JPH08123441A - 懸垂式吸音装置 - Google Patents

懸垂式吸音装置

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JPH08123441A
JPH08123441A JP6262968A JP26296894A JPH08123441A JP H08123441 A JPH08123441 A JP H08123441A JP 6262968 A JP6262968 A JP 6262968A JP 26296894 A JP26296894 A JP 26296894A JP H08123441 A JPH08123441 A JP H08123441A
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JP
Japan
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electrode
particles
inner electrode
outer electrode
voltage
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Application number
JP6262968A
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English (en)
Inventor
Kazuya Edamura
一弥 枝村
Hidenobu Anzai
秀伸 安齊
Moritaka Goto
守孝 後藤
Kenji Furuichi
健二 古市
Yasubumi Otsubo
泰文 大坪
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Fujikura Kasei Co Ltd
Fujikura Ltd
Original Assignee
Fujikura Kasei Co Ltd
Fujikura Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 周波数域に係わらず、かつどの方向から入射
してくる音波をも有効に吸音でき、室内の音響特性を好
みに合わせて設定する。 【構成】 有底円筒形状の内側電極26の上端面中央部
には吊下げ金具24が固着され、外側電極28は、内側
電極26の外周面を覆う大きさの有底円筒形状を有し、
この外側電極28の外周面にはポリエチレンテレフタレ
ートのフィルム27が被覆されている。外側電極28は
内側電極26に対して水平面内のあらゆる方向や上下方
向に移動自在である。内側電極26と外側電極28との
間の前記隙間には、電気絶縁性媒体1中に固体粒子であ
るEA粒子2が均一に分散されてなる電気感応型音波吸
収制御用流体組成物が収容されている。内側電極26お
よび外側電極28には可変電源29により電圧が印加さ
れ、この印加電圧のオン/オフはスイッチ30により行
い、印加電圧値の調整は電圧調節つまみにより行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、室内の騒音源より離れ
た地点から先を静かにするためや、室内のコーナー部の
こもり音を吸収するための懸垂式吸音装置に関し、特
に、電界配列効果に基づいて特性振動数を制御すること
のできる電気感応型音波吸収制御用流体組成物を備えた
懸垂式吸音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】大気中に一点から発した音波は球面波と
なって伝播してゆくから、音のエネルギーは、距離の増
加とともに半径が次第に大きくなってゆく球面全体に均
一に拡散してゆくため、音の強さも距離の自乗に逆比例
して小さくなってゆく。音の強さを表すのに通常デシベ
ル値で言うならば距離が2倍になるごとに6デシベルづ
つ小さくなるような減衰を示す。ところが、例えば大き
い室内の一部に騒音を発生する機械や装置がある場合に
は、そこから発する音波はそこから少し離れたあたりか
ら先はやはり球面波となって室内に伝播してゆくが、そ
の音波が壁や天井や床に到達すると、そこで一部は吸収
されあるいは透過して失われるが、残りは反射して方向
を変え再び球面波となって伝播してゆく。かくして、そ
の室内の他の一点に到達する音波は反射せずに、直接到
達する音波と、反射を繰り返して到達する音波とが重な
り合う。そのためにその点における音の強さは、同じ距
離の屋外の地点の音の強さに比べて大きくなる。特に、
その室の内面が硬くて平滑であれば反射性が強いので音
波は室内に充満し、音源からある距離離れた地点より遠
方の室内ではどこでも大体同じくらいの大きさの音にな
ってしまう。
【0003】このような場合は、その室内の音を静かに
する方法の一つは、その室の壁や天井の内面に、音波を
よく吸収する材料、即ち吸音材を貼ることによって反射
を少なくし室の吸音性をよくする方法である。ところ
が、このような吸音材を壁や天井に貼ることができない
場合や、施行が難しい場合が多く、できたとしても高い
費用がかかるという問題がある。そこで、従来より、天
井から吊下げる吸音体が開発されており、かかる懸垂式
の吸音体としては、(1)板状の吸音ボードや、横型の
吸音体のものや、(2)多孔板を円筒状に形成させたも
のの両端に多孔円板を取り付け、さらに、この有底円筒
体の外周に円筒状吸音材を、両側の外側に円板状吸音材
を被せるとともに、吊下げ金具により天井に吊下げるよ
うに構成されたものがある(特開昭56−9800号公
報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
上記(1)の吸音体は、薄いために高周波数の音波に対
しては有効であるが、低周波数の音波や、壁や天井のコ
ーナー部分に発生しやすいこもり音に対しては吸音性が
悪いという問題点がある。さらに、吸音面が平面状であ
るために、あらゆる方向から入射してくる音波にすべて
有効であるとは限らない。また、(2)のものは、多孔
板や吸音板の材質により固有振動数が一定で、その固有
振動数に近い成分の音波しか吸収(除去)できないこと
から、固有周波数の異なる複数種類の音波吸収材を積層
した構造となり、結果的に、吸音装置の大型化や重量増
加が避けられず、コストが嵩んだり、また、取扱いが煩
雑になったりして、信頼性が低いという問題点がある。
【0005】ところで、本発明者らは、従来知られてい
