JPH08113532A - 硬膏剤及びその製造法 - Google Patents

硬膏剤及びその製造法

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JPH08113532A
JPH08113532A JP27556494A JP27556494A JPH08113532A JP H08113532 A JPH08113532 A JP H08113532A JP 27556494 A JP27556494 A JP 27556494A JP 27556494 A JP27556494 A JP 27556494A JP H08113532 A JPH08113532 A JP H08113532A
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Fumiko Ishiguro
文子 石黒
Takashi Maki
剛史 牧
Masaki Matsuda
正樹 松田
Masahiro Matsudaira
昌浩 松平
Junichi Ishiguro
淳一 石黒
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 有効成分を良好に体内に経皮吸収させること
のできる全く新しい構成の硬膏剤を得る。 【構成】 剥離紙と、該剥離紙上に展延された膏体層
と、該膏体層表面上に被着された支持体とからなる硬膏
剤において、前記膏体層が、スチレン−イソプレン−ス
チレンブロック共重合体を主成分とする接着基剤の剥離
紙側に、有効成分を含有するプロピレングリコール,ミ
リスチン酸イソプロピル,1,3-ブチレングリコール,ポ
リエチレングリコール400 のうちの何れか1種又は2種
以上から選ばれた可溶化剤からなる液泡を分散させたも
のである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は例えば剥離紙と、該剥離
紙上に展延された膏体層と、該膏体層表面上に被着され
た支持体とからなる硬膏剤に関し、特に経皮吸収が難し
いとされていた有効成分であっても、経時的に飛躍的な
経皮吸収が得られる硬膏剤及びその製造法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】貼付剤の経皮吸収機構において、経時的
に有効成分を経皮吸収させるためには、貼付剤中に良好
に有効成分を保持させ、尚且、貼付部分中の有効成分の
経皮吸収に伴う貼付剤の他部分の拡散による有効成分の
補充によって継続的な経皮吸収が行われる必要がある。
【0003】また、有効成分を経皮より吸収させる貼付
剤としては種々のものが既にあるが、用いられる有効成
分は、その分子量,極性,修飾基等の特徴によって、そ
の有効成分に固有の経皮吸収量を有していた。これは、
皮膚への水分等の侵入を阻害する角質層が存在するため
である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】有効成分を良好に経皮
吸収させるために、種々の工夫を行っている。この角質
層を良好に通過させるために、エタノール,ハッカ油,
L−メントール等の吸収促進剤を添加しているが、これ
にも限界がある。
【0005】本発明は、有効成分を良好に体内に経皮吸
収させることのできる全く新しい構成の硬膏剤及びその
製造法を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本請求項1に記載された
発明に係る硬膏剤では、剥離紙と、該剥離紙上に展延さ
れた膏体層と、該膏体層表面上に被着された支持体とか
らなる硬膏剤において、前記膏体層が、スチレン−イソ
プレン−スチレンブロック共重合体を主成分とする粘着
基剤の剥離紙側に、有効成分を含有する可溶化剤からな
る液泡を分散させたものである。
【0007】本請求項2に記載された発明に係る硬膏剤
では、請求項1に記載された可溶化剤が、プロピレング
リコール,1,3-ブチレングリコール,ポリエチレングリ
コール400 のうちの何れか1種又は2種以上から選ばれ
たものである。
【0008】本請求項3に記載された発明に係る硬膏剤
では、請求項1に記載された可溶化剤が、可溶化剤への
