JPH081373A - Sn基低融点ろう材 - Google Patents
Sn基低融点ろう材Info
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Abstract
鋼などを 500〜600 ℃の低温で、しかもフラックスを使
用できない真空ろう付などで、成分元素が蒸発せず、良
好なぬれ性を発揮する従来にない低融点ろう材を提供す
ることを目的とする。 【構成】 P 0.05 〜1.5 重量%、Ni 0.5〜5.0 重量
%、必要に応じてCu30重量%以下、又は/及びAg10
重量%以下で、NiとCuとAgの合計が35重量%を添
加し、残部Sn及び不可避不純物よりなるSn基低融点
ろう材。
Description
強固な酸化皮膜を形成するステンレス鋼などを真空ろう
付する際に使用するための、ぬれ性、流動性の優れたS
n基低融点ろう材に関するものである。
Sに規定された耐熱Niろう(BNi-1〜7, JIS Z 3265)や
Agろう(BAg-1〜8, JIS Z3261) などが使用されてい
る。Niろうは、Niを主成分とし、Cr,B,Si,
Pなどを含む合金で、自溶性を有するため、フラックス
を使用する必要がなく、真空ろう付等で良好なろう付部
品を製造することができるが、融点が高いため1000℃(B
Ni-6,7) 〜1200℃(BNi-5)の高いろう付温度が必要であ
る。AgろうはAg-Cu を主成分とし、これにZn,C
d,Ni,Snなどを含む合金組成で、融点も比較的低
く650℃〜900℃でろう付できるが、自溶性がないためフ
ラックスを使用する必要があり、蒸気圧の高いZnを多
量に含むため真空ろう付に適さない。
んだ((JIS H 4341 等) は融点が約200 ℃と低く、ステ
ンレス鋼用としても使用されているが、フラックスを必
要とするため、Agろうと同様に真空ろう付の場合、ス
テンレス鋼とのぬれ性が悪く、良好なろう付部品を得る
ことができない。以上のように、表面に強固な酸化皮膜
を形成するステンレス鋼などのろう付において、ステン
レス鋼の鋭敏化処理温度 (約 650℃) 以下、あるいは冷
間加工材の焼鈍軟化開始温度 (18-8ステンレス鋼:約60
0℃, 25Cr鋼:約500℃;ステンレス鋼便覧による) 以
下、即ち 600℃以下の温度でフラックスを使用せず真空
ろう付等で、良好なぬれ性を発揮するろう材が必要とさ
れる場合、従来のろう材やはんだでは融点やぬれ性の点
で、上記目的を達成することができない。
に強固な酸化皮膜を形成するステンレス鋼などを 500〜
600℃の低温で、しかもフラックスを使用できない真空
ろう付などで、成分元素が蒸発せず、良好なぬれ性や流
動性を発揮する従来にない低融点ろう材を提供すること
である。
成するステンレス鋼などを500〜600℃の低温で、フラッ
クスを使用しないでろう付することができ、ぬれ性が良
好なろう材合金組成を見つけるために種々のベース成分
及び添加成分の研究を進めてきた結果、ベース成分とし
ては実用金属中で融点が 232℃と最も低く、蒸気圧も比
較的低く (AgとCuの間)、しかも無毒で耐食性が良
く、価格的にも安定しているSnを選択した。これに添
加成分として種々の元素の効果を検討した結果、Pを少
量添加することにより、ろう付過程での自溶性発揮によ
りステンレス鋼母材表面の強固な酸化皮膜を破壊し、ぬ
れ性が向上することを見出した。また、これにNiを添
加することにより、真空ろう付過程でのPの蒸発が抑制
され、炉や排気装置の汚染を少なくする効果があること
を見出した。さらに、これにCuあるいはAgを添加す
ることにより、ろう付過程でのろう材の流動性が更に向
上し、CuとAgは各々の単独あるいは複合添加が可能
であることを見出し、600℃ろう付で良好なぬれ性を発
揮する添加成分の範囲を限定することにより本発明を完
成したものである。
部Sn及び不可避不純物よりなるSn基低融点ろう材。 (2) P 0.05 〜1.5 重量%、Ni 0.5〜5.0 重量%、C
u 30 重量%以下、又は/及びAg10重量%以下で、N
iとCuとAgの合計が35重量%以下、残部Sn及び不
可避不純物よりなるSn基低融点ろう材である。
定した理由を以下に述べる。Pは本ろう材に添加、合金
化することにより各成分とのリン化物 (Sn4P3,Ni3P,Cu3
P,AgP など) を形成し、ろう付過程で自溶性を発揮し、
ステンレス鋼表面の強固な酸化被膜を破壊することによ
りぬれ性を改善する効果があるが、0.05%未満ではその
効果が発揮されず、 1.5%を超えると上記効果が緩慢に
なると共に、真空ろう付過程でのPの蒸発の危険性が生
じてくる。このため、Pの添加範囲を0.05〜1.5 %と限
定した。
より、安定なNi3P等を成形し、自溶性を発揮すると共
に、真空ろう付時のPの蒸発を抑制する効果があるが、
0.5 %未満ではその効果が少なく、5.0 %を超えると合
金の融点 (液相線温度) が好ましくない温度(600℃以
上) まで上昇してしまう。このためNiの添加範囲を0.
