JPH0813629B2 - 安全ベルトシステムのベルト錠 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は安全ベルトシステムに対するベルト錠にし
て、該ベルト錠と、車体または車両座席上の碇着点との
間で作動する締め付け装置を有するベルト錠に関する。

従来の技術 安全ベルトシステムに対するベルト錠には種々の構造
のものがある。ある種の構造においてはベルト錠のハウ
ジングの中に、挿入舌片に対する案内路が形成され、か
つ該ハウジング上を案内路に対して横方向に移動し得る
ように案内され、またはその上に枢着された掛けがねが
前記挿入舌片の戻り止め項と共働するようになってい
る。ハウジング内において、案内路と平行に移動し得る
ように案内された阻止部材は、同様にハウジング内を案
内路と平行に移動し得るように案内された釈放ボタンが
その静止位置にある限り、掛けがねをその錠止位置に保
持する。阻止部材には釈放ボタンが結合され、これを作
動した時に該阻止部材が釈放位置に移動し、この位置に
おいて掛けがねは挿入舌片の戻り止め孔から外れる。

締め付け装置を有する安全ベルトシステムに、このよ
うなベルト錠を使用した場合には、たとえば締め付け力
がベルト引き戻し器に働いても問題は起らない。ベルト
錠と、車体または車両座席上のその装架点との間で作動
する締め付け装置はすでに提案されている。このような
締め付け装置はベルト錠の装着点と、錠自体との距離を
数センチメートル、たとえば10センチメートル短縮する
ことができる。このような場合に使用される締め付け装
置は機械的に構成され、かつ引張ばねの形をなしたアキ
ュムレータを有し、該アキュムレータは慣性力に応答す
るセンサによって釈放され、所要の締め付け力を発生す
るようになっている。

所要の締め付け力を得るためには、機械的締め付け装
置に非常に強いばねを設ける必要がある。このようなば
ねの車両感知釈放を、満足すべき再現可能釈放限界値を
有する状態で行わせることは非常に困難である。

締め付け装置として火薬を用いた締め付け装置、すな
わちピストン、シリンダ線形駆動装置を有し、釈放時に
シリンダ内のピストンに、圧縮ガスを作用させる火工技
術的ガス発生器を備えた締め付け装置は比較的容易に形
成することができる。しかしながら前記の如きベルト錠
は、これを火薬を用いた締め付け装置と共に使用すると
きには、自動的に開く傾向のあることがわかった。

発明が解決しようとする課題 本発明の目的は前文に記載した型のベルト錠を改良
し、如何なる問題をも伴うことなく、比較的大きな締め
付け力を発生する締め付け装置を備えた安全ベルトシス
テムに使用し得るようにすることである。

課題を解決するための手段 前文に記載した型のベルト錠に関する前記の問題は、
本発明によれば案内路に対して垂直なピンにより、ハウ
ジング内に２腕レバーを装架し、該レバーの一つの腕が
補償質量と係合し、かつレバーの他の腕が釈放ボタンま
たは阻止部材と力伝達式に係合するようになすことによ
って解決される。このようにすれば釈放ボタンおよびこ
れに連結されたすべての部分の質量が補償される。締め
付けを行う場合にはベルト錠は、非常に大きな加速度を
有する締め付け力により、車体または車両座席上のその
装着点の方に動かされる。締め付け運動の終りにおいて
は、ベルト錠およびその取付け具は、ベルト錠の釈放ボ
タンおよびこれに結合されたすべての質量と同様に高速
度に達する。実際には締め付け運動の行程は制限され、
ベルト錠の取り付け具が高速締め付け運動を制限するス
トッパに衝当するようになっている。質量の慣性力によ
って、釈放ボタンはそれに結合された質量と共に、その
運動を続ける傾向があり、すなわちベルト錠を開く時の
釈放ボタンの普通の作動方向に向う運動を続ける傾向が
ある。望ましからざる状況においては、この行程中にベ
ルト錠が自動的に開くことがある。本発明の方法におい
ては、このような自動的開放は確実に阻止される。その
理由は釈放ボタンおよびこれに結合された質量が、補償
質量の質量慣性によって発生される補償力により阻止さ
れるからである。