溶解度を越えた前記有効成分を含有するものである。
【0009】本請求項4に記載された発明に係る硬膏剤
では、請求項1に記載された可溶化剤が、前記粘着基剤
に対して10重量%を越えて含有されたものである。
【0010】本請求項5に記載された発明に係る硬膏剤
では、請求項1又は2に記載された有効成分が、エスト
ラジオール又はフルルビプロフェンを含むものである。
【0011】本請求項6に記載された発明に係る硬膏剤
の製造法では、剥離紙上に膏体を展延し、該膏体を乾燥
後、該膏体表面に支持体を被着する硬膏剤の製造法にお
いて、前記膏体層として、スチレン−イソプレン−スチ
レンブロック共重合体を主成分とする粘着基剤を有機溶
媒に溶解させ、この溶解物中に有効成分を含有する可溶
化剤液を攪拌して液泡状に分散させ、該分散させた溶解
物を剥離紙上に展延し、前記有機溶媒を乾燥させ、表面
に支持体を被着するものである。
【0012】
【作用】本発明においては、剥離紙と、該剥離紙上に展
延された膏体層と、該膏体層表面上に被着された支持体
とからなる硬膏剤において、前記膏体層が、スチレン−
イソプレン−スチレンブロック共重合体を主成分とする
粘着基剤(以下、「SIS共重合体粘着基剤」の剥離紙
側に、有効成分を含有する可溶化剤からなる液泡を分散
させたものであるため、従来経皮吸収が難しいとされて
きた有効成分であっても飛躍的な経皮吸収性が得られ
る。
【0013】本発明で用いる可溶化剤は、プロピレング
リコール,1,3-ブチレングリコール,ポリエチレングリ
コール400 のうちの何れか1種又は2種以上から選ばれ
たものである。例えば、プロピレングリコール(CH3CH
(OH)CH2OH)は、保湿剤,溶解剤として用いられ、水,
メタノール,エタノール,酢酸エチル又はピリジンと混
和する。その吸湿性を利用して、製剤中の水分の蒸発を
防止し、皮膚に水分を保留する作用をする物質として用
いられている。また、1,3-ブチレングリコール(CH3CH
(OH)CH2CH2OH)も、同様に保湿剤,溶解剤として用いら
れ、水,エタノールに可溶である。最後に、ポリエチレ
ングリコール400 も可溶化剤として従来から用いられて
いるものである。
【0014】本発明の作用機構モデルは、後述する図1
の図cに示す通り、本硬膏剤の膏体は、有機溶媒で溶解
したSIS共重合体粘着基剤中に、有効成分を内部に溶
解又はその結晶を分散させた可溶化剤の液泡構造が分散
して存在しており、有効成分はSIS共重合体粘着基剤
中ではなく、この液泡中にある。
【0015】SIS共重合体粘着基剤を溶かしていた有
機溶媒が蒸発して、SIS共重合体粘着基剤が硬化した
際に、この基剤内部に分散した個々の液泡構造はSIS
共重合体粘着基剤中に保持される。更に、剥離紙を剥離
した場合には、境界面にあった液泡構造の外壁の一部
が、剥離と共に破れ、可溶化剤と共に有効成分が貼着面
に露出する。
【0016】貼着面に露出した液泡構造の一部は、皮膚
に貼付された場合に、液泡構造内部の可溶化剤が皮膚に
浸透し、皮膚を保湿すると共に、内部に溶かし込んだ有
効成分を皮膚構造に浸透させ易くし、且つSIS粘着基
剤層が皮膚からの水分の蒸散を防ぎ、角質層を水和する
ことにより、貼着面から良好に皮膚内へ浸透することを
助け、経皮吸収量を飛躍的に増加させる。
【0017】以上のように、有効成分と可溶化剤とは従
来の硬膏剤のように、膏体層中に、各々均一に分散され
るものではなく、液泡構造を構成して分散されているた
め、膏体層中の拡散速度には全く無関係に皮膚に到達
し、浸透する。このため、経皮吸収が良好な有効成分は
もとより、例えば、エストラジオールのように経皮吸収
量が少なかった有効成分を用いても、良好な経皮吸収を
与える硬膏剤を得ることができる。
【0018】尚、貼着面にはSIS共重合体粘着基剤も
露出しているため、剥離紙を剥離した直後は、本硬膏剤
は良好に皮膚等に貼着することができるが、剥離して暫
く放置又は一旦貼着したものを剥離して再度貼着した場
合には、可溶化剤は、粘着剤が露出している部分に回り
込んで覆うため、貼着力が極端に弱くなる特徴を有して
いる。
【0019】また、有効成分を長時間にわたり経皮吸収
させる必要のある硬膏剤においては、経皮吸収に伴って
減少する有効成分の経時的な補充も重要な要件である。