5〜5.0 %と限定した。
し、Pの蒸発しない安定な真空ろう付を行うことができ
るが、これにCu及びAgを添加することによりSn-P-N
i 三元合金よりも液相線温度が低下し、さらにろう拡が
り性、即ち、ろう材の流動性が向上する効果がある。C
uとAgは各々の単独添加でも複合添加でも、同様の上
記効果を発揮する。しかし、Cu添加の場合が30%を超
えると液相線温度が600℃以上に上昇し、溶け別れなど
のろう付不良を生じやすくなる。Ag添加の場合は10%
を超えると、ろう材の靱性が低下し、ろう付部が割れや
すくなる。また、CuとAgを複合添加する場合は、N
iとCuとAgの合計が35%を超えると上記不良が生じ
てくる。このため、それぞれCuは30%以下、Agは10
%以下、両方添加の場合は、NiとCuとAgの合計を
35%以下と限定した。
以上含まれるが、Sn自体の融点の低さから上記添加成
分を合金化しても融点を低く抑え、また、P及びNiと
結合して自溶性を発揮するとともに、CuやAgと結合
することにより流動性の良好なろう材合金を形成する。
本発明のSn基低融点ろう材は、通常のガスアトマイズ
法などによる粉末の形態や、箔、線などに成形して使用
することができ、また、ステンレス鋼以外の母材のろう
付に応用することも可能であり、有用である。
でのろう付試験結果、加熱後のP分析結果を表1に示
し、比較例の合金組成と各試験結果を表2に示す。な
お、融点の測定方法、ろう付試験方法及び加熱後のP分
析方法は以下の通りである。 (1) 融点(液相線,固相線)測定 実施例及び比較例の合金を電気炉内、アルゴンガス雰囲
気中で溶解し、熱分析法により融点を測定した。即ち、
溶湯中央部に装入した熱電対に連結した記録計に熱分析
曲線を描かせ、その冷却曲線から液相線及び固相線の各
温度を読み取った。
気中で溶解し、その溶湯を黒鉛型に鋳造して5mmφの棒
状鋳造片を得、それを約5mmの高さに切断し、ろう材試
験片とした。次に図1(a) に示すようにSUS304ステンレ
ス鋼母材上にろう材試験片を載せて、 600℃で30分間、
10-4torr台の真空中でろう付熱処理(以下、ろう付とい
う)を行った。ろう付後、図1(b) に示すようにろう材
が溶けて拡がった面積Sを計測し、その面積Sをろう付
前のろう材試験片の断面積Soで割った数値、即ち、ろ
う拡がり係数W(=S/So)を求め、ろう材合金のSUS304
ステンレス鋼母材に対するぬれ性、流動性の指標とし
た。
片を90°曲げ、その時のはく離の状態を調査し、ろう材
合金のSUS304ステンレス鋼母材に対する付着力を評価し
た。なお、表中に示す付着力評価は下記基準で行った。 付着力(90°曲げ) ◎;はく離せず ○;一部、端部はく離 ×;全面はく離 (3) 加熱後のP分析 実施例及び比較例(No.a〜e)の合金について、 (2)ろ
う付試験と同じ方法で得たろう材試験片を磁性ボートに
入れ、ろう付試験と同じ条件で加熱処理を行った。こう
して得た加熱後のろう材合金のP量を、化学分析法によ
り定量分析した。この値を加熱前のろう材のP量から引
いた値、即ち、P減少量を求め、ろう材合金中最も蒸発
する可能性の高いPの、ろう付過程での挙動を調査し
た。
600℃でのろう付試験において、いずれもろう拡がり係
数が大きく、付着力も良好で、SUS304ステンレス鋼母材