ない新規な電界配列特性を有する電気感応型音波吸収制
御用流体組成物の研究を行っている。この流体組成物
は、例えば、電気絶縁性の媒体中に固体粒子を分散させ
て得られる流体であり、これに電界を印加すると固体粒
子が誘電分極を起こし、さらに誘電分極に基づく静電引
力によって互いに電場方向に配位連結して整列し、鎖状
体構造を示す性質を持っている。また、固体粒子によっ
ては電気泳動して配列配向し、配列塊状構造を示す性質
を示すものもある。このように、電界下における粒子の
配列配向を電界配列効果と呼び、そのような性質を有す
る固体粒子を電界配列性粒子と呼ぶこととする。そして
本発明者らは、この新規な構造の電気感応型音波吸収制
御用流体組成物の研究を進めることにより本発明に到達
した。
【0006】本発明は、上記従来技術の有する問題点に
鑑みてなされたものであり、吸収すべき音波の周波数に
応じて、電圧を印加することにより特性振動数を変更で
きる流体組成物を備え、特に低周波数域の音波吸収にも
有効で、周波数域に係わらずかつどの方向から入射して
くる音波を有効に吸音できる、コストの安くかつ取扱い
の容易な懸垂式吸音装置を提供することを目的としてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の懸垂式吸音装置は、円柱形状の内側電極と、
前記内側電極を隙間をおいて包囲する有底円筒形状の外
側電極と、前記内側電極)吊下げるための吊下げ具と、
前記内側電極と前記外側電極との間の前記隙間に収容さ
れた、電界配列効果を有する固体粒子を電気絶縁性媒体
中に含有してなる電気感応型音波吸収制御用流体組成物
と、前記内側電極および前記外側電極間に電圧を印加
し、かつ印加電圧を可変とする電圧印加手段と、前記印
加電圧を調整するための電圧調節つまみと、を具備して
構成されたことを特徴とするものである。また、前記内
側電極として円柱形状のものを用いる代りに、有底円筒
形状のものを用いたり、前記内側電極として円柱形状の
ものを用いる代りに、中空球形状あるいは中実球形状の
ものを用い、外側電極として中空球形状のものを用いる
ことができる。さらに、前記外側電極の外表面にはフィ
ルムが貼り付けられている。そして、前記電圧印加手段
は、前記内側電極と前記外側電極にわたって接続された
可変電源と、前記可変電源に直列に接続されたスイッチ
とから構成されている。
【0008】
【作用】本発明の懸垂式吸音装置を吊下げ金具を介し
て、騒音を発する機械あるいは装置の例えば上方に天井
より吊下げる。内側電極および外側電極間に電圧が印加
されていない状態では、電気感応型音波吸収制御用流体
組成物(以下、Electric Noise−Con
trol流体組成物を略して「ENC流体組成物」と称
する)中の電界配列効果(以下、Electric A
lignment効果を略して「EA効果」と称する)
を有する固体粒子(電界配列性粒子を略して「EA粒
子」と称する)は電気絶縁性媒体中に不規則にランダム
に浮遊・分散している。電圧印加手段により内側電極お
よび外側電極に電圧を印加すると、EA粒子は鎖状に配
列結合して鎖状体(粒子鎖)を形成し、この鎖状体が電
界方向に平行して配列する。この状態で、外側電極に音
波(空気振動)を入射させると、この外側電極が振動す
るが(このとき、内側電極は吊下げられているので固定
されているものとみなせる)、鎖状体自体が弾性の性質
を持っているため、鎖状体は引っ張られる場合には、向
かい合う粒子同士が引き合って引力を、圧縮される場合
には、撓んで反発力をそれぞれ生じ、電気絶縁性媒体中
の鎖状体の運動により粘性抵抗が生じ、これによって音
波の持つエネルギーの損失(散逸)が起こり、前記騒音
を吸収できる。
【0009】すなわち、外側電極に入射した音波に、鎖
状体を含むENC流体組成物と電極板とが共振するので
ある。このような鎖状体に振動を与える音波周波数は、
鎖状体の持つ特性振動数(鎖状体の弾性と外側電極の慣
性とのバランスからなる、いわゆる固有振動数と推定さ
れる)によって定まり、その特性振動数と一致した周波
数の音波が外側電極に入射すると、鎖状体は共振してそ
の音波を吸収し、他の周波数の音波は反射されることに
なる。各粒子間に働く引力(鎖状体に生じる応力)は、
内側電極および外側電極に印加される電圧の増加に伴っ
て増大することから、鎖状体自体の弾性率と粘性率が印
加電圧の増加に伴って増大することになり、本発明は、
このことを利用するものである。すなわち、電圧調節つ
まみにより印加電圧を調整して、鎖状体自体の特性振動
数を、入射音波(空気振動)のうち除去したい成分の振
動数に一致させることにより、鎖状体を共振(共鳴)さ
せ、吸音(除去)したい成分のエネルギーを消費し、そ
の他の成分を反射させるものである。
【0010】本発明の懸垂式吸音装置をリスニングルー
ムあるいは音楽室等の室のコーナー部分に設け、印加電
圧を調節することにより、この室のこもり音を吸収し
て、室内の音楽鑑賞者への余計な反射音(不快な音)を
遮断し、適切な響き具合すなわち音響特性の室とするこ
とができる。そして、外側電極が有底円筒体なので、平
板状のものと比較して、どの方向から入射される音波を
もすべて有効に吸音される。
【0011】各粒子間に働く引力(鎖状体に生じる応
力)は、内側電極および外側電極に印加される電圧の増
加に伴って増大することから、鎖状体自体の弾性率と粘
性率が印加電圧の増加に伴って増大することになり、本
発明は、このことを利用するものである。すなわち、電
圧調節つまみにより印加電圧を調整して、鎖状体自体の
特性振動数を、入射音波(空気振動)のうち除去したい
成分の振動数に一致させることにより、鎖状体を共振
(共鳴)させ、吸音(除去)したい成分のエネルギーを
消費し、その他の成分を反射させるものである。
【0012】なお、図10は、対向する一対の電極板間
にEA粒子30wt%分散系を収容させた場合におけ
る、電界配列特性(以下、「EA特性」と称する)に及
ぼす電界強度の影響を測定した結果を示すグラフであ
る。このグラフから印加電圧が増加するほど鎖状体に働
く応力は増大することが明かである。EA特性は、誘電
分極した粒子が電気的引力により電場方向に配列し、鎖
状構造を形成することに起因する。低せん断速度では、
電気的引力が支配的であるので、鎖状構造の破壊と再形
成がゆるやかに繰り返される。電場方向に並んだ鎖をそ
れと直角方向にせん断破壊させるとき発生する力が降伏
応力に相当する。形成されるすべての鎖の粒子が同じ直