本発明においては、可溶化剤が、可溶化剤への溶解度を
越えた前記有効成分を含有するものであるため、有効成
分の結晶も液泡構造中に保持される。貼着面からの浸透
に伴って減少する有効成分をこの結晶が溶解して補充す
る。このため、継続的な経皮吸収を行うことができる。
【0020】また、本硬膏剤の経皮吸収に関係のある有
効成分と可溶化剤との液泡は、膏体層の剥離紙側に分散
されたものとこれに連絡する液泡のみである。故に、膏
体層の剥離紙側にのみ液泡構造を分散させるものが添加
された有効成分を無駄なく使用することができる。従っ
て、好ましくは液泡構造を分散させた膏体層を極力薄く
形成させて構成する。好ましい例として液泡の径は、2
μm〜40μmであったため、好ましい液泡構造を分散
させた膏体層の厚さは、50〜80μmであろう。尚、
膏体層の強度が問題であれば、この液泡構造を分散させ
た膏体層の上に更に液泡構造を分散させない膏体層を形
成してもよい。
【0021】通常、液泡の比重がSIS粘着基剤溶解液
より大きいため、剥離紙上に展延した場合には、剥離紙
面側に液泡が沈殿して整列する。従って、本発明では、
可溶化剤が粘着基剤に対して10%を越えて含有された
もの、好ましくは20%含有されたものでは、SIS共
重合体粘着基剤の有機溶媒溶解物に添加して攪拌するこ
とによって、可溶化剤の良好な液泡構造を形成すること
ができるが、前述のように液泡構造を分散させた膏体層
の上に更に液泡構造を分散させない膏体層を形成するば
あいには、全体量として10%を下回るものも形成可能
である。
【0022】更に、本発明で用いる有効成分としては、
液泡構造中に可溶化剤と共に良好に保持され、この可溶
化剤によって、経皮吸収量を増加させるものであればよ
い。本発明では、特に有効成分がエストラジオールを含
むもの、又は有効成分がフルルビプロフェンを含むもの
を開示するものである。特に、本願発明の可溶化剤との
液泡構造によって飛躍的に経皮吸収量が増大するエスト
ラジオールの経皮吸収量の増大は特筆すべきものであ
る。
【0023】このエストラジオールは経皮吸収量が極め
て少なく、多量のエタノールを配合した製剤があるが、
皮膚刺激性が高く問題があった。本発明の硬膏剤によっ
て多量のエタノールを配合しなくても、飛躍的な経皮吸
収量の増大が得られた。例えば後述する実施例に詳細に
示すように、可溶化剤としてプロピレングリコールを用
いた場合には、エストラジオールでは、24時間貼付で
20μg/cm2 以上もの累積透過量が計測された。
尚、比較的経皮吸収が良いとされてきたフルルビプロフ
ェンでも、8時間貼付で67μg/cm2 以上もの飛躍
的な累積透過量が計測された。
【0024】このように、本発明の硬膏剤は、特に経皮
吸収が難しいとされていた有効成分であっても、経時的
に飛躍的な経皮吸収が得られる。
【0025】以上のような硬膏剤の製造法では、重要な
のは、剥離紙側に液泡を分散させた膏体層の形成にあ
る。本発明の製造法では、剥離紙上に膏体を展延し、該
膏体を乾燥後、該膏体表面に支持体を被着する硬膏剤の
製造法において;前記膏体層として、SIS共重合体粘
着基剤を有機溶媒に溶解させ、この溶解物中に有効成分
を含有する可溶化剤液を攪拌して液泡状に分散させ;該
分散させた溶解物を剥離紙上に展延し、前記有機溶媒を
乾燥させ、表面に支持体を被着するものである。
【0026】これによって、SIS共重合体粘着基剤中
に、有効成分と可溶化剤との液泡構造を分散させた膏体
が得られる。更に、この膏体を剥離紙上に展延すること
により、液泡の比重がSIS粘着基剤溶解液より大きい
ため、剥離紙上に展延した場合には、剥離紙面側に液泡
が沈殿して整列する。従って、剥離紙との境界面にこの
液泡構造が配列することとなり、剥離紙を剥離した場合
には、境界面にあった液泡構造の外壁の一部が、剥離と
共に破れ、可溶化剤と共に有効成分が貼着面に露出す
る。
【0027】ここで特筆すべきは、貼着面にはSIS共
重合体粘着基剤も露出しているため、剥離紙を剥離した
直後は、本硬膏剤は良好に皮膚等に貼着することができ
る点にある。しかしながら、剥離紙を剥離して暫く放置
又は一旦貼着したものを剥離して再度貼着した場合に
は、可溶化剤は、接着剤が露出している部分に回り込ん
で覆うため、貼着力が極端に弱くなる。