本発明の実施例においては、補償質量の大きさは、そ
れによって発生する慣性力が釈放ボタンおよびこれに結
合された質量の慣性力より幾分大となるようにされてい
る。このような方法によれば、製造公差、摩擦および老
化の原因となるような変化を考慮に入れて、高度の作動
信頼性が得られ、したがって公差および他の理由に起因
する、特に不具合な状況においてもベルト錠の不測な開
放が避けられる。このように補償質量は常態において、
釈放ボタンに発生する慣性力より幾分大なる効力を発生
するようにされている。

本発明の別の有利な展開は、従属請求の範囲に記載さ
れている。

本発明の他の特色および利点は、添付図面によって次
に説明する実施例によって明らかとなる。

実施例 第１図に示された締め付け装置は火薬を用いたピスト
ン、シリンダ締め付け駆動装置10よりなり、そのシリン
ダは車体に締着され、かつ細長い碇着板16の形をなした
ベルト錠12に対する縦方向案内は溝孔14を有し、ピスト
ン20をベルト錠の取付け具22に連結する引張ケーブル18
は案内プーリー24を通して導かれ、該プーリーは装着ボ
ルト26に装架され、このボルトによって碇着板16は車体
に装架されている。

第１図および２図は非作動位置にある締め付け装置を
示す。第２図によって明らかな如く、ピストン20の端部
側は火薬を用いた（pyrotechinical）ガス発生器28から
発生する圧縮ガスを受ける。この圧縮ガスの作用を受け
てピストン20は大きな加速度によって駆動され、かつ引
張ケーブル18および取付け具22を介して、ベルト錠12を
下向きに引く。ベルト錠12の運動は溝孔14の下端におい
て急激に減速される。締め付けが行われた後は、ピスト
ン20と一体的に形成されたラチェット機構により、ベル
ト錠12はその指導方向における運動が阻止される。

ベルト錠12が締め付け工程の終わりにおいて急激に減
速せしめられれば、釈放ボタン30およびそれに連結され
た部分に大きな慣性力が生じ、この力は釈放ボタンの釈
放運動の方向に向いている。第３図から第10図までによ
って次に説明するベルト錠の構造は、前記の如き慣性力
によってベルト錠が不測に開かれるのを阻止する。

碇着取付け具22はリベットによって錠ハウジング32の
負荷担持部分に連結されている。前記ハウジング32はプ
ラスチック皿34の形をなしたカバーによって囲繞されて
いる。錠ハウジング32は軸受ブラケットを有し、該ブラ
ケットは平面図で見てＵ字形をなすように、上向きに曲
げられ、かつ該ブラケットの二つの平行脚36、38の間に
は枢働掛けがね40が軸受ピン42によって装架されてい
る。釈放ボタン30は二つの平行腕30A,30Bを備え、該腕
は錠の内部に延び、かつその自由端に案内溝孔を有し、
この溝孔を通って軸受ピン42が係合している。釈放ボタ
ン30は前記脚36、38の外側を摺動的に案内されている。

錠ハウジング32は挿入舌片46に対する案内路44を有
し、該舌片は戻り止め48を備えている。枢動掛けがね40
の制御カム50は案内路44の中に突出している。枢動掛け
がね40はさらにその自由端に戻り止め突起52を有してい
る。

釈放ボタン30の二つの腕30A、30Bの間において、鋼板
の形をなした阻止部材54が、枢動掛けがね40の自由端に
設けられた耳片56の上方に装架されている。圧縮ばね58
はその一端において阻止部材54上に触圧し、かつその他
端においては、制御カム50の反対側に位置する、枢動掛
けがね40のレバー腕60に触圧している。

第３図に示された位置においては枢動掛けがね40の耳
片56は阻止部材54の前縁の後方と係合し、戻り止め突起
52が圧縮ばね58によって案内路44から外されるようにな
っている。この場合は釈放ボタン30はその作動位置にお
いて示されている。