径をもち、直鎖状の並んで電極板間を結んでいると考え
ると、鎖の数は粒子濃度に比例するので、降伏応力も粒
子濃度に比例することになる。また、図11は上述した
電極板振動系の等価回路を示し、すなわち、電極板振動
系は、弾性率Kのコイルばね22と粘性率Cのダッシュ
ポット23が一対の電極板間に並列に接続されてなる等
価回路とみなすことができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の懸垂式吸音装置の一実施例に
ついて、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明
の理解を容易にするために、以下、電気感応型音波吸収
制御用流体組成物(ENC流体組成物)、ENC流体組
成物を一対の電極板間に収容させて構成した音波吸収制
御装置および懸垂式吸音装置について順次説明する。
【0014】先ず、図4に本発明の懸垂式吸音装置に使
用する電気感応型音波吸収制御用流体組成物(ENC流
体組成物)の一具体例を示す。このENC流体組成物
は、電気絶縁性媒体1中に固体粒子であるEA粒子(電
界配列性粒子)2が均一に分散されてなっている。この
EA粒子2は、有機高分子化合物からなる芯体3と、電
界配列性無機物(以下、「EA無機物」と称する)であ
る粒子4からなる表層5とによって形成され、無機・有
機複合粒子を形成している。この具体例において、電気
絶縁性媒体1は無色透明のシリコーン油であり、無機・
有機複合粒子の芯体3を形成する有機高分子化合物はポ
リアクリル酸エステルであり、表層5を形成するEA無
機物の粒子4は無機イオン交換体でありかつ電気半導体
性無機物でもある白色の水酸化チタンである。このEA
粒子(無機・有機複合粒子)の色は例えば白色である。
また、電気絶縁性媒体1中に含まれるEA粒子2の割合
は例えば7.5重量%である。
【0015】 このENC流体組成物は、図5に示すよ
うに、離間して平行に配置した一対の電極板7,8の間
に介在させる。図6に示すように、この一対の電極板
7,8に、電源9からスイッチ10を介して電圧を印加
すると、EA効果によってEA粒子2が電極板7,8の
面と直角の方向に鎖状に配列して鎖状体(粒子鎖)6を
形成する。このとき、各鎖状体6は相互に離間して平行
に配向する。
【0016】 次に、上述したENC流体組成物を対向
する一対の電極板間に収容させて構成した音波吸収制御
装置(音波制振装置)について説明する。図7に示すよ
うに、一対の電極板17,18が間隙(組成物収容空
間)をおいて対向配置され、これら一対の電極板17,
18間には、上述した本発明の、EA効果を有するEA
粒子2を電気絶縁性媒体1中に含有してなるENC流体
組成物が収容されている。一方の(下方の)電極板18
は図示しない固定部材に固定配置されており、他方の電
極板17は、音波に対して柔軟な例えばPET(ポリエ
チレンテレフタレート)フィルム17aの下面に一様に
接着されている。前記一対の電極板17,18の周縁お
よびPETフィルム17aの周縁には、枠状のシール部
材15が固着されている。
【0017】 一対の電極板17,18およびシール部
材15により形成された空間内に、本発明のENC流体
組成物が密閉された状態で収容されている。また、一方
の電極板17およびPETフィルム17aは、その周縁
が固定されているが、一対の電極板17,18の対向方
向(矢印Xで示す上下方向)に振動できるように構成さ
れている。これにより、音波(空気振動)11がPET
フィルム17aに入射した場合には、PETフィルム1
7aおよび一方の電極板17は上下振動することができ
る。PETフィルム17aを電極板17の外表面に貼り
付けたことにより、電極板17の音波入射による振動追
従性が高まる。
【0018】 符号13は、一対の電極板17,18間
に電圧を印加し、かつ印加電圧を可変とする電源(電圧
印加手段)であり、この電源13にはスイッチ14が直
列に接続されている。このスイッチ14をオンにするこ
とにより、一対の電極板17,18間に電圧を印加する
ことができる。この音波吸収制御装置は、通常、外観矩
形板状あるいは円形板状の形態であるが、勿論、設置す
る場所に合わせて適宜の形状とする。
【0019】 次に、上記構成の音波吸収制御装置の動
作について説明する。図7に示すように、一対の電極板
17,18間に電圧が印加されていない状態では、EN
C流体組成物のEA粒子2が電気絶縁性媒体1中にラン
ダムに浮遊・不規則に分散している(図5参照)。一対
の電極板17,18に電圧を印加すると、ENC流体組
成物中のEA粒子2が鎖状に配列結合して鎖状体(粒子
鎖)6を形成し、この鎖状体6が電界方向に平行して配
列する(図6参照)。
【0020】 この状態で、一方の電極板17に音波
(空気振動)11を入射させると、図9の(a),
(b),(c)および(d)の状態が順次起こって、こ
の電極板17がPETフィルム17aとともに矢印X
(図7および図8参照)で示すように対向方向に振動す
るが、鎖状体6自体が弾性の性質を持っているため、図
9の(b)に示すように、鎖状体6は、圧縮される場合
には、例えば「く」の字状に撓んで反発力を生じ、図9
の(d)に示すように、鎖状体6は、引っ張られる場合
には、向かい合うEA粒子2同士が引き合って引力を生
じる。これにより、ENC流体組成物中での鎖状体6の
運動により、粘性抵抗が生じ、音波11の持つエネルギ
ーの損失(散逸)が起こる。
【0021】 そして、電極板17の振動にともなっ
て、鎖状体6の引っ張りと圧縮が繰り返されるものであ
り、この結果、鎖状体6自身も振動することになる。す
なわち、電極板17に入射した音波11に、鎖状体6を
含むENC流体組成物と、電極板17とPETフィルム
17aとからなる電極板構造体とが共振するのである。
このような鎖状体6に振動を与える音波周波数は、鎖状
体6の持つ特性振動数によって定まり、その特性振動数
と一致した周波数の音波11が電極板17に入射する
と、鎖状体17は共振して(図8中矢印A,B参照)そ
の音波を吸収し、他の周波数の音波12は反射されるこ
とになる。
【0022】 各電界配列性粒子2間に働く力(鎖状体
6に生じる応力)は一対の電極板17,18に印加され
る電圧の増加に伴って増大することから、鎖状体6自体
の弾性率と粘性率が印加電圧の増加に伴って増大するこ
とになる。本発明は、このことを利用して音波の所望の
成分を除去するものである。すなわち、印加電圧を調整