【0028】従って、膏体層を支持する支持体として
は、貼着面にフィットさせるため、柔軟な素材が選ばれ
ることは、従来から行われていることであるが、本発明
の硬膏剤においては、剥離紙を剥離して貼付する際に、
膏体層中に分散している液泡構造の少なくとも剥離紙と
の境界面に存在する構造を良好に破断するため、更に好
ましくは、この境界面に後続する液泡構造に貼着面に至
る経路を形成させるため、柔軟な素材が選ばれることに
なる。
【0029】また、本発明で用いるSIS共重合体粘着
基剤とは、通常ホットメルト粘着基剤として用いられる
ものであり、SIS共重合体ゴムに、粘着付与剤のポリ
イソプレンゴム,テルペン樹脂等を配合し、更に必要に
応じてエステルガム,ジブチルヒドロキシトルエン等の
軟化剤,老化防止剤を加熱練合して得られるものであ
る。これらは何れも市販されているSIS共重合体及び
粘着付与剤を用いることができる。また、その他にもポ
リイソプレンゴム,SBR,ポリイソブチレン,シリコ
ンゴム等も使用することができる。このSIS共重合体
を主成分とした粘着基剤を酢酸エチル,n−ヘキサン等
の有機溶媒で溶解し、この溶解物に有効成分を添加した
可溶化剤と攪拌する。
【0030】SIS共重合体粘着基剤の有機溶媒溶解物
と有効成分を添加した可溶化剤とを攪拌して、液泡構造
を形成させる場合に重要なのは、攪拌の状態と、溶解物
の粘度である。攪拌の度合が激しくなければ、良好な液
泡構造の分散が得られない。従って、可溶化剤の液が引
きちぎれるほど激しく攪拌を行う必要がある。
【0031】また、溶解物の粘度が高ければ、攪拌の度
合をいくら激しく行っても、液泡構造が得られない。ま
た、粘度が低ければ、攪拌によって得られた小さな液泡
構造が互いにくっつきあい、有機溶媒が蒸発して粘着基
剤が乾燥する前に、大きな液泡となり、良好な分散状態
が得られない。従って、可溶化剤の液が粘着基剤中に混
ざりあう程度の粘度になったら、攪拌を行いながら、徐
々に有機溶媒を追加して粘度を徐々に下げ、所望の液泡
が分散したら、これを速やかに剥離紙上に展延して乾燥
させるようにする。
【0032】尚、本発明では、有効成分及び可溶化剤以
外の他の添加剤を通常添加し得る範囲で適宜添加しても
よい。例えば、吸収促進剤として、ミリスチン酸イソプ
ロピル,レモンオイル,リモネン,クロタミトン,エタ
ノール,ベンジルアルコール,ハッカ油,L−メントー
ル等を1〜5%程度添加して用いることができる。
【0033】
【実施例】
実施例1.フルルビプロフェン硬膏剤の製造 有機溶媒にSIS共重合体粘着基剤(SIS共重合体3
0.0部,ポリイソプレンゴム9.1部,テルペン樹脂
32.0部,エステルガム28.0部,ジブチルヒドロ
キシトルエン0.9部)を溶解させた溶解物中に有効成
分とPGとを攪拌して分散させ、この分散させた溶解物
を剥離紙上に展延し、ドライヤーにて前記有機溶媒を乾
燥後、表面に支持体を被着して試作品を得た。
【0034】実施例2.ラット皮膚透過性試験 膏体に吸収促進剤を加えてフルルビプロフェンのラット
皮膚透過性を向上させることを目的として、吸収促進剤
として、プロピレングリコール(以下、「PG」と記
す),ハッカ油,クロタミトン等を加えてラット皮膚透
過性試験を行った。
【0035】A:試作1 吸収促進剤として、次の表1に示す試作品を実施例1の
操作によって、作成した。即ち、ハッカ油1%添加(FH
-B00からFH-B03)したものに、PGをそれぞれ0%,5
%,10%,20%添加したものと、ハッカ油を添加し
ないものとを準備した。
【0036】
【表1】
【0037】これら試作品をラットの皮膚に貼着して、
フランツ型セルを用いた透過実験を行い、累積透過量を
算出した。結果を次の表2に示す。尚、個々の試作品に
おいて、フルルビプロフェン含有量は、285.7 μg/c
2 となる。また、表2中の[8hr透過率(%)]
は、フルルビプロフェン含有量当りの8時間後の累積透
過量として求めた([8hr透過率(%)]=8時間後
の累積透過量/フルルビプロフェン含有量)。
【0038】
【表2】
【0039】表2に示す通り、PGの濃度に応じて累積
透過量が増大することが示されたが、20%添加したも
のは、他の添加率のものとは比較にならない程の高い累
積透過量となることが示された。尚、表における数値は