第４図に示された状態においては、挿入舌片46が挿入
され、かつ戻り止め突起52が戻り止め孔48の中に錠止さ
れている。

延長部分62（第５図、６図および７図）は錠ハウジン
グ32の横方向に装架されている。２腕レバー腕66は軸受
ピン64によって前記延長部分に枢着されている。補償質
量68は前記レバー66の一つの腕に装着されている。レバ
ー66の他の腕はクランク耳片70によって阻止部材54の凹
所72に係合している。したがって補償質量68は釈放ボタ
ン30および阻止部材54に力を伝達するように連結されて
いる。しかしながら補償質量68が釈放ボタン30および阻
止部材54から遠い方の側において、レバー66の腕に位置
しているから、補償質量68によって発生せしめられた慣
性力は、釈放ボタン30、阻止部材54およびこれらに結合
されたすべての質量によって生じる力とは反対に作用す
る。

補償質量68の大きさは、あらゆる状況下において慣性
力によるベルト錠の開放を阻止するようにされる。この
大きさはなるべくは釈放ボタン30、阻止部材54およびこ
れらに連結されたすべての部材の質量の合計より幾分大
となるようにされる。

第８図は本発明によるベルト錠の第２実施例の展開図
である。第９図は前記実施例の断面図、第10図は釈放ボ
タン、２腕レバーおよび補償質量の相対的配置を示す図
である。

この第２実施例が前述の実施例と異なる点は、２腕レ
バー66および補償質量68の配置およびその装架態様だけ
である。２腕レバーはその中心において軸受ピン80に枢
着され、該軸受ピンは板82の中心に装着され、この板は
錠ハウジング32の二つの脚36、38をそれらの上縁におい
て相互に連結している。前記板82は阻止部材54と相対す
るように位置している。補償質量68は細長い板として形
成され、かつ２腕レバー66の一つの腕の端部においてク
ランクピン84に枢着されている。補償質量68は錠ハウジ
ング32の縦方向に平行に延び、かつ前記ハウジング上
に、縦方向に移動し得るように装架されている。

第10図によって明らかな如く、この実施例においては
２腕レバー66は、補償質量68の慣性力の作動方向と反対
の方向に働く。したがって釈放ボタン30およびこれに連
結されたすべての部材の質量は補償質量68によって補償
される。

第８図、第９図および第10図に示された実施例によれ
ば、錠ハウジング内に補償質量を容易に組み入れること
ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はベルト錠と係合する締め付け装置の略透視図、
第２図は締め付け装置の部分的断面図、第３図は釈放ボ
タンを作動した時における、本発明のベルト錠の縦断面
図、第４図は挿入舌片を挿入し、かつ錠止した時におけ
るベルト錠の側面図、第５図は第４図の線Ｖ−Ｖに沿っ
て取られたベルト錠の断面図、第６図は第５図の線VI−
VIに沿って取られたベルト錠の断面図、第７図はベルト
錠の作動部分の略透視図、第８図、第９図および第10図
はベルト錠の他の実施例を示す図である。 10……駆動装置、12……ベルト錠、16……碇着板、18…
…ケーブル、20……ピストン、28……ガス発生器、30…
…釈放ボタン、32……錠ハウジング、44……案内路、48
……戻り止め孔、54……阻止部材、66……２腕レバー、
68……補償質量、70……クランク耳片。