して、粒子鎖6自体の特性振動数を、電極板17に入射
した音波(空気振動)のうち除去したい成分(特定波長
の音波)の振動数に一致させることにより、図9に示す
ように、鎖状体6を慣性力の作用により左右矢印A,B
で示すように共振(共鳴)させ、入射音波11の除去し
たい成分のエネルギーを消費し、その他の音波成分(符
号12で示す)を反射させるものである。このように、
印加電圧により、入射音波の所望の特定波長の成分を吸
収できる。
【0023】 音波吸収制御装置の特性周波数は、EA
粒子(固体粒子)の大きさ、EA粒子間に働く弾性力、
また電極板の固有振動数および電極板間の距離等により
変化する。本発明では、電気絶縁性媒体中に粒径がほぼ
均一な球形状のEA粒子が分散されたものであるので
(不定形粒子を用いない)、一定電圧下では上述した反
発力や引力が変動せず、しかも、EA粒子間に働く弾性
力と電極板の慣性力のバランスにも変動が生じにくい。
上記実施例においては、鎖状体は「く」の字状に撓むも
のとされているが、この他に、例えば図12の(a)に
示すようなS字型、あるいは図12の(b)に示すよう
なW字型に撓む場合もあると考えられる。
【0024】 また、上記実施例においては、電界の印
加によってEA粒子(無機・有機複合粒子)2が1列の
鎖状体6を形成して平行に配列する現象について説明し
たが、EA粒子2の数が数重量%を越えて多くなると、
1列の鎖状体6ではなく、鎖状体6が複数列相互に接合
して、図13の(a)の如くカラム19を構成して配列
するようになる。このカラム19においては左右の鎖状
体のEA粒子2は1つずつずれて互い違いに隣接する。
これについて本発明者らは、図13の(b)に示すごと
く、+極部分と−極部分に誘電分極しているEA粒子2
が互い違いに隣接して+極部分と−極部分とが引き合っ
て配列した方がエネルギー的に安定なためであると推定
している。
【0025】 次に、本発明の懸垂式吸音体の一実施例
について説明する。図1はこの懸垂式吸音装置の縦断面
図、図2は電圧印加手段の操作パネルを示す構成図、図
3は懸垂式吸音装置の斜視図である。図1および図3に
示すように、この懸垂式吸音装置は、図7に示した音波
吸収制御装置の原理を用いたものであって、内側電極2
6は有底円筒形状を有し、その上端面の中央部には後述
する吊下げ金具24が固着されている。内側電極26は
軽量化のために上記のような筒状のものが好ましいが、
円柱形状であってもよい。外側電極28は、内側電極2
6の外周面を隙間をおいて包囲するような大きさの有底
円筒形状を有し、この外側電極28の外周面にはPET
(ポリエチレンテレフタレート)フィルム27が被覆さ
れている。組立前に、外側電極28が例えば上板、下板
および胴部に分かれているときに、内側電極26を前記
胴部に入れ、その後に、前記上板および下板を前記胴部
に装着する。外側電極28は内側電極26に対して水平
面内のあらゆる方向や上下方向に移動自在である。
【0026】 内側電極26と外側電極28との間の前
記隙間には、上述した電気絶縁性媒体1中に固体粒子で
あるEA粒子2が均一に分散されてなるENC流体組成
物が収容されている。吊下げ金具24は外側電極28の
上部およびPETフィルム27を貫通しているが、吊下
げ金具24と外側電極28との間から前記ENC流体組
成物が外側電極28外に漏れないように、吊下げ金具2
4と、外側電極28の上部およびPETフィルム27の
間にはシール部材25がはめ込まれている。
【0027】 図1および図2に示すように、内側電極
26および外側電極28には可変電源29により電圧が
印加されるように構成され、この印加電圧のオン/オフ
は、可変電源29に直列に接続されたスイッチ30によ
り行われる。前記可変電源29および前記スイッチ30
により電圧印加手段33が構成されている。また、印加
電圧値の調整は例えば回転式の電圧調節つまみ31によ
り容易に行うことができる。符号34は操作パネルを示
し、この操作パネル34は上記スイッチ30や電圧調節
つまみ31やその目盛り32を備え、例えば室内の人が
操作しやすいように壁の適当な高さの場所に設けられ
る。
【0028】 図1乃至図3に示したように、本発明
の懸垂式吸音装置は吊下げ金具24を介して、騒音を発
する機械あるいは装置の例えば上方に天井より吊下げ
る。不使用時には、スイッチ30をオフにして内側電極
26および外側電極28間には電圧を印加しない。前記
騒音を吸音したい場合には、スイッチ30をオンにする
とともに、電圧調節つまみ31により、吸音したい音波
の周波数に合わせて印加電圧を設定する。また、上述し
た音波吸収制御装置の作用と同様に、外側電極28に音
波が入射することにより、外側電極28は振動する。フ
ィルム27により外側電極28の振動追従性が高い。そ
して、外側電極28に入射した音波に、鎖状体を含むE
NC流体組成物と電極板とが共振する。このような鎖状
体に振動を与える音波周波数は、鎖状体の持つ特性振動
数(鎖状体の弾性と外側電極の慣性とのバランスからな
る、いわゆる固有振動数と推定される)によって定ま
り、その特性振動数と一致した周波数の音波が外側電極
に入射すると、鎖状体は共振してその音波を吸収し、他
の周波数の音波は反射されることになる。そして、外側
電極が有底円筒体なので、平板状のものと比較して、ど
の方向から入射される音波をもすべて有効に吸音され
る。
【0029】 本発明の懸垂式吸音装置を単に騒音の
吸収に用いるのみならず、懸垂式吸音装置をリスニング
ルームあるいは音楽室(オーディオルーム)等の室のコ
ーナー部分に設け、このコーナー部にこもりやすい低周
波域の音(こもり音)を吸収して響きすぎを調整し、適
切な音響特性の室とすることができる。また、大きさの
異なる個々の室においてもそれぞれ適正な音響特性を設
定することもできる。
【0030】 上記実施例においては、外側電極および
内側電極間に直接ENC流体組成物を収容したものを示
したが、これに限らず、ENC流体組成物を十分に含浸
させた多孔質体を外側電極および内側電極間に収容して
もよい。この場合、多孔質体は、EA効果を損なわない
ために、連続気泡を有するものが好ましい。また、上記
実施例では、軽量化のために内側電極として有底円筒形
状のものを用いたが、これに限られず、円柱形状の内側
電極を用いてもよい。さらに、内側電極として中空球形
状あるいは中実球形状のものを用い、これに対応して、
外側電極として中空球形状のものを用いることにより、
全ての方向の音波を吸収できる。