フルルビプロフェンの累積透過量(μg/cm2 )を示
し、各値はn=4の平均±S.D.を示す。
【0040】B:試作2 試作1と同様の手順で、吸収促進剤として、表3に示す
試作品を作成した。即ち、クロタミトン1%添加(FH-B
04からFH-B07)したものに、PGをそれぞれ0%,5
%,10%,20%添加したものを準備した。
【0041】
【表3】
【0042】これら試作品をラットの皮膚に貼着して、
フランツ型セルを用いた透過実験を行い、累積透過量を
算出した。結果を次の表4に示す。尚、個々の試作品に
おいて、フルルビプロフェン含有量は、285.7 μg/c
2 となる。また、表4中の[8hr透過率(%)]
は、フルルビプロフェン含有量当りの8時間後の累積透
過量として求めた([8hr透過率(%)]=8時間後
の累積透過量/フルルビプロフェン含有量)。
【0043】
【表4】
【0044】表4に示す通り、PGの濃度に応じて累積
透過量が増大することが示されたが、20%添加したも
のは、他の添加率のものとは比較にならない程の高い累
積透過量となることが示された。尚、表における数値は
フルルビプロフェンの累積透過量(μg/cm2 )を示
し、各値はn=5の平均±S.D.を示す。
【0045】C:試作3 試作1,2と同様の手順で、吸収促進剤として、表5に
示す試作品を作成した。即ち、ミリスチン酸イソプロピ
ル(IPM) 1%添加(FH-B08からFH-B11)したものに、P
Gをそれぞれ0%,5%,10%,20%添加したもの
を準備した。
【0046】
【表5】
【0047】これら試作品をラットの皮膚に貼着して、
フランツ型セルを用いた透過実験を行い、累積透過量を
算出した。結果を次の表6に示す。尚、個々の試作品に
おいて、フルルビプロフェン含有量は、285.7 μg/c
2 となる。また、表6中の[8hr透過率(%)]
は、フルルビプロフェン含有量当りの8時間後の累積透
過量として求めた([8hr透過率(%)]=8時間後
の累積透過量/フルルビプロフェン含有量)。
【0048】
【表6】
【0049】表6に示す通り、PGの濃度に応じて累積
透過量が増大することが示されたが、20%添加したも
のは、他の添加率のものとは比較にならない程の高い累
積透過量となることが示された。尚、表における数値は
フルルビプロフェンの累積透過量(μg/cm2 )を示
し、各値はn=5の平均±S.D.を示す。
【0050】実施例4.硬膏剤の構造 以上のように、試作1〜3の何れもPGを20%の過剰
に添加したものでは、飛躍的に高い累積透過量となるこ
とが示された。また、得られたPGを20%の過剰に添
加した3つの試作品(FH-B03,FH-B07,FH-B11)とも、剥
離紙を剥離した直後は、本硬膏剤は良好に皮膚等に貼着
することができるが、剥離して暫く放置又は一旦貼着し
たものを剥離して再度貼着した場合には、貼着力が極端
に弱くなることが示された。
【0051】そこで、3つの試作品の膏体を顕微鏡で観
察すると、3つに共通の構造があることが判った。図1
は本発明の硬膏剤の一実施例の構成を示す膏体の説明図
である。図aは本硬膏剤の断面を示す模式図であり、図
bは図aの円の内部を拡大した模式図である。図aに示
す通り、本硬膏剤(1) は、剥離紙(2) と、この剥離紙
(2) 上に展延された膏体層(3) と、この膏体層(3) 表面
上に被着された支持体(4) とからなる。
【0052】図bに示す通り、膏体層(3) は、有機溶媒
で一旦溶解したSIS共重合体粘着基剤(5) 中に、有効
成分を内部に保持したPGを分散させて、これを展延硬
化させているため、有効成分を内部に保持したPGの液
泡構造(6) が分散して存在しており、有効成分は、SI
S共重合体粘着基剤中ではなく、主にPG中に溶け込ん
でいると考えられる。また、有効成分はPGに溶解度を
越えて添加されてもよく、この場合は有効成分の結晶
(7) がPGに取巻かれたように液泡中に存在すると考え
られる。
【0053】尚、PGを20%の過剰に添加したもの以
外の試作品でも大きさが小さく、数は少ないが同様の液
泡構造(6) が見られた。これは、PGを20%の過剰に
添加したもの以外では、皮膚に浸透するPGの量が少な
く、経皮吸収効果が向上しなかったものと思われる。従