に対するぬれ性、流動性が良好であることがわかる。ま
た、 600℃加熱後のP減少量は 0〜0.05%と非常に少な
く、ろう付過程でPはほとんど蒸発しないことがわか
る。なお、本実施例合金は 500℃でのろう付試験におい
ても、良好なろう付性を示すことを確認している。
o.a〜iは本発明合金の範囲から外れた組成で、そのう
ち、 No.a〜cはP,Cu,Agは本発明の範囲でNi
を含まない組成である。この場合、ろう付性は良好であ
るが、P減少量が多くろう付過程でPのほとんどが蒸発
してしまい、炉や真空排気装置を汚染する危険性が大き
い。この点からも本発明合金におけるNiのP蒸発抑制
効果が明らかである。
の範囲から外れた組成であるが、これらは 600℃ろう付
試験でのろう拡がり係数が小さく、付着力も不良で、SU
S304ステンレス鋼母材に対し、ほとんどぬれないことが
わかる。この点からも 本発明合金におけるPのステン
レス鋼母材に対するぬれ性改善効果が明らかである。N
o.jはJISに規定されるBAg-8 ,Agろう合金、No.k〜
mは Sn-PbあるいはSn-Agはんだの従来合金であるが、
Agろうの場合は、融点の点で600℃ではろう付でき
ず、はんだの場合、融点は実施例合金より低いにもかか
わらず、600℃でろう付してもSUS304ステンレス鋼母材
にはほとんどぬれないことがわかる。
の特徴として、液相線は Ni3P ,Ni-Cu(Ag)などの初晶晶
出温度で、固相線はそれらとSnとの共晶温度で、220
℃付近に共通して現れる。固相線と液相線の幅は組成に
より変化し、その幅が 200℃以上となる場合が多いが、
ろう付後の合金組織を観察した結果、晶出物は母相中に
均一に分布しており、組織的な偏りはみられず、いずれ
も溶け別れやボイドなどのろう付不良となる形跡はみら
れなかった。
EPMA等で観察した結果、ステンレス鋼母材表面のCr,
Fe酸化物皮膜は、ろう材中のPにより還元され全くみ
られず、接合界面でのはく離等の形跡もなく、ろう材と
母材が良好に接合していることを確認した。
低融点ろう材は、表面に強固な酸化皮膜を形成するステ
ンレス鋼などを、 500〜600℃の低温で、しかもフラッ
クスを使用しないで真空ろう付でき、構成成分の中で蒸
発しやすい元素であるPが蒸発せず、良好なぬれ性、流
動性を発揮する効果を有するもので、産業の発展に寄与
するところ大なる発明である。
ある。
Claims (2)
- 【請求項1】 P 0.05 〜1.5 重量%、Ni 0.5〜5.0
重量%、残部Sn及び不可避不純物よりなるSn基低融
点ろう材。 - 【請求項2】 P 0.05 〜1.5 重量%、Ni0.5 〜5.0
重量%、Cu30重量%以下、又は/及びAg10重量%以
下で、NiとCuとAgの合計が35重量%以下、残部S
n及び不可避不純物よりなるSn基低融点ろう材。
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---|---|---|---|
JP12996294A JP3205466B2 (ja) | 1994-06-13 | 1994-06-13 | Sn基低融点ろう材 |
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