JP4252823B2 - スラリー充填用逆止弁 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、土木・建築の分野において、袋状布製型枠内にモルタルなどのスラリーを充填する際に、当該スラリーの逆流を阻止するための逆止弁に関するものである。
【0002】
土木や建築の分野においては、構築物を地盤に対して強固に固定するために、構築物と地盤との間をモルタルなどの自硬性のスラリーを充填して固めることが行われており、そのスラリーをより緻密に充填するために、その充填箇所に袋状の布製型枠を配置し、当該布製型枠内にスラリーを圧入して充填することが行われている。
【0003】
図2はかかる固定構造の一例を示すものであって、トンネルを構築する際に、掘削されたトンネルの内面に沿って形成された支保工1を、トンネル内面の地山2に対して定着させる構造である。
【0004】
すなわち支保工1と地山2との間に筒状袋体3を配置し、当該筒状袋体3内にポンプ4からホース5を介してモルタルを圧入することにより、モルタル内の水分が筒状袋体3の布目の間から浸出して、筒状袋体3内に緻密なモルタルが形成され、且つ圧入圧力によってモルタルは筒状袋体3を介して支保工1及び地山2に密着し、支保工1を地山2に強固に定着させるのである。
【0005】
ところでこの工法においては、外部から筒状袋体3内にモルタルを高圧で圧入し、その圧力をかけた状態のままでモルタルを硬化させる必要があり、その圧入口に逆止弁を設ける必要がある。
【0006】
モルタルなどのスラリー状の流体は、一般の気体や液体の場合と異り、粒状物と水との混合流体であり、さらに大きな礫などをも含むため、圧入に際してはこれらをスムーズに通過させると共に、圧入終了後には有効に逆流を阻止し得るものであることが要求されるのである。
【0007】
【従来の技術】
従来この種のスラリー充填用の逆止弁として、特開2000−193110号公報に記載されたものが知られている。このものは、スラリーを充填する筒状布製型枠内に挿入された圧入管に排出口を形成し、その圧入管の外側に前記排出口を覆うように十分に大径の可撓性の筒状布を遊嵌し、当該筒状布における前記圧入管の排出口から十分に離れた位置に吐出口を形成したものであって、圧入管からスラリーを注入することにより、当該スラリーは排出口から筒状布内を流れて、吐出口から筒状布製型枠内に流入し、スラリーの注入を停止すると、筒状袋製型枠内の圧力により筒状布が押し潰されて排出口を塞ぎ、スラリーの逆流を阻止するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのものでは、スラリーを注入した後加圧を停止したとき、筒状布が圧入管の排出口を積極的に閉塞する機能を有しないため、筒状布が外圧によって押し潰されて排出口が閉塞されるまでの間に相当量のスラリーが逆流し、筒状袋製型枠内の圧力が低下することがある。
【0009】
特にモルタルなどのスラリーは、高いチキソトロピー性を有しており、スラリーを圧入した後流動が停止すると、圧入管の排出口から吐出口に至る流路が形成されたままで流動性が失われ、その後圧入管の圧力を除くと前記流路内のスラリーの流動性が回復するため、筒状布によって排出口が閉塞されるのが遅れ、多量のスラリーが逆流することがあるのである。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、前記逆止弁を改良し、スラリーの圧入後における逆流を、確実に阻止することのできる構造を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
而して本発明は、スラリーを充填する型枠内に挿入された圧入管の壁面に排出口を形成し、当該圧入管の外側に、前記排出口を覆うように圧入管より十分に大径の可撓性の筒状布を遊嵌し、当該筒状布における前記圧入管の排出口から十分に離れた位置に吐出口を形成し、その筒状布の外側に、前記圧入管と同径又はそれよりやゝ小径の弾性体チューブを、前記圧入管の排出口及び筒状布の吐出口を覆うように嵌合したことを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、前記弾性体チューブの外側に、前記筒状布と同径又はそれよりやゝ大径の筒状布帛を、前記弾性体チューブの全長を覆うように嵌合することが好ましい。