って、皮膚に貼着される側の膏体層(3) には、好ましく
はPGを20%含有されたものが良好である。
【0054】剥離紙(2) を剥離した場合には、剥離紙
(2) との境界面にあった液泡構造(61)の外壁の一部が、
剥離と共に破れ、PGと共に有効成分が貼着面に露出す
る。尚、貼着面にはSIS共重合体粘着基剤(5) も露出
しているため、剥離紙(2) を剥離した直後は、本硬膏剤
(1) は良好に皮膚等に貼着することができるが、剥離し
て暫く放置又は一旦貼着したものを剥離して再度貼着し
た場合には、PGは、粘着剤(5) が露出している部分に
回り込んで覆うため、貼着力が極端に弱くなる特徴を有
している。
【0055】実施例5.エストラジオール含有硬膏剤1 更年期障害や月経異常症の治療薬であるエストラジオー
ル又はエストラジオールとプロジェステロンを持続的に
放出することのできる硬膏剤の開発を目的として、エス
トラジオールを用いて、種々の可溶化剤に対するインビ
トロ皮膚透過性試験を行った。
【0056】前述の実施例では液泡構造を形成させる可
溶化剤はPGを用いたが、種々の可溶化剤を検証してみ
た。可溶化剤として、PG,ミリスチン酸イソプロピル
(以下、「IPM」と記す),1,3-ブチレングリコール
(以下、「1,3-BG」と記す),ポリエチレングリコー
ル400 (以下、「PEG400 」と記す)を用いた。表7
に各々の可溶化剤のエストラジオールの溶解度を示す。
【0057】これら可溶化剤に過剰のエストラジオール
を溶解させて各エストラジオール飽和可溶化剤溶液(3
7℃)を作成し、2−チャンバ(2-chamber) 型拡散セル
に、WISTER系ラット(雄、5週齢、約160g)
の腹部皮膚(バリカン除毛)を装着し、作成した各エス
トラジオール飽和可溶化剤溶液をドナーとし、20%ポリ
エチレングリコール含有生理食塩水をレセプターとし
て、皮膚を経てレセプター側へ透過したエストラジオー
ルをHPLCで検出した。結果を図2に示す。
【0058】図2に示す通り、エストラジオールの透過
性は、溶解度とは無関係にIPM,PG,1,3-BG,P
EG400 の順に良好であった。透過性の観点のみから判
断すると、IPMが適しているが、IPMは液泡構造を
形成できないため、以降の実施例の可溶化剤もPGを主
体に行うこととした。尚、IPMは可溶化剤ではなく、
吸収促進剤として有効であることが確認された。
【0059】実施例6.エストラジオール含有硬膏剤2 次の表8に示す配合処方を実施例1に示した製造法でエ
スタラジオール含有硬膏剤を作成した。また、インビト
ロ皮膚透過性試験を行った。
【0060】
【表8】
【0061】得られた硬膏剤を孔径3.14cm2 (用
量18ml)に切断し、フランツ(Franz) 型セルに装着
し、ヘアレスマウス(雌、5週齢、約20g)の腹部皮
膚を用いて、20%PEG含有の生理食塩水で溶出試験
を行った。溶出温度は37℃とした。結果を次の表9及
び図3に示す。表9及び図3に示す通り、エストラジオ
ール硬膏剤(乾燥時)のPGの量20重量%のものが何
れも高い皮膚透過性を示した。
【0062】
【表9】
【0063】尚、エストラジオールのPGに対する溶解
度は37℃で86.7mg/gであり、表8に示す処方
は、何れも溶解度を越えている。従って、エストラジオ
ールの一部は結晶のままPGに保持されている。ところ
で、目的とするエストラジオール含有硬膏剤は1回の貼
着で2日(48時間)効果が持続するものを得たい。従
って、エストラジオールの処方は次の表10に示すもの
とした。
【0064】
【表10】
【0065】尚、支持体にはポリエステル製の柔軟な不
織布(目付 51.0g/m2 ,厚み7μm)を用い、1枚当り
(5×3.14cm2 )、エストラジオール 5.0mg,P
G 25mg ,SIS共重合体粘着基剤 95mg とした。
【0066】
【発明の効果】本発明は以上説明したとおり、剥離紙
と、該剥離紙上に展延された膏体層と、該膏体層表面上
に被着された支持体とからなる硬膏剤において、前記膏
体層が、SIS共重合体粘着基剤」の剥離紙側に、有効
成分を含有する可溶化剤からなる液泡を分散させたもの
であるため、例えばフルルビプロフェン等のように経皮
吸収が良好な有効成分はもとより、例えば、エストラジ