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ベルト錠と車体又は車両座席上の碇着点と
   の間で作動する締め付け装置を備えた安全ベルトシステ
   ムのベルト錠であって、 ハウジングと、 該ハウジング内に形成され、そこに挿入される安全ベル
   トの挿入舌片を案内するようになった案内路と、 前記挿入舌片における戻り止め孔と協働するために前記
   案内路を横断する方向に可動であるように前記ハウジン
   グに装架された掛けがねと、 前記掛けがねをその錠止位置に保持するために前記案内
   路と平行な方向に可動であるように前記ハウジングに装
   架された阻止部材と、 前記案内路と平行な方向に可動であるように前記ハウジ
   ングに装架された釈放ボタンであって、前記阻止部材を
   釈放位置へ移動させるように該阻止部材に連結されてお
   り、該釈放位置においては前記掛けがねが前記挿入舌片
   の戻り止め孔から解放されて該挿入舌片を釈放するよう
   になっている、前記釈放ボタンと、 を有するベルト錠において、 前記案内路（44）に対して垂直なピン（64）のまわりで
   枢動可能に前記ハウジング（32）に装架された２腕レバ
   ー（66）を有し、この２腕レバー（66）は補償質量（6
   8）を装着する第１腕と、前記釈放ボタン（30）及び前
   記阻止部材（54）の１つと力が伝達されるように係合し
   ている第２腕とを有し、前記２腕レバー（66）の前記第
   ２腕にはクランク耳片（70）が備えられ、前記クランク
   耳片（70）は、前記阻止部材（54）、前記釈放ボタン
   （30）及び該釈放ボタン（30）に連結された部分のうち
   の１つに形成された凹所（72）内に係合しており、前記
   ２腕レバー（66）の前記第１腕は、前記補償質量（68）
   によって形成された折曲がり部分を有し、前記クランク
   耳片（70）は前記補償質量（68）のこの折間がり部分に
   対して反対方向に折曲がっていることを特徴とするベル
   ト錠。
2. 【請求項２】前記掛けがね（40）は前記ハウジング（3
   2）に枢動可能に装架されている請求項１に記載のベル
   ト錠。
3. 【請求項３】前記２腕レバー（66）は、前記ハウジング
   （32）の負荷担持部分において前記案内路（44）に隣接
   してその横断方向に取り付けられた延長部分（62）に枢
   着されている請求項１又は２に記載のベルト錠。
4. 【請求項４】前記凹所（72）は、前記阻止部材（54）内
   に形成され且つ前記案内路（44）の縁に平行な方向に延
   びる前記阻止部材（54）の縁に配置されている請求項１
   から３までのいずれか１つに記載のベルト錠。
5. 【請求項５】前記阻止部材（54）は、前記釈放ボタン
   （30）に嵌合して連結された板である請求項１から４ま
   でのいずれか１つに記載のベルト錠。
6. 【請求項６】前記ハウジング（32）は、負荷担持部分を
   含み、前記掛けがね（40）は前記負荷担持部分に装架さ
   れた枢動掛けがねである請求項１から５までのいずれか
   １つに記載のベルト錠。
7. 【請求項７】前記ハウジング（32）は負荷担持部分を含
   み、前記２腕レバー（66）が前記阻止部材（54）に対向
   する前記負荷担持部分上に枢着されており、前記補償質
   量（68）は前記２腕レバー（66）の第１腕に接合して連
   結されている請求項５又は６に記載のベルト錠。
8. 【請求項８】前記補償質量（68）は細長い板として形成
   され、且つ前記ハウジング（32）の縦方向に変位可能に
   装架されている請求項７に記載のベルト錠。
9. 【請求項９】ベルト錠と車体又は車両座席上の碇着点と
   の間に係合する締め付け装置を有する安全ベルト保持シ
   ステムであって、前記締め付け装置が、ピストン・シリ
   ンダ線形駆動装置（10）として構成されており、この駆
   動装置（10）は火薬を用いたガス発生器（28）を有し、
   このガス発生器（28）はそれが作動された時に加圧ガス
   を前記シリンダ内のピストン（20）に作用させるように
   なっており、前記ベルト錠（12）は請求項１から８まで
   のいずれか１つの記載に従って構成されている安全ベル
   ト保持システム。
10. 【請求項１０】前記駆動装置（10）のピストン（20）は
    引張ケーブル（18）を通して前記ベルト錠（12）に連結
    されており、前記ベルト錠（12）は取付け具（16）によ
    り縦方向案内（14）の中を移動自在に案内される請求項
    ９に記載の安全ベルト保持システム。
11. 【請求項１１】前記引張ケーブル（18）が、前記ベルト
    錠（12）と前記駆動装置（10）との間で転向されている
    請求項10に記載の安全ベルト保持システム。