JPH08118165A - シリンダーへのピストン挿入治具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 作業の簡易化、単純化ができ、作業者の経験
に左右されず、ピストンのシリンダへの挿入作業時間を
短縮でき、ピストンリングがリング溝に装着されたピス
トンの支持力にバラツキを生じさせることなくピストン
をシリンダーに確実に挿入することができるシリンダー
へのピストン挿入治具の提供。 【構成】 シリンダライナーの内径よりもわずかに小さ
い内径の環状ガイド部材は中ガイド部材と左右に拡開す
る２つの拡開ガイド部材からなり、左右拡開ガイド部材
に鋏状締め付け部材が取り付けられており、各拡開ガイ
ド部材の一端と中ガイド部材の両端は回動自在に連結さ
れており、各ガイド部材の円周方向の中間部内周端部に
ピストン頭部に係止する部材が設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エンジンの組立時に使
用するシリンダーへのピストン挿入治具の改良に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】ピストンリングがリング溝に装着された
ピストンをシリンダに挿入する治具については、例え
ば、特開昭４８ー２７１２１号公報に、「半径方向に張
力を有する欠円環挿入板２の一端に保持具取付板３が設
けられ、該保持具取付板３に保持具４が取り付けられ挿
入時に治具を保持する保持具とする。又、欠円環挿入板
２の他の一端には案内板５が設けられ、該案内板５には
案内孔６があり保持具取付板３に取り付けられた円弧状
を有する案内棒７が通っている。そして案内棒７にはカ
ム保持具８がボルト９によって案内棒７の上の任意の位
置に固定できるカム保持具８が取り付けられている。カ
ム保持具８には両者よって略Ｌ字状をなしたカム10、及
び作動軸11がボルト12によって回転自在に取り付けられ
ている。更に欠円環挿入板２にはピストンストッパー13
が任意の上部に取り付けられ作業時に於ける位置設定を
容易ならしめている。」ことが記載されている。

【０００３】また、例えば実願昭４６ー５５２２０号
（実開昭４８ー１２４０２号）のマイクロフィルムには
「シリンダボアにほぼ等しい曲率を有しかつピストンリ
ング溝の巾よりも長い巾を有する締環部を対向配置し、
一端側をピンによって回転自在に連結し、他端側に連接
した握持部によって前記締環部を開閉し、ピストンリン
グを組込んだピストンリングをシリンダブロックのシリ
ンダボアに容易嵌挿し得るようにしたピストン組込
具。」が記載されている。

【０００４】

【発明が解決しようとしている課題】上記特開昭４８ー
２７１２１号公報に記載されているものは、ピストンを
シリンダに挿入する場合、上記のピストンのシリンダへ
の挿入治具を用いてピストンリングがリング溝に挿入さ
れたピストンを欠円環挿入板の内側に入れ、右手にて保
持具をもって保持し、左手にて作動軸をもち作動軸を矢
印の方向に作動させ、更にカム面が案内板を動かし、欠
円環挿入板を閉じさせピストンリングの合口を閉じた状
態にさせ、ピストンヘッドをたたいてシリンダへ挿入す
るものであり、その構造が複雑で、またその取扱い操作
が煩雑なものである。

【０００５】そして、前記実願昭４６ー５５２２０号
（実開昭４８ー１２４０２号）のマイクロフィルムに記
載されているものは、その第２図に示されているよう
に、ピストンリング１３を装着したピストン１２を締環
部２、３によって挟持した後、シリンダブロック１１の
シリンダボア上に位置させ、しかる後、手動または自動
の適当な手段によってピストン１２を下方に押し下げ、
シリンダボアに嵌着するというものである。

【０００６】ところで、ピストンリングは自由時の合い
口間隙がかなり大きく、これを押し縮める力であるリン
グ張力により、シリンダに挿入する時の接触面圧を得て
いるが、上記のマイクロフィルムに記載されているもの
は、ピストン組込具の締環部の内径が、シリンダボアの
径と同程度であるので、回動ピンによって２分割された
締環部の一つずつは半円形となるため、ピストン組込具
の内径よりも大きな径のピストンリングが締環部の内面
に均等な締め付け力で挟持されることがむずかしく、締
め付け力或いはピストンの挿入力は、作業者の経験に頼
っており、そのために、ピストンリングをピストンのリ
ング溝に均等に嵌入させつつ、ピストン組込具を操作し
てピストンをシリンダに挿入する作業に要する時間とそ
の作業の確実性が作業者により大きくバラツくという問
題を有している。