オールのように経皮吸収量が少なかった有効成分を用い
ても、飛躍的な経皮吸収を与える硬膏剤を得ることがで
きる。
【0067】本発明においては、可溶化剤が、可溶化剤
への溶解度を越えた前記有効成分を含有するものである
ため、有効成分の結晶も液泡構造中に保持される。貼着
面からの浸透に伴って減少する有効成分をこの結晶が溶
解して補充する。このため、持続的な経皮吸収を行うこ
とができる。
【0068】本発明では、可溶化剤が粘着基剤に対して
10%を越えて含有されたものでは、SIS共重合体粘
着基剤の有機溶媒溶解物に添加して攪拌することによっ
て、可溶化剤の良好な液泡構造を形成することができ
る。
【0069】本発明の製造法では、剥離紙上に膏体を展
延し、該膏体を乾燥後、該膏体表面に支持体を被着する
硬膏剤の製造法において;前記膏体層として、SIS共
重合体粘着基剤を有機溶媒に溶解させ、この溶解物中に
有効成分を含有する可溶化剤液を攪拌して液泡状に分散
させ;該分散させた溶解物を剥離紙上に展延し、前記有
機溶媒を乾燥させ、表面に支持体を被着するものであ
る。これによって、SIS共重合体粘着基剤中に、有効
成分と可溶化剤との液泡構造を分散させた膏体が得られ
るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の硬膏剤の構成を示す膏体の
説明図である。図aは本硬膏剤の断面を示す模式図であ
り、図bは図aの円の内部を拡大した模式図である。
【図2】種々の可溶化剤を用いたエストラジオールの皮
膚透過性試験の結果を示す線図である。縦軸は、累積透
過量(μg/cm2 )、横軸は経過時間(hr)であ
る。
【図3】エストラジオール含有硬膏剤の皮膚透過性試験
の結果を示す線図である。縦軸は累積透過量(μg/c
2 )、横軸は経化時間(hr)である。
【表7】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 31/565 ACV AEK 47/10 E G 47/14 E G 47/34 E G (72)発明者 松平 昌浩 富山県富山市水橋畠等173 大協薬品工業 株式会社研究開発部内 (72)発明者 石黒 淳一 富山県富山市水橋畠等173 大協薬品工業 株式会社研究開発部内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 剥離紙と、該剥離紙上に展延された膏体
    層と、該膏体層表面上に被着された支持体とからなる硬
    膏剤において、 前記膏体層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロッ
    ク共重合体を主成分とする粘着基剤の剥離紙側に、有効
    成分を含有する可溶化剤からなる液泡を分散させたこと
    を特徴とする硬膏剤。
  2. 【請求項2】 前記可溶化剤が、プロピレングリコー
    ル,1,3-ブチレングリコール,ポリエチレングリコール
    400 のうちの何れか1種又は2種以上から選ばれたこと
    を特徴とする請求項1に記載の硬膏剤。
  3. 【請求項3】 前記可溶化剤が、可溶化剤への溶解度を
    越えた前記有効成分を含有することを特徴とする請求項
    1に記載の硬膏剤。
  4. 【請求項4】 前記可溶化剤が、前記粘着基剤に対して
    10重量%を越えて含有されたことを特徴とする請求項
    1に記載の硬膏剤。
  5. 【請求項5】 前記有効成分が、エストラジオール又は
    フルルビプロフェンを含むことを特徴とする請求項1又
    は2に記載の硬膏剤。
  6. 【請求項6】 剥離紙上に膏体を展延し、該膏体を乾燥
    後、該膏体表面に支持体を被着する硬膏剤の製造法にお
    いて、 前記膏体層として、スチレン−イソプレン−スチレンブ
    ロック共重合体を主成分とする粘着基剤を有機溶媒に溶
    解させ、この溶解物中に有効成分を含有する可溶化剤液
    を攪拌して液泡状に分散させ、 該分散させた溶解物を剥離紙上に展延し、前記有機溶媒
    を乾燥させ、表面に支持体を被着することを特徴とする
    硬膏剤の製造法。
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