【0013】
本発明における圧入管は、耐圧性を有する鋼管やプラスチック管などの剛直な管を使用するのが適当であるが、ゴムホースなどの保形性を有しつつ比較的可撓性を有するものを使用することもできる。
【0014】
また本発明における筒状布としては、筒状の布又はターポリンを縫製したものを使用するのが好ましい。この場合、少なくとも前記圧入管よりも柔軟なものを使用するべきである。またその筒状布の径は、当該筒状布とその内部の圧入管との間にスラリーの流路が形成され得る程度の大きさとするべきであり、具体的には圧入管の1.5〜3倍程度の径とするのが好ましい。
【0015】
排出口及び吐出口の大きさは、スラリーをスムーズに圧入し得る大きさであることが必要である。また排出口と吐出口との距離は、その両者の間の筒状布部分が外圧によって圧入管の外面に圧接され、吐出口から排出口に至る逆流流路を遮断し得る程度の距離とするべきであり、具体的には筒状布の径と同等以上とするのが好ましい。
【0016】
また本発明における弾性体チューブは、具体的にはゴム又は軟質のプラスチックよりなるものであって、常時は筒状布を外側から締め付けて圧入管に密着させ、圧入管からスラリーを圧入するときには、当該スラリーの圧力により筒状布が膨脹するのを許容し、排出口から吐出口に至るスラリーの流路が形成されるようにするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、前記図2に示されたトンネルの支保工1を地山2に定着させる構造において、型枠としての筒状袋体3にスラリーを圧入する部分に、本発明を適用した一形態を示すものである。
【0018】
スラリーを送入するホース5の先端に継手金具6a、6bを介して端末金具7が取り付けられており、当該端末金具7には型枠としての筒状袋体3の端末が結合され、締め付けバンド8で固定されている。
【0019】
そして端末金具7の先端には、圧入管としての有底管9が結合されており、当該有底管9は端末金具7から筒状袋体3内に突出し、その側面には排出口10が穿設されている。
【0020】
そして有底管9の外側には例えばターポリンなどよりなる可撓性の筒状布11が嵌合されており、その筒状布11の後端は排出口10より後方の位置で有底管9の外周面に密着して固定されており、また筒状布11の先端は開放されて吐出口12を形成している。
【0021】
筒状布11は有底管9の径より十分に大径であり、その一部が図1(b)に示されるように周方向に折り畳み部11bにおいて折り畳まれ、有底管9の周面に密着せしめられている。なお折り畳み部11bは、前記有底管9の排出口10の位置に一致して形成されていることが好ましい。
【0022】
またその筒状布11の外側には、ゴムなどの弾性体チューブ13が嵌合されている。弾性体チューブ13は前記圧入管9と同径又はそれよりやゝ小径であって、その後端は前記筒状布11と共に有底管9に固定され、先端部は筒状布11の先端より先方に延びて吐出口12を覆っている。
【0023】
さらに図1においては、弾性体チューブ13の外側に筒状布帛14が嵌合されている。筒状布帛14は前記筒状布11と同径又はそれよりやゝ大径のものであって、後端は筒状布11及び弾性体チューブ13と共に、締め付けリング15で締め付けて有底管9に固定され、先端部は弾性体チューブ13よりも先方に延びて、弾性体チューブ13の全長を覆っている。
【0024】
この構造においては、ホース5から継手金具6a、6b及び端末金具7を介して有底管9にスラリーを注入すると、当該スラリーは有底管9を満たして排出口10を経て筒状布11内に入り、弾性体チューブ13の弾力に抗して筒状布11を膨らませ、有底管9と筒状布11との間の流路を通って、筒状布11の先端の吐出口12から吐出されて筒状袋体3を満たす。
【0025】
このとき図1の例のように筒状布帛14を設けておくことにより、排出口10から流出するスラリーによって筒状布11及び弾性体チューブ13が膨脹するのを外側から支え、筒状布11が過度に膨脹したり、破裂したりするのを防止することができる。
【0026】