【０００７】本発明は、作業の簡易化、単純化ができ、
作業者の経験に左右されず、ピストンのシリンダへの挿
入作業時間を短縮することができ、ピストンリングがリ
ング溝に装着されたピストンの支持力にバラツキを生じ
させることなくピストンをシリンダーに確実に挿入する
ことができるシリンダーへのピストン挿入治具の提供を
目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明に係るシリンダー
へのピストン挿入治具は、シリンダライナーの内径より
もわずかに小さい内径の環状ガイド部材は中ガイド部材
と左右に拡開する２つの拡開ガイド部材からなり、左右
拡開ガイド部材に鋏状締め付け部材が取り付けられてお
り、各拡開ガイド部材の一端と中ガイド部材の両端は回
動自在に連結されており、各ガイド部材の円周方向の中
間部内周端部にピストン頭部に係止する部材が設けられ
ているものである。

【０００９】

【作用】中ガイド部材、左右拡開ガイド部材及び鋏状締
め付け部材を開いた状態とし、ピストン頭部に中ガイド
部材の係止部材を押し当てる。

【００１０】ピストン頭部に中ガイド部材の係止部材を
押し当てた後、左右拡開ガイド部材を閉じる。この際、
左右拡開ガイド部材の各係止部がピストン頭部に均等に
当たるようにする。

【００１１】各ガイド部材の各係止部材がピストン頭部
に均等に当たっていることを確認した後、さらに左右拡
開ガイド部材の各係止部材がピストン頭部に当接するよ
うに鋏状締め付け部材を締め、締め付け部材の２つの取
付部が衝合する垂直面が完全に閉じるまでさらに鋏状締
め付け部材に力を加える。

【００１２】 左右拡開ガイド部材をピスト
ンの外周に押し当てた状態で、つまり、左右拡開ガイド
部材の各係止部がピストン頭部に当接するように鋏状締
め付け部材の締めの状態を保持しつつ、環状ガイド部材
の下面をシリンダライナに押し当て、ピストンの頭部を
押してピストンリングを圧縮した状態でピストンをシリ
ンダーライナー内に挿入する。

【００１３】図４に示すように、シリンダーライナの内
径よりも環状ガイド部材の内径が小さいのでピストンの
リング溝にピストンリングを圧縮嵌入しつつ、ピストン
をスムーズにシリンダライナ内に挿入することができ
る。

【００１４】環状ガイド部材の中ガイド部材、左拡開ガ
イド部材及び右拡開ガイド部材をピストンの外周に押し
当て、鋏状締め付け部材の把持部を握り締めて環状ガイ
ド部材を締め付けるので、均等な締め付け力がピストン
リングに加えられる。なお、この締付け作業は片手でも
することができる。

【００１５】中ガイド部材と左拡開ガイド部材と右拡開
ガイド部材の３つの回動ピンによって回動自在にされて
いるので、これを換言すれば環状ガイド部材は３つに分
割されているので、ガイド部材の一つずつは小さな動き
で、必要な開度を得ることができ、いわゆる３点支持と
なり、ピストンリングを締付ける際３方向から同時に均
等な力を加えることができ、ピストンリングをほぼ円形
になるように縮めることが容易にできる。

【００１６】環状ガイド部材をピストンの外周に当て、
環状ガイド部材の３つのガイド部材を鋏状締め付け部材
を閉じるだけでピストンリングがリング溝に嵌入された
ピストンをシリンダへ挿入できるので、経験の有無に関
わらず、確実に作業を行える。

【００１７】以上要するに、このシリンダーへのピスト
ン挿入治具を使用すると、作業の簡易化、単純化が可能
となり、作業者の経験に左右されず、短い挿入作業時間
でピストンリングをガイドしつつピストンをシリンダー
に確実に挿入することができる。

【００１８】

【実施例】本発明に係るシリンダーへのピストン挿入治
具の実施例について図を参照して説明する。図１はシリ
ンダーへのピストン挿入治具の斜視図、図２はシリンダ
ーへのピストン挿入治具を閉じた状態を実線で示し、拡
開状態と２点鎖線で示す正面図、図３は一部を破断して
シリンダーへのピストン挿入治具の要部を示す側面図、
図４はピストンをシリンダーライナーに挿入する状況を
示す側断面図、そして図５は本発明に係るシリンダーへ
のピストン挿入治具の作動原理を説明する平面図であ
る。

【００１９】シリンダライナー１７の内径よりもわずか
に小さい内径を有する環状ガイド部材１は中ガイド部材
４と左に拡開する左拡開ガイド部材２と右に拡開する右
拡開ガイド部材３とからなり、左拡開ガイド部材２と右
拡開ガイド部材３の衝合する部分に締め付け部材取付部
９、９が設けられており、締め付け部材取付部９、９に
は、鋏状締め付け部材８の２つの先端部が回動ピン１
８、１８により左右に動くようにボルト１０、１０、ナ
ット１１、１１を介して取り付けられている。なお、１
３、１３は鋏状締め付け部材８の把持部である。