【0031】本発明のENC流体組成物に用いる電気絶
縁性媒体1としては、例えば、塩化ジフェニル、セバチ
ン酸ブチル、芳香族ポリカルボン酸高級アルコールエス
テル、ハロフェニルアルキルエーテル、トランス油、塩
化パラフィン、弗素系オイル、またはシリコーン系オイ
ルやフルオロシリコーン系オイルなど、電気絶縁性及び
電気絶縁破壊強度が高く、化学的に安定でかつEA粒子
を安定に分散させ得るものであればいずれの流体または
これらの混合物も使用可能である。この電気絶縁性媒体
1は、目的に応じて着色することができる。着色する場
合は、選択された電気絶縁性媒体に可溶であってその電
気的特性を損なわない種類と量の油溶性染料または分散
性染料を用いることが好ましい。電気絶縁性媒体1に
は、この他に分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防
止剤、安定剤などが含まれていてもよい。
【0032】この電気絶縁性媒体1の動粘度は、1cS
tないし30000cStの範囲内であることが好まし
い。動粘度が1cStより小さいと、流体組成物の貯蔵
安定性の面で不足を生じ、動粘度が30000cStよ
り大きいと、EA粒子の均一分散が困難になるととも
に、調整時に気泡を巻き込み、その気泡が抜けにくくな
り、取り扱いに支障を来すので好ましくない。この観点
から、動粘度は10cStないし1000cStの範囲
内、特に10cStないし100cStの範囲内である
ことが好ましい。もちろん、電気絶縁性媒体1の動粘度
は、温度により変化し、この温度影響を印加電圧によっ
て抑制することができる。
【0033】本発明に用いられるEA粒子2は、EA効
果を有する無機・有機複合粒子であれば、元素、有機化
合物、または無機化合物、またはそれらの混合物など、
いずれの素材も使用可能である。その例としては例えば
無機イオン交換体、金属酸化物、シリカゲル、電気半導
体性無機物、カーボンブラックなどの粒子、およびこれ
らを表層として有する粒子を挙げることができる。しか
し、このEA粒子2は、上記実施例に示したように、有
機高分子化合物からなる芯体3と、EA無機物の粒子4
からなる表層5とによって形成された無機・有機複合粒
子であることが特に好ましい。この無機・有機複合粒子
は、比較的比重が重いEA無機物の粒子4からなる表層
5が比較的比重の軽い有機高分子化合物である芯体3に
担持されていて、その粒子全体の比重を電気絶縁性媒体
1に対して近似するように調節できる。従ってこれを電
気絶縁性媒体1に分散して得られたENC流体組成物
は、貯蔵安定性に優れたものとなる。
【0034】EA粒子(無機・有機複合粒子)2の芯体
3として使用し得る有機高分子化合物の例としては、ポ
リ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エ
ステル−スチレン共重合物、ポリスチレン、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、AB
S樹脂、ナイロン、ポリビニルブチレート、アイオノマ
ー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、
ポリカーボネート樹脂などの1種または2種以上の混合
物または共重合物を挙げることができる。
【0035】表層5を形成するEA無機物である粒子4
としては種々のものが用い得るが、好ましい例としては
無機イオン交換体とシリカゲルと電気半導体性無機物と
を挙げることができる。これらの粒子4を用いて有機高
分子化合物からなる芯体3の上に表層5を形成すると
き、得られた無機・有機複合粒子は有用なEA粒子2と
なる。
【0036】上記無機イオン交換体の例としては(1)
多価金属の水酸化物、(2)ハイドロタルサイト類、
(3)多価金属の酸性塩、(4)ヒドロキシアパタイ
ト、(5)ナシコン型化合物、(6)粘土鉱物、(7)
チタン酸カリウム類、(8)ヘテロポリ酸塩、および
(9)不溶性フェロシアン化物を挙げることができる。
【0037】以下に、それぞれの無機イオン交換体につ
いて詳しく説明する。 (1)多価金属の水酸化物。 これらの化合物は、一般式MOx(OH)y(Mは多価金
属であり、xは零以上の数であり、yは正数である)で
表され、例えば、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、
水酸化ビスマス、水酸化錫、水酸化鉛、水酸化アルミニ
ウム、水酸化タンタル、水酸化ニオブ、水酸化モリブデ
ン、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、および水酸
化鉄などである。ここで、例えば水酸化チタンとは含水
酸化チタン(別名メタチタン酸またはβチタン酸、Ti
O(OH)2)および水酸化チタン(別名オルソチタン
酸またはαチタン酸、Ti(OH)4)の双方を含むも
のであり、他の化合物についても同様である。
【0038】(2)ハイドロタルサイト類。 これらの化合物は、一般式M13Al6(OH)43(C
O)3・12H2O(Mは二価の金属である)で表され、
例えば二価の金属MがMg、CaまたはNiなどであ
る。 (3)多価金属の酸性塩。 これらは例えばリン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リ
ン酸錫、リン酸セリウム、リン酸クロム、ヒ酸ジルコニ
ウム、ヒ酸チタン、ヒ酸錫、ヒ酸セリウム、アンチモン
酸チタン、アンチモン酸錫、アンチモン酸タンタル、ア
ンチモン酸ニオブ、タングステン酸ジルコニウム、バナ
ジン酸チタン、モリブデン酸ジルコニウム、セレン酸チ
タンおよびモリブデン酸錫などである。
【0039】(4)ヒドロキシアパタイト。 これらは例えばカルシウムアパタイト、鉛アパタイト、
ストロンチウムアパタイト、カドミウムアパタイトなど
である。 (5)ナシコン型化合物。 これらには例えば(H3O)Zr2(PO43のようなも
のが含まれるが、本発明においてはH3OをNaと置換
したナシコン型化合物も使用できる。 (6)粘土鉱物。 これらは例えばモンモリロナイト、セピオライト、ベン
トナイトなどであり、特にセピオライトが好ましい。
【0040】(7)チタン酸カリウム類。 これらは一般式aK2O・bTiO2・nH2O(aは0
<a≦1を満たす正数であり、bは1≦b≦6を満たす
正数であり、nは正数である)で表され、例えばK2
TiO2・2H2O、K2O・2TiO2・2H2O、0.