筒状袋体3内がスラリーで満たされて、筒状袋体3内のスラリーに十分な圧力がかかると、スラリーの流れが停止し、弾性体チューブ13の弾力により筒状布11は押し潰されて有底管9の表面に圧接せしめられ、排出口10から吐出口12に至るスラリーの流路が急速に縮小する。このときスラリーを送入するポンプ4を逆転させ、流路の縮小を促進することもできる。
【0027】
筒状袋体3内のスラリーの水分が筒状袋体3の布目から浸出し、スラリーが濃縮されることにより、さらに新たなスラリーが有底管9から筒状袋体3内に流入するが、その速度は小さく、縮小した流路を通じても十分に充填される。
【0028】
筒状袋体3内にスラリーが完全に充填され、新たなスラリーの流入がなくなると、スラリーはそのチキソトロピー性により流動性を失う。この状態でスラリーの圧入を停止し、継手金具6a、6bの結合を解くと、継手金具6b内のスラリーが開口部から流出することにより、有底管9内のスラリーは一時的に流動性を回復する。
【0029】
しかしながら前述のように排出口10から吐出口12に至る流路は十分に縮小されており、また当該流路内の少量のスラリーが排出口10から排出されると、筒状布11は弾性体チューブ13の弾力により速やかに縮小して排出口10を閉塞し、縮小された流路も失われるため、筒状袋体3内のスラリーが大量に逆流することはないのである。
【0030】
図3は、本発明の他の実施の形態を示すものであって、本発明のスラリー充填用逆止弁の構造を、トンネルのシールド工事におけるセグメントの裏込め用袋体に適用した形態を示すものである。
【0031】
図3において、16はトンネルの内壁を形成するセグメントであり、当該セグメント16と地山2との間に型枠となる裏込め用袋体17が介装されており、当該裏込め用袋体17内に裏込め材としてのスラリーが充填されている。
【0032】
有底管9はその基部18が前記セグメント16を貫通して、フランジ19とナット20とで締め付けて固定され、有底の先端部21が裏込め用袋体17内に突出している。
【0033】
そしてその先端部21に前記排出口10が穿設されており、図1の例と同様に先端部21の外側に筒状布11が嵌合され、さらにその外側に弾性体チューブ13及び筒状布帛14が嵌合されている。
【0034】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態を示すものであって、本発明のスラリー充填用逆止弁の構造を、建築物などの構造物を地盤に定着させるためのアンカーに適用したものである。
【0035】
この例においては、地盤に穿設された孔22に鋼管23が挿入されており、当該鋼管23の先端部に型枠となる袋体24が取り付けられ、当該袋体24内にモルタルなどのスラリーが高圧で圧入され、袋体24を膨脹させて孔22の内壁に圧接し、鋼管23を地盤に固定するものである。
【0036】
而してこの例においては、鋼管23自体が圧入管としての機能を有しており、当該鋼管23の袋体24内の位置に排出口10が穿設されており、鋼管23の後端から鋼管23内を通じてスラリーを送入し、排出口10から袋体24内にスラリーを圧入するようになっている。
【0037】
そしてその図1の例と同様に、鋼管23における排出口10の外側に筒状布11が嵌合され、さらにその外側に弾性体チューブ13及び筒状布帛14が嵌合されている。
【0038】
【作用】
本発明においては、圧入管9、23からスラリーを注入することにより、当該スラリーは排出口10から筒状布11内に流入し、その外側の弾性体チューブ13の弾力に抗して当該筒状布11を膨らませる。
【0039】
そして排出口10と吐出口12とが十分に離れているため、排出口10から流入したスラリーは筒状布11内を流れて、吐出口12から型枠3、17、24内に吐出される。このとき筒状布11は圧入管9、23よりも十分に大径であるので、スラリーが型枠3、17、24内に注入されるについて大きな抵抗が生じる要素はない。
【0040】
而してスラリーは筒状布11を経由して型枠3、17、24内に注入され、その型枠3、17、24を膨らませると共にその内部を満たし、圧入管9、23からの注入圧力によって加圧されて圧入される。
【0041】