【００２０】各拡開ガイド部材２、３の一端と中ガイド
部材４の両端には、ピン取付部６、６にピン７により回
動自在に連結されており、各ガイド部材２、３、４の円
周方向の中間部内周端部にピストン頭部１５の凸状の係
止部材５、５、５が設けられている。

【００２１】本発明に係るシリンダーへのピストン挿入
治具の実施例の使用の態様について以下に説明する。各
ガイド部材２、３、４と鋏状締め付け部材８からなるピ
ストン挿入治具で、鋏状締め付け部材８を開いた状態の
時に、ピストン頭部１５を中ガイド部材４の係止部材５
に押し当てる。

【００２２】左右拡開ガイド部材２、３を開き、ピスト
ン頭部１５を中ガイド部材４の係止部材５に押し当てた
後、左右拡開ガイド部材２、３を閉じる。この際、左右
拡開ガイド部材２、３の係止部５、５がピストン頭部１
５に当たるようにする。

【００２３】各ガイド部材２、３、４の係止部材５、
５、５がピストン頭部１５に均等に当たっていることを
確認したあと、さらに左右拡開ガイド部材２、３の係止
部５、５もピストン頭部１５に当接するように鋏状締め
付け部材８を締める。２つの締め付け部材取付部が互い
に衝合する面が完全に閉じるまでさらに力を加える。

【００２４】 左右拡開ガイド部材２、３の
係止部５、５もピストン頭部１５に当接するように鋏状
締め付け部材８を締める状態を保持したままを押し当て
た状態で、環状ガイド部材１の下面をシリンダーライナ
ー１７に押し当て、ピストン１４の頭部１５を押してピ
ストンリング１６、１６を圧縮した状態でピストン１４
をスムーズにシリンダーライナー１７内に押し込み挿入
する。

【００２５】環状ガイド部材１の内径はシリンダーライ
ナ１７の内径よりもわずかに小さく、環状ガイド部材１
の各ガイド部材２、３、４の内周には凸状の係止部材
５、５、５が設けられているので、ピストン１４の外周
を支持してシリンダライナー１７にピストン１４を挿入
する時のピストン１４を支持する力にバラツキを生ずる
ことがなく、ピストン１４をスムーズにシリンダライナ
ー１７内に挿入することができる。

【００２６】

【発明の効果】本発明に係るシリンダーへのピストン挿
入治具は、ピストンの挿入方向を所定の方向にすること
ができるとともに、ピストンリングのピストンのリング
溝への均等挿入ガイドを同時に行えるため、ピストンの
シリンダへの挿入作業時間を短縮することができるとい
う効果を有する。

【００２７】本発明に係るシリンダーへのピストン挿入
治具は、環状ガイド部材をピストンに当てて各ガイド部
材を鋏状締め付け部材を閉じるだけで挿入できるので、
経験の有無に関わらず、確実に作業を行えるという効果
を奏する。

【００２８】本発明に係るシリンダーへのピストン挿入
治具は、作業の簡易化、単純化を可能とし、作業者の経
験に左右されず、ピストンリングを圧縮した状態でピス
トンのシリンダーのへ挿入が確実にできるという効果を
奏する。

【図面の簡単な説明】

図は、本発明に係るシリンダーへのピストン挿入治具の
一実施例を説明するものである。

【図１】シリンダーへのピストン挿入治具の斜視図であ
る。

【図２】シリンダーへのピストン挿入治具を閉じた状態
を実線で示し、拡開状態と２点鎖線で示す正面図であ
る。

【図３】一部を破断してシリンダーへのピストン挿入治
具の要部を示す側面図である。

【図４】ピストンをシリンダーライナーに挿入する状況
を示す側断面図である。

【図５】本発明に係るシリンダーへのピストン挿入治具
の作動原理を説明する平面図である。

【図６】実開昭４８ー１２４０２号公報に記載されてい
るピストン組込具の作動原理を説明する平面図である。

【符号の説明】

１ 環状ガイド部材 ２ 左拡開ガイド部材 ３ 右拡開ガイド部材 ４ 中ガイド部材 ５ ピストン頭部の係止部 ８ 鋏状締め付け部材 １４ピストン １５ピストン頭部 １６ピストンリング １７シリンダライナー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダライナーの内径よりもわずかに
   小さい内径の環状ガイド部材は中ガイド部材と左右に拡
   開する２つの拡開ガイド部材からなり、左右拡開ガイド
   部材に鋏状締め付け部材が取り付けられており、各拡開
   ガイド部材の一端と中ガイド部材の両端は回動自在に連
   結されており、各ガイド部材の円周方向の中間部内周端
   部にピストン頭部の係止部材が設けられていることを特
   徴とするシリンダーへのピストン挿入治具。