5K2O・TiO2・2H2O、及びK2O・2.5TiO
2・2H2Oなどである。なお、上記化合物のうち、aま
たはbが整数でない化合物はaまたはbが適当な整数で
ある化合物を酸処理し、KとHとを置換することによっ
て容易に合成される。
【0041】(8)ヘテロポリ酸塩。 これらは一般式H3AE1240・nH2O(Aはリン、ヒ
素、ゲルマニウム、またはケイ素であり、Eはモリブデ
ン、タングステン、またはバナジウムであり、nは正数
である)で表され、例えばモリブドリン酸アンモニウ
ム、およびタングストリン酸アンモニウムである。 (9)不溶性フェロシアン化物。 これらは次の一般式で表される化合物である。Mb-pxa
A[E(CN)6](Mはアルカリ金属または水素イオ
ン、Aは亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、カ
ドミウム、鉄(III)またはチタンなどの重金属イオ
ン、Eは鉄(II)、鉄(III)、またはコバルト
(II)などであり、bは4または3であり、aはAの
価数であり、pは0〜b/aの正数である。) これらには例えば、Cs2Zn[Fe(CN)6]および
2Co[Fe(CN)6]などの不溶性フェロシアン化
合物が含まれる。
【0042】上記(1)〜(6)の無機イオン交換体は
いずれもOH基を有しており、これらの無機イオン交換
体のイオン交換サイトに存在するイオンの一部または全
部を別のイオンに置換したもの(以下、置換型無機イオ
ン交換体という)も、本発明における無機イオン交換体
に含まれるものである。即ち、前述の無機イオン交換体
をR−M1(M1は、イオン交換サイトのイオン種を表
す)と表すと、R−M1におけるM1の一部または全部
を、下記のイオン交換反応によって、M1とは異なるイ
オン種M2に置換した置換型無機イオン交換体もまた、
本発明における無機イオン交換体である。 xR−M1+yM2→Rx−(M2)y+xM1 (ここでx、yはそれぞれイオン種M2、M1の価数を表
す)。M1はOH基を有する無機イオン交換体の種類に
より異なるが、無機イオン交換体が陽イオン交換性を示
すものでは、一般にM1はH+であり、この場合のM
アルカリ金属、アルカリ土類金属、多価典型金属、遷移
金属または希土類金属等、H以外の金属イオンのいず
れか任意のものである。OH基を有する無機イオン交換
体が陰イオン交換性を示すものでは、M1は一般にOH-
であり、その場合M2は例えばI、Cl、SCN、N
2、Br、F、CH3COO、SO4またはCrO4など
や錯イオンなど、OH-以外の陰イオン全般の内の任意
のものである。
【0043】また、高温加熱処理によりOH基を一旦失
ってはいるが、水に浸漬させるなどの操作によって再び
OH基を有するようになる無機イオン交換体について
は、その高温加熱処理後の無機イオン交換体なども本発
明に使用できる無機イオン交換体の一種であり、その具
体例としてはナシコン型化合物、例えば(H3O)Zr2
(PO43の加熱により得られるHZr2(PO43
ハイドロタルサイトの高温 加熱処理物(500〜70
0℃で加熱処理したもの)などがある。これらの無機イ
オン交換体は一種類だけではなく、多種類を同時に表層
として用いることもできる。なお、上記の無機イオン交
換体として、多価金属の水酸化物、及び多価金属の酸性
塩を用いることが特に好ましい。
【0044】上記EA粒子(無機・有機複合粒子)2の
表層5として使用し得る電気半導体性無機物の例は、電
気伝導度が、室温にて103〜10-11Ω-1/cmの金属
酸化物、金属水酸化物、金属酸化水酸化物、無機イオン
交換体、またはこれらの少なくともいずれか1種に金属
ドーピングしたもの、もしくは金属ドーピングの有無に
拘わらず、これらの少なくともいずれか1種を他の支持
体上に電気半導体層として施したものなどである。
【0045】好ましい電気半導体性無機物の例を以下に
示す。 (A)金属酸化物:例えばSnO2 、アモルファス型二
酸化チタン(出光石油化学社製)などである。 (B)金属水酸化物:例えば水酸化チタン、水酸化ニオ
ブなどである。ここで水酸化チタンとは、含水酸化チタ
ン(石原産業社製)、メタチタン酸(別名βチタン酸、
TiO(OH)2 )およびオルソチタン酸(別名αチタ
ン酸、Ti(OH)4 )を含むものである。 (C)金属酸化水酸化物:この例としては例えばFeO
(OH)(ゲーサイト)などを挙げることができる。 (D)多価金属の水酸化物:無機イオン交換体(1)と
同等。 (E)ハイドロタルサイト類:無機イオン交換体(2)
と同等。 (F)多価金属の酸性塩:無機イオン交換体(3)と同
等。 (G)ヒドロキシアパタイト:無機イオン交換体(4)
と同等。 (H)ナシコン型化合物:無機イオン交換体(5)と同
等。 (I)粘土鉱物:無機イオン交換体(6)と同等。 (J)チタン酸カリウム類:無機イオン交換体(7)と
同等。 (K)ヘテロポリ酸塩:無機イオン交換体(8)と同
等。 (L)不溶性フェロシアン化物:無機イオン交換体
(9)と同等。 (M)金属ドーピング電界配列性無機物:これは上記の
電気半導体性無機物(A)〜(L)の電気伝導度を上げ
るために、アンチモン(Sb)などの金属をER無機物
にドーピングしたものであって、例としてはアンチモン
(Sb)ドーピング酸化錫(SnO2 )などを挙げるこ
とができる。 (N)他の支持体上に電気半導体層として電界配列性無
機物を施したもの:例えば支持体として酸化チタン、シ
リカ、アルミナ、シリカ−アルミナなどの無機物粒子、
またはポリエチレン、ポリプロピレンなどの有機高分子
粒子を用い、これに電気半導体層としてアンチモン(S
b)ドーピング酸化錫(SnO2 )を施したものなどを
挙げることができる。このように他の支持体上に電界配
列性無機物が施された粒子も、全体として電界配列性無
機物と見なすことができる。これらの電界配列性無機物
は、1種類だけでなく、2種類またはそれ以上を同時に
表層として用いることもできる。
【0046】EA粒子(無機・有機複合粒子)2は、種
々な方法によって製造することができる。例えば、有機
高分子化合物からなる粒子状の芯体3と微粒子状の粒子
4とをジェット気流によって搬送し、衝突させて製造す
る方法がある。この場合は粒子状の芯体3の表面に粒子
