JPH07997B2 - 岩盤固結工法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、軟弱あるいは破砕された岩盤等を岩盤固結
用薬液により堅固な岩盤に改善する岩盤固結工法に関す
るものである。

〔従来の技術〕

従来から軟弱な岩盤（地山）ないしは破砕された地山等
の地層帯では、トンネル切羽の天盤の崩落等の防止のた
めに、トンネル切羽先端の天盤部に、天盤のアーチに沿
って孔を穿設し、この孔内にロックボルトを挿入ないし
はこのボルトをモルタルで固結する先受ボルト工法、ま
たはパイプルーフ工法、薬液注入工法等の対応方法が講
じられ、地山を強化することが行われている。しかしな
がら、このような従来の対応方法では、設備が大掛りと
なり、機械の設置や注入の準備に手間がかかり、またこ
れらの作業のために現場の作業をかなりの期間停止しな
ければならないという問題を生じていた。

〔発明が解決しようとする問題点〕

そこで、本発明者らは、このような問題を解決するた
め、削岩機等の削岩装置を用い、トンネル切羽先端の天
盤部に天盤のアーチに沿つて複数の孔を穿設し、この孔
内に、中空パイプからなるパツカーを挿入し、そのパツ
カー内にウレタン樹脂液等を圧入してパツカー先端から
外部に吐出し岩盤に浸透させる技術をすでに提案してい
る（特願昭58−144024号）。この場合、上記薬液の孔か
らの洩れを防ぐとともにパツカーを孔内に固定する目的
で、パツカーの根元側に布等を巻きつけ、これにウレタ
ン樹脂液等を含浸させ、パツカーの挿入時に上記布等に
含浸させたウレタン樹脂を発泡させ、孔の壁面とパツカ
ーの外周部との隙間を防ぐと同時にパツカーを孔壁に固
定するということが行われている。

しかしながら、上記工法を、湧水等のある軟弱な地山で
行うと、パツカーの根元側の布等に含浸されたウレタン
樹脂が発泡してパツカー外周と孔の壁面との空間を埋
め、さらに岩盤に浸透し硬化してパツカーを孔壁面に固
定するまでに、湧水によつてパツカーが孔から押し流さ
れてしまうという問題を生じる。また、湧水によつて、
穿設した孔が崩壊しかかつた場合には、パツカーの根元
側に巻かれた布等が孔の縁に引つ掛かかつて、パツカー
を孔内に挿入しにくくなる。その結果、パツカーの挿入
に長時間を要し、その間に布等に含浸されたウレタン樹
脂が硬化してしまうという問題がある。

この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、湧
水等のある軟弱な地山でも実施でき、確実に効果を奏し
うる岩盤固結工法の提供をその目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

上記の目的を達成するため、この発明の岩盤固結工法
は、先端側に吐出孔が形成された中空パイプ状のパツカ
ー本体の根元側外周部に、その部分を囲うように通液性
シート材を配設し両端部をパツカー本体外周に固定する
ことにより通液性袋体に形成し、この袋体に液圧入手段
を設けたパツカーを準備し、岩盤に穿設された孔に上記
パツカーの中空パイプを挿入し、上記液圧入手段を利用
し上記袋体内に速硬性の岩盤固結用薬液を圧入して上記
袋体を膨らませ孔壁面とパイプとの隙間を埋めると同時
に、袋体の表面から岩盤に上記薬液を浸透硬化させて上
記パツカーを上記孔壁面に接着固定し、その状態で上記
中空パイプ内に岩盤固結用薬液を圧入し、これを上記吐
出孔から上記孔内に吐出させて岩盤に浸透硬化させるこ
とにより、上記孔内に上記パイプを残しつつ上記孔周囲
の岩盤を固結させるという構成をとる。

〔作用〕

本発明者らは、上記提案法に対する要望を満たすため、
さらにパツカーを中心に研究を重ねた。その結果、パツ
カーの根元側に巻き付ける布等に代えて、ウレタン樹脂
液等の注入圧力で瞬間的に膨脹すると同時に、その外周
面から上記薬液を浸透させうる通液性袋を用いるという
着想を得た。この着想に基づき、この通液性袋をその根
元側に備えたパツカーを用いて、岩盤固結を行うと、通
常の地山はもちろん、湧水等のある軟弱な地山の孔内に
もパツカーを確実に接着固定できることを突き止めた。
そして、この状態で、上記パツカーにより上記孔内に岩
盤固結用薬液を吐出すると、この薬液が、孔外に漏出す
ることなく岩盤に浸透硬化して強固な岩盤にすることが
できるようになることを見いだしこの発明に到達した。