型枠3、17、24内にスラリーが十分に圧入されると、スラリー中の水分は型枠3、17、24の布目から滲出し、型枠3、17、24内に高圧で且つ固形分に富んだ緻密なスラリーが残ることとなる。
【0042】
また型枠3、17、24内が十分に加圧され、スラリーの流入速度が低下すると、弾性体チューブ13はその弾性により径を縮小し、それに伴って筒状布11も押し潰されて、当該筒状布11と圧入管9、23との間のスラリーの流路が縮小する。
【0043】
ここで圧入管9、23からのスラリーの圧入を停止し、圧入管9、23内の圧力が低下すると、筒状布11内のスラリーは一部が排出口10から圧入管9、23内に逆流し、筒状布11は型枠3、17、24内の外圧と弾性体チューブ13の弾力とによって速やかに且つ確実に押し潰され、圧入管9、23の表面に押し付けられ、排出口10が閉塞される。
【0044】
スラリーが礫などを含んでいる場合においても、筒状布11は柔軟であるため外圧によって圧入管9、23に密着することができ、間に礫などが挟まった状態でもそれらを包みこんで密着するので、それらの礫などが排出口10を閉塞する障害となることはない。
【0045】
而して、このようにして排出口10が筒状布11で閉塞され、スラリーの逆流が停止すると、スラリーは型枠3、17、24内に高い圧力を保持したままで急速に流動性を失う。そのため薄い筒状布11の壁面で十分にスラリーの圧力を支え、逆流を阻止することができるので、早期に圧入管9、23をスラリーの注入手段から取り外すことができる。
【0046】
而して型枠3、17、24内のスラリーは逆流することなく圧力を維持し、自らの自硬性によって硬化する。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、圧入管9、23から注入されたスラリーは、排出口10から筒状布11内を経て吐出口12から型枠3、17、24内に注入され、その間にスラリーの流通を阻害するものがないので、特に高圧を必要とせず、スムーズに注入することができる。また注入の過程で水分のみが先に送られて固形分と分離するようなことがなく、また礫などを含むスラリーであっても、それらの礫をも含めてスムーズに注入することができる。
【0048】
型枠3、17、24内にスラリーを注入し、十分に加圧された状態で、弾性体チューブ13の弾力によって流路が急速に狭められ、その後圧入管9、23内の圧力を除くと、筒状布11が圧入管9、23に圧接せしめられ、排出口10が確実に閉塞されるので、スラリーの逆流が確実に阻止され、型枠3、17、24内の圧力が維持される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態を示すものであって、(a)は中央縦断面図、(b)はb−b断面図である。
【図2】 本発明を支保工の定着に適用した状態の中央縦断面図
【図3】 本発明をセグメントの裏込めに適用した状態の実施の一形態を示す中央縦断面図
【図4】 本発明をアンカー装置に適用した状態の実施の一形態を示す中央縦断面図
【符号の説明】
3,17,24 型枠
9,23 圧入管
10 排出口
11 筒状布
12 吐出口
13 弾性体チューブ
14 筒状布帛
Claims (2)
- スラリーを充填する型枠(3,17,24)内に挿入された圧入管(9,23)の壁面に排出口(10)を形成し、当該圧入管(9,23)の外側に、前記排出口(10)を覆うように圧入管(9,23)より十分に大径の可撓性の筒状布(11)を遊嵌し、当該筒状布(11)における前記圧入管(9,23)の排出口(10)から十分に離れた位置に吐出口(12)を形成し、その筒状布(11)の外側に、前記圧入管(9,23)と同径又はそれよりやゝ小径の弾性体チューブ(13)を、前記圧入管(9,23)の排出口(10)及び筒状布(11)の吐出口(12)を覆うように嵌合したことを特徴とする、スラリー充填用逆止弁
- 前記弾性体チューブ(13)の外側に、前記筒状布(11)と同径又はそれよりやゝ大径の筒状布帛(14)を、前記弾性体チューブ(13)の全長を覆うように嵌合したことを特徴とする、請求項1に記載のスラリー充填用逆止弁
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