4の微粒子が高速度で衝突し、固着して表層5を形成す
る。また別の製法例としては、粒子状の芯体3を気体中
に浮遊させ、粒子4の溶液を霧状にしてその表面に噴霧
する方法がある。この場合はその溶液が芯体3の表面に
付着し乾燥することによって表層5が形成される。
【0047】EA粒子(無機・有機複合粒子)2を製造
する特に好ましい製法は、芯体3と同時に表層5を形成
する方法である。この方法は、例えば、芯体3を形成す
る有機高分子化合物のモノマーを重合媒体中で乳化重
合、懸濁重合または分散重合するに際して、微粒子状と
した電界配列性無機物である粒子4を上記モノマー中、
または重合媒体中に存在させるというものである。重合
媒体としては水が好ましいが、水と水溶性有機溶媒との
混合物を使用することもでき、また有機系の貧溶媒を使
用することもできる。この方法によれば、重合媒体の中
でモノマーが重合して芯体粒子3を形成すると同時に、
微粒子状のEA無機物の粒子4が芯体3の表面に層状に
配向してこれを被覆し、表層5を形成する。
【0048】乳化重合または懸濁重合によってEA粒子
(無機・有機複合粒子)を製造する場合には、モノマー
の疎水性の性質と電界配列性無機物の親水性の性質を組
み合わせることによって、電界配列性無機物の粒子4の
大部分を芯体3の表面に付着させることができる。この
芯体3と表層5との同時形成方法によれば、有機高分子
化合物からなる芯体3の表面にEA無機物の粒子4が緻
密かつ強固に接着し、堅牢なEA粒子(無機・有機複合
粒子)2が形成される。
【0049】本発明に使用するEA粒子2の形状は必ず
しも球形であることを要しないが、粒子状の芯体3が調
節された乳化・懸濁重合方法によって製造された場合
は、得られるEA粒子2の形状はほぼ球形となる。EA
粒子2の粒径は特に限定されるものではないが、0.1
μmないし500μm、特に5μmないし200μmの
範囲内とすることが好ましい。この際の微粒子状のEA
無機物である粒子4の粒径は特に限定されるものではな
いが、好ましくは0.005μmないし100μm、さ
らに好ましくは0.01μmないし10μmの範囲内と
する。
【0050】EA粒子(無機・有機複合粒子)2におい
て、表層5を形成するEA無機物である粒子4と芯体3
を形成する有機高分子化合物の重量比は特に限定される
ものではないが、保存安定性の高いENC流体組成物を
得るためには、EA無機物の粒子4と有機高分子化合物
の芯体3の合計重量に対して粒子4が1重量%ないし6
0重量%の範囲内、特に4重量%ないし30重量%の範
囲内とすることが好ましい。この芯体3の割合が1重量
%未満では、得られたEA粒子2のEA特性が不十分と
なり、60重量%を超えると、EA2粒子の比重が過大
となって保存安定性を損なう惧れがある。また、本発明
のENC流体組成物は、上記のEA粒子2を、必要なら
分散剤、他の成分とともに電気絶縁性媒体中に均一に攪
拌混合して製造することができる。この攪拌機として
は、液状分散媒に固体粒子を分散させるために通常使用
されるものがいずれも使用できる。電気絶縁性媒体中1
におけるEA粒子2の含有率は、特に限定されるもので
はないが、0.5〜75重量%、特に5〜50重量%で
あることが好ましい。その含有率が1%未満では充分な
EA効果が得られず、75%以上では電圧を印加しない
ときのENC流体組成物の初期粘度が過大となって使用
が困難になる。
【0051】上記の各種方法、特に芯体3と表層5とを
同時に形成する方法によって製造されたEA粒子2は、
その表層5の全部または一部分が有機高分子物質や、製
造工程で使用された分散剤、乳化剤その他の添加物質の
薄膜で覆われていて、電界配列性粒子としての電界配列
効果が充分に発揮されない場合がある。この不活性物質
の薄膜は粒子表面を研磨することによって容易に除去す
ることができる。従って芯体3と表層5とを同時に形成
する場合には、その表面を研磨することが好ましい。
【0052】この粒子表面の研磨は、種々な方法で行う
ことができる。例えば、無機・有機複合粒子であるEA
粒子2を水などの分散媒体中に分散させて、これを攪拌
する方法によって行うことができる。この際、分散媒体
中に砂粒やボールなどの研磨材を混入してEA粒子2と
共に攪拌する方法、あるいは研削砥石を用いて攪拌する
方法などによって行うこともできる。例えばまた、分散
媒体を使用せず、EA粒子2と上記のような研磨材また
は研削砥石とを用いて乾式で攪拌して行うこともでき
る。
【0053】さらに好ましい研磨方法は、EA粒子2を
ジェット気流などによって気流攪拌する方法である。こ
れは気相中で粒子自体を相互に激しく衝突させて研磨す
る方法であり、他の研磨材を必要とせず、研磨済みの粒
子を分級によって容易に分離し得る点で好ましい方法で
ある。上記のジェット気流攪拌においては、それに用い
られる装置の種類、攪拌速度、EA粒子2の材質などに
より研磨条件を選定する必要があるが、一般的には60
00rpmの攪拌速度で0.5min〜15min程度
ジェット気流攪拌することが好ましい。
【0054】本発明のENC流体組成物は、上記のEA
粒子2を、必要なら分散剤など他の成分と共に電気絶縁
性媒体1中に均一に攪拌混合し分散させて製造すること
ができる。この攪拌機としては、液状分散媒に固体粒子
を分散させるために通常使用されるものがいずれも使用
できる。
【0055】
【発明の効果】本発明は、以上説明したとおりに構成さ
れているので、以下に記載するような効果を奏する。懸
垂式吸音装置を、騒音を発する機械あるいは装置の例え
ば上方に天井より吊下げ、音波の吸収したい成分の振動
数に合わせて、電界配列効果を有する流体組成物の特性
振動数を設定することにより、流体組成物を変更するこ
となく、低周波域の振動数の音波をも吸収できるととも
に、外側電極が有底円筒形状であるので、どの方向から
入射してくる音波を有効に吸音できる。結果的に、軽量
でコストの安く、かつ取扱の容易な懸垂式吸音装置を提
供できる。また、懸垂式吸音装置をリスニングルームあ
るいは音楽室等の室のコーナー部に設け、このコーナー
部のこもり音を除去して響きすぎを調整して適切な音響
特性の室とすることができる。さらに、大きさの異なる