つぎに、この発明を実施例にもとづいて詳しく説明す
る。

〔実施例〕

第１図は、この発明の一実施例に使用するパツカーを示
している。すなわち、図において、10は後端が開口した
中空パイプ状のパツカー本体であり、外径27mm,内径14m
mで全長が略2mに設定されている。このパツカー本体10
は、先端が尖つていて、先端側の周面に複数の吐出孔11
が所定間隔で穿設されている。そして、根元側には綿製
のメリヤスからなる袋部12が外周に沿つて巻かれ、この
袋部12の後端部から内部に連通するナイロンチユーブ13
が延設されている。上記袋部12は、第２図に示すよう
に、二重構造になつており、筒状の布12a,12bを２枚重
ね合わせてパツカー本体10の根元側に外嵌し、それらの
前端側を、ビニールテープ14とCVバンド15でパツカー本
体10の外周面に固定したのち、全体を反転させて後端側
をパツカー本体10の後端上に移動させ、ナイロンチユー
ブ13の先端部を収容した状態で筒状布12a,12bの後端側
をテープ14とCVバンド15とでパツカー本体１の外周面に
固定することにより構成されている。上記ナイロンチユ
ーブ13の固定は、パツカー本体10の外周面に長手方向に
沿つてナイロンチユーブ13を沿わせ、この状態で、チユ
ーブ13の先端をビニールテープ14の巻回によりパツカー
本体10に固定し、チユーブ13の後端をビニルテープ14と
CVバンド15とでパッカー本体10に固定することによりな
されている。第１図において、16はナイロンチユーブ13
の後端部に取り付けられた連結用金具であり、異径ニツ
プルとカプラーで構成されている。なお、上記パツカー
本体10は、略中央部を鏡にして前部側と後部側とに２部
割されており、これらをねじ継手（図示せず）で継合し
て構成されている。そして、上記前部側における継合部
分の内周側に段部が設けられ、そこに第３図（ａ），
（ｂ）に示す静止ミキサー17が先端側（図示の左側部
分）をパツカー本体10の先端側に向けた状態で挿入され
根元側リング18を上記段部に係合させて固定されてい
る。上記静止ミキサー17には、根元側リング部18の中心
から前方（矢印Ｘ方向）に延びる線状中心軸17aを中心
に、左半分にＶ字状２重羽根17bが一定間隔で傾斜配設
され、右半分には１重羽根17cが一定間隔で傾斜配設さ
れ、パツカー本体10内に圧入されたウレタン樹脂のＡ液
およびＢ液をそれぞれ左半分，右半分に受け入れ上記両
液を同方向（矢印A,B方向）に旋回させながら移送する
ようになつている。この場合、右半分には１重羽根17
c、左半分にはＶ字状２重羽根17bが設けられ、ウレタン
樹脂が右半分から左半分に旋回移行すると、入口側が広
く出口側が狭隘になつているＶ字状２重羽根17bの作用
によつて流速が速められ、左半分から右半分に戻ると初
期速度に戻る。すなわち、Ａ液,B液は左半分，右半分の
流速の差により、同方向に旋回しながらミキシングされ
るのであり、注入時の初期流速を維持したままミキシン
グされ前方に送られる。したがつて、硬化の著しく速い
ウレタン樹脂を圧入する場合においてウレタン樹脂を途
中で硬化させることなくミキシング移送し先端から円滑
に吐出させうるようになつている。また、パツカー本体
10の後端には逆止弁付継手（図示せず）をら合するため
のねじ部が形成されている。

この構成において、まず、削岩機等を用いて、トンネル
切羽先端の天盤部１に上向き（角度θ＝10〜20°）の状
態で孔を穿設し、パツカー本体10の後端部およびナイロ
ンチユーブ13の連結用金具16に、ウレタン樹脂圧入ポン
プのホース（図示せず）を連結する。ついで、第４図に
示すように、天盤部１に設けた孔の中に、袋部12を折り
畳んでしぼませた状態のパツカーを挿入すると同時に、
ナイロンチユーブ13から袋部12にウレタン樹脂を圧入す
る。その結果、第５図に示すように、袋部12は瞬間的に
膨脹して、その表面が孔の壁面に圧接し、パツカー本体
10の外周部と孔の壁面との隙間を塞ぐ。それと略同時
に、袋部12の表面からウレタン樹脂が滲みでて天盤部１
の鎖線Ｃの部分まで浸透し、そこで硬化する。これによ
つてパツカー本体10は上記孔壁に接着固定され、湧水等
によつて流出しなくなる。この際、袋部12が二重に構成
されているため、湧水等が勢いよく出ていても、すぐに
は内袋12bには到達せず、したがつて、湧水による上記
袋部12の膨脹阻害は回避される。このようにしてパツカ
ー本体10が固定され、かつパツカー本体10と孔壁との隙
間も塞がれた段階で、パツカー本体10にウレタン樹脂を
圧入し、これを吐出孔11から孔内に吐出させ、孔の奥側
に対応する天盤部１の鎖線Ｄの部分に浸透させ、硬化さ
せる。このようにしてウレタン樹脂の固結領域を、第６
図に示すように天盤の天井部に、もしくは第７図に示す
ように天盤のアーチに沿つて連続的に形成することによ
り、パツカー本体10を残置したままで天盤部１の補強が
なされる。第７図および第８図において、４はパツカー
本体10に対する薬液の接合ユニット、５はそのホース、
６は支保工、７は固結領域である。

