベ
ンゾイルベンゾフェノンをゲラニルメタクリレート成分
1モルに対して0.9モル添加して、同様の実験を実施し
た結果、露光部と遮光部の膜厚はそれぞれ0.997μmお
よび0.648μm,段差は0.349μm,露光部と遮光部の屈折率
はそれぞれ1.557および1.514であった。1次回折光と0
次回折光の強度比は1.588であり、理論値1.593とよく一
致した。
[発明の効果] 本発明によれば、従来の形態変調型位相格子と屈折率
変調型位相格子のいずれよりも0次回折光の抑制とこれ
以外の回折光の増強を実現できる形態屈折率双変調型位
相格子が容易に提供され、微小光学系における光の分配
や集光などに広く役立つものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の形態屈折率双変調型位相格子の拡大
断面図、 第2図は、市松模様状の形態屈折率双変調型位相格子の
拡大した斜視図と回折パターンを示す斜視図、 第3図は、従来の形態屈折率双変調型位相格子の拡大断
面図、 第4図は、従来の屈折率変調型の位相格子の拡大断面図
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イ)(A)光反応性の炭素炭素間二重結合
    を有するアクリル酸系重合体 および(B)非置換または置換基を有する芳香族アルデ
    ヒドおよび芳香族ケトンより選択される化合物の一種ま
    たは二種以上を含有する組成物より薄膜を形成する工
    程、 ロ)上記薄膜に周期的パターンにより紫外線を照射する
    工程、 ハ)未反応の化合物(B)を除去する工程、 を順次行うことを特徴とする、周期的に厚さが変化して
    いる凹凸構造ををもつ薄膜層の凸部および凹部が各々屈
    折率の異なる材料で構成された形態屈折率双変調型位相
    格子の作製方法。
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