個々の室においてもそれぞれ適正な音響特性を設定する
こともできる。室の音響特性を個人個人の好みに設定す
ることができる。内側電極を有底円筒形状のものとする
ことにより、円柱形状のものと比較して軽量となり、吸
音装置の軽量化が達成される。また、内側電極として中
空球形状あるいは中実球形状のものを用い、これに対応
して、外側電極として中空球形状のものを用いることに
より、全ての方向から入射してくる音波を吸収できる。
さらに、外側電極の外周面にフィルムを貼り付けること
により、外側電極の音波入射による振動追従性が高ま
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の懸垂式吸音装置の一実施例の縦断面
図である。
【図2】 電圧印加手段の操作パネルを示す図である。
【図3】 本発明の懸垂式吸音装置の一実施例の斜視図
である。
【図4】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物の一実
施例を示す断面図である。
【図5】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物の電源
オフ時の態様を示す断面図である。
【図6】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物の電源
オン時の態様を示す断面図である。
【図7】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物を備え
た音波吸収制御装置(音波制振装置)の断面図である。
【図8】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物を備え
た音波吸収制御装置において、音波が入射されて共振し
ている状態を示す断面図である。
【図9】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物を備え
た音波吸収制御(音波制振)装置に、音波が入射されて
一方の電極板が振動している状態を示す断面図である。
【図10】 電界配列性粒子分散系について電界配列特
性に及ぼす電界強度の影響を測定した結果を示すグラフ
である。
【図11】 振動系の等価回路を示す図である。
【図12】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物を備
えた音波吸収制御装置において、鎖状体の撓み状態の別
な例を示す図である。
【図13】 電気感応型音波吸収制御用流体組成物を備
えた音波吸収制御装置において、鎖状体が複数列相互に
接合してなるカラムを示す図である。
【符号の説明】
1…電気絶縁性媒体、2…電界配列性粒子(EA粒子、
固体粒子、無機・有機複合粒子)、3…芯体(有機高分
子化合物)、4…粒子(電界配列性無機物の粒子)、5
…表層、6…鎖状体(粒子鎖)、7,8…電極板、9…
電源、10…スイッチ、11…入射音波、12…反射音
波、13…電源、14…スイッチ、15…シール部材、
17,18…電極板、17a…PET(ポリエチレンテ
レフタレート)フィルム、19…カラム、20,21…
鎖状体(粒子鎖)、22…コイルばね、23…ダッシュ
ポット、24…吊下げ金具、25…シール部材、26…
内側電極、27…PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)フィルム、28…外側電極、29…可変電源、30
…スイッチ、31…電圧調節つまみ、32…目盛り、3
3…電圧印加手段、34…操作パネル。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G10K 11/16 G10K 11/16 F (72)発明者 後藤 守孝 東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 古市 健二 東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 大坪 泰文 千葉県千葉市稲毛区小仲台9丁目21番1号 206

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円柱形状の内側電極(26)と、前記内
    側電極(26)を隙間をおいて包囲する有底円筒形状の
    外側電極(28)と、前記内側電極(26)を吊下げる
    ための吊下げ具(24)と、前記内側電極(26)と前
    記外側電極(28)との間の前記隙間に収容された、電
    界配列効果を有する固体粒子(2)を電気絶縁性媒体
    (1)中に含有してなる電気感応型音波吸収制御用流体
    組成物と、前記内側電極(26)および前記外側電極
    (28)間に電圧を印加し、かつ印加電圧を可変とする
    電圧印加手段(33)と、前記印加電圧を調整するため
    の電圧調節つまみ(31)と、を具備して構成されたこ
    とを特徴とする懸垂式吸音装置。
  2. 【請求項2】 前記内側電極(26)として円柱形状の
    ものを用いる代りに、有底円筒形状のものを用いる請求
    項1に記載の懸垂式吸音装置。
  3. 【請求項3】 前記内側電極(26)として円柱形状の
    ものを用いる代りに、中空球形状あるいは中実球形状の
    ものを用い、外側電極(28)として中空球形状のもの
    を用いる請求項1に記載の懸垂式吸音装置。
  4. 【請求項4】 前記外側電極(28)の外表面にフィル
    ム(27)が貼り付けられている請求項1乃至3のいず
    れか1項に記載の懸垂式吸音装置。
  5. 【請求項5】 前記電圧印加手段(33)は、前記内側
    電極(26)と前記外側電極(28)にわたって接続さ
    れた可変電源(29)と、前記可変電源(29)に直列
    に接続されたスイッチ(30)とから構成されている請
    求項1乃至4のいずれか1項に記載の懸垂式吸音装置。
JP6262968A 1994-10-26 1994-10-26 懸垂式吸音装置 Pending JPH08123441A (ja)

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