このように、この発明の岩盤固結工法は、袋部12をしぼ
ませた状態で、パツカー本体10を孔内に挿入し、挿入
後、直ちに袋部12に速硬性のウレタン樹脂を圧入し袋部
12を膨らませ、かつ薬液を浸透させるようにしている。
したがつて、パツカーを孔内に容易に挿入できるととも
に、湧水等のある地山であつても、湧水に流されること
なく、迅速にパツカー本体10を孔内に固定でき、かつパ
ツカー本体10と孔壁との隙間を塞ぐことができる。した
がつて、パツカー工法が従来不可能とされていた湧水の
多い軟弱地盤地帯に対しても応用可能となる。

第８図は、この発明の他の実施例に用いるパツカーを示
している。すなわち、このパツカーには、第１図のナイ
ロンチユーブ13が設けられていず、それに代えて、内袋
12bの内部空間に対応するパツカー本体10aの部分に、吐
出孔11（第１図参照）と略同径かそれよりも大径の吐出
孔19が所定間隔で穿設されている。それ以外の部分は、
上記実施例のパツカーと同じであり、同一部分に同一符
号を付している。

この実施例では、実施例パツカーを用い、前記実施例と
同様にして岩盤固結を行う。この場合、パツカー本体10
aの開口側から圧入されたウレタン樹脂は、胴部に設け
られた吐出孔19から袋部12′内に入り、袋部12′を瞬間
的に膨らませて壁面に圧接し、パツカー本体10aと孔壁
面との隙間を塞ぎ、かつその袋部12′の表面から天盤部
１に浸透し固結する。その結果、パツカー本体10aが孔
内に接着固定される。そして、続いて圧入されるウレタ
ン樹脂はパツカー本体10の先端側の吐出孔11から孔内に
吐出され、そこから天盤部１に浸透して、その部分を固
結させる。

この実施例によれば、パツカー本体10aに注入する薬液
を利用し、袋部12′を脹らませるため、前記実施例で用
いたパツカーのようなナイロンチユーブ13が不要にな
り、部材点数の低減を実施できる。

〔発明の効果〕

この発明は以上のようにして岩盤固結を行うため、湧水
の多いな軟弱な地盤に対しても適用でき、有効範囲が極
めて広くなる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明に用いるパツカーの正面図、第２図は
その要部断面図、第３図（ａ）はパツカー内に配設され
る静止ミキサーの斜視図、第３図（ｂ）は同じくその側
面図、第４図および第５図はパツカーの使用説明図、第
６図はその施工状態を示す縦断面図、第７図はその横断
面図、第８図はこの発明の他の実施例に用いるパツカー
の要部断面図である。 １……天盤部、10……パツカー本体、11……吐出孔、12
……袋部、13……ナイロンチユーブ、19……吐出孔

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】先端側に吐出孔が形成された中空パイプ状
   のパツカー本体の根元側外周部に、その部分を囲うよう
   に通液性シート材を配設し両端部をパツカー本体外周に
   固定することにより通液性袋体に形成し、この袋体に液
   圧入手段を設けたパツカーを準備し、岩盤に穿設された
   孔に上記パツカーの中空パイプを挿入し、上記液圧入手
   段を利用し上記袋体内に速硬性の岩盤固結用薬液を圧入
   して上記袋体を膨らませ孔壁面とパイプとの隙間を埋め
   ると同時に、袋体の表面から岩盤に上記薬液を浸透硬化
   させて上記パツカーを上記孔壁面に接着固定し、その状
   態で上記中空パイプ内に岩盤固結用薬液を圧入し、これ
   を上記吐出孔から上記孔内に吐出させて岩盤に浸透硬化
   させることにより、上記孔内に上記パイプを残しつつ上
   記孔周囲の岩盤を固結させることを特徴とする岩盤固結
   工法。